今日の秀句/2月1日~2月10日

2月10日(1句)

★木々の枝の剪り口白く春寒し/桑本栄太郎
剪定したばかりの木々の切り口が白い。白い切り口を見れば、まだまだ春ながら、寒そうだ。(髙橋正子)
2月9日(1句)

★投函の新聞かんと春浅し/弓削和人
「春浅し」と「かん」と言う音がよく響き合って、早春の空気の感じが伝わる。余計な表現がなく、すっきりしていい。(髙橋正子)

2月8日(1句)

★雲海に聳ゆる富士や春の旅/廣田洋一
春の旅の麗らかさがよく詠めている。雲海に聳える富士は雪を冠っているだろうが、その雄姿を眺めての春の旅。(髙橋正子)

2月7日(1句)

★北方に白き山見ゆ春景色/多田有花
在所は梅が咲きはじめたり、草が萌えたり春らしくなってきているのに、北方は冠雪の山々が見えている。冬と春が行きつ戻りつするのが、春の訪れと言える。それが春景色。(髙橋正子)
2月6日(3句)

★雪に濡れさくらの枝のほの赤き/川名ますみ
雪に濡れた桜の枝は、ほんのり赤らんでいる。咲くときが近づくと桜はほの赤い樹液が巡るという。人の指が冷たさで赤らんだように、桜もほの赤くなっていると思える。(髙橋正子)

★戸に出づや溢れ迫りし雪の量/小口泰與
上州は大雪に見舞われたようだ。戸を開けて出ると、目の前には雪が迫ってくるように高々と積もっている。その迫力に圧倒される。(髙橋正子)

★木の実植う狭庭の隅に子の未来/廣田洋一
木の実を植えたのは子供であろう。家の庭の隅に踏まれないように木の実を植えた。春がくると木の実は芽生え、子供の未来と重なるように、次第に生長していく。それが子の未来。(髙橋正子)

2月5日(3句)

★冬空に負けぬ青色るりびたき/小口泰與
「負けぬ」が力強い。冬空の力強い青さにも負けない、るりびたきの青い羽の色。冬空の青とるりびたきの青。せめぎ合って美しい。(髙橋正子)

★夕日受け在処知らせる桜貝/廣田洋一
砂浜に転がっている桜貝。夕日が差すまでは、桜貝かどうかわかない単なる石のような感じだったが、夕日が差すと、はっきりと明るく桜貝が浮かび上がった。(髙橋正子)

★早春の田の一画に供養塔/多田有花
供養塔は、災害などで亡くなった人たちや、遠い昔に亡くなった人たちを供養する塔。早春の田の一画に供養塔があるのは、かつて洪水などがあったのかと想像するが、多くの命が消えたあとの早春の田には、新しい春の息吹さえ感じられる。(髙橋正子)
2月4日(1句)

★立春の遠出をおもう陽射しかな/桑本栄太郎
立春の日差しに遠出したい思いが湧く。暦の上だけでなく、立春の日差しが実際うららかに差したのだ。暖冬と言われているが、それを頷かせる立春の日差しだったのだ。(髙橋正子)

2月3日(1句)

★塩釜の湯気立ち昇り寒椿/廣田洋一
「塩釜」は、魚などを塩に包み、蒸し焼きにする釜のこと。塩釜は野外の小屋などで焚かれることがあるが、湯気が立ち昇っている塩釜の近くに寒椿がほっこりと咲いている。寒いなかにも暖かさを思うとき。塩や湯気の白、椿の赤のイメージが重なって色彩的にも美しい。(髙橋正子)

2月2日(2句)

★眦に鳥は居りけり冬入日/小口泰與
「眦」は「まなじり」と読む。眼の耳に近い方の端。めじり。
入日が今日最後の輝きを放って落ちようとしている。その落暉のかがやきのなか、眼の端のどこかにいつも鳥が見えているというのだ。うまい詠みぶり。(髙橋正子)

★節分の妻の出掛ける壬生寺に/桑本栄太郎
京都の壬生寺は節分会で有名。壬生狂言も行われる。妻はそれを楽しみに、いそいそと壬生寺へ出かけた。(髙橋正子)

2月1日(1句)

★午後からは一月送る雨となる/多田有花
午後から雨になって、静かに一月を振り返りつつ送る思いになった。一月は往に、二月は逃げると言われているが、寒い寒いと言っている間に月日が過ぎていく。(髙橋正子)

2月1日~2月10日

2月10日(名)

小口泰與
鳥も見ぬ静寂の中の雪の郷★★★
春の雪枝に残りて怪獣ぞ★★★
雪の庭ぽつぽつ足跡鳥の声★★★

廣田洋一
春浅しサウナ風呂にて砂時計★★★
飲みかけのお茶を零して冴え返る★★★
老ひたるも男子やバレンタインデー★★★

桑本栄太郎
日当たりと翳り交互に春日かな★★★
木々の枝の剪り口白く春寒し★★★★
あおぞらの梢色めき春きざす★★★

多田有花
旧正月気持ちを再度新たにす★★★
春大根ステーキにして食すかな★★★
紅梅や坂の途中の家の庭★★★
2月9日(4名)

