5月11日~20日


5月20日(4名)

多田有花
<箱根三句>
大甕に薔薇活け箱根老舗蕎麦(原句)
大甕に薔薇活け箱根老舗蕎麦屋★★★(正子添削)

夏浅し箱根湯本に蕎麦を食ぶ★★★
芦ノ湖の遊覧船に若葉雨★★★★

小口泰與
噴水は風の意図なる容かな★★★★
広縁の母の遺せし籐寝椅子★★★
暑気払い利根の流を肴とす★★★

廣田洋一
柵の上広がり咲きし赤き薔薇★★★
マサコてふ薔薇の華やぐ令和かな★★★
薔薇満開洗濯物のはためきし★★★★
薔薇が満開。洗濯物をはためかす風が満開の薔薇も吹き上げる。華やかながら清潔感のある生活句。(高橋正子)

桑本栄太郎
青梅の葉蔭にありぬ曇り空★★★
一頻り下校児童や麦嵐★★★★
下校の児童たちが帰る。それが一頻り続いて、麦をさわやかな風が吹く。麦嵐の中を帰る下校の児童を児童書を読むような気持で見ることができる句だ。麦嵐は、嵐とはいっても、秋の台風のような嵐ではなく、麦の収穫を祝福してくれるさわやかで心地よい風である。(高橋正子)

木斛の花に風あれ風に花あれ★★★

5月19日(4名)

廣田洋一
さくらんぼ先陣切りてアメリカン産★★★
真青なる空より採りしさくらんぼ★★★★
さくらんぼのかわいらしさが真青なる空で引き立てられて、シンプルな句になっている。(高橋正子)

月山の光取り込むさくらんぼ★★★

小口泰與
星空と川音近き露台かな★★★★
赤城嶺の風の下り来る夏座敷★★★
水槽の面を突つっく目高かな★★★

多田有花
頂やぽっかり五月の空の下★★★★
山の頂に座ると、五月の空がぽっかりと包んでくれる。眼下の方にも空が伸びている感じだ。こんな空に包まれてみたい。(高橋正子)

たどり来し稜線を見る山若葉★★★
はつ夏の山には白き花あまた★★★

桑本栄太郎
せせらぎに四葩迫り出す高瀬川★★★★
古墳とは見えぬ森なり若葉風★★★
青梅の風の葉蔭やくもり来る★★★

5月18日(4名)

多田有花
谷空木咲く林道の崩落す★★★
蔓紫陽花ここから傾斜の強き道★★★
若葉風受けつつ急傾斜を登る★★★★

廣田洋一
一日を終えて一杯蝦蛄つまむ★★★
通販の蝦蛄解凍し酒を酌む★★★
店先のおが屑動く蝦蛄の箱★★★★

小口泰與
猪口ふすやさっと出でたる心太★★★
あんみつや膝を崩さぬ後ろ帯★★★
峠越え浅間すそ野の洗い鯉★★★★

桑本栄太郎
百合の木に百合の花咲く薄暑かな★★★★
「百合の木に百合の花咲く」のは、なんの不思議もない。チューリップ型の百合の木の花を見上げるころは、薄暑なのだ。当たり前ながら不思議な取り合わせ。(高橋正子)

ほんのりとはこね卯木や酔い来たる★★★
竹皮を脱ぐや亀甲露わなり★★★

5月17日(4名)

多田有花
谷空木に迎えられつつ山に入る★★★
新緑のなかに小さきチャペルあり★★★
谷空木渓流の音に咲きそろう★★★★

廣田洋一
店先の人を惹きつけラベンダー★★★
ラベンダー紫の香に安らげし★★★
紫に野を染め上げしラベンダー★★★

小口泰與
水源は何処や山家の冷奴★★★
嬬恋の棚田へ水と水馬★★★★
棚田に入るのが、水だけでなく、水と水馬。ここが面白い。棚田に入る水がいきいきと弾んでいる。(高橋正子)

泡盛や黒人霊歌聞こゆなり★★★

桑本栄太郎
かたつむり片目瞑りて嫁を娶れ★★★
片蔭や電信柱に身を寄する★★★
桑の実や産土はるか遠くなり★★★★
桑の実を食べた記憶ははるかになった。それと同時に産土も遠くなった。しみじみ故郷とはるかとなった少年時代を思う句。(高橋正子)

5月16日(4名)

多田有花
賜りし五月の快晴を仰ぐ★★★
今週は快晴続きしゃがの花★★★
静けさや山の古刹のしゃがの花★★★★

小口泰與
杣道のみち教えとは覚束無★★★
水槽の暁の水面へ目高かな★★★★
明けやすい夏の暁、目高ははやも目覚めて水面へ浮き上がってきた。すがすがしい夏の暁だ。(高橋正子)

客の来て筍飯を持て成せり★★★

廣田洋一
幼子や裸で跳ねる泥田かな★★★
薫風や大樹の下に椅子一つ★★★★
大樹の木陰に椅子が一つ。木陰に座って誰かが憩えるように置かれている。薫風理の木陰の至福の憩いに思いが至る。(高橋正子)

若葉風老鶯の声晴れやかに(原句)
老鶯の声晴れやかに若葉風★★★★(正子添削)

桑本栄太郎
どくだみの花やこの世の悪を消せ★★★
木洩れ日の青葉若葉や風を呼ぶ★★★
仕立てられ支柱に咲きぬ花南瓜★★★★

5月15日(4名)

小口泰與
かなたへもたゆたう水母蒼き空★★★
風薫る保渡田古墳の埴輪かな★★★★
筍の美味し料理や余命伸び★★★

廣田洋一
駅出口祭囃子の賑やかに★★★
通り一つ渡れば神田祭かな★★★★
日本三大祭りの一つ神田祭。通り一つで向こうはにぎやかな祭りの世界となる。私は、浅草の会員の方ご案内で、花冠会員の皆さんと三社祭の吟行を楽しんだが、その賑わいと祭りを離れた隅田川に祭りの余韻が届くのが印象に残っている。この句から思い出した。(高橋正子)

句座中断神輿に声を掛けにけり★★★

桑本栄太郎
かしましき軒端となりぬ燕の子★★★
歩みゆくとべら並木や風清し★★★★
午後の日の定家かずらや甘き風★★★

多田有花
森の影濃くなり初めし椎の花★★★★
椎の花のむんむんとした強い匂いは、さしずめ、日が強くなったせいかと思わせるところがある。そのころは、森の影が濃くなり始める。光と木々の力強さを感じさせてくれる。(高橋正子)

青梅のラグビーボールの形かな★★★
青空に雲無し湧き出る椎の花★★★

5月14日(4名)

廣田洋一
あでやかなピンクを連ね手毬花★★★
小手毬やぽんと投げたし空の青★★★
道の端こんもり茂る手毬花★★★

小口泰與
渓流の巌にほのぼの杜鵑花かな★★★
青柳や舟より投網打ちにける★★★
松籟に光育てて柿若葉★★★★

桑本栄太郎
うす紅のプロペラありぬ若楓★★★★
グランドの少年野球や花槐★★★
サングラス年甲斐もなきやんちゃかな★★★

多田有花
新緑に囲まれている古刹かな★★★★
古刹のものさびた様子を囲んで新緑が湧き上がる。新しい息吹と古く永く存在するものがよく溶け合っていい景色を見せている。(高橋正子)

まだ青き小さき枇杷を仰ぎけり★★★
椎の花雲のごとくに盛り上がり★★★

5月13日(4名)

