今日の秀句/7月11日~7月20日

※遅くなりましたが、7月15日~7月20日の秀句にコメントをしました。ご確認ください。(7月21日 髙橋正子)
7月20日(1句)
★朝暁の初ひぐらしに目覚めけり/桑本栄太郎
目覚めると、空は朝焼け、今年初めての蜩の声。はかなくて美しいものの中に目覚めて一時浸る気分には少し哀愁も混じるだろうか。(髙橋正子)
7月19日(1句)
★アロハシャツ着て講演に買物に/多田有花
講演を聞きにゆくのか、それとも逆にする立場なのか、アロハシャツは着て気楽で涼しく、リゾート感覚が楽しめる。講演に、買い物に、大活躍のアロハシャツは盛夏ならでのシャツ。(髙橋正子)
7月18日(1句)
★名を知らぬ庭草咲きて秋近し/廣田洋一
庭には名前を知らない草も軽やかに花をつける。雑草と言われながらも花をつけると優しさが見えて、「秋近し」の情趣が湧いて来る。(髙橋正子)
7月17日(1句)
★街へ来ぬ素足にかるきハイヒール/川名ますみ
華やぐ街へ来たときのうれしさデ。素足に履いたハイヒールが軽い。ハイヒールはトウが開いていたり涼し気な色やザインだと思う。都会的でおしゃれな俳句。(髙橋正子)
7月16日(1句)
★山鉾の並ぶ四条やあかね空/桑本栄太郎
今年は3年ぶりの山鉾の巡行がある祇園祭。四条通りに山鉾がきらびやかに立ち並び、空は茜に染まる。美しい祇園祭の宵となった。(髙橋正子)
7月15日(1句)
★薫風へ向かうやリュック背負い直し/弓削和人
トレッキングの途中か。少し休憩を入れ、リュックを背負い直し、薫風へ向かって出発。「薫風へ向かう」が楽しそうでいい。(髙橋正子)
7月14日(1句)
★夏涼し照らされ浮かぶ夜の天守 /弓削和人
夜の天守の白壁が灯に青白く浮かびあがり、涼しそうに見える。夜涼の風が度かからか吹いて来る。(髙橋正子)
7月13日(2句)
 兵庫県立国見の森公園
★緑陰に座り広げるサンドイッチ/多田有花
緑陰の楽しさが伝わる句。緑陰で持ってきたサンドイッチを広げ、昼餉とする。夏は緑陰がなにより。私ならコーヒーがあれば、最高のランチになる。(髙橋正子)
★夏萩の花の下枝や風に浮く/桑本栄太郎
夏萩は、葉の茂りがさらさらとして涼しそうだ。下の方の枝が風に掬われるように浮く軽やかさが涼し気でいい。(髙橋正子)
7月12日(1句)
★鉾立の四条通や通り雨/桑本栄太郎
祇園祭の山鉾巡行が今年は3年ぶりに行われるそうだ。行事の細かいところはよく知らないのでお教えいただきたいが、建てられた鉾が四条通りを試しに曳き初めたのであろう。おりしもの通り雨。通り雨が京の祭りを「はんなり」と見せてくれている。(髙橋正子)
7月11日(1句)
★夏の湖汲めど尽きせぬ空の蒼/小口泰與
夏の湖に空が映っている。その空の蒼を湖から汲もうとするが、汲めども汲めども尽きない蒼。湖の水も、空の蒼も、汲めども尽きぬものなのだ。(髙橋正子)

