10月20日(4名)
小口泰與
薄紅葉風こそばゆく頬を行く★★★
蟷螂の華奢な利鎌を振り上げし★★★
切岸に絡みつきたる蔦紅葉★★★
蟷螂の華奢な利鎌を振り上げし★★★
切岸に絡みつきたる蔦紅葉★★★
桑本栄太郎
どこからか先ず香り来る金木犀★★★
散策の柿色づくや柿街道(原句)
散策の柿色づくや柿街道(原句)
散策に柿色づくや柿街道★★★★(正子添削)
散策の道すがらに見る色づく柿の色。日本の秋を象徴する柿の色に、郷愁すら覚える。柿街道は、丹波街道の大枝地区の街道のこと。大枝地区は、富有柿を栽培する農家が集まっていて、シーズンには幻の柿と言われる大枝柿の直売所が並ぶとのこと。(髙橋正子)
秋の蚊のつとに親しく鳴きにけり★★★
多田有花
<美瑛町>
十月の白樺並木風がゆく★★★
<美瑛町 白金青い池>
紅葉する木々を映せり青い池★★★
<白金温泉 森の旅亭びえい>
白金の湯に入り秋の晩餐を★★★
十月の白樺並木風がゆく★★★
<美瑛町 白金青い池>
紅葉する木々を映せり青い池★★★
<白金温泉 森の旅亭びえい>
白金の湯に入り秋の晩餐を★★★
弓削和人
柿熟す観光団の顔見上げ★★★
水澄めり緋鯉の鰭のたゆたゆと★★★
染めはじむ紅葉の径を歩きけり(原句)
柿熟す観光団の顔見上げ★★★
水澄めり緋鯉の鰭のたゆたゆと★★★
染めはじむ紅葉の径を歩きけり(原句)
「染める」は他動詞ですので、目的語(~を)がいります。
染まり初む紅葉の径を歩きけり★★★(正子添削)
10月19日(4名)
小口泰與
天地の声よ鳥語よ秋気澄む★★★
満月を見て居て急に腹の虫★★★
白波の来向かう利根や暮れの秋★★★
満月を見て居て急に腹の虫★★★
白波の来向かう利根や暮れの秋★★★
多田有花
<美瑛町 四季彩の丘二句>
四季彩の丘は秋のパッチワーク★★★
秋深き美瑛の丘のダリアかな★★★
<美瑛町 セブンスターの木>
晩秋の丘に立ちたる木の一本★★★
四季彩の丘は秋のパッチワーク★★★
秋深き美瑛の丘のダリアかな★★★
<美瑛町 セブンスターの木>
晩秋の丘に立ちたる木の一本★★★
桑本栄太郎
朝冷えや日向日蔭の色の濃く★★★★
晩秋になると朝夕は冷えびえしてくる。朝冷えの日は晴れた朝が多く、日向と日蔭の区別がはっきりしている。日向と日蔭の色の濃さに晩秋の趣が見て取れる。(髙橋正子)
青空にうすき紅葉やバス通り★★★
色づくや池の周りの真弓の実★★★
色づくや池の周りの真弓の実★★★
弓削和人
〈琵琶湖〉
秋の釣琵琶湖の波に呼ばれたり★★★
えり漁や空と湖との境目なり★★★
秋の釣琵琶湖の波に呼ばれたり★★★
えり漁や空と湖との境目なり★★★
波打ちて秋思を返す琵琶湖かな★★★
10月18日(5名)
小口泰與
極まりて没日は山へ鵙の贄★★★
廃坑へ向かう狭軌や秋の声★★★
魚鼓打つや庫裡に駆け來る秋渇★★★
廃坑へ向かう狭軌や秋の声★★★
魚鼓打つや庫裡に駆け來る秋渇★★★
多田有花
<富良野 ファーム富田三句>
花ばたけ秋の最後の輝きを★★★
秋時雨を逃れ富良野メロン食ぶ★★★
極寒の季節を前に鶏頭燃ゆ★★★★
花ばたけ秋の最後の輝きを★★★
秋時雨を逃れ富良野メロン食ぶ★★★
