※投句は、一日1回3句に限ります。
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主宰:高橋正子・管理:高橋信之
保津川下りの舟を上流へ
★トラックに空舟積みぬ風薫る/桑本栄太郎
保津川下りの準備が進んでいる。トラックに積む空舟が、薫風のなかで、その軽さが、さわやかに感じられる。(髙橋正子)
5月9日(1句)
★花山葵魚すいすい石の間を/小口泰與
清流に育つ山葵にも花が咲いた。流れの石の間を魚がすいすい自由に泳いでいる。花山葵が地味ながらも景色に色を添えている。(髙橋正子)
5月8日(2句)
★はつ夏の幼子笑顔で一歩一歩/多田有花
初夏を迎えて、歩き始めた幼子は身軽な洋服になった。歩くのがうれしくてたまらない様子で、笑顔で、一歩一歩歩む。見ていてほほえましい。(髙橋正子)
★ジャスミンの白き香りや教会に/桑本栄太郎
ジャスミンの香りを「白」と捉えたのは、花の色からの連想があるだろうが、教会という場所が大きく関係している。教会に咲くジャスミンの花は香りをも清らか。(髙橋正子)
5月7日(1句)
★風薫る木道続く山の裾/小口泰與
ハイキングコースなどに歩きやすいように設置された木道。足取りも軽く山裾を巡る木道に青葉を抜けて吹く風がすがすがしい。(高橋正子)
5月6日(2句)
★敷藁を雨に打たせて瓜の花/小口泰與
瓜の花が咲くころ、藁が敷かれる。敷かれた藁は、雨を弾きつつ、しっとり濡れてゆく。そんな時の瓜の黄色い花はみずみずしく輝く。生き生きした光景だ。(髙橋正子)
★塵出しの朝の静寂や月見草/桑本栄太郎
朝の静寂の中の月見草がすずやかだ。ごみを出すときであっても、かえってその清らかなすずやかさが目に映る。(髙橋正子)
5月5日(1句)
★おのおのの水滴を持ち蓮浮葉/多田有花
蓮の浮葉とは、蓮の根茎から出てしばらく水面に浮いている新葉のことを言う。初夏、蓮の浮葉を見ると、涼し気で、夏が来た嬉しさそのもののように思える。その浮葉がそれぞれ水滴をのせている浮いている。それもいい景色だ。(髙橋正子)
5月4日(1句)
★熊蜂の花粉にまみれ曇天へ/小口泰與
(特に「曇天」でなくてもよいわけですが、春の曇り空というのもいいものだと思います。)
まるまるとした熊蜂が黄色い花粉にまみれて、茫洋とした曇り空へ飛んで行った。こういう景色は良さを言葉で述べにくいが、いい印象の句と思う。(高志正子)
5月3日(1句)
★豌豆の花家並みの途切れれば/多田有花
家並みを歩いてきて、その家並みが途切れるところに、家庭菜園ほどの畑があるのだろう。豌豆が植えられ、花を咲かせている。急に現れた豌豆の花に嬉しさがある。(髙橋正子)
5月2日(2句)
★八十八夜快晴が山の向こうまで/多田有花
快晴の空の下にはるか向こうまで山が続いている。山の色にも八十八夜の光が降り注ぎ、近づく夏を予告している。「快晴の山が向こうまで」に、明るさが満ち満ちている。(髙橋正子)
★楓葉の影のかさなり五月来る/桑本栄太郎
楓の葉の若緑も美しいが、その影が地面にかさなり、揺れたりするのも、すずやかで気持ちがよいものだ。五月が来るうれしさが読み取れる句。(髙橋正子)
5月1日(1句)
★春の鳥鳴くや夜明けの雨の中/多田有花
小鳥たちは夜明け早くから鳴いている。雨がひどければ鳴かないが、小雨程度ならよく鳴いている。春の小鳥が鳴くくらいの雨の降り様と小鳥の声の重なりが春の夜明けらしい。(髙橋正子)
小口泰與
青空や池の小島の桷の花★★★
今日迎ふ三年過ぎし目高かな★★★
納戸より出し昭和の冷蔵庫★★★
桑本栄太郎
初ものの小玉西瓜を味見せり★★★
<保津川下りの舟を上流へ>
トラックに空舟積みぬ風薫る★★★★
保津川下りの準備が進んでいる。トラックに積む空舟が、薫風のなかで、その軽さが、さわやかに感じられる。(髙橋正子)
