★草を出て草へ飛びけりきりぎりす 正子
最近では目につくことが珍しくなってしまったきりぎりす。子供の頃、鳴き声をたどって近づき、足の両脇からそっとつかんでとらまえたものだ。とらまえることができたのは僥倖でほとんど逃げられてしまう。追いかけたりしなければ草むら深く鳴き通すきりぎりす。ひょっとすると作者も捕まえようとして逃げられたのではないかと想像した。逃げられたら保護色でしばらくは見つけることは難しいものだ。一瞬姿を見せたきりぎりすの有様を平易に詠んでいるが、この句を読む人の心に残る句である。(古田敬二)
○今日の俳句
コスモスや鍬を休めばよく揺れる/古田敬二
鍬を使うのを休んでコスモスを眺めていると、コスモスは意外にも風を感じてよく揺れている。休めば、辺りの動きを感じやすくなる。コスモスの揺れがやさしい。(高橋正子)
○藪茗荷
[藪茗荷の実/東京小金台・国立自然教育園]_[藪茗荷の花と実/横浜・四季の森公園]
新宿御苑
★青い眼の青年子らと薮茗荷/高橋信之
横浜・四季の森公園
★花があり実があり藪みょうが楽し/高橋信之
東京小金台・国立自然教育園
★藪茗荷の青い実そこに未来がある/高橋信之
新宿御苑
★木下闇遠く一面藪みょうが/高橋正子
★藪みょうが実が青ければつくづくと/高橋正子
暑い盛り7月27日、熱中症で病院に運ばれる人も少なくないとき、気を付けて新宿御苑に行った。新宿御苑は、大木が茂り、直射日光を避けようと思えば避けられる。街中より、気温は2,3度低いと聞いた。確かにそうであった。その日見ごろとなっている植物に鬼百合、槿などがあって、それと並んで藪茗荷があった。はじめ、この植物を四季の森公園のプロムナードで目にして茗荷に似ているとは思ったが、名前は知らなかった。茗荷とは科が違うとある。木下などにつやつやした葉を群生して広げている。7月には、すっと伸びた茎の先に白い小さい花を咲かせる。新宿御苑の藪茗荷も一面に、遠くまでと言おうか群生して白い花を咲かせていた。それから8月になって四季の森公園へ行ったが、いつもと違う道を通った。植えたのか、自然に生えたのか民家の庭に藪茗荷が青いきれいな実をつけていた。竜の玉より濃い紺に近い青色で、竜の玉より大きい。ちょっと違う道を通れば、いつもなにか新しいものが見れる。
ヤブミョウガ(薮茗荷、学名 Pollia Thunb)は、ツユクサ科ヤブミョウガ属の多年生草本植物である。東アジア(中国、朝鮮半島、台湾、日本)に分布し、日本では関東地方以西の暖地の林縁などに自生するが、湿気の多い土地を好む。5月頃から発芽し、夏にかけて草丈 50cm〜 1m 前後に生長、ミョウガに似た長楕円形の葉を互生させ、葉の根元は茎を巻く葉鞘を形成する。葉は茎の先端部分だけに集中する。なお本種の葉は表面がざらつくところ、葉が2列に出ないことなどでミョウガと区別できる。なお、ミョウガはショウガ科であり、花の構造は全く異なる。8月頃になると茎の先端から花序をまっすぐ上に伸ばし、白い花を咲かせる。花には両性花と雄花があり、前者は白い雌蘂が目立ち、後者は黄色い葯の付いた雄蘂が目立つところで判別できる。白い花弁が 3枚、萼も白く 3枚、雄蘂 6本、雌蘂 1本で、花冠の直径は 8mm 程度である。
花が終わると初秋にかけて直径 5mm 程度の球状の実を付け、じきに葉を落とす。実は若いうちは緑色で、熟すと濃い青紫色になる。この種子のほか、地下茎を伸ばしても殖え、群生する。若芽は、初夏の葉が開ききらないうちに採取し、塩茹でしてそのままで、または炒め物や汁物などにして食用にされる。
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草を出て草へ飛びけりきりぎりす 正子
最近では目につくことが珍しくなってしまったきりぎりす。子供の頃、鳴き声をたどって近づき、足の両脇からそっとつかんでとらまえたものだ。とらまえることができたのは僥倖でほとんど逃げられてしまう。追いかけたりしなければ草むら深く鳴き通すきりぎりす。ひょっとすると作者も捕まえようとして逃げられたのではないかと想像した。逃げられたら保護色でしばらくは見つけることは難しいものだ。一瞬姿を見せたきりぎりすの有様を平易に詠んでいるが、この句を読む人の心に残る句である。