今日の秀句/7月1日~7月10日

7月10日(1句)

★蜻蛉のカメラレンズをがっちりと/小口泰與
カメラを対象に向けていると、奇しくも蜻蛉がカメラのレンズに飛んできて、がっしりと掴んだ。レンズをつかんだ蜻蛉がクローズアップされて詠まれている。これこそ写真的表現と言えそう。レンズの透明感がいい。(髙橋正子)

7月9日(2句)

★薄紅の花びら広げ朝の蓮/多田有花
蓮の開花は空が白むごろであろう。花びらは光を透かせるように開いている。一様に紅ではなく、先にいくほど色が薄くなっている。「朝の蓮」がきよらかで、その空気感まで伝えている。(髙橋正子)

★青柚子の枝や机にほの香る/土橋みよ
早くも柚子を見るようになった。青柚子であるが、机に枝に付いたままの柚子が置かれ、ほのかに香っている。一枝の青柚子が目にも爽やかさを伝えている。(髙橋正子)

7月8日(1句)

★田舎よりこんな大きなトマト届く/桑本栄太郎
田舎から届いたトマトの大きさに驚いた。見事に熟れが新鮮な赤いトマトであろう。単に驚いたというだけでなく、ふるさとの土地のゆたかさを誇らしく思う気持ちが垣間見える。(髙橋正子)

7月7日(1句)

★夏祭しばらく降りし通り雨/小口泰與
祭の最中の通り雨が涼し気に詠まれている。夏祭りの人たちもしばらくは雨宿り。着ている法被や浴衣の藍が明るく匂いそうだ。(髙橋正子)

7月6日(4句)

★夕焼やろうそく島の灯を灯し/廣田洋一
隠岐の島に「ろうそく島」があるが、夕焼けに染まる「ろうそく島」を詠んだ句。旅の句として幻想てな景色が思い出に残る事だろう。(髙橋正子)

★サルビアや汲み上げられし水を浴び/多田有花
サルビアは夏花壇の代表的な花。燃えるような赤い花が多いが白、紫などもある。ここでは赤いサルビアを思うが、汲み上げられた水を浴び、生き生きといかにも涼しそうだ。(髙橋正子)

★夏涼し辛きカレーとハーブティー/土橋みよ
「涼し」だけでも夏の季語になります。生活の実感があって、楽しい生活がうかがえる。(髙橋正子)

★ジャム瓶に生けて間引きの百日草/上島祥子

間引きの百日草も大切に、ジャムの空き瓶に挿して楽しむ心がけが好もしい。ささやかな、楽しい生活がいい。(髙橋正子)

7月5日(2句)

★枇杷熟れて今朝一片の雲も無し/多田有花
枇杷という色も実も繊細な果実が、「一片の雲もなし」の晴れた空を背景に熟れている。色彩の情感がすばらしく、また同時に一抹の寂しさを感じさせる句。(髙橋正子)

★東天に日は白々と朝曇/上島祥子
朝曇という曇っていながら明るい日本特有の気象現象を描写的に詠んでいる。「日は白々と」が太陽の光を「白さ」で受け止め、句に清澄さを生んでいる。(髙橋正子)

7月4日(2句)

★植田日々育つや空を映しつつ/多田有花
植田が育っていく、それも空を映しながら。植田のたたずまいが明るく未来を見ている印象がする。句のリズムも自然で流れがいい。(髙橋正子)

★茂りたる山あいの旅隠岐の島/廣田洋一
「茂りたる山あい」に、隠岐の島の自然をリアルに伝えてくる力がある。「隠岐の島」の固有名詞の醸す旅情がいい。(髙橋正子)

7月3日(2句)

★物干しの真白な夏蝶青空へ/土橋みよ
情景は物干しに白い蝶が止っていて、青空へ飛び立った、ということ。「真っ白な」に蝶への感動が集約され、青空へ飛び立ったその白い蝶がいつまでも目に残る。もちろん、白と青の対比も美しい。(髙橋正子)

★ブロンズの少年朝の涼に立つ/上島祥子
ブロンズ像の少年でありながら、今そこに立つ凛々しい人としての少年となっている。朝の涼がそうさせたのか、朝涼の空気感まで伝わってくる。(髙橋正子)

7月2日

※該当句無し

7月1日(1句)

