■9月ネット句会入賞発表■

■9月ネット句会■
■入賞発表/2013年9月9日■

【金賞】
★稲の香の風に放たれ刈られゆく/柳原美知子
熟れ稲の香が田に満ちて、刈るたびにその香が風に放たれてゆく。一株一株鎌で刈り取られているのだろう。爽やかな風の吹く晴れた日の稲刈りが想像できる。(高橋正子)

【銀賞】
★稜線のくっきり帰燕の空となり/佃 康水
山の稜線がくっきりと見える空気の澄んだ季節。空の色は深まり燕は南の国へ帰ってゆく。さびしさとともに色の深まる空である。(高橋正子)

【銅賞/2句】
★浜に立ち他所の空から遠花火/迫田和代
遠い空に花火があがる。その花火のあがる空からすれば、作者が立つ浜の空は、他所の空なのだ。遠花火の世界が、こちらとは別の美しい世界として存在する。(高橋正子)

★素焼き乾す庭へすいっと秋茜/佃 康水
素焼きを乾す庭に秋茜がすいっと飛んできた。素焼きの素朴さが秋の空気の透明感を感じさせてくれる。立体的な句となっている。(高橋正子)

【高橋信之特選/8句】
★結納の支度整う白露の日/藤田洋子
結納の支度との事ですから、ご子息さまのご結婚でしょうか?9月8日の大安の前の7日の土曜日が白露の日。みほとりがすっかり涼しくなり、秋めいて静謐なる中での慶事が想われ 身の引き締まるほどの喜びが伝わります。 (桑本栄太郎)

★稜線のくっきり帰燕の空となり/佃 康水
すっきりとした秋空の大景が好ましいと思います。(河野啓一) 
燕が帰る。いままで身近に感じていた燕だったが、広い世界を旅する偉大な生き物なのだと気づく。くっきりと澄んだ秋の空に旅立つ燕に対して、畏敬の念を感じました。(安藤智久)

★浜に立ち他所の空から遠花火/迫田和代
朝晩は過ごしやすくなってまいりました。浜で涼んでいると何処からか遠くに花火が見える。夏も過ぎてゆくのですね。(祝恵子)

★落鮎に河の雫のきらめける/高橋正子
産卵のために川を下る鮎は生涯最後の旅ともなるのですね。その鰭に跳ね上げられ、鱗をなめる水の流れはいよいよ清らかに輝きます。 (小西 宏)

★長皿の鮎にまっすぐ黄色い線/高橋句美子
長いお皿には背鰭尾鰭に塩を打った香ばしい鮎の姿焼きが盛られています。真っ直ぐな黄色い線を残したとても新鮮な鮎を想起させ、まさに旬の味を楽しまれたことでしょう。美味しそうです。(佃 康水)
脂ののった鮎には黄色い線が輝き、おいしそうです。この季節ならではのご馳走です。下五は字余りですが、一句がすっきりとして新鮮です。 (井上治代)

★新涼や青磁の花瓶透かし彫/小口泰與
涼しい風の中で、青磁の花瓶に生けられた花が揺れています。「新涼」・「透かし彫」の言葉から透明な美しさを感じ、涼しさが増すようです。 (井上治代)

★素焼き乾す庭へすいっと秋茜/佃 康水
★稲の香の風に放たれ刈られゆく/柳原美知子

【高橋正子特選/8句】
★港から天に向かいて秋の虹/高橋秀之
大きな虹がかかりました。その虹は明るい未来への架け橋となってくれることを願います。雄大で美しい景色を想像することができました。(井上治代)

★稜線のくっきり帰燕の空となり/佃 康水
秋めいて来ると空気も澄んで稜線もくっきり見えてくる。そろそろ燕も南へ帰る頃山々が旅立ちを祝している景。 (古賀一弘)

★みどり児のうまいいとしく銀河濃し/小川和子
お孫さんがご誕生になられ、すやすやと眠って居られる寝姿は可愛くてしかた有りません。家族皆の幸せですね。澄み渡った空は益々煌めいています。おめでとうございます。 (佃 康水)

★稲の香の風に放たれ刈られゆく/柳原美知子
風に放たれる稲の香が芳しく清々しく、早くも刈取りを迎えた稲田に、実りの秋の喜びがあふれます。 (藤田洋子)

★蕎麦の花伸びれば覗く空の青/下地鉄
一面に広がる蕎麦の花の白、その眺めはとりもなおさず抜けるような空の青の広がりでもあります。 (小西 宏)

