4月1日~4月10日

4月10日(4名)
小口泰與
うららかや俳句とカメラ我が生計★★★
チューリップ片花びらの風の中★★★
雨上がりばらの蕾のほこほこと★★★
廣田洋一
ドラマ一つ見終えて気づく日永かな★★★
句座終えてお茶会となる日永かな★★★
桜貝今日も探して由比ヶ浜★★★★
桑本栄太郎
天空は風のあるらし春の雲★★★
バス道の並木通りや躑躅燃ゆ★★★
風光るバスの車窓のまぶしけり
「まぶしけり」は間違いです。「まぶしかりけり」とするか、「まぶしかり」とします。
弓削和人
水芭蕉昼下りから森静か★★★
春風や湖やわらかに瑠璃の波★★★
ぜんまいの渦巻きゆるまず湖の風★★★★
4月9日(5名)
小口泰與
山里のせせらぎ芹を育てそめ★★★
田畑の燕やせちに反転す★★★
庭も狭に百本の薔薇芽吹きおり★★★
多田有花
花過ぎの南へ向かう旅支度★★★★
イカタコもクラゲも見るや春の夢★★★
鶯の夜明け知らせる声がする★★★
桑本栄太郎
オルガンの音色戸外へ復活祭★★★★
就労の支援施設や花みづき★★★
うぐいすの頻りに誘う藪の中★★★
廣田洋一
桜散る供養の太鼓鳴りにけり★★★
藤の房池に映りて香り立ち★★★
のどけしや参道埋める骨董市★★★
川名ますみ
病牀に今日も長閑という遊び★★★★
曇天に泡立つようにさくら咲く★★★
花冷えや一指を象牙の鍵盤に★★★★
4月8日(5名)
小口泰與
背ぐくまる釣り人の手に春の魚★★★
朝寝して鴉の声に起こさるる★★★★
一望の背向の丘の落花かな★★★
廣田洋一
あちらかと思へばこちら鶯や★★★
松の芯ぴんと伸びたる青き空★★★★
真っ黒な畑に緑杉菜かな★★★
多田有花
足首に音叉当てられ散る桜★★★
風雨再び花完全に終わりけり★★★
ボサノバを部屋に流して春嵐★★★
桑本栄太郎
春月の朝日に沈む西の空★★★
虚子の忌やまた訪ねたき文学館★★★
愛らしき図柄玉子や復活祭★★★★
弓削和人
花冷えやおもわず遠く歩きたり★★★★
くまざさや家移りたる春の苑★★★
鳥ぐもり子の一人暮らしの事始★★★
4月7日(5名)
小口泰與
上枝にて二回三回鳥交る★★★
すべからず山は雪解や鳥の声★★★★
南面は蒼黒きひだ雪解山★★★
弓削和人
紅梅やわびしき納屋に沿いて咲き★★★
木蓮の白く吹かれつ時雨駅★★★
盛岡や朝寝うつつに旅立ちぬ★★★★
多田有花
清明の午後より雨の降り出しぬ★★★
さっぱりと花終わらせる雨の降る★★★★
たんぽぽやコンクリートのひとすみに★★★
廣田洋一
連凧を競ひて揚げる河川敷★★★
新築のビルの狭庭に杉菜かな★★★
アスファルト小さき割れ目に杉菜噴く★★★
桑本栄太郎
淋しさの何時も独りや放哉忌★★★
放れては又寄り添いぬ花いかだ★★★
おちこちの野辺の明かりや菜種梅雨★★★
4月6日(4名)
小口泰與
咲きみちて落花急かせる野鳥かな★★★
花辛夷獣穴の笹倒れおり★★★★
スイートピーそこはかとなくにおうかな★★★
廣田洋一
清明や入念に拭く古机★★★★
入口に敷き詰められし芝桜★★★
雑木林鳥の巣箱の賑はへり★★★
桑本栄太郎
満天星の花の小粒や鈴なりに★★★
くもり来て三つ葉つつじの雨催い★★★★
期日前投票終わり春の雨★★★
弓削和人
雨だれに艶めく桜咲きにけり★★★
盛岡や新幹線は花を越ゆ★★★★
曇り来し湖畔の空き家蕗の薹★★★
4月5日(5名)
小口泰與
豆ほどの畦の蛙や鳥の声★★★
雪柳素直に咲いて山の風★★★★
日輪を跳ね返しおり牡丹の芽★★★
多田有花
花を見てのち天神様に参る★★★
花吹雪高層階まで届きおり★★★★
山桜のともしび山より消えてゆく★★★
廣田洋一
清明の湯煙白し露天風呂★★★★
犬ふぐり玄関前に人を待つ★★★
道の端燃え立つ如き躑躅かな★★★
桑本栄太郎
清明の朝より曇り雨催い★★★
道の辺の片方(かたえ)に淡き花の屑★★★
山吹の堰水囃す黄色かな★★★★
弓削和人
遠山につづく畦道物芽かな★★★
春耕や湖面に映ゆる夕の空★★★
春日を惜しんで急ぐ家路かな★★★
4月4日(6名)
小口泰與
山里のお玉杓子のすだきける★★★
白壁へすじちがいに射す春日かな★★★
渓音に散り込んでくる落花かな★★★★
廣田洋一
桃咲きて歓声上げる女の児★★★
校庭を駆けまわる子ら桜散る★★★
丸き球少し欠けたり八重桜★★★
多田有花
桜咲く彼方に見える播磨灘★★★
穏やかな風あり花びらちらほらと★★★
新幹線満開の花のむこうから★★★★
桑本栄太郎
送電線峰より里へ花の雲★★★★
植込みの紅花金縷梅ホテルまえ★★★
山吹の花の枝垂れや川べりに★★★
川名ますみ
花曇青の自転車赤のバギー★★★★
花明り動物園の格子越し★★★
糊利きし白衣四月の病院に★★★★
弓削和人
若草やひやりと風の吹きすさぶ★★★★
湖を望む畔なり風光る★★★
連なりぬ/真白き山や/蕗の薹(原句)
句が3つに切れています(二段切れ)。これは避けます。
連なれる真白き山や 蕗の薹★★★
「連なれる(連体形)」にして、「(真白き)山(体言」に繋げます。(髙橋正子)
4月3日(5名)
小口泰與
頬白や裾廻の径を猫車★★★
坂道を乱舞の落花夕間暮れ★★★
小綬鶏やシェアハウスなる恋の家★★★
廣田洋一
虚子の忌を忘れず開く紫木蓮★★★
玄関前ぼってりと咲く桃の花★★★
遅き日やレッスン終えて茶を喫す★★★
多田有花
日笠山へ花の弁当提げてゆく★★★★
花見かな塩で栄えし町抜けて★★★
土筆煮てきたと広げる花の下★★★★
桑本栄太郎
花冷えや風に舞いたる花の屑★★★
山吹の七重八重なり植込みに★★★
ひと風の花の吹雪に立ちつくす★★★★
弓削和人
葉柄をかくす濃き葉や座禅草★★★
葉柄をかくす濃き葉座禅草(後)

