5月21日~5月31日(転記)

5月31日(4名)
川名ますみ
また晴れし十三回忌青葉風★★★★
命日の夕べざくざくきゃべつ切る★★★★
ざくざくきゃべつを切っている夕べ、亡くなられた人の小さなことが、つぎつぎ心に浮かんでくる。それを打ち消すような「ざくざく」という音の感じが言い表しがたい思いを伝えてくれている。(髙橋正子)
まだ知らぬ父の話を夏の日に★★★

小口泰與
百本の薔薇や小雨に暮るる庭★★★
嬬恋の朝の冷気や桷の花★★★
落人の里の湯宿や栗の花★★★

多田有花
朝散歩皐月躑躅にあいさつを★★★
モーニングコーヒー薔薇咲く庭に座し★★★
山法師咲く新築の家の庭★★★

桑本栄太郎
あじさいの石垣被う今朝の雨(原句)
あじさいの石垣被い今朝の雨★★★★(正子添削)
石垣に垂れ下がるように咲いたあじさい。石垣を被い尽くしている。そこに雨がかかり、みずみずしい色に輝いている。「石垣」が効いている。(髙橋正子)

雨足の午後より晴れて五月尽★★★
子供等の遊び声聞く夕薄暑★★★

5月30日(3名)

小口泰與
ハンカチの花や山風吹き抜ける★★★
清流の岸辺治むる九輪草★★★
天窓を解放せしや棕櫚の花★★★★

多田有花
夏つばめ何度も翼ひるがえし★★★
巣作りの燕は早し夏の朝★★★★
夏の朝のすがすがしさの中で、せっせと巣作りする燕の姿に人間的なものが見える。(髙橋正子)

夕刻や初ほととぎす遠く鳴き★★★

桑本栄太郎
緑蔭のつづく並木やバス通り★★★
信号の影に身を寄す片かげり★★★
湯に浸かりブリキの金魚浮いて来い★★★★

5月29日(3名)

小口泰與
石楠花の蕊の長きや雨の朝★★★
青鷺の岸辺離れず川の水★★★
渓流の曲がりくねりて鮎遡上★★★★

多田有花
虚空飛ぶ巣を失いし夏つばめ★★★★
夜も未だ明けぬうちより不如帰★★★
夏つばめ軒下に三羽集いおり★★★

桑本栄太郎
浜寺の潮騒聞こゆ晶子の忌★★★★
堺市生まれの情熱の歌人与謝野晶子は、浜寺で催された歌会で初めて鉄幹と出会ったと言われる。白砂青松の風光明媚な浜寺公園には晶子の次の歌碑がある。
ふるさとの和泉の山をきはやかに
             浮けし海より朝風ぞ吹く 与謝野晶子

これらの情景や事情を踏まえた忌日俳句。「潮騒聞こゆ」が効果的。(髙橋正子)

葵咲く庭の認可の保育園★★★
あじさいの早やも咲きたる園の庭 ★★★

5月28日(2名)

小口泰與
萍や愚かに日日を過ごしけり★★★★
萍が増えるころ、日々がいたずらに過ぎていくような気がする。萍が浮くようにどこか力が入りきらない感じになる。よりよく生きようとする気持ちが「愚かに」という感覚を誘いだしてしまったのだろう。(髙橋正子)

うすばかげろう子犬逝きしは寅の刻★★★
隠り沼の日影の草に糸蜻蛉★★★

桑本栄太郎
秘めやかな箱根卯木や紅と白★★★
くつきりと罪の自覚か花柘榴★★★★
池渕の底の破れや牛蛙 ★★★

5月27日(3名)

小口泰與
青蔦や朝夕浅間を仰ぎける★★★
縄文の人の面輪や雲の峰★★★
大利根の叫ぶ白波走り梅雨★★★

多田有花
挨拶す薔薇香らせる家の前★★★★
きれいに薔薇を咲かせている家の前で偶然知人に会って、挨拶を交わす。薔薇の香りの漂うところで、挨拶する人も、その挨拶も明るく華やいでかぐわしい感じがする。(髙橋正子)

夏燕わが眼前を近く飛ぶ★★★
町はまだ眠りの中に明早し★★★

桑本栄太郎
茄子漬の紺のゆるみの朝餉かな★★★★
坂道を登り病院サングラス★★★
涼風のZOO句会や夜の窓★★★

5月26日(3名)

