今日の秀句/5月1日~5月10日

5月10日(1句)

★青空へ楓若葉の瑞々し/多田有花

青空と楓若葉の色の対比の美しさもさることながら、楓の若葉はやららかく、水際を思わせるようで「瑞々し」が生きている。

5月9日(1句)

★咲き初めし清々しさよ朝の薔薇/多田有花

咲きはじめの薔薇の清々しさは5月季節に於いてこそだが、それも朝は特に清々しさが極まる。(髙橋正子)

5月8日(1句)

★風音に混じる声あり蛙かな/小口泰與

風の音が運んでくる蛙の声がのどかに響き、聞く人の心を楽しませてくれる。鳴いている蛙の姿が思い浮かぶのも楽しい。(髙橋正子)

5月7日(1句)

★眠り猫素足に添いて日の終わり/上島祥子
素足の足元に猫が寄り添って眠っている。そろそろ夕方なのだが、素足の足元がクローズアップされて、猫と作者のまったりした関係が面白いユニークな句。(髙橋正子)

5月6日(1句)

★標識をのみ込む勢い柿若葉/上島祥子

柿若葉の勢いが力強く詠まれている。人工物の標識をのみ込むほどの柿若葉の生命力には、自然の力がいよいよ盛んになっ様子がうかがえる。(髙橋正子)

5月5日(4句)

★一筋の夕日に染まる牡丹かな/小口泰與
まっすぐに夕日が牡丹を染める様子が風格をもって詠まれている。(髙橋正子)
★富士山に雲のかかりて立夏かな/廣田洋一
富士山に雲がかかっている景色は、立夏でなくても見られるが、立夏であれば、それは間違いなく「夏富士」の姿となっている。(髙橋正子)
★揚羽蝶一直線に柚子の木へ/土橋みよ
揚羽蝶は柚子の木など柑橘類の木を好む傾向がある。幼虫が葉を食草としているためであろう。「一直線に」が揚羽蝶の懸命さをあらわしていて、見ていて驚く行為に、揚羽を観察する楽しさがある。(髙橋正子)
★水切りの菖蒲葉青く薫るかな/上島祥子
水切りをされた菖蒲の葉が生き生きと、「青く薫る」のがすがすがしい。(髙橋正子)

5月4日(2句)

★どの家も躑躅赤々咲かせおり/多田有花

「どの家も・・赤々」が強く印象に残る句。一見平凡に思えるが、印象がしっかり伝わるのがいい。(髙橋正子)

★傷重ね箱に収めるスケート靴/上島祥子

自分のスケート靴を持っているのが素敵だ。長年愛用し、いろんな傷ができているが、その傷も思いで深いものであろう。来シーズンまで箱に収めておくのだ。(髙橋正子)

5月3日(1句)

★永日のゴルフスイング音軽く/上島祥子

長い一日を象徴する「永日」と、ゴルフスイングの音の軽やかさを対比させた句。軽やかなスイングの音が、美しく受け止められ、穏やかな時間の流れと調和している。(髙橋正子)

5月2日(1句)

★野も山も八十八夜の輝きを/多田有花
今年は5月1日が八十八夜になった。八十八夜は季語としては晩春の季語で、春から夏へ移り変わるちょうどそのころである。このころから天気が安定し、気持ちのよい季節を迎える。この句では、「野も山も・・輝きを」と詠って、明るくのびやかな季節を讃えている。(髙橋正子)
5月1日(2句)

★木蔭行く我が頬そよぎ風薫る/桑本栄太郎

木蔭を行くとき、頬を風がそよいで過ぎる。その豊かな風に、「風薫る」心地良さを感じた。(髙橋正子)

★熊蜂の飛行スピード音となる/上島祥子

熊蜂は大きな蜂で、飛ぶスピードは、われわれの耳に「音」を生むほど。まさしく「音となる」のである。また、「熊蜂の飛行」と言われれば、はロシアの作曲家リムスキーコルサコフの技巧的な曲の名前でも知られている。その曲と重ね合わせて、熊蜂の飛ぶ音が聞こえる。(髙橋正子)

5月1日~5月10日

5月10日(4名)

小口泰與
木隠れの雲雀羽ばたく雨の中★★★
翡翠の潜きて魚を捕りにけり★★★
大利根の彼方上流燕かな★★★
廣田洋一
中天に黄色き房や棕櫚の花★★★
待ち合わす駅前広場薄暑かな★★★★
仏壇に一つ供えし柏餅★★★
桑本栄太郎
木々の葉の色濃き卯月曇りかな★★★
生き生きと鉢の花咲く風五月★★★
濡れそぼつ箱根うつぎや雨催い★★★
多田有花
しゃがの花小さきチャペルの庭にあり★★★
青空へ楓若葉の瑞々し★★★★
人招く如くに紫蘭並び咲く★★★

5月9日(3名)

小口泰與
翡翠の水泡踊りて天に舞う★★★
鳴きながら翔ける翡翠沼の朝★★★
翡翠のとまりし沼のかたほとり★★★

 

多田有花
咲き初めし清々しさよ朝の薔薇★★★★
なだれ咲く木香薔薇へ日の光★★★
隣り合う花好きの家クレマチス★★★

 

桑本栄太郎
くもりたる茅花流しの愁いかな★★★
夏めいて望郷つとに募りけり★★★
老鶯となりて威厳の鳴き声に★★★★

 

5月8日(4名)

廣田洋一
畦道に一本高く棕櫚の花★★★
新しき公園開放風薫る★★★
窓越しの小枝の揺れて緑雨かな★★★
小口泰與
鳥声と風かすかなり春の沼★★★
風音に混じる声あり蛙かな★★★★
葉桜や長き堤の片ほとり★★★
桑本栄太郎
おそろしき程の青空夏日さす★★★
薫風の木洩れ日歩く朝かな★★★
戸外より戻れば暗き夏の日よ★★★
多田有花
土塀より顔出すように咲くつつじ★★★
陽を透かし青空透かし柿若葉★★★★
踊子草並び踊るや土手の道★★★