★夏の蜂飛び交う音の軽き朝/上島祥子
蜂の羽音を「軽い」と捉えた感受性は鋭く、夏の朝の涼やかな空気感や朝日のきらめきを思い起させている。蜂は春から夏へかけて活動するが、夏の蜂は強さもありながら、余裕のように軽く飛んでいる。(髙橋正子)

コメント

  1. 上島祥子
    2025年7月3日 22:09

    お礼
    正子先生
    7/1の秀句に「夏の蜂飛び交う音の軽き朝」をお選びくださり丁寧な句評を有難うございました。早朝に白蝶草の花に沢山の蜂が集まって居るのが音で気がつきます。力強い元気な羽音です。

  2. 土橋みよ
    2025年7月4日 19:00

    お礼
    正子先生
    7/3の句に星の指導と貴重なコメントを頂戴し、有難うございます。俳句を推敲するためにスイカを買ってきて割ってみたら、思っていたのとまったく違っていてびっくりしたり、また、蝶をじっと見ていたら、まるで折り紙のように動かなかったり、紋もなく(見えず)真っ白な蝶が急に飛び立って大空へ飛びたったりするのを見て、感動しております。

  3. 上島祥子
    2025年7月5日 19:44

    Unknown
    お礼
    正子先生
    7/3秀句に「ブロンズの少年朝の涼に立つ」をお選び頂き丁寧な句評を有難うございました。小学校の隣にある児童公園に置かれる少年像は、早朝の清涼な空気の中に力強く見えました。

  4. 多田有花
    2025年7月5日 20:57

    お礼
    正子先生
    「植田日々育つや空を映しつつ」を7月4日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    自宅の周囲の田植えは6月の初めでした。
    ほぼ一か月が過ぎて稲はかなり育ってきましたが、まだ田の水面は見えています。
    そこに空や雲が映っています。
    これがさらに育てば水面はすっかり隠れ青田となります。

  5. 廣田洋一
    2025年7月6日 8:04

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    7月4日の「茂りたる山あいの旅隠岐の島」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難うございます。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  6. 多田有花
    2025年7月6日 13:30

    自由な投句箱
    正子先生
    「枇杷熟れて今朝一片の雲も無し」を7月5日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    ご近所で枇杷を植えておられるお宅が何軒かあります。
    枇杷の実が熟れ、一部には袋が被せられていたりもします。
    例年ならまだ梅雨ですが、今年はすでに梅雨が明け、連日晴天が続いています。

  7. 上島祥子
    2025年7月8日 6:58

    Unknown
    お礼
    正子先生
    7/5秀句に「東天に日は白々と朝曇」をお選びくださり丁寧な句評を有難うございました。朝曇の中満月のように白く有ったのが印象に残りました。
    7/6秀句に「ジャム瓶に生けて間引きの百日草」をお選び頂き丁寧な句評を有難うございました。早朝の公園花壇ボランティアの方に間引きの花を貰いました。

  8. 廣田洋一
    2025年7月8日 7:53

    御礼
    高橋正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    7月6日の「夕焼やろうそく島の灯を灯し」を秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、真に有難うございます。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  9. 多田有花
    2025年7月8日 14:07

    お礼
    正子先生
    「サルビアや汲み上げられし水を浴び」を7月6日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    近所の道沿いの花壇に真っ赤なサルビアが植えられています。
    ボランティアの方が川からポンプで汲み上げて水をやっておられました。
    この厳しい暑さ、花たちも水を浴びて涼しそうでした。

  10. 桑本栄太郎
    2025年7月9日 19:27

    御礼
    高橋正子先生
    7月8日の今日の秀句に「田舎よりこんな大きなトマト届く」の句をお選び頂き、嬉しい過分なるご句評も頂戴しまして大変有難う御座います!!。
    同郷の家内の従妹より、大人のこぶし程もある大きなトマトを送って貰いました。最近ではミニ及び中ほどの大きさが多いいものの、大きくて良く熟れとても美味しい事に驚くほどでした。

  11. 小口泰與
    2025年7月11日 10:48

    御礼
    高橋正子先生
    7月10日の投句(蜻蛉のカメラレンズ)の句を秀句にお取り上げ頂き、その上素晴らしい句評をいただき有難う御座います。こんごともよろしくご指導の程お願い申し上げます。