多田有花
号令を受けたる如し歯朶若葉★★★
夏鴨の水辺に静かただ一羽★★★
見上げれば高きを覆い若楓★★★

小口泰與
脇役に小川置きけり大牡丹★★★
杣道の獣の臭い滴れり★★★★
南風や浅間の襞の黒黒と★★★

廣田洋一
アスファルト白く乾きて薄暑かな★★★
乙女子のホットパンツや街薄暑★★★★
気温に一番敏感なのは、若い女性たちかもしれない。気温に合わせて、洋服を選び、季節を先どり、たのしむ。薄暑を思えれば、早速ホットパンツで街を闊歩。初夏らしい溌剌とした姿が眩しい。(高橋正子)

雑草のまた伸びてきて庭薄暑★★★

桑本栄太郎
入口に薔薇の花咲く珈琲館★★★
ぎらぎらと木洩れ日ありぬ若楓★★★
あめんぼの水面の空を走りけり★★★★
水面の空には、雲のあるか。青空ばかりか。いろんな空が思い浮かぶが、空を走ってみたい思いは、人にもある。空を走ってあめんぼは、楽しいだろう。(高橋正子)

5月12日(5名)

小口泰與
雨粒の一つ二つや大夕立★★★
忽然と一の倉沢夏の霧★★★★
毛の国を一跨ぎせり虹の橋★★★

古田敬二
葭切の騒ぎしあとの池静か★★★
牧水の歌碑校庭に五月来る★★★
ランナーが逆さに走る池若葉★★★

廣田洋一
母の日や遺影に飾るカーネーション★★★★
母の日や母似の子らと食事せり★★★
日曜日今日は母の日位牌拭く★★★

桑本栄太郎
母の日と云えど母無く母想う★★★
まくなぎを払い巡れり池の淵★★★
アカシヤの白房見上げ散歩かな★★★★

多田有花
日当たれば形新たに若楓★★★★
薔薇咲けば一隅もっとも麗しき★★★
ピクニックの歓声近く皐月咲く★★★

5月11日(4名)

小口泰與
木道の覚満淵や風薫る★★★
大沼(おの)小沼(この)と赤城の沼や青嵐★★★
溶岩原へいっとき程の夏の雨★★★★

廣田洋一
子ら休む野の空高し朴の花★★★★
朴の花一弁ほぐれ蕊赤し★★★
臥竜のごと地を這ひ上がる朴の花★★★

多田有花
若楓開山堂の甍かな★★★★
ドライブウェイ尽きるところに水木咲く★★★
がまずみの花が五月の池の辺に★★★

桑本栄太郎
あめんぼの水面跳びはね逃げゆけり(原句)
原句は、景色のよくて、間違いはありませんが、そのまますぎるので、もう少し観察が欲しい句です。
あめんぼの跳びはね逃ぐも水の上★★★★(正子添削)

ジャスミンの花の垣根や園の庭★★★
まくなぎや顔の辺りを払い居り★★★

自由な投句箱/5月1日~10日(令和元年)


※当季雑詠3句(春の句・夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
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今日の秀句/5月1日~10日(令和元年)


5月10日(2句)

★風軽し庫裏でいただく蓬餅/多田有花
「風軽し」がさわやかで心地よい。風通しのよい庫裏でいただく蓬餅が格別美味しく思える。(高あh氏正子)

★夏の雲投網大きく輪を描き/小口泰與
夏の雲へ向けて投網を打つと、大きく輪を描く。生き生きとした夏漁の景色は、写真に撮りたいような構図。(高橋正子)

5月9日(2句)

★園児らの歌声ひびく花うばら/桑本栄太郎
園児のかわいらしい歌声と花うばらがよく響き合って、健やかな喜びが感じられる。(高橋正子)

★水草生う目高鉢から溢れるほど/古田敬二
水草がよく茂り、目高を飼っている鉢から溢れるほどになった。水草も水も溢れるほどで、水が生き生きしている。(高橋正子)

5月8日(2句)

★麦秋の車窓はるかに滋賀の湖/桑本栄太郎
車窓のはるか向こうにに滋賀の湖が見える。見はるかす景色は麦秋の空気のなかに郷愁を呼び寄せるようにある。(高橋正子)

★玉ねぎの列まっすぐに太りけり/古田敬二
真直ぐに立てた畝の玉ねぎ。玉が太ってもその畝の真直ぐさは崩れない。玉ねぎの収穫が楽しみな風薫る季節だ。(高橋正子)

5月7日(2句)

★団扇つくる手際見ており春の午後/多田有花
丸亀は団扇の生産で有名。その丸亀で団扇作りを目の当たりに見たのだ。夏へ向けて職人の手際もますます鮮やかに。少し汗ばむような春の午後の体験。(高橋正子)

★初夏の朝の浅間山の新たなり/小口泰與
夏の始め。浅間山も夏を迎えて、景色を変えたような印象だ。新たな姿にフレッシュな気持ちになる。(高橋正子)

5月6日(1句)

★植替へし木々の葉光り夏めける/廣田洋一
植え変えた木々。無事根付いたのだろう。木々の葉が陽光を受けてきらきらと輝いている。輝きは生き生きと夏が来たと思わせてくれる。(高橋正子)

5月5日(1句)

香川
★お接待受けたり我も遍路かな/多田有花
四国遍路には、お接待の風習がある。遍路笠には「同行二人」の字が書かれ、遍路は弘法大師と一緒なのである。お接待を受ければ、遍路姿でない自分も遍路の一人となっていることに気づいた。(高橋正子)

5月4日(1句)

★鳧鳴いて団地の庭を飛びゆけり/桑本栄太郎
田圃の中で見かける鳧は長い脚でチドリのような歩き方をし、ケケケケと言うような声で鳴く。団地の庭を飛んでゆくのは珍しいことだろうが、鳧が身近にいることも親しみが感じられてうれしいことだ。(高橋正子)

5月3日(1句)

★改元や五月人形飾りをり/廣田洋一
平成から令和への改元は5月1日であった。ちょうど、勇ましく健やかに育て男児よ、と五月人形が飾られる時節だ。男系天皇の即位と響き合うようだ。(高橋正子)

5月2日(3句)

★讃岐路の春大空に雲は無し/多田有花★★★★
讃岐平野は、高い山が見えるでもなく、平野の中にむっくりと立つ山がところどころに。讃岐富士さえそうである。大空には一片の雲もなく、のんびりと讃岐路が満喫できる。(高橋正子)

★春落葉隧道の先漁港かな/小口泰與
春の落葉が盛んに降る隧道の向こうには、明るい漁港が見える。春落葉のくぐもった世界から、明るい漁港の世界へと。「漁港」が効いた。(高橋正子)

★区画整理終えし田んぼの初蛙/古田敬二
区画整理を終えた田んぼは、畦がコンクリートで整然と仕切られているのであろうが、さっぱりとした田んぼに、蛙が鳴き始めた。初蛙の鳴き声が楽しげだ。(高橋正子)

5月1日(1句)

★緑立つ賢所の令(うるわ)しき/廣田洋一
宮中三殿の一つである賢所は皇室祭祀が行われるところ。「令」はうるわしいという意味という。令和の意味がそこにあってそれを詠みこんだ句。「緑立つ」の凛とした清々しさが宮中の賢所の感じを言い当てている。(高橋正子)

5月1日~10日(令和元年)


5月10日(4名)

多田有花
風軽し庫裏でいただく蓬餅★★★★
「風軽し」がさわやかで心地よい。風通しのよい庫裏でいただく蓬餅が格別美味しく思える。(高あh氏正子)