木洩れ日の影の揺るるや夏は来ぬ★★★
5月9日(2名)
小口泰與
夕さりの空を彩る梅若葉★★★
あけぼのの雨後の若葉や鳥の声★★★
花山葵魚すいすい石の間を★★★★
清流に育つ山葵にも花が咲いた。流れの石の間を魚がすいすい自由に泳いでいる。花山葵が地味ながらも景色に色を添えている。(髙橋正子)
桑本栄太郎
との曇る空の卯の花腐しかな★★★
わらわらと白き葉裏や若葉寒む★★★
国道の穂の揺れ茅花流しかな★★★★
5月8日(3日)
小口泰與
爺と行く登校の子や若葉風★★★
迫り来る青葉若葉や庭の朝★★★★
洗い鯉日は浅間へと近寄らず★★★
多田有花
薫風や取り壊されしビルの跡★★★
検診車に行列をして夏浅し★★★
はつ夏の幼子笑顔で一歩一歩★★★★
初夏を迎えて、歩き始めた幼子は身軽な洋服になった。歩くのがうれしくてたまらない様子で、笑顔で、一歩一歩歩む。見ていてほほえましい。(髙橋正子)
桑本栄太郎
母の日や電話の向こうに声は無く★★★
ジャスミンの白き香りや教会に★★★★
ジャスミンの香りを「白」と捉えたのは、花の色からの連想があるだろうが、教会という場所が大きく関係している。教会に咲くジャスミンの花は香りをも清らか。(髙橋正子)
若竹の天に届けともろ手揚ぐ★★★
5月7日(3名)
小口泰與
海芋咲くすそ野の長き赤城山★★★
ぼうたんの蕾の割れし雨後の朝★★★
風の香や木道続く山の裾(原句)
風薫る木道続く山の裾★★★★(正子添削)
多田有花
<宝殿山二句>
おぼろなるあの島影は淡路島★★★
ここからは霞が隠す姫路城★★★
どの家もつつじ咲かせている街よ★★★
桑本栄太郎
ジャスミンの花の白さや幼稚園★★★
木洩れ日の朝の散歩や風薫る★★★
菖蒲咲く池のベンチに昼ご飯★★★
5月6日(3名)
小口泰與
女王と呼ばれし蜜よ花アカシア★★★
アイリスや異国の恋の物語★★★
敷藁を雨に打たせて瓜の花★★★★
瓜の花が咲くころ、藁が敷かれる。敷かれた藁は、雨を弾きつつ、しっとり濡れてゆく。そんな時の瓜の黄色い花はみずみずしく輝く。生き生きした光景だ。(髙橋正子)
多田有花
春惜しむ古き郵便局の跡★★★★
<石の宝殿二句>
石浮いているかも知れず行く春に★★★
もじゃもじゃに惜春なんじゃもんじゃ咲く★★★
桑本栄太郎
塵出しの朝の静寂や月見草★★★★
朝の静寂の中の月見草がすずやかだ。ごみを出すときであっても、かえってその清らかなすずやかさが目に映る。(髙橋正子)
むらさきは憂いの色や紫蘭咲く★★★
老夫婦のベンチに弁当躑躅燃ゆ★★★
5月5日(3名)
小口泰與
大いなる利根の流れや上り鮎★★★★
おおよその春の終わりや木木の色★★★
老いたるは面映きかな月朧★★★
桑本栄太郎
白花の溢れ咲きたり風薫る★★★
木洩れ日の枝の影揺れ夏は来ぬ★★★
丈伸びし赤きすいばの歩道かな★★★★
多田有花
やや高きところに群れて綾目咲く★★★
おのおのの水滴を持ち蓮浮葉★★★★
蓮の浮葉とは、蓮の根茎から出てしばらく水面に浮いている新葉のことを言う。初夏、蓮の浮葉を見ると、涼し気で、夏が来た嬉しさそのもののように思える。その浮葉がそれぞれ水滴をのせている浮いている。それもいい景色だ。(髙橋正子)
掃除する部屋に立夏の風を入れ★★★
5月4日(3名)
小口泰與
熊蜂の花粉にまみれ飛び立ちぬ(原句)
「飛び立ちぬ」だけでは、句に面白みが欠けるので、景色が広がるように添削しました。(正子)
熊蜂の花粉にまみれ曇天へ★★★★(正子添削)
特に「曇天」でなくてもよいわけですが、春の曇り空というのもいいものだと思います。
まるまるとした熊蜂が黄色い花粉にまみれて、茫洋とした曇り空へ飛んで行った。こういう景色は良さを言葉で述べにくいが、いい印象の句と思う。(高志正子)
