11月21日~30日

11月30日(4名)
小口泰與
冬空や星座の鳥獣翔けにける★★★★
雀らの塒は庇や青木の実★★★
牡丹の冬芽や雨を弾きける★★★★
牡丹の冬芽が雨を弾いている。それによって分かる、牡丹の芽の固さ、艶やかさ、そして膨らみ。冬の雨に降られながらいきいきと命を輝かせている牡丹の冬芽を愛おしむ気持ちが伝わる句。(高橋正子)
廣田洋一
エプロンを着たまま出かけ年の暮★★★
読みかけの本を積み上げ年の暮★★★
練り物のゆかしき味やおでん鍋★★★
多田有花
<蹴上インクライン>
インクライン彩る冬の紅葉かな★★★
<瓢亭>
冬紅葉堪能ののち京料理★★★
山茶花に照る陽曇る陽風吹く日★★★
桑本栄太郎
川べりの地道を行くや枯尾花★★★
堰水の冬日燦々光りけり★★★
玄関に冬の小菊や小料理屋★★★
11月29日(4名)
小口泰與
しぐるるや野面うすうす木木の息★★★★
寒月や逃げ足早き雲一朶★★★
瀞の面の鋼や木の葉跳ね返す★★★★
廣田洋一
電飾の点る並木や暮早し★★★
暮早し帰宅をせかす曲流れ★★★
桜落葉華やぐ色を残しをり★★★★
多田有花
<南禅寺三句>
冬紅葉中にどっしり水路閣★★★★
南禅寺境内を通る琵琶湖の水を送るための水路橋、水路閣は、幅4メートル、高さが9メートルという花崗岩づくりのどっしりとしたもの。今は南禅寺の冬紅葉に色合いもしっくり溶け込んで、堂々たる風情。(髙橋正子)
句碑ありぬ冬の紅葉に囲まれて★★★
三門に立てば絶景冬紅葉★★★
桑本栄太郎
冬ざれや喪中はがきの今日も来る★★★
日差し受くどうだん躑躅や冬紅葉★★★
道の辺に散り積りたる落葉かな★★★
11月28日(4名)
廣田洋一
葱の束買物かごをはみ出せり★★★
駅出でてつい立ち寄りぬおでん酒★★★
週末はおでん鍋にて手抜きせり★★★
小口泰與
熱熱の焼芋割るや湯気かおる★★★
円光の朝日や樹氷包みける★★★★
昇ったばかりの朝日が樹氷をまぶしくかがやかす。夜があけ、あたらに蘇った景色が感動的。(髙橋正子)
裸形なる尻丸大根抜きにけり★★★
桑本栄太郎
あおぞらに銀杏冬木の梢かな★★★
ひと風に木の葉しぐれやバス通り★★★
寒風に地団駄踏みてバスを待つ★★★
多田有花
<永観堂三句>
山茶花や数多の人を見上げおり★★★
冬紅葉苔に水面に散りゆきぬ★★★
銀杏散るとき地は金色に変わり★★★
 
