5月11日~20日

5月20日(3名)
小口泰與
親指の指紋かすかに水羊羹★★★
葉柳や川辺の書肆の薄明り★★★★
竹落葉波にひろごる鯉の口★★★
廣田洋一
紫陽花の薄く色付く湯の煙★★★★
紫陽花の淡い色湯の煙に溶けたような印象がいい。(高橋正子)
紫陽花の色付き初めし今日の雨★★★
紫陽花の小毬一つ色付きぬ★★★
桑本栄太郎
雨ながら白き頭巾や山法師★★★
乙訓の雨の大枝(おおえ)や柿若葉★★★★
コロナ禍の雨のひと日や梅雨ごもり★★★
5月19日(4名)
小口泰與
夕映えの積乱雲や利根上流★★★★
八丈の粋な着こなし若楓★★★
麦秋や背後を走る足尾線★★★
廣田洋一
一人ずつ藁火にかざす初鰹★★★
初鰹土佐の生姜を利かせけり(原句)
生姜を利かせてあるという事実を述べるだけになっていますので、ご自分の感じたことを少し述べると、句が生き生きしてきます。(高橋正子)
初鰹土佐の生姜のぴりと利き★★★★(正子添削例)
初鰹土佐の清酒を友として★★★
桑本栄太郎
ふるさとの友と電話や梅雨長し★★★
ケリケリと団地の庭に鳧鳴けり(原句)
鳧の名前はその鳴き声からつけられたともいわれています。庭のどこでないているのか、庭の様子とか、時間とかがあれば、句に広がりがでて面白くなると思います。(高橋正子)
鳧鳴けり団地の庭の濡れていて★★★★(正子添削例①)
鳧は「ケリケリ」という高い声でなくところから、鳧とよばれるらしい。ふだんなら田んぼあたりで鳴く鳧が梅雨でぬれている団地の庭で鳴いていた。思わぬところで鳴く鳧に親しみを覚える。(高橋正子)
鳧鳴けり団地の庭の葉隠れに(添削例②)
雨雲の途切れ峰間や虹の橋(原句)
雨雲の途切れ/峯間や/虹の橋 のように切れていて、つながりが悪いです。
雨雲の途切れし峯間虹の橋★★★(正子添削)
多田有花
驚きぬ史上最速梅雨入りに★★★
どっさりのスナップエンドウ冷凍に★★★
絹さやを入れ味噌汁を作りけり(原句)
記録として残すのには、差し支えないですが、事実を述べて終わっているので、ご自分の五感に感じ取られたことを述べるとよいと思います。
絹さやの緑あざやか味噌汁に★★★★(正子添削)
5月18日(4名)
小口泰與
白日の水田賑わう水馬(原句)
白日の水田賑わす水馬★★★★(正子添削)
曙の群飛ぶ目白木から木へ★★★
夕日差す泉へ硬貨落にけり★★★★
廣田洋一
黄金の穂空になびかせ麦の秋★★★
一声褒めて刈入れたるや麦の秋★★★
バゲットの長きを買ひぬ麦の秋★★★★
バゲットの焦げた小麦色と麦の秋のさわやかさ。バゲットはまた、小麦の恵みでもあって、通い合うものがあって楽しい。「長き」がバゲットを印象付けている。(高橋正子)
多田有花
ぴかぴかの鯉のぼりいま泳ぎ初め★★★
小雨なれどスナップエンドウ収穫す★★★
畑よりキャベツざっくり切り離す★★★★
桑本栄太郎
まだ青き雑草なりぬ小判草★★★
雑草に使い方が気になります。
午後よりの雨の予報や葵咲く★★★
あぢさいの雨を待ちたる蕾かな★★★
5月17日(3名)
小口泰與
一羽立ち全て飛びける目白かな★★★
翠巒や頂上目指す径数多★★★★
翠巒は青々とつらなる緑の山々。その頂上を目指す道はいくつもあり、山登りの楽しみでもある。漢語調の調べから、旧制高校生たちの山登りを彷彿させられる。(高橋正子)
夏川の緑走るや空は蒼★★★
廣田洋一
道端を黒く染めたり桜の実★★★
土手に跳ね川に落ちたり桜の実★★★
街の川常と変わらず桜の実(原句)
「常と変わらず」の部分を、もう少し具体的になさるといいと思います。目の付け所はとてもいいです。
街川のそうそう(淙々)として桜の実★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
坂道を下り卯の花腐しかな★★★★
坂道を下りるとそこはまた別の世界。卯の花腐しの雨が降る所。陰鬱な霖雨に、濡れるともなく濡れて帰るのも、一つの情緒。(高橋正子)
路線バス植田代田を辿り行く★★★
雨脚の時折つよく梅雨入りかな★★★
5月16日(4名)
小口泰與
銀輪の子らや川原の若葉風★★★★
木道の果てたる先や聖五月★★★
奥利根の棚田の畦や草刈機(原句)
「や」で切ってしまっているので、草刈機がどうしたのか、どうなのかがわかりません。添削句は、「奥利根の棚田の畦を草刈機(が刈り進む)」の省略と考えてください。
奥利根の棚田の畦を草刈機★★★★(正子添削)
奥利根の棚田の畦にも草刈機が活躍する。一枚一枚の棚田の畦の雑草をきれいに刈り取ると、稲に当たる風も快く、美しい棚田の光景となる。(高橋正子)