5月7日(5名)

小口泰與
我が庭を春の形につくりける★★★
鳥声や陽のかたぶきて別れ霜★★★
牛蛙鳴きてみなわの賑やかに★★★★
廣田洋一
卯の花や香り漂う垣根道★★★
大銀杏受け流したる初夏の風★★★
自転車の通学生や姫女苑★★★
多田有花
津久見より甘夏たっぷり届きけり★★★
平戸つつじそこだけへ日差しを受けている★★★
眼前で急旋回の夏燕★★★
桑本栄太郎
吹き抜ける風を染め上げ紫蘭咲く★★★
竹の子のもう手に追えぬ薮の丈★★★
ジャスミンの塀を乗り越え香りけり★★★
上島祥子
眠り猫素足に添いて日の終わり★★★★
アイスティーグラスに満ちて香豊か★★★
朝採れの絹さや分け合う休憩所★★★

5月6日(5名)

小口泰與
木木の間を羽音かすかに雀の子★★★
微かなる木木の吐息や春の山★★★
かたわらに居て姦しき猫の恋★★★
廣田洋一
初夏なれどノーネクタイは許されじ★★★
卯の花の雨滴の光る木の葉かな★★★
鯉幟尻尾を揺らす園児たち★★★
多田有花
手洗いの水心地よき立夏かな★★★
雨となる黄金週間最終日★★★
ジャーマンアイリスにカナブンが来ている★★★
桑本栄太郎
朝の窓開けて筍流し止む★★★
プロペラの葉上に赤く若楓★★★
娶らざる吾子の来たりぬ若葉寒む★★★
上島祥子
さくらんぼ赤を極める朝の雨(原句)
さくらんぼの赤を極める朝の雨(正子添削)
夏立つ日母子三代山降る★★★
標識をのみ込む勢い柿若葉★★★★

5月5日(6名)

小口泰與
新社員朝の食堂かしましき★★★
一筋の夕日に染まる牡丹かな★★★★
雨降りて葉桜時の気候かな★★★
廣田洋一
富士山に雲のかかりて立夏かな★★★★
こどもの日朝の公園未だ静か★★★
雛罌粟や道行く人に頭下げ★★★
多田有花
苧環を咲かせて人を待つ家よ★★★
人に犬に花壇の花に夏来る★★★
わが内のこども遊ばせこどもの日★★★
桑本栄太郎
風薫るなんじゃもんじゃの並木かな★★★
何もかも匂い立つかに夏は来ぬ★★★
父母の在りて今日なれ子供の日★★★
土橋みよ
砂利道を孫と歩めるこどもの日★★★
孫に手を引かれて登る春の坂★★★
揚羽蝶一直線に柚子の木へ★★★★
上島祥子
水切りの菖蒲葉青く薫るかな★★★★
菖蒲葉のバケツの中で夜を待つ★★★
夏立つ日山鳩の声渡る朝(原句)
夏立つ「日」と「朝」は一つにまとめるのがいいと思います。(髙橋正子)
山鳩の声の渡るよ立夏の朝(正子添削)

5月4日(5名)

多田有花
伸びたるや春筍と言えぬほど★★★
躑躅咲く郵便バイクの来て停まる
一句が「躑躅咲く」と「郵便バイクの来て停まる」二つに切れてしまうのは、問題です。二句一章(あるは一句一章)と言われるように、一句は基本的には一章になるようにします。(髙橋正子)
どの家も躑躅赤々咲かせおり★★★★
廣田洋一
卯の花のなだれ咲きたり古き家★★★
サーファーの待ちたる浜や卯波来る★★★
変化への対応正す憲法記念日★★★
小口泰與
桜しべ降る婆の箒の唸りたつ★★★
水出でし春翡翠の嘴に枝★★★
柏手の二つ響きて春の朝★★★
桑本栄太郎
<京都四条大橋界隈>
花は葉に清流浅き高瀬川★★★★
北山の遥か遠きや風薫る★★★
大橋を渡り南座風薫る★★★
上島祥子
薄物のストール猫の昼寝跡★★★
傷重ね箱に収めるスケート靴★★★★
柏餅レジの合間に子の話★★★
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廣田洋一さんへ

5月2日の投句3句について。5月2日のブログの原稿(投稿する前)には洋一さんの3句に星印を付けて書いてありますが、ブログの表に洋一さんの句の部分だけ反映されません。いろいろ試しましたが、どうしても反映されません。消えてしまいます。何らかの原因と思いますが、わかりません。大変失礼していますことお詫びいたします。ここに別に取り上げますので、ご覧ください。(髙橋正子)

5月2日

★春の田や水を張りたる二三枚★★★★
★残雪の白く光りて蔵王山★★★
★雨空に華やぎ見せる飛花落花★★★★

5月3日(6名)

多田有花
春惜しみつつバッハのインヴェンション★★★
暮の春瞑想としてバッハ弾く★★★
夏近し学生時代の歌を聴く★★★
廣田洋一
五月来る鎧兜を飾りけり★★★
凧揚がる誰かと見れば老爺なり★★★
洋薔薇の女王の如く咲きにけり★★★
桑本栄太郎
トンネルとなりぬ/舗道や/若楓(原句)
トンネルとなりぬ鋪道の若楓(正子添削)
塀つたい蔓の伸び行く花うばら★★★
風薫る足を投げ出すベビーカー
「ベビーカーが足を投げ出す」という意味になっています。(髙橋正子)
小口泰與
孫娘うかれかざしの桜かな★★★
はくれんをみあげし天に鳥一羽★★★
そこかしこ降り散らばらし桜しべ(原句)
そこかしこ降り散らばし桜しべ
上島祥子
ミニバスの始まる声や春の宵★★★
永日や/ゴルフスイング/音軽く(原句)
永日のゴルフスイング/音軽く(正子添削)
桜若葉オナガ自在に枝揺らし★★★