11月27日(4名)
小口泰與
あえかなる朱き冬芽や山の風★★★
切れ字「や」強く切ってしまうと、「あえかなる朱き冬芽」に対する詠者の気持ちが消えてしまいます。切れは「不即不離」「付かず離れず」です。(髙橋正子)
校庭へ冬韋駄天の足音かな★★★
赤金の朝日や沼の鴨陣★★★
廣田洋一
電車より川面の見えず暮早し★★★
電飾の駅前広場暮早し★★★
塾の窓子の頭見え暮早し★★★
桑本栄太郎
木守の赤く熟せる軒端かな★★★
あおぞらの銀杏梢や裸木に★★★
日照雨(そばえ)降る日差し明るき冬日かな★★★
多田有花
<永観堂三句>
3句とも
状況がもう少し読み手に分かる表現だとさらにいい句になると思います。(髙橋正子)
冬紅葉光と影の交差する(原句)
冬紅葉光と影の差し交じり★★★★(正子添削)
冬の陽ざしを受けた紅葉は、光と影が入り交じり、陰翳が濃くなり、妖艶なまでの色どりを見せてくれる。それが季節の深みとも言える。(髙橋正子)
冬紅葉の色も浮かべし流れかな(原句)
冬紅葉の色を浮かべて流れかな★★★★(正子添削)
初冬の流れに紫式部の実(原句)
初冬の流れに差し出づ式部の実★★★★(正子添削)
11月26日(4名)
小口泰與
庭芝の醜草とるや冬の虫★★★
寒暁や花園のホース棒の如★★★
白波の利根のおりふし冬の虹★★★
廣田洋一
水中花うすく閉じ込め初氷(原句)
水中花をうすく閉じ込め初氷★★★★(正子添削)
水中花は、水に浮かべた花を指す場合もあるので、この句は、そんな場合の様子であろうか。花の浮かぶ水をうすく凍らせてしまった初氷。儚くも美しい。(髙橋正子)
ほうとう鍋のふた取る先に小春富士★★★
地元産の葱の溢れる市場かな★★★
多田有花
<永観堂三句>
地蔵像隣に八手の花咲かせ★★★
冬紅葉中を登るや臥龍廊★★★
多宝塔冬の紅葉の波のうえ★★★
桑本栄太郎
さざ波の水面煌めくかいつぶり★★★
鬼貌の誰とも知れず芙蓉枯る★★★
畦道の日差しや冬の草もみぢ★★★
11月25日(3名)
多田有花
<永観堂三句>
うめもどき赤々として冬はじめ★★★★
枯れの始まる季節、葉を落とすと、うめもどきの赤々と熟れた実が目に強く映る。温かそうな色で人の目を引き付ける。冬の到来を思う。(髙橋正子)
とりまぜて赤や緑や冬の庭★★★
白壁を彩る冬の紅葉かな★★★
桑本栄太郎
バスに乗り銀杏落葉を踏みに行く★★★
光りつつ木の葉しぐれの銀杏かな★★★
市ヶ谷の銀杏散りたる憂国忌★★★
廣田洋一
雪富士の裾長く伸び甲斐路かな★★★★
冬めきぬ湖に浮かべる小舟かな★★★
小春の日跳ね返す富士の白雪★★★
11月24日(4名)
小口泰與
田雲雀や湖一面の絖を成し★★★
冬蝗稲藁ロールおちこちに★★★
和菓子屋の歴史をつなぐ冬柏★★★
廣田洋一
北国を思い出したる目貼かな★★★
山茶花や空き家の庭を紅く染め★★★
日を浴びて青く光れる冬菜かな★★★★
多田有花
<永観堂三句>
永観堂冬の紅葉を見るばかり★★★
紅葉散る水面の底の鯉静か★★★
唐門の盛り砂鮮やか冬の陽に★★★
桑本栄太郎
落葉松の並木通りや冬日さす★★★★
落葉松は日当たりのより乾いた土が適地だという。私は小諸へ行く途中、11月22日だったか、追分をすぎたところから落葉松林を車窓から見て感激した。そのような落葉松の並木だろうと思う。冬日が差して情趣深い景色になった。(髙橋正子)
ふるさとの遠くに想う波の花★★★
落葉踏む銀杏並木となりにけり★★★
11月23日(4名)
小口泰與
奥利根の棚田うるおす小夜時雨★★★
庭隅の石蕗を切り白磁壺(原句)
庭隅の石蕗を白磁の壺に挿し★★★(正子添削)
老農の猫背や畑の蕎麦を刈る★★★
廣田洋一
銀杏黄葉光撒きつつ散りにけり(原句)
銀杏黄葉光撒きつつ散りゆけり★★★★(正子添削)
銀杏黄葉が散る様子は、光をまき散らしているかのようである。光に透けたような銀杏の黄葉が今生を尽くして散る様は美しい。(髙橋正子)
団地の道一筋に石蕗の花★★★
山茶花や零れし花の光をり★★★
多田有花
<永観堂三句>
山門を入れば一面冬紅葉★★★
絞り椿江戸の湯舟の足元に★★★
石蕗の花石に巨木に寄り添いて★★★
桑本栄太郎
電線の雄叫び立つるもがり笛★★★
風の子は鬼ごつことや寒波来る★★★
つむじ風巻いて寒波の来たりけり★★★
11月22日(4名)
小口泰與
丹田を守る八十路の懐炉かな★★★
返り花小堀の渡しマスクして★★★
神の旅里の社の蒼然と★★★
廣田洋一
目貼りして煙草は外で吸ひにけり★★★
まだまだしたきことあり木の葉髪★★★
傘寿後の恙なき日々木の葉髪★★★
多田有花
冬浅き京でいただく生ジュース★★★
小春日やオープンカーを走らせる★★★
窓際のパキラへ冬の陽の淡し★★★
桑本栄太郎
時雨るるや更に色濃き冬紅葉★★★
大根のりゅうと立ち居り屋敷畑★★★★
日々の蔬菜として屋敷畑にはこまごま野菜が植えられている。大根もその一つ。土が肥え、水も十分で形は多少いびつでも良く育っている。「りゅうと立ち」の大根が頼もしい。(髙橋正子)
少年の遠き日ありぬ龍の玉★★★
11月21日(4名)
小口泰與
冬鵙や尾上の松へ靄覆う★★★
逆光を集む冬ばら風の中★★★
鳶の輪のました段畑大根引★★★
廣田洋一
目貼りして雨戸を開ける応接間★★★
一斉に街灯点る夕時雨★★★
鷹一羽小屋に佇み時雨空★★★
桑本栄太郎
綿虫のつんのめり居り手のひらに★★★
枝垂れたるしだれ桜の冬木かな★★★
春日野のひらがな歌碑や八一の忌★★★
多田有花
短日や皇帝ダリア咲き誇る★★★
経堂へ枝を差し伸べ冬紅葉★★★
控え目に鳴きつつ枝に冬の鵙★★★★
秋には猛々しい声で鳴いていた鵙も、冬になると、姿も見つけにくく、声さえも控え目になっている。そこがおかしい。鵙も自然には逆らえないのは自然界の生き物。(高橋正子)

自由な投句箱/11月11日~20日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
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代表:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/11月11日~20日

11月20日(1句)
★月食の後の夜明けの冬満月/多田有花
前日の夕方、月食で月の変容を見せてくれた満月は、夜明けを迎え、大事を為し終えたかのように、いっそう研ぎ澄まされた光を放っている。(高橋正子)
11月19日(1句)
★月食の東寺にかかる冬の月/桑本栄太郎
きのうは夕方6時過ぎに部分月食が見られた。研ぎ澄まされた月の光が欠けて、東寺の空にかかっている。冬月の月食と東寺と取り合わされることで、
古典的、神秘的な夜空となってた。(髙橋正子)
11月18日(1句)
★大根干す風瞭かに赤城より/小口泰與
たくあん漬けなどにするために、大根を振り分けにして竿に吊るしたり、縄で編んで吊るししんなりするまで風に当てるのが大根干し。大根を干すには、風が肝心。赤城山からの風が瞭らかに吹いてきている。赤城颪への恃みは先祖代々から。(髙橋正子)
11月17日(1句)
★吹き溜まる木の実踏むなり歩く音/桑本栄太郎
この季節、木の実がたくさん降っているのを私も目の当たりにしている。踏むと木の実が乾いているのか、歩くたび、踏むたびにパリッと音を立てる。それが、自分が歩くという行為の音。(髙橋正子)
11月16日
該当句無し
11月15日(1句)
★小春日や土手に座りて暇ありぬ/廣田洋一
小春日に土手に座ってみる。普段忙しくしている身だからこそ、小春日の温かい日差しに「暇」を感じる。「暇」という表しにくいことをよく詠んでいる。(髙橋正子)
11月14日(1句)
★火の匂う焼芋割るや屏風岩/小口泰與
屏風岩は切り立った岩で、風よけにもなるような場所であろうか。「火の匂う」焼き芋があつあつで美味しそう。「火の匂う」が何よりもリアルなのがいい。(高橋正子)
11月13日(1句)
★薪積みて消火器備へ冬構/廣田洋一
薪を積むだけでなく、消化器を備えて冬への準備が整った。用意周到の冬構えに、災害と隣り合わせの現代の生活の有り様を考えさせられる。(髙橋正子)
11月12日(1句)
★並木道見通し良きや冬構/廣田洋一
並木道がまっすぐ通っている。見通しのよさに、さっぱりとした冬構の様子が知れる。気持ちの良い句だ。(髙橋正子)
11月11日(1句)
★ベランダの明かりや二連の柿すだれ/桑本栄太郎
ベランダに干柿が二連吊るしてある。二連だけれど、たくさんの柿すだれ同様、ベランダが明るくなった。市民の簡素な生活が明るく詠まれている。(髙橋正子)