汀線の紫みやこ忘れかな★★★
ぬくし土つくしんぼうの起きはじめ★★★

4月2日(4名)
小口泰與
飛んで来て枝から枝へ松毟鳥★★★
畦道に忽と鋭声や雉の声★★★
春の丘肩へ舞い下る野鳥かな★★★
廣田洋一
茜色さめ行く空に朝桜★★★
軽やかな足音聞きつ朝桜★★★★
白にも濃淡ありと花辛夷★★★
桑本栄太郎
何処までも赤き垣根や新芽立つ★★★
大正の母想い居り紫木蓮★★★
花蘇芳炎と燃ゆる垣根かな★★★
多田有花
遅咲きの梅も咲きおり土手の道★★★
公園を満開の花が取り囲む★★★
シーソーの上に落花始まるか★★★★
4月1日(4名)
小口泰與
一斉に頬白追いしカメラマン★★★
晴鷽や墓の仏花に来たりける★★★
河原鶸赤城の風に身を丸め★★★★
友田修
寝転びて見る青空と桜かな★★★
見おろせば白くたなびく桜雲(原句)
「桜雲」は普通「おううん」と読み、「さくらぐも」と読みません。五音にしたければ、「花の雲」を使う場合がほとんどです。
見おろせば白くたなびく花の雲★★★(正子添削)
風に舞う桜を追いて笑う子ら★★★★
桑本栄太郎
仰のけに蜜を吸いをり春の鵯★★★
道の辺の脇に小さくすみれ咲く★★★
夕日透き更に色濃くにはざくら★★★
多田有花
花時や陽のあるうちに湯に入りぬ★★★
チューリップいつも並んで咲いている★★★★
桜淡し大宇宙も素粒子も★★★

自由な投句箱/3月21日~3月31日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/3月21日~3月31日