弓削和人

初夏の陽の出店のひさし親子連れ★★★

5月2日(5名)

土橋みよ
境内のタケノコもらいて土佐煮かな★★★★
とび縄と叢書を孫へ春の便★★★★
春麗らできぬも可笑し脳テスト★★★
桑本栄太郎
吹き上げる風の坂道五月来る★★★
ひるがえる葉裏白きや風薫る★★★
朝の窓開けて色濃く菜種梅雨★★★★
廣田洋一
春の田や水を張りたる二三枚★★★★
残雪の白く光りて蔵王山★★★
雨空に華やぎ見せる飛花落花★★★★
 
小口泰與
山藤に羽根絡まりて揺れており★★★★
剪定の枝飛ぶ先に小犬かな★★★
赤城嶺のすそ野見事や牡丹咲く★★★
多田有花
野も山も八十八夜の輝きを★★★★
陽を受けてさらに眩しきはなみずき★★★
無伴奏チェロ曲を弾く春の昼★★★

5月1日(4名)

廣田洋一
ぽってりと丸まり落ちる八重桜★★★
土手道に点々と敷く雉蓆★★★
こてまりを弾ませ風の吹き抜けて(原句)
こでまりを弾ませ風の吹き抜けり(正子添削)
桑本栄太郎
白きもの一木被う花えんじゅ★★★
五月来る木蔭嬉しき散歩かな(原句)
「五月来る」は口語で、「嬉しき」は文語です。どちらかに揃えるのがよくはないですか。添削は文語にしました。()
五月来(き)ぬ木蔭嬉しき散歩かな(正子添削)
木蔭行く我が頬そよぎ風薫る★★★★
多田有花
繋がれしボートを揺らす春の波★★★★
穴子天丼春たけなわを歩き来て★★★
友の庭に生りし八朔柑を剥く★★★
上島祥子
熊蜂の飛行スピード音となる★★★★
春宵一刻姉から手紙★★★
白藤にゴスロリで挑む少女かな★★★

自由な投句箱/4月21日~4月30日

お願い
①自由な投句箱は花冠会員が自由にいつでも投句出来る場所です。かならずしも、毎日ご投句する必要はありませんので、ご自分のペースでご投句ください。
 
②以前投句した句を再度投句するのは、お止めください。
 
③花冠では、現代仮名遣いで表記していますので、ご留意ください。
 
※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/4月21日~4月30日

4月30日(2句)

★ぼうたんの夕日に沈む庭の隅/小口泰與

「ぼうたん」は夏の季語。庭隅に植えられている牡丹が、夕日になかに暮れて、沈んでいった。豪華さと静かさとがともにあるぼうたんの姿が詠まれている。(髙橋正子)

★白鷺の上昇見送る田の夕べ/上島祥子
「白鷺」は夏の季語。田の夕べの空へ、白鷺が高く昇り飛んでいった。初夏の夕べが古典的な雰囲気を感じさせて、さわやかに詠まれている。(髙橋正子)
4月29日(1句)
★日も鳥も囃し出でたり春の沼/小口泰與
日も囃し出るがユニーク。春の陽がきらめく様子をにぎやかに詠んでいる。鳥たちが生き生きと活動する春の沼の明るさがいい。(髙橋正子)
4月28日(1句)

★ハイキング残る桜を見上げゆく/多田有

ハイキングには、いい季節になった。まだ残っている桜もあって、思いがけず桜が楽しめた。楽しさの中にも、花を惜しみ、春を惜しむ気持ち現れている。(髙橋正子)

4月27日(1句)
★赤白黄色はっきりありぬチューリップ/多田有花
チューリップの特徴はいろいろ挙げられるが、赤、白、黄色のはっきりとした色もその一つ。最近は新感覚の色もあるが、チューリップと言ってすぐ思い浮かぶのはこの三色だろう。それをはっきりと言ったのがいい。(髙橋正子)

 

4月26日(1句)
★春深し朝ごと山のいきいきと/多田有花
春が闌けて、山の樹々の色も次第に濃くなる。朝毎の、その緑の濃さは、すなわち山が生き生きとしていることでもあるのだ。(髙橋正子)

 

4月25日(3句)
★八重桜青空の色深くなる/多田有花
八重桜が咲くころは、初夏を思わせる気温になることもある。空の青さも春の淡い空色から、青の色が深くなってくるのだ。(髙橋正子)

 

★帰る鳥白き浅間を越え行けり/小口泰與
白き浅間はまだ雪の残った浅間山であるが、「白き浅間」が一句全体の風景に清潔感を広げている。その浅間を越えて鳥が帰っていくのだ。(髙橋正子)

★花冷えのやがて暮れゆく湖畔かな/弓削和人

花冷えの湖畔も、やがて暮れてゆく湖畔なのだ。特に具体的な物があるわけではなく、「花冷え」と「暮れゆく湖畔」の空気の冷えや色具合の変化が美しく詠まれている。(髙橋正子)

4月24日(2句)
★春の星灯りに連らなり潤むかな/弓削和人
春の星が人家の灯りが連なって、同じ灯りとして連なり、潤んでいる。潤むは湿りを含んだ春の空気感を言っている。(髙橋正子)

★雨一夜緑膨らむ梅若葉/上島祥子梅の若葉が一晩の雨で、ぐんと生長し、一樹の緑が大きく膨らんだのだ。青青とした梅の若葉には、小さい青い梅が隠れるように生っているだろう。初夏の自然界の勢いがはっきりと詠まれている。(髙橋正子)

4月23日(2句)

★鯉の群みな口開けて夏近し/廣田洋一
鯉が水面に浮上して口を開けるのは、水温が上昇して水中の酸素が不足するなどしたときに見られる景色。口を開ける理由はこれだけではないが、「夏近し」と感じさせるくれる理由としては一番大きいかもしれない。(髙橋正子)
★椿落つ静かなるかな平家谷/森下朋子
この句は、三段切れ(1句が3つに分かれている)に該当するように見えますが、句意が「静かなるかな」に集約されているので、許されるものでしょう。つまり、「静かなるかな」は、「椿落つ」にも「平家谷」にもかかっていて、意味がここに集約されているので、ばらばらにならずに済んでいます。
平家谷の静かさが椿が落ちることによってより深まり、椿の花の赤さが平家を思わせているのも巧みだ。(髙橋正子)