小口泰與
餌撒くやからだ震わせ冬目高★★★
春近し森は俄かに賑賑し★★★
春立つや東の空の燃えたてり★★★

弓削和人
公園の親子の声や春近し★★★
春寒や御在所岳に朝ぼらけ★★★
投函の新聞かんと春浅し★★★★

桑本栄太郎
ベランダに鉢植え並べ春日かな★★★
濯ぎもの干せば春光眩しけり★★★
あおぞらの風の田道や犬ふぐり★★★

廣田洋一
春の日や空地の周り測量す★★★★
園児らの群がる広場春日かな★★★
自転車で走る野原や風光る★★★

2月8日(4名)

小口泰與
道の辺の池に寒雁来ておりぬ★★★
土割りてむんず水仙暁の世へ★★★
道すがら見し雪の浅間の雄姿かな★★★

廣田洋一
薄氷の白く光れる潦★★★★
雲海に聳ゆる富士や春の旅★★★★
富士の峯白さいや増し春の雪★★★

多田有花
乗用車がっちり凍てし余寒かな★★★
二月早や十指にネイル輝かせ★★★★
北よりの雲がもたらす春しぐれ★★★

桑本栄太郎
早春の日差し明るきバス車内★★★
あおぞらの梢きらめく春の朝★★★★
アウアウと歯科の治療や春寒し★★★
2月7日(4名)

小口泰與
雪の庭ぽつぽつ足跡鳥の声★★★
枯葉落つ真白き庭の目印に★★★
目の前を雪の塊落ちにけり★★★

廣田洋一
公園をゆっくり巡り暖かし★★★
被災地の惨を覆へる春の雪★★★
沖波の攫い損ねし桜貝★★★★

多田有花
旧正月近づく確かに春の声★★★
北方に白き山見ゆ春景色★★★★
春風や洗濯物を片寄せし★★★

桑本栄太郎
濯ぎもの干せば眩しき春日さす★★★
春寒のさざ波立つやにわたずみ★★★
春寒のあおぞら背ナに遠嶺かな★★★
2月6日(5名)

川名ますみ
雪に濡れさくらの枝のほの赤き★★★★
大粒の春雪を受くボンネット★★★★
会えば皆雪を知らせる御茶ノ水★★★★

小口泰與
戸に出づや溢れ迫りし雪の量★★★★
百本の庭の薔薇の木雪纏う★★★★
スリップ音塀に積もりし雪の量★★★

廣田洋一
海苔を食む魚の増えて富津港★★★
雨混じりぺちゃぺちゃはねる雪解道★★★
木の実植う狭庭の隅に子の未来★★★★

多田有花
風に揺れ地に咲き初めしいぬふぐり★★★★
カレンダー見て驚きぬ二月早や★★★
陽のさすや山の微笑を誘うべく★★★

桑本栄太郎
春寒の鴉窺い翔び立たず★★★
木々の枝の若枝すいすい伸びにけり★★★★
しつとりと在所湿りぬ春しぐれ★★★
2月5日(5名)

小口泰與
冬空に負けぬ青色るりびたき★★★★
眼裏へ鴛鴦焼き付けり忘れじと★★★
浅間山雪を被りて悠然と★★★★

廣田洋一
集団で研修受ける新社員★★★
夕日受け在処知らせる桜貝★★★★
春寒や今日一日引きこもり★★★

多田有花
春来る名のみの風の冷たさに★★★
東京は大雪警報春の雨★★★
早春の田の一画に供養塔★★★★

桑本栄太郎
選挙終え今朝の静寂や春しぐれ★★★
春雨や今朝は鴉も鳴かざりぬ★★★
<テレビ報道より>
近江なる花菜明かりや滋賀の里★★★

弓削和人
立春の風吹かれおり電話口
寒明や悲喜こもごもの投開票
寒明や口笛かすかに聞こえたり
2月4日(4名)

小口泰與
寒林に我のみ居りて鳥の声★★★
末黒野や犬は尾を垂れ吠えにける★★★
クロッカス二匹の犬の戯れあいて★★★

廣田洋一
雨に濡れ畑黒々春立ちぬ★★★
花時計図柄変へたり春立つ日★★★★
面接は午後になりたる入学試験★★★

多田有花
立春や目覚めの朝の日の光★★★
立春祭知らせる朝の町内放送★★★★
珈琲粕を寒明の陽に干せり★★★

桑本栄太郎
<2月4日京都市長選挙>
春立つや日差し明るき投票所★★★
うすらひや旅出はいつも風任せ★★★
立春の遠出をおもう陽射しかな★★★★
 
2月3日(4名)