小口泰與
斑猫や杣道駆けるマルチーズ★★★
玉虫やかって栄華の呉服店★★★
空蝉やシルバーカーの二人連★★★

多田有花
<JR観光列車花嫁のれん三句>
天清和地に金箔の列車ゆく★★★
早苗田がやがて車窓に広がりぬ★★★★
麦秋の能登路を花嫁のれん号★★★★
「花嫁のれん」号は、金沢と和倉温泉を走る観光列車。加賀友禅のような絵模様が描かれ、花嫁衣裳のような列車。婚礼の日に花嫁の幸せを願ってのれんが送られる風習にならっての列車名。「麦秋の能登路」がいかにもふさわしい。(髙橋正子)

桑本栄太郎
あじさいのつぼみぶつぶつ呟けり★★★
花びらの青き目覚めや四葩咲く★★★★
午後よりの雨の予報の溽暑かな ★★★

5月25日(3名)

小口泰與
発条の玩具の如き夏雲雀★★★★
発条の巻きが弾けほどけるように、小さい体が弾けるように夏空に鳴く雲雀。
さらに高みを目指す雲雀の快活さが楽しい。(髙橋正子)

納戸より昭和の初期の冷蔵庫★★★
一陣の風に鼓虫水中へ★★★

多田有花
<JR観光列車花嫁のれん三句>
花嫁のれん五月のホームに藤咲けり★★★
夏きざす車体に金色惜しみなく★★★
初夏や海山の幸弁当に★★★★

桑本栄太郎
カーテンを引いて峰なる朝曇り★★★
曇れども溽暑の空となりにけり★★★
楓葉の透けて揺れ居り夕薄暑★★★★

5月24日(3名)

小口泰與
銭湯の白きタイルや大夕焼★★★★
昭和の時代が懐かしさとともに蘇る。昭和の匂いまでしてきそう。銭湯の白いタイルと大夕焼けがいやでも昭和を感じさせてくれる。(髙橋正子)

雷鳴や農婦の手足ねこ車★★★
上州の畑塗り潰す麦畑★★★

多田有花
<和倉温泉三句>
温泉に小さき港夏浅し★★★★
北陸路の旅の情緒がよく出ている。「小さき港」が手のひらにのるような
愛おしさがあって、「夏浅し」が効いている。(髙橋正子)
弁天崎源泉公園あやめ咲く★★★
足湯する人と歓談若楓★★★

桑本栄太郎
つる薔薇の赤き垣根の隘路行く★★★
影揺るる鋪道となりぬ若楓★★★★
真夏日の今日の仕舞いの茜かな★★★

5月23日(3名)

小口泰與
軽トラを逃る田道の雨蛙★★★★
手に載せる朝の薬や雲の峰★★★
榛名嶺も湖も眼間時鳥★★★

多田有花
<和倉温泉 能登海舟三句>
空間は贅沢の基夏きざす★★★
晩餐の如き朝食夏始め★★★
海静か正面に初夏の能登島を★★★★

桑本栄太郎
老鶯の朝の森なり風の歌★★★★
老鶯の声が伸びやかな朝の森。涼しい風が吹いて老鶯の歌はまさに風の歌となって届いて来る。(髙橋正子)

ベランダの二鉢咲きぬ薔薇の花★★★
風吹けば風のむらさき紫蘭かな★★★

5月22日(2名)

小口泰與
翡翠のいつもの枝や山の宿★★★
遡上せる斑の光たる山女かな★★★
野放図の柔き泳ぎの目高かな★★★★
飼っている目高だろう。夏になると元気になり、野放図なほど奔放で自由な動きを見せる。見ていると面白くて飽きない。(髙橋正子)

多田有花
<和倉温泉 能登海舟三句>
夏の夕海の色したカクテルを★★★★
夏の海正面にして晩御飯★★★
夏の朝三種の貸切露天風呂★★★

5月21日(2名)

小口泰與
鉄線や風に浮きたる飛行船★★★
早々と一枚着込む走り梅雨★★★
赤城嶺の雲の切れ間や桐の花★★★★

多田有花
<金沢21世紀美術館>
加賀友禅五月の光に揺れる椅子★★★
<金沢から和倉温泉へ>
能登かがり火植田の中を走りゆく★★★★
「能登かがり火」というJRの列車名。植田の中を走る列車が見せてくれる風景は、日本の真髄と言える風景。「かがり火」のイメージが植田を走るのもまたいい。(髙橋正子)

<和倉温泉>
大橋がかかる初夏屏風瀬戸★★★


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