11月11日~20日

11月20日(4名)
小口泰與
雪浅間正面に見し今日小春★★★
利根川へ山風流す冬の松★★★
山風の里に住みけり神無月★★★
廣田洋一
バス停にざっと降りこむ時雨かな★★★
休耕の畑打ちたる時雨かな★★★
色紙を短冊にして目貼かな★★★
多田有花
月食を見る冬浅きベランダで★★★
月食の後の夜明けの冬満月
前日の夕方、月食で月の変容を見せてくれた満月は、夜明けを迎え、大事を為し終えたかのように、いっそう研ぎ澄まされた光を放っている。(高橋正子)
朝ごとに冬の紅葉の山仰ぐ★★★
桑本栄太郎
亀虫の張り付き逃げず冬めける★★★
少年の遠き想う龍の玉★★★
踏みしだく落葉通りやプラタナス★★★
11月19日(4名)
小口泰與
丹精の冬ばらに声かかりける★★★
山風に一糸纏わぬ枯木かな★★★
突堤に迫る波なみ冬鴎★★★
廣田洋一
返り咲く白き躑躅や紅ほのか★★★
薬局の庭に咲きたる返り花★★★
宅配便受け取る朝小春かな★★★
桑本栄太郎
綿虫の想い出淡く浮かびけり★★★
小春日や天のきらめきヘリコプター★★★
月食の東寺にかかる冬の月★★★★
きのうは夕方6時過ぎに部分月食が見られた。研ぎ澄まされた月の光が欠けて、東寺の空にかかっている。冬月の月食と東寺と取り合わされることで、
古典的、神秘的な夜空となってた。(髙橋正子)
多田有花
レンジ出る緑鮮やかブロッコリ★★★
見上げれば日差しを透かす冬紅葉★★★
開山堂冬の紅葉に取り巻かれ★★★
11月18日(4名)
廣田洋一
ラリー続くテニスコートの小春かな★★★
小春日や地元の野菜売られをり★★★
帰り花思はず声をかけにけり★★★
小口泰與
語部の宿の女将や囲炉裏端★★★
夕映えの石蕗の私語風の私語★★★
大根干す風瞭かに赤城より★★★★
たくあん漬けなどにするために、大根を振り分けにして竿に吊るしたり、縄で編んで吊るししんなりするまで風に当てるのが大根干し。大根を干すには、風が肝心。赤城山からの風が瞭らかに吹いてきている。赤城颪への恃みは先祖代々から。(髙橋正子)
多田有花
冬菜畑紋白蝶の集いおり★★★
鯖缶の水煮を加え煮大根★★★
枯れてこそ光を放つ尾花かな(原句)
「こそ」は、理屈が勝ってるように感じます。
枯れてより光放てる尾花かな★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
点滅の代わる信号冬紅葉★★★★
とんからり二段の音や木の実落つ★★★
綿虫や去年(こぞ)の記憶の戻りしか★★★
11月17日(4名)
小口泰與
山裾の蒼茫とあり冬の草★★★
麦蒔や長きすそ野に安らぎぬ★★★
冬立や神樹の影を砂利に踏む★★★
多田有花
どの家の南天の実も色づいて★★★
からすうり木守のごとく枝にあり★★★
裸木となりて古巣のあきらかに★★★★
桑本栄太郎
吹きさらす風に赤きや真弓の実★★★
誰も居ぬ池を巡るや蘆枯るる★★★
吹き溜まる木の実踏みつつ散歩かな(原句)
「散歩」に工夫がいります。
吹き溜まる木の実踏むなり歩く音★★★★(正子添削)
この季節、木の実がたくさん降っているのを私も目の当たりにしている。踏むと木の実が乾いているのか、歩くたび、踏むたびにパリッと音を立てる。それが、自分が歩くという行為の音。(髙橋正子)
11月16日(4名)
小口泰與
印伝の鼻緒の草履今日小春 ★★★
里住みの風の上州神無月★★★
おやみなき風や上州冬の山★★★
 廣田洋一
老いてなほ高みを目指す帰り花★★★
咲くほどにはかなげな色返り花★★★
小春日にもつれ合ひたる蝶二頭 ★★★
多田有花
初冬の山は日毎に色を変え ★★★
紅の山茶花一輪角曲がる ★★★
売物件の幟ありけり実南天 ★★★
桑本栄太郎
綿虫の今年も想い出持ちしかな ★★★
冬蜂のよるべ無き身を歩みけり (原句)
「身を歩み」の「を」が文法的に不自然です。
冬蜂のよるべ無き身の歩みけり★★★(正子添削)
村上鬼城の「冬蜂の死にどろこなく歩きけり」の句が先行してしまいますね。
山茶花の高き垣根や山の里★★★
11月15日(4名)
小口泰與
沼の上深き蒼空番鴛鴦★★★
山風によたよた舞うや冬の蝶★★★
枯菊や山風私語を奪ひける★★★
廣田洋一
小春日や土手に座りて暇つぶし(原句)
「暇つぶし」が、常套的な言葉なので、俳句の言葉としては、やや問題があります。
小春日や土手に座りて暇ありぬ★★★★(正子添削)
小春日に土手に座ってみる。普段忙しくしている身だからこそ、小春日の温かい日差しに「暇」を感じる。「暇」という表しにくいことをよく詠んでいる。(髙橋正子)
小春日や二人は無事に旅立ちぬ★★★
空き家にも返り咲きたるつつじかな★★★
多田有花
枯すすき後ろは遠き淡路島★★★
冬紅葉やさしき色もありにけり★★★
続々と開くよここの山茶花は★★★
桑本栄太郎
ベランダに紅の溢れや冬の薔薇(原句)
ベランダに紅の溢るや冬の薔薇★★★★(正子添削)
山茶花の白にうす紅混じりけり★★★
双葉菜の畝の筋目やどこまでも★★★
11月14日(4名)
廣田洋一
小春日和鉢から鉢へ蜆蝶★★★
風に乗り吾が庭染める落葉かな★★★
銀杏落葉キャンパスの道埋め尽くし★★★★
小口泰與
火の匂う焼芋割るや屏風岩★★★★
屏風岩は切り立った岩で、風よけにもなるような場所であろうか。「火の匂う」焼き芋があつあつで美味しそう。「火の匂う」が何よりもリアルなのがいい。(高橋正子)
滔滔の利根の川原や三十三才★★★
寒月と一番星と見合いせり★★★
多田有花
午後の陽が海はや光らせ日短か★★★★
小春空横切っていくヘリコプター★★★
青空になお赤々と冬紅葉★★★
桑本栄太郎
生垣の香りつづくや金木犀★★★
落葉松の大木凛と黄葉せる★★★★
あおぞらを見上げ銀杏の黄葉かな★★★
11月13日(4名)
小口泰與
おやみなき枯葉の音や夕明かり★★★★
遥かなる歳月過ぎし石蕗の花★★★
とも綱へとまりし鳥や散黄葉★★★
廣田洋一
冬構へ終えたる庭に客招く★★★
藁筵日に乾かして冬囲い★★★
薪積みて消火器備へ冬構★★★★
薪を積むだけでなく、消化器を備えて冬への準備が整った。用意周到の冬構えに、災害と隣り合わせの現代の生活の有り様を考えさせられる。(髙橋正子)
桑本栄太郎
小春日や土塀崩るる山の里★★★
嶺上の雲の茜や冬の宵★★★
山里の早も灯点り冬めける★★★★
多田有花
冬の蝶日差しに翅を広げおり★★★
庭石の出自はいずこ石蕗の花★★★
石蕗咲いて日向へ差し出す黄色かな★★★★
11月12日(4名)
小口泰與
炉明りに眉雪集いし大広間★★★
山風に鳶の輪二つ花八手★★★
白鳥を待つ大沼の静けさよ★★★★
多田有花
遠く見ゆ嘴広鴨と思いけり★★★
白壁が囲みし庭や石蕗の花★★★★
大鷺の群れて立つなり冬の川★★★
桑本栄太郎
冬ざれや赤き実集うピラカンサ★★★
穭穂の刈り取る頃となりぬべし★★★
水禽の水脈きらめくや今着水★★★★
廣田洋一
並木道見通し良きや冬構★★★★
並木道がまっすぐ通っている。見通しのよさに、さっぱりとした冬構の様子が知れる。気持ちの良い句だ。(髙橋正子)
破れたる障子直せし風の夜★★★
幸運を掻き寄せたきや酉の市★★★
11月11日(4名)
廣田洋一
冬構へ縄を垂らして寺の庭★★★
町中を電飾照らし冬構★★★
納屋の前薪積み上げて冬構★★★
多田有花
木枯しや沖の島まで吹いてゆく★★★
夕陽鮮やか木枯しの去りし後(原句)
句の趣向はいいです。5-7-5にまとめると、下のようになります。これをもとに、力強さやリズム感を工夫なさってください。
木枯らしの去りて夕陽の鮮やかに★★★★(正子添削)
(髙橋正子)
冬の菊群れ咲くところ日差しあり★★★
小口泰與
山巓の冬綺羅星や文机(原句)
句の趣向は★4つですが、文机が取って付けたことなって、句意が通らないのが残念です。(髙橋正子)
山巓の冬綺羅星を文机(ふづくえ)に★★★★(正子添削)
「山巓の冬綺羅星を文机にひき寄せて見る。」の句意にしました。
夕暮の眉雪集まる囲炉裏かな★★★
天窓へ朝日集めし冬の梅★★★
桑本栄太郎
二連とてベランダ明りや柿すだれ(原句)
「とて」が理屈です。ズバリ言うのがいいので、無い方が良いと思います。(髙橋正子)
ベランダの明かりや二連の柿すだれ★★★★(正子添削)
ベランダに干柿が二連吊るしてある。二連だけれど、たくさんの柿すだれ同様、ベランダが明るくなった。市民の簡素な生活が明るく詠まれている。(髙橋正子)
吹きさらす天の息吹や木の葉舞う★★★
木々の枝の色濃くなりぬ冬もみじ★★★

