10月11日~20日

10月20日(3名)

小口泰與
新そばの細き仕上り古暖簾★★★★
今日の昼、信州の新蕎麦を封を切って食べたが、驚いたことに蕎麦はこれまでになく「細き仕上がり」なのだ。老鋪の新そばは、切れがあって、格別であろう。(高橋正子)

木道の果たて小沼の鴫の声★★★
日矢差すや雨後の黄菊の水玉へ★★★

廣田洋一
取り置きし豆腐を前に生姜摺る★★★
葉生姜やいつも買ひ置き酒の友(原句)
葉生姜や買ひ置きたりて酒の友★★★★
「いつも買ひ置き」では、季節感が薄れます。俳句は「今」を読みます。「ただ、今」が勝負です。
葉生姜のみずみずしさと、とくとくと汲まれる酒。いい風趣がある。「葉生姜や手に取るからに酒の事/白雄」の句もある(高橋正子)

豚肉の味を引き締め生姜焼★★★

桑本栄太郎
雨降るや坂道蔽う萩は実に★★★
天辺の雨に色づく庭の柿★★★
殊更に雨に明るし泡立草★★★★
泡立草の黄色は目立つ色なのだが、雨が降ると辺りの草色の中でひときわ黄色が目立つ。「雨に明るし」は言い得た。(高橋正子)

10月19日(4名)

●廣田洋一
塀越しに香り流れる松手入★★★★
松手入の句に「松手入せし家あらむ闇にほふ/中村草田男」がある。嘗て四国松山の郊外に住んでいた頃は、百坪を少し超える敷地に住んでいたので、門脇には、松を植えていた。そこで二人の子供達を育てた。季節の「松手入」が」懐かしい。(高橋信之)

枝ぶりをためつ眇めつ松手入★★★
思い切り切って落とせり松手入★★★

●小口泰與
秋晴や感謝で終る商談会★★★
葉末にて蟷螂の斧たてており★★★★
端近の我を呼びけり金木犀★★★

●多田有花
秋曇まっすぐ城と向かい合う★★★★
城は姫路城なのかと思う。晴れの日なら城は陽の光を反射して輝いている。見るというより眩くて眺める。曇っていると、城の陰影までも見届けられる。だから、「まっすぐ城と向かい合う」となる。面白い気づきだ。(高橋正子)

熟れし田に秋の長雨容赦なく★★★
背高泡立草長雨に濡れて★★★

●桑本栄太郎
水匂う雨の匂いや秋湿り★★★
秋雨やこの道ゆかば故郷へ★★★
バスを待つ間も匂い来る金木犀★★★★

10月18日(4名)

●小口泰與
朝刊のバイクの音や金木犀★★★
爽やかや小沼の端というところ★★★★
つとつうと鴫の嘴より雫かな★★★

●廣田洋一
雨吸ひて香り失せたる金木犀★★★
金木犀散りては墓を明るくす★★★★
親の墓、先祖の墓が明るい。死者を弔う子や孫らの優しい心情が嬉しい。(高橋信之)

金木犀香りゆかしきクラス会★★★

●多田有花
雨やめば鵙の高鳴き響きけり★★★
新米の粒が光りし夕餉かな★★★★
昔の話になったが、終戦前後の都会生活を思い出した。大阪生まれで、中国大陸(旧満州大連)育ちの私にとっての
終戦前後の生活は、厳しかった。米を食べることはできなかった。それでも、旧制中学2年の私は、同学年の250人あまりの生徒の指揮を執って行進をした。その中には東大に進学した者も何人か居た。妻の又従弟もその中の一人である。(高橋信之)

秋雨の止み間すかさずテニスする★★★

●桑本栄太郎
天辺の紅葉し初めり雨の木々★★★★
何処からか木犀の香や建仁寺★★★
辻に出で何方へ行かん刈田道★★★

10月17日(5名)

●小口泰與
渡り鳥妙義山(みょうぎ)の美しき奇岩かな★★★
湧窟の水澄みにけり橅の森★★★★
木木の中被さって来ぬ鵯の声★★★

●廣田洋一
白蛇神てふ真白き蛇や穴惑ひ★★★
ちょろちょろと舌を出しつつ穴惑★★★
蛇穴に乾ききったる遊水池★★★★

●多田有花
馬の耳蛙の面が欲しき秋★★★
今週は雨つづきなり冬用意★★★★
秋霖や家に籠もりてよしなしごと★★★

●桑本栄太郎
みどりなる中に紅葉やアメリカ楓★★★
船頭の竿の捌きやもみじ川★★★★
竿差して保津川下る紅葉かな★★★

●川名ますみ
秋晴の風にふくらむラッパ袖★★★★
ラッパ袖は、今年の流行らしくよく見かける。袖口がラッパのように開いてやわらかく波打って女性らしいデザインだ。秋晴れの日、袖が風にふくらんで爽やかだ。流行りの服であることも、楽しさを呼んでいる。(高橋正子)

早朝に酔芙蓉提げ人来る★★★
来客の遠き庭より酔芙蓉★★★

10月16日(4名)

●小口泰與
紅葉の便りへ羽搏つ我が髪膚★★★
逆光の薄を刷きし川の風★★★★
落鮎の鍍金剥げたる魚籠の中★★★

●多田有花
鳥取から今年最後の梨売りに★★★★
明快な一句だ。リズムがいい。上五、中七、下五それぞれのイメージが平明で、作者の思いが直に伝わってくる。嬉しい句だ。(高橋信之)

男ならヤッサかきたし秋祭★★★
秋霖のゴミ出し場に二羽の鴉★★★

●廣田洋一
体育は稲刈りですよ六年生★★★★
小学生の子どもにもわかる句だが、大人が読んでも秀句だ。(高橋信之)

陛下の稲刈りされる匂ひかな★★★
稲刈機刈り残したる四隅かな★★★

●桑本栄太郎
雨降れば雨に明るき泡立草★★★
いみじくも鬼の貌なり芙蓉の実★★★
稲架並び子等の遊びやかくれんぼ★★★★
懐かしい風景だ。昔は、誰もが体験したことであろうと思う。(高橋信之)

10月15日(4名)