少年も少女も大志松の芯★★★
こでまりや甍を連ね庫裏本堂★★★

廣田洋一
練乳は要らぬ甘さの苺かな★★★
休日や苺のケーキ二つ買ふ★★★
苺狩り思うふ程には食べきれず★★★

小口泰與
夏の雲投網大きく輪を描き★★★★
夏の雲へ向けて投網を打つと、大きく輪を描く。生き生きとした夏漁の景色は、写真に撮りたいような構図。(高橋正子)

峰雲や浴びるが如き大ショッキ★★★
千体の石仏の顔夏の月★★★

桑本栄太郎
子燕の驚喜となりぬ軒端かな★★★
わらわらと葉裏靡くや若葉風★★★
少年の恋占いやマーガレット★★★

5月9日(5名)

小口泰與
夏つばめ合体ロボの完成す★★★
広告を飛ばす録画や明易き★★★
夏めきて赤城山(あかぎ)は雲を育てけり★★★★

多田有花
<与島>
春光や橋を支える島に来る★★★
歯朶萌ゆる時代のページめくられて★★★
久方の日差しや蜥蜴穴を出づ★★★★

廣田洋一
水中花ゆっくり開きておさまりぬ★★★
初鰹「酔鯨」酌みし土佐の夕★★★
藁の火を高く燃やして初鰹★★★★

桑本栄太郎
わらわらと葉裏白きや青葉風★★★
園児らの歌声ひびく花うばら★★★★
園児のかわいらしい歌声と花うばらがよく響き合って、健やかな喜びが感じられる。(高橋正子)

午後よりの日射し戻りぬ橡の花★★★

古田敬二
二人静こんなところへ広がりて★★★
水草生う目高鉢から溢れるほど★★★★
水草がよく茂り、目高を飼っている鉢から溢れるほどになった。水草も水も溢れるほどで、水が生き生きしている。(高橋正子)

そこだけが明るき五月の夕日挿す★★★

5月8日(5名)

多田有花
<丸亀城三句>
小さくも天守すっくと春空へ★★★★
天守より望む晩春讃岐富士★★★
瀬戸大橋かかる遠霞のなかへ★★★

廣田洋一
そこかしこ長柄を揺らす雛罌粟かな★★★★
花弁の一つ欠けたり虞美人草★★★
紅き花日を照り返す雛罌粟かな★★★

小口泰與
忽然と白根葵へ日の光★★★
軽暖や井戸汲む音の軽やかに★★★★
我が影へつつと上昇目高かな★★★

桑本栄太郎
木々の枝の大きく撓り新樹冷ゆ★★★
しゃらしゃらと枝の葉音や若葉寒★★★
麦秋の車窓はるかに滋賀の湖★★★★
車窓のはるか向こうにに滋賀の湖が見える。見はるかす景色は麦秋の空気のなかに郷愁を呼び寄せるようにある。(高橋正子)

古田敬二
じゃがたらの除草に一日暮れにけり★★★
豌豆の葉陰に丸く膨らめり★★★

玉ねぎの列まっすぐに太りけり★★★★
真直ぐに立てた畝の玉ねぎ。玉が太ってもその畝の真直ぐさは崩れない。玉ねぎの収穫が楽しみな風薫る季節だ。(高橋正子)

5月7日(4名)

多田有花
<丸亀城三句>
団扇つくる手際を見たり春の午後(原句)
団扇つくる手際見ており春の午後★★★★(正子添削)
丸亀は団扇の生産で有名。その丸亀で団扇作りを目の当たりに見たのだ。夏へ向けて職人の手際もますます鮮やかに。少し汗ばむような春の午後の体験。(高橋正子)

天守へと向かう急坂八重桜★★★
春の陽が高き石垣より差しぬ★★★

小口泰與
毛の国の馬走りける夏初め★★★
棚田へと水ほとばしる卯月かな★★★

夏浅き朝の浅間山(あさま)の新たなり(原句)
初夏の朝の浅間山の新たなり★★★★(正子添削)
夏の始め。浅間山も夏を迎えて、景色を変えたような印象だ。新たな姿にフレッシュな気持ちになる。(高橋正子)

廣田洋一
令和の仕事始や夏来たる★★★
子燕の軒の下より飛び出しぬ★★★
ちゅんちゅんと声をかけ合ふ子燕かな★★★

桑本栄太郎
みどりさす風の岸辺や波の音★★★

立ちどまる天道虫の飛翔かな(原句)
天道虫の飛翔についと立ち止まる★★★★(正子添削)

煽らるる葉裏白きや若葉寒★★★

5月6日(5名)

多田有花
<香川三句>
楠巨樹の下で遍路とお接待★★★★
金髪の遍路金剛杖でゆく★★★
春日和大師生まれし地に参る★★★

小口泰與
古民家に幟たちおり足尾線★★★★
水切りの石の弾みて卯月かな★★★
湖の水脈定かや山は新樹光★★★

廣田洋一
五重塔見上げる庭の夏めきぬ★★★
植替へし木々の葉光り夏めける★★★★
植え変えた木々。無事根付いたのだろう。木々の葉が陽光を受けてきらきらと輝いている。輝きは生き生きと夏が来たと思わせてくれる。(高橋正子)

牡丹咲く源平池の風香り★★★

古田敬二
風に揺れ旧居を囲む蓮華草★★★★
長屋門開けて分け入る春の水★★★
楠若葉包む久女観音像★★★

桑本栄太郎
蔓ばらの門扉に赤き幼保園(原句)
蔓ばらの門扉に赤し幼保園★★★(正子添削)
切れがあるほうが、イメージがはっきりして意味が分かりやすいです。

ペタンクの老人若き風五月★★★
もじゃもじゃとなんじゃもんじゃの夏に入る★★★
=注=
なんじゃもんじゃ=ヒトツバタゴの花

5月5日(5名)

多田有花
<香川三句>
お接待受けたる我も遍路かな(原句)
お接待受けたり我も遍路かな★★★★(正子添削)
四国遍路には、お接待の風習がある。遍路笠には「同行二人」の字が書かれ、遍路は弘法大師と一緒なのである。お接待を受ければ、遍路姿でない自分も遍路の一人となっていることに気づいた。(高橋正子)

神恵院つつじの庭をめぐりけり★★★
人はみなどこかで祈り紫木蓮★★★

古田敬二
水草の白き花咲く目高鉢★★★★
蕗を摘む両手にしかと余るほど★★★★
供花枯れて久女の墓碑や春の山★★★

小口泰與
黒板へ落書き定か葱坊主★★★
若芝や園児のリュックひとところ★★★★
隠れ沼の菜の花畑人の声★★★

廣田洋一
黄菖蒲の水面を揺らす風そよぐ(原句)
黄菖蒲の水面を揺らし風そよぐ★★★(正子添削)

鷺一羽羽繕いする春の池★★★
掃除終へ鯉の跳ね出て夏近し★★★★

桑本栄太郎
乗換えの駅のホームや夏隣る★★★★
竹秋の赤き山膚天王山★★★
教会の道のすがらや鉄線花★★★

5月4日(4名)

多田有花
<香川三句>
有明浜静かに寄せる春の波★★★
春の昼讃岐うどんに小海老天★★★
石仏は咲きし躑躅に囲まれて★★★★

小口泰與
アネモネや男体山と赤城山★★★
庭の木を止り木とせよ貌よ鳥★★★
菜の花の中をトロッコ列車かな★★★★

廣田洋一
天目茶碗青く光りて夏めけり★★★★
ぽってりと花の落ちたり八重桜★★★
青空に花弁赤き花水木★★★

桑本栄太郎
緑さす木蔭を歩む散歩かな★★★

鳧鳴いて団地の庭を飛びゆけり★★★★
田圃の中で見かける鳧は長い脚でチドリのような歩き方をし、ケケケケと言うような声で鳴く。団地の庭を飛んでゆくのは珍しいことだろうが、鳧が身近にいることも親しみが感じられてうれしいことだ。(高橋正子)