行く春や緑の木木と鳥の声★★★
春泥や草にて拭う靴の泥★★★
多田有花
のどけしや太き梁持つレストラン★★★★
風通るテラスに座り春深し★★★
鰆美味皮はぱりぱり身はふっくり★★★
桑本栄太郎
薫風の木蔭づたいや朝歩き★★★
風吹くやはらりはらりと春落葉★★★
橡の花咲いてつらなるバス通り★★★★
5月3日(3名)
小口泰與
掘り起こす土の中より蛙かな★★★
頬白の鋭く鳴きて媾えり★★★
夕蛙懸命に葉に掴まりぬ★★★
多田有花
道の辺に野茨咲かせ近き夏★★★
豌豆の花家並みの途切れれば★★★★
家並みを歩いてきて、その家並みが途切れるところに、家庭菜園ほどの畑があるのだろう。豌豆が植えられ、花を咲かせている。急に現れた豌豆の花に嬉しさがある。(髙橋正子)
じゃがいもはナス科なるかな夏隣★★★
桑本栄太郎
<休日治療の為病院へ>
休日の待合室や若葉寒む★★★
木々の枝の光る憲法記念の日★★★★
ゴミ出しの置場や夕の紫蘭咲く★★★
5月2日(3名)
小口泰與
野良猫や遥か彼方へ落雲雀★★★
頬白や白き胸見せ鳴きにける★★★
山鳥や浅間に夕日近づかず★★★
多田有花
八十八夜快晴が山の向こうまで★★★★
快晴の空の下にはるか向こうまで山が続いている。山の色にも八十八夜の光が降り注ぎ、近づく夏を予告している。「快晴の山が向こうまで」に、明るさが満ち満ちている。(髙橋正子)
夏隣る巌のうえに蘇鉄あり★★★
高砂の松の緑や夏近し★★★
桑本栄太郎
メーデーと云えば代々木や春の雨★★★
楓葉の影のかさなり五月来る★★★★
楓の葉の若緑も美しいが、その影が地面にかさなり、揺れたりするのも、すずやかで気持ちがよいものだ。五月が来るうれしさが読み取れる句。(髙橋正子)
黄金週間日々日曜のわれに無し★★★
5月1日(3名)
小口泰與
甲高き声を上げおり鳥交る★★★
群なして蒲公英畦へなだれ咲く★★★
雀らの塒の樋や春嵐★★★
桑本栄太郎
雨風に白き葉裏や五月来る★★★
蚯蚓出で自死かと想う鋪道かな★★★
青あらし風に逆らいすずめどち★★★
多田有花
春の鳥鳴くや夜明けの雨の中★★★★
小鳥たちは夜明け早くから鳴いている。雨がひどければ鳴かないが、小雨程度ならよく鳴いている。春の小鳥が鳴くくらいの雨の降り様と小鳥の声の重なりが春の夜明けらしい。(髙橋正子)
雨あがり平戸躑躅の鮮やかに★★★
藤房に雨滴残れり天満宮★★★
★惜春の日本画に影なかりけり/多田有花
どれかの日本画を思い出してみると、影があるような印象の画もあるが、影というより、陰翳として思い浮かぶ。油絵に比べ平坦な日本画に、逝く春を惜しむ淡い感情が重なって思われる。(髙橋正子)
4月29日(1句)
4月28日(1句)
★虎杖のこんな処や石垣に/桑本栄太郎
虎杖は、昭和のころは子どもたちにはお八つ代わりの食べ物であったし、塩漬けにされ貯蔵もされていた。その旺盛な繁殖力で、思わぬところに、石垣の隙間に、逞しく育っている。今それを折りとって食べることもないだろう。(髙橋正子)
4月27日(1句)
★青空や自ずと開くチューリップ/小口泰與
チューリップは、気温の上昇につれて開き、夕方になり気温が下がると閉じる性質がある。晴れて青空の下なら、気温が上昇し、それにつれてチューリップは徐々に、開花する。科学的にはそうだが、「自ずと開く」にチューリップの自然な意思が感じられる。(髙橋正子)
4月26日(1句)
★永き日や書き味のよき万年筆/多田有花
日が永くなった。時間が増えた感じで、追いかけられるような忙しさはない。万年筆で何か書いてみる。書き味のよさにささやかな嬉しさ。「永き日」のおかげ。(髙橋正子)
4月25日(1句)
★姫女苑のうすむらさきや風に酔う/桑本栄太郎
