今日の秀句/1月1日~10日


1月10日(2句)

★恐ろしきまで一山の雪月夜/小口泰與
これほどの雪月夜をまだ見たことがなく、想像するばかりだが、山国のすざましいほどの雪月夜を思い圧倒された。(髙橋正子)

★明星の光ひと粒寒茜/廣田洋一
寒茜の中に、宵の明星の金星が一粒光っている。一番星のその一粒が愛おしい。(高橋正子)

1月9日(2句)

★明けの雪寺の柱の黒光り/小口泰與明けてみれば寺に雪が積もり、寺の柱はお堂のなかで、黒光りしている。白と黒の寺の光景が黒光りの柱を中心に、写真のように浮かび上がる。(高橋正子)

★立ちこぎのセーラー服や日脚伸ぶ/多田有花
日脚がすこしずつ伸びているkのごろ、自転車を立こぎするセーラー服の女学生を見た。元気いっぱいの、まだあどけなさ残る女学生が往時の自分を見るようで、ちょっと眩しい。「日脚のぶ」が効いている。(高橋正子)

1月8日(2句)

★燗熱くせよ知事賞の報届く/小口泰與
「燗熱くせよ」の勢いがただただ晴らしい。知事賞おめでとうございます。(高橋正子)

★紅白の漬物添へて七種粥/廣田洋一
正月気分のまだ残る七日、七草粥に添えられた紅白の漬物がみずみずしい。地味ながら華やぎがあ句。(高橋正子)

1月7日(1句)

★おちこちに声谺して寒紅梅★★★★
寒紅梅は山間の谷に咲いているのだろう。梅見の人たちの声があちこちから谺して聞こえてくる。谷に散らばって梅見をする人たちの様子が見て取れる。(高橋正子)

1月6日(1句)

★仕事始故郷の菓子を頂きぬ/廣田洋一
仕事初めの会社。帰省した人たちのふるさと土産の菓子を頂いた。ほっこりとするひととき。(高橋正子)

1月5日(2句)

★母に来し年賀状を持ちゆけり/多田有花
娘のところに来た母宛の年賀状。差出人は、母は正月を娘のところで過ごしているんだろうかとの思いかもしれない。母のところへ年賀状をもって行くことは、母に会いに行くことでもある。お互いの思いやりの心が忍ばれる句。(高橋正子)

★同郷の小豆雑煮の二人かな/桑本栄太郎
雑煮は地方地方によって、驚くほどさまざまある。郷土性の豊かな祝い椀である。丸餅、伸餅、餡餅か、紅白餅も。仕立ては白みそ,澄まし、焼くか煮るか。同郷のご夫婦二人は、小豆雑煮。幼い時からの郷土の雑煮を頂く幸せ。小豆雑煮の品の良さが効いている。(高橋正子)

1月4日(2句)

★正月の京都に向かう人を載せ/多田有花
みやびさ漂う正月の京都へ家族か知人を車に乗せたのだろうか。乗るときから着物も匂い華やぎ立っている。また電車に乗っている京都へ向かう人たちを眺めたとも読める。車や電車が正月の華やかさでいっぱいなのだ。(高橋正子)

★マスク子の不安顔なり待合室/桑本栄太郎
病院の待合室。マスクをかけた子が熱でもあるのだろう。不安げな顔でおとなしくしている。子供は風の子、元気な子であるはずなのに。おとなしく不安げであれば、不憫である。(高橋正子)

1月3日(2句)

★雪折の音に目覚めし幼き日/廣田洋一
雪国で幼き日を過ごされたのだろうか。私は、瀬戸内で過ごしたが、たまに大雪が降ることがあって、裏の竹藪の雪がどさっと大きい音を立て落ちるのに驚いたことがある。雪折れの枝がバシッと折れる音は、幼きものを目覚めさせる。今はその音と、音に被る幼き日が思い出される。(高橋正子)

★をけら火や四条通りの縄明かり/桑本栄太郎
をけら火は、京都八坂神社の大晦日から元旦にかけて行われる神事。朮火に縄をかざして火をもらい、その火を持ち帰り雑煮を煮る。縄は1メートルぐらいのものを手に数回手繰って、縄先に火を付ける。晴れ着姿の女性も大勢見受けられる。四条通は、火のついた縄の明かりがゆらいでいる。奥ゆかしい日本の行事である。(高橋正子)

1月2日(2句)

★日溜まりにまた一羽来る寒雀/廣田洋一
日溜まりは誰にもうれしいところ。日溜まりに寒すずめが餌をついばんでいる。チョンチョン飛ぶものもいる。すると、そこへまた一羽が寄って来た。仲間に入って餌をついばむ。見ていてたのしく、心和む光景だ。(高橋正子)