淋しくて濃紫なり紫蘭咲く★★★

5月3日(5名)

小口泰與
デージーや下校の子らの一列に★★★★
金盞花江戸より続く暖簾かな★★★
勿忘草林の中の無言館★★★

多田有花
<香川三句>
春の夕讃岐うどんを堪能す★★★
春の朝窓を開ければ屋島見ゆ★★★★
銭形の砂絵の向こう春の海★★★

古田敬二
残雪の御岳遠望旅に入る★★★
蓬摘む久女旧居に人はなし★★★★
妻もろとも十連休の大朝寝★★★★

廣田洋一
傾げたる傘に守られ牡丹咲く★★★

改元や五月人形飾りをり★★★★
平成から令和への改元は5月1日であった。ちょうど、勇ましく健やかに育て男児よ、と五月人形が飾られる時節だ。男系天皇の即位と響き合うようだ。(高橋正子)

飾兜かぶりし子もはや中年★★★

桑本栄太郎
野ばら咲く園の垣根の白きかな★★★
竹皮を脱ぐや青空近くなり★★★★
ボール蹴り遊ぶ親子やG・ウィーク★★★

5月2日(5名)

多田有花
<香川三句>
琴電に揺られて向かう春の午後★★★
讃岐路の春大空に雲は無し★★★★
讃岐平野は、高い山が見えるでもなく、平野の中にむっくりと立つ山がところどころに。讃岐富士さえそうである。大空には一片の雲もなく、のんびりと讃岐路が満喫できる。(高橋正子)

アイスショー終わり日永の帰路につく★★★

小口泰與
竹秋や山川風をそだてそめ★★★
春落葉隧道の先漁港かな★★★★
春の落葉が盛んに降る隧道の向こうには、明るい漁港が見える。春落葉のくぐもった世界から、明るい漁港の世界へと。「漁港」が効いた。(高橋正子)

春筍や朝のシャワーを頭より★★★

廣田洋一
天衣てふ白き牡丹や池の風★★★
もみじ咲く挙式を終へし二人かな★★★★
御朱印を手にして破顔令和五月★★★

桑本栄太郎
花びらの大きく崩れチューリップ★★★★
ぶんぶんと花虻唸る棚の下★★★
八重とても命運来たり花の屑★★★

古田敬二
白壁と青空映す苗代田★★★★
区画整理終えし田んぼの初蛙★★★★
区画整理を終えた田んぼは、畦がコンクリートで整然と仕切られているのであろうが、さっぱりとした田んぼに、蛙が鳴き始めた。初蛙の鳴き声が楽しげだ。(高橋正子)

青空へ幹しならせてコシアブラ★★★

5月1日(4名)

小口泰與
三代の御代の生活(たつき)や若葉風★★★★
安曇野の手打ちそば屋や花あけび★★★
名物の米爆ぜ菓子や花蘇芳★★★

廣田洋一
顔膨らませ真赤になりし躑躅かな★★★
春の池せせらぎ流す神田川★★★

緑立つ賢所の令(うるわ)しき★★★★
宮中三殿の一つである賢所は皇室祭祀が行われるところ。「令」はうるわしいという意味という。令和の意味がそこにあってそれを詠みこんだ句。「緑立つ」の凛とした清々しさが宮中の賢所の感じを言い当てている。(高橋正子)

多田有花
明るさや霞桜に天気雨★★★
平成を送りし雨が白藤に★★★
藤の花盛りや令和始まれり★★★★

桑本栄太郎
ひたひたと雨の朝や菜種梅雨★★★
生きて在ることの嬉しき花蘇芳★★★
列島の令和ニュースや五月来る★★★★

自由な投句箱/4月21日~30日(平成31年)


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今日の秀句/4月21日~30日


4月30日(1句)

★風に乗る紙飛行機や花楓/小口泰與
花楓が明るい緑を輝かせ、風が心地よくぬける。飛ばされた紙飛行機が花楓を吹く風にのって、飛距離を伸ばす。花楓のゆたかさが思われる。(高橋正子)

4月29日(1句)

★アパートの軒下までも蓮華草/桑本栄太郎
アパートは、田圃のほとりにあるのか。軒下まで、蓮華草が咲いて、ささやかな生活を彩っている。洗濯物のいい匂いがして来そうで、可愛い子どもや優しい母が住んでいそうなアパートを想像して、平和な気持ちになる。(高橋正子)

4月28日(2句)

★山吹や遡上の鱗きらきらと/小口泰與
山吹は渓川の川辺によく咲いている。遡上する魚が瀬をのぼるとき、きらきらと鱗が光る。渓流釣りの景色が楽しめる句だ。(高橋正子)

★婚礼の車を照らすシクラメン/廣田洋一
華やかなシクラメン。婚礼の車は特によく磨かれている。シクラメンが祝福するかのように、婚礼の車を照らしているのだ。婚礼という特別な場を得て、祝福の句が生れた。(高橋正子)

4月27日(2句)

★山藤や猿の横切る九十九折/小口泰與
四国松山から、峠を越え高知に至る国道で、道に出た猿を見たことがある。日本で一番高いところを走る国鉄バスであったから、こんな偶然にも出会った。山藤が垂れ下がり、九十九折に差し掛かるとひょいと猿が出てきて横切る。山深さのなかに野生動物と出会う偶然と驚きがある。(高橋正子)

★波の音聞いているのかチューリップ/多田有花
チューリップが勢ぞろいで咲いている。咲いている景色は平らであるようだが、リズムがある。一つ一つの花は人の顔の輪郭が偲ばれて、そば近く寄せる波の音を聞いているかのようである。一つ一つの花が生きている。聞いているのが、波の音なので納得できるのだ。(高橋正子)

4月26日(2句)

<湖北・海津大崎>)
★水清き湖北よ喇叭水仙よ/多田有花
湖北の春は冷たい。湖北の生活と相俟って、水は清い。湖北の水に映えて喇叭水仙が咲いている。イギリスの詩にある喇叭水仙が想像できて、意外な取り合わせに新しい日本の景色を見た思いだ。(高橋正子)

★サッチモのラッパの音色花水木/小口泰與
サッチモは、ルイ・アームストロングの愛称。花水木はアメリカの花。アフリカ系アメリカ人のサッチモのジャズトランペットの響きを聞いている至福の時間。取り合わせと生かした句。(高橋正子)

4月25日(2句)

★桜しべ散りこむ園の水飲み場/小口泰與
園は、公園か、幼稚園のようなところだろう。外に水飲み場があって、桜しべが盛んに散りこむ。水飲み場なので、濡れてくっついて、紅の蕊の印象がくっきりしている。桜しべと水飲み場の取り合わせがいい。(高橋正子)

★一画の畑に明るき花菜/桑本栄太郎
あるところにある一画の畑。花菜を吹く風が吹いて、明るく畑が輝いている。やわらかな春の日のかがやきに、心が明るくなる。(高橋正子)

4月24日(2句)

<湖北・海津大崎>
★湖上ゆく人に手を振る花見かな/多田有花
湖をゆく船に乗り、すれ違う船の人に手を振る。花見のうきうきした気分が手を振りたくさせるのだろう。ずっと前、ライン下りの船からすれ違う船の人たちと手を振りあったことを思い出した。これも楽しさの一つ。(高橋正子)

