9月11日~9月20日

9月20日(5名)
小口泰與
竜胆や嶺嶺を離るる雲一朶★★★
並び咲く雨後の水玉曼珠沙華★★★★
強風にまどう秋蝶中天へ★★★
多田有花
眠りけり野分の音を聞きながら★★★★
嵐去り秋の彼岸に入りにけり★★★
快晴や西瓜に光る刃を入れる★★★
廣田洋一
台風の近づく朝の茜雲★★★
子規庵に糸瓜を探す子規忌かな★★★★
豆の数くっきりと見え莢隠元★★★
桑本栄太郎
ベランダの雑多整理や野分来る★★★
野分去り峰の茜の入日かな★★★
汀女忌の追ひつつ追はれ赤とんぼ★★★★
弓削和人
月草の葎に添うて咲きひかる★★★
デュランタのすみれ色した秋来る★★★★
金色の稲穂は稔り空透きて(原句)
金色に稲穂稔りて空透けり★★★★(正子添削)
9月19日(5名)
小口泰與
咲き乱れ道を塞ぎし秋桜★★★
榛名湖の桟橋打つや秋の波★★★
雨後の藪竹伐る音の聞ゆなり★★★★
廣田洋一
二畝の田実り豊かに色付きぬ★★★
コスモスを揺らして遊ぶ子らの笑み★★★★
コスモスを愛でて動かぬ二人連れ★★★
多田有花
台風よりちぎれ来し雲かかりけり★★★
ゆっくりと列島を辿る台風よ★★★
ヘッドフォンで恋の歌聴く台風圏★★★
桑本栄太郎
ベランダの鉢もの室へ台風来る★★★
夢に見る父のおもかげ敬老日★★★★
子規の忌の根岸の里の豪雨かな★★★
弓削和人
生涯の現役を期する敬老日★★★
ひろびろと蕊のながしや曼珠沙華★★★
駅を降り曇りの坂の秋思かな★★★
9月18日(5名)
廣田洋一
北国の青き光や秋刀魚買ふ★★★
秋日和順番待ちの滑り台★★★
名刹はみどりに満ちて秋日和★★★
小口泰與
二千里を翔る蝶おり藤袴★★★
大様な神代の恋や秋祭★★★
岩削る波の強さや稲光★★★★
多田有花
連休は嵐の予報秋うらら★★★
台風の北上前に買い出しに★★★
台風接近窓閉め切って床に就く★★★
桑本栄太郎
青空に雲走り行く野分まえ★★★
川上へ風に抗い赤とんぼ★★★
供えらる束の野菊や辻地蔵★★★★
弓削和人
雲流れ風のぬるしや台風圏★★★
颱風やテトラポッドの切りし波(原句)
颱風やテトラポッドを切りし波★★★(正子添削)
颱風ののた打ち回り叫び過ぐ★★★
9月17日(5名)
小口泰與
黄緑の田を賑やかす曼珠沙華★★★
富草や鳶の舞いたる空の色★★★
湖の日や戯るる秋の蝶★★★★
多田有花
秋晴れへふわりと発ちぬロープウェイ★★★
十六夜の月鮮やかな家路ゆく★★★
稲の香や夜の家並み途切れれば★★★★
夜の家並みを抜けて歩いていくと、家並みが途切れたところから急に稲の香が漂ってくる。家並みが途切れてそこから田んぼになっているのだ。熟れた稲の香りは稔りの秋の象徴。心が落ち着くなんともいい香りだ。(髙橋正子)
廣田洋一
敬老の日老人どもの食事会★★★
椎の実や産土神の贈り物★★★
先生に見せる椎の実温かし★★★★
桑本栄太郎
畦ごとの仕切りと為すや曼珠沙華★★★
物憂げに鳴き出で居りぬ法師蝉★★★
新酒酌む夕餉摂りたる牧水忌★★★★
弓削和人
合唱す思い出尽きぬ敬老の日★★★
芸術祭歌手たからかに音頭する★★★
草の花遊具に並ぶ園児の帽★★★★
9月16日(5名)
小口泰與
すり足の落鮎釣師川の中★★★
ひたひたと夕闇歩む秋の雨★★★
色鳥と仄語らいし森の中★★★★
「色鳥」は秋に渡って来るいろいろな小鳥。「仄語らう」は、「少し語らう」の意味。森の中に入っていくと渡って来たいろんな小鳥が鳴いている。しばし耳を傾けると少しばかり語り合えたような気持ちになった。小鳥の鳴き声も言語として科学的に研究されていて、小鳥の言葉が分かればどんなにたのしいことであろうか。(髙橋正子)
多田有花
<比叡山三句>
天高しここはおみくじ発祥地★★★
秋気澄む比叡横川をそぞろ歩く★★★
色づくにはまだしばしある楓かな★★★
廣田洋一
秋の灯や歌声高く澄み渡り★★★
見上げたるビルの屋上秋灯★★★
一声のじきに止みたる名残り蝉★★★
桑本栄太郎
グランドの部活賑わう秋入日★★★★
夕暮れの畑かしましき草ひばり★★★
烏瓜熟れて垣根にしな垂るる★★★
弓削和人
網目より無花果たわわに熟しけり(原句)
網かけられ無花果たわわに熟しけり★★★(正子添削)
きりぎりす一草なりて揺れもせず(原句)
きりぎりす止まる一草揺れもせず★★★★(正子添削)
爽籟の通りや急く人立ち止まり★★★
9月15日(5名)
廣田洋一
店先に秋刀魚光らせ誘ひけり★★★