小口泰與
白樺の斜めに生えし冬の宿★★★
汀より咲くかの如く雪降れる★★★
「咲く」の比喩はどうでしょうか。(髙橋正子)
雪の日の沼の野鳥をみそなわす★★★

多田有花
古楽器のやさしき音色冬終わる★★★
節分や豆まきするかと人に問う★★★
持ち家のリフォーム終了冬尽きぬ★★★

廣田洋一
咲きてなほ背丈競へる水仙かな★★★
頭下げ客を迎へる寒椿★★★
塩釜の湯気立ち昇り寒椿★★★★

桑本栄太郎
木々の枝の小枝伸び居り春隣★★★
「木々の枝の小枝伸び居り」が季語「春隣」の説明になっています。こういうのは、避けたいです。(髙橋正子)
蠟梅の狭庭の日差し占めにけり★★★
クレーン車の集い駐車や日脚伸ぶ★★★

弓削和人
節分の夕餉を映ゆる鰯かな(原句)
節分の夕餉に映ゆる鰯かな(正子添削①)
節分の夕餉を映えさす鰯かな(正子添削②)
文法に従えば、①の「夕餉に」にするか、⓶の「夕餉を」にするかです。(髙橋正子)

節分ややさしき鬼に子らの笑み★★★
まさおなる空にこぼるる寒椿★★★
2月2日(4名)

小口泰與
待ち侘びし二羽の鴛鴦眼間に★★★
山風の間遠となりし鳰(原句)
山風の間遠となりぬ鳰(正子添削)
眦に鳥は居りけり冬入日★★★★

桑本栄太郎
節分の妻の出掛ける壬生寺に★★★★
壬生寺に妻の出掛くや節分会(正子添削例)

節分や神楽太鼓のどんどこどん★★★
節分や鬼より怖い山の神★★★

廣田洋一
あれこれと防具比べる寒の朝★★★
大寒やこむら返りに目覚めたり★★★
 こむら返り、痛いですね。ふくらはぎのこむら返りは、ゆっくりと脚をのばすといいと聞きました。先日なって試しましたが痛みがほとんどとれました。(髙橋正子)
一番星寒夕焼けのさめ易し★★★★

多田有花
晩冬に協奏曲を聴き比べ★★★
街角に彩り添えて冬の梅★★★
冬帝を送り出さむと風荒れる★★★
2月1日(3名)

小口泰與
機関車の雪巻き上げて喘ぎおり★★★
冬薔薇の咲くに満満力あり★★★
積読の本を枕に冬籠り★★★

多田有花
飛ぶが如く翔るが如く一月ゆく★★★
午後からは一月送る雨となる★★★★
静かな雨に一月を振り返る★★★

桑本栄太郎
二ン月と想う朝日の煌めける★★★
窓開けて結露少なし寒ゆるむ★★★
嶺の端のうねり連なる寒明忌★★★

自由な投句箱/1月21日~1月31日(2024年)

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今日の秀句/1月21日~1月31日

1月30日(1句)

★晴れ続く播磨に水仙咲き誇る/多田有花
句の内容は、「水仙咲き誇る」で特に難しい表現も、テクニックもない。その中で、「播磨」が効いている。「播磨」の地名から想像が広がり、「は・り・ま」の音が晴れやかで、力もあって、咲き誇る水仙の姿が目に浮かぶ。(髙橋正子)
1月29日

該当句無し

1月28日(2句)

★ほろほろと星の光や凍て凍る/小口泰與
「凍て」を繰り返さなければいけないほどの凍てる夜。星の光も「ほろほろ」と崩れるような光。凍てる夜の星の美しさがいい。(髙橋正子)

★レコードに針を落とした冬の夜/多田有花

レコードに針を落とす始まりの音がジッという針の音。冬の夜のしじまのレコード針の音があたたかく思える。レコードの音が好まれるのはここではないか。(髙橋正子)

1月27日(1句)

★寒林やうしろは青空あるばかり/多田有花
「うしろ」がいい。寒林は、冬木の林。冬木立ではあるが、音の響きが強く、凛とした趣がある。冬木立のうしろは、ただ青空だけ。凛とした空気があかるいのがいい。(髙橋正子)

1月26日(1句)

★かの人の榾速やかに燃え移り/小口泰與
炉を囲んで、それぞれが榾をくべている。かの人がくべた榾の火がすぐに燃え移った。それに意味があるわけではなく、そういうことの事実に、穏やかな円居がある。(髙橋正子)
1月25日(1句)

★風あれど寒晴いっぱいわが頭上/多田有花
風が強いのに、素晴らしい寒晴の空が頭上に広がっている。すべて自分のものにしたいほどの青いっぱいの寒晴れの空だ。(髙橋正子)

1月24日(2句)

★青空に赤き花穂立て花アロエ/廣田洋一
色がくっきりしていながら、しみじみとして、静謐な画のような句。「花アロエ」の音が句をやさしく収めていて、すばらしい。(髙橋正子)

★雪しまく墨絵のような在所かな/桑本栄太郎 
今週の寒波で都も、在所も、雪に見舞われた京都。わが住むところも、雪に凍りながら、墨絵のような雪景色に。めずらしく、美しく思えた。(髙橋正子)

1月23日(1句)