★花の種蒔きて心の解放感/廣田洋一
花の種を蒔いて、ほっとしている。この解放感はいいものだ。蒔き時を逃さなければ、芽生えて、花を咲かせてくれることは大方約束できる。(高橋正子)

4月23日(2句)

★目を閉じて見上げる空の遅日かな/廣田洋一
読み耽っていた本を閉じ、空を見上げた。春の日は、まだ暮れかねている。日がずいぶん長くなったと実感するが、日暮れが近いことも確かだ。「遅日」の季語がよく効いている。(高橋正子)

<湖北・海津大崎>
★満開の桜の沖へヨットゆく/多田有花
青春性のある句だ。満開の桜を岸辺に残して若々しいヨットは沖へ出て行く。(高橋正子)

4月22日(2句)

★全身の花粉に溺れ熊ん蜂/小口泰與
羽音が猛々しい熊ん蜂。蜜を吸いに花に来たのはよいが、丸々とした体、全身が、花粉まみれになった。花粉に溺れて、なんだか、可愛い。(高橋正子)

草引きし軍手はずして夏近し/廣田洋一
軍手を嵌めて草引きをした。草引きが終わり軍手をはずすと、手が汗に濡れて、素手になると、快い。「夏近し」を急に感じるときだ。(高橋正子)

4月21日(1句)

<湖北・海津大崎>
★石積の湖岸に寄せる春の波/多田有花
情景は石積の湖岸に湖の波が寄せているだけなのだが、思いは、繰り返され打ち寄せる波の静かな力が感じとられる。行く春を惜しむ気持ちも。(高橋正子)

4月21日~30日


以下コメントは後ほど
4月30日(4名)

廣田洋一
四月雨平成の世に泣き別れ★★★
昭和去り令和の来る春の果★★★
昭和の日忘れて過ぎる平成の春★★★

小口泰與
風に乗る紙飛行機や花楓★★★★
花楓が明るい緑を輝かせ、風が心地よくぬける。飛ばされた紙飛行機が花楓を吹く風にのって、飛距離を伸ばす。花楓のゆたかさが思われる。(高橋正子)

涌き出でて集落おおう杉花粉★★★
青柳や風に従う雲一朶★★★

多田有花
若楓重なりあいて輝けり★★★★
山寺の伽藍に近く八重桜★★★★
霞桜風心地よく吹き渡る★★★

桑本栄太郎
平成の大晦日とや若葉寒★★★★
忘れものをたずね家路や蝶の昼★★★
外つ人の一家着物や京の春★★★

4月29日(4名)

多田有花
本堂や枝垂桜のそのむこう★★★
山路いま三葉躑躅の色に染め(原句)
山路いま三葉躑躅の色に染まり★★★(正子添削)
蝶々となりて集いぬ頂に★★★★

小口泰與
マルメロの花や諏訪湖の見ゆる墓地★★★★
遠山は斑なりけり葡萄の芽★★★
山山をつなぐ鉄塔若緑★★★

桑本栄太郎
雨だれの音に朝寝や今朝の雨★★★
アパートの軒下までも蓮華草★★★★
アパートは、田圃のほとりにあるのか。軒下まで、蓮華草が咲いて、ささやかな生活を彩っている。洗濯物のいい匂いがして来そうで、可愛い子どもや優しい母が住んでいそうなアパートを想像して、平和な気持ちになる。(高橋正子)

忘れものは遠き過去とや蝶の昼★★★

廣田洋一
太陽の塔立ちたる如し辛夷の木★★★
馬酔木咲く御殿山の風吹き渡る★★★
忙しなく吾が肩叩く春落葉★★★★

4月28日(4名)

多田有花
仰ぎ見る高きに光る若楓★★★★
濃きもあり薄きもありて八重桜★★★
夏近し塩屋蜻蛉の生まれけり★★★★

小口泰與
山吹や遡上の鱗きらきらと★★★★
山吹は渓川の川辺によく咲いている。遡上する魚が瀬をのぼるとき、きらきらと鱗が光る。渓流釣りの景色が楽しめる句だ。(高橋正子)

噴煙の流るる先や花りんご★★★
見晴るかす千曲の蛇行花林檎★★★

廣田洋一
婚礼の車を照らすシクラメン★★★★
華やかなシクラメン。婚礼の車は特によく磨かれている。シクラメンが祝福するかのように、婚礼の車を照らしているのだ。婚礼という特別な場を得て、祝福の句が生れた。(高橋正子)
小さき門明るくせむとシクラメン★★★
縁取りの白のまぶしき紅シクラメン★★★

桑本栄太郎
中腹に十字架抱き山笑ふ★★★★
奉仕終え帰途に会いたり揚羽蝶★★★
竹秋の峰のつづくや天王山★★★

4月27日(4名)

小口泰與
海棠へ雨の重さのうつむけり(原句)
海棠や雨の重さにうつむけり★★★(正子添削)

山藤や猿の横切る九十九折★★★★
四国松山から、峠を越え高知に至る国道で、道に出た猿を見たことがある。日本で一番高いところを走る国鉄バスであったから、こんな偶然にも出会った。山藤が垂れ下がり、九十九折に差し掛かるとひょいと猿が出てきて横切る。山深さのなかに野生動物と出会う偶然と驚きがある。(高橋正子)

桜蘂降る分教場の水飲み場★★★★

廣田洋一
「御成婚」てふ躑躅咲く平成の果★★★
春雨や平成惜しむ豊玉姫★★★
平成を雨に流すか暮の春★★★

多田有花
波の音聞いているのかチューリップ★★★★
チューリップが勢ぞろいで咲いている。咲いている景色は平らであるようだが、リズムがある。一つ一つの花は人の顔の輪郭が偲ばれて、そば近く寄せる波の音を聞いているかのようである。一つ一つの花が生きている。聞いているのが、波の音なので納得できるのだ。(高橋正子)

花描く人とあいさつ花を撮る★★★
光浴び大島桜みずみずし★★★

桑本栄太郎
畑中に一本ありぬ花大根★★★
谷間の濃淡ふかく山笑ふ★★★
樟の枝の大きくしなり春嵐★★★★

4月26日(5名)

<湖北・海津大崎三句>
奥琵琶湖桜並木のまだ続く★★★

春の陽はまだ高かりしムスカリに(原句)
春の陽はまだ高かりきムスカリに★★★★(正子添削)
水清き湖北よ喇叭水仙よ★★★★
湖北の春は冷たい。湖北の生活と相俟って、水は清い。湖北の水に映えて喇叭水仙が咲いている。イギリスの詩にある喇叭水仙が想像できて、意外な取り合わせに新しい日本の景色を見た思いだ。(高橋正子)

小口泰與
海棠や夕べの擬宝珠雨の中★★★
サッチモのラッパの音色花水木★★★★
サッチモは、ルイ・アームストロングの愛称。花水木はアメリカの花。アフリカ系アメリカ人のサッチモのジャズトランペットの響きを聞いている至福の時間。取り合わせと生かした句。(高橋正子)

春暁や再来患者はや数多★★★

廣田洋一
色白の津軽娘や花林檎★★★
林檎の花白の合間に紅き蕾★★★
林檎の花白の合間に蕾赤き★★★★(正子添削①)
林檎の花白の合間に蕾赤し(添削②)
故郷を思えば見ゆる林檎の花★★★★