廣田洋一
白鱚のぴんと張りたる背を開く★★★★
高知にて生姜きかして初鰹★★★
土佐沖の一本釣りや初鰹★★★
多田有花
天清和本殿海に向かいおり★★★
夏の朝沖の小島を見て立ちぬ★★★
釣り糸を垂れて卯波に身をまかせ★★★★
桑本栄太郎
髪長きあの娘気になり草矢射る★★★
雨雲の峰駆け抜ける走り梅雨★★★★
雨あがり風吹く茅花流しかな★★★
5月15日(4名)
小口泰與
麦嵐山下り來るひげ漢★★★
白樺の幹の明るき夏の雨★★★★
白樺の幹は、白っぽくだんだらな縞模様。葉もいいが、夏の雨が降りつけても幹は明るく立っている。白樺の林の明るさはいつもロマンチック。(高橋正子)
上州の荒き言の葉はたた神★★★
廣田洋一
両手に飲み物下げて薄暑かな★★★
壁白き熊本城の若葉かな★★★★
今日もまた犬の散歩や若葉道★★★
多田有花
耳澄ます蚊取線香呼ぶ羽音(原句)
耳澄ます蚊取線香の呼ぶ羽音(正子添削)
海原をヨット静かに滑りゆく★★★
夏めきて海の青さの深くなる★★★★
桑本栄太郎
喩ふれば聖者のやうに朴の花★★★
紫陽花の早もつぼみを備えけり★★★
京なれや今日の気温の真夏日に★★★
5月14日(4名)
小口泰與
そよ風に葡萄の花や朝ぼらけ★★★
麦秋や刈込鋏油差す(原句)
麦秋や刈込鋏に油差す★★★★(正子添削)
麦秋は麦が熟れることも指すが、またそのころの季節も指す。梅雨入りをひかえ、農家の人は忙しい。刈込鋏に油を差して、使いやすくして作業の効率を測る。油の匂いも麦秋にぴったり。句材の扱いがいい。(高橋正子)
雲の峰樋を伝いし雀たち★★★
多田有花
薫風を入れて南へ走りけり★★★
開け放つ窓入る風の夏めく日★★★
ミキサー車薄暑の街を右折する★★★
桑本栄太郎
緑陰や肩を大きく深呼吸★★★
プロペラの紅の映え居り若楓★★★
橡の葉の葉脈透きし夏日かな★★★★
廣田洋一
青き葉の夫々そよぐ新樹かな★★★★
公園にママさんデビュー新樹光★★★
次の間に待ちたる客や風炉点前★★★
5月13日(4名)
小口泰與
桷咲くや白樺林借景に★★★
重弁を地につけ雨の牡丹かな★★★
夕映えの一朶の雲や美人草★★★
廣田洋一
閉ざされし植物園や薄暑光★★★
白シャツのカフスを返す薄暑かな★★★
擦れ違ふ学生の群街薄暑★★★★
薄暑、学生服を脱いで白シャツになっているもいる学生の群れ。そんな群れに青春の汗っぽさを感じることもある。うっすら汗ばむ季節こそ若さの象徴でもあるのだろう。(高橋正子)
多田有花
車椅子おろし五月の定期バス★★★
この通り咲くはいずれも赤き薔薇★★★
芍薬を畑いっぱい咲かせ売る★★★
桑本栄太郎
甘き香や雨の予報の忍冬花★★★★
との曇る天の梢や桐の花★★★
暮れなずむお使い帰り山法師★★★
5月12日(4名)
廣田洋一
黄菖蒲や光振りまく庭の隅★★★★
黄菖蒲や歩行注意と町の角★★★
鱚釣りに脚立が良しと父の言★★★
小口泰與
頂上や却下の沼の夏霞★★★
鉄線やそよ風に舞い上がりける★★★
石楠花や堰を越ゆるる水の嵩(原句)
石楠花や堰を越えゆく水の嵩★★★★(正子添削)
ちなみに「越ゆ(文語)」の活用は次のようになります。
語幹:越(こ) 活用:ヤ行下二段活用 
未然形:越・え(ず) 連用形:越・え(たり) 終止形:越・ゆ 連体形:越・ゆる(時) 已然形:越・ゆれ(ば) 命令形:越・えよ
多田有花
紅白の灯台並ぶ海五月★★★
葉桜を大きく揺らす午後の風★★★
青嵐夕べようやく静まりぬ★★★
桑本栄太郎
午後よりの雨の予報や紫蘭濃く★★★
薔薇の香や苑に満ち居り樹木葬(原句)
切れが2か所になっているので、避けたいです。
薔薇の香の苑に満ち居り樹木葬★★★★(正子添削)
さざ波の山影映す植田かな(原句)
さざ波に山影映す植田かな★★★★(正子添削)
5月11日(4名)
小口泰與
花ぎぼしはやもひと日の終わりける★★★
花桐や一朶の雲は山離れ★★★★
九輪草小川の流れさらさらと★★★
廣田洋一
黒揚羽見る間に高く飛び去りぬ★★★★
指丸めヨガのポーズや夏の朝★★★
テラスにてコーヒー啜る初夏の朝★★★
多田有花
船ゆけば白き航跡初夏の海★★★★
航跡の白さは季節によって感じが変わってくる。初夏の海では、さっぱりとしとしている。(高橋正子)
野茨や企業所有地守るごと★★★
釣り人のモーターボートは沖目指す★★★
桑本栄太郎
朝なればうす紅差しぬ月見草★★★★
乙訓郡大枝の里に柿若葉★★★
川風の土手の茂みや千日紅★★★

