1月11日~20日


1月20日(3名)

小口泰與
吹越やシャッター街の通学路★★★
みずうみの只中の島大白昼 
大白昼は、大白鳥の誤りでしょうか。「白昼」が間違いでないなら、「白昼」の「白」は、「明るくはっきりしている」の意味があり、それに「大」はいらないのでは、と思います。

冬の星見舞い帰りのバス停に★★★★
病院の面会時間に合わせて午後から見舞いに出かけたのであろう。帰るころ、バス停でバスを待っていればいれば、冬の日暮れは早く、星が出ている。見舞いのあとのきれいな星に心を置いている。(高橋正子)

廣田洋一
大寒や気温予報を見て出かけ★★★
大寒や今日も元気にラジオ体操★★★
大寒や肩口冷えて目覚めたり★★★

桑本栄太郎
一木を被い尽くせり枯葎★★★

裸木の小枝真直ぐや天を向く(原句)
裸木の小枝真っ直ぐ天を差す★★★★(正子添削)

流木の白く映え居り寒の川★★★

1月19日(5名)

小口泰與
北風に雨戸の騒ぐ夜更かな★★★
空風のさなか巡回車の灯(トモシ)★★★
雪浅間真向いにして大気受く★★★

廣田洋一
降る雪の積もらぬままに止みにけり★★★
白きもの混じれる雨の雪となり★★★
雪空に生き生きと飛ぶ鳥のあり★★★★
鳥たちは、雪空であろうと、自由に、いきいきと飛んでいる。小さい体にある生命力の強さを見せられる場面。(高橋正子)

上島祥子
松過ぎて結局読まずに返す本★★★
小正月出社の息子送り出す★★★
パンジーや開店準備朝陽射す★★★★
開店準備中の店頭に朝日が射し、店先のパンジーが生き生きと輝いている。働く人がいきいきと、はつらつとした店の様子が見える。(高橋正子)

桑本栄太郎
うつすらと寒月残る西の空★★★
燦々と橙の実の日差し受く★★★
トンネルを出でて冬日や新京極★★★

多田有花
亡き人の故郷よりとどくみかんかな★★★
ブロッコリやわらかく溶けるチーズのせ★★★
助手席に葉つき大根二本載せ★★★★

1月18日(4名)

小口泰與
校庭を子ら駆け來るや霜の声
「霜の声」は、「霜の降りる寒い夜、物音がしんしんと響くようなさえわたった興趣。」 を言い、「 霜の降りた夜の様子をいう語」です。ですが、この句からは、昼の子供たちの様子ではないかと思えるのです。

枯枝に音符の弾む群雀★★★

宿下駄を響かせもどる冬桜(原句)
冬桜宿下駄響かせもどりけり★★★★(正子添削)
泊りがけで冬桜を見物に。旅の身をほどいて、宿下駄をひっかけて冬桜を見に。良い写真がとれたのであろう。宿下駄をからころ響かせて宿に戻った。楽しそうだ。(高橋正子)

廣田洋一
着ぶくれて手押し車を出しにけり★★★
着ぶくれてジムに通へる媼かな★★★
着ぶくれてふくら雀と向き合へり★★★

多田有花
寒中の山おりて向かうサウナかな★★★
葉つきのまま大きかぶらを貰いけり★★★
煮かぶらの舌にとろけるばかりなり★★★

桑本栄太郎
<桂川、淀川、木津川>
三川の集う中州や大枯野★★★
新駅の高架交叉や日脚伸ぶ★★★★
高架が交差し、新駅ができ、街はいきいきと変貌している。日脚が伸びて、その様子が目の当たりに明らかになったように思う。(高橋正子)

大寒や村に一つの半鐘塔★★★

1月17日(4名)

小口泰與
冬の鷺湖面に長き影を乗せ★★★
大岩を越えて氷柱の飛びにけり★★★
雪雲の万象全て遮断せり★★★

廣田洋一
海原に酷寒満ちて白々と(原句)
「酷寒満ちて(酷寒が満ちる)」は、日本語として不自然な感じです。
酷寒の海原白々広がれり★★★★(正子添削)

起き抜けの寒気厳しき水を汲む(原句)
「寒気厳しき水」も日本語として不自然です。

起き抜けの寒気厳しく水を汲む★★★★(正子添削)
厳しくのところで切れを入れます。
寒気は、起き抜けの時一番感じるものかもしれない。その厳しい寒気に耐えて生活の水を汲む必要がある。
地味な句意なのだが、実感があってよく頷ける。(高橋正子)

厳寒の空を彩るオーロラかな★★★

桑本栄太郎
鎮魂の祈り炎に阪神忌★★★

まんさくの花よ枯葉のその侭に(原句)
まんさくの花よ枯葉をその侭に★★★★(正子添削)
まんさくは、枯葉を落ちきらずに花を咲かせている。この枯葉の色と、まんさくの黄色い花が、いい色合いで好もしいのだ。(高橋正子)

稜線をいく度も見たり雪催い★★★

多田有花
<朝来山登山三句>
枯葉に座し昼のラーメンを囲む★★★
冬空を映せる池の畔に下りる★★★
天空の城は陽のなか日脚伸ぶ★★★★

1月16日(5名)

古田敬二
冬木立黒々影を伸ばしけり★★★★
落葉道踏まれて土になる気配★★★
尾根に出る快晴の空冬温し★★★

小口泰與
白鳥のだみ声発し翔ちにけり★★★
背らよりシャッター音や大白鳥★★★
白鳥の長の鋭声や族も翔つ★★★

廣田洋一
茜空未だ広がり日脚伸ぶ★★★★
バス停の行列長し日脚伸ぶ★★★
軟式のテニス練習日脚伸ぶ★★★

多田有花
<朝来山登山三句>
赤テープ頼りに枯葉踏み登る★★★
寒林を透かし但馬の山望む★★★
青空へ裸木の姿くっきりと★★★★
山の稜線に立つ裸木は、青空を背景にその姿が、ありのままくっっきりとよく見える。きっぱりとした裸ぎの姿が青空と対比されてきれいだ。(j高橋正子)

桑本栄太郎
山間にけぶる一条寒の峰★★★
春を待つ鉄塔嶺に並びけり★★★★
春を待つ心が、遠くの山へ視線を向かわせる。山に鉄塔が並んでいるのはいつも変わらないが、日差しが暖かそうで、そこから春が来そうなのである。(高橋正子)

寒釣の日差しを背中に紫煙かな★★★

1月15日(4名)