7月11日~7月20日

7月20日(4名)
小口泰與
滝水を弾く大岩蒼き空★★★
沛然の畷に燥ぐ青蛙★★★
激つ瀬の瀬尻の岩や苔の花★★★
多田有花
影は無し雨の海水浴場★★★
雨上がりの霧が晴れ行く土用入り★★★
一斉に熊蝉鳴きだす午前七時★★★
桑本栄太郎
朝暁の初ひぐらしに目覚めけり★★★★
目覚めると、空は朝焼け、今年初めての蜩の声。はかなくて美しいものの中に目覚めて一時浸る気分には少し哀愁も混じるだろうか。(髙橋正子)
ががんぼの朝日に騒ぐ戸の隙間★★★
夕刻となれば入れ替えあぶら蝉★★★
弓削和人
紅ほのか自転車を降り百日紅★★★
オニユリの橙通りの道標★★★
印刷所夾竹桃の白き路★★★
7月19日(5名)
小口泰與
国道へのこのこ出し蟾蜍★★★
雲分けて嶺嶺の映ゆるや天花粉★★★
風死すや剥落続く天狗面★★★
廣田洋一
カーテンの色くすみたる西日かな★★★
襁褓干す西日の強き部屋の中★★★
山清水たゆまず流れ法の池★★★
桑本栄太郎
雷鳴と雨脚つづく夜もすがら★★★
眠る間の無きなり続く夜立かな★★★
冷や麦の昼餉を摂ればまた雨に★★★
多田有花
キャベツサラダわっさわっさと混ぜにけり★★★
アロハシャツ着て講演に買物に★★★★
講演を聞きにゆくのか、それとも逆にする立場なのか、アロハシャツは着て気楽で涼しく、リゾート感覚が楽しめる。講演に、買い物に、大活躍のアロハシャツは盛夏ならでのシャツ。(髙橋正子)
部屋着はタンクトップ珈琲は熱く★★★
弓削和人
夏陰の医院や植木並びおり★★★
夏池の丘を登れば欅あり★★★★
蝉の音は俄か雨にも交じりけり★★★
7月18日(5名)
小口泰與
出るやいな蚯蚓は鳥に食われけり★★★
みんみんや沼の水面の平らなる★★★★
鼓虫の櫂に踊るや二人連★★★
多田有花
月光の斜めに残り夏未明★★★
煮浸しの茄子くたくたとやわらかし★★★
カリグラフィーペンで書き込む夏の朝★★★
廣田洋一
一本の赤を分け合ふ冷し麦★★★
名を知らぬ庭草咲きて秋近し★★★★
庭には名前を知らない草も軽やかに花をつける。雑草と言われながらも花をつけると優しさが見えて、「秋近し」の情趣が湧いて来る。(髙橋正子)
富士の峯白き筋見え秋近し★★★
桑本栄太郎
蝉鳴けど未だしぐれとならざりき★★★
雨脚の峰駆け巡る喜雨亭忌★★★★
早風呂を済ませば窓の風涼し★★★
弓削和人
夏蝶の飛ぶではなくて吹かれ落つ★★★
夏涼に立ち寄る人や種苗園(原句)
「夏涼」が落ち着かない気がします。
涼しくて立ち寄る人や種苗園★★★★(正子添削)
玉の汗拭うて見ゆるほくろかな★★★
7月17日(5名)
小口泰與
国訛りいまだ抜けずや夏の露★★★
天繭や渓流に班の走りける★★★
下宿屋の三畳駆ける守宮かな★★★
多田有花
クーラーを点けると駆けだして行きぬ
何が駆けだしたのでしょうか。(正子)
切られたるメロンに添えてジャスミン茶★★★★
夏満月の光が深く室内へ★★★★
桑本栄太郎
<祇園祭三題>
宵山の四条通りや鉾灯り★★★★
祇園会のくじ改めや畏まり★★★
山鉾の結界の切られ巡行に★★★
弓削和人
暮れゆけり蝉一匹が啼きつづけ★★★
早苗の葉夜風吹かれて充ちいたり
「充ちいたり」は早苗が充足している感じだということでしょうか。(正子)
明滅の星や茂り葉びっしりと★★★★
川名ますみ
空色の切り絵をひらく戻り梅雨★★★★
街へ来ぬ素足にかるきハイヒール★★★★
華やぐ街へ来たときのうれしさデ。素足に履いたハイヒールが軽い。ハイヒールはトウが開いていたり涼し気な色やザインだと思う。都会的でおしゃれな俳句。(髙橋正子)
サンダルのヒール素足が鳴らしゆく★★★
7月16日(3名)
小口泰與
酔眼をもて袈裟斬りや夏燕(原句)
酔眼に袈裟斬り飛ぶや夏燕★★★★(正子添削)
最中をばざくっと噛むや二重虹★★★
山門を羽根の漂う木下闇★★★
桑本栄太郎
雨止めば風に乗り来る涼気かな★★★
宵山の四条通りやコンチキチン★★★
山鉾の並ぶ四条やあかね空★★★★
今年は3年ぶりの山鉾の巡行がある祇園祭。四条通りに山鉾がきらびやかに立ち並び、空は茜に染まる。美しい祇園祭の宵となった。(髙橋正子)
弓削和人
大きめの海水帽の児を親見入て★★★
空蝉の四つ足しかと枝握り★★★
空蝉の本体何処鳴きにけり★★★
7月15日(4名)
小口泰與
投網より逃るる魚や行行子★★★
妻の手に持薬渡すや夕涼み★★★
利根川の空真っ青や鮎遡上★★★★
桑本栄太郎
雨止めば又も日差しや草いきれ★★★
石垣の隙間被いぬ草茂る★★★
一陣の風立ちのぼり戻り梅雨★★★
多田有花
盛夏なり冷水一杯のみ干しぬ★★★
涼しさやマスター手製のパウンドケーキ★★★
夏山を下り自家焙煎珈琲美味し★★★
弓削和人
薫風へ向かうやリュック背負い直し★★★★
トレッキングの途中か。少し休憩を入れ、リュックを背負い直し、薫風へ向かって出発。「薫風へ向かう」が楽しそうでいい。(髙橋正子)
夏草の露や滲まむ靴のさき ★★★
さびしさや口笛を吹く木下闇★★★★
7月14日(5名)
小口泰與
松籟や赤白黄の薔薇動く★★★
畷より赤城を望むや夏雲雀★★★
雨風を罵りつつも黄菅かな★★★
廣田洋一
プールにておしゃべり止まぬ老婦人★★★
冷麦や口に広がる甘き味★★★
いそいそと冷麦茹でる一人厨★★★
多田有花
滝求め渓流沿いを遡る★★★
折り畳み傘を日傘として歩く★★★
青田のむこうに小さき喫茶店★★★
桑本栄太郎
あじさいの花の萎れ̪て雨上がる★★★
迷い込むように木蔭へ黒揚羽★★★
笛が鳴りプールサイドの指導かな★★★
弓削和人
夏涼し照らされ浮かぶ夜の天守★★★★ 
夜の天守の白壁が灯に青白く浮かびあがり、涼しそうに見える。夜涼の風が度かからか吹いて来る。(髙橋正子)
緑なる山のすそ野や民家あり★★★
夏の駅父の帽もて跳ねる児かな★★★
7月13日(5名)
小口泰與
微醺にて湯の香の街の夜店かな★★★
螢火やぬばたまの夜の艶然と★★★
土器を念じて投げし風知草★★★
廣田洋一
雨降りて色の変はりぬ七変化★★★
薔薇園を寄り添ひて行く白日傘★★★
散策の終りを締める冷しぜんざい★★★
多田有花
<兵庫県立国見の森公園三句>
猪の木彫りが夏草のなかに★★★
緑陰に座り広げるサンドイッチ★★★★
緑陰の楽しさが伝わる句。緑陰で持ってきたサンドイッチを広げ、昼餉とする。夏は緑陰がなにより。私ならコーヒーがあれば、最高のランチになる。(髙橋正子)
ミニモノレール万緑をくだりけり★★★
桑本栄太郎
植込みの上にすいすい青すすき★★★
夏萩の花の下枝や風に浮く★★★★
夏萩は、葉の茂りがさらさらとして涼しそうだ。下の方の枝が風に掬われるように浮く軽やかさが涼し気でいい。(髙橋正子)
雨上がり早も鳴き居りきりぎりす★★★
弓削和人
噴水の水輪重なる夕景色★★★
木洩れ日を背に横切るや夏雲雀★★★
門標の袂に繁る赤き紫蘇★★★
7月12日(4名)
小口泰與
風死すや自転車並ぶ赤提灯★★★
鉄線や大曲して山の駅★★★
嶺雲や田川へ集うランドセル★★★
多田有花
<兵庫県立国見の森公園三句>
ゆるやかなスロープ緑陰に続く★★★
山頂展望台夏青空を背景に★★★
播磨灘は夏の霞の彼方かな★★★
廣田洋一
門前のプールにはしゃぐあねいもと★★★
まだ鳴かぬ蝉を探して松林★★★
燭台を垂らしたるごと凌霄花★★★
桑本栄太郎
鉾立の四条通や通り雨★★★★
祇園祭の山鉾巡行が今年は3年ぶりに行われるそうだ。行事の細かいところはよく知らないのでお教えいただきたいが、建てられた鉾が四条通りを試しに曳き初めたのであろう。おりしもの通り雨。通り雨が京の祭りを「はんなり」と見せてくれている。(髙橋正子)
午後よりの日差し明るき溽暑かな★★★
涼風の窓よりさやと夕の雨★★★
7月11日(4名)
小口泰與
夏の湖汲めど尽きせぬ空の蒼★★★★
夏の湖に空が映っている。その空の蒼を湖から汲もうとするが、汲めども汲めども尽きない蒼。湖の水も、空の蒼も、汲めども尽きぬものなのだ。(髙橋正子)
短夜や机辺に数多辞書と本★★★
雀らに芝の庭あり日射病★★★
廣田洋一
藪雨や高き鳴声あちこちに★★★
切りつめし金柑の木に花満ちる★★★
金柑の花に誘はれ蜂来たる★★★
多田有花
<兵庫県立国見の森公園三句>
夏野菜サンドを背負いピクニック★★★
ミニモノレール登りゆく夏の山★★★
夏川の蛇行が眼下に見えてくる★★★
桑本栄太郎
選挙終え朝の静寂や蝉の声★★★
天気予報外れ午後より炎暑来る★★★
シャワー浴び入日茜の夕餉かな★★★