●5月月例ネット句会ご案内●

■5月月例ネット句会ご案内■

①投句:当季雑詠(夏の句)3句
②投句期間:2021年5月3日(月)午前6時~2021年5月9日(日)午後5時
③投句は、下記アドレスブログの<コメント欄>にお書き込みください。

※どなたでも投句が許されます。

▼互選・入賞・伝言
①互選期間:5月9日(日)午後6時~午後10時
②入賞発表:5月10日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、5月11日(月)正午~5月14日(木)午後6時

○句会主宰:高橋正子
○句会管理:高橋信之

※ここは、ご案内のみですので、投句はしないでください。

自由な投句箱/5月1日~10日

※当季雑詠3句(春の句・夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/5月1日~10日

5月10日(1句)
★野良猫の寄り来て鳴けり夏始め/多田有花
春に生まれた仔猫も初夏には大きくなって動き回る。野良猫には野良猫の人懐っこさもあって、人を見つけて寄って来て鳴く。(高橋正子)
5月9日(2句)
ひそやかに言葉話すや朴の花/廣田洋一
俳句は文芸で、詩的発想は許される。朴の花に親しめば、あたりの静寂の中で、花たちがひそやかに話しているようにも思える。(高橋正子)
★アイリスや蕾ほどけばみずいろに/多田有花
アイリスとみずいろの感覚がマッチしている。絵心がいい。(高橋正子)
5月8日(2句)
★朴の花白き木陰に子ら眠る/廣田洋一
朴の花の清らかさが思われる句。大きな朴の花の木陰が子らに優しい。(高橋正子)
★芍薬の切り花買い求めし男/多田有花
芍薬の鉢を買う男性は珍しくないかもしれないが、一時を愉しむ切り花を買う男性は稀かもしれない。しかも芍薬。好きな花かもしれない。そこに惹かれて出来た句。(高橋正子)
5月7日(1句)
★軒下に花柄のシャツ初夏の風/廣田洋一
初夏を迎えると気温もあがって、衣服も開放的に、軽くなる。軒下に明るい花柄のシャツが干してあったり、これも夏が来た証拠。(高橋正子)
5月6日(1句)
★二筋の菖蒲揺らして湯浴みせり/廣田洋一
菖蒲湯に浮かせる菖蒲が二筋。二本というのでなく、「二筋」に一文字に筋を引いたような菖蒲の葉のきりっとした姿が目に浮かぶ。いい菖蒲湯だった。(高橋正子)
5月5日(1句)
★校庭に白線引かれ夏立ちぬ/廣田洋一
校庭に白線が引かれるのは、季節を限ることではないが、万物がいきいきとしてくる初夏は、その白さが際立つ。初夏の空の下、土に引かれた白線があざやかだ。(高橋正子)
5月4日(1句)
★校庭に子らの夢なり鯉幟/廣田洋一
小さな学校だろうか。校庭に鯉幟を泳がせている。児童たちの夢をのせて伸び伸びと泳ぐ鯉幟と見える。(高橋正子)
5月3日(1句)
★柿若葉思ひ切り日を浴びてをり/廣田洋一
「思ひ切り」がいい。柿若葉がその全身で日を浴び、日を返している。やわらかそうで、強い柿若葉が詠まれている。(高橋正子)
5月2日(1句)
★山風を腹一杯の鯉幟/小口泰與
鯉幟が山からの風を受けて腹を膨らませ、勇壮に泳いでいる。荒々し山風が鯉幟を勢いづけている。(高橋正子)
5月1日(2句)
★兜の緒締め直されて武者人形/廣田洋一
端午の節句に飾る武者人形、1年間仕舞っている間に兜の緒が緩んでいることがある。緩んだ兜の緒をしっかりと締め直して、凛々しい武者に仕上げる。(高橋正子)
★迫り出でて虎杖ぽきと折られける/桑本栄太郎
虎杖が伸びるころ。道にせりだしているものは、通るに邪魔でもあるし、折りとられている。虎杖があれば、折りたくなる心情は、いつから持ち合わせたか。(高橋正子)