桑本栄太郎
藤色と云うはこの色藤の棚★★★
校庭にチャイム響くや花は葉に★★★★
菜の花や甍きらめく乙訓郷★★★

4月25日(5名)

小口泰與
黄昏や本流に出づ花筏★★★
桜しべ散りこむ園の水飲み場★★★★
園は、公園か、幼稚園のようなところだろう。外に水飲み場があって、桜しべが盛んに散りこむ。水飲み場なので、濡れてくっついて、紅の蕊の印象がくっきりしている。桜しべと水飲み場の取り合わせがいい。(高橋正子)

太古より利根の恵みや春の土★★★

廣田洋一
マンションの庭の光や花水木★★★★
白き花今朝も増えたり花水木★★★
道端を白く埋めたる花水木★★★

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
自転車が桜のアーチをやってくる★★★
大崎や枝垂桜もときにあり★★★
湖と空の青さに花の色★★★★

桑本栄太郎
一画の畑に明るき花菜風★★★★
あるところにある一画の畑。花菜を吹く風が吹いて、明るく畑が輝いている。やわらかな春の日のかがやきに、心が明るくなる。(高橋正子)

ひな芥子の刈り残されし畦の中★★★
饒舌と言うは淋しき揚ひばり★★★

古田敬二
ネモフィラのプランターからこぼれ咲く★★★
真っ白なソックスきょうから新中学生★★★
糸繰草女子中学生は賑やかに★★★★

4月24日(4名)

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
いっぱいの人載せ巡る花見船★★★
奥琵琶湖花の彼方に竹生島★★★★
湖上ゆく人に手を振る花見かな★★★★
湖をゆく船に乗り、すれ違う船の人に手を振る。花見のうきうきした気分が手を振りたくさせるのだろう。ずっと前、ライン下りの船からすれ違う船の人たちと手を振りあったことを思い出した。これも楽しさの一つ。(高橋正子)

小口泰與
八重桜浅間山頂斑なり★★★★
逆光の沼輝かせ花の滝★★★
境内の風をこらうる残花かな★★★

廣田洋一
花の種蒔きて心の解放感★★★★
花の種を蒔いて、ほっとしている。この解放感はいいものだ。蒔き時を逃さなければ、芽生えて、花を咲かせてくれることは大方約束できる。(高橋正子)

蒔き終えて隅に差し込む種袋★★★★
生えるかも知れぬと古き花種蒔きにけ★★★り

桑本栄太郎
ぼつてりと雨に咲きたり八重桜★★★
さくら蘂降る襤褸となりぬ舗道かな★★★
花柄の雨にくもりぬ著我の花★★★★

4月23日(4名)

小口泰與
松籟の浅間山(あさま)まだらや揚ひばり★★★
山を分け岩を翻弄春の川★★★
若芝やホースのたうち水阿修羅★★★

廣田洋一
若き日の妻と遊べり春の夢★★★★
書を閉じて見上げる空の遅日かな★★★★
読み耽っていた本を閉じ、空を見上げた。春の日は、まだ暮れかねている。日がずいぶん長くなったと実感するが、日暮れが近いことも確かだ。「遅日」の季語がよく効いている。(高橋正子)

西空の真赤に染まる遅日かな★★★

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
満開の桜の沖へヨットゆく★★★★
青春性のある句だ。満開の桜を岸辺に残して若々しいヨットは沖へ出て行く。(高橋正子)

揚げたての鮎の天ぷら食ぶ花見★★★
若楓先にありけり血天井★★★

桑本栄太郎
葉の裏の通りすがりや花楓(原句)
花楓通りすがりの葉裏かな★★★★(正子添削)
棚下に立つや香りと虻の昼★★★
蛙鳴く午後の曇りや雨催い★★★

4月22日(4名)

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
カヤックで水の上からお花見を★★★★
湖と桜並木のあわいゆく★★★
どこまでも染井吉野は満開に★★★

小口泰與
全身を花粉に溺る熊ん蜂(原句)
全身の花粉に溺れ熊ん蜂★★★★(正子添削)
羽音が猛々しい熊ん蜂。蜜を吸いに花に来たのはよいが、丸々とした体、全身が、花粉まみれになった。花粉に溺れて、なんだか、可愛い。(高橋正子)

湧水の棚田かけるやおそ櫻★★★★
遠山の銀嶺映うや朝櫻★★★

廣田洋一
草引きし軍手はずして夏近し★★★★
軍手を嵌めて草引きをした。草引きが終わり軍手をはずすと、手が汗に濡れて、素手になると、快い。「夏近し」を急に感じるときだ。(高橋正子)

鉢の土篩にかけて花種蒔★★★
電車の中新顔ばかり四月かな★★★

桑本栄太郎
想い出をたどり舞い居り蝶の昼★★★
からし菜の中洲占めたり桂川★★★
柿の葉に日差し明るく新芽伸ぶ(原句)
柿の葉に日差し明るし新芽伸ぶ★★★★(正子添削)

4月21日(3名)

小口泰與
さえずりや瀬尻の渦の白き影★★★
あなかまと妻を制すや雲雀の巣★★★
花うぐいつけ場めがけて投網せり★★★★

桑本栄太郎
雲間より峰に日差しや花の雲★★★
乙訓の風の田道や葱坊主★★★★
溝川のあふれ滲みだす穀雨かな★★★

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
石積の湖岸に寄せる春の波★★★★
情景は石積の湖岸に湖の波が寄せているだけなのだが、思いは、繰り返され打ち寄せる波の静かな力が感じとられる。行く春を惜しむ気持ちも。(高橋正子)

花の下琵琶湖眺めつお弁当★★★
寄す波に枝差し伸べし桜かな★★★★

自由な投句箱/4月11日~20日


※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
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主宰:高橋正子・管理:高橋信之

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今日の秀句/4月11日~20日


4月20日(2句)

★松籟に乗りてふわりと雀の子/小口泰與
「ふわりと」が子雀のかわいらしさをよく表現している。松籟との取り合わせも、すっきりとしていていい。

★それぞれの花色選び蝶の昼/桑本栄太郎
蝶が花から花へ飛ぶ真昼。見ておれば、それぞれの蝶は、それぞれの花色を選んでいるように、同じ色の花から花へ移る。蝶と私との楽しい昼。(高橋正子)

4月19日(2句)

★うぐいすや棚田の水の満ちにける/小口泰與
棚田に水が満たされ、田植えの準備が次第に整う頃、田水を震わすようにうぐいすが美声を響かせる。山田ののどかな風景がこれからも続くことを祈りたい気持ちになる。(高橋正子)

★頂の小楢の芽吹き銀色に/多田有花
芽吹きが「銀色に」というのが、いい。芽吹いたばかりは、緑ではなく、銀色。ういういしさに輝いている。(高橋正子)

4月18日(1句)

★風のたび空へ花びら放たれり/多田有花
咲き満ちた花も散り始める時期が来て、風が吹くたびに花が枝から放たれる。さびしさも微かに花が散る。(高橋正子)

4月17日(4句)

★溶岩原の広漠とあり麦青む/小口泰與
溶岩原は、広漠として、麦が青んでいる。心が伸び伸びする景色だ。群馬県は国内でも最大の麦の産地と聞く。その産地もこんな景色から生まれるものであろう。(高橋正子)

★奈良漬や吉野の山の別れ霜/廣田洋一
𠮷野に遊んだ。終霜の時期は、京都で4月9日といわれるが、吉野の山の別れ霜も、おおよそその頃であろうか。桜が満開の季節と重なるかよくわからないが、下千本、中千本、奥千本と咲く桜の楽しみのなかに、奈良漬の添えられた食事は、渋くていい味わいかも。奈良の奈良漬は特別美味しい印象がある。(高橋正子)

