9月20日(木)

●イギリス・俳句の旅第2日/2011年9月20日●

◇ハワース・ウィンダミア◇

[ウィンダミア湖]

 日本とイギリスでは、8時間の時差があるので、チェスターのホテルを出発する午前8時は、日本では、午後4時になる。今日の予定は、ブロンテ姉妹の家があるハワース、そして湖水地方、ウィンダミア湖遊覧船にも乗る。イングランドの北方、スコットランドに近い。俳句にとっては、いい風景が見られるので、楽しみ。

○ハワース
 ハワースは、イングランド北 部にある小さな町で、エミリー・ブロンテの「嵐が丘」の舞台となったところです。ハワースでは、雨が雫のように降って、湿っぽい風が荒いわけではないけれど、逆巻くような吹きかたをしていました。ブロンテ一家の住んだ牧師館の裏庭に回るとまだあじさいなどが水色の微妙な色合いになっており、夏の間咲いていた花も咲き残っていました。湿ったような風が印象に残り、「嵐が丘」のストーリーを彷彿させるものがあります。この地にあってこそ生まれた「嵐が丘」と思いました。当時の平均寿命が30代ということで、ブロンテ家の人たちも牧師の父を除いて30代で亡くなっています。気候と、土葬の習慣がそうさせたとも思えますが、そら恐ろしく感じました。

 旅程の都合で、ブロンテ姉妹の過ごしたハワースには、30分か40分ほどしか居ることができなかった。ハワースでは、牧師館の内部とそれに連なる墓地、小さなミュージアムの売店と、街で一番古い家の居酒屋(ブロンテの兄がこの居酒屋の女主人に恋をして毎晩酔いつぶれたという店)とアポテーク(薬局)、それとヒースが9月の初めまでは咲いていた丘を遠く眺めただけであった。しかし、強烈な印象を残した街だった。ヒースの丘に登れなかったのが残念であった。

  ハワース
 「嵐ヶ丘」はここかと秋冷まといつつ

ブロンテ姉妹が住んでいたハワースを詠んだ句。作者は大学で英文学を学んだので、イギリスの地に思いは深い。「嵐ヶ丘」の舞台となったハワースは、日本の北海道よりもずっと北にある。日本を出国し、ロンドンに着いた翌日の句は、「嵐ヶ丘」の「秋冷」を実感として捉えた。(高橋信之)

○ウィンダミア
 ウィンダミアは、湖水地方にある。ハワースを後にし、「ピーターラビット」の作者で湖水地方の環境保全にも取り組んだビアトリックス・ポッターの暮らしたウィンダミアへバスは走った。湖水地方は、英国の自然詩人ワーズワースが暮らしたところでもある。ウィンダミアに到着すると、ウィンダミア湖へ10分ほどのところのパブで昼食となった。その日の朝、湖水で獲れたという鱒と野菜スープがメインの食事である。鱒はゆでただけ、じゃが芋、人参、あとはキャベツであったろうか、茹でただけ、としか思えない料理だった。これにテーブルに置いてある塩や胡椒をかけて食べる。野菜スープは、かすかに塩味がするだけ。私の子供たちの離乳食の飲ませた野菜スープの味に似ていた。まずいと言われるイギリスの代表的料理とも思えた。伝統を重んじるイギリスでは、調理方法も昔を引き継いでいたり、あるいは、ピューリタンの思想で、食べ物について、独特の考え、例えれば、おいしいとかまずいの観点ではなく、食べ物は生命を穏やかに維持するものであらねば、とかいう考えかもしれないと思った。エールというビールをよく飲むが、この日はエールはすでに先客たちに飲み干されてなかった。