小口泰與
大沼の入日に吼ゆる大白鳥★★★
枯枝の中に入り込む群雀★★★
霜柱庭駆け回る子ら二人★★★★

多田有花
城跡を望める寒の立雲峡★★★★
寒中の桜の枝を見上げおり★★★
冬ぬくし展望台で自撮りかな★★★

桑本栄太郎
乳呑み子の乳欲しきとや雪女★★★
湖の瀬田の小舟や寒しじみ★★★
高階の角の吠え居り虎落笛★★★

廣田洋一
梅の芽のぐんと伸びたる寒日和★★★★
赤き芽の丸く膨らむ冬牡丹★★★

地平線白く光れる寒の凪(原句)
水平線白く光れる寒の凪★★★★(正子添削)
空と海とが接する水平線。凪いでいるせいで、その水平線が冷たく白光を放っているのだ。そこから遠い世界が始まるような気がする寒中の景色。(高橋正子)

1月14日(5名)

古田敬二
寒林やほほに心地よき風受けて(原句)
寒林や心地よき風ほほに受け★★★★(正子添削)

冬木立朝のまぶしき日を受けて(原句)
冬木立まぶしき朝日受けいたり★★★★(正子添削)
差してくる朝日を冬木立が受け止めて輝いている。冬木立の凛とした姿、朝日のまぶしさが、いきいきと緊張感をもって詠まれている。(高橋正子)

柔らかく深くなりたる落ち葉道★★★★

小口泰與
夕暮の枯野出られぬ頭痛持★★★
冬草やゲートボールの老五人★★★
日の暈に閉じ込められし大白鳥★★★★

廣田洋一
初旅や電子辞書を忘れずに★★★
アフリカと言えど気軽に初旅行★★★
初旅に富士の裾野を見渡せり★★★★

多田有花
アイスショー見に門真まで松の内★★★
スケートの大輪の花リンクに咲く★★★
湯上がりの喉を鳴らして寒の水★★★★
寒中の水は、ごくごくと飲むには冷たすぎる。それでも湯上りとなれば、寒の水の冷たさが乾いたのどにうれしい。喉を鳴らし、ごくごくと飲む。健康でであればこそ。(高橋正子)

桑本栄太郎
寒梅の紅のほのかに風に乗り(原句)
寒梅の紅のひとひら風に乗り★★★★(正子添削例)
もとの句は、「紅がほのかに風に乗り」ということなので、意味がよくわかりません。「ほのか」は色や匂いにつかいますが。添削例を挙げました。(高橋正子)

とつぜんの双手鼻へとくつさめす★★★
川底の涸れて蛇行や天井川★★★

1月13日(3名)

小口泰與
寒鯉を釣り掛け來る子ら二人(原句)
寒鯉を釣りて駆け来る子ら二人★★★★(正子添削)
定型5・7・5に直しました。
この寒い中、鯉を釣って喜び勇んでかけてくる子二人。見るにつけ、元気な子ども、生き生きした鯉、の様子が絵本の絵のように懐かしく目に浮かんでくる。(高橋正子)

朝日差す紫紺の榛名山(はるな)霜柱★★★
鳥声や朝日の中の木守柿★★★

廣田洋一
お互ひにそっぽ向きたる水仙花★★★
公園の端に整列水仙花★★★
門前にあちこち向きて水仙花★★★★

桑本栄太郎
一木の山のようなり枯木立★★★★
紅色のままに枯れたる芙蓉かな★★★
小さくて痛々しさや冬の薔薇★★★

1月12日(3名)

小口泰與
杣宿の燗絶妙や北颪★★★
妹もまねて転がす雪だるま★★★
包めるは農事新聞セロリかな★★★★

廣田洋一
菰を着て妍を競ひし寒牡丹★★★
日の光思はす黄色寒牡丹★★★★
牡丹の色として黄色は珍しい。その美しさをなんと表現しようかと悩むところを、寒牡丹の黄色は日の光を思わすとずばり的を得た表現をされた。(高橋正子)

後戻りしてまた見たる寒牡丹★★★★

桑本栄太郎
寒椿高き土塀の建仁寺★★★

仏手柑の添えて有り居り松飾★★★★
松飾に仏手柑を添えるのは、おめでたく、飾りの意味が大きいからと想像する。伝統的なものかどうかは、知らないが、現代的な印象がする。(高橋正子)

せせらぎに枇杷の花咲く高瀬川★★★

1月11日(4名)

廣田洋一
寒月や日暮れの空に白々と★★★
寒月の色に染まりし大銀杏★★★★
人居らぬビルの寒月映す窓★★★★

小口泰與
風に乗り狸のにおい露天風呂(原句)
風に乗り狸のにおい露天湯へ★★★(正子添削)
健啖の老へ北風吹きにけり★★★

白鳥や入日の紅の失わず★★★★
白鳥に入日が差していつまでも入日の紅に染まっている。美しい光景。心情が入れば、さらに素晴らしい句に。(高橋正子)

桑本栄太郎
家中の飾りを集め鏡割り★★★
目覚めいて風呂の掃除や日脚伸ぶ★★★★
鍋に入れ鏡開きの夕餉かな★★★

川名ますみ
初乗の多摩川の果て富士の影★★★
初化粧リップラインを直線に★★★★
リップラインを直線に引いた初化粧。きりりと引いたリップラインの新年の溌剌とした思いがある。(高橋正子)
勝手尽して初夢に人助け★★★

自由な投句箱/1月1日~10日(令和2年)


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今日の秀句/1月1日~10日


1月10日(2句)

★恐ろしきまで一山の雪月夜/小口泰與
これほどの雪月夜をまだ見たことがなく、想像するばかりだが、山国のすざましいほどの雪月夜を思い圧倒された。(髙橋正子)

★明星の光ひと粒寒茜/廣田洋一
寒茜の中に、宵の明星の金星が一粒光っている。一番星のその一粒が愛おしい。(高橋正子)

1月9日(2句)

★明けの雪寺の柱の黒光り/小口泰與明けてみれば寺に雪が積もり、寺の柱はお堂のなかで、黒光りしている。白と黒の寺の光景が黒光りの柱を中心に、写真のように浮かび上がる。(高橋正子)

★立ちこぎのセーラー服や日脚伸ぶ/多田有花
日脚がすこしずつ伸びているkのごろ、自転車を立こぎするセーラー服の女学生を見た。元気いっぱいの、まだあどけなさ残る女学生が往時の自分を見るようで、ちょっと眩しい。「日脚のぶ」が効いている。(高橋正子)

1月8日(2句)

★燗熱くせよ知事賞の報届く/小口泰與
「燗熱くせよ」の勢いがただただ晴らしい。知事賞おめでとうございます。(高橋正子)

★紅白の漬物添へて七種粥/廣田洋一
正月気分のまだ残る七日、七草粥に添えられた紅白の漬物がみずみずしい。地味ながら華やぎがあ句。(高橋正子)