じゅうじゅうと煙鳴らして秋刀魚焼く★★★
月祀る友と二人の酒宴かな★★★★
多田有花
<比叡山三句>
堂塔の朱塗り鮮やか秋の山★★★
森渡る風爽やかに比叡山★★★
鐘楼の鐘ひとつつき秋うらら★★★★
小口泰與
背に腹に飛びかかり来る草虱★★★
赤蜻蛉火の見櫓の中段に★★★★
蓑虫や赤城の風を目の当り★★★
桑本栄太郎
朝冷えや二度寝の夢の心地良き★★★
さやけしや風に吹かれて推敲す★★★
青空の風に群れなす赤とんぼ★★★★
青空の中空を風が吹くと、その風に赤とんぼが群れをなしてくる。翅を光らせあいがなら群れ飛ぶ赤とんぼは、秋の爽やかさそのもの。「風に群れなす」が新しい。(髙橋正子)
弓削和人
開店を待つや古書店秋うらら★★★★
古書を手に水筒腰に秋日和★★★
古書買うて繰るるページに秋の香や★★★
9月14日(5名)
小口泰與
水替えて水槽の魚秋の空★★★
蟋蟀や今も我家の納戸藏★★★
打ち出しは忙しせわしと鉦叩★★★
廣田洋一
月見れば逝きし人々浮かび来る★★★
川沿ひの畦道歩む月見かな★★★★
秋灯に一人味はふ郷の酒★★★
多田有花
<比叡山三句>
爽やかに離合するなりケーブルカー★★★★
秋高しかわらけ投げの的があり★★★
秋天へぐんぐん登るロープウェイ★★★
桑本栄太郎
ぬか味噌を今朝も掻き混ぜ妻の秋★★★
西山の嶺の端うねろ秋気満つ★★★
さやけしや遊びせんとて生まれをり★★★
弓削和人
落日の蕊の紅さよ曼珠沙華★★★★
落日のなかに立つ曼珠沙華の蕊が、入日に染まり紅く輝いている。今日の終わりの曼珠沙華の紅さが心に残る。(髙橋正子)
案山子帽吹かれし風に怺うかな★★★
家居より眺めてひさし稲の秋★★★
9月13日(5名)
小口泰與
秋ばらのこぼるる川辺風の中★★★
底紅や昭和の御代の繁華街★★★
泡立ち草切りし切先匂い立つ★★★★
廣田洋一
細過ぎて食欲湧かぬ秋刀魚かな★★★
矢印の綺麗に残り焼秋刀魚★★★
台風の前の晴天稲穂刈る★★★★
多田有花
<比叡山三句>
「ひえい」ゆく秋の比叡の懐へ★★★★
「ひえい」は、比叡電車の列車で、京都市内から比叡山へ30分足らずで行ける観光電車とのこと。比叡山の名を採った「ひえい」に乗って、日本仏教の母山の比叡の懐へ入っていく言葉上の面白さもあって納得。(髙橋正子)
秋のせせらぎ渡ればケーブルカー乗り場★★★
仲秋や大悲万行と大書★★★
桑本栄太郎
秋暑し爆音立てるカーラジオ★★★
とんぼうの群れ飛びをりぬ停留所★★★★
心地良き風のベンチや秋日蔭★★★
弓削和人
ふるさとの書棚を眺め夜長し★★★★
水引の粒みなかかる夕日かな(原句)
「みなかかる」の部分がわかりにくいです。(髙橋正子)
水引の粒のどれもに夕日かな★★★★(正子添削)
秋川は小海老の血管流れたり★★★
9月12日(5句)
小口泰與
がちゃがちゃや星無き畦の真の闇(原句)
がちゃがちゃや星無き畦の真暗闇★★★★(正子添削)
蟷螂の迷い出でたる仏間かな★★★★
段畑は泡立ち草や遠の里★★★
廣田洋一
満月を見たさに出たり入ったり★★★
西天に白き満月浮かびをり★★★
園児らのお手々つなぎて秋日和★★★
弓削和人
静かなる遠くの風や二百ニ十日★★★
蟋蟀や耳を澄ませば鳴き止まり★★★★
蟋蟀が鳴いているので、よく聞こうと耳を澄ませると、何かを察知したかのように鳴き止む。経験することながら、改めて秋の夜の深さ、自己ひとりの存在を思う。(髙橋正子)
秋草を刈るや袋に秋つもる★★★
多田有花
みな若き歳月ありて秋思う★★★
秋の朝駆け抜けてゆく少年ら★★★★
ぽつぽつと刈田が住宅地の中に★★★
桑本栄太郎
一木を占めて垂れ居り葛の花★★★
合歓の実の色づき干乾ぶ川の風★★★
青空に編隊飛行や赤とんぼ★★★★
9月11日(3名)
小口泰與
浅間より吹かれ来し雲鵙高音★★★★
夕映えの峠越え来る雁の棹★★★★
邯鄲や旧家の池の水の色★★★
桑本栄太郎
山の端の雲育ち居り秋気満つ★★★★
東屋に座り虫の音聞きにけり★★★
十六夜の今夜も嬉し在所かな★★★
弓削和人
鈴虫の音に誘われし奈良格子(原句)
「誘われし」の「し」は、過去の助動詞「き」の連体形で、奈良格子に掛かります。「奈良格子が鈴虫の音に誘われた」という意味になってしまいます。(髙橋正子)
鈴虫の音に誘われて奈良格子★★★★(正子添削)
ふと目覚め厠の窓やちちろ虫★★★
秋花のひっそり咲くや隠し道★★★