自由な投句箱/11月1日~10日

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今日の秀句/11月1日~10日

11月10日(2句)
★茶の花を大きく見せて蕊の金/廣田洋一
茶の花はその金の蕊が花の半分以上を占めて、白い茶の花をふっくらと大きく見せている。そう言われて知る茶の花のこと。(髙橋正子)
★秋雲の掃かれし先の青ばかり/川名ますみ
「秋雲」は「シュウウン」と読むのがいいと思う。「シュウ」の秋雲の雰囲気を表している。秋雲の刷かれた先は余計なもののない青空の青ばかり。(髙橋正子)
11月9日(1句)
★空深く秋の終わりや利根の水/小口泰與
利根川の水は、流れすぎる所々で、それぞれ違った表情を見せる。利根の中流か、やや上流であろうと思われる「秋の終わりの空の深さ」。感銘を覚える秋空の深さに利根の水が呼応している。(髙橋正子)
11月8日(1句)
★神在りの月の稲佐や海荒るる/桑本栄太郎
出雲は、神々を迎えて神在月となっている。稲佐海岸は、神がましますも、「海荒るる」季節なのだ。地元を知るものの実感の句と思える。(髙橋正子)
11月7日(1句)
★快晴の心地よき日や冬きたる/多田有花
冬はおおかた、その寒さのなかに「きっぱり」と来る感覚だが、穏やかな瀬戸内に住む作者には、冬が上々に晴れた心地よい日にやってきた。こんな冬の来方もある。(髙橋正子)
11月6日(1句)
★もみじ葉の緋色まつたき桜の葉/桑本栄太郎
桜紅葉のあでやかさは見事というほかない。散り落ちる桜紅葉のなかに、全体緋色で疵のないのが見つかる。自然の造化の妙がここにも。(髙橋正子)
11月5日(1句)
★山やまの間近に迫り水澄めり/小口泰與
山やまが間近に。そこを川が流れるのか、湖なのかは想像するしかないが、山と水が出会い、澄んだ水があること。「山紫水明」の言葉もあるが、それよりももっと身近に、自然に山と水が現実として受け止められる。(髙橋正子)
11月4日(1句)
★赤き実の目立ち初めにし末の秋/多田有花
木々が葉を落としてしまう秋の末。陽の光を受けて輝く赤い実は存在感を増す。枯れがすすむ中でひときわ明るい姿。(髙橋正子)
11月3日(1句)
★草の実や滅多矢鱈の雀達/小口泰與
空き地なのか、草の実がたくさんついている。それを啄みに雀が降りて来るのだが、数羽というのではなく、「滅多矢鱈」の数で、降りて来るもの、飛び立つもの、あちこち移動するもので、にぎやかだ。たのしい光景。(髙橋正子)
11月2日(1句)
★新海苔やすぐ取り掛かる握飯/廣田洋一
早くも新海苔が出来上がった。早速求めて、握り飯に巻いて食べようという算段。米は新米の握り飯。海苔は新海苔。季節の恵みのありがたさを思いつつ日本食の原点の美味しさを味わう。(髙橋正子)
11月1日(2句)
★つづれさせ奥利根の星響きあう/小口泰與
奥利根の星空の深さ。星々に響くように空へと虫の音。星が響き、虫の音が響く夜を呼んでロマンティックな句だ。(髙橋正子)
★降り来たる雨に艶めく新松子/廣田洋一
降り来る雨も新しい。新松子の緑が雨に濡れてつややかで、新鮮な心持になる。(髙橋正子)