●多田有花
晩秋の森に熊注意の看板★★★
俳句には長すぎる名よ背高泡立草★★★
秋の雨静かに降りて静かにやむ★★★

●廣田洋一
咲き残る花に末期の秋の雨★★★
音もなく色もなく降る秋の雨★★★
街灯の照らす細糸秋の雨★★★★

●小口泰與
一斉に団栗落つる音したり★★★★
団栗が何事が起ったかのように、一斉にぱらぱらと落ちる音に出会うことがある。風のせいかもしれないが、驚くことである。(高橋正子)

石仏の定かに見ゆる刈田かな★★★
末枯や魚下りし魚野川★★★

●桑本栄太郎
秋愁や咽に小骨の病院へ★★★
雨降れど香り確たり金木犀★★★★
金木犀の香りは、遠くからでも匂ってくる。確かに金木犀が匂ってくる。正に「確たり」であって、いい言葉だ。(高橋信之)

鳴くものの終いとなりて秋深む★★★

10月14日(4名)

●小口泰與
稲掛けて夕映えの浅間望みけり★★★★
稲掛けを終えて一息いれたところに浅間山の美しい夕映えが眼に映った。夕映え景色に今日一日が和むひと時。(高橋正子)

登校の列の伸ぶとこ金木犀★★★
紅葉追い写真に執し放下せず★★★

●廣田洋一
大鯉や池を横切る秋の昼★★★★
逆さ富士静まり返る秋の水★★★
墓の名を探して歩く秋の昼★★★

●多田有花
放置することに決まりし秋の雨★★★
秋雨の病院へ続く車の列★★★
石橋のかかる流れに杜鵑草★★★★
石橋、流れ、杜鵑草が互いに響きあって、静かな秋の透明感が出ている。(高橋正子)

●桑本栄太郎
赤き羽根胸に選挙や演説人★★★
山里の昼の鎮まり添水鳴る★★★★
いみじくも貌の鬼なり芙蓉の実★★★

10月13日(4名)

●谷口博望(満天星)
木に登る冬瓜いつか豚となり★★★
目を奪ふブラシの赤や狂花★★★
日の方へ黄色濃くなる楝の実★★★★
楝(おうち)は栴檀の古い言葉。秋に実が熟れて丸く薄い黄色の実を花火のようにつける。晴れた青空のなかで、日に輝いている様子は特に美しい。「日の方へ」でこの句が生きた。(高橋正子)

●小口泰與
きざはしの何処か幽かきりぎりす★★★
風に乗る木犀の香の身のほとり★★★★
下り鮎見ゆるほどなり鳶の笛★★★

●多田有花
快晴や隣家の柿の日ごと熟れ★★★
新しきガラス戸越しに秋陽さす★★★★
ガラスはいつも同じように思えるが、新しいガラス戸がはまり、住まいがリフレッシュされた。秋の陽差しをよく通してうれしい限りだ。冬に向かってガラス戸越の陽差しが楽しめる。(高橋正子)
秋霖となる週末の天気予報★★★

●廣田洋一
多国籍の屋台連なるお会式かな★★★
尾びれ振り水面揺るがす秋の鯉★★★★
万灯は鯛提灯や勝浦講★★★

●桑本栄太郎
朝顔の咲き継ぐ青の盛りかな★★★★
西洋朝顔などは秋になってよく咲く。沢山の青い花を咲かせて朝顔自体も咲くことを楽しんでいるようだ。「青の盛り」に詩心がある。(高橋正子)

金木犀光り茂みの香りけり★★★
秋雲の影の走るや天王山★★★

10月12日(4名)

●多田有花
どんぐりを拾いつ山を登りけり★★★★
楽しい句だ。山を登り、どんぐりを拾い、読み手も楽しくなる。詠み手が楽しくて、読み手も楽しくなる。いい句だ。(高橋信之)

頂に蜻蛉たっぷり群れて飛ぶ★★★
澄む秋の久美浜湾と日本海★★★

●小口泰與
合点のゆかぬ話や桐一葉★★★
散歩圏伸ばして刈田五六枚★★★★
散歩をする範囲をいつもより伸ばした。刈田が五六枚ある。田んぼのある所に出たのだ。よい気候となったこと、体調がよいこと、秋が深まり、景色が改まったこと。健やかな句だ。(高橋正子)
弓を引く作法や美しき雁の列★★★

●廣田洋一
松茸のエセンス加へ飯を炊く★★★
茸飯天地を返し椀に盛る★★★
茸飯炊けるを待ちて子ら座る★★★★
「子ら座る」家族の姿が眼に浮かんでくる。読み手の眼にありありと浮かんできて、嬉しくなってくる。(高橋信之)

●桑本栄太郎
信号を待つて眩しき秋日かな★★★
おもかげのすでに遠のく芙蓉の実★★★
爽籟や樟の大樹の医科大に★★★★
樟の大樹と医科大の取り合わせがいい。大樹の樟を吹いてくる爽籟に、身が清まる思いがする。(高橋正子)

10月11日(3名)

●小口泰與
大沼へなだれ咲きたる薄かな★★★★
巨大なる吾の影を立つ稲雀★★★
蟋蟀のうすうす聞こゆ眠りかな★★★

●桑本栄太郎
 <秋の四条大橋>
大橋や今朝の鞍馬は秋霞★★★
水底の魚影きらめき秋高し★★★
鴨川の土手に語らう秋うらら★★★★
「秋うらら」の嬉しい時間だ。読み手もまた嬉しくなる時間だ。(高橋信之)

●廣田洋一
新米や今年も生れし特A米★★★★
特Aとランクづけされた新米ができた。「今年も生れし」とあるので、「よくぞ、おいしい米を作ってくれた」と農家への感謝も。(高橋正子)

今年米山菜漬けの封を切る★★★
今年また新米炊きし老いの夕★★★

自由な投句箱/10月1日~10日


※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
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今日の秀句/10月1日~10日


10月10日(2句)

★秋祭の幟を見つつ山に入る/多田有花
秋祭りは農村の収穫を祝う祭り。山裾にも祭りの幟がはためいている。昔ながらの秋祭りの雰囲気があって懐かしさを呼ぶ。(高橋正子)

★電線に休む暇なく小鳥来る/廣田洋一
もとの句の電線を擬人化した表現が問題です。
いろんな小鳥がやってくる。まず電線にやって来て、飛び去る。飛び去ったかと思うとまた、新しい小鳥が来ている。小鳥来る楽しい季節だ。(高橋正子)

10月9日

※該当句なし

10月8日(2句)