自由な投句箱/9月1日~9月10日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/9月1日~9月10日

9月10日(1句)
★鯉の群行きつ戻りつ水澄めり/廣田洋一
川の黒い鯉であろう。あたりを行きつ戻りつ群れになって泳いでいる。水が澄んできて、鯉の泳ぐ姿がよく見える。ものみな澄んできれいな秋となっている。(髙橋正子)
9月9日(1句)
★秋桜の揺れる畑よ青き空/友田修
「畑」の秋桜を詠んだのがいい。「青き空」がすっきりとしている。野にありながら畑という人の営みが関わってあたたかさと優しさが生まれている。(髙橋正子)
※友田修さんへ
8月月例ネット句会の入賞発表をご覧ください。
9月8日(1句)
★鶏頭の一群風にうねるかな/弓削和人
台風の余波を受けてか、鶏頭の一群がうねっている。鶏頭にある「うねる力強さ」が作者の目に訴え、実景が率直に詠まれているのがいい。(髙橋正子)
9月7日(1句)
★夕月のひかり増しゆく厨事/多田有花
厨の仕事、米を研いだり、野菜を洗ったり、切ったり。夕月がごく淡くひかっていたのが、次第にひかりを増して黄色い月の色になってゆく。日常の厨事ながら、きれいな時間が過ごせている幸せ感がいい。(髙橋正子)
9月6日(1句)
★へら浮子のかろき魚信や秋桜/小口泰與
鮒を釣るのは釣りの醍醐味らしい。へら鮒釣りの浮子も、目にも楽しい。浮子にくる軽い魚信と、秋桜のかろやかさに相通じるものがあって、一句が成り立っている。(髙橋正子)
9月5日(1句)
★爽籟や下校の子の吹くリコーダー/桑本栄太郎
さわやかな風が吹くなかを、リコーダーを吹きながら学校から帰って来る子がいる。「籟」はもと三つ穴のある笛を指したというから、リコーダーの幼い音色も、秋風に和して聞こえる。(髙橋正子)
9月4日(1句)
★快晴に桜紅葉の始まりぬ/多田有花
桜が紅葉し始めるのは、意外と早い。快晴となった日は、朝も冷えこんだのだろう。さっそく桜が紅葉し始めた。(髙橋正子)
9月3日(1句)
★ふと目覚めすこやかならむ母の秋/弓削和人
秋の夜中ふと目覚め、ふるさとの母のことが思いうかんだ。「母はこの秋すこやかであろう」と。「ならむ」の「む」の意味は断定の推量。これをしっかり読みとりたい。ここに作者が母を気に掛けながらも、母へのたしかな安心が読み取れる。(髙橋正子)
9月2日(1句)
★めはじきや女子大生のはや上京/小口泰與
めはじきは紫蘇科の薬草で、益母草とも呼ばれる。子どもが茎を短く切って目を大きく開かせ瞬きする勢いでそれを遠く飛ばせて競った遊びからきている。句意は、夏休みがはやも終わり、東京から故郷へ帰省していた女子大生が、東京へと帰って行くということ。夏休みの間、ふるさとは若い女子大生が帰り、若やいでいたことだろう。幼いころの顔がどこかに残っているそんな女子大生をまた送り出す、ふるさとの一抹の淋しさである。(髙橋正子)
9月1日(1句)
★サバンナの草々光る星月夜/廣田洋一
「サバンナ」と聞けば、きりんやライオンなどが住んでいるアフリカの、ところどころに高い木が立っている草原の景色を思い起こすだろう。サバンナの草は狗尾草などもある、イネ科の植物がほとんどらしい。それらが熟れたり、枯れたりした色が広がる広大な草原に、夜は月や星が出る。星月夜に包括された人間はどんな気持ちになるのだろう。魅力的だ。(髙橋正子)