5月1日~10日

5月10日(4名)
小口泰與
アカシアやとんがり屋根の少年院★★★
野いばらや碓氷峠の眼鏡橋★★★
鉄線や利根は白波裏返す★★★
廣田洋一
さはさはと頬を撫でたる初夏の風★★★★
久し振りと声を掛け合ふ初夏のジム★★★
初夏や鷺の佇む街の川★★★
桑本栄太郎
若者はなべて撫で肩若葉吹く★★★
姫女苑の風に抗う雨催い★★★★
久闊を叙すや電話の走り梅雨★★★
多田有花
野良猫の寄り来て鳴けり夏始め★★★★
春に生まれた仔猫も初夏には大きくなって動き回る。野良猫には野良猫の人懐っこさもあって、人を見つけて寄って来て鳴く。(高橋正子)
はつなつの釣り竿並ぶ突堤に★★★
初夏の靄晴れゆき沖の小島見ゆ★★★
5月9日(4名)
小口泰與
卯の花やカンバスいまだ白きまま★★★★
帆船の浮かぶ岸辺の海芋かな★★★
花桐や長きすそ野の赤城山★★★
廣田洋一
何事か話す風情や朴の花(原句)
ひそやかに言葉話すや朴の花★★★★(正子添削)
俳句は文芸ですから、詩的発想で、添削のように言い切ってよいです。朴の花に親しめば、あたりの静寂の中で、花たちがひそやかに話しているようにも思えます。
白鱚はこれに限ると刺身にす(原句)
白鱚を刺身にこれに限るなり★★★★(正子添削)
シャツの袖まくり上げたる薄暑かな★★★
桑本栄太郎
若者の青嵐の意気欲しきかな★★★
風薫る田道過ぎ行く路線バス★★★★
丘に群れ茅花流しの夕べとも★★★
多田有花
アイリスや蕾ほどけばみずいろに★★★★
アイリスとみずいろの感覚がマッチしている。絵心がいい。(高橋正子)
欄干から釣り糸を垂れ浅き夏★★★
帆をあげしヨットこれより沖に出る★★★
5月8日(4名)
小口泰與
花びらを咥え秀つ枝へ四十雀★★★
置き鉤を手繰るや鯰眼間に★★★
金雀枝や池にかがよう夕日影★★★
廣田洋一
蓮のごと広がり開く朴の花★★★
朴の花白き木陰に子ら眠る★★★★
朴の花の清らかさが思われる句。大きな朴の花の木陰が子らに優しい。(高橋正子)
臥竜のごと一枝伸びる朴の花★★★
多田有花
芍薬の切り花買い求めし男★★★★
芍薬の鉢を買う男性は珍しくないかもしれないが、一時を愉しむ切り花を買う男性は稀かもしれない。しかも芍薬。好きな花かもしれない。そこに惹かれて出来た句。(高橋正子)
皐月つつじ雄蕊雌蕊の影くっきり★★★
新緑のなかをくだりゆく車★★★
桑本栄太郎
姫女苑の小花脇へと控えけり★★★
花大根遥か遠くに路線バス★★★★
赤き実の鋪道染め居りさくらんぼ★★★
5月7日(3名)
小口泰與
秀っ枝より睨みを利かす目白かな★★★
蜘蛛の囲の雁字搦めや雨後の朝★★★
置き鉤にかかりし鯰ゆらゆらと★★★
廣田洋一
雨上がり日の射す空に初夏の富士★★★
軒下に花柄のシャツ初夏の風★★★★
初夏を迎えると気温もあがって、衣服も開放的に、軽くなる。軒下に明るい花柄のシャツが干してあったり、これも夏が来た証拠。(高橋正子)
枝先に子供駆けよる朴の花★★★
桑本栄太郎
泰山木の早もつぼみや夏初め★★★
匂い立つ栗の花咲く雨催い★★★
やかなとは斯く難しき健吉忌★★★
5月6日(3名)
小口泰與
群なして木から木へ目白かな★★★
口ずさむ藤村の詩や夏の雲★★★
花桐や嶺雲はやも遁走す★★★★
廣田洋一
二筋の菖蒲揺らして湯浴みせり★★★★
菖蒲湯に浮かせる菖蒲が二筋。二本というのでなく、「二筋」に一文字に筋を引いたような菖蒲の葉のきりっとした姿が目に浮かぶ。いい菖蒲湯だった。(高橋正子)
湯の菖蒲ぐいと引き寄せ匂ひかぐ★★★
連休明けの公園濡らす夏の雨★★★
桑本栄太郎
上賀茂の大田の沢や杜若★★★
甍越へ大きく空へ鯉のぼり★★★★
わらわらと白き葉裏や若葉吹く★★★
5月5日(3名)
小口泰與
初夏や利根上流の水の色★★★
薄暑はや松籟うれし丘の上★★★
爆発のこの一瞬の牡丹かな★★★
廣田洋一
ハンカチはいつも四つ折り青き芝★★★
夏立つや庭に撒きたる除草剤★★★
校庭の白線引かれ夏立ちぬ(原句)
校庭に白線引かれ夏立ちぬ★★★★
校庭に白線が引かれるのは、季節を限ることではないが、万物がいきいきとしてくる初夏は、その白さが際立つ。初夏の空の下、土に引かれた白線があざやかだ。(高橋正子)
桑本栄太郎
雨音を聞きつつ夢の午睡かな★★★
木々の葉のぼつてり見ゆる走り梅雨★★★
立夏早や雨のひと日の暮れ行ける★★★
5月4日(4名)
小口泰與
初夏や草木爆発おちこちに★★★
稜線と谷川定か聖五月★★★
画架立てし湖畔や空は浅き夏★★★
廣田洋一
校庭に夢は大きく鯉幟(原句)
校庭に子らの夢なり鯉幟★★★★(正子添削)
校庭に鯉幟を泳がせている。児童たちの夢をのせて泳ぐ伸び伸びと泳ぐ鯉幟と見える。(高橋正子)
息を吐き少し休める鯉幟★★★
子が生まれ一匹足せる鯉幟★★★
多田有花
おぼろな朝日なだらかな山の上★★★
春送るリコーダーを奏でつつ★★★
野遊びや犬にボールを追わせおり★★★
桑本栄太郎
黄金週間しずもり返る街の中★★★
修司忌のマッチ擦る間も書を読みぬ★★★
午後よりの雨の予報やみどりの日★★★
5月3日(3名)
小口泰與
河岸にまつわる小鮎雲一朶★★★
荒波の間遠となりし春惜しむ★★★
爆発の牡丹や空の青青と★★★
廣田洋一
柿若葉思ひ切り日を浴びてをり★★★★
「思ひ切り」がいい。柿若葉がその全身で日を浴び、日を返している。やわらかそうで、強い柿若葉が詠まれている。(高橋正子)
温室の硝子戸光り柿若葉★★★
朝刊を配るバイクや明易し★★★
桑本栄太郎
黄金週間ボール遊びの親子かな★★★
日の丸を掲げ憲法記念の日★★★
幹太く垣根に沿いぬ花うばら★★★
5月2日(4名)
小口泰與
春暁の岩根をかける魚影かな★★★
若鮎や魚道遡上の群の波★★★
山風を腹一杯の幟かな(原句)
「幟」は、鯉幟も指すが、もともと旗幟。「腹一杯」とあるので、鯉幟と思われるが、この句では、「鯉幟」とはっきりした方が良い。(高橋正子)
山風を腹一杯の鯉幟★★★★(正子添削)
鯉幟が山からの風を受けて腹を膨らませ、勇壮に泳いでいる。荒々し山風が鯉幟を勢いづけている。(高橋正子)
廣田洋一
鶯や竹から木へと渡りけり★★★
鶯の声高く澄む竹の奥★★★★
桜の実赤く色付き空を突く★★★
多田有花
春深し電子ピアノを弾き初めし★★★
いかなごのくぎ煮や春の卵焼き★★★
春疾風洗濯ものを部屋に干す★★★
桑本栄太郎
ゆすら梅早くも赤き軒端かな★★★
さみどりの風弄ぶ大手まり★★★
メーデーと云えば代々木や雨の中★★★
5月1日(3名)
小口泰與
精悍な木木のこの芽や小糠雨★★★
山藤や雨を弾きし石畳(原句)
山藤や雨を弾ける石畳★★★★(正子添削)
掛軸の花押古りたり朧月★★★
廣田洋一
ミニチュアの五月人形飾りけり★★★
武者人形兜の緒を締め直し(原句)
武者人形が主語になっていますので、人形が「締め直す」の意味になっています。
兜の緒締め直されて武者人形★★★★(正子添削)
端午の節句に飾る武者人形、1年間仕舞っている間に兜の緒が緩んでいることがある。緩んだ兜の緒をしっかりと締め直して、凛々しい武者に仕上げる。(高橋正子)
メーデー歌思ひ出せずに風呂掃除★★★
桑本栄太郎
虎杖の道に迫り出し折られ居り(原句)
「道に」は説明になっているので、要らないです。
迫り出でて虎杖ぽきと折られける★★★★(正子添削)
虎杖が伸びるころ。道にせりだしているものは、通るに邪魔でもあるし、折りとられている。虎杖があれば、折りたくなる心情は、いつから持ち合わせたか。(高橋正子)
屋根付きのトラクターとや代田掻く★★★
竹秋の山すそ熱のあるかとも★★★