3月31日(1句)
★高窓に囀あふれ処置室へ/川名ますみ
処置室へ行く途中に高い窓がある。その明るい窓から小鳥の囀りが降るように聞こえる。処置室へいくわずかな廊下にこんなにことがあって、うれしくなる。
次の句
「囀も陽も高窓を零れくる//川名ますみ」
も★印4つで良い句ですが、なぜ「高窓に囀あふれ処置室へ/川名ますみ」
選んだ理由は、この句のほうが、作者自身に近いからです。自身に近ければ、それだけ、独自の、個性のある句になるはずで、結局、俳句は自分のためのものだからです。(髙橋正子)
3月30日(2句)
★ふるさとは朝日に匂う山桜/多田有花
校歌にありそうなふるさと。朝日が差せば山桜が匂う。これで十分いい。(髙橋正子)
★菜の花を広場に咲かす五年生/川名ますみ
ずいぶん大人びてきたが、かわいい五年生。菜の花を広場いっぱいに咲かせるために、みんなで協力して世話をした。見事咲いて、もうすぐ、最上級生。(髙橋正子)
3月29日(2句)
★残る鴨古き橋桁のうえに/多田有花
「残る鴨」と「古き橋桁」の取り合せが、蕪村の俳画のような印象。錆びた感じもするし、滑稽さもある。(髙橋正子)
★蒲公英やおかっぱ頭逝きにけり/廣田洋一
多くを語っていない、さらりとした表現ながら、寄り添う心情の深さ、女の子の可愛さが感じられる。(髙橋正子)
3月28日(1句)
★朝霧の晴れ行くなかより山桜/多田有花
朝は山全体を霧が覆っていた。霧が晴れるにつれて、山桜の淡い桜色が霧のベールを剥されて現れた。山桜だからこそよい、まさに日本の風景。(髙橋正子)
3月27日(1句)
★金閣寺目指すリュックや春休み/桑本栄太郎
小学校高学年か中学生ぐらいの、自由に動けるようになった子供だろう。春休みになって、リュックを背負い、勇んで名所金閣寺を目指す。「いってらっしゃい。」と送り出す作者も嬉しそうだ。(髙橋正子)
3月26日
該当句無し
(あと一歩で、秀句となる惜しい句があります。的の絞り方の問題です。髙橋正子)
3月25日(1句)
★エレベーター降りてピンクやにはざくら/桑本栄太郎
エレベターを降り庭に出ると、ピンクの桜が目に迫るように咲いていた。咲き誇るピンクの「にはざくら」に期待を上回る驚き。(髙橋正子)
3月24日(1句)
★雨あがる夜明け盛んに雉の声/多田有花
春は雉の繁殖期。縄張りを示して雄の雉が「ケーンケーンと」鳴く声は鋭い。山が近くにあり、雨が上がると盛んに鳴くのだが、雨上がりの夜明けだけに、その声に鋭さも、わびしさも混じる。(髙橋正子)
3月23日(1句)
★雨の朝そめいよしのの開き初め/多田有花
朝の雨の透明感と、開き初めのそめいよしの透明感が相まって、清潔感のあるきれいな句となっているのがいい。(髙橋正子)
3月22日(1句)
★辛夷咲く棚田へ水を張りにける/小口泰與
辛夷が咲くころ、ちょうど田植の準備が始まる。山の緑に白く咲く辛夷は棚田を飾り、張られゆく水に姿を映しいるのだろう。農作業と辛夷の関係は深い。(髙橋正子)
3月21日(1句)
★お彼岸のふるさと遠く祈りけり/桑本栄太郎
よい内容の句で、だれにも分かる心情ながら、句にリズム感、イメージの強さが足りない感じがします。インパクトのある表現にするためには、遠景と近景、大と小などを対比させたり、切れを入れたりします。技巧に頼りすぎるのはよくないのですが、ある程度の工夫は必要です。(髙橋正子)
お彼岸のふるさと遠し祈りけり(正子添削1)
お彼岸やふるさと遠く祈りけり(正子添削2)