★少女たる日々は隣に冬銀河/多田有花
冬銀河の下に立つと、少女であった日々が、昨日のことのように、すぐ隣にあるように思われるというのだ。冬銀河の光に少女の純真な心になれた。感傷的でない、のがよい。(髙橋正子)

1月22日(1句)

★ぐんぐんと岸の白梅ふくらめり/ 川名ますみ
白梅のある場所は、「岸」。この「岸」の白梅は、「ぐんぐん」というほど、力強く蕾が膨らんでいる。率直な思いがいい。(髙橋正子)

1月21日(1句)

★春を待つピアノの音の軽やかに/多田有花
外は寒いが、家にはピアノがあって、楽しくピアノが弾ける。春を待ちつつ弾くピアノの音が軽やかに出る。思いが素直に隠すところなく表現されていい。(髙橋正子)

1月21日~1月31日(2024年)

1月31日(4名)

小口泰與
老夫婦落葉焚きせる腰まげて
八十路にて未だ楽しき冬籠り
躍動の女性美きや初雪よ

多田有花
寒中やどろりとしたるごま油
人参と牛蒡を入れて五目豆
春隣る水の流れの軽やかに

弓削和人
冬鳥のうしれを水輪従えり
寒茜農道の果開かれり
閉店のまぎわ駆け込む寒波かな

桑本栄太郎
嶺の端に忽と集いぬしぐれ雲
一月の雲一月の空模様
哀しみと怒りの果てや一月尽
1月30日(3名)

小口泰與
鉛筆をまさぐりおるや冬句会★★★
冬温し暁ける間際の天赤し★★★
機関車の雪巻き上げて喘ぎおり★★★

多田有花
晴れ続く播磨に水仙咲き誇る★★★★
晩冬の驟雨が街を濡らしおり★★★
排水口の流れ回復日脚伸ぶ★★★

桑本栄太郎
燦々と日差し明るく春近し★★★
たそがれの在所となりぬ寒夕焼け★★★★
<京都市長選挙>
寒中の夜の立ち合い演説会 ★★★
1月29日(3名)

小口泰與
目陰して野鳥見さだむ冬の朝★★★
寒雀鉄砲玉の如きかな★★★
パソコンのぷっと壊れし冬の夜★★★

多田有花
しばらくは寒晴続くとの予報★★★
春近し手すりを濡らす朝の雨★★★
洗濯す背に当たる陽の春隣★★★
桑本栄太郎
たそがれの嶺の茜や寒入日★★★
もの種の網の下げらる草城忌★★★
寒中に集う立会演説会★★★

1月28日(2名)

小口泰與
ほろほろと星の光や凍て凍る★★★★
塊の降り来る空や雪の夜★★★
避難所の燃ゆる灯や冬の夜★★★

多田有花
レコードに針を落とした冬の夜★★★★
疼痛に起こされている寒夜かな★★★
曇り空なれど明るく春近し★★★
1月27日(3名)
小口泰與
湖風にほつるる氷波の秀ぞ★★★
猟犬の飛び出す丘や夜のほどろ★★★
月影に吠ゆる寒犬いたずらに★★★★
多田有花
春を待つモーツァルトを聴きながら★★★
寒林やうしろは青空あるばかり★★★★
狼は滅びて久し寒満月★★★

桑本栄太郎
遠峰のしろきちぢれや春遠し★★★
枝先のうすきみどりや日脚伸ぶ★★★
室内のラジオ体操春待たる★★★

1月26日(3名)
小口泰與
かの人の榾速やかに燃え移り★★★★
短日の上枝に鳥の影を見し★★★
ほぞの緒を仕舞忘れし齢かな★★★
多田有花
流れ来し雲の一片雪降らす★★★★
歩数計の歩数確かめ春を待つ★★★
BGMには向かぬ寒のベートーヴェン★★★

桑本栄太郎
凍て風やうす氷張るにはたずみ★★★
雨雲の峰に途切れや日脚伸ぶ★★★
ふるさとの海鳴り想う寒波かな★★★★

1月25日(3名)

小口泰與
寒雀家を震わす山の風★★★
風の穂に尖りて氷柱露見せり★★★
「風の穂」の比喩が、おしいです。(髙橋正子)
冬の沼自由気ままに稚魚乱舞★★★

多田有花
昼の風おさまり星の冴ゆるなり★★★
風あれど寒晴いっぱいわが頭上★★★★
奥山は雪にて候よく晴れて★★★

桑本栄太郎
しんしんと夜の静寂や雪の闇★★★
ちりちりと山膚凍つる山河かな★★★
積もる雪載せて走れりバスの屋根★★★
1月24日(4名)

小口泰與
冬鵙の群れて電線囃子けり★★★
この雪は降るべからずや下校時★★★★
雪掻きの終わりし妻の割烹着★★★

多田有花
寒くなる寒くなるぞと寒茜★★★★
ごうごうと音立て進軍冬将軍★★★
霜は無し夜中に風の吹き荒れて★★★

廣田洋一
枝打ちの電線よけて枝落とす★★★
青空に赤き花穂立て花アロエ★★★★
池の縁波平らかに浮寝鳥★★★

桑本栄太郎
風花やおもい出今も躍り居り★★★
あおぞらにぽつぽつ青き冬木の芽★★★
雪しまく墨絵のような在所かな ★★★★
1月23日(名)