自由な投句箱/7月1日~7月10日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を上等として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/7月1日~7月10日

7月10日(1句)
★目路はるか谷川岳へ夏の蝶/小口泰與
夏山シーズンを迎えた谷川岳へはるか目をやると、蝶が力強く飛んでいく。高く力強く飛ぶ蝶をモチーフに広大な自然が詠まれている。(髙橋正子)
7月9日(1句)
★軒先に巣立ち燕の群れ飛びぬ/多田有花
巣立ったばかりの燕が、遠くへ飛ぶのをためらって、軒先を群れ飛んでいる。若い燕たちの溌剌と元気な動きに魅かれる。(髙橋正子)
7月8日(1句)
★炎天下建物白き港町/廣田洋一
炎天下は強い光を受け、街が反射して白っぽく見えることがある。この句は、実際白い建物が多い港町。洒落た港町の風景が夏らしい。(髙橋正子)
7月7日(1句)
★雲雀土落とし行く耕運機/小口泰與
野に夏雲雀が揚がり、耕した畑の土を耕運機が落として行く。耕運機の落とした土が新しい。みんな生き生きとしている。(髙橋正子)
7月6日(1句)
★逃げ足の速き子目高中天へ/小口泰與
水の中にも中天があると見た発想が涼しい。子目高が元気に動き、何かの音には、水底から水の中ほどへ素早く逃げる活発さは見ていて飽きない。(たかっ橋正子)
7月5日(1句)
  磨離宮公園
★薔薇咲くや水落つ音の頭上より/多田有花
須磨離宮公園は「須磨離宮」という古風な名前を持ちながら、薔薇と噴水があでやかな公園。頭上高く揚がる噴水か、あるいは壁泉の落ちる水か、水の涼しさと迫力を感じる。(髙橋正子)
7月4日(1句)
★黒点となって落ちたり夏雲雀/小口泰與
夏空高く舞い上がった雲雀が、急降下するとき、黒点に見えた。生命体としての雲雀の落ちる勢いが点にまでなる。ここが面白い。(髙橋正子)
7月3日(1句)
★鯵塩焼き柿の青葉に載りて来る/多田有花
鯵は夏の季語。鯵は年中食卓に上るとは言え、塩焼きにした時の香ばしさと色など、夏らしいと言える。柿の青葉に載せられるとは、季節らしい取り合せで
涼しく、食指が動きそう。(髙橋正子)
7月2日(1句)
★箱一杯盛りて届きぬ夏野菜/桑本栄太郎
万物繁茂の夏、夏野菜もいろいろの種類が、たくさんとれたのでだろう。箱一杯に盛って届けられた。彩りよく、みずみずしい夏野菜に元気がもらえそう。(髙橋正子)
7月1日(1句)
★嶺の端の今暮れかかる大西日/桑本栄太郎
嶺の端が暮れかかって暗くなっていくのに反して、空には西日があかあかと暑そうに空を染めている。京都の夏の日暮れを詠んでいると思わされる。(髙橋正子)