3月21日~3月31日

3月31日(6名)
川名ますみ
花の宴福祉車両の傍に待ち★★★
囀や高窓あふれ処置室へ(原句)
①「囀の高窓あふれ」、または、②「囀や高窓にあふれ」となるのが、文法てきに良いと思いますが、⓶にした場合中七が8音になって説明的になりますので、工夫が必要です。(髙橋正子)。
高窓に囀あふれ処置室へ★★★★(正子添削)
囀も陽も高窓を零れくる★★★★
小口泰與
釣人の顔に纏いし虻の声★★★(原句)
釣人の顔に纏える虻の声(添削)
山鳥の鋭声と羽音聞えける★★★
長き日や棚に沿いて馬駆ける(原句)
「棚」は、「柵」のミスタイプでしょうか。(髙橋正子)
弓削和人
落ち桜水輪一重になりにけり★★★(原句)
「落ち桜」は桜の花一花が花ごと落ちている意味でしょうか。きれな情景で、着眼点もいいです。ただ、「落椿」からの類そうで「落ち桜」とするのは、無理があります。ここが直れば、★4つです。(髙橋正子)
こうこうとおのがひかるや夜の桜★★★
にぎやかに露店開くや花盛り★★★
多田有花
きらきらと花咲く山の下流れ★★★
通学す桜の下を自転車で★★★★
ベランダで洗濯しつつお花見を★★★
桑本栄太郎
散るべきを知りて色づく花あはれ★★★
夕日透き更に色濃くにはざくら★★★
吾が影の夕日そびらや三月尽★★★
廣田洋一
選挙間近春塵かぶる掲示板★★★
一本の桜のために池廻る★★★
青空に枝を張りたる桜かな★★★
3月30日(5名)
小口泰與
花曇り机辺の堆書そのままに★★★
頬白や秀つ枝下枝の芽ぐみける★★★★
蒼天やばらの新芽のふふみける★★★
多田有花
自転車を押してふたりは花の下★★★
ふるさとは朝日に匂う山桜★★★★
白壁の庭に咲きけり紫木蓮★★★
川名ますみ
菜の花を広場に咲かす五年生★★★★
まるまると木瓜の蕾の寄り添いぬ★★★
チューリップ手首を反らすごとひらく★★★
廣田洋一
かぐわしき桜並木や夕まぐれ★★★
桜散る順番待ちの滑り台★★★★
枝先に花一輪や枝垂桜★★★
桑本栄太郎
中腹に忽とあらはる花の雲★★★
満開となりし川辺や花の昼★★★★
西山の嶺の茜や春の宵★★★
3月29日(4名)
小口泰與
春の森羽音密かに吾の肩へ★★★
仲春の鳥語すずろに清清し★★★
春山路野鳥次つぎ手の平へ★★★★
多田有花
夜の闇去りゆき浮かぶ山桜★★★
誰が植えしスノーフレーク土手に咲く★★★
残る鴨古き橋桁のうえに★★★★
桑本栄太郎
舞いながら時には縺れ蝶の昼★★★
川べりの家族憩いぬ花の昼★★★★
散るべきを知らずや誇る花あはれ★★★
廣田洋一
たんぽぽの絮白々と風を待つ★★★
蒲公英やおかっぱ頭逝きにけり★★★★
ふんわりと桜並木の拡がりぬ★★★
3月28日(5名)
小口泰與
凄まじや野鳥争う春の森★★★
春光や柾目通りし床柱★★★
春の森右往左往の小鳥どち★★★
廣田洋一
霾るや車の窓のうっすらと★★★
街角のしらじら浮かぶ夜桜よ★★★
点々と菫かたまり遊歩道★★★
多田有花
朝霧の晴れ行くなかより山桜★★★★
初燕ときおり日差し降る中へ★★★
やまざくら数多彩る増位山★★★
桑本栄太郎
子供らの声まだ耳に春やすみ★★★
春休み終えて去ぬる子愛(かな)しかり★★★
夕日透くうすきみどりや木の芽張る★★★
弓削和人
やわらかな土に落ちたり大椿★★★
「やわらかな土に落ちたり」はとてもいいです。(髙橋正子)
たんぽぽや浅瀬近くに定め咲く★★★
薺花土塀を圧して咲きにけり★★★
3月27日(5名)
小口泰與
霾や洪積台地鳥の声★★★
山径の春の山雀手のひらへ★★★★
山雀は人懐っこい留鳥で、春の季節感は、山雀よりも、むしろ山径(春山路など)にあるのではないでしょうか。それが表現できれば、申し分ないと思います。(髙橋正子)
仲春の紺青の天鳶の笛★★★
廣田洋一
ざぶざぶと川を渡りて芹摘めり★★★★
積上げし本にうつすら春の塵★★★
選挙間近春塵被る掲示板★★★
多田有花
風の音聞きつつ眠る桜時★★★★
山桜煙らせ雨の降り続く★★★
鶯に夜明けの珈琲の香り★★★
桑本栄太郎
金閣寺目指すリュックや春休み★★★★
北山の花冷え通り金閣寺★★★
花粉症メガネ異形や次男坊★★★
友田 修
黒々と畝盛り上がる春の畑★★★
三日月を雲間に見ゆる春の宵(原句)
「見ゆ(連体形は見ゆる)」は自動詞なので、「三日月を・・見ゆる・・」となりません。「見ゆ」には自発的に、おのずとの意味があります。または、受け身の意味にも使われます。
三日月の雲間に見ゆる春の宵(添削1)(三日月が雲間に(自然と)見える)
「見る」(他動詞)を使うなら、
三日月を雲間に見るや春の宵(添削2)(三日月を雲間に(意識して)見る)
になります。
文語「見ゆ」「見る」の違いを辞書でご確認ください。(髙橋正子)
夜桜の散りゆく様に立ち止まる(原句)
原句は詠もうとすれば、捉えどころに困る場面です。つい説明的、散文的になります。表現にほんの少し工夫が要ります。(髙橋正子)
立ち止まるわが目に散れり夜の桜(添削例)
3月26日(3名)
小口泰與
浅間嶺の黒き山襞鳥交る★★★
手の餌に飛び來る春の山雀よ★★★
庭の蝶今日は見ずして山の風★★★
廣田洋一
小諸なる虚子遊歩道菫咲く★★★
川面へと枝を垂れたる桜かな★★★
零れたる花弁浮かべ庭水★★★潦
下五「庭水」はなんと読むのでしょうか。(髙橋正子)
「潦」は日本語変換「あ」を右クリックし、IMEパッドから手書きなどで、探すことができます。ご参考までに。(髙橋正子)
桑本栄太郎
昇降機降りて庭なるこうめ咲く★★★
吾が思い君につたえん天狼忌★★★
雨しととど降れば並木の花万朶(原句)
「降れば・・・花万朶」は論理的に不自然です。(髙橋正子)
雨しとど降るや並木の花万朶(添削1)
雨しとど降りて並木の花万朶(添削2)
 