4月22日(3句)

★友来たる笊に溢れる苺手に/土橋みよ

友が、笊にいっぱい、溢れるほどの苺を手に訪ねてくれた、驚きと嬉しさが、生き生きと表現されている。文法的な統一性にやや欠けるが、それを上回った生き生きとしたリズム感がある。(髙橋正子)

★紙風船突きたる音を楽しめり/廣田洋一
紙風船を突くとぽんぽんと紙独特の音がする。その音を楽しむという、この行為がおもしろく、楽しい。(髙橋正子)
★花かりん透かして空の青さ知る/上島祥子
かりんの花は、淡いピンク色でかわいく優しい印象の花である。その花の隙間から空を仰ぐと、空の青さが素敵なのだ。かりんの花によって「空の青」の素晴らしさを知った、と言うのだ。(髙橋正子)

4月21日(1句)

★若葉萌え池の周りは鳥の声/小口泰與

池の周りの若葉が美しくかがやいて、鳥が明るく鳴いている。幸福感に満ちた若葉の季節が詠まれている。(髙橋正子)

4月21日~4月30日

4月30日(5)
 
小口泰與
春蝉や鳥駆け巡る丘の森★★★
鶯の鳴き声嬉し我が庭へ★★★
ぼうたんの夕日に沈む庭の隅★★★★
 
廣田洋一
右左残花愛でつつバスの旅★★★
城壁の白さ際立て枝垂桜★★★
城の濠吹き寄せられし花筏★★★

 

多田有花
送電線並べ小赤壁の春★★★
海山の間に地蔵暖かし★★★
屹立す岩を見上げて春の汗★★★

 

桑本栄太郎
木々の枝の高き梢や風薫る★★★
風薫るなんじゃもんじゃの花の白★★★
嶺の端の入日あかねや四月果つ★★★

 

上島祥子
縁側に座を設えて紅躑躅★★★
クリムトの鉛筆下ろす昭和の日★★★
白鷺の上昇見送る田の夕べ★★★★
「白鷺」を夏の季語として、鑑賞すると、さわやかな田の夕べが思い浮かびます。(髙橋正子)

 

4月29日(3名)

 

小口泰與
葉桜をかくて見飽きし妻と我★★★
仏壇のか黒き塗りや春ともし★★★
日も鳥も囃し出でたる春の沼(原句)
日も鳥も囃し出でたり春の沼(正子添削)

 

多田有花
春空へパラグライダー次々と★★★
その昔白砂青松春の海★★★
春風を受けて海辺のティータイム★★★

 

桑本栄太郎
小出鞠の風に翻弄されて白★★★
白つつじ赤つつじとぞ咲き満つる★★★
白藤のトンネルなりぬ坂の道★★★

 

4月28日(4名)
小口泰與
はくれんや白き浅間へ向きて咲く★★★★
隠れ沼や春翡翠の飛び出でし★★★
太陽を孕みふんわり猫柳
「太陽を孕み」の「太陽」に日本語として違和感があります。(髙橋正子)

 

多田有花
ハイキング残る桜を見上げゆく★★★★
たんぽぽの旅立ちの時始まりぬ★★★
穏やかに島影浮かべ春の海★★★

 

桑本栄太郎
道の辺の蘂の赤きや夏近し★★★
プロペラの葉蔭に赤く若楓★★★
赤と黄の数多彩り春落葉★★★
弓削和人
白浪の泡より白き春の砂★★★

 

4月27日(4名)
小口泰與
はくれんや白き浅間の隠れなし★★★★
かぐわしき沼の若葉や朝日出づ★★★
太陽を含みふっくら牡丹の芽
「太陽を含み」の「太陽」は違和感があります。「陽を含み」でいいのではないでしょうか。(髙橋正子)

 

多田有花
腰赤燕いそいそと巣を修復★★★
紅白を街角に添えはなみずき★★★
赤白黄色はっきりありぬチューリップ★★★★

 

廣田洋一
一人だけ青き背広や春かなし★★★
鎌倉の小町通りや春暑し★★★
残花を惜しみ愛でたる夕べかな★★★

 

桑本栄太郎
大根の花や朝日に大原野
3段切れになっています。この句では、3段切れの必要はないと思います。一句一章、二句一章ということです。(髙橋正子)
一本のひなげし風に休耕地★★★★
揚羽来て何やら言づて話すかに★★★

 

4月26日(6名)
小口泰與
雀の子垣穂の中に隠れけり★★★
山よりの風限りなく現れし
写メ撮るは庭の牡丹に限りけり★★★

 

弓削和人
みちのくの春日は淡くたよりなし★★★
秒針の音鮮やかに春の宵★★★
音読す春の朝日に聴かしたり★★★

 

多田有花
春深し朝ごと山のいきいきと★★★★
頬白や横顔意外に凛々しくて★★★
春たけてトライクでゆくふたりかな★★★

 

廣田洋一
並木道雨を払える若葉風★★★★
市民俳句大会終えて夏近し★★★
蒲公英の絮風を待ちる朝かな
 
土橋みよ
鱗取る音も春らしマコガレイ★★★★
電線に佇む雲雀二重唱★★★
帰郷する友に馴染みの桜茶を★★★

 

桑本栄太郎
妻が茹で我の仕事や蕗を剥く★★★
切れ在りてこその俳句や霾ぐもり★★★
にょきにょきと伸びる傍より竹落葉★★★

 