極寒の季節を前に鶏頭燃ゆ★★★★
廣田洋一
通草の実はじけてをりし通学路★★★
今日か明日か通草採る日をはかりつつ★★★
秋の雲枡目の如く青残し★★★
今日か明日か通草採る日をはかりつつ★★★
秋の雲枡目の如く青残し★★★
桑本栄太郎
友われに認知報らしむ秋寒し★★★
植込みの丸く剪らるる金木犀★★★
山茱萸の赤き実透きぬ夕日かな★★★★
植込みの丸く剪らるる金木犀★★★
山茱萸の赤き実透きぬ夕日かな★★★★
弓削和人
秋風や退社にイヤホン音上げて★★★
静かなり木犀の香を探る庭★★★★
傍の庭木犀の香のあちこちに★★★
秋風や退社にイヤホン音上げて★★★
静かなり木犀の香を探る庭★★★★
傍の庭木犀の香のあちこちに★★★
10月17日(5名)
小口泰與
忽然と竹伐る音や鳥の声★★★
竜胆やことに晴れたる峠径★★★★
小魚の際やかなりし秋の水★★★
竜胆やことに晴れたる峠径★★★★
小魚の際やかなりし秋の水★★★
廣田洋一
川べりの灯り灯れる秋夕焼★★★★
古民家の庭に香れる金木犀★★★
狛犬の大口開ける秋日和★★★
古民家の庭に香れる金木犀★★★
狛犬の大口開ける秋日和★★★
多田有花
<カンパーナ六花亭>
十月の大雪連峰遥かなり★★★
富良野の丘と蒸し栗のモンブラン★★★
秋天へ鐘楼高し葡萄畑★★★
十月の大雪連峰遥かなり★★★
富良野の丘と蒸し栗のモンブラン★★★
秋天へ鐘楼高し葡萄畑★★★
桑本栄太郎
ワイパーの頻りに擦る秋の雨★★★
秋雨や更に色づく庭の木々★★★
どんぐりの濡れて転ぶや公園に★★★
秋雨や更に色づく庭の木々★★★
どんぐりの濡れて転ぶや公園に★★★
弓削和人
秋雨やヘッドライトの継ぎ目なく★★★
細雨なり吾も案山子も濡れてよし★★★★
藁塚のみな失せにけり途次の夜★★★
秋雨やヘッドライトの継ぎ目なく★★★
細雨なり吾も案山子も濡れてよし★★★★
藁塚のみな失せにけり途次の夜★★★
10月16日(4名)
小口泰與
儲け物したる天気や濃竜胆★★★★
届きたる地酒一献秋の宵★★★
極まりて秋蝶はやも中天へ★★★
届きたる地酒一献秋の宵★★★
極まりて秋蝶はやも中天へ★★★
多田有花
<富良野 ファーム富田三句>
晩秋や白樺のある花畑★★★
姫りんご富良野の里に実りおり★★★
秋深しラベンダーの色深し★★★
晩秋や白樺のある花畑★★★
姫りんご富良野の里に実りおり★★★
秋深しラベンダーの色深し★★★
桑本栄太郎
生垣のつづく香りや金木犀★★★
ベランダにたつた二連や吊るし柿★★★★
ベランダにたつた二連や吊るし柿★★★★
干柿をつくる楽しみ。故郷で育ったころは、たくさん吊るし柿が軒に吊るされていただろうが、都会生活の今は二連の吊るし柿。それも十分。懐かしく、たのしい生活がいい。(髙橋正子)
尖るかの実を付けながら花オクラ★★★
弓削和人
一粒のつぎを待ちしや秋の雨★★★
星月夜待つこと含む映画館★★★★
ゆったりと夜の秋雲流れゆく★★★
一粒のつぎを待ちしや秋の雨★★★
星月夜待つこと含む映画館★★★★
ゆったりと夜の秋雲流れゆく★★★
10月15日(3名)
小口泰與
一献の新酒や髪膚駆け回る★★★
渓流の一枚岩や鬼やんま★★★★
己が手のささくれ立ちて秋果かな★★★