9月1日~9月10日

9月10日(5名)
小口泰與
凝りもせずまた聞こし召す新走り★★★
どぶろくや鉄路の音の聞ゆなり★★★
渡鳥三国峠を越ゆるなり★★★★
廣田洋一
エリザベス女王永久の休みや身に沁みぬ★★★
鯉の群行きつ戻りつ水澄めり★★★★
川の黒い鯉であろう。あたりを行きつ戻りつ群れになって泳いでいる。水が澄んできて、鯉の泳ぐ姿がよく見える。ものみな澄んできれいな秋となっている。(髙橋正子)
重陽の菊の揺れたる線路際★★★
多田有花
買い出しの人波の上赤とんぼ★★★★
歯科医院の窓から見えし色づく★★★田★★★
歯のケアを終えて仰ぎし鰯雲
桑本栄太郎
雲奔る空見上げを居り月今宵★★★
名月の無月とならん今宵かな★★★
名月や愛でる言葉の見つからず★★★
弓削和人
名月の通過駅をも降りたりし(原句)
名月の通過駅にも降りたしと★★★(正子添削)
名月は駅から駅へ歩きたし★★★
名月の映る車窓や人それぞれに★★★★
9月9日(5名)
小口泰與
秋灯下文机の辺に堆書かな★★★
随神色と甘さの葡萄かな★★★
小鷹狩言葉発する鳥のおり★★★★
廣田洋一
台風の吹き清めたる空の色★★★★
冷凍と注を付けたり秋刀魚かな★★★
初物は小ぶりで高し秋刀魚買ふ★★★
桑本栄太郎
久しぶりの友と語らう秋うらら★★★
柔らかな寝床に居りぬ櫟の実★★★
窓外のかつら黄葉のもみずれる★★★
弓削和人
ドビュッシーを聴ききたくなりし月の夜★★★
月やさしドビュッシーを聴きながら★★★★
秋に入りつけわすれたし万歩計★★★
友田修
秋桜の揺れる畑よ青き空★★★★
重陽の雲間に見ゆる白き月★★★
夕暮れの葉陰に揺れる栗のいが★★★
9月8日(5名)
小口泰與
少女らの湯の香りせる残暑かな★★★
索道に乗せたる早稲の碧空へ★★★★
赤のまま切らるる事を感ずなり★★★
廣田洋一
台風の目玉くっきり北上す★★★
台風に落ちざる林檎売り出され★★★
高級魚より高値となりし初秋刀魚★★★
多田有花
嵐去り白露のひかり野に溢れ★★★★
秋川の上や遠目に白い花★★★
秋のベランダ磯鵯の声盛ん★★★
桑本栄太郎
ひと雨にもみづり居りぬ庭の木々★★★
身に入むや木々の葉濡れて色づきぬ★★★
おしろいの咲き分けありぬ雨の夕★★★鋪アイ
弓削和人
新涼や団旗を振るう運動場★★★
鶏頭の一群風にうねるかな★★★★
公園のジャングルジムや秋日傘★★★
9月7日(5名)
小口泰與
コスモスの一番端や揺れおおき★★★★
落鮎や魚籠かろがろと帰り來る★★★
蒼天や声かろくなる秋の山★★★
廣田洋一
門前に風を呼びたり糸芒★★★
北斎の富士を描きたる秋扇★★★
秋刀魚焼く煙を囲みワイン酌む★★★
多田有花
秋の朝磯鵯の鳴いて飛ぶ★★★
厨事夕月ひかり増してゆく★★★★
仲秋に入る風の音空の色★★★
桑本栄太郎
きざわしに桂紅葉のひと葉かな★★★
フィリリリと闇を占めたる草ひばり★★★★
うそ寒や夜ともなれば窓を閉ず★★★
弓削和人
腰を手に寝返りを打つ灸花★★★
雨止むを忘れし良書法師蝉★★★★
秋天へ歩みて覗く商店街★★★
9月6日(5名)
小口泰與
へら浮子のかろき魚信や秋桜★★★★
天界は晴やコロナの秋の邦★★★
休み田の群の棲家や泡立ち草★★★
多田有花
窓揺らす北の海ゆく野分かな★★★★
虫の声朝の瞑想の耳に★★★
午後の風よく入る残暑の部屋★★★
廣田洋一
吟行になくてはならぬ秋扇★★★
朱の花を散りばめし絵や秋扇★★★
道はさみ交し合ひたる虫の声★★★★
桑本栄太郎
生ぬるき風の後なり野分雨★★★
うす暗きひと日終わりぬ台風裡★★★
綾子忌の今日も野菜の夕餉かな★★★
弓削和人
数珠玉の伽藍の壁となりにけり★★★
妹嫁ぎ畑人となり白粉花★★★
毬栗の木は街角を見張りけり★★★
 
9月5日(5名)
多田有花
新涼の朝焼け空を覆いけり★★★
真昼の部屋一転暗く秋の雷★★★
稜線へ斜めに差せる秋陽かな★★★
小口泰與
丹精の田に集い来る鬼やんま★★★★
魔の山へ利鎌の月の出しかな★★★
渓流の鶺鴒の影魚の影★★★
廣田洋一
紺色の多く使はれ秋扇★★★
秋扇帯に挟みて講演会★★★
虫の声愛でつつ酌むや一人酒★★★
桑本栄太郎
爽籟や学校帰りのリコーダー(原句)
爽籟や下校の子の吹くリコーダー★★★★(正子添削)
夕刻の鳩吹く風に帰宅かな★★★
翅音のぷるぷる聞こゆ鬼やんま★★★
弓削和人
待ちたるや秋川へ来る乳母車★★★
勤務地へ黙と向うや唐辛子★★★
川浸る足を過ぎゆく秋の雑魚(原句)
川に浸けし足を過ぎゆく秋の雑魚★★★★(正子添削)
 
9月4日(5名)
多田有花
快晴に桜紅葉の始まりぬ★★★★
わが背より高きカンナを見て過ぎる★★★
爽やかに風あり雲を吹き払う★★★
小口泰與
藤袴千里を翔る蝶の宿★★★
竜胆や尾根を伝いて山小屋へ★★★★
花眞菰長竿肩に徒渉る★★★
廣田洋一
土手の道歩む先々虫の声★★★★
マンションの灯りみな消え星月夜★★★
秋耕を終えたる畑黒々と★★★
桑本栄太郎
秋冷の朝の目覚めや君の夢★★★
気がつけば忽と鳴かざる秋の蝉★★★★
大原野の雲の茜や秋の峰★★★
弓削和人
車窓を見うつりし秋の過ぎゆくか★★★
隣家より行ってきますと秋さやか★★★★
受話器口あらぶる友と夜長し★★★

9月3日(5名)
廣田洋一
あちこちに虫の声湧く露天風呂★★★★
師の句集読み返したる夜長かな★★★
吟行の鞄に入れし秋扇★★★
小口泰與
啄木鳥や湖の水面の平らなり★★★★
榛名富士松虫草の湖の風★★★
芙蓉咲き裏山からの風柔き★★★
多田有花
秋の蝉思い出したるように鳴き★★★
陽が入る午後は残暑の部屋を避け★★★
遠山のくっきり見えて秋めく日★★★★
桑本栄太郎
雨上がり少しもみづる銀杏かな★★★
三階の眼下に臨むうす紅葉★★★
京なれやちくりん良しと秋の蝉★★★
 