1月7日(1句)

★おちこちに声谺して寒紅梅★★★★
寒紅梅は山間の谷に咲いているのだろう。梅見の人たちの声があちこちから谺して聞こえてくる。谷に散らばって梅見をする人たちの様子が見て取れる。(高橋正子)

1月6日(1句)

★仕事始故郷の菓子を頂きぬ/廣田洋一
仕事初めの会社。帰省した人たちのふるさと土産の菓子を頂いた。ほっこりとするひととき。(高橋正子)

1月5日(2句)

★母に来し年賀状を持ちゆけり/多田有花
娘のところに来た母宛の年賀状。差出人は、母は正月を娘のところで過ごしているんだろうかとの思いかもしれない。母のところへ年賀状をもって行くことは、母に会いに行くことでもある。お互いの思いやりの心が忍ばれる句。(高橋正子)

★同郷の小豆雑煮の二人かな/桑本栄太郎
雑煮は地方地方によって、驚くほどさまざまある。郷土性の豊かな祝い椀である。丸餅、伸餅、餡餅か、紅白餅も。仕立ては白みそ,澄まし、焼くか煮るか。同郷のご夫婦二人は、小豆雑煮。幼い時からの郷土の雑煮を頂く幸せ。小豆雑煮の品の良さが効いている。(高橋正子)

1月4日(2句)

★正月の京都に向かう人を載せ/多田有花
みやびさ漂う正月の京都へ家族か知人を車に乗せたのだろうか。乗るときから着物も匂い華やぎ立っている。また電車に乗っている京都へ向かう人たちを眺めたとも読める。車や電車が正月の華やかさでいっぱいなのだ。(高橋正子)

★マスク子の不安顔なり待合室/桑本栄太郎
病院の待合室。マスクをかけた子が熱でもあるのだろう。不安げな顔でおとなしくしている。子供は風の子、元気な子であるはずなのに。おとなしく不安げであれば、不憫である。(高橋正子)

1月3日(2句)

★雪折の音に目覚めし幼き日/廣田洋一
雪国で幼き日を過ごされたのだろうか。私は、瀬戸内で過ごしたが、たまに大雪が降ることがあって、裏の竹藪の雪がどさっと大きい音を立て落ちるのに驚いたことがある。雪折れの枝がバシッと折れる音は、幼きものを目覚めさせる。今はその音と、音に被る幼き日が思い出される。(高橋正子)

★をけら火や四条通りの縄明かり/桑本栄太郎
をけら火は、京都八坂神社の大晦日から元旦にかけて行われる神事。朮火に縄をかざして火をもらい、その火を持ち帰り雑煮を煮る。縄は1メートルぐらいのものを手に数回手繰って、縄先に火を付ける。晴れ着姿の女性も大勢見受けられる。四条通は、火のついた縄の明かりがゆらいでいる。奥ゆかしい日本の行事である。(高橋正子)

1月2日(2句)

★日溜まりにまた一羽来る寒雀/廣田洋一
日溜まりは誰にもうれしいところ。日溜まりに寒すずめが餌をついばんでいる。チョンチョン飛ぶものもいる。すると、そこへまた一羽が寄って来た。仲間に入って餌をついばむ。見ていてたのしく、心和む光景だ。(高橋正子)

★ふるさとの海鳴り想う波の花/桑本栄太郎
波の花は海水が風で泡立ち花のようになる現象。海鳴りの音に加わり波の花が飛ぶ。特徴的な故郷の景色は、いつまでも目裏に、耳底にある。(高橋正子)

1月1日(4句)

★噴煙の垂直に伸び初浅間/小口泰與
新年、浅間山から噴煙がまっすぐにどこまでも、というふうに、上がっている。新年早々の伸びやかな景色に、今年の幸先のよさを思わずにはおれない。(高橋正子)

★神輿蔵開け放たれて初詣/廣田洋一
普段は閉められている神輿を収めている蔵が、新年には開け放たれ、どっしりと座り、きらびやか姿を見せている。初詣に遭遇するものはいろいろあるなかの、開け放たれた神輿蔵。(高橋正子)

★竹林の白き節見せ淑気満つ/桑本栄太郎★
京都の竹林の美しさは言うまでもないが、竹の節が白く粉を吹いたようである。年改まる中、りんとして、淑気に満ちている。(高橋正子)

何気なく出て全身に初日浴ぶ/多田有花
「何気なく出て」が面白い。何気なく出たら、全身を初日が照らしてくれた。日を浴びるのは初日だけにうれしい。(高橋正子)

1月1日~10日(令和2年)


1月10日(4名)

小口泰與
入相の太き日矢さし小白鳥★★★
恐ろしきまで一山の雪月夜★★★★
これほどの雪月夜をまだ見たことがなく、想像するばかりだが、山国のすざましいほどの雪月夜を思い圧倒された。(髙橋正子)

遠き日の一言を悔い寒牡丹★★★

廣田洋一
明星の光ひと粒寒茜★★★★
寒茜の中に、宵の明星の金星が一粒光っている。一番星のその一粒が愛おしい。(高橋正子)

寒茜細き枯枝際立たせ★★★
富士の影黒く浮かべて寒茜★★★★

多田有花
アップライトピアノ旅立つ松の内★★★
寒晴れへ吊り上げられしピアノかな★★★★
ピアノ去れば広々として冬座敷★★★★

桑本栄太郎
道野辺の烏ついばむ日脚伸ぶ★★★
目覚めたる妻の厨へ日脚伸ぶ★★★
冬晴れのままに暮れ居り茜空★★★★

1月9日(4名)

小口泰與
明けの雪寺の柱の黒光り★★★★
明けてみれば寺に雪が積もり、寺の柱はお堂のなかで、黒光りしている。白と黒の寺の光景が写真のように浮かび上がる。(高橋正子)

残照の沼にひろがり大白鳥★★★
寒月を乗せて湖の面音もなく★★★

廣田洋一
窓の外ぱっと明るく冬日かな★★★
昼過ぎて出でし冬日を仰ぎたる★★★
冬日受け葉をそよがせし並木かな★★★

多田有花
立ちこぎのセーラー服や日脚伸ぶ★★★★
日脚がすこしずつ伸びているkのごろ、自転車を立こぎするセーラー服の女学生を見た。元気いっぱいの、まだあどけなさ残る女学生が往時の自分を見るようで、ちょっと眩しい。(高橋正子)

松の内髪切りたいと母が言う★★★
駆けてゆく子らの歓声寒四郎★★★

桑本栄太郎
ざんばらと土堤に傾げり枯尾花★★★
初釣の湾処(わんど)に背ナや桂川★★★
冬銀河あまた瞬き明日は晴れ★★★★

1月8日(3名)