渓流の一枚岩や鬼やんま★★★★
己が手のささくれ立ちて秋果かな★★★
多田有花
<星野リゾートトマム二句>
タワー棟に彩添えし紅葉かな★★★
三十三階より見下ろす山紅葉★★★
<富良野 ファーム富田>
日差し戻る槍鶏頭のじゅうたんに★★★★
タワー棟に彩添えし紅葉かな★★★
三十三階より見下ろす山紅葉★★★
<富良野 ファーム富田>
日差し戻る槍鶏頭のじゅうたんに★★★★
弓削和人
新築の香りあらたに秋の朝★★★
数珠玉の実のより合える浮洲かな★★★
溝そばの根のふしぶしや水澄めり★★★★
新築の香りあらたに秋の朝★★★
数珠玉の実のより合える浮洲かな★★★
溝そばの根のふしぶしや水澄めり★★★★
溝そばは溝川のほとりなどに育ち、茎の下の方からは根と閉鎖花を付ける茎がのびる。根に触れる水が澄んで根を洗い、先には薄い紅色の花が咲いている。可憐に見える溝そばの逞しさが清々しく観察されいる。(髙橋正子)
10月14日(6名)
小口泰與
木道の天へ伸び行く紅葉かな★★★
木犀の金の崩るる夕間暮れ★★★
幾たびも川の興亡新松子★★★★
木犀の金の崩るる夕間暮れ★★★
幾たびも川の興亡新松子★★★★
多田有花
乳牛と向かいあいたり秋嵐★★★
秋深し雌牛が生まれたとの報せ★★★★
秋深し雌牛が生まれたとの報せ★★★★
秋冷の至るところ。雌牛が生まれた知らせが、気持ちをほのぼのと暖かくさせてくれる。(髙橋正子)
口中に中ト口蕩ける紅葉月★★★
口中に中ト口蕩ける紅葉月★★★
桑本栄太郎
秋日さす葉蔭に赤き辛夷の実★★★★
東屋に女児遊び居り秋入日★★★
山の端の入日茜や秋の宵★★★
東屋に女児遊び居り秋入日★★★
山の端の入日茜や秋の宵★★★
弓削和人
藁塚のひとつが列を乱しけり★★★★
藁塚のひとつが列を乱しけり★★★★
藁塚の出来立ては整然としているが、日が経つと一つが崩れたのか列が乱れる。自然の「乱れ」に面白みや風情が生まれる。(髙橋正子)
アクセント靴紐に居るゐのこづち★★★
籾殻のおかれたままの刈田面★★★
籾殻のおかれたままの刈田面★★★
川名ますみ
〈ヴィエニャフスキヴァイオリンコンクール配信〉
秋澄めりコンテスタント調弦す★★★
無伴奏バッハひろがる空高し★★★
秋夜ひとり若きヴァイオリニストの声★★★
秋澄めりコンテスタント調弦す★★★
無伴奏バッハひろがる空高し★★★
秋夜ひとり若きヴァイオリニストの声★★★
※注〈ヴィエニャフスキヴァイオリンコンクール配信〉
ショパンコンクールで有名なポーランドでの若手奏者のためのバイオリンコンクールです。世界4大バイオリンコンクールの一つで、10月7日~21日にかけて配信されています。(髙橋正子)
10月13日(5名)
廣田洋一
朝一番銀杏拾ふ人の有り★★★★
踏まれたる銀杏数多並木道★★★
薬局の香りかぐわし金木犀★★★
踏まれたる銀杏数多並木道★★★
薬局の香りかぐわし金木犀★★★
小口泰與
SLの汽笛高らか水澄めり★★★★
SLの汽笛が高らかに伝わってくる。鉄橋を渡るところか、水が澄んでいるのが絵になる。写真になる。SLの蒸気が水に帰っていく気配がする。(髙橋正子)
天っ日の雲を嫌いて豊の秋★★★