小口泰與
初雪のばらの葉っぱにちょんと乗り★★★
麦の芽や朝日映えゆく上州路★★★★
頻繁な地震に冬月揺れており★★★

廣田洋一
寒鯉の川上を向きひしめける★★★
柳葉魚焼く北の海の香流れけり★★★
寒鰤の身を光らせて売られけり★★★

桑本栄太郎
寒晴や枝のきらめき風に揺れ★★★★
冬日さす影の寒さの団地かな★★★
雲途切れ冬日燦々あおぞらに★★★

多田有花
少女たる日々は隣に冬銀河★★★★
マエストロ次々現る霜夜かな★★★
陽は明るし寒風窓を揺らせども★★★

1月22日(5名)

小口泰與
古びたる屏風納戸へ春近し★★★
朝日浴ぶ浅間見事と寒見舞★★★
あけぼのの一羽の雀雪に舞う★★★★

廣田洋一
また一羽目白飛び来る早梅かな★★★
早梅や白さ際立つ法の庭★★★
蠟梅の香の立ち込めし城の跡★★★★

多田有花
そのむかし綿の布団は重かりし★★★
日脚伸ぶ塔の右手へ陽が沈み★★★★
足早に駆けゆく一月追いかける★★★

桑本栄太郎
雪雲の地図に在りたる天気予報★★★
峰の端に雲昇りゆき春を待つ★★★
しつとりと山河濡れゆき春近し★★★

川名ますみ
聖堂に冬木大きく陽を抱く★★★
凩や書類つぎつぎ青空へ★★★
ぐんぐんと岸の白梅ふくらめり ★★★★

1月21日(4名)

小口泰與
片雲や里に粉雪残しける★★★
枯草の穂が磨きける夕日かな★★★
我が町は坂の町なり寒椿★★★★

多田有花
春を待つピアノの音の軽やかに★★★★
安売りの白菜たっぷり鍋物に★★★
寒中に三日続きの雨が降る★★★

廣田洋一
厳寒の川に佇む鷺一羽★★★
寒の雨水嵩増したる街の川★★★
枯草のしきりに流れ街の川★★★★

桑本栄太郎
大寒を過ぎてゆるびぬ今朝の雨★★★
身ほとりの濡れて西山しぐれかな★★★★
久女忌の雨に濡れ居り枯芙蓉★★★

自由な投句箱/1月11日~1月20日(2024年)

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今日の秀句/1月11日~1月20日

1月20日(2句)

★凍星や昨日のメールはや古ぶ/小口泰與
星も凍る寒い夜、昨日のメールは、それがいつのメールかと思えるように、日が過ぎた思いがする。(髙橋正子)

★日の温みふわり抱へて福寿草/廣田洋一
「ふはり(ふわり)」に作者の優しさと、冬の日ざしの温みがよく読み取れる。(髙橋正子)

1月19日(2句)

★風防ぐビニール強し冬いちご/小口泰與
下に参考にあげた句は、同じ作者の句で、発想に似通うところがあるが、冬苺の句に新しさがあるように思う。「ビニール強し」には、作者の思いが素直に出ている。現実をよく写生していると言える。
(参考:霜防ぐわら束数多星の夜/小口泰與)
(髙橋正子)

★葱青々ところどころは折れながら/多田有花

畑に青々としている葱も、どれもがまっすぐではなく、ところどころに葉が折れている。折れた原因は風の仕業か、栄養状態なのかはわからないが、自然さがいい。(髙橋正子)
1月18日(2句)

★松過の夕刻にある明るさよ/多田有花
松過、松明は、関西では十五日、関東では七日と慣習的に言われている。冬至をすぎ、2,3週間のころで、日ごと昼間が長くなっていく。夕刻にも明るさが見えるようになった。夕刻の明るさに希望が見えるようだ。(髙橋正子)

★駅降りてどちらに行くか探梅行/廣田洋一
探梅に行く。初めての土地か、右に行っても左に行っても、北に行っても南に行っても、梅園はあるのだろう。どちらへ行くかは、あたりを見回して、勘に頼ってきめるのかもしれない。ちょっと迷って、それも楽しい探梅行だ。(髙橋正子)

1月17日(1句)

★ぽつぽつと朝日に目立つ冬木の芽/桑本栄太郎
冬木の枝に朝日が差すと、小さな冬木の芽が「ぽつぽつ」と浮かぶ。一番に朝日に目立つのである。小さい冬木の芽なが鋭い様子がうかがえる。(髙橋正子)
1月16日(1句)

★風花の光り溜めつつ躍りけり/桑本栄太郎
風花は遠くの峰などから吹かれてきた雪が、花びらのように舞うのを言うが、すぐに葉や地上に降りないで、ゆっくりと舞い落ちる。ゆっくり落ちる間に「光を溜め」ている。観察の細やかさによって、風花に光が生まれた。(髙橋正子)
1月15日(1句)