 昼食後、ウィンダミア湖を巡る遊覧船に乗った。遊覧船乗り場には、白鳥がいて、人なれして餌をねだってくる。9月20日というのに、寒い。マフラーを出して首に巻く。湖水の波がひたひたと桟橋の下に寄せている。ヨットが繋がれ夏を楽しんだ形跡が見られる。遊覧船は何隻がいるが、しばらく待って乗った。湖水の景色がよく見えるように甲板のベンチに座ったが、湖上の寒さは日本の12月ごろ。マフラーをいよいよしっかり巻き、この寒さに対する薄着を後悔した。湖水の水はしずかに灰色、湖水を囲む丘には、白い壁の家がほどよい間隔で緑の中に建っている。ヨットが帆を斜めに傾けて走っているが、寒そうだ。湖水の水と、寒さと船と、そして点在する家とが、脳をささくれだたせるように記憶に残った。遊覧船をあがると、やはり観光地だ。丘をなしたところにホテルもあり、ゼラニユームやマリーゴールドが道を飾っていた。ドイツ旅行のときのライン下りは秀逸だったが、それと同じように楽しめるものと思っていた。主には寒さのために、のんびりもしておれなかった。ワーズワースの暮らしたところは、もう少し離れたところにある。春になるとラッファディルやブルーベルの花が一度に咲く。一面の花々が噴きだして咲くのを見てみたいと思った。

○ボウネス
 ウィンダミア湖から10分か15分緩い上り坂を歩いたところにボウネスの街があり、そこに、ビアトリックス・ポッターの資料館がある。ここは句美子が喜ぶ。ピーターラビットに出てくるウサギはもちろんのこと、マクレーガーさんの畑もある。マクレーガーさんの畑の野菜や林檎がレストランで料理が出されているということだった。ピーターラビットの世界が繰り広げられている。資料館を出て、坂を湖のほうへ下り、スーパーパーケットに寄った。お土産を買うつもりだ。ここでは、紅茶とリンツ(スイスのだけれど)のチョコレートとアカシアの蜂蜜を買った。紅茶は銘柄ながら安い。アカシアの蜂蜜はプラスティックボトルに入っていたが、帰国してから使うと、蓋に蜂蜜の切れをよくする仕掛けがあった。蜂蜜を注いでのち、上を向けると蜂蜜がすっと切れる。この蜂蜜をまだ元気だった母へのお土産にしたら、毎日喜んで食べたようだ。
ウィンダミア湖の駅からは列車が出ている。ほんのわずかの距離を走っているらしいが、カメラを向けたときは、列車は、駅を離れて、カーブを曲がるところで、降車口を開けたまま去っていたような気がした。

  ウィンダミア湖
 秋風にスワン吹かるる岸辺かな

 ▼ハワース:
http://taji-hm.la.coocan.jp/uk010106.html
 ▼湖水地方:
http://www.tabizora.net/travel/03_england/

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  阿蘇
★丈低きりんどう草に澄みてあり  正子
子供の頃、ふるさとの山に咲いていた竜胆を思い出します。3年前の秋、子供の仕事で行った妙高高原の鮮やかな竜胆を思い出しました。竜胆の茎は50cmを超すものもありますが、地面にくっつくくらいの低い種類もあります。どの種類もその鮮やかさは変わりありません。ほかの草たちがやや衰えた時期にもその鮮やかさは衰えません。「澄みてあり」はその有様をうまく表現されていると思います。花言葉は「悲しんでいるあなたを愛する」だそうです。(古田敬二)

○今日の俳句
★新しき色へすすきの開きけり/古田敬二
ほどけたばかりのすすきの穂は、くれないとも言えるようなみずみずしい色である。それを、「新しき色へ」と詠んだ。この「へ」は、一句のなかで、重要な一語となっている。(高橋正子)

◇生活する花たち「酔芙蓉・萩・女郎花」(横浜四季の森公園)


コメント

  1. 古田敬二
    2012年9月15日 19:49

    コメント
    丈低きりんどう草に澄みてあり 正子

    子供の頃、ふるさとの山に咲いていた竜胆を思い出します。3年前の秋、子供の仕事で行った妙高高原の鮮やかな竜胆を思い出しました。竜胆の茎は50cmを超すものもありますが、地面にくっつくくらいの低い種類もあります。どの種類もその鮮やかさは変わりありません。ほかの草たちがやや衰えた時期にもその鮮やかさは衰えません。「澄みてあり」はその有様をうまく表現されていると思います。
    花言葉は「悲しんでいるあなたを愛する」だそうです。