弓削和人
秋つゆの電車遅延やあちみこちみし★★★
かの虫の鳴き始めるや夜長し★★★
ふと目覚めすこやかならむ母の秋★★★★
9月2日(5名)
多田有花
落雷で断水となる二百十日★★★
湯に入ればさらに虫の声近く★★★★
秋めきて雨がちの日が多くなる★★★
小口泰與
無住寺を塒とせしや小鳥來る★★★
めはじきや女子大生のはや上京★★★★
みそ萩やかの戦争の星の数★★★
廣田洋一★★★
縁の下覗けば止みぬ虫の声
さくさくと梨を嚙む音一人の夜★★★
秋高し八幡宮の階上る★★★★
桑本栄太郎
暁闇の寝床に聞こゆ威し銃★★★
ふるさとの”新甘泉”や梨届く★★★★
木々の枝の色なき風に色づけり★★★
弓削和人
朝窓の目覚めの風や二百十日★★★★
傘さすも秋のついりの空眺め★★★
秋霖のいきもの皆や息ひそめ★★★
9月1日(5名)
廣田洋一
死亡記事一番に読む秋の朝★★★
雨戸閉め今日も息災虫の声★★★
サバンナの草々光る星月夜★★★★
小口泰與
噴煙のから紅や渡り鳥★★★
飛来せる小鳥や猫の目の光★★★
秋雨や鎖樋より禽の羽★★★
多田有花
法面の草刈られたり八月尽★★★★
二学期は白雨の中に始まりぬ★★★
新涼やシェイカーで溶かすプロテイン★★★
桑本栄太郎
秋の雷名残を惜しむかのように★★★
もみづるや一雨後の庭の木々★★★
腹巻の今夜も付ける夜の秋(原句)
腹巻を今夜も付ける夜の秋★★★★(正子添削)
弓削和人
軒先に雨宿りするとんぼかな★★★★
どしゃ降りや秋の夕べのアーケード★★★
長雨や灯火親しく手を休め★★★

自由な投句箱/8月11日~8月19日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/8月11日~8月19日

8月19日(2句)
★秋雲のつぎつぎ生まる嶺の奥/桑本栄太郎
秋の雲が生まれ、流れ出て来る。生まれ出るところは、嶺の奥。誰もよく知らない、嶺の奥から。ただそれだけのことが、爽やかに思える。(髙橋正子)
★終電の人みな黙す秋の顔/弓削和人
人間の顔に季節があるかと言う問題に直面するが、秋を表す雰囲気の顔と言えば、目を開いているが、思索にふけるような、頬がやや冷たい顔となるのではないだろうか。仕事で疲れた人たちの乗る終電では、誰も話さない。疲れ切っていても眠りはしない。なにか思うような印象的な顔が並ぶ車内。(髙橋正子)
8月18日(1句)
★飼い犬のスキップちらと秋来る/弓削和人
散歩に連れ出された犬か。爽やかな秋の空気が嬉しくて、スキップのような軽快な走り方ちらとする。すれ違った作者の心にもに秋が来たうれしさが読み取れる。軽い句の良さがある。(髙橋正子)
8月17日(1句)
★涼のオールディーズやバーバーに/桑本栄太郎
「新涼」が効いている。静かに流れるオールディーズに髪を刈ってもらう客も
店の主人も古き良き時代を楽しんでいる。理髪店のひと時がいい時間となっている。(髙橋正子)
8月16日(1句)
★河岸段丘色づき初めし田もありぬ/多田有花
「 河岸段丘 ( かがんだんきゅう ) 」とは川の流れに 沿 ( そ ) ってつくられた 階段状 ( かいだんじょう ) の地形のこと。景観は棚田のような眺めといってよいだろう。そういう特異な地形の田も稲の穂の熟れ始めた色合いが見える。(髙橋正子)
8月15日(2句)
★とんぼうの止まりて離る舫い綱/小口泰與
「舫い綱」は、船を繋ぎとめておく綱のこと。その綱にとんぼが止まっていたのが、離れていった。綱は当然水の上を渡されているので、とんぼ綱に止まりながらも水の上にいて、姿が映っているかもしれない。とてもきれいな秋の情景が詠まれている。

★竹伐って貯金箱とす星祭/弓削和人

星祭りの竹を伐りに行った。笹は七夕飾りに、竹幹は、貯金箱になった。子どものころの思い出か。竹の一節を貯金箱として台所の柱に掛けてあったのをどこかで見た記憶がある。昭和の暮らしが今更に思い出される句。(髙橋正子)
8月14日(2句)
★鶴の首水吹き上げて秋澄めり/廣田洋一
鶴の形をしたおそらく陶器の噴水だろうが、首を上向けて水を吹き上げている。吹き上げた水が落ちて鶴の首から体を濡らしているだろう。「秋澄めり」を実感する景色だ。(髙橋正子)
★手に供花の盆供養なるバスの客/桑本栄太郎
盆のバスに乗ると供花をもった客がいる。バスの中にも今日が盆であることが
示されて、はからずも乗り合わせて人たちも祖先を思う日となったのではなかろうか。(髙橋正子)
8月13日(1句)
★迎え火の無くて夕餉を摂りにけり/桑本栄太郎
故郷を離れて住んでいる家族には、祀る仏のいない家族もある。故郷にいれば迎え火を焚いたであろうに、その迎え火もなく、いつものように夕食を摂った。なにか淋しい、取り残されたような思い。(髙橋正子)
8月12日(1句)
★境内に緋メダカ泳ぐ盆の寺/多田有花
盆の寺の生きとし生けるものはみんな大切にされる感じだ。緋メダカがすいすい泳いで涼を呼んでいて、明るい雰囲気がいい。(髙橋正子)
8月11日(1句)
★山の日の山に向かいて風が吹く/多田有花
山の日は、7月20日の海の日に対して2016年から施行された新しい祝日。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する 」日とされている。何かかを祝うということではないが、山に向かって吹く風があれば、山もいきいきとしてくるように思える。(髙橋正子)