自由な投句箱/4月21日~30日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/4月21日~30日

4月30日(2句)
★夏隣間近き山の樹木の色/小口泰與
間近に立つ山の木々を見ると、夏が近い、濃い緑になっている。年中緑ながら、微妙に変わる木々の色が夏隣となって、すがすがしい。(高橋正子)
★突堤に座れば春の波近し/多田有花
突堤に座ることは海に近いことなのだが、腰を据えて座ってみると、春の波が寄せて来るのが、身体に響くように感じられる。穏やかな春の海だからこそ「波近し」なのだ。(高橋正子)
4月29日(1句)
★白き蝶光揺らして飛び去りぬ/廣田洋一
「光揺らして」に新しい発見があって、飛び去る蝶が眩しいほどの存在になっている。焦点が良く絞られている。(高橋正子)
4月28日(1句)
★茄子苗の小さき支柱や朝の日に/桑本栄太郎
茄子には高い支柱はいらないが、しっかり根付くように支柱を立てられる。その支柱が小さくて、朝日を浴びて、茄子苗をけなげに支えている。成長を応援したくなる。(高橋正子)
4月27日(1句)
★なんじゃもんじゃ酒舗の庭なる夏隣/桑本栄太郎
「なんじゃもんじゃ」という面白い名前の木。もじゃもじゃのよくわからない花をつけるのが、よっぱらって咲くわけではないが、酒舗の庭にある。夏の近い明るさがいい。(高橋正子)
4月26日(1句)
★整然と植え付けを待つ春の畑/多田有花
じゃが芋など春に植え付けがはじまる準備が済んだ畑。雑草を取り払い、よく耕し、整然と整えら得ているのをみると、のどかな春の天気も手伝って気持ちの良いものだ。(高橋正子)
4月25日(2句)
★谷川の真っ向にあり濃山吹/小口泰與
谷川に来ると向こう岸の眺めが目に入る。ちょうど自分の真向かいに位置をずらさず山吹が濃い黄色の花をつけている。偶然とは言え、山吹と向かい合う面白さ。(高橋正子)
★尺取りの虚空に伸ばす体かな/多田有花
尺取り虫がついに枝の先まで来た。その先に尺を取る枝はない。自然、体は虚空にのけぞる。枝の端の夏空にのけぞった体の尺取りの姿が面白い。(高橋正子)
4月24日(1句)
★見上げれば視界にあふる八重桜/多田有花
見上げた時の視界は、それほど広くない。ほぼ真上あたりか。この視界に八重桜の花がふわふわと重なり合い、あふれるほど。あでやかさはいかばかり。(高橋正子)
4月23日(1句)
桜しべ降りつくしたり空真青/小口泰與
満開の桜が散り、赤い桜しべも降りつくしてしまった。空の色が真青になり、いよいよ葉桜の季節を迎える。花の時から葉桜へとうつりゆく桜の木である。(高橋正子)
4月22日(1句) 
★藤棚に蜂の羽音のおそろしき/桑本栄太郎
藤棚の藤が満開で垂れ下がり、それに蜂が恐ろしいまでの羽音を立てて蜜をすっている。藤の花の生き生きとした豪華さを印象付けられる。(高橋正子)
4月21日(1句)
★沼広びろ残る鴨の紛れなし/小口泰與
冬の間沼を占めていた鴨がおおかた帰り、残る鴨もわずかになった。沼が広々となり、沼に点在する鴨一羽一羽がはっきりと確かめられる。まぎれもない鴨の存在。(高橋正子)