小口泰與
燗熱くせよ知事賞の報届く★★★★
「燗熱くせよ」の勢いがただただ晴らしい。知事賞おめでとうございます。(高橋正子)

醜草の湯レイルたり冬の鷺★★★
山風を背負い冬耕はじめたり★★★

廣田洋一
紅白の漬物添へて七種粥★★★★
正月気分のまだ残る七日、七草粥に添えられた紅白の漬物がみずみずしい。地味ながら華やぎがあ句。(高橋正子)

朱塗椀に早緑匂ふ七種粥★★★
山盛りの七種セットや一つ買ふ★★★★

桑本栄太郎
燦々と冬日差したり風の午後★★★
蝋梅の日射し透きをり膨らみぬ★★★★
初釣の背ナに日当たる湾処かな★★★

1月7日(4名)

小口泰與
霜柱踏めば星屑こぼれけり★★★
おちこちに声谺して寒紅梅★★★★
寒紅梅は山間の谷に咲いているのだろう。梅見の人たちの声があちこちから谺して聞こえてくる。谷に散らばって梅見をする人たちの様子が見て取れる。(高橋正子)

雲走り電車待つ間の冬の虹★★★

廣田洋一
検診と句会を記す初暦★★★
初暦机に一つ飾りけり★★★
初暦着物姿の美しき★★★

多田有花
パソコンを出先で開く仕事始★★★
小寒や粗大ごみ230kg★★★
暖かきままに過ぎゆき七日かな★★★★

桑本栄太郎
山茶花の紅を散り敷く朝かな(原句)
山茶花の紅の散り敷く朝かな★★★★(正子添削)
もとの句は、「朝が、山茶花の紅を散り敷く」となっていて、意味が取りにくいです。

寒林の銀杏並木やバス通り★★★
ワイパーの滲み擦りぬ寒の雨★★★

1月6日(4名)

小口泰與
友病むか年賀のメールいまだ来ず★★★
冬林檎輪切りにきりて食卓へ★★★
枝枝の奇数偶数寒雀★★★

廣田洋一
朝の風さすが冷たし寒の入★★★
電線に雀のをらぬ寒の入★★★
仕事始故郷の菓子を頂きぬ★★★★
仕事初めの会社。帰省した人たちのふるさと土産の菓子を頂いた。ほっこりとするひととき。(高橋正子)

桑本栄太郎
カーテンを開けて結露や寒に入る★★★
医科大の芙蓉枯れ居り中庭に★★★
会計の挨拶し合う医務はじめ★★★

1月5日(4名)

小口泰與
室咲や短き祝辞甘露なる★★★★
冬ばらの開かんとして力尽き★★★
名物の風を賜る冬牡丹★★★

廣田洋一
鯉二匹さかのぼり行く冬の川★★★★
橙飾る古き屋敷の四世代★★★
読初や今年も虚子の一日一句★★★

多田有花
法被着て初商の社員かな★★★
あのころの写真を整理初昔★★★

母に来し年賀状を持ちゆけり★★★★
娘のところに来た母宛の年賀状。差出人は、母は正月を娘のところで過ごしているんだろうかとの思いかもしれない。母のところへ年賀状をもって行くことは、母に会いに行くことでもある。お互いの思いやりの心が忍ばれる句。(高橋正子)

桑本栄太郎
同郷の小豆雑煮の二人かな★★★
雑煮は地方地方によって、驚くほどさまざまある。郷土性の豊かな祝い椀である。丸餅、伸餅、餡餅か、紅白餅も。仕立ては白みそ,澄まし、焼くか煮るか。同郷のご夫婦二人は、小豆雑煮。幼い時からの郷土の雑煮を頂く幸せ。小豆雑煮の品の良さが効いている。(高橋正子)

枯草の明かりとなりぬ朝の雨★★★
返り花とはもう云えず菜種咲く★★★

1月4日(5名)

小口泰與
干芋へ赤城颪を賜りぬ★★★
産土に手足伸ばすや冬の梅★★★
樫の木の秀つ枝下枝に寒雀★★★★

廣田洋一
初暦予定書き込み恙なし★★★
筋トレも心新たに四日かな★★★
大皿をみな仕舞ひたる四日かな★★★★

多田有花
初掃除すいすい進むコードレス★★★
居酒屋に集う三日の誕生日★★★
正月の京都に向かう人を載せ★★★★
みやびさ漂う正月の京都へ家族か知人を車に乗せたのだろうか。乗るときから着物も匂い華やぎ立っている。また電車に乗っている京都へ向かう人たちを眺めたとも読める。車や電車が正月の華やかさでいっぱいなのだ。(高橋正子)

桑本栄太郎
マスク子の不安顔なり待合室★★★★
病院の待合室。マスクをかけた子が熱でもあるのだろう。不安げな顔でおとなしくしている。子供は風の子、元気な子であるはずなのに。おとなしく不安げであれば、不憫である。(高橋正子)

四日早や内科医院の込みいたる★★★
漫才も聴いて白ける四日かな★★★

川名ますみ
初富士の雲の晴れゆき夕映に★★★★
雲掃かれ初富士現れし夕べ★★★
目覚むればあっという間の初笑★★★

1月3日(4名)

小口泰與
大利根へ朝日差したる御慶かな★★★
吾子の手に受けたる破魔矢鈴さわぐ★★★
朝日差す蔵の錠前仏の座★★★★

多田有花
宅配の荷物が届く二日はや★★★
わらわらと飛び降り飛び立つ初雀★★★★
初電話うれしき報せもたらしぬ★★★

廣田洋一
淑気満つ令和の朝の晴上り★★★
雪折の音に目覚めし幼き日★★★★
雪国で幼き日を過ごされたのだろうか。私は、瀬戸内で過ごしたが、たまに大雪が降ることがあって、裏の竹藪の雪がどさっと大きい音を立て落ちるのに驚いたことがある。雪折れの枝がバシッと折れる音は、幼きものを目覚めさせる。今はその音と、音に被る幼き日が思い出される。(高橋正子)

雪折れの枝を切りたる朝もあり★★★★

桑本栄太郎
三日早やジャムトーストの朝餉かな★★★
食うて寝て又食い寝たる三が日★★★

をけら火や四条通りの縄明かり★★★★
をけら火は、京都八坂神社の大晦日から元旦にかけて行われる神事。朮火に縄をかざして火をもらい、その火を持ち帰り雑煮を煮る。縄は1メートルぐらいのものを手に数回手繰って、縄先に火を付ける。晴れ着姿の女性も大勢見受けられる。四条通は、火のついた縄の明かりがゆらいでいる。奥ゆかしい日本の行事である。(高橋正子)