8月11日~8月19日

8月19日(5名)
小口泰與
夕さりの湖渺渺と花芒★★★
好日のひと日や利根の下り簗★★★
石を積む一ノ倉沢秋の声★★★
廣田洋一
口角に汁溢れ出る水蜜桃★★★
雨上がり風さわさわと今朝の秋★★★
栗ご飯黄色く光る夕べかな★★★★
多田有花
ジャズピアノ静かに流れ風は秋★★★
朝の月飛行機雲の上に出て★★★
秋めきて路傍の草の刈られけり★★★★
桑本栄太郎
新涼の風の入り来る朝の窓★★★
嵐去り歩道埋め居り蝉の殻★★★
秋雲のつぎつぎ生まる嶺の奥★★★★
秋の雲が生まれ、流れ出て来る。生まれ出るところは、嶺の奥。誰もよく知らない、嶺の奥から。ただそれだけのことが、爽やかに思える。(髙橋正子)
弓削和人
とんぼうは車窓に寄りて競うかな★★★
終電の人みな黙す秋の顔★★★★
人間の顔に季節があるかと言う問題に直面するが、秋を表す雰囲気の顔と言えば、目を開いているが、思索にふけるような、頬がやや冷たい顔となるのではないだろうか。仕事で疲れた人たちの乗る終電では、誰も話さない。疲れ切っていても眠りはしない。なにか思うような印象的な顔が並ぶ車内。(髙橋正子)
花びらのなきやコリウス秋さやか★★★
 
8月18日(4名)
小口泰與
徐に利根を眺めし下り簗★★★
利根の瀞渦白きかや赤蜻蛉★★★
茫茫の長き裾野や花木槿★★★
廣田洋一
密やかに窓打つ音や秋の雨★★★
古稀祝ふ集ひを終えて秋の雨★★★
秋雨や人影見えぬ街の角★★★
桑本栄太郎
つぎつぎと名乗り出でたる法師蝉★★★
一木を被う盛りや葛の花★★★★
合歓の実のあまた垂れ居り川の上★★★
弓削和人
飼い犬のスキップちらと秋来る★★★★
散歩に連れ出された犬か。爽やかな秋の空気が嬉しくて、スキップのような軽快な走り方ちらとする。すれ違った作者の心にもに秋が来たうれしさが読み取れる。軽い句の良さがある。(髙橋正子)
蟋蟀や家屋建てつつ雨上がり★★★
終着の駅へ向かうや秋の傘★★★
8月17日(5名)
小口泰與
啄木鳥や小沼の水面うす緑★★★
飛び鳴きの鳥や木の実へまっしぐら★★★★
群なして草地へ下りし小椋鳥★★★
廣田洋一
送り火や上る炎に合掌す★★★
送り火やしんがりに就く息子なり★★★★
桃の皮手で剝くほどに柔らかき★★★
桑本栄太郎
新涼のオールディーズやバーバーに★★★★
「新涼」が効いている。静かに流れるオールディーズに髪を刈ってもらう客も
店の主人も古き良き時代を楽しんでいる。理髪店のひと時がいい時間となっている。(髙橋正子)
白き腹みせて落蝉仰のけに★★★
大屋根の甍まぶしき残暑かな★★★
多田有花
唐突に鳴きだす夜の法師蝉★★★
盆過ぎの雨心地よく聞いている★★★★
朝の驟雨残る暑さを吹き払う★★★
弓削和人
夜食とる暮るるを忘れ読み耽り★★★
秋橋の行き交う車ゆるゆると★★★
停車いま線路の際のすすき揺れ★★★★
 