4月21日~30日

4月30日(4名)
小口泰與
夏隣間近き山の樹木の色★★★★
間近に立つ山の木々を見ると、夏が近い、濃い緑になっている。年中緑ながら、微妙に変わる木々の色が夏隣となって、すがすがしい。(高橋正子)
雛菊や隣家は天寿全うす★★★
朝日差す楓の花の初初し★★★
廣田洋一
整然と畝並びたる春の畑★★★
春の日や畑の土の瑞々し★★★
一畝に立ち続けをる葱坊主(原句)
一畝に立ち続けたり葱坊主★★★★(正子添削)
多田有花
一面ににんじん育つ春の畑★★★
灯台のまわりはすべて春の潮★★★
突堤に座れば春の波近し★★★★
突堤に座ることは海に近いことなのだが、腰を据えて座ってみると、春の波が寄せて来るのが、身体に響くように感じられる。穏やかな春の海だからこそ「波近し」なのだ。(高橋正子)
桑本栄太郎
荷風忌のシャンソン聴くや電蓄に★★★
雨上がり葉擦れの音の弥生尽★★★
花びらの散りてピンクや花みづき★★★
4月29日(4名)
小口泰與
春の宵八十路の酒量凛凛と★★★
紅雲の育つ夕暮花こぶし★★★
盤石は神の化身や風光る★★★
廣田洋一
行く春や外出止める雨降りて★★★
何の日と問はれ昭和の日と答へる★★★
白き蝶光揺らして飛び去りぬ★★★★
「光揺らして」に新しい発見があって、飛び去る蝶が眩しいほどの存在になっている。焦点が良く絞られている。(高橋正子)
多田有花
キックボード春の河口へ走らせる★★★
釣れますかと釣り人に問う春の磯★★★
突堤に並ぶ釣り人風光る★★★
桑本栄太郎
雨水の坂に溢るる菜種梅雨★★★
との曇る天の明るき菜種梅雨★★★
吾が歳の戦後生まれや昭和の日★★★
4月28日(4名)
小口泰與
有明の風の水田や赤蛙★★★
家長我床の間を背に春火鉢★★★
銀輪や風を切り行く新入生★★★★
廣田洋一
言われればピンクに見える春★★★
背高き草のはびこり春深し★★★
横浜にロープウエイや春惜しむ★★★
多田有花
春日さんさん墓石と向かい合い★★★
地蔵菩薩胸まで埋まる春の土★★★
憩うのはすでに木陰よ春深し★★★★
桑本栄太郎
寄せ植えのパンジー鉢をこぼれけり★★★
花ゑんどう支柱の丈に飽き足らず★★★
茄子苗の小さき支柱や朝の日に★★★★
茄子には高い支柱はいらないが、しっかり根付くように支柱を立てられる。その支柱が小さくて、朝日を浴びて、茄子苗をけなげに支えている。成長を応援したくなる。(高橋正子)
4月27日(4名)
小口泰與
白竜のなれの根付や春の宵★★★
群青の湖や公魚朝まだき★★★
残照の空は紅蓮や花こぶし★★★
廣田洋一
明星の光も見えず春満月★★★
一仕事終えたる夕べ春の月★★★
スカイツリー消えたる空に春満月★★★
桑本栄太郎
青空のまつたきありぬ新樹晴れ★★★
中州なる小さき一画うまごやし★★★
なんじゃもんじゃ酒舗の庭なる夏隣★★★★
「なんじゃもんじゃ」という面白い名前の木。もじゃもじゃのよくわからない花をつけるのが、よっぱらって咲くわけではないが、酒舗の庭にある。夏の近い明るさがいい。(高橋正子)
多田有花
川ここで海に入りたり春深し★★★★
惜春の地蔵に赤きよだれかけ★★★
葱坊主お地蔵様のかたわらに★★★
4月26日(4名)
小口泰與
春灯下遺愛の時計かちかちと★★★★
求愛の犬の尻尾や春の野辺★★★
山門へ辞儀して通る新入生★★★
廣田洋一
若葉して風見鶏の尾動かざる★★★
公園を駆け抜けて行く若葉風★★★★
新しき庭に根付きて若葉光★★★
多田有花
点々と島を並べて春の海★★★
麗かな沖ゆく船を眺めおり★★★
整然と植え付けを待つ春の畑★★★★
じゃが芋など春に植え付けがはじまる準備が済んだ畑。雑草を取り払い、よく耕し、整然と整えら得ているのをみると、のどかな春の天気も手伝って気持ちの良いものだ。(高橋正子)
桑本栄太郎
わらわらと葉の靡き居り新樹冷ゆ★★★
風に乗り風にあらがい蝶の昼★★★
みどり濃き中に未だし余花落花★★★★
4月25日(4名)
小口泰與
若鮎の魚道を遡上朝まだき★★★
待ちわびる勿忘草や時流★★★
谷川の真っ向にくる濃山吹(原句)
谷川の真っ向にあり濃山吹★★★★(正子添削)
谷川に来ると向こう岸の眺めが目に入る。ちょうど自分の真向かいに位置をずらさず山吹が濃い黄色の花をつけている。偶然とは言え、山吹と向かい合う面白さ。(高橋正子)
廣田洋一
枯れ果てし切り株囲む春の草★★★
夕暮れの流れのどかな街の川★★★★
細かなる泡湯に浸かりのどかなる★★★
桑本栄太郎
大樹とてうすきみどりや手鞠花★★★