7月1日~7月10日

7月10日(4名)
小口泰與
目路はるか谷川岳へ夏の蝶★★★★
夏山シーズンを迎えた谷川岳へはるか目をやると、蝶が力強く飛んでいく。高く力強く飛ぶ蝶をモチーフに広大な自然が詠まれている。(髙橋正子)
忽然と襲いし睡魔日日草★★★
大沼の魚はねて居り百日紅★★★
廣田洋一
干見世に探る漱石三部作★★★
銃身をしっかり伸ばす夜店の灯★★★★
箱釣りや上手く掬ひて拍手湧く★★★
桑本栄太郎
雷鳴と雨足つづく一夜かな★★★
目覚むれば首筋流る汗のすじ★★★
堀割の鯉の集うや鴎外忌★★★
多田有花
ほととぎす何に急かれて鳴き続く★★★
豆苗は夏の光の来る方へ★★★
折り取りて蚊取線香消火する★★★
7月9日(5名)
小口泰與
翡翠の同じ枝へと飛来せり★★★
三年の目高の動き発発と★★★
雲の峰田畑に動くもの見えぬ★★★
廣田洋一
朝顔や葉の広がりてカーテンに★★★
束の間の静かな流れ夏の川★★★
土手の石垣白く乾きて夏の川★★★
多田有花
夏朝日昇り来るなか若燕★★★
天空はわがふるさとよ夏燕★★★
軒先に巣立ち燕の群れ飛びぬ★★★★
巣立ったばかりの燕が、遠くへ飛ぶのをためらって、軒先を群れ飛んでいる。若い燕たちの溌剌と元気な動きに魅かれる。(髙橋正子)
弓削和人
梅雨あがり海は平や果てしなく★★★
揚羽蝶祠を舞いて飛びゆけり★★★
炎帝や露は蒸気し空へ舞い★★★
桑本栄太郎
にわか雨の降れど乾くや木下闇★★★
雷鳴と雨音聞きつ午睡かな★★★
午後よりは雷鳴つづき夜となりぬ★★★
7月8日(5名)
小口泰與
夏期講座居眠り誘う鳩の声★★★
湖畔には国旗かがげし熱帯夜(原句)
湖畔には国旗かかげり/熱帯夜(正子添削)
水槽の子目高忽と反転す★★★
廣田洋一
薔薇園の細かな手入れ庭師達★★★
薔薇咲きて波止場に泊まる遊覧船★★★★
炎天下建物白き港町★★★★
炎天下は強い光を受け、街が反射して白っぽく見えることがある。この句は、実際白い建物が多い港町。洒落た港町の風景が夏らしい。(髙橋正子)
多田有花
たっぷりの生姜紅茶を小暑なり★★★
講義しておれば突然の雷雨★★★
夏休みバイトの話で盛り上がる★★★
弓削和人
雨露や流れ流され夏の海★★★
蝉時雨さつき並木の通い路(原句)
蝉時雨さっき並木の通い路に(正子添削)
梅雨明けや大海原へ釣りの糸★★★
桑本栄太郎
萎れても気品溢るる合歓の花★★★
ワクチンの四回目打つ日の盛り★★★
雨降れば雨宿りせし木下闇★★★
7月7日(5名)
廣田洋一
調べもの次から次へ明易し★★★
明日は又デートの予定明易し★★★
逝きし子の遊ぶ姿や走馬灯★★★★
小口泰與
郭公や全山靄に飲まれける★★★
緋目高や水槽の草姦しき★★★
耕運機の土落し行く夏雲雀(原句)
夏雲雀土落とし行く耕運機★★★★(正子添削)
野に夏雲雀が揚がり、耕した畑の土を耕運機が落として行く。耕運機の落とした土が新しい。みんな生き生きとしている。(髙橋正子)
多田有花
初蝉をああと思いて聞きにけり★★★★
牽牛織女安心の快晴なり★★★
洗濯にはよけれ小暑の青空は★★★
桑本栄太郎
早朝蝉の声聞き目覚めけり★★★★
蒼ざめた四葩開くや病院に★★★
炎昼の遠嶺となりぬ京の山★★★
7月6日(5名)
小口泰與
発条の玩具の動き夏雲雀★★★
逃げ足の速き子目高中天へ★★★★
水の中にも中天があると見た発想が涼しい。子目高が元気に動き、何かの音には、水底から水の中ほどへ素早く逃げる活発さは見ていて飽きない。(たかっ橋正子)
夏霧の沼を遮断や鳥の声★★★
廣田洋一
雨の色日の色吸ひて七変化★★★
浜茄子や異国館に群咲きぬ★★★
逝きし子の遊ぶ姿や走馬灯★★★★
多田有花
<須磨離宮公園三句>
淡路島淡し仲夏の須磨離宮★★★
噴水の到達点を見つめおり★★★(原句)
「見つめおり」が気になります。なかなか言葉が思いつかないですが、いろいろ試してみるのもいいかと思います。(髙橋正子)
噴水の到達点より落つるのみ(正子添削①)
噴水の到達点より空となり(正子添削②)
紫陽花の道を辿りて出口まで★★★
桑本栄太郎
期日前投票済みぬ朝涼し★★★
旧交を温め会いぬ朝涼し★★★
嶺の端の茜雲とや宵涼し★★★★
弓削和人
夜長の灯硝子戸へゆく夏の虫(原句)
「夜長」は秋の季語です。「夏の虫」と季が重なりますので、避けます。
灯ともれる硝子戸へ来て夏の虫★★★★(正子添削)
梅雨入りの水輪を避けぬ停留所★★★
年半ば七月をはや過ぎにけり★★★
7月5日(5名)
小口泰與
紫陽花を抱え立ち読み日照雨かな★★★
子目高の大回転や居間明り★★★
写真家の翡翠を狙い遠き道★★★
廣田洋一
浜茄子や海風そよぐ丘の上★★★
朝顔の予期せぬ色に咲きにけり★★★
青空に赤き光や夾竹桃★★★
弓削和人
炎昼や店の看板文字薄らぎ★★★
雷鳴の空一閃や鳩立ちぬ
「立ちぬ」は、飛びたつことですか。
籔を去り大路に座する蟇★★★
桑本栄太郎
初蝉の一瞬のみや沙汰止みに★★★
いやいやの音の軋むや扇風機★★★
寝そべれば蠅虎の跳び逃げる★★★
多田有花
<須磨離宮公園三句>
薔薇咲くや水落つ音の頭上より★★★★
須磨離宮公園は「須磨離宮」という古風な名前を持ちながら、薔薇と噴水があでやかな公園。頭上高く揚がる噴水か、あるいは壁泉の落ちる水か、水の涼しさと迫力を感じる。(髙橋正子)
彫像の静止や流れる水の前★★★
花々に囲まれ噴水の高し★★★
7月4日(5名)
弓削和人
雷鳴す黙する街に耳を澄まし★★★
雷鳴や遠くの犬の吠えにけり★★★
雷の鳴るやすなわち街小さし★★★★

小口泰與
黒点の如くに落つる夏雲雀(原句)

黒点として思われたのでしたら、ストレートに「黒点」とするのが、詩的だと思います。俳句では、「如し」はなるべく使わない方がよいです。(髙橋正子)
黒点となって落ちたり夏雲雀★★★★(正子添削)
夏空高く舞い上がった雲雀が、急降下するとき、黒点に見えた。生命体としての雲雀の落ちる勢いが点にまでなる。ここが面白い。(髙橋正子)
夕さりの書肆の紫陽花雨の中★★★
熊ん蜂花粉に塗れ草の中★★★

廣田洋一
草取りや庭の黒土甦る★★★
草取りや舗装の目地の草も取り★★★
汗のシャツ背中につきて離れざる★★★

多田有花
<須磨離宮公園三句>
登り来て青葉の彼方友ヶ島★★★
いま静かやがて噴水噴き出しぬ(原句)
「噴き出しぬ」でもいいですが、「噴き上がる」にして、動きがよりよく出るようにしてはどうでしょうか。(髙橋正子)
いま静かやがて噴水噴き上がる★★★★(正子添削)
皇族の名を持つ薔薇の数多咲く★★★
桑本栄太郎
はんざきのように眠りぬ溽暑の夜★★★
雨脚の音に目覚むや戻り梅雨★★★
燐寸擦る手の濡れにけり修司の忌★★★
7月3日(5名)
小口泰與
置鉤の糸の張りたり梅雨鯰★★★
捩花へ使徒の如くに跪き★★★
空蝉や数ならぬ身と思い染む★★★
弓削和人
空梅雨の畠へ農夫は水を遣り★★★
夏の蔓川瀬へ下りて浸りつつ★★★
ペチュニアの踏切り開くを人と待ち
「ペチュニアの踏切り」とは、どんな意味ですか。