11月1日~10日

11月10日(4名)
廣田洋一
茶の花を大きく見せる蕊の金(原句)
茶の花を大きく見せて蕊の金★★★★(正子添削)
茶の花はその金の蕊が花の半分以上を占めて、白い茶の花をふっくらと大きく見せている。そう言われて知る茶の花のこと。(髙橋正子)
茶の花の水面に映える白さかな★★★★
茶の花の生垣低し池の端★★★
多田有花
十一月鷺の白さを映す川★★★
短日をさらに短くして雨よ★★★★
湯たんぽを仙骨にあて机に向かう★★★
桑本栄太郎
残菊の小菊括られ畑の隅★★★
しぶ柿の潰ゆりて甘き熟柿かな★★★
山里の巡り歩きや石蕗の花★★★
川名ますみ
秋雲の掃かれし先の青ばかり★★★★
「秋雲」は「シュウウン」と読むのがいいと思う。「シュウ」の秋雲の雰囲気を表している。秋雲の刷かれた先は余計なもののない青空の青ばかり。(髙橋正子)
水遣れば土の吸う音秋の風★★★
秋の日に尾を燦めかせ猫過ぎる★★★
11月9日(4名)
小口泰與
空深く秋の終わりや利根の水★★★★
利根川の水は、流れすぎる所々で、それぞれ違った表情を見せる。利根の中流か、やや上流であろうと思われる「秋の終わりの空の深さ」。感銘を覚える秋空の深さに利根の水が呼応している。(髙橋正子)
初冬や風の重さを賜りし★★★
蟷螂の今だ目の色変らずや★★★
廣田洋一
花弁の反るほど開き石蕗の花★★★
新海苔の香り味はふ朝餉かな★★★★
冬の川木の葉一枚浮かべをり★★★
多田有花
昼下がり陽はさんさんと葱畑★★★
山茶花の淡き紅色まず一輪★★★★
桜枯れ枝の先まで日差し浴ぶ★★★
桑本栄太郎
時雨るるや更に色濃きプラタナス★★★
ひと雨に色濃くなりぬ庭紅葉★★★
一夜明け今日より冬の庭もみじ★★★★
11月8日(4名)
小口泰與
秋の雲奇岩の山を離れけり★★★
神棚へ背伸びの老や神の留守★★★
夕日にて水面耀う尾花かな★★★
廣田洋一
青首の真直ぐ伸びる大根畑★★★
立冬や星きらきらと夜明け前★★★★
虚子の句を一日一句芭蕉の忌★★★
多田有花
十一月明るき快晴が続く★★★
初冬の鶺鴒止まる反射板★★★
畑すべて冬の菊持ち輝きぬ★★★★
桑本栄太郎
仰ぎ見る天の蒼さや銀杏黄葉★★★
雲間より天使のはしご山粧ふ★★★
神在りの月の稲佐や海荒るる★★★★
出雲は、神々を迎えて神在月となっている。稲佐海岸は、神がましますも、「海荒るる」季節なのだ。地元を知るものの実感の句と思える。(髙橋正子)
 