3月25日(4名)
小口泰與
眼間の皴みてやまず雪解山★★★
春昼や焼き饅頭の味噌の香よ★★★
春昼や焼き饅頭の味噌香り(添削例)
「春昼や」の「や」は切れ字で、ここに詠嘆があります。「香よ」の「よ」は感嘆・詠嘆の意味がり、切れ字の働きをしています。二つ使うのは避けたいです。(髙橋正子)
青空へ白木蓮の咲きほこり★★★
廣田洋一
小諸なる城跡ゆかし菫かな★★★
石垣の隙間に伸びる菫かな★★★
人差し指撫でて確かめ春の塵★★★
桑本栄太郎
やはらかな雨が降り居り木の芽吹く★★★
孫たちは「U・S・J」へ春やすみ★★★
エレベーター降りてピンクやにはざくら★★★★
弓削和人
藪陰に雪の名残や朝夕と★★★
春寒や白き連山雄々と(原句)
「雄々と」は、なんと読みますか。「ゆうゆうと」なら、「悠々と」の字を当てます。あるいは「雄々しい」(おおしい)の意味ですか。(髙橋正子)
春寒や白き連山雄々しくも(添削例)
鳥雲のほかにさざ波のこりけり★★★
3月24日(3名)
小口泰與
若鮎や峡の岩間の轟轟と★★★
「岩間の轟轟」は舌足らずです。峡を省いてそれに代わる言葉をいれてください。(髙橋正子)
若鮎や岩間の水の轟轟と(添削例)
引鴨や沼を統ぶるる山の風★★★
「統ぶ」は、バ行下二段活用の動詞なので、体言の「山の風」を修飾するときは、「統ぶる山の風」となります。
5・7・5に整えるなら、「たり」を加えて、
引鴨や沼を統べたる山の風(添削例)
「統べ」(統ぶの連用形)+たる(たりの連体形)+山の風(体言(名詞))
動かざるマッサージチェア目借時★★★
多田有花
雨あがる夜明け盛んに雉の声★★★★
週末は雨の予報や花曇る★★★
フィットネスアプリを入れて春の野へ★★★
桑本栄太郎
降りしきる雨に崩るる白木蓮★★★
晴れいてもまた降りしきる菜種梅雨★★★
さみどりのぽつぽつ競う木の芽雨
競うのは、「木の芽雨」ですか。(髙橋正子)
3月23日(4名)
小口泰與
はくれんや夕暮のワイシャツの皴★★★
ふらここや赤城の風を連れて來し★★★
「連れて来し」の擬人法が思わせぶりです。そのままを描写(写生)すると、一段上の句になると思います。(髙橋正子)
ふらここや赤城の風の吹き抜けし(泰與改作)
私は、改作のこちらの句が好きです。景色が想像しやすくなり、ワンランク上の句になったと思います。(髙橋正子)
喧騒と言うほかは無し猫の恋★★★
廣田洋一
蓬摘み今日の団子に味を付け★★★
草摘むや和食恋しき異国の野★★★
花散らす雨の降りたる北の丸★★★
多田有花
雨の朝そめいよしのの開き初め★★★★
春暖の部屋広々と電話撤去★★★
電気契約新しくして春なかば★★★
桑本栄太郎
春雨のワイパー頻りバスの窓★★★
白れんの雨のしとどに散りにけり(原句)
「雨の」の「の」は主格(主語を表す)。したがって、「雨がしとどに散る」意味になります。添削句の「や・・けり」の切れ字の使い方に問題がないわけではありませんが、許容されいていますので、添削のようにしました。(髙橋正子)
白れんに雨やしとどに散りにけり★★★(正子添削)
雨に咲く桜並木や花あはれ★★★
「雨に咲く桜並木」は「あはれ」の風情で、「花あはれ」は、「雨に咲く桜並木」の説明になっています。(髙橋正子)
3月22日(4名)
小口泰與
辛夷咲く棚田へ水を張りにける★★★★
解禁の鮎を描きし道しるべ★★★
蟻出でて芝の森へとさまよえり★★★
廣田洋一
道の端色濃く群れて花菫★★★
ワイパーを動かし続け春の塵★★★
玄関前パタパタ落とす春の塵★★★
桑本栄太郎
春興の朝よりテレビ”オオタニサン”★★★
白れんの傷つきながら仕舞いけり★★★
推敲の間にも虚ろや目借時★★★
多田有花
春分やピアノの音に静かな雨★★★
春分に集いて食べる晩御飯★★★
窓開けて昼餉の支度暖かし★★★
3月21日(4名)
小口泰與
湖の波二重三重なり帰る鴨★★★
「二重三重」は常套句なので、ここにご自分の言葉で見た(観察・発見)ことを言い表すと「帰る鴨」を惜しむさびしさが出るはずです。(髙橋正子)
「湖の波風に逆らい帰る鴨」(泰與改作)
「二重三重なり」より、作者の心情や心の動きが感じられるようになりました。読者にとって、作者がより身近に感じられます。感情や心情の動きは、言葉のリズムによく表れます。自分の言葉で表現するとは、自分のリズムで表現することです。(髙橋正子)
噴き上がる薔薇の赤芽や春夕べ★★★
ワイシャツの一日の皴暮遅し★★★
廣田洋一
観音像を間に挟み桜かな★★★
正面に白富士見つつ彼岸詣★★★
咲満ちし彼岸桜の菩提寺かな(原句)
「・・かな」までがメリハリなく続いているのが惜しいです。(髙橋正子)
菩提寺の彼岸桜や咲き満ちし(添削例)★★★★
桑本栄太郎
お彼岸のふるさと遠く祈りけり★★★★
お彼岸のふるさと遠し祈りけり(正子添削1)
お彼岸やふるさと遠く祈りけり(正子添削2)
切れを入れる方法で添削しました。
孫来たる準備に追われ春うらら
「孫来たる(孫来たり )」は、すでに孫が来ている意味です。(髙橋正子)
孫の来る準備に追われ春うらら★★★(正子添削)
しずく垂れ/花の明かりや/山茱萸黄(原句)
二か所で切れています。つまり、句が整理されていないので、このような切れ方になってしまいます。「しずく垂れ」、「花の明かり」、「山茱萸黄」のどれを一番言いたいのでしょうか。(髙橋正子)
弓削和人
苔道を照らす夕べの朧かな★★★
田沢湖に夕霞して鳥立ちぬ★★★
鳥曇湖底の瑠璃の濃しきかな(原句)
鳥曇と湖の瑠璃色に着目したのは良いですね。俳句では多くは言えませんので、素直な表現を心がけるのがベストと思います。
「湖底」は「湖の底」です。「濃しきかな」の「濃しき」はまちがいです。「濃し」の連体形は「濃き」です。(髙橋正子)