8月16日(5名)
小口泰與
渓流の波百態や秋の雲★★★
奥利根の城跡狭し鵙の贄★★★
菩提寺の点鬼簿読むや秋の声★★★
廣田洋一
星一つ窓を斜めに流れけり★★★★
日比谷公園あめりか芙蓉咲かせをり★★★
用水路細々流れ白芙蓉★★★
多田有花
なつかしき人と語らう秋の昼★★★
交差点残暑の城を見て帰る★★★
河岸段丘色づき初めし田もありぬ★★★★
「 河岸段丘 ( かがんだんきゅう ) 」とは川の流れに 沿 ( そ ) ってつくられた 階段状 ( かいだんじょう ) の地形のこと。景観は棚田のような眺めといってよいだろう。そういう特異な地形の田も稲の穂の熟れ始めた色合いが見える。(髙橋正子)
桑本栄太郎
背の高く鉄砲百合の白さかな★★★
新涼のオールディズとやバーバーに★★★
新涼の嶺の端確と定まりぬ★★★
弓削和人
枯薄落書きのこる駅を過ぎ★★★
浮洲より見渡す残暑空に溶け★★★
花束を手向けられしや秋の橋★★★
8月15日(5名)
小口泰與
とんぼうの止まりて離る舫い綱★★★★
「舫い綱」は、船を繋ぎとめておく綱のこと。その綱にとんぼが止まっていたのが、離れていった。綱は当然水の上を渡されているので、とんぼ綱に止まりながらも水の上にいて、姿が映っているかもしれない。とてもきれいな秋の情景が詠まれている。
色鳥や大売出しののぼり旗★★★
聞えきし汽笛にまざるきりぎりす(原句)
聞こえきし汽笛に混ざるぎすの声★★★★(正子添削)
多田有花
カンカンと踏切の鳴りカンナ咲く★★★
路地入れば板壁の前に秋の薔薇★★★
明け方はほっと息つく残暑かな★★★
廣田洋一
終戦日玉音聞きて空青き★★★
虜囚記録見直す父の終戦忌★★★
盆休み子供の姿少なかり★★★
桑本栄太郎
母親の田草引き居り終戦日★★★
正午には黙祷したる敗戦忌★★★
ふるさとの送り火想う盆三日★★★★
弓削和人
終戦の戒め守るひといかな★★★
竹伐って貯金箱とす星祭★★★★
星祭りの竹を伐りに行った。笹は七夕飾りに、竹幹は、貯金箱になった。子どものころの思い出か。竹の一節を貯金箱として台所の柱に掛けてあったのをどこかで見た記憶がある。昭和の暮らしが今更に思い出される句。(髙橋正子)
線香や昼下がりの盆の寺★★★
8月14日(5名)
小口泰與
八方に虫の音を聞く星の夜★★★
朝顔や日の盛んなる午後の庭★★★
秋灯下古文書辿る我が家系★★★
多田有花
散華する天女は裸足盆の寺★★★★
残暑の雲山の彼方に湧き上がる★★★
棚経にあわせて着きぬ遠路の客★★★★
廣田洋一
台風の後を追ふかに雲流れ★★★
首掛け銀杏高々伸びて空高し★★★
鶴の首水吹き上げて秋澄めり★★★★
鶴の形をしたおそらく陶器の噴水だろうが、首を上向けて水を吹き上げている。吹き上げた水が落ちて鶴の首から体を濡らしているだろう。「秋澄めり」を実感する景色だ。(髙橋正子)
桑本栄太郎
手に供花の盆供養なるバスの客★★★★
盆のバスに乗ると供花をもった客がいる。バスの中にも今日が盆であることが
示されて、はからずも乗り合わせて人たちも祖先を思う日となったのではなかろうか。(髙橋正子)
想い出づ夕映え光る盆の海★★★
いさり火の闇にきらめく盆の海★★★
弓削和人
一片のたもあみ流れ秋の川★★★
縄張りの争いなしと蜻蛉舞う★★★
ほおずきの色めくほどに軽く舞い★★★
8月13日(5名)
廣田洋一
仏前に牡丹餅供へ盂蘭盆会★★★
新盆を迎へし姪に花送る★★★★
台風の進路を見つつ予定立て★★★
小口泰與
青空へ長き裾野や秋うらら★★★★
縄文の土器の紋様秋の声★★★
朝顔や午後も開かぬ裏鬼門★★★
多田有花
残暑また始まる今日の朝日かな★★★
格子戸に秋の風鈴吊るされて★★★★
明け方の空に残りぬ盆の月★★★
桑本栄太郎
盆波や白兎海岸潮の香に★★★
迎え火の無くて夕餉を摂りにけり★★★★
故郷を離れて住んでいる家族には、祀る仏のいない家族もある。故郷にいれば迎え火を焚いたであろうに、その迎え火もなく、いつものように夕食を摂った。なにか淋しい、取り残されたような思いがある。(髙橋正子)
我らとて生御霊なり盆の夜★★★
弓削和人
通学の夕べの路や白粉花★★★★
珊瑚樹の実り塀より路へ垂れり(原句)
下の句5音でいいと思います。
珊瑚樹の実り塀より路へ垂れ★★★(正子添削)
駅通う人にかくれし白木槿★★★
8月12日(5名)
小口泰與
奥利根の秋色はやし川の風★★★
爽やかや清流渓を流れ行く★★★★
隣家よりピアノの音や秋澄みぬ★★★
廣田洋一
水引の花一直線に空へ伸び★★★★
詰まりたる白き粒見世玉蜀黍★★★
水不足隙間だらけの玉蜀黍★★★
多田有花
境内に緋メダカ泳ぐ盆の寺★★★★
盆の寺の生きとし生けるものはみんな大切にされる感じだ。緋メダカがすいすい泳いで涼を呼んでいて、明るい雰囲気がいい。(髙橋正子)
阿弥陀像のステンドグラス盂蘭盆会★★★
冷房の納骨堂へ墓参り★★★
桑本栄太郎
律儀なる初鳴き聞きぬ法師蝉★★★
初盆と云えど叶はぬ帰省かな★★★
ふるさとを異郷に想う盆供養★★★
弓削和人
秋蜂の巣跡をのこす空き家かな★★★
とんぼうは草のきっさき浮きゐたる★★★★
真鰯を焼くや潮の香想うらむ(原句)
「らむ」は推量の意味なので、「(自分が)想うのだろうか」となって、意味が不自然です。(髙橋正子)
真鰯を焼くや潮の香想いつつ★★★(正子添削)
8月11日(5名)
小口泰與
小鳥來る販売店の早き朝★★★
清流の石洗い行く渡鳥(原句)
「行く」と「渡鳥」とが切れすぎです。
渡鳥清流は石洗い行き★★★★(正子添削)
土産屋の我が名刻みし椿の実★★★
廣田洋一
山崩れのニュース流れる山の日かな★★★
白蓮に赤蓮混じる神の池★★★
手のひらの踊りしなやか風の盆★★★
多田有花
山の日の山に向かいて風が吹く★★★★
山の日は、7月20日の海の日に対して2016年から施行された新しい祝日。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する 」日とされている。何かかを祝うということではないが、山に向かって吹く風があれば、山もいきいきとしてくるように思える。(髙橋正子)
百日紅の赤いきいきと残暑かな★★★
夜もなお厳しき残暑続きおり★★★
桑本栄太郎
暁闇の寝床に聞きぬ威し銃★★★
秋暑し轍の跡のアスファルト★★★
日当たりと日影の確と残暑かな★★★
 