廣田洋一
予約せる京都の旅や7月の風★★★
口元のきりりと鮎の売られけり★★★★
プール出で吾身を包む重力かな★★★

多田有花
コントラバス置いて涼しき定食屋★★★
鯵塩焼き柿の青葉に載りて来る★★★★

鯵は夏の季語。鯵は年中食卓に上るとは言え、塩焼きにした時の香ばしさと色など、夏らしいと言える。柿の青葉に載せられるとは、季節らしい取り合せで
涼しく、食指が動きそう。(髙橋正子)
<須磨離宮公園>
オリジナルローズ咲かせし須磨離宮★★★
桑本栄太郎
朝よりの雨の頻りに戻り梅雨★★★
風立つや雨となりたる朝涼し★★★
人間の業の深さよ楸邨忌★★★
7月2日(4名)
小口泰與
雀らの塒の軒や柿の花★★★
産土は風早なりし落し文(原句)
「なりし」の「し」は「過去の助動詞「き」の連体形で、「風早なりし」が「落し文」を修飾しています。(髙橋正子)
産土は風早なりぬ落し文★★★★(正子添削)
大利根の流れ畏き香魚かな★★★

廣田洋一
古き家に咲きこぼれたり棕櫚の花★★★
重たげな房を垂らして棕櫚の花★★★
古本の夜店懐かし神保町★★★★

多田有花
ベゴニアの咲く公園でひとやすみ★★★

昼食は葦簀巡らす食堂で(原句)
「食堂で」の「で」で終わるが、気になります。
昼食は葦簀巡らす食堂に★★★★(正子添削)
いさき塩焼き直前で品切れに★★★

桑本栄太郎
一鉢の月下美人を室に愛ず★★★
箱一杯盛りて届きぬ夏野菜★★★★

万物繁茂の夏、夏野菜もいろいろの種類が、たくさんとれたのでだろう。箱一杯に盛って届けられた。彩りよく、みずみずしい夏野菜に元気がもらえそう。(髙橋正子)
ふるさとは嶺の彼方や西日落つ★★★

7月1日(5名)
小口泰與
ステテコや白焼鰻頬張りて★★★
郭公や靄の小沼を揺り起こし★★★★
風鈴や足腰とみに弱りける★★★

廣田洋一

朝顔や道行く人を楽しませ★★★
朝顔の蔓の行方を手引きして★★★
浜茄子や銅鑼の音残し船の行く★★★★

桑本栄太郎
暁闇の夜気の窓より朝涼し★★★
七月と思えば今朝の暑さかな★★★

嶺の端の今暮れかかる大西日★★★★
嶺の端が暮れかかって暗くなっていくのに反して、空には西日があかあかと暑そうに空を染めている。京都の夏の日暮れを詠んでいる思わされる。(髙橋正子)
多田有花
<橿原神宮二句>
花菖蒲日差しわずかにのぞき初め★★★
日傘の人遠くに池の広々と(原句)
「切れるところ」がよくないので、意味が分かりにくいです。
日傘の人を遠くに/池の広々と★★★★(正子添削)
<大阪大丸ヒロコーヒー店>
熱き珈琲六月の旅終わりけり★★★

弓削和人
初蝉の何処で鳴くや夕の暮(原句)

「夕の暮」が問題です。ここを直せば★4つです。
初蝉の何処で鳴くや日が暮れる(正子添削)
初蝉が夕蝉となって、初蝉を聞いたうれしさと、日暮れの淋しさや不安感、定かでない蝉の居場所、これらがないまぜになった感情がそのまま詠まれている。(髙橋正子)
夏来る陽をかくしたる雲はなし★★★

自由な投句箱/6月21日~6月30日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を上等として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/6月21日~6月30日

6月30日(2句)
   橿原神宮
★巫女歩む梅雨ある国の装束で/多田有花
日本の夏の巫女の白と朱の装束が、神宮の板廊下を歩くときなど、意外にもさっぱりと涼しげなので、目をひいたのであろう。(髙橋正子)
★大樹がそそり立ちにけり/弓削和人
景色がそのまま大きく堂々と描写されて夏の寺の雰囲気がよく分かる。(髙橋正子)
6月29日(句)
★夕暮れの川に水輪や宵涼し/桑本栄太郎
涼しいと思うのは、夕暮れの風が立つころ、川にできる水輪。こう書き始めると清少納言の枕草子が思い出される。この句も夏の景色の涼しさも加えて欲しいものに思える。(髙橋正子)
6月28日
該当句無し
6月27日(1句)
 吉野神宮
★風鈴の数多や風に応え鳴る/多田有花
後醍醐天皇を祀る吉野神宮には、禰宜さんが風鈴掛けを作り、たくさんの風鈴を吊るして涼を呼んで観光客にも喜ばれていると聞く。ガラスの風鈴は涼やかで、風の流れに合わせ音を響かせている。まさに「風に応えて鳴る風鈴なのだ。(髙橋正子)
6月26日(1句)
★奥瀞へ光差しけり川蜻蛉/小口泰與
写真の風景として、光の具合と、かそけき存在の川蜻蛉の取り合せが良さそうな感じがする。それを俳句で表現したと言えるような句。(髙橋正子)
6月25日(1句)
    吉野荘湯川屋
★朝涼の吉野葛入り卵焼き/多田有花
吉野らしい宿の朝食としての吉野葛入りの卵焼き。普段の卵焼きに片栗粉を入れることもあるが、舌触りも滑らかでふわっとしたものであろう。「朝涼」がいい。(髙橋正子)
6月24日(1句)
 金峰山寺蔵王堂
青葉して朝勤行の蔵王堂/多田有花
豪壮な蔵王堂は、東大寺の大仏殿とも比べられるほどの大きさ。その蔵王堂から勤行の声が漏れ聞こえるのだろう。「青葉して」が吉野を感じさせてくれる。(髙橋正子)
6月23日(1句)
★みちのくの光を零しさくらんぼ/廣田洋一
みちのくから届いたさくらんぼ。丸い実は輝いて、みちのくの光をそのまま連れて来たような感じだ。「みちのくの光」に、みちのくの人たちの生活風景が見えて来る。(髙橋正子)
6月22日(1句)
★単線の鉄路かがやく夕立かな/小口泰與
「単線の鉄路」で、辺りの景色が見えて来る。夕立が一降りして、さびしかった鉄路が蘇るようにかがやいた。うれしいような瞬間がある。(髙橋正子)
6月21日(1句)
   吉水神社
★青葉してただ静かなり吉野山/多田有花
吉野山は桜のころは全山桜に覆われる。ほとんどが山桜と聞く。吉野の山は葉桜を始め青葉となって、人でにぎわうこともなく、「ただ静かなり」の山となっている。
 前書きにある吉水神社は、もとは金峯山寺の格式高い僧坊。明治の神仏分離によって神社となり、源義経が弁慶らと身を隠したこと、後醍醐天皇の行宮であったこと、豊臣秀吉が花見の本陣とした等の逸話が残る。静かさに吉野の歴史に思いを馳せることもあるだろう。(髙橋正子)