花びらの紅差し散りぬ花みづき★★★
風吹けばさざ波皺に代田かな★★★★
多田有花
蜥蜴出づスカイブルーの尾を引いて★★★
藤見上ぐ九十九折を上りつつ★★★
尺取りの虚空に伸ばす体かな★★★★
尺取り虫がついに枝の先まで来た。その先に尺を取る枝はない。自然、体は虚空にのけぞる。枝の端の夏空にのけぞった体の尺取りの姿が面白い。(高橋正子)
4月24日(4名)
小口泰與
鉄棒へましらのようや新入生★★★★
桜しべ風の矢じりに絡まれし★★★
山裾へ馬棚続きけり鼓草★★★
廣田洋一
春の草意外と長き根を張りて★★★
荒畑の香り芳し春の草★★★★
のどけしや牛散らばりて草を食む★★★
桑本栄太郎
野ばら咲く窓や認定保育園★★★
花びらを鋪道に散らしポピー咲く★★★
黒蟻の行方定めず石の上★★★★
多田有花
見上げれば視界いっぱい八重桜(原句)
見上げれば視界にあふる八重桜★★★★(正子添削)
見上げた時の視界は、それほど広くない。ほぼ真上あたりか。この視界に八重桜の花がふわふわと重なり合い、あふれるほど。あでやかさはいかばかり。(高橋正子)
低く座し三色菫と向かい合う★★★
山路ゆく足元に咲きすみれ草★★★
4月23日(4名)
廣田洋一
食後の茶ゆったり啜る春の昼★★★
春昼や額に手を当て眠りをり★★★
春昼の見るとはなしに橋の上★★★★
小口泰與
吾妻の四万湖の青さ濃山吹★★★
桜しべ降りつくしたり空は蒼(原句)
「空は蒼」の「は」によって、空が強くなりすぎています。(高橋正子)
桜しべ降りつくしたり空真青★★★★
満開の桜が散り、赤い桜しべも降りつくしてしまった。空の色が真青になり、いよいよ葉桜の季節を迎える。花の時から葉桜へとうつりゆく桜の木である。(高橋正子)
おずおずと教室へ行く入学児★★★
川名ますみ
空へ伸びやがてうつむき紫蘭咲く(原句)
「空へ伸び」に対して、「うつむき」がマイナス思考へ働きますので、添削しました。
空へ伸びやがてむらさき紫蘭咲く★★★★(正子添削)
蕾をつけた茎が空へ伸びて、やがてむらさきの花を咲かせる。紫蘭の花のうつむいたイメージは読者に想像を委ねます。(高橋正子)
うつむきし紫蘭のつぼみ紅ほのか★★★
春闌けて髪の重さをカットする★★★★
桑本栄太郎
青柳の上へと靡く川の風(原句)
青柳を上へ上へと川の風★★★★(正子添削)
石垣の上に築地やつつじも燃ゆ★★★
夕闇にかざす明かりや花水木★★★
4月22日(4名)
小口泰與
渓流の迅き流れや濃山吹★★★
魚釣の今日は坊主や夕霞★★★
川沿いの菜の花畑まさやけし★★★★
廣田洋一
春日傘畳みて足を早めけり★★★
風受けて閉じたるままの春日傘★★★
橋の上立ち止まりたる春日傘★★★★
桑本栄太郎
わらわらと葉のゆらぎ居り若葉吹く★★★
ぶんぶんと羽音おそろし藤の棚(原句)
藤棚に蜂の羽音のおそろしき★★★★(正子添削)
藤棚の藤が満開で垂れ下がり、それに蜂が恐ろしいまでの羽音を立てて蜜をすっている。藤の花の生き生きとした豪華さを印象付けられる。(高橋正子)
花びらの色濃く散りぬ八重桜★★★
多田有花
無人の公園八重桜満開★★★
滑り台すべりゆくかな花びらも★★★★
生垣の平戸つつじの咲き初めし★★★
4月21日(4名)
廣田洋一
いつも通り事務所を出でて日永かな★★★★
日永なりお茶を一杯入れやうか★★★
春の風邪人には知らせず治しけり(原句)
春の風邪人に知られず治りけり★★★★(正子添削)
春の風邪があまりひどくならなくて、人に知られることもなく治ったというのも「春の風邪」らしくて俳句としていいのではと思います。
小口泰與
片雲や和同遺跡の遍路道★★★
春暁や湖を見下ろす丘に立つ★★★
残る鴨沼広びろと紛れなし(原句)
「紛れなし」と「残る鴨」が離れすぎて一読意味がとりにくいです。(高橋正子)
沼広びろ残る鴨の紛れなし★★★★(正子添削)
冬の間沼を占めていた鴨がおおかた帰り、残る鴨もわずかになった。沼が広々となり、沼に点在する鴨一羽一羽がはっきりと確かめられる。まぎれもない鴨の存在。(高橋正子)
多田有花
花吹雪いま盛んなる丘に立つ★★★★
平戸つつじにロードバイクの青年★★★
リード長きトイプードルがつつじに寄る★★★
桑本栄太郎
媼らのベンチ占めたる藤の棚★★★
たんぽぽの絮毛旅立つ野辺の風★★★
木洩れ日の木陰を歩む春落葉(原句)
「歩む」ことを言うより、「春落葉」に焦点を絞って、様子を述べるのが良いと思います。
木洩れ日の木陰にあまた春落葉★★★★(正子添削例)