姫女苑の花期(6月~10月)はハルジョオンの花期(4月~7月)に2か月ほど遅れている。似た花であるが、この句では姫女苑が詠まれている。「風に酔う」は感覚的に捉えなければいけないが、心地よい、少し強めの風に身をたくしたように揺れている情景であろう。(髙橋正子)
4月24日(1句)
★春雨やみ筍ご飯炊きあがる/多田有花
春雨に閉じ込めながら、筍ご飯は炊飯中。筍ご飯が炊きあがると同時に春雨があがり、偶然ながらも主役は完全に筍ご飯。舌つづみを打たれたことだろう。
(髙橋正子)
4月23日(1句)
★木洩れ日の影を踏み行く夏近し/桑本栄太郎
木洩れ日の影がちらちら道に落ちると、夏が近いと感じる。木洩れ日の影を踏み行く木下がうれしい。(髙橋正子)
4月22日(1句)
★飛行機雲幾筋集め春の空/多田有花
春の空もいろいろな様を見せる。飛行機雲が幾筋も空に引かれ、自在な線を描いている。ふんわりと消えそうな飛行機雲も、今伸びている飛行機雲も。自由な春の空がいい。(髙橋正子)
4月21日(1句)
★春潮の遥か遠くに隠岐の島/桑本栄太郎
遙か遠くに隠岐の島が見え、日本海には今、春潮が流れている。それだけと言えばそれだけの景色だが、歴史を振り返れば遠流の島である。それ以上に作者にとっては故郷の地から眺められる目に焼き付いた島である。冬の厳しい日本海から変容した春潮の流れる日本海が穏やかで、故郷を甘やかに思い出させている。(髙橋正子)
小口泰與
畑打や次つぎ鳥の飛来せる★★★★
風も無き里の旅館の朝寝かな★★★
たんぽぽや庭を駆け來る子らの声★★★
多田有花
雨宿りする人ひとり春の雨★★★
惜春の日本画に影なかりけり★★★★
どれかの日本画を思い出してみると、影があるような印象の画もあるが、影というより、陰翳として思い浮かぶ。油絵に比べ平坦な日本画に、逝く春を惜しむ淡い感情が重なって思われる。(髙橋正子)
朝一枚上着の欲しき四月尽★★★
桑本栄太郎
楓葉の影の揺れ居り四月尽★★★★
ジャスミンの赤き花芽の尖りけり★★★
蚯蚓出で自死かと想う日差しかな★★★
4月29日(3名)
小口泰與
カーテンの生地かえており弥生尽(原句)
カーテンの生地のかえられ弥生尽★★★★(正子添削)
弥生も今日で終わりかとソファに座って寛いだのだろう。目を窓に移すとカーテンの生地がかろやかな生地に変わっている。気持ちもが夏へと誘われていく。(髙橋正子)
山独活を婆は三和土にそっと置き★★★
天空をくるりと周り揚雲雀★★★
多田有花
眠らんと欲すれば春の蚊の襲来★★★
夏近し耳元にはや蚊の羽音★★★★
午後よりは嵐となりぬ昭和の日★★★
桑本栄太郎
こつ然と現れる消える揚羽かな★★★
ベランダの鉢の転がる春嵐★★★
電蓄を聴いて過ごしぬ昭和の日★★★
4月28日(3名)
小口泰與
大いなる大利根川の雪解かな★★★
忽然と芽吹く朝や庭の木木★★★★
春障子田川に洗う草刈機★★★
多田有花
黒板消しみな真っ白なる遅日★★★★
文房具あれこれ試し春惜しむ★★★
裏の家庭いっぱいの躑躅かな★★★
桑本栄太郎
虎杖のこんな処や石垣に★★★★
虎杖は、昭和のころは子どもたちにはお八つ代わりの食べ物であったし、塩漬けにされ貯蔵もされていた。その旺盛な繁殖力で、思わぬところに、石垣の隙間に、逞しく育っている。今それを折りとって食べることもないだろう。(髙橋正子)
治療終え戸外に出れば躑躅燃ゆ★★★
鶯の訛りなりしかホーケチョビー★★★
4月27日(3名)
小口泰與
大いなる浅間の雪解自ずから★★★★
チューリップ自ずと開く空の青(原句)
「空の青」が取って付けたような印象で、一句に馴染まないです。(鷹はh氏正子)
青空や自ずと開くチューリップ★★★★(正子添削)
チューリップは、気温の上昇につれて開き、夕方になり気温が下がると閉じる性質がある。晴れて青空の下なら、気温が上昇し、それにつれてチューリップは徐々に、開花する。科学的にはそうだが、「自ずと開く」にチューリップの自然な意思が感じられる。(髙橋正子)