★新米をずっしり重く車に積む/多田有花
新米をいただいたのか。車に積む時、その重さをひしと感じる。新米を積む嬉しさでもある。「車に積む」が生活のよさ。高橋正子)

★線路際人通りなき良夜かな/廣田洋一
線路際の道を歩くと、この良夜、だれも人が通らない。皓皓と月が照らす道を独り占めした、ほんとうに良夜。(高橋正子)

10月7日(1句)

★身に入みて点滴の落ちる速さかな/多田有花
上五の季題「身に入みて」には、心情的な響きがある。「身に入む(みにしむ)」は、秋闌けるころからの冷たさだが言葉に心情的な響きがある。(高橋信之)

10月6日(1句)

★澄む秋の泉南阿波の山望む/多田有花
本州姫路方面からの風景であろう。阿波は、私の先祖の地なので、生活の体験はないが、先祖の墓参りに出掛けるので、馴染みがある。私は幼い時に父を亡くしたので、父の墓参りに出かけることがある。(高橋信之)

10月5日(2句)

★鶏頭や再び鳴り出す警報機/多田有花
鶏頭の花の分厚さ。線路脇に咲く鶏頭には、鉄路を走る電車の音、警報機の音が容赦なく響く。それを鶏頭は受け入れているのだ。秋の深まりを感じる。(高橋正子)

★壁を這い色づき来たり蔦紅葉/桑本栄太郎
壁を這う蔦紅葉は、作者の日々見ている景色であろうが、「色づき来たり」は、年に一度だけ出会う嬉しい景色だ。(高橋信之)

10月4日(3句)

★群雀刈田の匂いうすうすと/小口泰與
刈田にこぼれた稲の実を雀が群れて啄んでいる。雀も可愛いが、刈田の匂い、稲藁のうすうすとした匂いが何とも言えず、思わず深く息をしたくなる。うすうすとした匂いがいい。(高橋正子)

★高黍の畑の周りや風巡る/桑本栄太郎
高黍畑を巡って風が吹く。ざわざわとした高黍の葉ずれの音が、秋の深まりとさびしさを感じさせる。(高橋正子)

★月光の皓皓としてビル白し/廣田洋一
月光が皓皓といて、街を照らす。明るくてビルの色が見える。「白」は月光に照らし出されて見えるビルのひと纏めの色。それが瀟洒でいい。(高橋正子)

10月3日(2句)

★きちきちの線路飛びゆく夕日かな/桑本栄太郎
線路沿いの草むらから、きちきちが飛び立つことがある。夕日が線路を染める頃、きちきちの翅が、夕日に浮かび上がる。小さな飛蝗の躍動する一瞬が見事だ。(高橋正子)

★爽やかに音なく髪を切られおり/川名ますみ
髪が軽く切られているのだろう。切り落とされた髪がさらりと落ちる。髪が切られるにつれ、首筋を爽やかな風がふくようだ。「爽やかに音なく」が優美。(高橋正子)

10月2日(2句)

★大安売秋果いろいろ買い求め/多田有花
いい生活句だ。平凡な生活であっても、楽しくて、いい生活が何よりである。(高橋信之)

★すでに早や風のみどりの穭田よ/桑本栄太郎
「穭田」の風景に今日の、明日の何かを期待する。私にとっては、松山郊外の懐かしい風景だ。勤めに出る朝の風景、勤めから帰る夕べの風景が懐かしい。(高橋信之)

10月1日(2句)

★運動会準備はためく万国旗/多田有花
運動会の万国旗が秋晴れの空にはためくのを見ていると、気持ちが爽快になる。子どものころは、準備が整っているのを見てうきうきした気分になったものだ。(高橋正子)

★裏庭の風に乾びぬ蘇芳の実/桑本栄太郎
蘇芳の実が気づけば乾いた実になっている。蘇芳色と言われる古風な花の色から、さらに渋く乾いた茶色への変化に
つうづく秋が深まるのを知る。地味な句だが、リアリティがある。(高橋正子)

10月1日~10月10日


10月10日(4名)

●小口泰與
木犀や流るる雲へ鳶の笛★★★
裾長きまほらの赤城花薄★★★
浅間へと日の退くや花木槿★★★★

●多田有花
秋祭の幟を見つつ山に入る★★★★
秋祭りは農村の収穫を祝う祭り。山裾にも祭りの幟がはためいている。昔ながらの秋祭りの雰囲気があって懐かしさを呼ぶ。(高橋正子)

地蔵堂わきを釣舟草船出★★★
晩秋の汗して急坂を登る★★★

●廣田洋一
電線の休む暇なし小鳥来る(原句)
電線に休む暇なく小鳥来る★★★★(正子添削)
もとの句の電線を擬人化した表現が問題です。
いろんな小鳥がやってくる。まず電線にやって来て、飛び去る。飛び去ったかと思うとまた、新しい小鳥が来ている。小鳥来る楽しい季節だ。(高橋正子)

ブランコの有る公園や小鳥来る★★★
図書館前泉水澄みて小鳥来る★★★

●桑本栄太郎
てるてる坊主吊るし明日の運動会★★★★
爺婆の玉入れ参加や園の秋★★★
園児らの騎馬戦ありぬ運動会★★★

10月9日(4名)

●多田有花
雨あがる今朝は秋祭日和★★★★
「秋祭日和」が言葉として、こなれていない感じがするが、雨に洗われて、祭りの日がさっぱりと気持ち良くなった。(高橋正子)

ひつじ田の前を祭の屋台ゆく★★★
コスモスや終日響く祭太鼓★★★

●小口泰與
山風や花粉まみれの秋の蜂★★★★
兜焼の目玉舐ぶりて新走★★★
ねんごろに書きたる色紙秋の闇★★★

●廣田洋一
ジム仲間夜のまどひの温め酒★★★
酒飲めぬ妻のお燗の温め酒★★★
日帰りの行楽終えて温め酒★★★★

●桑本栄太郎
<山陽新幹線を西に車窓より>
<新神戸>
トンネルを出でてトンネル秋の雨★★★
<明石>
煙突のあまた並びぬ秋の浦★★★
<岡山>
稲滓火の跡の田面の黒きかな★★★

10月8日(4名)

●多田有花
あいにくの雨模様なり秋祭★★★
新米をずっしり重く車に積む★★★★
新米をいただいたのか。車に積む時、その重さをひしと感じる。新米を積む嬉しさでもある。「車に積む」が生活のよさ。(高橋正子)