1月2日(4名)

小口泰與
三山の朝の淑気を賜りし★★★
初春や湯けむりの立つ磴の街★★★
山風の産土なるや初景色★★★★

多田有花
一瞬の沈黙の後初泣きす★★★
年玉を泣き顔の子に渡しけり★★★★
新春の空につぎつぎ飛行機雲★★★

廣田洋一
初氷車の窓を覆ひけり★★★
鳩の餌横取りしたる寒雀★★★
日溜まりにまた一羽来る寒雀★★★★
日溜まりは誰にもうれしいところ。日溜まりに寒すずめが餌をついばんでいる。チョンチョン飛ぶものもいる。すると、そこへまた一羽が寄って来た。仲間に入って餌をついばむ。見ていてたのしく、心和む光景だ。(高橋正子)

桑本栄太郎
ふるさとの海鳴り想う波の花★★★★
波の花は海水が風で泡立ち花のようになる現象。海鳴りの音に加わり波の花が飛ぶ。特徴的な故郷の景色は、いつまでも目裏に、耳底にある。(高橋正子)

海鳴りの怒涛や冬の日本海★★★
空き缶のまろぶ音あり寒波来る★★★★

1月1日(4名)

小口泰與
噴煙の垂直に伸び初浅間★★★★
新年、浅間山から噴煙がまっすぐにどこまでも、というふうに、上がっている。新年早々の伸びやかな景色に、今年の幸先のよさを思わずにはおれない。(高橋正子)

朝日差す榛名九嶺お元日★★★
菩提寺の僧都に礼や年新た★★★

廣田洋一
年改まり富士の嶺白く改まる★★★
神輿蔵開け放たれて初詣★★★★
普段は閉められている神輿を収めている蔵が、新年には開け放たれ、どっしりと座り、きらびやか姿を見せている。初詣に遭遇するものはいろいろあるなかの、開け放たれた神輿蔵。(高橋正子)

綴じ紐は目出度き赤や初暦★★★

桑本栄太郎
竹林の白き節見せ淑気満つ★★★★
京都の竹林の美しさは言うまでもないが、竹の節が白く粉を吹いたようである。年改まる中、りんとして、淑気に満ちている。(高橋正子)
三川の集う中州や大枯野★★★
もくれんの冬芽かくかくしかじかと★★★

多田有花
何気なく出て全身に初日浴ぶ★★★★
「何気なく出て」が面白い。何気なく出たら、全身を初日が照らしてくれた。日を浴びるのは初日だけにうれしい。(高橋正子)

初暦まだ見ぬ月日重なりぬ★★★
元日や早も出会いし救急車★★★

よいお年をお迎えください。


今年一年、毎日ほとんど休まず、ご投句いただいてありがとうございます。「細く長く」をモットーとしている私たちですが、言葉では言えても、実践は難しいものです。それを実践なさって、素晴らしいの一言です。

自由な投句箱、ご投句に選とコメントが追い付かなくて、遅れがちで申し訳ない気持ちです。遅れる理由の一つとして、ちょっとした問題句や、直したらよくなるんじゃないかな、などと思って、しばらく置いておくことがよくあります。(俳句はやはり、詩なのです。)そして、あっという間に時が経っているわけですが、来年は遅れがないよう、努力いたします。
来年もどうぞよろしくお願いします。
                                    2019年12月31日
                                           高橋正子

自由な投句箱/12月21日~31日


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今日の秀句/12月21日~31日


12月31日(2句)

★蕎麦食えば何処か遠くに除夜の鐘/桑本栄太郎
年越し蕎麦と除夜の鐘。時代が変わっても変わらない風習があることがうれしい。その風習が年を行かす情緒となって残っていることは貴い。(高橋正子)

★大根抜く地中に深き穴残し/古田敬二
あおあおと葉を茂らせ、よく育った大根を抜こうとすると、大地を持ち上げるかのような力が要る。抜いた後は、穴が地中深くまで空いている。穴の深さは大根の生命力そのままだ。(高橋正子)

12月30日(2句)

★年惜しむ山から城を見下ろして/多田有花
山の上から、街の中心である白壁のまぶしい城を見下ろす。俯瞰することは全体を見ること。一年を振り返る思いが湧き、自然にこの一年が惜しまれる。(高橋正子)

★海鳴りを遠くに聞きつ松飾る/桑本栄太郎
故郷山陰のことであろうか。海鳴りの聞こえる家に松を飾り、新年を迎える。それぞれの土地にそれぞれの人たちの新年がある。(高橋正子)

12月29日(1句)

★注連飾る飛び立つ鳥の晴れやかに/廣田洋一
注連飾りをし、年を迎える準備が整った。改まる気持ちだ。飛び立つ鳥も胸を張って晴れやかな姿に見える。(高橋正子)

12月28日(3句)

★一夜明け眼間雪の榛名山/小口泰與
一夜明けると、雪の榛名山が眼間に迫り来た。眼間に見ればこそ、その雪を冠った威容に圧倒される。「眼間」に実感がある。(高橋正子)

★畑の畝きつちり並ぶ年の暮/廣田洋一
年の暮には、畑のごみなども取り払われ、野菜も寒さに耐えて緑を濃くしている。畝が整然として、気持ちの良いものだ。(高橋正子)

★枇杷の花うすき日差しが似合う花/多田有花
枇杷の花には「うすき日差し」が一番似合う。私もそう思う。うすき日差しに、枇杷の花のつんとしたいい香りがしてきそうだ。(高橋正子)

12月27日(1句)

★裏白を採る人たちとあいさつを/多田有花
年の瀬に山に行くと、裏白を採る人に出会う。新年を迎える準備だ。裏白は裏の白さを見せて、鏡餅の下に敷き、また注連飾りに使う。関東では、裏白を注連飾に使わないようだが、瀬戸内のわが生家でも裏白を飾った。裏白を採る人を見ると、同じく年を迎えることに親しみを覚えてあいさつを交わすことになる。(高橋正子)

12月26日(1句)

★布団干す遠く見やれば鈴鹿嶺/古田敬二
布団を干す日は、もちろん良い天気。布団を干しながら、つい目は遠くを見てしまう。「遠く見やれば鈴鹿嶺」と、リズムもよく、気持ちのよい句となった。(高橋正子)

12月25日(1句)

★マリア像に祈りを今宵聖誕祭/多田有花
聖誕祭は、クリスマスのこと。聖誕祭といえば、少し敬虔な気持ちになって大方の人は迎えるだろう。私は詳しくないが、マリア像は、時期によってそれぞれの意味での像が描かれている。また宗教画はある決まりで描かれているのだが、読み手は、マリア像を自由に想像してみていいだろう。当たり前を当たり前に詠んでいるが、事実としての価値。(高橋正子)