11月7日(4名)
小口泰與
男盛りを過ぎし髪膚や秋の雷★★★
吾の影の田に収まりし秋の夕★★★
遠の山日影日向や鳥兜★★★
廣田洋一
立冬や我関せずと川の鯉★★★
庭の隅明るく揺れる石蕗の花★★★
大根の青首光る畑かな★★★
多田有花
立冬の朝日ほどなく昇りくる★★★
快晴の心地よき日や冬きたる★★★★
冬はおおかた、その寒さのなかに「きっぱり」と来る感覚だが、穏やかな瀬戸内に住む作者には、冬が上々に晴れた心地よい日にやってきた。こんな冬の来方もある。(髙橋正子)
裏庭に間もなく開く枇杷の花★★★
裏庭に間もなく開く枇杷の花★★★
桑本栄太郎
石蕗咲くや何処を抜けても村の辻★★★
山里の小流れ速し芋水車★★★
橡の葉のからんと落つや冬に入る★★★
11月6日(4名)
廣田洋一
ラジオ体操桜紅葉の散るを浴び★★★★
桜紅葉日毎艶やか町の角★★★
桜紅葉散り敷くままの並木道★★★
小口泰與
渓流の影の冥きや石叩き★★★
一掬の水や鶺鴒黄を点ず★★★★
色鳥や朝日入りくる文机へ★★★
多田有花
描かれゆく飛行機雲や秋惜しむ★★★
冬隣るなかへ真紅の薔薇が咲く★★★
ガレージの一画に柿吊しおり★★★
桑本栄太郎
一条の稲滓火立つや山の田に★★★
山里の辻を曲がれば石蕗の花★★★
もみじ葉の緋色まつたき桜の葉★★★★
桜紅葉のあでやかさは見事というほかない。散り落ちる桜紅葉のなかに、全体緋色で疵のないのが見つかる。自然の造化の妙がここにも。(髙橋正子)
11月5日(4名)
小口泰與
山やまの間近に迫り水澄めり★★★★
山やまが間近に。そこを川が流れるのか、湖なのかは想像するしかないが、山と水が出会い、澄んだ水があること。「山紫水明」の言葉もあるが、それよりももっと身近に、自然に山と水が現実として受け止められる。(髙橋正子)
眼裏に遠き日の人渡り鳥★★★
刈稲を索道に乗せ休み無き★★★
廣田洋一
柚子の実や垣根越しに香放ちをり★★★
柚子の実の日毎濃くなる黄色かな★★★
柚子の実や主が捥ぎたる二つ三つ★★★
桑本栄太郎
<乙訓名産大枝(おおえ)の柿>
籠盛りの店の数多や柿街道★★★
つややかにえら張り居りぬ富有柿★★★
しぶ柿の熟柿となりて売られけり★★★
多田有花
寄り添いて銀杏黄葉を見る背中★★★★
鮮やかに朝日へ開く赤き菊★★★
路地裏をそぞろ歩けば金木犀★★★
11月4日(4名)
廣田洋一
秋惜しむ黄蝶一頭舞ひ出でぬ★★★★
柿の実の捥がれぬままに熟しをり★★★
焼酎に酔ひたる柿や渋を抜く★★★
小口泰與
大利根の岸へ稚魚群来石叩き★★★
一叢の名残りの萱や群雀★★★
妙義嶺の奇岩も視野や夕紅葉★★★
多田有花
赤き実の目立ち初めにし末の秋★★★★
木々が葉を落としてしまう秋の末。陽の光を受けて輝く赤い実は存在感を増す。枯れがすすむ中でひときわ明るい姿。(髙橋正子)
キレキレのステップ見せて文化祭★★★
文化祭演者もっとも楽しめり★★★
桑本栄太郎
山里の甍きらめく柿すだれ★★★
何処までも遠出歩きや秋うらら★★★
干乾びし蛙の枝に鵙の贄★★★
11月3日(4名)
小口泰與
百本のばらに礼肥や秋うらら★★★
背戸の木に鵙の贄かや蒼き空★★★
草の実や滅多矢鱈の雀達★★★★
空き地なのか、草の実がたくさんついている。それを啄みに雀が降りて来るのだが、数羽というのではなく、「滅多矢鱈」の数で、降りて来るもの、飛び立つもの、あちこち移動するもので、にぎやかだ。たのしい光景。(髙橋正子)
廣田洋一
新海苔をさつと乗せたる朝餉かな★★★
積み置きし本の整理や文化の日★★★
新しきアプリを入れる文化の日★★★
多田有花
秋澄むや藪らんの実の輝きに★★★
えのころのほどよく乾き輝きぬ(原句)
えのころのほどよく乾き輝けり★★★★(正子添削)
一本の雲がつなぎし初紅葉★★★
桑本栄太郎
生垣の香りつづくや金木犀★★★
葉はすでに散りて明るく柿灯る★★★★
菜園のけぶり立ち居り蔓たぐり★★★
11月2日(4名)
小口泰與
雄心の少しは有るや秋の蛇★★★
豆柿や絵画遺せし無言館★★★
湖の風おさまり木木の小鳥飛ぶ★★★
廣田洋一
秋耕の土の匂ひや散歩道★★★★
新海苔の艶につられて買ひにけり★★★
新海苔やすぐ取り掛かる握飯★★★★
早くも新海苔が出来上がった。早速求めて、握り飯に巻いて食べようという算段。米は新米の握り飯。海苔は新海苔。季節の恵みのありがたさを思いつつ日本食の原点の美味しさを味わう。(髙橋正子)
多田有花
頭上から金木犀の香の降りぬ★★★
マリア像コキア紅葉が足元に★★★
来る人を迎える門の櫨紅葉★★★
桑本栄太郎
秋蝶の黄なるが一頭かぜのまま★★★
葛の葉の一木被う実莢かな★★★
秋うらら歩き終わりにお菓子買う★★★
11月1日(4名)
小口泰與
落人の里に吊るさる烏瓜★★★
奥利根の星響きあうつづれさせ(原句)
つづれさせ奥利根の星響きあう★★★★(正子添削)
奥利根の星空の深さ。星々に響くように空へと虫の音。星が響き、虫の音が響く夜を呼んでロマンティックな句だ。(髙橋正子)
草の実や羽音響かせ群雀★★★
廣田洋一
太鼓役子らに任せて村祭★★★★
蜂の巣の見つかりし木や新松子★★★
降り来たる雨に艶めく新松子★★★★
降り来る雨も新しい。新松子の緑が雨に濡れてつややかで、新鮮な心持になる。(髙橋正子)
多田有花
黄葉を眺めておりぬ車椅子★★★
合掌のマリアの像に秋の花★★★★
快晴の熟柿に蝶の来たりけり★★★
桑本栄太郎
暮れ来たる桂黄葉の明かりかな★★★★
たそがれの人影過ぎる秋の暮★★★
嶺の端の黒きうねりや秋の宵★★★

自由な投句箱/10月21日~31日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
代表:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/10月21日~31日

10月31日(1句)
★野鶏頭いよいよ赤く燃えにけり/多田有花
「野鶏頭」は、野良ばえの鶏頭ではなく、蝋燭のような花穂の鶏頭のこと。花の色は薄いピンクから濃い赤紫まである。この句は、濃い色の野鶏頭。秋も終わりになり、朝夕の寒暖差に色も鮮やかになった花。「いよいよ赤く燃え」に秋の深さを思う。(髙橋正子)
10月30日(1句)
★北窓も南の窓もうろこ雲/多田有花
「北窓も」「南の窓も」と鱗雲の広がりを暮らしの起居の中で詠んでいるのが珍しい。なにかのおり北窓から空を見た、またのおり南の窓を開け空を見た。北窓も南の窓も鱗雲。晴れ晴れとしてたのしい。(髙橋正子)
10月29日(1句)
★花芒背丈揃えて光りをり/廣田洋一
花芒をあえて「背丈揃えて」と捉えたことにより芒の穂が印象付けられた。光を含んだ芒の穂が優しい光となっている。(髙橋正子)
10月28日(1句)
★秋薔薇のなかへ小さき蝶の来て/多田有花
秋の薔薇は光のせいか、華やかな中にも陰影が深い。咲きゆれる薔薇に小さい蝶が来て、薔薇と戯れているように飛ぶ。童話のような世界が見える。(髙橋正子)
10月27日(1句)
★冷まじやビルの足場の青空に/桑本栄太郎
ビルの足場から見える青空に「冷まじ」と感性は新しい。身近な生活圏内に新しさを見つけた句と言える。(髙橋正子)
10月26日(1句)
★野辺行けばメールのありぬ刈田晴/桑本栄太郎
晴れた日、気持ちよく刈田の野辺を行くと、携帯にメールがある知らせ。野の心地よさに浸る時に届くメールは違和感があるようで、意外にもすんなり受け取れる。この不思議さ。「刈田晴」が明るくていい。(髙橋正子)
10月25日(1句)
★見下ろせば雨に色づく窓の秋/桑本栄太郎
窓から雨の降る下界を見下ろすと、木々や花やアスファルトなど、目に映る物が、なるほど秋の景色となって、窓に収まっている。窓にある秋の世界は暮らしを彩る画となっている。(髙橋正子)
10月24日(2句)
★唐突に寒さ押し寄せ残る菊/多田有花
暑さが長く続いたあと、秋になったかと思うと、唐突に寒さが押し寄せる今年の気候。残菊も急な寒さに縮こまり、色を変えてゆく。(髙橋正子)
★宝石のひかりの葡萄をジューサーへ/川名ますみ
宝石のような葡萄とは、一粒一粒に光が透けているような緑の葡萄だろう。そんなきれいな葡萄の粒をジューサーに入れて、ジュースに。美味しさもさることながら、美しいのがいい。(髙橋正子)
10月23日(1句)
★雲影の走り去り行く秋の嶺/桑本栄太郎
秋の嶺に雲影が走って行く。それだけのことながら、秋の嶺は雲影を映し、さびさびとしてくる。じみじみと行く秋が思われる。(髙橋正子)
10月22日(1句)
★蜻蛉の同じ草へとまた止まり/小口泰與
すいすいと元気に飛んでいた蜻蛉も、遠くへ飛ばずに、もどって同じ草へ止まる。そんな姿に秋の静かさと深まりと感じる。(髙橋正子)
10月21日(1句)
★蜂の子を当てに今宵のひとり酒/小口泰與
蜂の子は山間部で食されて、昔は蛋白源となっていたようだ。蜂の子飯や甘辛く煮たものなどがあるようで、蜂の子と聞けば、山国の暮らしが思い浮かぶ。蜂の子を当てにひとりで酌む静かな時間は本人だけが知る時間であろう。(髙橋正子)