俳句の「詠み手」を「作者」という言い方について

俳句を詠んだ人「詠み手」「詠者」をコメントなどで私が「作者」と表現しているのに、多少違和感を覚えている方もいらっしゃると思います。
私がコメントで「作者」を使うのは、例えば、水原秋櫻子がその鑑賞・批評文で使っているので、それに倣っています。現代俳句は多様な考えで作句されています。「俳句を詠む」とは言いますが、「詠む」が必ずしも「詠ずる」に限らないので「作者」が妥当ではないかと思っています。このような理由で現在「作者」を使っています。
2023年3月20日
髙橋正子

自由な投句箱/3月11日~3月20日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/3月11日~3月20日

3月20日(1句)
★「一樹の高く」に、やまざくらの姿が見えて、ここが作者の捉えどころとなっている。よほど大樹の山桜であろう。満開の姿に風格が見える。(髙橋正子)
3月19日(2句)
★芽柳のすらりかがやく雨の中/小口泰與
芽柳の枝がすらりと垂れている。それに雨が降り注いで輝いている景色。「すらりかがやく」に芽柳の繊細な息吹がよく出ている。(髙橋正子)
★レガッタや土手まで届く舵手の声/廣田洋一
力強くオールを揃え水を漕ぐレガッタは爽やかな若さの象徴。船首で声を上げる舵手の声がひときわたくましい。(髙橋正子)
3月18日(1句)
★囀りや湖面につづく遠き山/弓削和人
「湖面につづく」が、広々と静かな湖面を想像させてくれる。その湖面に一続きの遠い山が作者の眼差しの遠さを示している。囀りがより近く耳に届く。(髙橋正子)
3月17日(1句)
★はくれんの白きはばたき校舎前/多田有花
「校舎前」がすこしぶっきら棒な感じだが、少年のような良さがある。はくれんは今も飛び発ちそうに咲いている。はくれんがはばたく、飛びそうな、などは良く見られる発想だが、「校舎」がそれを救っている。(髙橋正子)
3月16日(1句)
★山風に揺られゆられし蜆蝶/小口泰與
小さなうすむらさきの蜆蝶が飛ぶ姿を見る眼差しに愛情がある。荒い山風が吹けば、小さな蜆蝶は揺られゆられて、なかなか止まれない。(髙橋正子)
3月15日(1句)
★菜の花やビニールハウスの眩しかり/桑本栄太郎
菜の花とビニールハウスは春の田園の風景として決まって来た。黄色い菜の花の光と、白いビニールハウスの反射光がともに目に眩しい。(髙橋正子)
3月14日(1句)
★芽柳や仁徳天皇陵に沿い/多田有花
仁徳天皇陵と芽柳の取り合せで成り立っているが、芽柳にも風格が見えてゆったりとした句だ。(髙橋正子)
3月13日(1句)
★仲春の音追うおとや丘の鐘/小口泰與
丘に鳴る鐘の音が始めの音を次の音が追って、聞こえてくる。春も半ばのうららかな空。(髙橋正子)
3月12日(1句)
★木の芽晴利根の流れの轟轟と/小口泰與
ぞくぞくと木の芽が芽吹くころ、よく晴れた利根川は、雪解け水で水量が増えて轟轟と音を立てて流れている。坂東太郎の名に相応しい利根川の流れである。(髙橋正子)
3月11日(1句)
★風光るみんなで集う日は最後/多田有花
卒業の日のことであろうか。みんなで集まるのは今日が最後。その日は穏やかな日和で風がきらきらと光っていた。一握りの哀愁もある、最後の集い。その言い難い気持ちが表れた句。(髙橋正子)