12月24日(1句)

★鐘楼の鐘鳴り渡り聖夜なる/多田有花
教会の鐘は傍で聞くとその力強さ大きさに圧倒されるほど強く鳴らされているがが、遠く離れて聞く聖夜の鐘の音はじみじみ清らかな思いにさせられる。(高橋正子)

12月23日(2句)

★初雪よ嬉しいでしょう三回忌/川名ますみ
12月18日の秀句にこの句を挙げています。ご確認ください。

★火起こしの火花や妻の機嫌にて/小口泰與
妻が火を熾している。妻の熾す火から勢いよく火花が飛んで、その具合に、妻の機嫌が知れるというもの。家事にいそしむ妻の機嫌のいい顔は何より。(高橋正子)

★すっきりと畑整い冬至かな/多田有花
冬至のころ、白菜、大根、葱などは、正月用にも抜かれはするが、まだ畑に残って生き生きとしている。畑のごみもきれいさっぱり取り除いて、畑はすっきりと整っている。正月を前にすっきりと整った畑を見るのはいいものだ。(高橋正子)

12月22日(1句)

救急車冬枯道を帰りゆく/多田有花
特に枯れの季節、救急車が走ると、何事かと気が引かれる。この句の救急車は急病人を搬送して帰ってゆくのだ。冬枯れの道を帰る救急車にもその走り方に安堵の気持ちが感じられる。(高橋正子)

12月21日(1句)

★湯豆腐や終わる頃には雨上がり/廣田洋一
外は雨もよう。湯豆腐桶に湯豆腐をゆっくりと味わっている間、雨も上がった。湯豆腐のやわらかさ、あたたかさに、「雨上がり」が情緒的に働いて、湯豆腐を食べている間のあたたかく、心和む時間が想像できる。(高橋正子)

12月21日~31日


12月31日(6名)

小口泰與
大神の使者や白鳥陽の輪より★★★★
趣味と生き老の髪膚や冬温し★★★
ゆく年や鯉は大きな口を開け★★★

廣田洋一
北風に思はず襟を合わせけり★★★
鳥の声いつも通りの大晦日★★★★
恙なく息子とすする年越蕎麦★★★

桑本栄太郎
平成の令和となりし年惜しむ★★★
茜さす西空冬の海暮れぬ★★★
蕎麦食えば何処か遠くに除夜の鐘★★★★
年越し蕎麦と除夜の鐘。時代が変わっても変わらない風習があることがうれしい。その風習が年を行かす情緒となって残っていることは貴い。(高橋正子)

多田有花
同胞と蕎麦をすすりて年の暮★★★
引き出しを大掃除する小晦日★★★★
廃品を積み上げている大晦日★★★

川名ますみ
新品の手拭洗う年用意★★★
しめ飾り褒めてヘルパー入り来る★★★

古暦めくろうとした手に軽さ(原句)
めくろうとした手に軽さ古暦★★★★(正子添削)

古田敬二
大根抜く地球を掴む大根抜く★★★

大根抜く地球に深き穴残し(原句)
大根抜く地中に深き穴残し★★★★(正子添削)
あおあおと葉を茂らせ、よく育った大根を抜こうとすると、大地を持ち上げるかのような力が要る。抜いた後は、穴が地中深くまで空いている。穴の深さは大根の生命力そのままだ。(高橋正子)

年移るオリオン星座位置を替え★★★★

12月30日(4名)

多田有花
年惜しむ山から城を見下ろして★★★★
山の上から、街の中心である白壁のまぶしい城を見下ろす。俯瞰することは全体を見ること。一年を振り返る思いが湧き、自然にこの一年が惜しまれる。(高橋正子)

数え日や解体される古き棚★★★
赤きまま年を越すなり烏瓜★★★

廣田洋一
行く年やごみ箱一つ空にして★★★
天災の多かりし年行きにけり★★★
行く年や八十路への道縮まりぬ★★★★

小口泰與
枯れ切って骨身露わな芒かな★★★
冬温し午下の湖へと蜆舟★★★★
極月や床屋の主の大欠伸★★★

桑本栄太郎
海鳴りを遠くに聞きつ松飾る★★★★
故郷山陰のことであろうか。海鳴りの聞こえる家に松を飾り、新年を迎える。それぞれの土地にそれぞれの人たちの新年がある。(高橋正子)

買物の日に二三度や年用意★★★
年の瀬の汽笛遠くに夜汽車かな★★★★

12月29日(3名)

廣田洋一
門松の立ちたる家の減りにけり★★★
注連飾る飛び立つ鳥の晴れやかに★★★★
注連飾りをし、年を迎える準備が整った。改まる気持ちだ。飛び立つ鳥も胸を張って晴れやかな姿に見える。(高橋正子)

注連飾終へて息つく夕べかな★★★

小口泰與
夕暮れの秀つ枝に二羽の寒雀★★★
白鳥や入日を賜う多々良沼★★★★
枯れきって細筆のようすすきかな★★★

桑本栄太郎
何もかも令和と云はる年惜しむ★★★★
数へ日のひと日早くも暮れにけり★★★
自動車の音の少なき町師走★★★

12月28日(5名)

小口泰與
一夜明け眼間雪の榛名山★★★★
一夜明けると、雪の榛名山が眼間に迫り来た。眼間に見ればこそ、その雪を冠った威容に圧倒される。「眼間」に実感がある。(高橋正子)

大声の妻の小言や年の暮★★★
雪間より残照の山冬薔薇★★★

廣田洋一
工事場の音静まれり年の暮★★★
1月号配達されし年の暮★★★
畑の畝きつちり並ぶ年の暮★★★★
年の暮には、畑のごみなども取り払われ、野菜も寒さに耐えて緑を濃くしている。畝が整然として、気持ちの良いものだ。(高橋正子)

古田敬二
裸木の一葉揺らして青空へ★★★
Autumnのスペル間違う冬の雨★★★
柿落ち葉大方裏見せ落ち並ぶ★★★★

多田有花
枇杷の花うすき日差しが似合う花★★★★
枇杷の花には「うすき日差し」が一番似合う。私もそう思う。うすき日差しに、枇杷の花のつんとしたいい香りがしてきそうだ。(高橋正子)

年の瀬の頂に見る景色かな★★★
墓に向かう道をたどりて年惜しむ★★★★

桑本栄太郎
数へ日や段取りばかり決まりをり★★★
担当を決めて掛かりぬ煤払ふ★★★
煤逃げもならず指示飛ぶ妻の声★★★★

12月27日(4名)