自由な投句箱/4月11日~20日

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主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/4月11日~20日

4月20日(1句)
★溝川の流れゆかしき花菜晴れ/桑本栄太郎
菜の花が咲いて空が明るく晴れている。溝川の流れもやさしく、ゆかしい思いになる。やわらかく明るい春の景色を詠んだ句。(高橋正子)
4月19日(1句)
★春疾風島の灯台遠く見ゆ/多田有花
島の灯台は、普段なら、いつもの場所にくっきりと見えるのだが、春疾風が吹くと、砂塵を巻いているせいか、遠ざかって見える。ときには、ゆがんで見えるような気がする。また、逆の場合もあるようである。
春疾風星またたけば星近む 広瀬直人
4月18日(2句)
★富士の峯未だ白きや花水木/廣田洋一
富士の冠雪がまだ白いのに、ふもとでは、花水木が花びらを輝かせて咲いている。遠くに冠雪の富士を置き、近くを花水木が飾る。富士あればこそのいい眺めだ。(高橋正子)

★春疾風海鳥一列に並ぶ/多田有花
春の疾風が吹き付けるとき、なぜか海鳥は群れで固まらず、一列に突堤などに並んでいる。海鳥の整列を吹く春疾風。どちらも芯がある。(高橋正子)

4月17日(1句)
★古民家にて轆轤廻して春深き/廣田洋一
古民家の家内の深さを感じるのは春であろう。春も闌けてくれば外光が明るくなり、内は薄暗い。そこに轆轤が時を深めるように廻り土より器が生まれる。
「春深き」が実感できる。(高橋正子)
4月16日(1句)
★高きよりさらに高きへ松の芯/多田有花
松の枝に松の芯がずいっと伸びるころ。高い枝からさらに高い所へと伸びる松の芯は、伸びてゆらゆら揺れるほど。それらは空の高くでのできごと。(高橋正子)
4月15日(2句)
山峡の一朶の雲や鼓草/小口泰與
鼓草はたんぽぽのこと。しずかな山峡にぽっかりとい浮いている一朶の雲。それを見上げるように咲いているたんぽぽ。あたたかい日差しがかんじられる童画のような句。(高橋正子)
★しおやとんぼ霞桜の咲くころに/多田有花
しおやとんぼは四月ごろからあらわれる。山に霞桜が咲くころである。しおやとんぼと霞桜、少し珍しい出会いに、季節の妙を思う。(高橋正子)
4月14日(1句)
★木の芽山白き灯台立ちにけり/多田有花
岬の灯台の白と、木の芽山の淡いみどりの色合いが春らしく、よく映えている。(高橋正子)
4月13日(1句)
★すかんぽやひと際高く赤き穂に/桑本栄太郎
すかんぽの赤い穂の色は、葉の緑と親しみあう色。すっと高く伸びて野の草に高低をつけて郷愁を誘う。ただそのことが印象に残る。(高橋正子)
4月12日(1句)
★汐飛ばす蛤すぐに買ひにけり/廣田洋一
店先の蛤。汐を飛ばしているので、すぐ買いたくなった。生きのいい元気な蛤に出会ったときのうれしさが、率直に表された句。(高橋正子)
4月11日(1句)
★糸柳映りし水面波立てり/廣田洋一
糸柳は、枝垂柳のこと。糸柳というといかにも繊細な枝が想像できる。糸柳が映った水面が波立っている。映った柳が揺れて波立たせているようにも思える。水辺のやさしい光景。(高橋正子)