無花果をバケツいっぱいもぎ戻る★★★

●廣田洋一
地震揺れて夢を破られ無月かな★★★
コスプレの衣装美しきや秋の昼★★★
線路際人通りなき良夜かな★★★★
線路際の道を歩くと、この良夜、だれも人が通らない。皓皓と月が照らす道を独り占めした、ほんとうに良夜。(高橋正子)

●小口泰與
暖簾より流るる演歌稲架の月★★★
黒葡萄武甲山(ぶこう)の風を浴びにけり★★★★
高嶺より下山の人や秋の影★★★

●桑本栄太郎
生駒嶺の雨催い来る秋ぐもり★★★
街中に幾何模様なる刈田かな★★★
秋空に蒸気昇りぬハム工場★★★★

10月7日(3名)

●多田有花
身に入みて点滴の落ちる速さかな★★★★
上五の季題「身に入みて」には、心情的な響きがある。「身に入む(みにしむ)」は、秋闌けるころからの冷たさだが言葉に心情的な響きがある。(高橋信之)

うそ寒しCTスキャンの轟音も★★★
針抜きし跡を押さえてそぞろ寒★★★

●小口泰與
畦道やぴたつと止まる虫時雨★★★
紺瑠璃の山や朝餉の新豆腐★★★★
夕紅葉燃え立つような塒かな★★★

●廣田洋一
繋ぎたる手の暖かき秋の夜★★★
雨上がり色付き初めし庭の草★★★
駅中に月見飾りの無月かな★★★★

10月6日(4名)

●多田有花
澄む秋の泉南阿波の山望む★★★★
本州姫路方面からの風景であろう。阿波は、私の先祖の地なので、生活の体験はないが、先祖の墓参りに出掛けるので、馴染みがある。私は幼い時に父を亡くしたので、父の墓参りに出かけることがある。(高橋信之)

十六夜の月なく明日は雨という★★★
朝冷に上着を出してはおりけり★★★

●小口泰與
新そばや平らな湖の山の影★★★★
穭田や大曲せる足尾線★★★
単線の尾燈や林檎紅潮す★★★

●廣田洋一
栗の香を吹きこぼしけり栗ご飯★★★★
食べ過ぎに注意の色や栗ご飯★★★
栗ご飯こげを取り合う子らの居て★★★

●満天星
舶来の紅葉(こうよう)早き花水木★★★★
辛夷の実花に似合はぬ姿かな★★★
久々の山道寂し赤まんま★★★

10月5日(4名)

●多田有花
鶏頭や再び鳴り出す警報機★★★★
「鶏頭」に「警報機」を取り合わせたのがいい。「鶏頭」がいきいきとし、「警報機」に命を与えた。「警報機」が働いているのだ。(高橋信之)

初滑子飛行機雲の出る朝に★★★
道の辺に背高泡立草の黄色★★★

●廣田洋一
秋天やコスプレ衣装晴れやかに★★★
名月の横切りて行く車窓かな★★★★
大舞台闇に浮かべる無月かな★★★

●小口泰與
目覚めよし朝の赤城の爽気かな★★★★
風去るやコスモスちから抜きにける★★★
山風に秋蝶震え止まらずや★★★

●桑本栄太郎
壁を這い色づき来たり蔦紅葉★★★★
壁を這う蔦紅葉は、作者の日々見ている景色であろうが、「色づき来たり」は、年に一度だけ出会う嬉しい景色だ。(高橋信之)

嵯峨菊やその高貴なる大覚寺★★★
十六夜の月の隠れや雲あかり★★★

10月4日(5名)

●谷口博望(満天星)
花梨の実丸くなれない天邪鬼★★★
蘭嗅いで胸中どこか狂ひたり★★★
曲線の対称美(は)しき曼殊沙華★★★

●小口泰與
境内の桜紅葉の匂わしき★★★
群雀刈田の匂いうすうすと★★★★
刈田にこぼれた稲の実を雀が群れて啄んでいる。雀も可愛いが、刈田の匂い、稲藁のうすうすとした匂いが何とも言えず、思わず深く息をしたくなる。うすうすとした匂いがいい。(高橋正子)

水澄むとまずは湖にも聞いて見よ★★★

●多田有花
時々は雲がかすめる小望月★★★★
小望月テニスコートで見上げけり★★★
忽然と咲き忽然と消え彼岸花★★★

●桑本栄太郎
雨降れば雨に赤きや水木の実★★★
秋雨や見る間に庭の色づきぬ★★★
高黍の畑の周りや風の垣(原句)
高黍の畑の周りや風巡る★★★★(正子添削)
もとの句の「風の垣」が分かりにくいです。
高黍畑を巡って風が吹く。ざわざわとした高黍の葉ずれの音が、秋の深まりとさびしさを感じさせる。(高橋正子)

●廣田洋一
爽やかやポップコーンのはじけたり★★★
名月や急ぎ雲より離れ行き★★★
月光の皓皓としてビル白し★★★★
月光が皓皓といて、街を照らす。明るくてビルの色が見える。「白」は月光に照らし出されて見えるビルのひと纏めの色。それが瀟洒でいい。(高橋正子)

10月3日(6名)

●多田有花
小ぶりな梨切りてヨーグルトをかける★★★★
秋雨の降りしきるなか草むしり★★★
秋雨を聞きつ終日家籠り★★★

●小口泰與
鈍色の空を囃すや曼殊沙華★★★★
整然と並びし藁塚の倒れけり★★★
大沼を見下ろす岩や初紅葉★★★

●廣田洋一
青空をちと切り取りて柿実る★★★
里さびれ捥ぐ人の無き柿熟るる★★★
渋柿を甘くしたるや土地の酒★★★★

●谷口博望 (満天星)
朴の実や蕊と相似の色形★★★★
朴の実の真赤に熟れて昼の月★★★
朴の実やダビデの裸像高台に★★★

●桑本栄太郎
壁を這う蔓の紅葉や色深む★★★
きちきちの線路飛びゆく夕日かな★★★★
線路沿いの草むらから、きちきちが飛び立つことがある。夕日が線路を染める頃、きちきちの翅が、夕日に浮かび上がる。小さな飛蝗の躍動する一瞬が見事だ。(高橋正子)

ぱりぱりと乾び行きけり藁ぽつち★★★

●川名ますみ
爽やかに音なく髪を切られおり★★★★
髪が軽く切られているのだろう。切り落とされた髪がさらりと落ちる。髪が切られるにつれ、首筋を爽やかな風がふくようだ。「爽やかに音なく」が優美。(高橋正子)