小口泰與
数え日やのど飴廻す句座仲間★★★
冬の星枝に散りばむ大樹かな★★★★
裸木や名前の知らぬ鳥数多★★★

多田有花
角の家南天たわわに実らせて★★★
年の暮欅広々空を掃く★★★
裏白を採る人たちとあいさつを★★★★
年の瀬に山に行くと、裏白を採る人に出会う。新年を迎える準備だ。裏白は裏の白さを見せて、鏡餅の下に敷き、また注連飾りに使う。関東では、裏白を注連飾に使わないようだが、瀬戸内のわが生家でも裏白を飾った。裏白を採る人を見ると、同じく年を迎えることに親しみを覚えてあいさつを交わすことになる。(高橋正子)

廣田洋一
机拭き一礼したる仕事納★★★
いそいそと酒を並べる仕事納★★★
掛け替への暦選びて仕事納★★★★

桑本栄太郎
山際の日差し明るくしぐれ止む★★★★
山里の一日しぐれて暮れにけり★★★
路面濡れ光り滲むや冬ともし★★★

12月26日(5名)

小口泰與
駄菓子屋へ駆け來る子らや冬落暉★★★
セルロイドになりたる霜の野菜かな★★★
大利根の水のたゆたう年の暮★★★★

廣田洋一
干支の絵を大きく刷りて賀状書く★★★★
会わぬまま過ごせし友や賀状書く★★★
賀状書く一句添へたる友の有り★★★

多田有花
それぞれに大人は小さき聖菓食ぶ★★★
数え日に加わる用事二つ三つ★★★
ベンジンを夜ごと懐炉に注ぎけり★★★★

古田敬二
布団干す遠く見やれば鈴鹿嶺★★★★
布団を干す日は、もちろん良い天気。布団を干しながら、つい目は遠くを見てしまう。「遠く見やれば鈴鹿嶺」と、リズムもよく、気持ちのよい句となった。(高橋正子)

落ち葉する梢を風の過ぎてより★★★★
歳の瀬の猫ゆっくりと駐車場★★★

桑本栄太郎
一二枚しがみつきたり冬紅葉★★★
顔思い想い出浮かべ賀状書く★★★★
どつぷりと暮れて茜や冬の月★★★

12月25日(4名)

小口泰與
初氷赤城の襞のくっきりと★★★★
迫り来る枯木壱幹夕日影★★★
視野の中光と色の冬の湖★★★★

廣田洋一
数え日の今日散髪と決めにけり★★★
数え日やまず玄関を磨きたる★★★★

数え日の夕はゆっくりハイボール(原句)
数え日の夕べゆっくりハイボール★★★★(正子添削)

多田有花
マリア像祈りし今宵聖誕祭(原句)
マリア像に祈りを今宵聖誕祭★★★★(正子添削)
聖誕祭は、クリスマスのこと。聖誕祭といえば、少し敬虔な気持ちになって大方の人は迎えるだろう。私は詳しくないが、マリア像は、時期によってそれぞれの意味での像が多く描かれている。また宗教画はある決まりで描かれているのだが、読み手は、マリア像を自由に想像してみていいだろう。(高橋正子)

降誕祭家路を急ぐ車たち★★★
病む人の快癒を願いクリスマス★★★★

桑本栄太郎
讃美歌をパソコンに聞く聖夜かな★★★★
どつぷりと暮れて来たりぬ冬入日★★★
突然に真夜に聞きをり虎落笛★★★

12月24日(4名)

廣田洋一
電飾の馴鹿駆ける聖夜かな★★★★
 ※馴鹿=じゅんろく。トナカイのこと。(注/正子)

聖夜かな上野の山のミイラ展★★★
駅前のヴァイオリンの音聖夜曲★★★★

小口泰與
視野の中枯木に赤城山(あかぎ)迫りけり★★★★
瞑想の耳にささやく落葉かな★★★
瑕瑾なき林檎を犬と食しけり★★★

多田有花
修道院奥に輝く聖樹かな★★★
帰り花マリアの像に寄り添いぬ★★★

聖夜なり鐘楼の鐘鳴り渡る(原句)
鐘楼の鐘鳴り渡り聖夜なる★★★★(正子添削)
教会の鐘は傍で聞くとその力強さ大きさに圧倒されるほど強く鳴らされているがが、遠く離れて聞く聖夜の鐘の音はじみじみ清らかな思いにさせられる。(高橋正子)

桑本栄太郎
悄然とからす濡れ居り朝しぐれ★★★
暗き世に天降(あも)りまします聖夜かな★★★★
讃美歌を歌い祈りぬイブの夜★★★

12月23日(4名)

小口泰與
火起こしの火花や妻の機嫌にて★★★★
妻が火を熾している。妻の熾す火から勢いよく火花が飛んで、その具合に、妻の機嫌が知れるというもの。家事にいそしむ妻の機嫌のいい顔は何より。(高橋正子)

岩を打つ強き白波冬の海★★★
寒暁や日の弾みける榛名山★★★

桑本栄太郎
結露拭く冬の朝や今朝の窓★★★
一二枚しがみつきたる冬紅葉★★★
影となり夕日に黒き冬木立★★★★

川名ますみ
初雪よ嬉しいでしょう三回忌★★★★
12月18日の秀句にこの句を挙げています。ご確認ください。

冬日和鳩の後ゆく車椅子★★★
冬至一人ゆずの香りのバスオイル★★★★

多田有花
すっきりと畑整い冬至かな★★★★
冬至のころ、白菜、大根、葱などは、正月用にも抜かれはするが、まだ畑に残って生き生きとしている。畑のごみもきれいさっぱり取り除いて、畑はすっきりと整っている。正月を前にすっきりと整った畑を見るのはいいものだ。(高橋正子)

裸木に来て頬白の鳴き続く★★★★
聖夜待つ木の十字架を見上げおり★★★★

12月22日(4名)

廣田洋一
行く年や流れる川の静まれり★★★★
行く年や買ひたる本を積上げし★★★
行く年や句帳の終わり近付きぬ★★★

小口泰與
ただひとつ見事下枝に蜜柑かな★★★
妻と犬交互に食す冬林檎★★★
浅間嶺の空の深さや木守柿★★★★

多田有花
冬の雨病院を出れば本降りに★★★
軽トラの荷台いっぱいブロッコリ★★★

救急車冬枯道を帰りゆく★★★★
特に枯れの季節、救急車が走ると、何事かと気が引かれる。この句の救急車は急病人を搬送して帰ってゆくのだ。冬枯れの道を帰る救急車にもその走り方に安堵の気持ちが感じられる。(高橋正子)

桑本栄太郎
あごひげの東方博士や聖夜劇★★★
降誕祭果てて家路や乗換駅★★★

湯に浸かりぷかぷか来たる柚子湯かな(原句)
柚子湯の柚子われにぷかぷか寄り来る★★★★(正子添削)