4月25日(5名)
※「切れ」は、もともと繋がっているものを「切っている」ので、離れているもの(違っているもの)を繋いでいるのではありません。その理由で、「切れ」とか「切れ字」の考えがうまれているので、ご留意ください。(髙橋正子)
廣田洋一
ディズニーの風船揺らしベビーカー★★★
花薊色艶やかに雨の中★★★
大鍋の辛口カレー夏近し★★★
多田有花
おかえりと腰赤燕に呼びかける★★★
八重桜青空の色深くなる★★★★
雌雉の飛び雄雉の鳴いて飛ぶ★★★★
小口泰與
春の虹長きすそ野を輝かす★★★★
川渡る鉄路かかようつばくらめ(原句)
「川渡る鉄路」と「つばくらめ」の関係が切れている難点です。不即不離の関係にするには、「かがよう」の用い方です。(髙橋正子)
鳥帰る白き浅間を越え行けり★★★★
桑本栄太郎
ふるさとの土手道想う蕨届く★★★★
すかんぽの穂が伸び赤く靡きけり★★★
高き塀乗り越え垂るる山吹よ★★★
弓削和人
春星にひとり座したりひとり去り★★★
湖に帰し山より集う春の水
「帰し」としたのは、なぜですか。
湖に帰す山より集う春の水(正子添削)
花冷えのやがて暮れゆく湖畔かな★★★★

月24日(6名)

多田有花
酒蔵の二階はショップ春灯★★★
チューリップに送られ酒蔵後にする★★★
花曇助手席で酒粕ジェラートを★★★
廣田洋一
蒲公英の絮を揺らして坂の道★★★
薊の花くっきり赤く土手の道★★★
春の蚊のふわりと来たる如来堂★★★
小口泰與
白き浅間朝日を浴びて山笑う★★★
ものの芽の朝日をはじきて尖りける★★★
かがなべて春の利根川魚数多★★★
桑本栄太郎
木々の枝の若葉わらわら冷え来たる★★★
春なれや名もなき草の花と実に★★★
しべ赤く御衣黄ざくら散り初める★★★
弓削和人
春の星灯りに連ね潤むかな(原句)
春の星灯りに連なり潤むか(正子添削)
原句の「連ね」の主語は「春の星」です。灯りに「何を」連ねたのでしょうか。「春の星が灯りに連なっている」の意味にする場合は、添削のようになります。(髙橋正子)
上島祥子
雨一夜緑膨らむ梅若葉★★★★
復活祭教皇送る八十二億★★★
地方紙に包まれ届くアスパラガス★★★

4月23日(5名)

小口泰與

入学の大きな名札おもはゆし★★★
春嵐木木を啼かせる夕間暮れ★★★
かがなべていよよ新緑色を増し★★★
※「かがなべて」は「日々並べて」と書きます。古事記などに出てくる古い言葉です。(正子注)
多田有花
もちもちの釜あげうどんうららかに★★★
デザートは抹茶プリンや木の芽時★★★
酒造り百五十年目の島の春★★★

 

桑本栄太郎
朝刊のビニール被り春の雨★★★
三角の辻の花壇や藤の房★★★
石垣を蔽い垂れ居り芝ざくら★★★

 

廣田洋一
ビルの壁白く光りて花水木★★★
春の蚊や刺されぬうちに飛び去りぬ★★★
鯉の群みな口開けて夏近し★★★★

 

森下朋子
愛犬の骨つぼ軽し春の雨★★★★
椿落つ静かなるかな平家谷★★★★
この句は、三段切れ(1句が3つに分かれている)に該当するように見えますが、句意が「静かなるかな」に集約されているので、許されるものでしょう。つまり、「静かなるかな」は、「椿落つ」にも「平家谷」にもかかっていて、意味がここに集約されているので、ばらばらにならずに済んでいます。(髙橋正子)
春しぐれ落人偲ぶ赤幡神社★★★

 

4月22日(7名)

小口泰與
大いなる浅間へ春日差しにけり★★★
仰せの通り今年の若葉いきいきと★★★
一会の名刺おおかた春の闇★★★

 

土橋みよ
友来たるざるに溢れる苺手に(原句)
文法的な統一性にやや欠けますが、リズム的には、生き生きとした、喜びのある句と思います。

 

友来たる笊に溢るる苺手に(正子添削)
①「ざる」は、この句では、読みにくいので漢字にしました。
②一句全体を文語で表現したい場合は、「溢れる」(口語)でなく、「溢る(あふる)」(文語)の連体形(名詞などを修飾するとき)の「溢るる(あふるる)」にします。(髙橋正子)

赤いポスト小手毬の白覆いけり(原句)

小手毬の白に覆われ赤いポスト(正子添削)

①もとの句の意味は、赤いポストが小手毬の白を覆っているなあ、の意味になっていますので、添削しました。

「赤いポスト小手毬の白に覆われけり」となりますが、これでは、リズムがよくないので、工夫します。(厳密にはリズムだけではありませんが)

②また、全体を文語で表現するなら「赤きポスト」とするのが、よいです。「赤きポスト」でなく、「赤いポスト」(口語)で表したいなら、添削のようにすれば、口語表記の句になります。

 

羽広げ葉裏をゆくや揚羽蝶★★★★

 

廣田洋一
公園の残花散り来る滑り台★★★★
春の蚊や風呂場の湯気を浴びて
紙風船突きたる音を楽しめり★★★★

 

多田有花
三葉芹奥に控える黄身酢かけ★★★
春深しごぼうを乗せし蒸し穴子★★★
のどけしやトリュフ塩にて淡路牛★★★

 

桑本栄太郎
春茱萸の種の散らばる舗道かな★★★
すかんぽの伸びて赤き穂なびきけり★★★
あたたかや飛行機雲の解け行く★★★
弓削和人
ふさがんと春に炬燵を出し始め★★★
花びらのおちゆくさきの黒ピアノ★★★
塵ひとつなきピアノへ花ひとひら★★★

 

上島祥子
たらの芽の棘に驚く左拇指★★★
すみれ草帯なす畦と車路さかい★★★
花かりん透かして空の青さ知る★★★★

 

4月21日(4名)