3月11日~3月20日

3月20日(4名)
小口泰與
次つぎに河津桜へ野鳥かな★★★
百本のばらの新芽のほころびし★★★
木木の芽や野鳥帰心の沼真中★★★
廣田洋一
園児らの朝の散歩や初蝶来★★★
その辺りあでやかに染め陽光桜★★★
噌漬けの甘き香りや鰆焼く★★★
多田有花
買物はスマホ清算彼岸かな★★★
やまざくら一樹の高く満開に★★★★
「一樹の高く」に、やまざくらの姿が見えて、ここが作者の捉えどころとなっている。よほど大樹の山桜であろう。満開のすがたに風格が見える。(髙橋正子)
峰々に日毎桜の開きゆく★★★
桑本栄太郎
うぐいすの団地の庭にホーホケキョ★★★
植込みの風の過ぎるや連翹黄★★★
ときおりの風に蹲踞や雪やなぎ★★★
3月19日(4名)
小口泰與
次つぎに河津桜へ野鳥かな★★★
河津桜や野鳥に集うカメラマン★★★
芽柳のすらりかがやく雨の中★★★★
廣田洋一
レガッタや土手まで届く舵手の声★★★★
レガッタへ声援送る風さやか★★★
入り彼岸運転免許更新す★★★
多田有花
駅前の小さき古墳春の午後★★★
プリンターWi-Fiに繋ぐ入り彼岸
彼岸太郎スマホセットアップ完了★★★
桑本栄太郎
目覚め居て父の夢見を入彼岸★★★
コンクリートの小さき割目に菫咲く★★★
乙女らの傷つきやすし白もくれん★★★
3月18日(5名)
小口泰與
連翹と土佐水木黄を競いけり★★★
木の芽山手の餌に来る野鳥かな★★★
次つぎに下枝秀つ枝に春めじろ★★★
廣田洋一
ひらひらと花弁舞へり白木蓮★★★
庭の隅ひそと群れたる菫かな★★★
山茱萸の花駆け回る子ら照らしをり★★★
多田有花
丹精の椿の鉢が並びおり★★★
花々に囲まれ桃源台の春★★★
山桜いつもの木より咲き初めし★★★★
桑本栄太郎
雨上がり滴垂れ居り馬酔木かな★★★
咲き募ることの止まらず冴返る★★★
音もなく視界ぬれたる春しぐれ★★★
弓削和人
湖畔過ぐ坂をあがて蕗の薹★★★
囀りや湖面につづく遠き山★★★★
春暁や村の農具のいきいきと★★★
3月17日(4名)
小口泰與
枝垂れ梅咲くや秀つ枝の鳥の糞★★★
連翹や園児の帽子同じ色★★★
木蓮やテレビアンテナ同じ向き★★★
廣田洋一
参道の入口飾る桜かな★★★
桜咲く咲かざる枝を切り落とし★★★
その辺り紫に染め諸葛菜★★★
桑本栄太郎
春暁の夢のつづくや途切れなし★★★
咲き募ること止められず冴返る★★★
傷つきて花の仕舞いや白木蓮★★★
多田有花
はくれんの白きはばたき校舎前★★★★
春の日に前撮りをするふたりかな★★★
たいりょうざくら桜鯛の花の色★★★
3月16日(4名)
小口泰與
山国や千里翔け居る蝶の顔★★★
山風に揺られゆられし蜆蝶★★★★
羽閉じて蜜を吸いたる黄蝶かな★★★
多田有花
ぽつぽつと枝垂桜も咲き初めし★★★
盆栽の椿の幹のうねりかな★★★
雛飾る寝殿越しに光あり★★★
廣田洋一
街角の桜が咲きて景となり★★★★
春暁の足音速く新聞来る★★★
丈高き椿の花の零れけり★★★
桑本栄太郎
アマゾンの不審メールや春愁ふ★★★
散り敷けば更に華やぐ落つばき★★★
春宵の子等の嬌声庭に満つ★★★
3月15日(3名)
小口泰與
猫車積みし三月大根を(原句)
「積みし」の「し」が問題です。「し」は、過去の助動詞「き」の連体形で「三月大根」を修飾しています。
猫車に積みぬ三月大根を★★★(正子添削)
叢雲を割りて山越ゆ帰雁かな★★★
蜜蜂ややつとこさあと巣に戻り★★★
多田有花
春風のなかの陪塚ひとつひとつ★★★★
拝所より大仙古墳木の芽時★★★
お弁当はや満開の花の下★★★
桑本栄太郎
山茱萸の灯かりとなりぬ狭庭かな★★★
菜の花やビニールハウスの眩しかり★★★★
房しだれうす紫や馬酔木咲く★★★
3月14日(3名)
小口泰與
ばら赤芽風に刷かれし禽の声★★★
彩雲の浅間目指せる帰雁かな★★★
眼間の浅間煤けて雪解かな★★★
多田有花
はくれんの穢れなき白賜りぬ★★★
庭先の八重紅梅を愛で歩く★★★
芽柳や仁徳天皇陵に沿い★★★★
仁徳天皇陵と芽柳の取り合せで成り立っているが、芽柳にも風格が見えてゆったりとした句だ。(髙橋正子)
桑本栄太郎
春風や茶髪なびかせハーレーに★★★
午後よりの日射し明るく白木蓮★★★★
春宵の嶺の茜の日暮れかな★★★
3月13日(3名)
小口泰與
雲抜ける奇岩の山や鳥渡る★★★
つんつんと天を支えしつくつくし★★★
仲春の音追うおとや丘の鐘★★★★
丘に鳴る鐘の音が始めの音を次の音が追って、聞こえてくる。春も半ばのうららかな空。(髙橋正子)
廣田洋一
切りてなほ身のふんわりと鰆かな★★★
アフリカの空の青さや丁字の香★★★★
握りこぶし開くが如き白木蓮★★★
多田有花
<堺市役所展望ロビー二句>
見渡せば大仙古墳春霞★★★
春景色望むロビーにゴルゴ13★★★
とさみずき咲かせる古き街道筋★★★
3月12日(4名)
小口泰與
朝の日の沼へ直射や百千鳥★★★
ふらここや朝の訓示のまた同じ★★★
木の芽晴利根の流れの轟轟と★★★★
ぞくぞくと木の芽が芽吹くころ、よく晴れた利根川は、雪解け水で水量が増えて轟轟と音を立てて流れている。坂東太郎の名に相応しい利根川の流れである。(髙橋正子)
廣田洋一
忘れ得ぬ津軽の湖や蜆汁★★★
うらうらと空地の草のそよぎ居り★★★
卒業子袴の帯を締め直し★★★
桑本栄太郎
U・F・の斯くやと想う土佐みづき★★★
<事故現場>
”花さんの花壇”と云うや春愁う★★★
うぐいすの初音なれども訛りけり★★★
弓削和人
春の湖砂山くずれ並びおり★★★
春眠や石投げ入れし夕の湖★★★
3月11日(4名)
小口泰與
光源は日の出や蜥蜴穴を出づ★★★
はくれんや棚田へ流る風の香よ★★★
風に乗る鳶の鋭声や畑鋤く★★★
廣田洋一
鳴声の鶯と知る朝かな★★★
啓蟄や連れ立ちくぐる赤提灯★★★
春泥飛ばし空回りする車輪かな★★★
多田有花
風光るみんなで集う日は最後★★★★
卒業の日のことであろうか。みんなで集まるのは今日が最後。その日は穏やかな日和で風がきらきらと光っていた。一握りの哀愁もある、最後の集い。その言い難い気持ちが表れた句。(髙橋正子)
佐保姫の今年は突然駆けだしぬ★★★
干支ひとつめぐり東日本震災忌★★★
桑本栄太郎
東北のあの日あのとき震災忌★★★
山茱萸の花の明かりの狭庭かな★★★
もくれんの飛び翔ちそうに咲きにけり★★★