12月21日(4名)

小口泰與
冬桜海の如空深深と★★★★
冬そうび開こうとしてひらからず★★★
侘助や役目終わりし達磨達★★★

多田有花
忘年や朝挽鶏を炙り食う★★★
怪我もあり病もありぬ年忘れ★★★★
今年は、入院などいろいろありましたね。

土産持ちインフルエンザの友見舞う★★★

廣田洋一
湯豆腐を好む二人の笑顔かな★★★
湯豆腐や終わる頃には雨上がり★★★★
外は雨もよう。湯豆腐をゆっくりと味わっている間、雨も上がった。湯豆腐のやわらかさ、あたたかさに、「雨上がり」が情緒的に働いて、湯豆腐を食べている間のあたたかく、心和む時間が想像できる。(高橋正子)

湯豆腐に心和める夕べかな★★★

桑本栄太郎
突然の真夜の風聞く虎落笛★★★★
下枝にしがみつきをり冬紅葉★★★
吹き来ればはらはら散りぬ枯葉かな★★★

自由な投句箱/12月11日~20日


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今日の秀句/12月11日~20日


12月20日(3句)
★桜枯れ枝すみずみまで陽を浴びる/多田有花
桜が枯れて葉がすっかりなくなった。おかげで、枝や幹のすみずみまで陽が届く。枝や幹の樹皮がつやつやしている。(高橋正子)

★裸木の枝のびのびと昼の月/廣田洋一
裸木となって、枝ぶりがすっかり見えるようになった。葉を付けていた時より、枝はのびのびを昼月の浮かぶ空へ枝を伸ばしているのだ。枝、空、月が配されて、すっきりとした句だ。(高橋正子)

★来て見れば銀杏枯木やバス通り/桑本栄太郎
このあたりまでしばらく来なかったが、来てみると、バス通りの銀杏は葉をすっかり落とし、枯木となって立っている。しばらく来なかったことも、季節が進んだことも思い起こさせられるのだ。(高橋正子)

12月19日(2句)

★枯れてゆく葉に真っ青な空があり/多田有花
枯れてゆく葉の色は、褪せた赤い色、緑がかった黄色、朽葉色、枯れそのままの色。どれもいい色。そんな葉には真っ青な空がよく似合う。(高橋正子)

★冬暁や赤光を灯す給湯器/上島祥子
冬の暁、まだ暗いときに起き出した作者。給湯器には、注意を呼ぶような赤い光がついている。寒く暗いなかに光る赤光に気持ちが引き締まる。冬暁に起きて朝食の準備をする作者の姿が浮かぶ。(高橋正子)

12月18日(2句)
★新聞紙に包み大根を差し上げし/小口泰與
引き抜いてすぐの大根だろうか。土がついていれば汚れかねない。洗ったものでも何かに包んで差し上げたい。そのとき、新聞紙が格好のものとなる。あたたかい気持ちがさりげなく伝わる。(高橋正子)

★初雪よ嬉しいでしょう三回忌/川名ますみ
母の三回忌がめぐり来て、初雪が降った。亡くなった母に「初雪よ、嬉しいでしょう」と話しかけた。初雪がうれしいのは、もちろん作者。初雪に寄せて三回忌が美しく昇華された。(高橋正子)

12月17日(2句)

★畑ごとの霜の濃淡朝日かな/小口泰與
霜の降り具合が畑の条件によって、それぞれ違っている。強く真っ白に霜の降りている畑もあれば、うっすらと降りた畑もある。朝日が差すとその濃淡がはっきりと浮き上がってくる。写真に収めたいような景色だ。(高橋正子)

★気球二機なかぞらを行く十二月/多田有花
十二月の空のうららかさを読んだ句。歳晩の忙しさのなかで、ゆったりとなかぞらを行く気球を見ると、時もゆるやかに進むようだ。(高橋正子)

12月16日(1句)

★カラカラと鐘を鳴らして飾り売り廣田洋一
カラカラと鐘を鳴らして飾り売り★★★★
12月も半ばを過ぎると、年用意の品々が店頭を飾るようになる。昔ながらに境内や道筋の露店で飾りを売るのを見ることはほとんどなくなった昨今である。今も、鐘をカラカラ鳴らして売る飾り売りもいて、正月を迎える風物詩をして、楽しいものだと思う。(高橋正子)

12月15日(2句)

★木陰をば明るくしたる実万両/廣田洋一
万両は千両と違い日当たりを好むが、築山など木陰にあることもよくある。万両が実を付けると緑に赤が映えて、田有賀明るくなる。自然体で詠んでいるのが好ましい。(高橋正子)

★裸木となりし公孫樹を仰ぎ見る/多田有花
金色の葉を付けた公孫樹も素晴らしいが、葉をすっかり落とし裸木となった姿も、すっきりと天に伸びて魅力ある姿だ。下から仰ぎ見るとなおさら、公孫樹は天に伸び行く感が強まる。(高橋正子)

12月14日(2句)

★冬灯し自転車下校の夜学生/上島祥子
「冬灯し」は街頭などであろう。夜学生が灯の中を自転車で下校し来る。寒さにも、昼間の勤労の疲れにもめげずに
勉強する生徒への応援であろう。(高橋正子)

★金の鈴つけた猫なり日向ぼこ/桑本栄太郎
金の鈴を付けられて日向ぼこをする猫が貴婦人めいてくる。まぶしいほどの暖かい日差しがかくもふんだんである。(高橋正子)

12月13日(2句)

★ひとり来て頂に会う帰り花多田有花
ひとり登って来た頂。頂は暖かいせいか、帰り花が咲いて迎えてくれた。帰り花は、にっこりと頬をほころばせるように咲き、暖かく迎えてくれたのだ。(高橋正子)

★の落つや書斎忽ち冷え来たり/桑本栄太郎
日が落ちると、たちまちに冷えてくる。火の気も人気のないような書斎は特に冷えてくる。人がいたとしても、冷えは格段にはやく押し寄せてくるのだ。(高橋正子)

12月12日(1句)

★人声やすぐに焚火の香の流る/多田有花
何気なく歩いてゆくと人声が耳に入る。そう思うと、すぐに焚火をする匂いがしてくる。話声の人たちが焚火を囲んでいたとすぐにわかるが、人と焚火はに懐かしいつながりがある。それを感じさせてくれる句だ。(高橋正子)

12月11日(1句)

★河豚刺身青き皿の透き通り/廣田洋一
薄くそいだ河豚の身を花のように皿に並べてある河豚刺し。身を透いて皿の青い色が美しく見える。目に美しい河豚刺身である。(高橋正子)