★茶の花や赤城颪に吹かれける/小口泰與
赤城颪の冷たい空っ風にきよらかな茶の花が吹かれている。愛おしさしきりである。(髙橋正子)

1月14日(2句)

★再びは会う事も無き冬の街/小口泰與
一度きて、再びは来ることもない街は人生経験を積むと意外とあるものだ。「来る」ではなく、「会う」としたことにその思いが深い。(髙橋正子)

★コーヒーに寒九の水を沸かすかな/廣田洋一
コーヒーは、水次第。一年で最も清らかで服薬によいとされる寒中九日間に汲まれる水で、コーヒーを沸かす。「沸かすかな」に待ち遠しさ、嬉しさがでている。すっきりとした味わい深いコーヒーが出来上がったであろう。(髙橋正子)


1月13日(1句)

★焚火たく地域バザーや土曜日に/桑本栄太郎
土曜日に地域のバザーがある。広場では、暖をとるために焚火が焚かれて、大鍋には湯気もたっているであろう。色とりどりの物も売られているだろう。地域コミュニティの賑わいが見える。(髙橋正子)

1月12日(2句)

★淑気満つ秋田訛りの行き交うて/弓削和人
秋田には秋田の正月がある。淑気が満ちるなか、秋田訛りで新年の挨拶が交わされる。それを見ているのは秋田訛りをめずらしく思う作者。おのずと秋田人となっていく。(髙橋正子)

   兵庫県立あわじ石の寝屋緑地
★大観覧車見下ろせば冬の海/多田有花
大観覧車の下は冬の海。観覧車の立地として海の近くが選ばれる。上空に上れば、海の真上に出た感じがする。冬の海を真下にする感覚が実感できる。(髙橋正子)

1月11日(1句)

★島に来て八幡宮へ初詣/多田有花
八幡宮は、八幡神をまつる、宇佐八幡を総社とする神社。全国には大きな神社から地域の小さい神社を数えると何万となるであろう。島には島の八幡宮があり、島の住人にもなったように気軽に参詣した。そこが数ある神社のよさ。(髙橋正子)

1月11日~1月20日(2024年)

1月20日(名)
小口泰與
風に咲く侘助ひとつ日暮れかな★★★
凍星や昨日のメールはや古ぶ★★★★
白鷺の嘴を大きく振舞うぞ★★★
多田有花
大寒やピアノソナタを聴き比べ★★★
珍しやこぬか雨降る大寒に★★★
この冬は雪無きままに過ぎゆくか★★★
廣田洋一
大寒の鯛焼き食べる親子かな★★★
日の温みふはり抱へて福寿草★★★★
街角の花屋を覗き春隣★★★
桑本栄太郎
露凝るや愛しき人の名を窓に★★★
しぐれ降る黒雲嶺を被いけり★★★
しつとりと身ほとり雨に寒雷忌★★★
1月19日(4名)

小口泰與
足出でて衾取り合う真夜の風★★★
霜防ぐわら束数多星の夜★★★★
風防ぐビニール強し冬いちご★★★★

多田有花
葱青々ところどころは折れながら★★★★
寒暁や珈琲豆を挽き淹れる★★★
寒さやや弛みおりけり雨の朝★★★

廣田洋一
マフラーをぐるぐる巻きて顔埋もれ★★★
寒紅葉丸めたる葉の光りをり★★★
白き雲群なし走る寒の空★★★

桑本栄太郎
山茶花の散り敷く中をバス停へ★★★
照る降る何れか知れず雪しぐれ★★★
マスク子の目線に気付く友の顔★★★
1月18日(4名)

小口泰與
山峡の九十九折なる霜の朝★★★
左義長や赤城の裾野賑やかす★★★
児の時のいまだ懐かし根深汁★★★

多田有花
ハイドンの旋律明るし日脚伸ぶ★★★
大霜に湯を用意して車へと★★★
松過の夕刻にある明るさよ★★★★

廣田洋一
駅降りてどちらに行くか探梅行★★★★
探梅や甘き香りに群がれり★★★
厳寒の共通テスト始まりぬ★★★

桑本栄太郎
竹づつの祈る灯りや阪神忌★★★
いつせいに屋根の現るしづり雪★★★★
干し物をためらい軒に雪しぐれ★★★
1月17日(3名)

小口泰與
電線に群並びたる寒雀★★★
古びたる写真機愛でて寒の内★★★
麦の芽や浅間へ落ちし夕日影★★★

多田有花
タイマーをかけて運動寒の内★★★
緩く巻くマフラーに顎を埋めおり★★★
立働く事こそよけれ寒の朝★★★

桑本栄太郎
「ともに」との祈る想いや阪神忌★★★
ぽつぽつと朝日に目立つ冬木の芽★★★★
霜朝のちりちり萎れ枯むぐら★★★
1月16日(4名)

小口泰與
雪被る地蔵のありて通学路★★★
「ありて」、あるいは、「通学路」のところを工夫されるといいと思います。(髙橋正子)
電線に群並びたる霜の朝★★★
新年会古き交わり今年また★★★