自由な投句箱/3月1日~3月10日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/3月1日~3月10日

3月10日(1句)
一斉に榛名へ咲きし紫木蓮/小口泰與
木蓮科の花は、日当たる方が伸びるので、日が当たらない方へ蕾の先が向く。従って、榛名は北の方ということか。それよりも榛名山を見る感じで、一斉に同じ方向を向いて咲いているのが、面白い。(髙橋正子)
3月9日(1句)
★湖の石風のひかりて透きにけり/弓削和人
「湖の石」の情景が今少しよく見えないのが残念だが、春の穏やかな風が光る日、湖の水が透けて岸辺の小石が見えていると想像する。「風のひかりて」の「て」の働きで、「光る風が水を透き通らせる」の意味になって、表現に面白さがある。(髙橋正子)
3月8日
※該当句無し
3月7日(1句)
★木の間より光り集めて節分草/小口泰與
節分草は、節滅危惧種に指定されている小さな花で、自生は珍しい。私は横浜の四季の森公園で2月4日にちょうど開いたと思える節分草を見た。雑木林にあって、木の間を漏れる光りにほのかに輝いて咲いていた。そのままの写生ながら、「光り集めて」がやさしい。(髙橋正子)

3月6日(1句)
★満月の照らす小径の春の泥/友田 修
元の句は、「小径に春の泥」だったが、「小径に」春の泥がぽとぽと落ちている感じがするので、「小径の」に直した。「満月の」「小径の」「春の」と「泥」へ次第にフォーカスしていく「の」の使い方に注目いただきたい。春の泥が満月に輝いている。(髙橋正子)

3月5日(2句)
★浅間へと日の退くや雛納め/小口泰與
雛への名残り惜しさがしみじみと伝わってくる。みやびやかに飾られた雛も納められ、浅間山へ日も沈んでいった。「浅間へと日の退く」に浅間を見て暮らす人の思いがでていて、品のある佳句(髙橋正子)
★新しき靴の弾みて春の土/廣田洋一
新しい靴を履いて、とても心が弾んでいる。「春の土」が生き生きとしている。若々しい句。(髙橋正子)
3月4日(1句)
★花ゑんどう支柱の丈にまだ足らず/桑本栄太郎
日差しが強くなるにつれて、豌豆もだんだんと育ってきた。花が咲き、支柱が立てられてあとは伸びて実と結ぶばかり。でも、まだまだ支柱の丈にはのびていない。力を溜めている時。描写が的確なので、句がしっかりしている。(髙橋正子)
3月3日(1句)
★潮の香を窓に運ぶや春の海/廣田洋一
春になると海が明るくひろがり、遠くは霞み、のどかな景色になる。窓を開けると潮の香が届いて、窓辺に立って深呼吸もしたくなる。(髙橋正子)
3月2日(1句)
★熊野路を咲き昇りたる山桜/廣田洋一
熊野には、山桜が3種類自生していると聞く。近年新種として発見されクマノザクラと命名されたものが一番早く咲き、次にヤマザクラ、カスミザクラと時期を異にして咲く。「熊野路」の固有名詞がよく働いて、「咲き昇りたる」と、一言のみ語って、景色がよく見える、味わい深い句になっている。(髙橋正子)
3月1日
※該当句無し