6月21日~6月30日

6月30日(5名)
小口泰與
郭公や湿原靄の只中に★★★
「湿原靄」は、無理があります。
真昼間の東の空へ夏満月★★★
素袷やビア樽腹を曝け出し★★★
多田有花
<橿原神宮三句>
絵馬の寅大きく梅雨を歩みおり★★★
神宮を吹き抜けてゆく青葉風★★★
巫女歩む梅雨ある国の装束で★★★★
日本の夏の巫女の白と朱の装束が、神宮の板廊下を歩くときなど、意外にもさっぱりと涼しげなので、目をひいたのであろう。(髙橋正子)
廣田洋一
友達と声掛け合ひて茅の輪くぐり★★★
夏服の学校帰りバスに乗る★★★
夏服や首にかけたる濡れタオル★★★
桑本栄太郎
初蝉の鳴き初め黙の朝かな★★★
何処までも青き空なり六月尽★★★
夕映えの嶺の奥まで赤きけり★★★
「赤きけり」が問題です。「けり」は、活用語の連用形に接続します。
弓削和人
夏の蔓軒から空へ巻きのぼり★★★
照りつける屋根に並ぶや雲の峰★★★
夏の寺大樹がそそり立ちにけり★★★★
景色がそのまま大きく堂々と描写されて夏の寺の雰囲気がよく分かる。(髙橋正子)
6月29日(5名)
小口泰與
村道の潦なり二重虹★★★
夕さりの植田を翔るピーヒョロロ★★★
沢蟹や車激しき九十九折★★★
廣田洋一
古池の木立を占めし女郎蜘蛛★★★
浜茄子や国後までの潮の道★★★
浜茄子の香に送られてバス旅行★★★
桑本栄太郎
夕暮れの川に水輪や宵涼し★★★★
涼しいと思うのは、夕暮れの風が立つころ、川にできる水輪。こう書き始めると清少納言の枕草子が思い出される。この句の夏の涼しい景色に加えて欲しいものに思える。(髙橋正子)
嶺の端の奥の茜や宵涼し★★★★
晩涼や塒(ねぐら)すずめの姦しき★★★
多田有花
<吉野神宮駅>
人もなしポスターもなし夏の駅★★★★
<橿原市>
昼食へ柏葉紫陽花咲く道を★★★
<橿原神宮>
六月の青空少し鳥居の上★★★
弓削和人
水豆腐夕べの風が風味添え(原句)
「風味添え」が問題です。
水豆腐夕べの風が木立より(添削例)
風薫る洞水門の水の琴★★★
熱帯夜掛けしベルトの項垂れり
「掛けしベルト」は、どこに(何に)掛けたベルトでしょうか。また、「ベルトの項」とはどういったことでしょうか。
6月28日(5名)
小口泰與
濃紺の今朝の赤城や花萱草★★★
朝焼や仁王立ちたる浅間山★★★
梅雨明けや携帯電話鳴り初める★★★