小口泰與

若葉萌え池の周りは鳥の声★★★★

あけぼのの若葉につつまる鳥の数★★★

鶯の声に瞼の開きおり★★★

 

桑本栄太郎

★あゆみ行く吾に添いり虻の声

咲き満ちて紅の狭庭や花みずき★★★

”ハナさん”の事故死の花壇芝ざくら★★★

 

多田有花

古民家の暖簾を揺らす春の風★★★

春の菜にチーズ散らせるサラダかな★★★

春の色飾り烏賊墨細うどん★★★

 

廣田洋一

白躑躅行い澄ます朝かな★★★

蒲公英の絮の漂う寺の跡★★★★

池の端低く飛びたるしじみ蝶★★★

自由な投句箱/4月11日~4月20日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 
 
お願い
①自由な投句箱は花冠会員が自由にいつでも投句出来る場所です。かならずしも、毎日ご投句する必要はありませんので、ご自分のペースでご投句ください。
 
②以前投句した句を再度投句するのは、お止めください。
 
③花冠では、現代仮名遣いで表記していますので、ご留意ください。
 

今日の秀句/4月11日~4月20日

4月20日(1句)
 
★特急の通過駅なり花は葉に/桑本栄太郎
特急が通過してしまう駅、つまり、急行は止まるかもしれないが、小さな駅。少し前までは桜に彩られていたのに、はや葉桜の季節になって装いを新たにしている。駅に寄せる愛着がいい。(髙橋正子)
 
4月19日(2句)
★春の海水平線まで凪いでおり/多田有花
春の海は「春の海ひねもすのたりのたりかな/蕪村」と詠まれたように、のどかでおっとりしているが、有花さんは「水平線まで凪いでおり」と現代的な感覚で受け止めたところが、新しい。(髙橋正子)
★山吹やごっとん水車の廻り初む/桑本栄太郎
故郷の原風景を思い起させる情景。山吹の黄色い花が水車の傍に咲いて、水車の水も飛び散っているだろう。そこで、初めて水車はゆっくり水をためて「ごっとん」と廻るのだ。(髙橋正子)
 
4月18日(2句)
 
★今日の雨白梅の香をふくみおり/小口泰與
泰與さんのお住いの群馬あたりは、まだ白梅が咲いているのだろうか。雨に白梅の香りが含まれていて、その透明感と清々しさに心が洗われる。(髙橋正子)
★咲くものは咲き匂い立つかに春爛漫/桑本栄太郎
春はさまざまな花が咲き誇る。咲くものは咲き、この世が匂い立つようなふんいきになる。それを春爛漫と言う。(髙橋正子)
 
4月17日(1句)
 
★春夕陽小豆島へと沈みゆく/多田有花
姫路からの眺めなのだろうか。多島海の美しい空を茜色に染め、とりわけ小豆島へ沈む夕陽は幻想的な風景を見せるのだろうと、思う。(髙橋正子)
 
4月16日(1句)
 
★柳の芽濠辺にひかり揺らしたり/川名ますみ
濠辺の柳の芽が揺れると、ひかりを揺らしているように見える。繊細な光の動きが柳の芽の柔らかさをよく伝えている。(髙橋正子)
 
4月15日
該当句無し
 
4月14日(1句)
★菜の花の彼方に青き大阪湾/多田有花
菜の花の黄色と青い大阪湾を大きくダイナミックに、鮮明に捉えたところがいい。(髙橋正子)
4月13日(2句)
★湧き出づる雲や木の芽数多出づ/小口泰與
湧き出る雲が、数多の木の芽をやわらかく包んでいるようなやさしさがいい。
「出づ」は文語表記だが、「出ず」とすると、否定の意味になるので、「出づ」は文語表記のままとします。(髙橋正子)
★渡り来し橋春光の真ん中に/多田有花
橋には谷を繋ぐ橋、島を繋ぐ橋などいろいろあるが、今渡ってきた橋を振りい帰ると、橋は春光の真ん中にある。捉え方に発見があって面白い。(髙橋正子)
 
4月12日(2句)
 
★いっぱいに山桜抱き増位山/多田有花
増位山は兵庫県にある山だが、この名の相撲取もいた。まるで、大きな体の山が山桜をあちこちにいっぱい抱えている様子に見える。山桜に飾られた増位山が親しみを込めて詠まれている。(髙橋正子)
 
★目借時図書閉館のアナウンス/上島祥子
「目借時」のいい季節のどかさ。図書館でゆっくり本を楽しんでいたら、閉館のアナウンスがあって、あわてた。ユーモアのある「目借時」の季語が楽しい。(髙橋正子)
 
4月11日(1句)
 
★夕闇に目立つ目白の眼かな/小口泰與
夕闇が降りても、ちいさな目白の眼は判別できる。それほどに目の周りにくっきり白い輪が縁取っている。目白の存在感が知れる。(髙橋正子)
 

4月11日~4月20日

4月20日(3名)
多田有花
春の日の国生みの宮の夫婦楠★★★
国生みの神も桜を愛でられん★★★★
日出処のわれらに春たけて★★★
 
小口泰與
大いなる白き浅間や楓の芽★★★
残りたる一羽の鴛鴦おぼつかな★★★
丘なす所おおむねは杏子の花★★★
 
桑本栄太郎
<京都市内散策>
特急の通過駅とや花は葉に(原句)
特急の通過駅なり花は葉に(正子添削)
せせらぎの花筏停め高瀬川★★★★
しべ赤く散り初めいたる残花かな★★★
4月19日(5名)
多田有花
春の海水平線まで凪いでおり★★★★
古民家や斑入り椿に見送られ★★★
春昼の伊弉諾神宮詣かな★★★
 