点滴の雫数える秋の雲★★★
到来の里芋を炊き夕餉にす★★★

10月2日(5名)

●谷口博望 (満天星)
昼の月少し濃くなり穴惑★★★
銀杏の強き臭ひや沢蟹来★★★★
豆腐なら大豆の匂ふ「おぼろ」かな★★★

●多田有花
大安売秋果いろいろ買い求め★★★★
いい生活句だ。平凡な生活であっても、楽しくて、いい生活が何よりである。(高橋信之)

昨日よりきんもくせいの香の強く★★★
丁寧におさめし秋の扇風機★★★

●小口泰與
秋ばらを剪って疾風に対いけり★★★
木槿剪る俄かに赤城迫りけり★★★★
あびるほど飲めたる頃の流れ星★★★

●廣田洋一
秋の蚊やコップの中に横たわり★★★★
秋の蚊の群れて飛び来る散歩道★★★
襖占め秋の蚊遣りを焚きにけり★★★

●桑本栄太郎
すでに早や風のみどりの穭田よ★★★★
「穭田」の風景に今日の、明日の何かを期待する。私にとっては、松山郊外の懐かしい風景だ。勤めに出る朝の風景、勤めから帰る夕べの風景が懐かしい。(高橋信之)

人の世を鎮めたるかに秋の雨★★★
遠目にも昼の明かりや花オクラ★★★

10月1日(5名)

●小口泰與
十月の豊葦原の山河かな★★★
うそ寒や古老の担う顔の皺★★★
畦囃す白とびとびの曼殊沙華★★★★

●谷口博望 (満天星)
とんび舞ふ昼の月より天高く★★★★
病み上がりの名勝園や小げら来る★★★
秋の空連れづれに飛ぶ四十雀★★★

●廣田洋一
窓際の木の葉囁く秋の声★★★★
今にも滑り落ちさうな上弦の月★★★
夕月夜丸顔の友思ひけり★★★

●多田有花
運動会準備はためく万国旗★★★★
運動会の万国旗が秋晴れの空にはためくのを見ていると、気持ちが爽快になる。子どものころは、準備が整っているのを見てうきうきした気分になったものだ。(高橋正子)

午後の風きんもくせいの香を運ぶ★★★
運動会歓声流れ来る快晴★★★

●桑本栄太郎
帽子ぬぎどんぐりころころくぬぎ山★★★
遠目にも畑の灯かりや花オクラ★★★
裏庭の風に乾びぬ蘇芳の実★★★★
蘇芳の実が気づけば乾いた実になっている。蘇芳色と言われる古風な花の色から、さらに渋く乾いた茶色への変化に
つうづく秋が深まるのを知る。地味な句だが、リアリティがある。(高橋正子)

自由な投句箱/9月21日~30日


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今日の秀句9月21日~30日


9月30日(2句)

★秋の水空を映して静かなり/多田有花
空を映してただ静かな水。秋の水と空という単純で、それでいて大きなもの。それを見ていると、心が落ち着き納得するところがある。(高橋正子)

★どの家も齋藤姓や秋の昼/桑本栄太郎
日が降り注ぐしずかな秋の昼。家の表札はどの家も「齋藤」とある。一族のつながりがあって暮らしているのだろう。秋の昼の平穏無事。(高橋正子)

9月29日(2句)

★理由もなく心揺れたる秋の暮/廣田洋一
秋の暮、理由もなく心が揺れる。人の心は不思議なもので、はっきりと影響を受けたわけではないのに、心が揺れる。「萩の風何か急かるる何ならむ/水原秋櫻子」の句がある。(高橋正子)

★きちきちを追い立て歩む田道かな/桑本栄太郎
田圃道を歩くと、歩く足元からきちきちが飛び出してくる。追い立てているわけではないが、きちきちは足音に驚いて飛び出してくるのだが、作者にとっては、田道を歩く楽しさ、面白さになっている。(高橋正子)

9月28日(2句)

★ぱっくりと口開けている栗の毬/多田有花
小学生の時のことだが、母の実家で栗拾いをした思い出がある。栗の毬がまさに「ぱっくりと口開けている」のを拾った。裏山の斜面での、子供の頃を鮮明に思い出す。(高橋信之)

★丸ごとの焼松茸や青き空/小口泰與
下五に置いた「青き空」は 、やや取っ付けた感がするが、それでもいい。「青き空」はいい。(高橋信之)

9月27日(3句)

★田がありて墓ありてそこに彼岸花/多田有花
「田がありて墓ありて」には、少年の頃の思い出がある。私は大阪生まれで、2歳の時に母に背負われ中国大陸の大連(帝政ロシアが「凍らぬ港」として築いたダルニー)渡ったが、終戦後の中学3年の時に四国愛媛の母方の祖父
ののもとに引き揚げた。祖父は農家であったので、そこは、「田がありて墓ありて」で、農仕事の手伝いをした。(高橋信之)

★冷やかな厨に入りて豆富汁/廣田洋一
「秋冷」である。晩秋になると朝夕は冷え冷えして、豆腐屋が来るのが嬉しい。「豆腐屋が来る秋冷の遠田径/ 石川桂郎」(高橋信之)

★秋茄子を採るや昼餉の足しにせん/古田敬二
一句の状況とその作者の姿が手に取るように見える。いい句だ。(高橋信之)

9月26日(1句)

★台風一過お握り一つ頬ばりぬ/廣田洋一
台風一過の爽やかさ。おにぎりの塩の塩梅がよく飯が美味しい。ささやかなことだが、こう思うことが幸せというものだろう。(高橋正子)

9月25日(2句)

★並びなき赤城ならでは濃竜胆/小口泰與
辺りに並ぶ山はない赤城山。赤城山の竜胆は、鮮やかな濃紫の深山竜胆であろうか。高山で出会う竜胆は特にゆかしい。(高橋正子)

★新蕎麦を打つ音澄みし老舗かな/廣田洋一
ものの音が澄んでよく聞こえる秋。新蕎麦も嬉しいが、新蕎麦を打つ音が澄んでいるのも老鋪ならではの静けさと落ち着き。おいしい蕎麦がいただけたことだろう。(高橋正子)

9月24日(1句)