★鈴懸の黄葉し初むる広き道/小西 宏
広い道が続く、鈴懸並木を想像しております。黄葉(もみじ)し初めてきて、秋が徐々に深まっていくのでしょうね。(祝恵子)
「鈴懸の」措辞に美しい詩情を感じます。広い街路地へ植えられているプラタナスが夏の風情を残しながらも黄葉しはじめました。そしてやがて落ち葉して空一杯にあの鈴懸の実が見られるのももう直ぐです。(佃 康水)

★素焼き乾す庭へすいっと秋茜/佃 康水
★浜に立ち他所の空から遠花火/迫田和代

【入選14句】
★朝顔の種とる夕べ次の代思う/河野啓一 
朝顔の種を取る時期になりました。来年、またこの種を植えて新しい朝顔が育つ。そんなことを思いながら種を取る夕べは、涼しくなった秋の夕べです。 (高橋秀之)

★秋の旅しているつもり日本地図/ 祝恵子
是非あそこ、ここと決めてかかる夏や冬の旅ではない。気の浮き立ち、すぐにでも飛び出したくなる春でもない。ゆっくりと、地図を見ながらさまざまな場所の秋に思いを馳せる。それだけで心満たされるときもある。そんな余裕のある詠いぶりが楽しい。 (小西 宏)

★篭盛りの秋茄子縁より届けらる/柳原美知子
マンションではこうもいかないでしょうが、篭に入れた秋茄子が縁側から届けられたお付き合いが嬉しいですね。 (祝恵子)

★朝顔の種とる夕べ次の代思う/河野啓一 
朝顔の種を取る時期になりました。来年、またこの種を植えて新しい朝顔が育つ。そんなことを思いながら種を取る夕べは、涼しくなった秋の夕べです。 (高橋秀之)

★子の名前考え始む虫の夜/安藤智久
初めてのお子さんの誕生がだんだん近づいてきているのでしょう。名前を考えるというのは、父親として最初の仕事ですね。あれこれ思いをはせながら思案されるのもかけがえのないひとときと思います。 (多田有花)

★唐黍を囓る反っ歯の童かな/古賀一弘
反っ歯だったら唐黍を齧れば調子いいでしょう。思わず顔が崩れます。とても楽しい句ですね。(迫田和代)

★孫生れし報のやすらぎ涼新た/小川和子
待望のお孫さんが無事誕生された安堵感と喜びが、より一層の新涼を感じさせてくれます。おめでとうございます。(柳原美知子)

★ゆらゆらと日なたの方へ秋の蝶/井上治代
ようやく涼しくなってきました。蝶を見る私たちの目も少し違ってきます。日向をやわらかなものと見る目が戻ってきて、秋蝶の動きも温みを求めてゆったりと翅を動かす、愛おしいものと見えてきます。 (小西 宏)

★お勤めの木魚聞こゆる白露かな/桑本栄太郎
今年は残暑がことのほか厳しく、白露となってようやく秋が定まってきた感じです。その中で聞こえてくる木魚の音、秋の空気の中でなにやらほのぼのとした感覚を感じます。 (多田有花)

★秋の朝行き交う人あり手を振って/河野啓一
涼しくなって、青空も高くなりはじめた朝、出会った人が挨拶の手を振りながら通っていきます。すがすがしい朝の情景です。 (多田有花)

★森を抜け丘を目指せば彼岸花/祝恵子
猛烈な残暑がようやくおさまりました。すると早くも彼岸花が咲き始めています。丘に通じる道の一角で揺れるあの赤い花。秋の象徴です。 (多田有花)

★二〇二〇年の暦を見る秋/多田有花
目出度くオリンピックが東京へと決まり沸き立っております。きっとカレンダーを見て、7年先の未来?のことやチエックをされているのではと思ったりしています。(祝恵子)

★天高し友の訃報を胸に抱き/矢野文彦
どこまでも高く、澄み渡った青い空。友の訃報を知り、なおさら空の青さが身に沁みます。友との懐かしい思い出がよみがえります。 (井上治代)

★今朝の秋梢をわたる風の声/渋谷洋介
立秋を迎える朝、梢を吹きぬける風が清々しいかぎりです。炎暑の夏を越せばこその秋の到来の喜びが、新鮮な「風の声」に感じとれます。 (藤田洋子)

■選者詠/高橋信之
★秋陽降る森の葉っぱを透かせ降る
秋の太陽は空気か乾燥しているので照り方が激しくひざしは秋とは言いながら強く森の木々の葉っぱを透かしている。秋の素晴らしい景ですね。 (小口泰與) 
秋陽の心地よさが遺憾なく表現されで好きな句です。 (下地鉄)