小口泰與
百年の老舗盛んや牡丹の芽★★★
おどろなる沼の桜に鳥数多★★★
おとがいを湯船に浸し花疲れ★★★
 
土橋みよ
水上
静けさを破る白波春の瀬に★★★★
桜間に利根の白波光りけり★★★
湯気立ちて銀色揺るる白木蓮★★★
 
桑本栄太郎
いつまでも君想い居り花は葉に★★★
山吹やごっとん水車の廻り初む★★★★
満天星の花の小鈴や匂い咲く★★★
弓削和人
花冷や外輪山に住まう獣★★★
うつりゆく空彩りて木の芽雨★★★
やわらかき落葉の松やめかり時★★★
4月18日(3名)
多田有花
さて食す春の三年とらふぐを★★★
春の朝手作り味噌のまろやかさ★★★
円窓に春の明りの差しきたる★★★
 
小口泰與
今日の雨白梅の香をふくみおり★★★★
沼の木木風の襲えり百千鳥★★★
山里の社へ桜訪るよ★★★
 
桑本栄太郎
曇りても想い色濃く八重ざくら★★★
美味しそうな柿の新芽の揃いけり★★★
咲くものは咲き匂い立つかに春爛漫★★★★
4月17日(4名)
多田有花
春の海ひねもす眺め湯につかる
玄関の投入桜に迎えられ
春夕陽小豆島へと沈みゆく
 
小口泰與
押しなべて葉となる頃の若楓
枝枝に葉の生まれたる春楓
仏壇の灯は怠らず法然忌★★★
 
桑本栄太郎
花屑やさざ波寄せるにはたずみ
授産所の入口前や花みずき
ランドセルの手が生え足生え新入生
 
廣田洋一
手をつなぎ友と歩みし春の宵
熊ン蜂何か探して木の周り
蜜吸いて花粉まみれの蜂となり
 
4月16日(5名)
小口泰與
夕暮れの鳥の急ぎし春の雨★★★★
赤城よりおごる風吹き花楓★★★
花見酒素知らぬふりに押し通す★★★
 
廣田洋一
並木道散りゆくものに春惜しむ★★★
春惜しむ三代句碑の方楽会★★★
畝立てし畑の隅に杉菜かな★★★
多田有花
利休梅白さ輝く春青空★★★
花数多眺めてスイーツを★★★
春空と春の海とが出会う場所★★★
 
桑本栄太郎
しべ赤くしがみつきたる残花かな★★★
雨あがり道に張りつく花の屑★★★
あの辺り金蔵寺とや花の雲★★★★★
川名ますみ
青空へ花咲くごとく銀杏の芽★★★★
木の芽道花見のように仰ぎおり★★★
柳の芽濠辺にひかり揺らしたり★★★★
4月15日(3名)
小口泰與
春の朝ビーツビーツと鳥囃し★★★
一夜にて葉の出でし枝梅古木★★★
雨もよい鳥の急ぎし春の昼★★★
桑本栄太郎
バス停の紅まんさくやホテル前★★★
芽吹く木を映しさざなみにはたずみ★★★
むらさきの色は愁いや花蘇芳★★★
多田有花
ウエディングフォトのふたりや諸葛菜★★★
流木のガゼルに春陽さんさんと★★★
うららかや翡翠かずらの翡翠色★★★
4月14日(2名)
小口泰與
チューリップ今日は開かず午後三時★★★
春の鴨鏡の水面割りにける★★★
もくれんの池に映りて微動だに★★★
多田有花
菜の花の彼方に青き大阪湾★★★★
山桜を見下ろしあわじ花さじき★★★
見晴るかす菜の花大橋六甲山★★★
4月13日(3名)
小口泰與
湧き出づる雲や木の芽数多出づ★★★★
一夜にて若葉生まるる庭の木木★★★
春や春鳥鳴き犬は高き声★★★
 
桑本栄太郎
生垣のすでに紅蓮やカナメモチ★★★
酔い痴れて舗道ピンクや花の屑★★★
うららかや”きみこいし”ちょう玉子買う★★★
 
多田有花
渡り来し橋春光の真ん中に★★★★
再会の友と弥生の海鮮丼★★★
菜の花の丘輝ける黄色かな★★★
4月12日(4名)
廣田洋一
ひらひらと散りくるものに春惜しむ★★★
大紫光艶やか垣根越し★★★
柿若葉つんと伸びたる青き空★★★
多田有花
鶯の声盛んなる堤★★★
いっぱいに山桜抱き増位山★★★
憧れは遠嶺の彼方の山桜★★★
桑本栄太郎
醒めやらぬ酔いのままなり花の屑★★★
あおぞらに美味しそうなり新芽吹く★★★
白菜の縛られるまま茎立ちぬ★★★
上島祥子
目借時図書閉館のアナウンス★★★★
花壇より少し離れて豆の花★★★
春暑し額に付きし帽子跡★★★
4月11日(3名)
 
小口泰與
青空へ杏子の若葉生まれしよ★★★
夕闇に目立つ目白の眼かな★★★★
枝枝に若葉生まるる蒼き空★★★

多田有花
幼子に初の桜を触れさせる★★★★
燕飛ぶ少し陽かげりし空を★★★
桜咲く堤の下に畑仕事★★★

弓削和人
門前の堅雪そやにかたまりぬ★★★
駅頭へ迎え送りぬ忘れ雪★★★
湯治場の家屋なつかし春霞★★★

自由な投句箱/4月1日~4月10日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 
    
       🍃   🍃   🍃   🍃   🍃   🍃
      今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
   右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
   名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
4月10日
★田を打てば土に生まれる呼気吸気  長岡 芳樹(ながおか よしき) 🌸
4月9日
★乙鳥はまぶしき鳥となりにけり   中村 草田男(なかむら くさたお)
4月8日
★青空に揺れる桜を抱く月山     富樫 和子(とがし かずこ)🌸
4月7日
★妻揚げし独活の青さとやわらかさ  安丸 てつじ(やすまる てつじ)🌸
4月6日
★桜昏しはげしき天の白光に     川本 臥風(かわもと がふう)🍁
4月5日
★遠ざかる風船は今空のもの     藤田 洋子(ふじた ようこ)🌸
4月4日
★花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ   杉田 久女(すぎた ひさじょ)
4月3日
★桜散る千曲川なる亞浪の碑     山崎 美笑(やまさき びしょう)🌸
4月2日
★山桜捧ぐ神楽を我も見ぬ      池田 加代子(いけだ かよこ)🌸
4月1日
★夕桜城の石崖裾濃なる       中村 草田男(なかむら くさたお)