★朝顔や我が影なべて巨大なる/小口泰與
朝顔の咲く朝、朝日を受けて我が影が伸びる。どこに立っても大きな影だ。季節が移っていく驚きが、「我が影なべて巨大」と発見した驚きと重なっている。(高橋正子)

9月23日(2句)

★秋雨の踏切長き貨物列車/多田有花
そぼ降る秋雨と延々と続く貨物列車。見ているといつか、わびしさが湧く風景。(高橋正子)

★秋の昼はるか眼下に稲熟るる/桑本栄太郎
もとの句は「眼下や」に感動がある表現です。一読してわかりにくいです。
高速道路は高架橋や山地寄りの高いところを走っているので、里の景色が上から眺められる。遥か眼下に稲が熟れている景色は、今も失われていない、晴れやかな里の風景だ。(高橋正子)

9月22日(1句)

★秋薔薇の献花を捧げコンサート/桑本栄太郎
追悼コンサートに、秋薔薇を献花。秋薔薇の華やかでありながら淋しさのある雰囲気が、追悼コンサートに相応しい。(高橋正子)

9月21日(2句)

★新しきカートを引きて秋高し/廣田洋一
新しいものは、なんでもうれしい。新しいカートを引いて、空高く晴れた下を歩く自分の姿を想像したりする。心楽しいことだ。(高橋正子)

★茶畑の段々上に秋の晴れ/桑本栄太郎
丘陵の茶畑は、きれいに摘みこまれて、緑がきらきら輝いて美しい。秋晴れの空のしたでは、なおのこと、旅のこ爽快になる。(高橋正子)

9月21日~30日


9月30日(4名)

●多田有花
澄む秋のつり橋双眼鏡で見る★★★
秋晴れの四国の山並を望む★★★
秋の水空を映して静かなり★★★★
空を映してただ静かな水。秋の水と空という単純で、それでいて大きなもの。それを見ていると、心が落ち着き納得するところがある。(高橋正子)

●廣田洋一
荒畑の名を知らぬ花秋の声★★★★
海外勤務終えし日や秋の声★★★
神木の枝の重なり秋の声★★★

●小口泰與
色鳥や利根川(とね)に大石おちこちに★★★★
縄文の丸石拝む鬼やんま★★★
一群の稲雀にぞ囃されし★★★

●桑本栄太郎
どの家も齋藤姓や秋の昼★★★★
日が降り注ぐしずかな秋の昼。家の表札はどの家も「齋藤」とある。一族のつながりがあって暮らしているのだろう。秋の昼の平穏無事。(高橋正子)

ひつそりと木蔭にありぬ蘇芳の実★★★
尺八の音色団地に九月尽★★★

9月29日(5名)

●多田有花
頂のかまきり何に立ち向かう★★★
音高く色なき風のとおりけり★★★★
上弦の月いま松が枝を離れ★★★

●谷口博望 (満天星)
遥かなり光芒当る瀬戸の海★★★
秋の色アメリカ楓へ日の当る★★★★
待望の胡蝶集へり藤袴★★★

●小口泰與
雨粒の中の宇宙や秋桜★★★★
にぎわしき鳥の羽音や牧閉す★★★
顔面に触れんばかりや秋赤城山(あかぎ)★★★

●廣田洋一
待ち人の中々来ずに秋の暮★★★
何かしらやり残しけり秋の暮★★★
理由もなく心揺れたる秋の暮★★★★
秋の暮、理由もなく心が揺れる。人の心は不思議なもので、はっきりと影響を受けたわけではないのに、心が揺れる。「萩の風何か急かるる何ならむ/水原秋櫻子」の句がある。(高橋正子)

●桑本栄太郎
裏道を抜けて歩めば秋の風★★★
独りゆく吾の田道や草ひばり★★★
きちきちを追い立て歩む田道かな★★★★
田圃道を歩くと、歩く足元からきちきちが飛び出してくる。追い立てているわけではないが、きちきちは足音に驚いて飛び出してくるのだが、作者にとっては、田道を歩く楽しさ、面白さになっている。(高橋正子)

9月28日(4名)

●多田有花
ぱっくりと口開けている栗の毬★★★★
小学生の時のことだが、母の実家で栗拾いをした思い出がある。栗の毬がまさに「ぱっくりと口開けている」のを拾った。裏山の斜面での、子供の頃を鮮明に思い出す。(高橋信之)

出落栗あぜに並べて農作業★★★
秋雨の静かに降り始め夜に★★★

●小口泰與
丸ごとの焼松茸や青き空★★★★
下五に置いた「青き空」は 、やや取っ付けた感がするが、それでもいい。「青き空」はいい。(高橋信之)

枝枝の急にさびしき木槿かな★★★
夕紅葉小沼をかくす山の影★★★

●廣田洋一
露草の青深めたる雨なりし★★★★
露草や群がり咲くも淋しげに★★★
露草や押葉の台紙青く染め★★★

●桑本栄太郎
錦木の緋色透き居り秋の暮れ★★★★
蘇芳の実からぶる風に影となす★★★
ベランダの鉢の中なり虫の宿★★★

9月27日(5名)

●多田有花
田がありて墓ありてそこに彼岸花★★★★
 「田がありて墓ありて」には、少年の頃の思い出がある。私は大阪生まれで、2歳の時に母に背負われ中国大陸の大連(帝政ロシアが「凍らぬ港」として築いたダルニー)渡ったが、終戦後の中学3年の時に四国愛媛の母方の祖父
ののもとに引き揚げた。祖父は農家であったので、そこは、「田がありて墓ありて」で、農仕事の手伝いをした。(高橋信之)

漣のような雲出て月に暈★★★
秋の夜の祭太鼓の稽古かな★★★

●小口泰與
秋雲や人生なんと謎多き★★★
紫蘇の実や一風呂浴びて豆腐婆★★★
旅なれや松茸飯をほおばりて★★★

●廣田洋一
冷やかな厨に入りて豆富汁★★★★
「秋冷」である。晩秋になると朝夕は冷え冷えして、豆腐屋が来るのが嬉しい。「豆腐屋が来る秋冷の遠田径/ 石川桂郎」(高橋信之)

秋冷の水に映れる白髪かな★★★
秋冷の竹林歩む鳩一羽★★★

●古田敬二
秋茄子を採るや昼餉の足しにせん★★★★
一句の状況とその作者の姿が手に取るように見える。いい句だ。(高橋信之)