★笹の葉の天より降りぬ竹の秋/桑本栄太郎
竹は、春に葉を入れ替えて落とす。それを竹の秋というが、歩いていると、高いところからひらひらと竹の葉が舞い落ちる。軽い竹の葉は、天から降ってくるように思える。(高橋正子)

★蒼天の色がこぼれてネモフィラに/古田敬二
ネモフィラはオオイヌノフグリを大きくしたような青い花。公園や丘陵などに一面に植えられ、今や親しい花となっている。蒼空の色とグラデーションをなして、見事でいる。「蒼天の色がこぼれ」たのだと思える。(高橋正子)

4月16日(2句)

★桜咲く絶えず小鳥をとまらせて/多田有花
桜の密を吸いに小鳥がやってくる。満開の花には、入れ替わり小鳥がやってくる。「絶えず」やってくる。うららかな春の日が快い。(高橋正子)

★塗りたての畔真昼の日を返す/古田敬二
田を打ち終わりいつでも植えられるようになると、田の水が漏れたりしないように、田の泥土で塗り固める。塗ったばかりの畔は日をてらてらと日を返して、見事である。この見事さは、営々と続いて来たもの。(高橋正子)

4月15日(2句)

★静かなる古刹は花にあふれおり/多田有花
古刹の桜は大木であろう。訪れる人もなく、ただ花があふれる古刹。静かさがあふれ咲く桜を引き立てている。その花をひとりじめして楽しむ作者が見える。(高橋正子)

★芽吹き盛ん相生山の膨れけり/古田敬二
調べると、相生山は名古屋市にある標高60mほどの低山とある。市民の緑地として整備され自然もゆたか。オオタカの巣も見られると言う。生活の中に楽しめる相生山の木々が芽吹き山が膨らむ。これからいい季節が待っている。(高橋正子)

4月14日(1句)

★初燕鏡のような水面を/古田敬二
初燕が、鏡のように静かな水面を、水面すれすれに飛んでいるのだろう。初燕の艶やかな羽の色が、鏡のような水面によく呼応している。(高橋正子)

4月13日(3句)

★飛騨川の峪崖深し飛花落花/古田敬二
飛騨川は流れも急であるが、峪の崖も深い。そこに舞い込む桜の花びらは、捨身の如くひたすらに散っているのだ。(高橋正子)

★ものの芽の彼方や山の連なれり/多田有花
ものの芽の色が柔らかい。その向こうには連山が見え、遥かな景色が望める。なにか希望がもてそうな景色だ。(高橋正子)

★遠山はまだ銀嶺や桜狩/小口泰與
山国では、桜が咲いても遠い山は雪を冠っている。桜と銀嶺とが山国春を物語っている。(高橋正子)

4月12日(1句)

★トンネルを出れば鉄橋風光る/多田有花
トンネルを出たとたん、鉄橋となり、辺りの風が光る。鉄橋の両側は、吹く風が自由で、輝いている。気持ちのよい季節だ。(高橋正子)

4月11日(1句)

★トンネルの闇の向こうに春の昼/多田有花
トンネルの向こうには、こちらとは違う世界がある。トンネルの闇を抜ければ、向こうには光眩しい春の昼がある。(高橋正子)

4月11日~20日


4月20日(4名)

小口泰與
我が郷は赤城根っこしつばくらめ★★★
さえずりや浅間南面斑なり★★★
松籟に乗りてふわりと雀の子★★★★
「ふわりと」が子雀のかわいらしさをよく表現している。松籟との取り合わせも、すっきりとしていていい。

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
お花見や湖北の駅に降り立ちぬ★★★
満開の桜湖岸を縁取りぬ★★★★
奥琵琶湖残雪の山遠望す(原句)
一読してイメージが纏まりにくいので、添削しました。
残雪の山遠望に奥琵琶湖★★★★(正子添削)

廣田洋一
厚化粧の熟女の如し八重桜★★★
斎場や塀際に散る八重桜★★★
桜並木どんじり締める八重桜★★★

桑本栄太郎
ぐずぐずの飛行機雲や春の空★★★
それぞれの花色選び蝶の昼★★★★
蝶が花から花へ飛ぶ真昼。見ておれば、それぞれの蝶は、それぞれの花色を選んでいるように、同じ色の花から花へ移る。蝶と私との楽しい昼。(高橋正子)
散りしきる傍へ咲き初む八重桜★★★

4月19日(4名)

小口泰與
うぐいすや棚田の水の満ちにける★★★★
棚田に水が満たされ、田植えの準備が次第に整う頃、田水を震わすようにうぐいすが美声を響かせる。山田ののどかな風景がこれからも続くことを祈りたい気持ちになる。(高橋正子)
菜の花や千曲流るる詩の里★★★
青空へ万朶の花や鳥の声★★★

多田有花
頂の小楢の芽吹き銀色に★★★★
芽吹きが「銀色に」というのが、いい。芽吹いたばかりは、緑ではなく、銀色。ういういしさに輝いている。(高橋正子)

囀りの山より見やる沖青し★★★★
坂下る桜吹雪を浴びながら★★★

廣田洋一
白藤や斎庭を香り満たしをり★★★
房の先未だ開かぬ藤の花★★★
小さき風ゆったり揺れる藤の房★★★★

桑本栄太郎
放課後のドッジボールや春嵐★★★★
若芝の足裏(あうら)ふかふか跳ねいたり★★★
入園のすでに過ぎたりすみれ咲く★★★

4月18日(4名)

多田有花
風のたび空へ花びら放ちおり(原句)
花びらからみれば、「放ちおり」ではなく、「放たれる」ではないでしょうか。
風のたび空へ花びら放たれり★★★★(正子添削)
咲き満ちた花も散り始める時期が来て、風が吹くたびに花が枝から放たれる。さびしさも微かに花が散る。(高橋正子)

花吹雪視線あげれば遠き島(原句)
「花吹雪」と「視線あげれば」の情景がよくわからないです。
花吹雪視線の先の遠き島★★★★(正子添削)

絶え間なく花びら降り注ぐ山路★★★

小口泰與
わたらせのトロッコ列車桃の花★★★
せめぎ合う激しき鋭声百千鳥★★★
うぐいすやボート漕ぎ行く山上湖★★★★

廣田洋一
ちょんちょんと何か啄む雀の子★★★
丸まりて辺り見回す雀の子★★★★
鳥かごには落ち着かざりし雀の子★★★

桑本栄太郎
さくら蘂降るや地道の川辺行く★★★
川に添い鳶の高舞い風光る★★★★
すかんぽの赤き穂が伸び夕暮るる★★★

4月17日(5名)

小口泰與
溶岩原の広漠とあり麦青む★★★★
溶岩原は、広漠として、麦が青んでいる。心が伸び伸びする景色だ。群馬県は国内でも最大の麦の産地と聞く。その産地もこんな景色から生まれるものであろう。(高橋正子)

噴煙の韋駄天走り花りんご★★★
たんぽぽや赤城七峰靄の中★★★

多田有花
青空に映えし桜と甍かな★★★★
鳥になり潜り込みたし花のなか★★★
すでに風心地よきかな花の下★★★

廣田洋一
奈良漬や吉野の山の別れ霜★★★★
𠮷野に遊んだ。終霜の時期は、京都で4月9日といわれるが、吉野の山の別れ霜も、おおよそその頃であろうか。桜が満開の季節と重なるかよくわからないが、下千本、中千本、奥千本と咲く桜の楽しみのなかに、奈良漬の添えられた食事は、渋くていい味わいかも。奈良の奈良漬は特別美味しい印象がある。(高橋正子)