小綬鶏や児の自転車の覚束無★★★
桑本栄太郎
朝日透き美味しそうなる若葉かな★★★
雨降れど天の明るき菜種梅雨(原句)
「菜種梅雨」と「雨降れど」は意味的に重複していますので、添削しました。(髙橋正子)
どこまでも天の明るき菜種梅雨★★★★(正子添削)
パトカーの流れに添いぬ春の雨★★★
多田有花
刈り込みの形のままに平戸つつじ咲く★★★
講義しておればいつしか春の汗★★★
黄金週間アニメの聖地へ出かける子★★★
4月26日(3名)
小口泰與
熊蜂の花粉まみれの唸りかな★★★
ぴょんぴょんと二羽の頬白芝の上★★★
竹藪の中より雉の高き声★★★
桑本栄太郎
春雨や園児ひとりの送迎バス★★★
さまざまの匂い立ち居り春の雨★★★
山藤の垂るる門扉や朝の雨★★★
多田有花
永き日や書き味のよき万年筆★★★★
日が永くなった。時間が増えた感じで、追いかけられるような忙しさはない。万年筆で何か書いてみる。書き味のよさにささやかな嬉しさ。「永き日」のおかげ。(髙橋正子)
書けばそこに文字の生まれて春深し★★★
春陰や効かぬ薬は飲まぬこと★★★
4月25日(3名)
小口泰與
花楓中学生の男女かな★★★
おだまきや雨のひと日の雀達★★★
天敵に蜜蜂尻を揃えけり★★★
多田有花
春たけて軽やか小さきオープンカー★★★★
春陰やマーカーの黒くっきりと★★★
佐保姫と相談今日の服決める★★★
桑本栄太郎
姫女苑のうすむらさきや風に酔う★★★★
姫女苑の花期(6月~10月)はハルジョオンの花期(4月~7月)に2か月ほど遅れている。似た花であるが、この句では姫女苑が詠まれている。「風に酔う」は感覚的に捉えなければいけないが、心地よい、少し強めの風に身をたくしたように揺れている情景であろう。(髙橋正子)
雨後と云う春筍や竹林に★★★
山藤のなだれ咲きたる狭庭かな★★★
4月24日(3名)
小口泰與
渓流の巌を従え山躑躅★★★
雨の中樋のごときチューリップ★★★
颯爽とハイヒール行くスイートピー★★★
多田有花
春雨静かモーツァルトのピアノ曲★★★
春雨やむ筍ご飯炊きあがる(原句)
①「・・やむ」②「あがる」と終止形となって、切れが強すぎます。①と②の関係は「不即不離」が原則です。(髙橋正子)
春雨やみ筍ご飯炊きあがる★★★★(正子添削)
春雨に閉じ込めながら、筍ご飯は炊飯中。筍ご飯が炊きあがると同時に春雨があがり、偶然ながらも主役は完全に筍ご飯。舌つづみを打たれたことだろう。
(髙橋正子)
対岸に房垂れ初めし藤の花★★★
桑本栄太郎
降りいても天の明るさ菜種梅雨★★★
ムスカリの雨の団地に群れ咲きぬ★★★
午後五時の小ぬか雨降る暮春かな★★★
4月23日(3名)
小口泰與
畦道に鞄五つや葱坊主★★★
囀りや数多出土の馬埴輪★★★
夕さりの浅間南面雪解かな★★★
多田有花
燕の巣かけたる下に新聞紙★★★
春筍いりませんかとLINE来る★★★
いただきし春筍を焼き食べる★★★
桑本栄太郎
木洩れ日の影を踏み行く夏近し★★★★
木洩れ日の影がちらちら道に落ちると、夏が近いと感じる。木洩れ日の影を踏み行く木下がうれしい。(髙橋正子)
ベランダに木瓜薔薇咲く団地かな★★★
朝日差すガードレールや菫咲く★★★
4月22日(3名)
小口泰與
紅木瓜や一朶の雲の山離れ★★★
山藤や浅瀬遡上の魚の数★★★
海棠や小紋の人を訪える★★★
多田有花
晩春の激しき雨の一夜かな★★★
講義終えともに語りぬ春暑し★★★
飛行機雲幾筋集め春の空★★★★
春の空もいろいろな様を見せる。飛行機雲が幾筋も空に引かれ、自在な線を描いている。ふんわりと消えそうな飛行機雲も、今伸びている飛行機雲も。自由な春の空がいい。(髙橋正子)