弓削和人
いびつなる唐辛子あり丘の園★★★
橋二つを見下す土手やカンナ咲く★★★
にぎやかな無人販売芙蓉咲く★★★

祝 自由な投句箱開設 5000日

祝 自由な投句箱開設 5000日
今日、8月8日、「自由な投句箱」のブログを開設して5000日となりました。毎日ご投句ありがとうございます。皆様の熱心さにどれだけお応えし、お役に立ったかは疑問ですが、ともかくも5000日、約13年半続いたことは、素晴らしいことと思います。あっけなく過ぎた5000日のようにも思えます。これからもよろしくお願いいたしします。
2022年8月8日
花冠発行所
髙橋信之・髙橋正子

自由な投句箱/8月1日~8月10日

※当季雑詠3句(夏の句・秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/8月1日~8月10日

8月10日(2句)
★遊行寺や秋田の踊り披露さる/廣田洋一
遊行寺は藤沢にある、踊念仏で知られる一遍上人のお寺。遊行の盆として日本三大盆踊のひとつ秋田県の「西馬音内(にしもない)盆踊り」が披露されたのだろう。盆踊りは一遍上人の踊り念仏に行きつくと言われることもあって、盆の祈りと共に楽しまれたことだろう。(髙橋正子)
★新涼のラジオ体操妻の朝/桑本栄太郎
「妻の朝」がいい。朝の家事をする妻ではなく、まず「新涼のラジオ体操」をする。さわやかな妻の姿が浮かぶ。(髙橋正子)
8月9日(2句)
★八月の石鉢にメダカ群れ泳ぐ/多田有花
八月といえば、暑さのなかにも秋の気配が感じられる時。石鉢に張られた水が涼しそうで、メダカの群れが泳いで気持ちよさそうだ。主の季語は八月。(髙橋正子)
★世田谷の蜻蛉横切る日暮れかな/友田 修
世田谷は戦後生活の街として発展してきた。昭和20年には人口30万で、竹やぶが残っていた話を聞く。今は景観を重視した街づくりがなされているようだ。「世田谷の蜻蛉」がすっと横切った。もう日暮れなのだ。懐かしい風景が目の前にふっと現れたような気持ちになる。日暮れが余計にそうさせる。(髙橋正子)
8月8日(1句)
★ぎらぎらと立秋の日が昇りけり/廣田洋一
今年は8月7日が立秋だった。いつもの年なら、暑いと言いながらも空や雲に秋の気配が感じられるのに、世情不安もあってか、不快さの混じる立秋だったと思う。「ぎらぎらと」は、立秋に相応しくないようだが、実際の実感として強く訴えて来た。(髙橋正子)
8月7日(2句)
★郭公や妻のかたえのアームチェア/小口泰與
郭公の声が聞こえるところ。誰も座っていないアームチェアの傍にいる妻。妻はもう一つの並んだアームチャアに座っているのではないかと想像する。面白い着眼。夫婦がゆっくり過ごす山の時間を思った。(髙橋正子)
★立秋や今日の献立黒板に/多田有花
「黒板」が楽しい。毎日黒板に献立が書き替えられるのだろう。楽しみな黒板である。立秋の今日は食欲が湧きそうな献立か。(髙橋正子)
8月6日(1句)
★原爆忌昼の窓辺に虫の声/多田有花
原爆忌は広島が8月6日、長崎が8月9日。このころは立秋前後であって、暑いながらも、ふとしたところに秋の気配が感じられるようになる。昼の窓辺から虫の声が聞こえ、哀愁を帯び、原爆忌を悼んでいるようにも聞こえる。(髙橋正子)
8月5日(2句)
★落葉松や夏霧生まる峡の渓/小口泰與
あっさりと情景を詠んだ句だが、句の景色がいい。繊細な落葉松のを包むように夏霧が生まれる峡の渓。秋には落葉松は金の葉を降らすことになる。(髙橋正子)
★夜店あり瞑りて過ぎる通過駅/弓削和人
通過駅は、急行の止まらない小さな町の駅。ちらと見えた町に夜店が出ている。それも疲れて眼をつむったまま通り過ぎる。眼裏には記憶のなつかしい夜店の風景が見えたことだろう。(髙橋正子)
8月4日(1句)
★髪切って胡瓜どっさり冷や汁に/川名ますみ
冷や汁はいろんな具で栄養が補給され、食欲が落ちる夏に冷たい汁を飯に掛けた料理はさっぱりとうれしい。髪を切ってさぱっりし、胡瓜をどっさり入れて爽やかな匂いの冷や汁にさらに元気が湧くというもの。(髙橋正子)
8月3日(1句)
★新しい朝を連れくる蝉の声/多田有花
夏の朝は蝉の声からはじまるが、日々くる朝を新しいと思えば、何事も新鮮で、爽やかで、生き生きと五感が感じ取ってくれる。蝉の声を聞いて、新しい朝を連れて来てくれたのだと感じた潔い心持ちがいい。(髙橋正子)
8月2日(1句)
★黒揚羽嬉々として來る水溜/小口泰與
黒揚羽を見かけるといかにも夏の蝶という固定的な印象をもつが、この黒揚羽は、心躍らせて、「嬉々として」水溜にやって来て水を飲んでいるのだ。そんな揚羽を見ると嬉しいではないか。(髙橋正子)
8月1日(1句)
★隣家まで水打つしぶき懐かしき/弓削和人
冷房の普及しない時代、打水はあちこちで見られた。最近はまた打水のよさが見直され、打水された店や個人の家もある。勢いよく水を打って隣家までのこともある。「隣家まで」に、水の勢いと涼しさが感じられる。(髙橋正子)