10月21日~31日

10月31日(4名)
廣田洋一
松茸の一本ずつに荒目籠★★★
松茸を四本に分けて焼きにけり★★★
ハロウィンや窓一面に魔女が行く★★★★
小口泰與
落人の里に吊るさる烏瓜★★★
残照の山見ゆるとこ熟柿かな★★★
奥利根の山懐の刈田かな★★★★
多田有花
野鶏頭いよいよ赤く燃えにけり★★★★
「野鶏頭」は、野良ばえの鶏頭ではなく、蝋燭のような花穂の鶏頭のこと。花の色は薄いピンクから濃い赤紫まである。この句は、濃い色の野鶏頭。秋も終わりになり、朝夕の寒暖差に色も鮮やかになった花。「いよいよ赤く燃え」に秋の深さを思う。(髙橋正子)
つなぎ着て幼き兄弟秋の畑★★★
ハロウィンの夜明けの雨を聞いている★★★
桑本栄太郎
稲滓火のけぶり棚引く在所かな★★★
穭田のひつじ穂傾ぎ来たりけり★★★
人型(ひとがた)の田面に立つや今年藁★★★
10月30日(3名)
秋薔薇を咲かせし人と立ち話★★★
北窓も南の窓もうろこ雲★★★★
「北窓も」「南の窓も」と鱗雲の広がりを暮らしの起居の中で詠んでいるのが珍しい。なにかのおり北窓から空を見た、またのおり南の窓を開け空を見た。北窓も南の窓も鱗雲。晴れ晴れとしてたのしい。(髙橋正子)
夢うつつ妻恋う鹿の声を聞く★★★
廣田洋一
朝寒に残れる月の白きかな★★★★
ラジオ体操めげずに集ふ朝寒み★★★
朝寒に姿勢正して散歩道★★★
桑本栄太郎
山里の甍きらめく秋日かな★★★
うす青き煙のぼりぬ峡の秋★★★
柿灯る軒端なりしや山の里★★★
10月29日(4名)
小口泰與
牛膝犬の尾に付き吾につき★★★
沼風と共に来るや荻の声★★★
露草や色なき空の佐久平(原句)
「色なき空」を雲がいっぱい広がる空と解釈するには無理があります。
露草や雲の広がる佐久平★★★★(正子添削)
廣田洋一
去りし人助っ人に呼ぶ村祭★★★
行く秋や色付き初めし銀杏の葉★★★
花芒背丈揃えて光りをり★★★★
花芒をあえて「背丈揃えて」と捉えたことにより芒の穂が印象付けられた。光を含んだ芒の穂が優しい光となっている。(髙橋正子)
多田有花
爽やかに千日紅を咲かす家★★★★
秋の陽が稜線の木々光らせる★★★
秋うららベランダに出て昼食を★★★
桑本栄太郎
ベランダのコキア色づく秋高し★★★
野菊咲く丘の田道や山の里★★★
帽子脱ぎ日向にありぬ櫟の実★★★
10月23日分
廣田洋一さんの10月23日の投句を見逃しておりました。お詫びいたします。星印を付けましたので、参考になさってください。