多田有花
ここもまた宅地となりぬ冬深し★★★
シートより薬押し出し小正月★★★
初えびすベビーカステラ売る屋台★★★

廣田洋一
寒稽古太極拳の息白し★★★
一輪また一輪と水仙花★★★★
水仙の花の並びし日向かな★★★

桑本栄太郎
うつすらと嶺に初雪被いをり★★★
風花の光り溜めつつ躍りけり★★★★
寒禽の翔つや花びら零れ居り★★★
 
1月15日(4名)

小口泰與
角巻や水輪沸き立つ沼の淵★★★
茶の花や赤城颪に吹かれける★★★★
降り出して雨仕切りにり枯芝へ★★★

廣田洋一
残りたる餅を焼きたり小正月★★★
ヘルパーさん頬紅付けて小正月★★★
鴨一羽ぱっと飛び立ち追ふ二羽や★★★★

多田有花
冬の山おりて食べたりしらす丼★★★
ゆっくりと昔の映画松の内★★★★
そぞろ歩く寒九快晴のなかを★★★

桑本栄太郎
黒雲の嶺につどいぬ雪催い★★★★
お隣と妻は語らい焚き上げに★★★
寒柝の闇夜にひびく団地かな★★★
 
1月14日(3名)

小口泰與
光無き待合室や冬の暁★★★
冬翡翠目の炯炯と水中へ★★★
再びは会う事も無き冬の街★★★★

廣田洋一
寒九の水を沸かせしコーヒーかな(原句)
コーヒーに寒九の水を沸かすかな(正子添削)
雪吊りのからりと晴れて神の庭★★★
熱き湯を車窓にかける霜の朝★★★

桑本栄太郎
あおぞらの日射し明るく冬日燦★★★
寒晴や遥か彼方に奥比叡★★★★
<JR嵯峨野線花園駅ホーム>
メロディーの鳴りて列車や寒晴るる★★★

1月13日(4名)

小口泰與
節節の痛みに寒の病かな★★★
翔つ前にふと我を見し鳰★★★
忽然と鳴きて飛び立つ二羽の鴨★★★

廣田洋一
買物籠下げたる道や日脚伸ぶ(原句)
買物籠提げて行く道日脚伸ぶ(正子添削)

露天湯に長く浸かりて日脚伸ぶ★★★
水仙の並び立ちたる門の前★★★

多田有花
<兵庫県立あわじ石の寝屋緑地三句>
大橋を背後から見て冬の雲★★★
山おりる傍らにあり帰り花★★★
水はられし日陰の田んぼ凍りおり★★★

桑本栄太郎
焚火たく地域バザーや土曜日に★★★★
山茶花の散りて襤褸や坂の道★★★
山間をのぼる道路や寒晴るる★★★

1月12日(5名)

小口泰與
人出でて沼の普請や冬の午後★★★
寒暁や待合室に光無き★★★
眼間の雪の浅間のふすぼるる★★★★

廣田洋一
冬の薔薇蕾の一つ膨らみぬ★★★
早梅や走り寄りたる枝の下★★★
早梅の蕊金色に光りをり★★★★

弓削和人
淑気満つ秋田訛りの行き交うて★★★★
除雪音の空の白妙響きけり(原句)
白妙の空に響けり除雪音(正子添削)
雪沓の底にしみいる羽後の風★★★★

桑本栄太郎
燦々と団地明るく寒晴るる★★★★
<能登半島地震>
倒壊の家屋微塵や能登寒波★★★
寒晴や婆のため息なゐの地に★★★

多田有花
<兵庫県立あわじ石の寝屋緑地三句>
冬景色あれは淡路か徳島か★★★
大観覧車見下ろせば冬の海★★★★
冬の風発電風車を回しおり★★★

1月11日(4名)

小口泰與
着ぶくれてよたよた歩む鳥の如★★★
冬更けて樹木の諸鳥定かなり★★★
冬深み鳥声いまだ盛んなり★★★

廣田洋一
レトルトのしるこ買ひたり鏡割★★★
濃ゆく日向に立ちし冬薔薇★★★
冬薔薇の棘は控へめ人を呼ぶ★★★

多田有花
島に来て八幡宮へ初詣★★★★
津波避難経路を辿りゆく寒★★★
<兵庫県立あわじ石の寝屋緑地>
ひさびさの寒中登山大展望★★★

桑本栄太郎
倒壊の能登の微塵に寒の雨★★★
避難所のビニールハウス寒の雨★★★
孤立せる村に無情や寒波来る★★★

自由な投句箱/1月1日~1月10日(2024年)

※当季雑詠3句(新年・冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/1月1日~1月10日(2024年)

1月10日(2句)

★金色の夢ふくらます福寿草/廣田洋一
路地に植えた福寿草は正月を過ぎるころからようやく花を開く。地面近く花を開く福寿草は金色といってよいほどの黄色。日差しを受けて、上等な金色の夢をふくらませているようだ。(髙橋正子)