廣田洋一
裳の裾を広げて立ちし花魁草★★★
夏服の二の腕白き受験生★★★
夏服の腿眩しかり女学生★★★
多田有花
<吉野神宮二句>
風鈴や風の緩急報せけり★★★
振り向けば鳥居の上の梅雨青空★★★
梅雨の晴れ声かけられて車に乗る★★★
桑本栄太郎
想い出の夢の巡りぬ昼寝覚め★★★
梅雨明けと聞き̪し在所の茜空★★★
芙美子忌の明日の銭を数えけり★★★
弓削和人
ひそやかに百合が咲きけり軒の陰★★★
★印4個でない理由は、「ひそやかに」と「軒の陰」が、雰囲気として似ていて、付きすぎ(似合いすぎ)なのです。この句はこれで良しとして、新たに句を作るときは、こういったことに気をつけて、句を推敲してください。
草いきれ古びた柵へ蔓絡み★★★
6月27日(5名)
小口泰與
先の事知らず蔓薔薇囲い解く★★★
水嵩の増しくる川や額の花★★★
山神の挿頭は雲よ花榊★★★
廣田洋一
蜘蛛の囲のきらきら光る雨上がり★★★
サイドミラーに蜘蛛の囲つけてドライブす★★★
蜘蛛出づる風呂場の虫の消えにけり★★★
多田有花
<吉野神宮三句>
風鈴の数多や風に応え鳴る★★★★
後醍醐天皇を祀る吉野神宮には、禰宜さんが風鈴掛けを作り、たくさんの風鈴を吊るして涼を呼んで観光客にも喜ばれていると聞く。ガラスの風鈴は涼やかで、風の流れに合わせ音を響かせている。まさに「風に応えて鳴る風鈴なのだ。(髙橋正子)
吉野神宮紫陽花の色の濃し★★★
京望み青葉茂れる社殿かな★★★★
桑本栄太郎
蒼ざめて見える四葩や病院に★★★
雨を待つ青き吐息や額の花★★★
黄金色すでに褪せたる小判草★★★
弓削和人
若葉吹く風の鳥居や多度大社★★★
夏山を越えるや雲の一筋に★★★★
蟷螂の子とはいえども鎌をあげ★★★
6月26日(4名)
小口泰與
生臭き山道へ入るサングラス★★★
白鷺や猶遡上する魚の数★★★
奥瀞へ光差しけり川蜻蛉★★★★
写真の風景として、光の具合と、かそけき存在の川蜻蛉の取り合せが良さそうな感じがする。それを俳句で表現したと言えるような句。(髙橋正子)
廣田洋一
夏服は霜降り柄と決まりをり★★★
夏服の赤が似合へる媼かな★★★
夏服の胸元光るネックレス★★★
桑本栄太郎
朝涼の窓の風吹き目覚めけり★★★
午後からの日射し厳しく炎昼に★★★
西日さす窓の枝葉の透きにけり★★★
多田有花
<吉野駅前>
梅雨に入る吉野のポストさくら色★★★
<吉野神宮二句>
万緑の吉野神宮参道を★★★
狛犬は青葉を仰ぎ吉野神宮★★★
6月25日(5名)
小口泰與
無造作に茄子を切たり雨後の朝★★★
栗の花落ちるや忽と雨もよい★★★
滔滔と田川流るや二番草★★★
廣田洋一
袴のごと皮を残して今年竹★★★
麻暖簾白く連ねし老舗かな(原句)
麻暖簾白きを連ねし老舗かな★★★(正子添削)
新しき菓子の名染めて麻暖簾★★★
多田有花
<吉野荘湯川屋三句>
早朝の青葉を望む湯殿かな★★★
さらさらと茶粥一杯夏の朝★★★
朝涼の吉野葛入り卵焼き★★★★
吉野らしい宿の朝食としての吉野葛入りの卵焼き。普段の卵焼きに片栗粉を入れることもあるが、舌触りも滑らかでふわっとしたものであろう。「朝涼」がいい。(髙橋正子)
桑本栄太郎
黒南風の葉擦れの枝の重きかな★★★
ワクチンの予約を取りに青あらし★★★
鳴りやみて夕の茜やはたた神★★★
弓削和人
暑き日の鉄路へ吹くや若葉風(原句)
「暑き日」と「若葉風」と季語二つあります。これを「季重なり」と言って、さけなければいけません。「暑き日」を詠みたいのか、「若葉風」を詠みたいのか、決めて詠んでください。
通い路垣根越しには柿若葉★★★
雨宿り露に映えたる蝸牛(原句)
「露に映える」はどんな情景かを具体的に表現してください。
雨宿り露にいきいき蝸牛★★★★(正子添削)
6月24日(5名)
小口泰與
夕焼やはるか浅間の隠れなし★★★★
捩花の影の巨大や夕間暮れ★★★
蚊の声や待合室の黙の椅子★★★
廣田洋一
ぽろぽろと落ちたる実梅光りをり★★★
お手製の甘酒啜る昼下り★★★
甘酒に一息つきぬ御神前★★★
桑本栄太郎
木々の枝の葉の透けて居り青嵐★★★
下校児の声の響けり青あらし★★★
帰宅せし途端の汗や玉しずく★★★
多田有花
<金峰山寺蔵王堂三句>
青葉して朝勤行の蔵王堂★★★★
豪壮な蔵王堂は、東大寺の大仏殿とも比べられるほどの大きさ。その蔵王堂から勤行の声が漏れ聞こえるのだろう。「青葉して」が吉野を感じさせてくれる。(髙橋正子)
法螺貝が夏の空気を震わせる(原句)
法螺貝が震わす夏の山気かな(正子添削)
雨あがり万緑を霧立ち昇る(原句)
万緑を霧立ち昇る雨あがり★★★(正子添削)
弓削和人
ハンカチを浸して抗す炎夏かな★★★
炎天に樹の与えたる日影かな(原句)
炎天に樹のつくりたる日影かな★★★(正子添削)
遠き橋蟻の列ごと車輪かな
意味がよくわからないですが。(髙橋正子)
6月23日(5名)
小口泰與
青鷺や利根の白波限りなし★★★
あけぼのの利根かぐわしき鮎遡上★★★
郭公の隠ろう大樹丘の宮★★★★
廣田洋一
夢の中結論出ずに明易し★★★
さくらんぼアメリカ産の濃紫★★★
みちのくの光を零しさくらんぼ★★★★
みちのくから届いたさくらんぼ。丸い実は輝いて、みちのくの光をそのまま連れて来たような感じだ。「みちのくの光」に、みちのくの人たちの生活風景が見えて来る。(髙橋正子)
多田有花
<吉野荘湯川屋三句>
吉野葛たっぷり使い夏料理★★★★
鮎泳ぐ姿のままに塩焼きに★★★
会席の終わりに笹巻き葛餅を★★★
桑本栄太郎
凌霄花の天に噴きだす炎とも★★★★
午後よりの急に日差しの溽暑かな★★★
日盛りの病院よりの徒歩の道★★★
弓削和人
花瓜の露や始まる朝勤め★★★
夏の蔓巻きつつ群るる明やしき
「明やしき」の意味は?
十薬に招かれたるや古館★★★
6月22日(5名)
小口泰與
単線の鉄路かがやく夕立かな★★★★
「単線の鉄路」で、辺りの景色が見えて来る。夕立が一降りして、さびしかった鉄路が蘇るようにかがやいた。うれしいような瞬間がある。(髙橋正子)
鉄線花垣穂の空へ限りなく★★★
ふりふりと腹をふりつつ目高かな★★★
廣田洋一
茄子の花小さき茄子に映りをり★★★★
夕暮れの明るき庭に夏至の雨★★★
採れたての胡瓜を貰ふ垣根越し★★★
多田有花
東南院青葉の中の多宝塔★★★
<吉野荘湯川屋二句>
通されし床の間に鮎の掛け軸(原句)
5-7-5に整えた方がいいと思います。(髙橋正子)
通されし床の間に掛かる鮎の軸★★★★(正子添削)
露天の湯に入りて青葉を眺めやる★★★
桑本栄太郎
夏つばめ低き陸橋素潜りけり★★★
堰水の怒涛となりぬ梅雨晴間★★★
玉葱や帰省の妻の早や戻り★★★
「玉葱」と「帰省の妻の早や戻り」の取り合せは切れすぎです。もう少し、丁寧なほうがいいと思います。恣意的な解釈しかできなくなります。(髙橋正子)
弓削和人
夏出水落花の影を失せにけり(原句)
「影を失せ」は「影の失せ」にします。「影がなくなる」意味です。
夏出水落花の影の失せにけり(正子添削)
「夏出水があって、落花の影がなくなってしまいました。」の意味になります。「落花の影」が具体的ではありません。
「夏出水落花の面影失せにけり(正子添削)」なら、意味は通ります。
池の端や夾竹桃の一樹居り(原句)
「居り(る)」は夾竹桃を擬人化することになります。この句で、擬人化する
必要はないと思います。(髙橋正子)
池の端や夾竹桃の一樹在り★★★(正子添削)
夏至雲の流れ来たりて山陰り(原句)
一か所「切れ」を入れる方が、イメージがはっきりします。
夏至の雲/流れ来たりて山陰り★★★★(正子添削)
6月21日(5名)
小口泰與
反り返る簗の竹材星の夜★★★★
山里は大きく変わり草いきれ★★★
雀らの歩き回るや捩れ花★★★
廣田洋一
苺一つ包み隠せる大福かな★★★
白壁にピタと張り付き黒揚羽★★★
夏薊丸き頭の蕾寄せ★★★
弓削和人
朝涼の起きて筍流しかな★★★
卯の花の曇りて雨の音かすか★★★
短夜の雨音遠くなりにけり★★★★
多田有花
<吉水神社三句>
義経の潜みし一間梅雨の雲★★★
義経と静の別れカラー咲く★★★
青葉してただ静かなり吉野山★★★★
吉野山は桜のころは全山桜に覆われる。ほとんどが山桜と聞く。吉野の山は葉桜を始め青葉となって、人でにぎわうこともなく、「ただ静かなり」の山となっている。前書きにある吉水神社は、もとは金峯山寺の格式高い僧坊。明治の神仏分離によって神社となり、源義経が弁慶らと身を隠したこと、後醍醐天皇の行宮であったこと、豊臣秀吉が花見の本陣とした等の逸話が残る。静かさに吉野の歴史に思いを馳せることもあるだろう。(髙橋正子)
桑本栄太郎
木槿咲く雨の団地の朝かな★★★
豆ご飯炊いて待ちたる妻帰る(原句)
「待ちたる」にすると「妻」にかかります。妻が豆ご飯を炊いて待っていることになります。(髙橋正子)
豆ご飯炊いて待ちたり/妻帰る★★★★(正子添削)
夏至の日の雨の一日に終りけり★★★