桑本栄太郎
藤棚の下の唸りや虻の昼★★★
こつ然と現れ去りぬ揚羽かな★★★
父祖の地にいざ帰らばや花蘇芳★★★
4月21日(2名)
小口泰與
はこべらや兎は園の人気者★★★
花薺牛舎に続く径の幅★★★
クレソンや田川の水のごうごうと★★★
桑本栄太郎
メゾンとう玄関なりぬ花みずき★★★
音弾むテニスコートや風光る★★★
春潮の遥か遠くに隠岐の島★★★★
遙か遠くに隠岐の島が見え、日本海には今、春潮が流れている。それだけと言えばそれだけの景色だが、歴史を振り返れば遠流の島である。それ以上に作者にとっては故郷の地から眺められる目に焼き付いた島である。冬の厳しい日本海から変容した春潮の流れる日本海が穏やかで、故郷を甘やかに思い出させている。(髙橋正子)
★紫雲英田や背の順に行く通学児/小口泰與
紫雲英田がいまもある風景は、そこに昔からの生活が続いていることを物語っている。小さい子を先頭に大きい子が後に並んで登校しているほほえましい風景がいい。(髙橋正子)
4月19日(1句)
★夕さりの郵便受けや初夏の音/小口泰與
夕方、コトンと音がして郵便受けに入ったものは何だろう。明るさの残る初夏の夕方の音が魅力的でたのしい句。(髙橋正子)
4月18日(1名)
★休耕地へ田川の水や揚雲雀/小口泰與
休耕地には、春の草がいろいろ生えている。そこへ田んぼの脇を流れる小川から水がどんどん入って来て、広がっていく。空には雲雀が快活に鳴き、野は田植前のうららかさがあふれている。(髙橋正子)
4月17日(1句)
★しゃぼん玉つぎつぎ幼子の手を離れ/多田有花
幼子は、しゃぼん玉をストローで吹いているのではなく、手にしゃぼん液のついた輪を持ってそれを振ってしゃぼん玉を作っているようだ。幼子の手から、手品のようにしゃぼん玉が生まれて離れてゆく。かわいらしい童画のような句だ。(髙橋正子)
4月16日(2名)
★通学に慣れただろうか八重桜/桑本栄太郎
入学の時は、染井吉野が満開であったであろう一年生。染井吉野が散り、八重桜の季節になった。通学にもようやく慣れたころだろうか。離れて暮らす一年生の孫を思いやった優しい句。(髙橋正子)
4月15日(1句)
★散り敷ける桜蘂踏み出勤す/多田有花
「桜蘂を踏む」という現実がはっきりと捉えられ、ベテランらしい出勤時の気構えが感じられる。(髙橋正子)
4月14日(2句)
★あけぼのの芝にあふるる飛花落花/小口泰與
あけぼのの芝生。舞い散る花、舞い落ちた花がゆたかに芝を染めている。春の
「あけぼの」が飛花落花にいっそうの美しさをあたえている。(髙橋正子)
★早々と柿の新芽のみどりかな/桑本栄太郎
朴訥な柿の木の黒っぽい枝からみずみずしい若緑の新芽が出ると、柿の木は一度に明るい木になる。「早々と」は、意外にも早く初夏を思わせるような柿の新芽の色に驚いたからだろう。(髙橋正子)
4月13日(1句)
★講演をする窓の外花吹雪/多田有花
講演をしながらも、窓の外の花吹雪の見事さに目が行く。講師としての余裕もさることながら、俳句に親しんできた作者の余裕なのだと思う。(髙橋正子)
4月12日(1句)
★髪切りて軽々桜散るころに/多田有花
髪を切るとさっぱりと、頭が軽くなる。桜もひらひらと軽やかに散っている。
気持ちが軽く、明るくなって、いい日だ。(髙橋正子)
4月11日(2句)
★うららかに鳥鳴き空の深きかな/小口泰與
「空に深きかな」の詠嘆がいい。鳥たちがうららかに鳴いている空は、目を凝らせば、青く深い。なにか意味あるように深いのだ。(髙橋正子)
★何処までも妻の遠出や野蒜摘む/桑本栄太郎
故郷で摘んだ野蒜が忘れられないのだろう、野蒜を摘みに妻はどこまでも遠くへ行ったようだ。「何処までも・・遠出」は、故郷の方へのような意味合いも感じ取れて、情感豊かな句となっている。(髙橋正子)