霜の別れとつくに済ませ湘南は★★★
白々と別れ霜なり狭庭かな★★★

桑本栄太郎
花屑の祇園白川勇歌碑★★★
花屑の酔いたるようにうすき紅★★★
笹の葉の天より降りぬ竹の秋★★★★
竹は、春に葉を入れ替えて落とす。それを竹の秋というが、歩いていると、高いところからひらひらと竹の葉が舞い落ちる。軽い竹の葉は、天から降ってくるように思える。(高橋正子)

古田敬二
蒼天がこぼすネモフィラ紫に★★★
蒼天の色がこぼれてネモフィラに★★★★
ネモフィラはオオイヌノフグリを大きくしたような青い花。公園や丘陵などに一面に植えられ、今や親しい花となっている。蒼空の色とグラデーションをなして、見事でいる。「蒼天の色がこぼれ」たのだと思える。(高橋正子)

残る鴨二匹そろいて水脈を引く(原句)
残る鴨二羽がそろいて水脈を引く★★★★(正子添削)

4月16日(5名)

小口泰與
うぐいすや暁の厨の忙しかり★★★
夕映えの一朶の雲や花あんず★★★
洋洋と榛名湖蒼き春日傘(原句)
洋々と榛名湖蒼し春日傘★★★★(正子添削)

多田有花
花びらの先に伸び行く飛行機雲★★★
桜咲く絶えず小鳥をとまらせて★★★★
桜の密を吸いに小鳥がやってくる。満開の花には、入れ替わり小鳥がやってくる。「絶えず」やってくる。うららかな春の日が快い。(高橋正子)

こんな見事な桜をひとりで見る★★★

廣田洋一
白き紐ゆらゆら揺れる雪柳★★★
零れさうでこぼれぬ花や雪柳★★★★
せせらぎのたゆみなき音雪柳★★★

古田敬二
春水分け真鯉緋鯉が餌による★★★★
塗りたての畔真昼の日を返す★★★★
田を打ち終わりいつでも植えられるようになると、田の水が漏れたりしないように、田の泥土で塗り固める。塗ったばかりの畔は日をてらてらと日を返して、見事である。この見事さは、営々と続いて来たもの。(高橋正子)

走り去る車の風やすみれ咲く★★★

桑本栄太郎
花屑の酔いたるようにうすき紅★★★
せせらぎへ枝の残花や高瀬川★★★
花屑の風にたゆとうにわたずみ★★★★

4月15日(5名)

小口泰與
山風に白波立ちて蝌蚪の紐★★★
背景は真っ青な空嶺桜★★★★
いざ跳ばん草掴みたる初蛙★★★

多田有花
静かなる古刹は花にあふれおり★★★★
古刹の桜は大木であろう。訪れる人もなく、ただ花があふれる古刹。静かさがあふれ咲く桜を引き立てている。その花をひとりじめして楽しむ作者が見える。(高橋正子)
山桜その大きさを見上げおり★★★
花は咲く誰も訪ねぬ山中に★★★

廣田洋一
人気無き通りにかさと春落葉★★★
滑り台順番待ちの春落葉★★★
二三枚川に浮かびし春落葉★★★

古田敬二
青空へ揺れて楢の木芽吹きけり★★★
芽吹き盛ん相生山の膨れけり★★★★
調べると、相生山は名古屋市にある標高60mほどの低山とある。市民の緑地として整備され自然もゆたか。オオタカの巣も見られると言う。生活の中に楽しめる相生山の木々が芽吹き山が膨らむ。これからいい季節が待っている。(高橋正子)

豆の花豆にならんと咲きにけり★★★

桑本栄太郎
建仁寺土塀の中に花かりん★★★
花屑の舞いて立ち居りつむじ風★★★
花虻や幼き日々の母想う★★★★

4月14日(5名)

小口泰與
欅大衆の山風を鷲づかみ
「欅大衆」は「欅大樹」の間違いでしょうか。

夜桜や二人乗りたる観覧車★★★★
傘寿にて趣味は二つよ亀の鳴く★★★

廣田洋一
行き付けの書店閉じられ春惜しむ★★★
春惜しむ丹沢の山煙りをり★★★★
道端に咲く花々に春惜しむ★★★

多田有花
廃線の枕木のそばすみれ咲く★★★★
すみれ咲くアスファルトに咲く花として★★★
青空に花見の歌の聞こえ来る★★★

桑本栄太郎
山並の京へとつづく花の雲★★★
土手草の青む車窓や阪急線★★★★
からし菜の中州占めたり桂川★★★

古田敬二
初燕池の賑わい始まれる★★★
初燕鏡のような水面に(原句)
初燕鏡のような水面を★★★★(正子添削)
今年また無人駅舎につばくらめ★★★

4月13日(5名)

古田敬二
飛花落花飛騨川の峪崖深し(原句)
飛騨川の峪崖深し飛花落花★★★★(正子添削)
友見舞う窓辺に飛び交う初燕★★★★
満開を見上げる空の飛行体★★★

多田有花
山頂まで三葉躑躅の道をゆく★★★
ものの芽の彼方に山の連なりが(原句)
「が」で止めたところは、落ち着きが悪いです。
ものの芽の彼方や山の連なれり★★★★(正子添削)

山ひとつ登って下りる谷朧★★★★

小口泰與
遠山はまだ銀嶺や桜狩★★★★
花筵ギター片手に乾杯す★★★
うとうとと辞書に顔伏し亀鳴けり★★★

廣田洋一
仔馬跳ね草露跳ねる牧の朝★★★★
大流星しっかり継ぎし仔馬かな★★★
馬の仔の額の白は母親似★★★

桑本栄太郎
平成の御代を惜しめり花吹雪★★★
散り敷きてなほ蘂酔ふや花あはれ★★★
休日の園の花壇にチューリップ★★★★

4月12日(5名)

古田敬二
陽光の入り陽に続く春の海★★★
にぎやかに満開近きシデコブシ★★★★
白々と街路両側シデコブシ★★★

多田有花
のどけしや残る枕木踏みつゆく★★★
トンネルを出れば鉄橋風光る★★★★
遠目にも大きく見えて江戸彼岸★★★

廣田洋一
覚ましを止めて遠ざけ朝寝かな★★★
大朝寝時計は鳴らず烏も鳴かず★★★
朝寝など許されぬ旅吉野山★★★★

小口泰與
上り簗越後魚沼魚野川★★★★
水荒き春の魚野川(うおの)の簗場かな★★★
春なると決まって出づる恙かな★★★

桑本栄太郎
校門の花や早くも花吹雪★★★★
花屑の舞いて立ち居りつむじ風★★★
赤白黄斑もありぬチューリップ★★★

4月11日(4名)

多田有花 
うららかや廃線跡をハイキング★★★
渓流と桜を愛でしハイキング★★★
トンネルの闇の向こうに春の昼★★★★

小口泰與
砂びの穴の五六個牡丹百合★★★
咲き満ちて烈風にあう杏かな★★★
利根川の煌煌とせる桃の花★★★★

廣田洋一
うつすらと白き流れや春の雲★★★
ビルの窓白く光れる春の雲★★★★
逆上がりやつと出来たり春の雲★★★

桑本栄太郎
坂道をたゆとう歩む花の屑★★★★
花びらの舞いて散り初む花あはれ★★★
風吹かば誰れぞ留めん花吹雪★★★