★ふるさとの海鳴り想う波の花/桑本栄太郎
波の花は海水が風で泡立ち花のようになる現象。海鳴りの音に加わり波の花が飛ぶ。特徴的な故郷の景色は、いつまでも目裏に、耳底にある。(高橋正子)

1月1日(4句)

★噴煙の垂直に伸び初浅間/小口泰與
新年、浅間山から噴煙がまっすぐにどこまでも、というふうに、上がっている。新年早々の伸びやかな景色に、今年の幸先のよさを思わずにはおれない。(高橋正子)

★神輿蔵開け放たれて初詣/廣田洋一
普段は閉められている神輿を収めている蔵が、新年には開け放たれ、どっしりと座り、きらびやか姿を見せている。初詣に遭遇するものはいろいろあるなかの、開け放たれた神輿蔵。(高橋正子)

★竹林の白き節見せ淑気満つ/桑本栄太郎★
京都の竹林の美しさは言うまでもないが、竹の節が白く粉を吹いたようである。年改まる中、りんとして、淑気に満ちている。(高橋正子)

何気なく出て全身に初日浴ぶ/多田有花
「何気なく出て」が面白い。何気なく出たら、全身を初日が照らしてくれた。日を浴びるのは初日だけにうれしい。(高橋正子)


コメント

  1. 廣田洋一
    2020年1月6日 16:25

    御礼
    高橋信之先生
       正子先生
    いつも懇切にご指導頂き有難う御座います。
    1月1日の「神輿蔵開け放たれて初詣」、1月2日の「日溜まりにまた一羽来る寒雀」及び1月3日の「雪折の音に目覚めし幼き日」を夫々の日の秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、誠に有難う御座います。小学校5年生の終わりまで津軽の弘前で育ちました。
    今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます

  2. 桑本栄太郎
    2020年1月6日 18:32

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    改めまして明けましておめでとう御座います!!。
    元旦の「淑気満つ」、2日の「波の花」、3日の「をけら火」、4日の「マスク子」、5日の「小豆雑煮」の句を今日の秀句にお選び頂き、それぞれの句に嬉しいご句評も頂戴しまして、大変有難う御座います!!。特に冬も深まり、寒さが募って来ますと鳥取の田舎の「波の花」が想われ、二人とも同郷の為正月の「小豆雑煮」が想われます。

  3. 多田有花
    2020年1月7日 16:28

    お礼
    信之先生、正子先生
    「何気なく出て全身に初日浴ぶ」を1月1日の
    「正月の京都に向かう人を載せ」を1月4日の
    「母に来し年賀状を持ちゆけり」を1月5日の
    それぞれ秀句にお選びいただきありがとうございます。

    今年の新年は自宅で迎えました。
    初日の出を計画して見に出かけるということはなかったのですが、
    自宅のベランダへ出たら、ちょうど東側の山の端から初日が
    顔を出し始めていました。
    偶然にも出会った身近な場所での初日の出でした。

  4. 小口泰與
    2020年1月8日 16:42

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    1月7日の投句「寒紅梅」の句を今日の秀句にお取り上げ頂き、その上、正子先生には素晴らしい句評を頂き有難う御座いました。今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます。有難う御座いました。

  5. 廣田洋一
    2020年1月15日 19:24

    御礼
    高橋信之先生
       正子先生
    いつも懇切にご指導いただき有難うございます。
    1月8日の「紅白の漬物添へて七種粥」及び1月10日の「明星の光ひと粒寒茜」を夫々の日の秀句にお選び頂き、その上正子先生には素敵な句評を賜り、誠に有難うございます。
    今後とも宜しくご指導の程お願い申し上げます。

  6. 小口泰與
    2020年1月15日 20:09

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    1月8日の投句「燗熱くせよ」の句、1月9日の投句「雪明け」の句、1月10日の投句「雪月夜」の句をそれぞれの日の秀句にお選び頂き、その上、正子先生には素晴らしい句評を頂き感謝申し上げます。今後とも宜しくご指導のほどお願い申し上げます。重ねて御礼申し上げます。

  7. 多田有花
    2020年1月16日 17:42

    お礼
    信之先生、正子先生
    「立ちこぎのセーラー服や日脚伸ぶ」を
    1月9日の秀句にお選びいただきありがとうございます。
    今年はことのほか暖かい冬で寒ですが冷え込みは全くありません。
    日差しは明るく春の気配を感じるほどです。
    自転車通学の高校生ものびのびしています。