★人ひとり浜へ投石寒夕焼/弓削和人
「投石」と聞いて、なにごとかと思うが、「投石」もいろいろ。この句の投石は遊びであろう。人がひとり、寒夕焼けの広がる浜辺で石を投げている。男であろう。なにか心に思うところがあるのか、単に投げてみているのか、それはどちらでもいい。こういう景色があった事実。(髙橋正子)

1月9日(2句)

★松の内淡路へ渡る船に乗る/多田有花
松の内の小さな旅。本州を離れ、淡路島へ船で渡る。島は淑気に満ちている感じさえする。「松の内」がいい。(髙橋正子)

★松納屋根より落つる雪溜/弓削和人

松納の日、屋根よりどさりと雪の塊が落ちた。危ないことであるが、松の内は雪下ろしも休んだのであろうか。屋根に雪溜ができて、どさりと落ちたとき、正月が終わったという意味に。(髙橋正子)
1月8日(2句)

★露凝るや一画見ゆるガラス窓/桑本栄太郎
「露凝る」が美しい。窓の露の結露を言っているのではなく、ガラス窓から露凝る草の葉がある一画が見えるのである。それをガラス窓のある暖かい室内から覗き見たのだ。(髙橋正子)

★成人の日髪結ひ上げて清楚なり/廣田洋一

髪を結い上げて、清楚な印象の成人。「清楚」なりと断定して迷いがないのは、そこに「若さ」と「初々しさ」を見たからであろう。成人を寿ぎたい。(髙橋正子)
1月7日(1句)

★七草の粥の土鍋の息吹かな/桑本栄太郎
七草粥を炊く土鍋が噴いている様子を「息吹」と見た。比喩の「息吹」に嫌味がないのは、あおあおとした「七草」の命を思うからである。(髙橋正子)
1月6日(2句)

★福笑最後に笑ふ子のをりて/廣田洋一
福笑をしてみんなが笑った後に笑う子がいる。みんなが笑うのがおかしくて笑ったのかもしれないが、マイペースというか、福を招くような面白い子である。(髙橋正子)

★ともがらと火の粉を払うとんどかな /弓削和人
同輩と話ながらどんどの火を囲んでいたのだろう。燃やすものが時に爆ぜて火の粉が飛ぶ。その火の粉を払いながら、どんどを見守る。捉えてかたにうまさがある。(髙橋正子)

1月5日(1句)

★被災者の消息知りぬ五日かな/桑本栄太郎
今年の新年は元日夕方の能登半島地震に始まった。地震が起きてすぐは、情報はばらばらで、何がどうなっているのわからない。5日になって消息もほぼ知れるようになった。生活も普段にもどるころ。5日間という時の経過。(髙橋正子)
1月4日(1句)

★新春の川に魚影の豊かなり/多田有花
新春の川をのぞき込むといろんな魚影が元気に動くのが見える。「豊かなり」は、新春だからこそ思えることだろう。(髙橋正子)
1月3日(1句)

★わずかずつ盛られてうれし節料理/多田有花
有花さんは旅の宿で大晦日から新年を過ごされたようだ。その宿でのお節。わずかずつ盛られて、色とりどりで、にぎやかで、かわいくて、まず目から楽しだ。(髙橋正子)
1月2日(2句)

★初笑い静かな男のヘルパーと/川名ますみ
いつもはもの静かな男性のヘルパーだが、ちょっと冗談めいたことを言ったののだろうか、それとも反対にますみさんが言ったか。思わずそれが初笑いとなった。明るい新年となった。(髙橋正子)

★歩み行く恵方詣りや大原野/桑本栄太郎

恵方詣は、その年の恵方にあたる神社に詣ることだが、今もそのしきたりがあるのか。大原野は今は住宅地になって淋しさはそれほどないのだろうが、歌に詠まれてきた「大原野」のイメージは拭えない。その大原野を歩いて初詣にでかけた。「歩み行く」がいい。(髙橋正子)
1月1日(5句)

★渓流の流れ清らや年新た/小口泰與
年が新しくなってみると、いつもの渓流もいや増して清らかな流れとなっている。すがしいことだ。(髙橋正子)

★初春や早咲きの梅光りをり/廣田洋一
初春の早咲きの梅の光が小さくも凛としている。さきがけの生命力がいい。(髙橋正子)

★日はすでに高く昇りぬ初御空/桑本栄太郎
「日はすでに高く昇りぬ」は、うらうらと春のような様子。初御空に春らしさを見た。(髙橋正子)

★去年今年伊豆里山の温泉に/多田有花
伊豆の里山の温泉の去年今年。太くどっしりと年があらたまった印象がする。
(髙橋正子)

★羽後国(うごのくに)に馴染みてはやき去年今年/弓削和人

和人さんは、去年田沢湖のある市に転勤され、美しい田沢湖を巡ったり眺めたり、仕事をし、すっかり「羽後国」に住み慣れて新年を迎えられた。俳句を作ることで、土地への愛着も早く湧くのではと私は思っているが、どうであろうか。(髙橋正子)