廣田洋一
中天に残れる月の柔きかな★★★
道端の木の実浚ひて暮の秋★★★

久闊を叙したる友と温み酒★★★
10月28日(4名)
廣田洋一
秋惜しむ橋の下なる鯉の群★★★
秋惜しむ吹奏楽のマーチかな★★★
行く秋の道辺に咲きし白き花★★★
小口泰與
夕映えの秋ばら早も風に乗る★★★
逆光の芒や沼の鳥の声★★★
釣糸の荻へ絡むや魚の影★★★
多田有花
秋薔薇のなかへ小さき蝶の来て★★★★
秋の薔薇は光のせいか、華やかな中にも陰影が深い。咲きゆれる薔薇に小さい蝶が来て、薔薇と戯れているように飛ぶ。童話のような世界が見える。(髙橋正子)
蕾には蕾の美あり秋の薔薇★★★
秋深しそれでも薔薇は咲き始め★★★
桑本栄太郎
竹垣の灯りとなりぬ烏瓜★★★
土壁の塀の崩るる里の秋★★★
末枯の来たる在所や乙訓郷★★★
10月27日(4名)
小口泰與
渡り鳥彼方に忘ず人数多★★★
蒟蒻を煮返す夕餉温め酒★★★
禁漁の渓や川沿い蔦紅葉★★★
廣田洋一
秋時雨ビニールハウスの白く濡れ★★★
屋根瓦色濃くしたり秋時雨★★★
秋時雨遠くの空は晴れてをり★★★★
多田有花
やや寒に齧りしダークチョコレート★★★
秋の鶺鴒日向へと走り出る(原句)
「鶺鴒」は秋の季語です。
鶺鴒の日向へつつと走り出る★★★★(正子添削)
カラフルに傘干すベランダ秋うらら★★★
桑本栄太郎
黄落と云えど紅の葉交りけり★★★
梢より散り初めいたる銀杏黄葉★★★
冷まじやビルの足場の青空に★★★★
ビルの足場から見える青空に「冷まじ」と感性は新しい。身近な生活圏内に新しさを見つけた句と言える。(髙橋正子)
10月26日(4名)
小口泰與
落鮎や利根を離れて忘じける★★★
山風に秀つ枝の通草破顔せり★★★
秋雨や女工哀史の峠道★★★
廣田洋一
行く先は謎のままなる秋の旅★★★
小雨決行バスで快適秋の旅★★★
秋時雨鷹は小屋にて眠りをり★★★★
多田有花
炒めおり茸いくつもとり混ぜて★★★
ショパン弾く電子ピアノの夜長かな★★★
爽やかに三日月ポーズ雲仰ぐ★★★
桑本栄太郎
見上げれば梢散り初む銀杏黄葉★★★
野辺行けばメールのありぬ刈田晴★★★★
晴れた日、気持ちよく刈田の野辺を行くと、携帯にメールがある知らせ。野の心地よさに浸る時に届くメールは違和感があるようで、意外にもすんなり受け取れる。この不思議さ。「刈田晴」が明るくていい。(髙橋正子)
しなだれて茎に縋りぬ秋の茄子★★★
10月25日(4名)
小口泰與
杣宿の蜂の子飯や漆椀★★★
雨来るらし懸崖菊の在り所★★★
大岩をわきまえ流る秋灯かな★★★
多田有花
秋寒や毛布一枚起きて出す★★★
明け遅く暮れ早くなる夜長かな★★★
薔薇いろいろ咲かせ秋の陽だまりに★★★
廣田洋一
秋澄めり句誌45年祝ひかな★★★
遊覧船客を待ちたる秋の海★★★★
受賞者の襟元飾る秋の薔薇★★★
桑本栄太郎
見下ろせば雨に色づく窓の秋★★★★
窓から雨の降る下界を見下ろすと、木々や花やアスファルトなど、目に映る物が、なるほど秋の景色となって、窓に収まっている。窓にある秋の世界は暮らしを彩る画となっている。(髙橋正子)
秋冷や殊更寒き今朝の雨★★★
辻に出で行方ためらう秋寒し★★★
10月24日(5名)
廣田洋一
夜明け前仰ぎ見たるや寝待月★★★
晴れ渡る空に上れり後の月★★★★
頃合をはかる女将や温め酒★★★
小口泰與
秋の暮街騒近し選挙カー★★★
夕映えの浮子の当たりや鰯雲★★★
山径に冥利たまわる木通かな★★★
多田有花
秋桜すっかりひかれてしまいけり★★★
唐突に寒さ押し寄せ残る菊★★★★
暑さが長く続いたあと、秋になったかと思うと、唐突に寒さが押し寄せる今年の気候。残菊も急な寒さに縮こまり、色を変えてゆく。(髙橋正子)
秋の蝶風の強さに負けずあり★★★★
桑本栄太郎
仁和寺の竜王戦とや秋日さす★★★★
秋日さす中洲白きや桂川★★★
穂芒の風の行方を示しけり★★★
川名ますみ
一音に秋声集む協奏曲(コンチェルト)★★★
ひと粒ずつ葡萄をハンドジューサーに★★★
ジューサーへ葡萄を宝石掬うごと(原句)
宝石のひかりの葡萄をジューサーへ★★★★(正子添削)
宝石のひかりの葡萄とは、一粒一粒に光が透けているような緑の葡萄だろう。そんなきれいな葡萄の粒をジューサーに入れて、ジュースに。美味しさもさることながら、美しいのがいい。(髙橋正子)
 
10月23日(3名)
廣田洋一
中天に残れる月の柔きかな★★★
道端の木の実浚ひて暮の秋★★★
久闊を叙したる友と温み酒★★★
小口泰與
汀まで続く尾花へ夕日かな★★★
湧き出づる羽音の綾や秋の蝶★★★★
紅葉の山湖や水漬く捨小舟★★★
多田有花
秋寒が鶴瓶落としの如く来る★★★
風強き霜降の町を歩きけり★★★
うす紅の薔薇ひらき初め霜降に★★★
桑本栄太郎
雲影の走り去り行く秋の嶺★★★★
秋の嶺に雲影が走って行く。それだけのことながら、秋の嶺は雲影を映し、さびさびとしてくる。じみじみと行く秋が思われる。(髙橋正子)
穂芒の川に沿い行く地道かな★★★
さざ波の底の煌めく秋の川★★★
10月22日(4名)
廣田洋一
そこだけは雲払われし十三夜★★★
草々の雨に濡れたる暮の秋★★★★
小雨降る街ひえびえと暮の秋★★★
小口泰與
秋うらら赤城しぐれの口に溶け★★★
蜻蛉の同じ草へとまた止まり★★★★
すいすいと元気に飛んでいた蜻蛉も、遠くへ飛ばずに、もどって同じ草へ止まる。そんな姿に秋の静かさと深まりと感じる。(髙橋正子)
赤信号秋の蜂入る車かな★★★
多田有花
夜も更けて鹿の声また響きおり★★★
敗荷や古本の小口やや黄ばみ★★★★
日の出待つ刈田の湿りを見て立ちぬ★★★
桑本栄太郎
鵙晴や更に伸びゆく万歩計★★★★
石垣に石蕗の花咲く村の辻★★★
目の前を番い過ぎ行く赤とんぼ★★★
10月21日(4名)
廣田洋一
辺りの星みな狩られしや後の月★★★
再会の挨拶続く暮の秋★★★
多摩川の波の鎮まり暮の秋★★★
小口泰與
ひょこひょこと風に尾を振る犬子草★★★
無為と言う日や秋の赤城山★★★
蜂の子を当てに今宵はひとり酒(原句)
蜂の子を当てに今宵のひとり酒★★★★(正子添削)
蜂の子は山間部で食されて、昔は蛋白源となっていたようだ。蜂の子飯や甘辛く煮たものなどがあるようで、蜂の子と聞けば、山国の暮らしが思い浮かぶ。蜂の子を当てにひとりで酌む静かな時間は本人だけが知る時間であろう。(髙橋正子)
多田有花
秋惜しむ住み慣れし街を歩きつつ★★★
晩秋の満月山の端にかかり★★★
いま見えし月にたちまち叢雲★★★
桑本栄太郎
鼻をつく野辺のけぶりや秋の暮れ★★★
穭田のひつじ穂傾ぎ来たりけり★★★
休耕の畑の明かりや泡立草(原句)
休耕の畑の明るし泡立草★★★★(正子添削)