今日の秀句/4月1日~4月10日

4月10日(1句)

★蕗の花どの花よりも土に触れ/弓削和人
蕗の花は雌雄異株で花は雄株が黄色っぽく、雌株は白っぽい花を咲かせる。蕗のとうと呼ばれているのは、蕗の花の蕾をさし、日蔭や、湿った場所を好んで生える。茎から伸びた花は土につくことはほとんどないが、蕗のとうは、土に親しい。そのことをこの句は言っているのだと思う。蕗の花の素朴な印象が野を思わせてくれる。(髙橋正子)
4月9日(1句)
★みちのくの陽光ひさし朝寝かな/弓削和人
雪が解けて、みちのくにも陽光がさす日がある。春の日差しの気持ち良さに朝寝となった。長い冬を経て感じる春の明るさがある。(髙橋正子)

4月8日(2句)

★午後の陽の惜しみなくありたんぽぽへ/多田有花
道野辺や、原っぱにたんぽぽは太陽の日差しを受けて花を開く。花の黄色は明るく、太陽のようなイメージだ。日永の午後の陽が惜しみなくたんぽぽに射し、太陽のおおらかさを感じる。(髙橋正子)

  大中寺
★境内の花摘み供す灌仏会/土橋みよ
大中寺の灌仏会に行かれた。花御堂は、境内にいろどりどりに咲いている花を摘んで飾ってある。愛媛に住んでいたころ近所のお寺の花御堂を子供たちと一緒に飾ったが、境内の椿や、田んぼの紫雲英なども摘んできて、花御堂を飾った思い出ある。身近な花で飾るという、その気持ちが美しい。(髙橋正子)

4月7日(1句)

★少し風あるのも良けれ山桜/多田有花
少しの風に吹かれる山桜はまたいいものだ。「良けれ」がその微妙な感じを言い表わしている。すがすがしさと、かなしみを併せ持つ山桜だ。(髙橋正子)

4月6日(3句)

★花樒仏心ここにひそやかに/多田有花
樒の花は目立たないがこの季節に咲き、仏前や墓前に供花として使われる。ひそやかに咲き、花とも言えない花である。それがよけい「仏心」を感じさせるのかもしれない。(髙橋正子)

★鳥雲に入りて浅間のうらかなし/小口泰與
帰る鳥が、浅間山の上の雲に入り見えなくなってしまった。別れを惜しむ気持ちが浅間を「うらかなし」と思わせたのだろう。(髙橋正子)
★さくら散りさざ波寄するにわたづみ/桑本栄太郎(追加発表)
さくらが散るころになると、季節が一歩進み、少し風が吹くようになる。にわたずみにもその風が「さざ波寄する」と、池や川であるかのような風情とみせる。(髙橋正子)

4月5日(1句)

★山裾の家取り囲み山桜/多田有花
山裾の家を取り囲んで山桜が咲いている、日本の懐かしい風景。その景色をさらりと詠み取った清々しさがいい。(髙橋正子)

4月4日(2句)

★我が庭や杏子の花にうもれたる/小口泰與
桜より少し早く杏が咲き始める。その杏が庭に咲き満ちて、のどかな里の風景となっている。その景色が素晴らしい。(髙橋正子)

★囀りやこの木と見ればあちらにも/廣田洋一

小鳥の囀りが聞こえる。この木で鳴いているのかと思い見あげると、あちらの木でも鳴いている。思わず、楽しい気持ちになる。(髙橋正子)
4月3日(4句)
★車椅子カラカラ鳴らし花冷へ /川名ますみ(追加発表)
元の句は「ガラガラ」でした。「カラカラ」の私の提案に、実際の音に近いということだったので掲句になった。音が綺麗になり、詩情が生まれたと思う。花冷えの奥へと響いている感じになっている。(髙橋正子)

★花疲れ熟睡の部屋の四畳半/小口泰與
こじんまりした四畳半の部屋で、花疲れで熟睡してしまった。熟睡のお陰で花疲れもとれたことであろう。(髙橋正子)

★菜の花の向こうに見ゆる海の青/廣田洋一
一面の菜の花の黄色と、海の青の対比の鮮やかさは、いつ見ても、だれが見てもいい景色だ。似た光景を詠んだ俳句もあるだろうが、自分は自分の俳句をしっかり詠むのがいいと思う。(髙橋正子)

★鳥たちの啄み翔ちぬ花万朶/桑本栄太郎
鳥も花を喜んでいるのだろう。満開の桜に鳥たちが止り、花を啄んでは、飛び立つ。私もこの春、野生化したインコが桜を啄んでは落としているのに出会った。これは何のために啄んでいるのだろう。花で遊んでいるようにも見えるのだが。(髙橋正子)
4月2日(2句)
 <エアープラント>
★春光浴び赤い蕾の青皿に/土橋みよ
青皿に赤い蕾のエアブラントが春の光を浴びている。青と赤の色彩の輝きに、
生き生きとした歓びをもらう。(髙橋正子)

★猫の背にとまるひとひら花ふぶき/川名ますみ
花ふぶきの中を潜った猫の背中に、ひとひらの花びらが付いている。猫は花びらが付いているとも知らずにいる。人も猫もこの桜の季節のたのしみを知らずわかちあっている。(髙橋正子)

4月1日(2句)

★朝日さす峰の桜の清しさへ/多田有花
桜の清々しさが率直にその情景のまま詠まれた句。それを読むとその景色の通りに清しさを感じる。(髙橋正子)

★雪柳意思あるように弾みけり/上島祥子
雪柳の枝には小花が房のように咲いて、風が吹けば枝が、「意思があるように」に弾む。風の意思ではなく、雪柳の意思であるのがユニーク。(髙橋正子)