今日の秀句/6月11日~6月20日

6月20日(2句)
★乗る波を待ちたる浜や南吹く/廣田洋一
湘南の海だろうが、サーファーが乗る波を待っている。折しも南風が吹いて、波乗りができる好機。夏を待つ気持ちが騒ぐ。(髙橋正子)
  吉野・吉水神社
★ささゆりやただかりそめの宿に咲く/多田有花
吉野の宿に泊まった。宿の山ぎわとでもいうようなところにささゆりが咲いていたのだろう。ささゆりの清楚さとかりそめと思わせるような宿の雰囲気がよく溶け合って印象深い旅の句となっている。(髙橋正子)
6月19日(2句)
  金峰山寺蔵王堂
★蔵王堂へさみだれ傘を借りてゆく/多田有花
「蔵王堂へ」もさることながら、「さみだれ傘を借りてゆく」が魅力。それが詩になっている。(髙橋正子)
★夏木立仰げば空に天守あり/弓削和人
5-7-5の定型をしっかり捉えた句で無理がない。目に青が染みる夏木立を仰ぐと、空に天守が高々と聳えている。晴れ晴れとして天守を見上げる気持ちが爽やかでよい。(髙橋正子)
6月18日(1句)
★さざ波の植田や木木の影揺るる/小口泰與
早苗もしっかり根付き、植田にさざ波立つようになった。周りの木々の影も水に揺れて、本格的な夏へ向けて、稲の生長がたのしみである。植田の心安らぐ風景がいい。(髙橋正子)
6月17日(2句)
★客散れば静かや梅雨の吉野駅/多田有花
桜の名所の吉野。梅雨となれば、桜は葉が青々と茂り、全山の青葉が目に染む。そんな吉野駅は客が降りて散って行けば、実に静かな駅となる。桜の季節と対比される梅雨の吉野駅の静けさに思わぬ発見がある。(髙橋正子)
★蜘蛛の囲の明日は晴れるや紡ぎ居り/桑本栄太郎
蜘蛛が網を張るのは晴れの日に限られるのかどうか知らないが、網を張っている蜘蛛に出くわすと、明日はきっと晴れると思える。小動物の動きで天気を見るのが面白い。(髙橋正子)
6月16日(1句)
★アマリリス雲梯に寄り人を待つ/弓削和人
アマリリスが明るく、雲梯に寄りかかって人を待つことがどこか楽しい。情景が若々しい句。(髙橋正子)
6月15日(1句)
★雨粒を残す南瓜の花のあり/小口泰與
南瓜の黄色い花は土に近く咲いていることが多く、雨粒が残っているのがすがすがしい。(髙橋正子)
6月14日(1句)
★瓶に入れ梅の実赤く漬けらるる/桑本栄太郎
瓶に漬けられた梅が漬けられたとは言え、生きている。赤い丸い実がかわいい。(髙橋正子)
6月13日(1句)
★卯波寄すふるさと遠き日本海/桑本栄太郎
栄太郎さんのふるさとは日本海の海鳴りが聞こえるところ。今ふるさとは卯波が白く寄せているだろうとの想像。「ふるさと遠き」に故郷への変わらぬ思いがある。(髙橋正子)
6月12日(1句)
★蜜豆や庭の木木の太りける/小口泰與
蜜豆を食べながら、庭の木々をじっくり見ると、太っているのに気づいた。毎日見ている庭木であるが、夏を迎えていっそう茂り、幹回りも太ったようだ。緑陰が家内までとどいているような、すずやかな景色。(髙橋正子)
6月11日(1句)
★走り梅雨山の彼方は照り初めし/弓削和人
走り梅雨らしい雨の降り方。こちらは雨が降っているが、山の彼方は日が差し始めている。走り梅雨の捉え方に新しさがある。(髙橋正子)