[1月21日]
★出づる日を拝みて冬耕始めけり/小口泰與
「出づる日」は、輝きも強く、有難さも一層だ。自然と拝む気持ちにさせられる。この太陽あればこそと耕し始める。謹直な日本の農夫の姿だ。(高橋正子)
★蝋梅の水滴こぼるる膨らみに/祝 恵子
蝋梅についた水滴が、こぼれそうに膨らんでいる様子。蝋梅の色を透かせた水滴が大きく膨らんで、手にしたいほど美しい。(高橋正子)
[1月20日]
★笹鳴や今朝の赤城山(アカギ)は靄の中/小口泰與
笹鳴が聞こえ、赤城山は靄の中にある。雄々しい山容の赤城山も靄の包まれやわらかに見える。春の足音が聞こえる。(高橋正子)
★革靴で砂丘に上る冬怒濤/福田ひろし
旅の途中か、砂丘に上る用意もなく思い立ってのことか。砂丘があるから革靴のまま上ると、怒涛が荒々しい音で寄せている。冬の怒涛に向かい、内なる力が湧く思いだろう。(高橋正子)
[1月19日]
★寒のバスひとりの客を吐き出しぬ/多田有花
寒の寒々とした空気のなかに、バスから一人の客が降りた。しかし、それは、降りたのではなく、バスが客一人を吐き出したかのようなのだ。着膨れで膨らんだようなバスとあたりの寒々とした景色が思われる。(高橋正子)
★水色の空の高さに枯柳/桑本栄太郎
水色の空に、刷かれたように立つ枯柳の枝。もううっすらと緑がかっても見えるこの頃だ。真冬の最中ながら、水色の空に春への期待が忍ばれる。(高橋正子)
[1月18日]
銚子
★沖合いに風車の廻る寒の入り/小川和子
太平洋を背景に立つ風力発電の風車は、近代的な風景を作っている。沖合いを吹く風の寒さもいよいよ寒そうで、寒の入りを印象付ける。新しい印象の寒の入りの句だ。(高橋正子)
★叢に跳び来て笹子ふと声す/小西 宏
叢を通りすがると笹子が跳んで入り込み、チャチャ、チャチャと鶯らしからぬ声をあげる。笹鳴きを聞くと「春遠からじ」と思う。(高橋正子)
★新幹線の車窓一面冬の富士/高橋秀之
新幹線で上京するとき、真っ白い冠雪の富士が窓を占める。雪を頂いた冬の富士は自然の力強さをもって圧倒する。(高橋正子)
[1月17日]
★朝風が枝を揺らせり日脚伸ぶ/多田有花
朝の風が枝を揺らしその間に青空見える。冷たいながらも心身が引き締まる爽快感がある。こんな日には、「日脚伸ぶ」うれしさがある。(高橋正子)
★十日戎太鼓のバチは子がならす/祝恵子
商都大阪ならではの十日戎の賑わいはうれしいものだ。子供もその賑わいに参加して、太鼓のバチをもって、鳴らす。八方縁起がよい。(高橋正子)
[1月16日]
★裸木の林に透ける街灯/小西 宏
裸木の林に透ける街の灯に、枯れの美しさ、また逆に灯の美しさが思われる。(高橋正子)
[1月15日]
★今朝ついに向こうが透け見え冬木立/古田敬二
すっかり木の葉が散ってしまい、向こうが透けて見えるようになった。さっぱりとして潔い冬景色だ。(高橋正子)
★明け方の霰に元気貰いけり/内山富佐子
明け方、霰の音で目を覚ましたのであろう。霰が撥ね、弾ける音の勇ましさに、寒さを思うのではなく、元気を貰った若さ。(高橋正子)
★球を蹴る冷たき風を朗らかに/小西 宏
球を蹴るときは、冷たい風もなんのその。球を蹴るのが楽しければ、冷たい風だって朗らかにしてしまう。楽しい熱気が伝わる。(高橋正子)
コメント
お礼
高橋正子先生
「球を蹴る冷たき風を朗らかに」を「今日の秀句」にお加え下さり、たいへん有難うございました。近所の公園では、子供たちのサッカー、野球教室が開かれています。暗くなるまで皆、楽しそうに動き回っています。
お礼
高橋正子先生
「裸木の林に透ける街灯」を「今日の秀句」にお加え下さり、たいへん有難うございました。黄昏の頃、雑木林を犬と散歩しました。夕空に裸木がきれいです。そして、その向こうに街の明かりが輝き始めていました。
お礼
信之先生、正子先生、
「朝風が枝を揺らせり日脚伸ぶ」を17日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
年末頃にはすでに夕刻は少し遅くなった実感があります。
年が明け、今頃になると、夜明けも早くなっているのがわかり、春が近いと心が浮き立ってきます。
お礼
高橋正子先生
「叢に跳び来て笹子ふと声す」を今日の「秀句」にお加え下さり、たいへん有難うございました。普段はなかなか鶯の姿を見つけることができないのですが、冬枯れの今頃は野も山も枯れ、運よく叢近くに跳び込んできたところを発見しました。しばらく眺めていると、チャッ、チャッと鳴きながら、忙しげに木の枝を突いていました。
御礼
高橋信之先生、正子先生
1月19日の今日の秀句に「水色の空の高さに枯柳」の句をお選び頂き、嬉しいご句評も頂戴しまして大変有難うございます。近在のバス停のすぐ傍の川べりに、柳の大きな大木があります。この時季の晴れの日は空が水色となり、寒そうとも春が近いとも思われます。そして枯柳の水色空に起つ姿はとても風情があります。
お礼
信之先生、正子先生、
「寒のバスひとりの客を吐き出しぬ」を19日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
よく目にする情景ですが、この冬の朝はそれが句になりました。
正子先生のお言葉どおり、バスの大きさと乗客の小ささ、周囲の寒さが思われた景色でした。
お礼
高橋信之先生、高橋正子先生
1月18日の今日の秀句に新幹線の車窓一面冬の富士の句をお選びくださりありがとうございました。
わずかなお時間でしたが、直接お話しできて、早朝の富士を見たように、うれしかったです。これからもよろしくお願いいたします。
御礼
高橋信之先生、正子先生
1月20日の今日の秀句に「笹鳴」の句をお取り上げいただき、正子先生には素晴らしい句評を賜わり厚く御礼申し上げます。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。
お礼
信之先生、正子先生、17日の[十日戎」をお選びいただきましてありがとうございました。
御礼
高橋信之先生、正子先生、「革靴で」を秀句に選んでいただきまして、ありがとうございます。どういうわけだか20日間ほど、俳句から遠ざかっておりました。細く長く続けていくつもりですので、ご指導のほど、よろしくお願いします。
御礼
高橋信之先生、正子先生
1月21日の秀句に「冬耕」の句をお取り上げいただき、その上、正子先生には素晴らしい句評を賜わり厚く御礼申し上げます。今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。
お礼
信之先生、正子先生、21日の秀句に添削の上「蝋梅」に嬉しい句評を頂きましてありがとうございました。