★秋蝉じじと鳴く森の中へ中へ
★虫が鳴くその奥にまた虫が鳴く

■選者詠/高橋正子
★落鮎に河の雫のきらめける
産卵のために川を下る鮎は生涯最後の旅ともなるのですね。その鰭に跳ね上げられ、鱗をなめる水の流れはいよいよ清らかに輝きます。 (小西 宏)

★尾も鰭も澄みたる色の下り鮎
下り鮎(落ち鮎)を余り見た事が無かったのですが、地方紙の中国新聞のフェイスブックの写真を見てしっかり理解出来ました。水流を堰き止めて、流された鮎が簗の上で美しい色をした尾や鰭でぴちぴちと飛び跳ねて居る光景は将に感動そのものです。(フェイスブックにシェアしました。) (佃 康水)

★灯ともして子ども声よ鉦叩

■互選高点句
●最高点(9点)
★稜線のくっきり帰燕の空となり/佃 康水

●次点(7点)
★稲の香の風に放たれ刈られゆく/柳原美知子

※集計は、互選句をすべて一点としています。選者特選句も加算されています。
(集計/藤田洋子)

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コメント

  1. 柳原美知子
    2013年9月9日 16:56

    お礼
     信之先生、正子先生、9月ネット句会を開催していただきありがとうございました。各地の爽やかな秋の到来や皆様のお慶び事を嬉しく読ませていただき、かけがえのない
    ひとときを過ごさせていただきました。
     「稲の香」の句に思いがけず両先生の特選と金賞を賜り、正子先生の素晴らしいご講評をいただき、ありがとうございました。大変嬉しく今後の励みと致します。
    「秋茄子」の句も入選句に加えていただきお礼申しあげ
    ます。
     「稲の香」の句に、藤田洋子様には素敵なコメントを、小西宏様、桑本栄太郎様、小口泰與様、古賀一弘様には、選をいただき、ありがとうございました。
     「秋茄子」の句に、祝恵子様には温かいコメントをいただき、ありがとうございました。
     藤田洋子様、スタッフの皆様、お世話になり、ありがとうございました。

  2. 桑本栄太郎
    2013年9月9日 17:29

    御礼
    高橋信之先生、正子先生
    9月インターネット句会を開催お世話を頂き、「白露」の句を入選句にお選び頂きまして大変有難うございます。祝 恵子様には同句に貴重なる選を、多田有花様には素敵なコメントをお添え頂き大変有難うございます。藤田洋子様にはお忙しい中、いつもお世話を頂戴しまして厚くお礼申し上げます。又、当番スタッフの皆様には大変お世話になり有難うございます。
    9月に入り、漸く秋めいた光景を各地から会員の皆様の投句を通じ、大変楽しませて頂きました。
    皆々様大変有難うございました。

  3. 小川和子
    2013年9月9日 18:12

    お礼
    信之先生、正子先生
    9月ネット句会を開催頂きましてありがとうございました。句会では、「銀河濃し」の句を正子先生の特選に、「涼新た」の句を入選にお採りくださいましてお礼申し上げます。佃 康水様には「銀河濃し」の句に選と嬉しい、素敵なコメントをお寄せ頂き有難うございます。柳原美知子様には「涼新た」の句に選と温かい、お心のこもったコメントを頂きまして有難うございます。藤田洋子様、各スタッフの皆様には今月もお世話になりました。皆様本当にありがとうございました。

  4. 祝恵子
    2013年9月9日 18:56

    お礼
    信之先生、正子先生、9月ネット句会の開催をありがとうございました。入選句に「秋の旅」[彼岸花」をお取りいただきましてありがとうございました。
    迫田和代様、小口泰與様、には「秋の旅に選を、小西 宏様には、選と素敵なコメントをありがとうございました。
    河野啓一様、桑本栄太郎様には「彼岸花」に選を頂きましてありがとうございました。
    藤田洋子様、ご多忙中にお世話さまになりました。

  5. 井上治代
    2013年9月9日 19:02

    お礼
    信之先生、正子先生
    9月ネット句会を開催して頂きましてありがとうございます。「秋の蝶」の句を入選にお選び頂きましてありがとうございます。小西宏様には丁寧なコメントを頂きましてありがとうございます。「白木槿」の句に小西宏様、迫田和代様の選を、「秋の蝶」の句に高橋秀之様、下地鉄様の選を頂きましてありがとうございます。藤田洋子様集計等のお世話をいつもありがとうございます。
    パソコンの都合で7月、8月のネット句会の時に、私の句への選やコメントを頂きながらお礼が言えなかったこと、この場をかりてお詫び致します。また、温かいコメントをありがとうございました。