コスモスの花びらも揺れ蝶も揺れ★★★
大根の芽伸びるよ風に揺れるほど★★★

●桑本栄太郎
あおぞらに実の片辺なり紅芙蓉★★★
秋空に飛行機雲の途切れけり★★★
もどり来て特急電車や秋うらら★★★

9月26日(6名)

●満天星
曼殊沙華ポエジー求め当てもなく★★★
曼殊沙華身ぬちに棲めるグロとエロ★★★
瓢箪や昭和のモンロー遠くなり★★★

●小口泰與
たわいなき運動なれど秋高し★★★★
「たわいなき」俳句だが、それがいい。季題の「秋高し」を下五に置いたのがいいのだ。(高橋信之)

菊の宿見慣れし靴の置き所★★★
朝顔や菓子屋なれども隠居分★★★

●多田有花
白鷺鱧あがる仲秋播磨灘★★★
六甲の稜線の上の秋の雲★★★★
快晴の秋の海見る車窓かな★★★

●廣田洋一
台風一過お握り一つ頬ばりぬ★★★★
台風一過の爽やかさ。おにぎりの塩の塩梅がよく飯が美味しい。ささやかなことだが、こう思うことが幸せというものだろう。(高橋正子)

翅欠けし蝶の舞ひをる花野かな★★★
台風のいつも逸れ行く皇居かな★★★

●桑本栄太郎
うつり香もつれて家路や金木犀★★★
黄金なる田を囲み居り曼珠沙華★★★★
出雲路の石の鳥居や八雲の忌★★★

●古田敬二
高みから突然鵙の初猛り★★★★
誰がための供花ぞ河辺の彼岸花★★★
秋野菜心優しく種を蒔く★★★

9月25日(5名)

●多田有花
箱いっぱいの秋茄子をみんなで分ける★★★★
口語俳句の良さを充分に生かした句。「箱いっぱい」がいい。「みんなで分ける」がいい。作者のいい生活を見せていただいた。(高橋信之)

秋茄子をオリーブオイルで料理する★★★
鳥取より小玉西瓜が届きけり★★★

●谷口博望(満天星)
行く秋や光芒当る瀬戸の島★★★★
橡の実や去年はここであの人と★★★
晩学や炎燃えたる曼殊沙華★★★

●小口泰與
並びなき赤城ならでは濃竜胆★★★★
辺りに並ぶ山はない赤城山。赤城山の竜胆は、鮮やかな濃紫の深山竜胆であろうか。高山で出会う竜胆は特にゆかしい。(高橋正子)

爽籟やならいの如き酒の量★★★
松手入愚直は血筋なりにけり★★★

●廣田洋一
新蕎麦を打つ音澄みし老舗かな★★★★
ものの音が澄んでよく聞こえる秋。新蕎麦も嬉しいが、新蕎麦を打つ音が澄んでいるのも老鋪ならではの静けさと落ち着き。おいしい蕎麦がいただけたことだろう。(高橋正子)

新蕎麦やいつもの店の賑わへり★★★
新蕎麦やビルマの風を運び来し★★★

●桑本栄太郎
秋天の高き梢や建仁寺★★★★
わが影の長き背丈や秋の暮れ★★★
纏いつく家路となりぬ金木犀★★★

9月24日(4名)

●多田有花
蝉の声消えて静かな秋分の森★★★
秋の陽や地球の回転とどまらず★★★★
秋の朝パックご飯を温める★★★

●小口泰與
朝顔や我が影なべて巨大なる★★★★
朝顔の咲く朝、朝日を受けて我が影が伸びる。どこに立っても大きな影だ。季節が移っていく驚きが、 「我が影なべて巨大」と発見した驚きと重なっている。(高橋正子)

外に出づと今朝も咲きたる木槿かな★★★
夕暮の木槿や我の四肢萎ゆる★★★

●廣田洋一
吟行開始さつと開きし秋日傘★★★★
古き井戸こんと水吐く鹿おどし★★★
法師蝉鳴き声止みし尼坊跡★★★

●桑本栄太郎
 < ふるさと鳥取の秋3句>
草刈られ畦に極まる彼岸花★★★
大山の嶺晴れ来たり秋高し★★★★
秋日さす遺跡の丘や妻木晩田★★★

9月23日(6名)

●谷口博望(満天星)
曼殊沙華地より湧きたる宇宙人★★★
「宇宙人」の比喩が問題です。(高橋正子)
小説や現代詩とは違って、俳句に「比喩」を使うのは、至難の業です。(高橋信之)

愛に飢え薄桃色の凌霄花★★★
前撮りの胸の窓開け夕化粧★★★

●多田有花
秋雨の踏切長き貨物列車★★★★
そぼ降る秋雨と延々と続く貨物列車。見ているといつか、わびしさが湧く風景。(高橋正子)

秋分の朝日わずかに部屋に入る★★★
秋の蚊に刺され目覚めし夜中かな★★★

●小口泰與
何故の芙蓉なるかや星の夜★★★
あけぼのの赤城の冷気蜻蛉増ゆ★★★★
生湯葉の皿になびきし月の暈★★★

●廣田洋一
赤信号確かめもせず鹿渡る★★★
秋彼岸生命線を確かめり★★★
彼岸花横目に見つつ墓参り★★★★

●河野啓一
空はれて妻の忙し丹波栗(原句)
空晴れて妻の料理の丹波栗★★★★(正子添削)
マスカット白はに盛られ絵に描かれ★★★
老いぼれもロケットマンも太平洋★★★

●桑本栄太郎
 <法事帰省の高速米子道 2句>
稔田のはるか眼下や秋の昼(原句)
秋の昼はるか眼下に稲熟るる★★★★(正子添削)
もとの句は「眼下や」に感動がある表現です。一読してわかりにくいです。
高速道路は高架橋や山地寄りの高いところを走っているので、里の景色が上から眺められる。遥か眼下に稲が熟れている景色は、今も失われていない、晴れやかな里の風景だ。(高橋正子)

谷底の里の刈田や家二軒★★★
かな女忌の沼に句碑立つ彼岸花★★★

9月22日(4名)

