今日の秀句/9月11日~20日


9月18日(2句)

★鰯雲夜空いっぱい泳ぎおり/多田有花
夜空にも雲の色が見えることがある。この日、鰯雲が夜空いっぱいに泳いでいた。ま昼間の続きの夜空の鰯雲。こんな光景を眺めて楽しくなる。(高橋正子)

★刈り残す畦の供花とや彼岸花/桑本栄太郎
畦草を刈りとるとき、彼岸花が刈り残された。畦の供花であるかのように。このように彼岸花を大切に思って詠んだ句は珍しい。(高橋正子)

9月17日(2句)

★雲いまだ生まれておらず秋高し/多田有花
秋の快晴の空だけを詠んだ句。雲が生きもののように思われていて、雲への親しみがある。ひとかけらの雲があってもよさほうだが、まだ生まれていないのだ。(高橋正子)

★すつきりと風の抜け行く刈田かな/桑本栄太郎
刈田となって、なににも邪魔されずに、田を風が抜けて行く。「すっきりと」が気持ちよい。(高橋正子)

9月16日(1句)

★さやけしや銀輪列の女子高生/桑本栄太郎
女子高生の数人が列をなして自転車の車輪を光らせて、銀輪を光らせて、走って来る。季節も爽やかだが、青春ただなかのういういしい女子高生の姿こそが爽やかなのだ。(高橋正子)

9月15日(1句)

★十五夜の明けて雲なき快晴に/多田有花
きれいな十五夜が明けて、翌日は、雲のひとつもない快晴の天気に恵まれた。きのうの十五夜の続きの空が、こんなにもきれいな快晴になるとは、まだ気持ちのなかには十五夜の月が残っている。(高橋正子)

9月14日(2句)

★コスモスの露天風呂へとなだれ咲く/小口泰與
露天風呂の傍にコスモスが咲き、露天風呂へと雪崩れている。コスモスに囲まれた湯は柔らかい湯であろうと思う。(高橋正子)

★まっすぐな道の両側豊の秋/多田有花
稲田の中にまっすぐな道が通るのは、そこが広い田である必要がある。そのことから、広い稔り田が道の両脇に広がる風景が想像できる。豊かに稲が実り、豊の秋が肌に触れて感じられるような句だ。(高橋正子)

9月13日(1句)

★驚きぬ苅田の鳶の大きさに/多田有花
高く輪を描きながら滑空する鳶はよく目にする。鎌倉あたりに行くと鳶の多さに驚き、たまに、下りてきているが、羽ばたきをしようものなら、少し怖いくらいの大きさになる。苅田に下りた鳶のまさかの大きさに驚いたことだ。(高橋正子)

9月12日(2句)

★赤々と鶏頭燃えている畑/多田有花
鶏頭が燃えているのが、庭や花壇ではなく、畑というのが面白い。農家では、花壇を特に作らず、畑の隅に咲かせているのをたまに見かける。鶏頭を咲かせた人の健康的な「花こころ」とでも言うものが偲ばれてゆかしい。(高橋正子)

★渚にて白き石踏む秋の潮/廣田洋一
秋はしらしらと淋しく、白がよく似合う。秋の潮が打ち返す渚を歩き、きれいに洗われた白い石を踏む。
心持も、秋潮に踏む白い石の感覚に似通う。(高橋正子)

9月11日(2句)

★水の秋大歩危小歩危巡る旅/廣田洋一
大歩危小歩危(おおぼけこぼけ)は、2億年の時を経て四国山地を横切る吉野川の激流によって創られた約8kmにわたる渓谷。吉野川の中流にあたるが、流れの水は、渓谷の美しさを引き立てて、「水の秋」が堪能できる。(高橋正子)

★快晴にまず刈られたる田一枚/多田有花
稲にいつ鎌を入れるかは、経験による判断が必要なのだろう。快晴の日、まだ葉に緑が残る田が一枚刈られた。手始めの、田が刈られ、いよいよ稲刈りの季節だ。(高橋正子)


コメント

  1. 多田有花
    2019年9月13日 8:55

    お礼
    信之先生、正子先生
    「快晴にまず刈られたる田一枚」を
    9月11日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    近隣で作付けされている稲はコシヒカリのような早稲
    から稲刈が始まります。
    遅いものでは10月半ばまで残っているものもあります。
    秋雨の時期ですので、稲刈は空模様とも相談しながら
    進められるのだと思います。

  2. 廣田洋一
    2019年9月13日 16:47

    御礼
    高橋信之先生
       正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    9月11日の「水の秋大歩危小歩危巡る旅」及び9月12日の
    「渚にて白き石踏む秋の潮」を夫々の日の秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、誠に有難うございます。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  3. 多田有花
    2019年9月14日 10:38

    お礼
    信之先生、正子先生
    「赤々と鶏頭燃えている畑」を
    9月12日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    ご句評いただいたとおりの情景でした。
    鶏頭の後ろにはサトイモが植えられていて、
    その大きな葉が並んでいました。

  4. 多田有花
    2019年9月15日 9:01

    お礼
    信之先生、正子先生
    「驚きぬ苅田の鳶の大きさに」を
    9月13日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    先日、水田地帯を走っていましたら、
    苅田の後に鳶の群れが下りているところに出会いました。
    カラスの群れは珍しくありませんが、鳶の群れを見たのは
    初めてで、カラスよりもかなり大きなその体に驚きました。

  5. 多田有花
    2019年9月16日 8:44

    お礼
    信之先生、正子先生
    「まっすぐな道の両側豊の秋」を
    9月14日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    兵庫県の人口密集地は瀬戸内海側に集中し、
    東播磨の内陸部は広々と水田地帯が広がっています。
    車の通りもあまりないまっすぐな道の両側に
    稲田が続き、晴れ晴れとした気持ちになります。

  6. 多田有花
    2019年9月17日 8:27

    お礼
    信之先生、正子先生
    「十五夜の明けて雲なき快晴に」を
    9月15日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    十五夜の午前中までは雲が多かったのですが、
    午後から晴れて夜にはくっきりとした名月を仰げました。
    翌日からも快晴が続いています。

  7. 桑本栄太郎
    2019年9月17日 18:08

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    9月16日の今日の秀句に「さやけしや銀輪列の女子高生」の句を選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。近在には高校もあって、女子高生が放課後一斉に自転車に乗って坂道を颯爽と帰る所に良く出あいます。

  8. 桑本栄太郎
    2019年9月18日 18:02

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    9月17日の今日の秀句に「すつきりと風の抜け行く刈田かな」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
    先日、漸く涼しくなりましたので近在に田園に行きました。すっかり刈田の光景となって居て、あっけない程でした。

  9. 桑本栄太郎
    2019年9月19日 17:56

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    9月18日の今日の秀句に「刈り残す畦の供花とや彼岸花」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
    近在の田園の草花の季節ごとの分布は、大体把握して居ります。過日の散策の折は、畦の草が刈られていても彼岸花は意識的と思えるように残されていました。昔は飢饉の際の非常食として、晒して食べる為にわざわざ球根は残したとも聞いて居ます。そのような伝統もあるのかとも思いました。

  10. 多田有花
    2019年9月19日 22:31

    お礼
    信之先生、正子先生
    「雲いまだ生まれておらず秋高し」を9月17日の
    「鰯雲夜空いっぱい泳ぎおり」を9月18日の
    それぞれ秀句にお選びいただきありがとうございます。

    先日までまだときおり入道雲が見られましたが、
    ここ数日は日が高くなっても澄んだ青空が
    広々と広がる日が続くようになりました。
    空も秋たけなわになっています。