  6. 佃 康水
    2013年9月9日 19:03

    お礼
    高橋信之先生 高橋正子先生
    9月ネット句会を開催頂きまして有難うございました。「帰燕」の句と「秋茜」の句を両先生の特選に、そして「帰燕」の句を銀賞に「秋茜」の句を銅賞にお採りくださいまして吃驚しております。そして正子先生には素晴らしい講評を賜り心より感謝と御礼申し上げます。今後の励みと致します。 古賀一弘様 安藤智久様には「帰燕」の句への選と素敵なお言葉を頂き有難うございます。高橋秀之様 河野啓一様 多田有花様 下地鉄様 桑本栄太郎様 には貴重な選を有難うございました。また、小口泰與様 井上治代様には「秋茜」の句へ貴重な選を有難うございました。

  7. 御礼
    2013年9月9日 19:58

    小口泰與
    高橋信之先生、正子先生
    9月ネット句会を開催して頂き有難う御座いました。
    また、スタッフの皆様には大変お世話になりました。有難う御座いました。
    高橋信之先生の特選8句の1句に「新涼」の句をお取り上げ頂き有難う御座いました。
    両先生には、今後ともよろしくご指導の程お願い申し上げます。
    井上治代様「新涼」の句に素晴らしいコメントを頂き有難う御座いました。

  8. 小西 宏
    2013年9月9日 20:28

    お礼
    高橋正子先生
    「鈴懸の黄葉(もみじ)し初むる広き道」を【高橋正子特選/8句】にお選びくださり、たいへんありがとうございました。まだ暑さの残るこの頃ですが、もうプラタナスのなかには黄葉しはじめ、葉を落とすものがあります。広い道路や緑の芝にカサカサと音させ、いい風情です。
    祝恵子さま、佃康水さま、あたたかなお言葉をお寄せくださり、とても嬉しく思っております。

  9. 高橋秀之
    2013年9月9日 22:17

    お礼
    高橋信之先生、高橋正子先生
    9月ネット句会を開催していただきましてありがとうございました。
    藤田洋子様はじめ当番スタッフの皆様、お世話をいただきありがとうございました。

    高橋正子特選/8句に「港から天に向かいて秋の虹」の句をお選びくださりありがとうございます。
    井上治代様にはコメントと選をいただき、桑本栄太郎様、河野啓一様、祝恵子様、多田有花様には選をいただきましてありがとうございました。

  10. 藤田洋子
    2013年9月9日 22:43

    お礼
    信之先生、正子先生、9月ネット句会、お世話になりありがとうございました。
    信之先生、特選句に「白露の日」を取り上げていただき大変ありがとうございました。選んでいただけたこと、とても嬉しく、この日の何よりの喜びとなりました。
    桑本栄太郎様、「白露の日」の句に、このような温かなコメントと選句をいただきありがとうございました。古賀一弘様、安藤智久様、選句をいただきありがとうございました。
    多田有花様、「白露の雨の粒」の句に選句をいただきありがとうございいました。

  11. 多田有花
    2013年9月10日 9:20

    お礼
    信之先生、正子先生、9月ネット句会を開催いただきありがとうございました。
    藤田洋子さま、集計のご苦労をありがとうございました。

    「二〇二〇年の暦を見る秋」を入選句にお選びいただきありがとうございます。
    祝恵子さま、コメントをいただきありがとうございました。
    東京五輪の日程を見ながら、真夏だけど大丈夫なのかなと思いました。

    佃康水さま、「空模様なかなか定まらぬ白露」に選をいただきありがとうございます。
    九月の第一週は大荒れのお天気でした。白露の日はめまぐるしく空模様が変わりました。

  12. 迫田和代
    2013年9月10日 10:51

    お礼
    信之先生
    正子先生
    9月ネット句会を開催いていただき その上(遠花火)の句に 銅賞 両先生の特選句にお入れ戴くとは嬉しがり屋の私です。お恥ずかしいほど嬉しいです。有り難う御座いました。

    藤田 洋子様 当番スタッフの皆様
    何時も御世話様です。心より感謝しております。

  13. 祝恵子
    2013年9月11日 10:07

    お礼
    多田有花様、(彼岸花)に嬉しいコメントを添えていただきありがとうございました。