●小口泰與
朝顔と木槿競うや鶏の声★★★
和みたる九月の湖の山の影★★★
雨後の暁赤城の裾野虫時雨★★★★

●多田有花
彼岸花律儀に畦に咲きそろい★★★
古刹へと登る道の辺酔芙蓉★★★★
味噌汁の湯気の親しき秋の朝★★★

●廣田洋一
雲間より薄日射しけり秋夕焼★★★
丹沢の山の端光る秋夕焼★★★★
秋夕焼グラスを掲げご苦労さん★★★

●桑本栄太郎
<追悼ジャズコンサート>
浅草の暮れなずむ夜や秋ともし★★★
秋薔薇の献花を捧げコンサート★★★★
追悼コンサートに、秋薔薇を献花。秋薔薇の華やかでありながら淋しさのある雰囲気が、追悼コンサートに相応しい。(高橋正子)

手を叩き足を鳴らせり秋の夜★★★

9月21日(5名)

●廣田洋一
一筋の白雲流れ天高し★★★
新しきカートを引きて秋高し★★★★
新しいものは、なんでもうれしい。新しいカートを引いて、空高く晴れた下を歩く自分の姿を想像したりする。心楽しいことだ。(高橋正子)

虫の音のまだ続きをる夜明けかな★★★

●河野啓一
台風の早も過ぎ去りオホーツク★★★★
台風一過この空一転澄み渡り★★★
敬老日デイのカラオケだみ声で★★★

●多田有花
猪の走り去るなり森の道★★★
静かなる昼から虫すだく夜へ★★★★
秋の朝とろりとギリシャヨーグルト★★★

●小口泰與
何もかも赤城大沼秋らしく★★★
竜胆や今朝の浅間は靄の中★★★★
ボート場は湖の対岸濃竜胆★★★

●桑本栄太郎
<上京の新幹線車窓より>
鉄橋の天竜川や秋の空★★★
茶畑の段々上に秋の晴れ★★★★
丘陵の茶畑は、きれいに摘みこまれて、緑がきらきら輝いて美しい。秋晴れの空のしたでは、なおのこと、旅のこ爽快になる。(高橋正子)

秋の江や渡るに早き大井川★★★

自由な投句箱/9月11日~20日


※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
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※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

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今日の秀句/9月11日~20日


9月20日(2句)

★ひろびろと近江平野の稲田晴れ/桑本栄太郎
「広大な」は、説明になっています。その広さに心を重ねてください。
広々とした近江平野、晴れ渡る空の下の稲田の眺めは、これぞ日本と思う素晴らしさがある。読み手の心も広々と、明るく開放される。(高橋正子)

★立ち並ぶ稲架の匂ひや津軽富士/廣田洋一
津軽平野の眺め。立ち並ぶ稲架からは、陽に乾いてゆく稲の匂いがしてくる。あたたかい稲の匂いである。(高橋正子)

9月19日(1句)

★台風過濁りの残る汽水域/多田有花
台風が去っても、濁流の流れ込んだ河口辺り、つまり、海水と淡水の混じる汽水域は、濁りが薄くなったもまだ水は濁っている。微妙な濁り具合に目が行った。(高橋正子)

9月18日(1句)

★台風の到来をつ静かな街/多田有花
台風がわが街を通る予報が出れば、人は神妙にならざるを得ない。大した被害もなく台風が通り過ぎることを祈るばかり。(そういった街の静けさ。(高橋正子)

9月17日(2句)

★嵐接近稲架をしっかり固定する/多田有花
台風に備えてすること。農家なら稲架の固定。収穫の最後の最後まで気を許せない。(高橋正子)

★秋草を客間に活けし妻の所作/小口泰與
秋草を活ける妻の所作が優しい。秋草が自然と人の所作をそうさせるのか。(高橋正子)

9月16日(2句)

★ぱっくりと裂けし石榴に傾く陽/多田有花
この句の良さは、「柘榴に傾く陽」。景色が美しい。(高橋正子)

★虫鳴けり浅間溶岩道真の闇/小口泰與
この句の良さは、「溶岩(ラバ)」と「虫鳴けり」の取り合わせ。「真の闇」が加わり、虫の鳴き様、作者の眼の凝らし方がそ想像できること。(高橋正子)

9月15日(3句)

★歌声を流し運動会稽古/多田有花
運動会も稽古であれば、観客はいないが、それでも歌声は楽しく流れ、子供たちは、わくわくする。(高橋信之)

★虫の音や田毎の色の異なりし/小口泰與
以前四国松山の郊外に住んでいた時を思い出した。団地を出てバス停までは、田圃があって秋には虫が鳴くのを聞いた。(高橋信之)

★進めども車窓に続く鰯雲/川名ますみ
「車窓」は自動車の車窓であろう。親しい人達との久しぶりのドライブに車窓の「鰯雲」に強く季節を感じた。(高橋信之)

9月14日(3句)

★ぽつぽつと刈田現る快晴に/多田有花
稲が熟れ、田んぼには刈田が見えるようになった。良い天気が続くと稲刈りも進だろう。実りの秋の良い季節だ。「快晴」が快い。(高橋正子)

★秋蝶の高みたかみへ二頭かな/小口泰與
空が高ければ、二つの蝶は競うあうように、どこまでも高く羽ばたく。空の高さ、蝶の生命力が澄んだ詩情で詠まれている。(高橋正子)

★風上へせせり競うや赤とんぼ/桑本栄太郎
赤どんぼが、風に逆らい競り合って飛んでゆく。頭から風に突っ込み勢いづいて飛ぶ赤とんぼもまた、一面の赤とんぼの姿。(高橋正子)

9月13日(2句)

★なつかしき歌が流れる運動会/多田有花
誰もが体験したことのある「なつかしき」風景だ。「運動会」は、子ども時代の思い出の中の最大のイベントだ。(高橋信之)

★銀杏葉の色透き来たり天高し/桑本栄太郎
秋が来た喜びの句だ。中七の「色透き来たり」に作者の喜びを読み取る。(高橋信之)

9月12日(1句)

★鯉捌く男の出刃や秋高し/小口泰與
「男の出刃」は、私にとって懐かしい思いがある。小学二年になったばかりの時父を亡くしたが、当時中国大陸(旧満州大連市)に住んでいた私たち家族の近くには親戚は居なかった。姉や兄がいたが、小学生の私がいつも母を手伝って煮炊きのガスを使った。私は理数科が得意だったので、理科の実験だと思い、喜んで手伝った。(高橋信之)

9月11日(1句)

★撞木打ち空澄む里へ響きけり/小口泰與
小高い寺の鐘だろう。鐘をつくと、澄んだ空が広がる里に響いた。目まぐるしい世の中からタイムスリップしたような里の風景に心がほどける。(高橋正子)