今日の秀句/4月11日~20日


[4月20日]

★タンポポの種飛ぶ吾も旅支度/廣田洋一
タンポポの種も飛び立つから私もそろそろ旅へ。ひょうひょうとした軽さがいい。(高橋正子)

★子ら遊び踏みし跡ある蓮華草/祝 恵子
蓮華草が咲いている田や野を見つけると、入って遊んでみたくなるのは大人になっても変わらないだろう。子どもなら、実際に実行する。やっぱり入って遊んだのだという作者の思いと、子供たちのほほえましさ。(高橋正子)

[4月19日]

★森が鳴る音に包まれ春山路/多田有花
風のある日、春の山路に入ると、風がごうごうと吹いている。森が鳴っている。それほど山中に風が吹いているとは想像しにくいが、森を吹く風の量には驚く。(高橋正子)

[4月18日]

★紫雲英咲く畔道高き鳥の声/河野啓一
この句は、「紫雲英咲く畔道」と「高き鳥の声」に分かれ、いわゆる句またがりの句。紫雲英の花が畦道に咲き、鳥が元気よく鳴いている。半日をこんなところで過ごしたら、どんなに良いだろうか。日本の長閑な大切な風景。(高橋正子)

[4月17日]

★八重桜のつくる木陰に縦列駐車/多田有花
八重桜が咲くころは春の酣。気温も上がり、日の光も強くなる。八重桜が木陰を作るところへ車が縦列に並ぶ。気候条件だけでなく、人が八重桜の下に車を止めたい気持ちもあるだろう。それで、こんな光景になった。(高橋正子)

[4月16日]

★銀杏の芽已にその葉のかたちして/川名ますみ
銀杏の芽吹きはほかに木々に少し遅れる。桜が散るころになると、成長した銀杏の葉と同じ形の小さな葉が芽吹く。小さな葉が成長した葉そっくりで、かわいくほほえましい。(高橋正子)

[4月15日]

★ふらここを漕ぐ子らよ跳べ高みまで/小川和子
ふらここ、つまり、ぶらんこを子どもたちが漕いでいる。だんだんと勢いづくのを見ているうちに、高い空まで漕いでくれよ、空の中の子どもとなってくれよと、思いが膨らみ、やがて子どもは、幼いころの自分と重なる。(高橋正子)

[4月14日]

★花弁を浮かべて光る苗代田/廣田洋一
苗代に張られた水に桜の花びらが浮かび、陽を受けてまっ平らに光っている。散った花、太陽に光る苗代の水。季節の繊細な変わり目がよく表現されている。(高橋正子)

★谷深し桜一片散る速度/古田敬二
谷に散る桜の一片の行方を見ておれば、谷が深いことゆえの速度が面白い。一片の散る花びらに谷がますます深く、大きな自然が思える。(高橋正子)

[4月13日]

★ 鳥引くと便り来たれり薩摩より/河野啓一
「薩摩」という地名が効いた。鳥引くという「便り」であれば、南のくにの「薩摩」がいい。「春来る」のいい便りが届いたのだ。「鳥引く」は「鳥帰る」のこと。(高橋信之)

[4月12日]

★下りゆくだらだら坂や揚ひばり/桑本栄太郎
だらだらと長閑に下ってゆく坂道に、下って行く人とは逆に、ひばりが鳴きながら空へ揚がってゆく。揚げひばりの声は、西洋の詩人には歓喜の歌と聞こえる。よい洛西の散策だったと思われる。(高橋正子)

[4月11日]

★初つばめ畦川の水走り出す/小口泰與
つばめが来たうれしさが、生きいきとした季節が来たうれしさが、「畦川の水走り出す」によく表されている。畦川は田んぼを巡って流れている浅い小さな小川。田植えの準備が進んで、水が走り出している。
いい季節だ。(高橋正子)


コメント

  1. 小口泰與
    2016年4月12日 10:36

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    4月11日の「初つばめ」の句を秀句にお選び頂き、その上、正子先生には素晴らしい句評を賜わり厚く御礼申し上げます。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。有難うございました。

  2. 桑本栄太郎
    2016年4月13日 19:05

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    4月12日の今日の秀句に「下りゆくだらだら坂や揚
    ひばり」の句をお選び頂き、嬉しい過分なるご句評も
    頂戴しまして大変ありがとうございます。
    先日は嘗ての同期四人で洛西の田園、花の寺を散策
    しました。
    少し坂道になっている乙訓の丘は揚ひばりの声が
    明るく歓喜の歌を歌っていました。
    まさに長閑そのものの光景であり、楽しいひと時を
    過ごす事が出来ました。

  3. 河野啓一
    2016年4月15日 7:52

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    4月13日の秀句に「鳥引くと便りありたり薩摩より」をお取り下され、信之先生の素晴らしいご評も賜りまして、まことに有難うございました。今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。

  4. 廣田洋一
    2016年4月15日 19:00

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    4月14日の「花弁を浮かべて光る苗代田」の句を秀句にお選び頂き、その上、正子先生には素晴らしい句評を賜わり厚く御礼申し上げます。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。

  5. 小川和子
    2016年4月16日 11:44

    お礼
    信之先生、正子先生
    4月15日の秀句に「ふらここ」の句をお選び下さり、正子先生には貴重なご講評を頂き有難うございます。よく晴れた日の午後、元気な子ども達がぶらんこで遊んでいました。ぐんぐんと思いっきり漕ぐ姿に思わず応援したくなりました。同時に、お言葉どおり自分が漕いでいるような壮快さも感じたのです。ありがとうございました。

  6. 河野啓一
    2016年4月19日 17:40

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    4月18日の投句「紫雲英咲く畔道高き鳥の声」を今日の秀句にお採りくだされ、正子先生の素晴らしい、ご懇篤なご句評を賜りまして誠に有難うございました。
    今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。

  7. 多田有花
    2016年4月19日 18:15

    お礼
    信之先生、正子先生、
    「八重桜のつくる木陰に縦列駐車」を4月17日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    八重桜が咲くようになると、日差しに暑さを感じるようになります。
    先生のお言葉どおり、桜の下にこそとめたいという人の心が見えて楽しいです。

  8. 川名ますみ
    2016年4月19日 21:44

    お礼
    信之先生、正子先生、いつも温かいご指導を、ありがとうございます。
    「銀杏の芽已にその葉のかたちして」の句へ賜りました、正子先生のご講評、嬉しく拝読しました。通院途中に、銀杏並木を幾つか通ります。芽吹いたばかりの小さな葉が、成長した銀杏の葉の形そっくりで、かわいらしいなぁと感じまして。コメントの通りの情景でした。

  9. 廣田 洋一
    2016年4月21日 10:58

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    4月20日の「タンポポの種飛ぶ吾も旅支度」の句を秀句にお選び頂き、その上、正子先生には簡明な句評を賜わり厚く御礼申し上げます。今後ともよろしくご指導のほどお願い申し上げます。

  10. 祝恵子
    2016年4月21日 17:43

    お礼
    信之先生、正子先生、4月20日の[蓮華草]を添削頂き素敵な句評をありがとうございました。家の前は田んぼで、蓮華の中で遊んだものです。

  11. 多田有花
    2016年4月23日 19:32

    お礼
    信之先生、正子先生、
    「森が鳴る音に包まれ春山路」を4月19日の秀句にお選びうただきありがとうございます。
    先日の雨は風をともなって嵐の様相でしたが、翌日には雨だけが先にあがり、一気に晴れました。
    青空を雲が飛び去る強風で、森へ行くと枝が鳴り、木々が身を揺すっていて、爽快な眺めでした。