風紋の砂の凹凸そぞろ寒★★★
風紋の砂の凹凸そぞろ寒★★★
多田有花
秋深き夜明けの列車に乗り込みぬ★★★★
晩秋の北の大地に降り立ちぬ★★★
白樺や秋の十勝平野を走る★★★
晩秋の北の大地に降り立ちぬ★★★
白樺や秋の十勝平野を走る★★★
桑本栄太郎
花少し残りてありぬ萩は実に★★★
さざ波の底の深きに秋の雲★★★★
一木に柿の実ふたつ色づきぬ★★★
さざ波の底の深きに秋の雲★★★★
一木に柿の実ふたつ色づきぬ★★★
弓削和人
無花果のあはれ熟しや橋たもと★★★
鰯雲鳶のゆらりとあてもなく★★★★
鰯雲は高い空を流れる。その下を鳶がゆらりと輪を描いている。見ていると「あてもなく」なのだ。「あてもなく」と見てとったのがいい。(髙橋正子)
鳶の輪を見上げる橋や秋高し★★★
10月12日(4名)
小口泰與
庭の柿風と雨との只中に★★★
草の実や忽と飛び立つ群雀★★★
蜩や疎水の流れ細細と★★★
草の実や忽と飛び立つ群雀★★★
蜩や疎水の流れ細細と★★★
廣田洋一
金色の光残して柳散る★★★★
柳が散る季節は秋深まってから冬のはじめごろ。黄葉した柳が風に誘われるように散る時、作者は「金色の光が残っているような」印象を受けた。細い金色の柳の葉からの印象が詩的に表現されている。(髙橋正子)
池之端柳散り込む乳母車★★★
玄米を混ぜて炊きたり今年米★★★
玄米を混ぜて炊きたり今年米★★★
桑本栄太郎
棄耕地の一面明かり泡立草★★★
犬蓼や好きな人には嫁がれず★★★
秋深し厨の匂い道に出ず★★★
犬蓼や好きな人には嫁がれず★★★
秋深し厨の匂い道に出ず★★★
弓削和人
[東大寺大仏殿]
学生の瞳に映る秋の旅★★★
くろがねの仏ぞおわす秋の声★★★
ご尊顔はるか秋思の盧舎那仏★★★★
学生の瞳に映る秋の旅★★★
くろがねの仏ぞおわす秋の声★★★
ご尊顔はるか秋思の盧舎那仏★★★★
10月11日(4名)
小口泰與
新蕎麦や信濃へ続く峠道★★★
へら浮子の魚信つんつん秋麗★★★
花林糖かりかり食むや秋の夜★★★
へら浮子の魚信つんつん秋麗★★★
花林糖かりかり食むや秋の夜★★★
廣田洋一
枝先の水面を撫でて柳散る★★★
濃緑をでんと積み上げ冬瓜かな★★★
陸奥や並ぶ棒稲架風香る★★★★
濃緑をでんと積み上げ冬瓜かな★★★
陸奥や並ぶ棒稲架風香る★★★★
弓削和人
秋帽の子等の写生や浮見堂★★★
声かけて農夫帰れリ刈田原★★★
半袖の少年まばら秋車両★★★
秋帽の子等の写生や浮見堂★★★
声かけて農夫帰れリ刈田原★★★
半袖の少年まばら秋車両★★★
桑本栄太郎
露草や溝のながれの心地良く★★★★
路傍や溝のほとりに咲く露草は、その青い色が称えられる。午後には花は溶けてなくなってしまう。さらさらと流れる溝川に露草が咲くと、心地よい時になる。(髙橋正子)
草も木も滴きらめく一草忌★★★
萎れても尚香り居り藤ばかま★★★
萎れても尚香り居り藤ばかま★★★
コメント
Unknown
御礼
高橋信之先生、正子先生
10月13日の投句「水澄めり」の句を今日の秀句にお取り上げ頂き大変嬉しいです。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。