●祝恵子
前篭に買われし夏花帰りゆく★★★
木漏れ日て冬瓜肌を光らせる★★★
新しき靴の一歩よ秋きたる★★★★
新しい靴をおろし、一歩を踏み出す。新しいものを履く快い緊張がある。新しい季節、秋も同時にやって来た。(高橋正子)
●小口泰與
あけぼのの山路色取る赤のまま★★★
朝顔や冷気あふるる赤城山★★★
武蔵野や丘に溢れし女郎花★★★★
●多田有花
八月の風求め部屋を移動する★★★
早朝の光新たに涼しけり★★★
じりじりと午後の残暑のいや増せり★★★
●藤田洋子
空淡く瀬戸の夕凪始まりぬ★★★
八月の海は静かに藍満ちて★★★
蜻蛉の頭くるりと朝の晴★★★★
ちょっと愉快な蜻蛉である。朝も気持ちよく晴れ、頭をくるりと回してあたりを眺めたのだ。これから飛び立つのか、しばらく止まっているのか。(高橋正子)
●古田敬二
まっすぐな竹通り来る風涼し★★★
耳に鳴る新涼うれし森を行く★★★
新涼やまっすぐ伸びる森の道★★★
●小西 宏
朝顔の紫紺に触れし細き道★★★
楠深き稲荷の杜の蝉時雨★★★
赤々と残暑一日沈みゆく★★★
8月12日
●小口泰與
草の秀の露の並びて朝日かな★★★★
露草や靄に沈みし赤城山★★★
かなかなやケーイトボールに集いおり★★★
●佃 康水
鳴き変わる日と記しおく法師蝉★★★
音遥か選句をしつつ遠花火★★★
選句していると、遠くに花火の揚がる音がする。ほどよい緊張をもって選句しながらも、目に華やかな花火が浮かぶ。心ゆたかな時間である。(高橋正子)
暮れ残る湾へ場所取る花火船★★★★
●小西 宏
よれよれのシャツ着残暑の街歩く★★★
さるすべりの白が揺れてる稲光★★★
稲妻の次第に繁く草の陰★★★
8月11日
●小口泰與
草の秀をかざる朝露かがよえる★★★
秋晴や浅間高原水青し★★★
浅間嶺をきままに流る秋の雲★★★
●桑本栄太郎
秋暑し嶺の端潤みうねり居り★★★
日差し受け襤褸親しき古すだれ★★★
部活子の日焼け厭わずおらびけり★★★
●多田有花
早稲の田に稔りの色の兆しおり★★★
まだほかの田は稲の花が咲き始めたころなのに、早稲田は稔りの色が兆している。はやも見つけた稔りの兆しの色に驚きがある。(高橋正子)
提灯の吊られ今宵の踊り待つ★★★
橋の霞む残暑の光かな★★★
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
●小口泰與
秋うらら渡りくる風透き通る★★★★
朝顔や夜雨の雫のかがよえる★★★
利根川へ支流落ち合う下り鮎★★★
●小西 宏
夜は風の失せて寝苦し秋の蝉★★★
有りの実のひたすら甘き昼餉あと★★★
太陽を走る直球甲子園★★★
●高橋秀之
秋暑し天気予報の赤き地図★★★★
今年の残暑は、これまでになく厳しい。明日は少しは涼しくなるかと天気予報のテレビ画面を見るが、日本列島ほとんどが赤く塗られている。明日も暑に耐える気構えでおらねばならぬ。(高橋正子)
朝顔の数を数えて観察記★★★
初秋の朝の木漏れ日縞模様★★★
●桑本栄太郎
立秋の風の匂いの田道かな★★★★
朝靄の潤む田道や稲の花★★★
稲の穂の早やも出揃い香りけり★★★
●小口泰與
ほろほろと百日紅の散りにけり★★★
秋光や木道沼へつづきおり★★★
秋光や大きくまがる小海線★★★
●小西 宏
ひぐらしを静かに聴けば森の風★★★
喉晒す空に鴉の残暑かな★★★
真っ黒な顔の泣いてる甲子園★★★
●桑本栄太郎
田へ注ぐ水音ゆかし稲の花★★★
稲の花が咲き、残暑が厳しいと言いながらも、田へ注ぐ水音に秋の気配が感じられるようになたった。静かな明るさのある句に、さわやかさがある。(高橋正子)
朝の黄の畑の垣根や花南瓜★★★
立秋のビルに茜の夕日かな★★★
●小口泰與
露草や長き裾野も靄の中★★★
啄木鳥や巨木豊かな深き森★★★★
秋光や志賀高原の空深し★★★
●多田有花
稲妻の一閃南の窓走る★★★★
午後の雨残暑流して夕暮れる★★★
三日目は音のみで過ぎ秋の雷★★★
●桑本栄太郎
坂道の風を下れば稲の花★★★★
「風を下れば」に詩がある。稲の花が咲くころは、暑い暑いと言いながらも、ときに心地よい風が吹く。そんな日に咲く稲の花
は爽やかである。(高橋正子)
窓よりの夜気しのび寄り秋立ちぬ★★★
香り来る朝の田道や稲の花★★★
●小西 宏
虫篭の軽きを子らのそれぞれに★★★★
虫篭をもった子がそれぞれ。篭に虫が入っているのか、いないのか。それはこの句では問題ではない。虫篭の軽さが子供の幼さ、風の軽さを表している。(高橋正子)
秋風の雲の高きや百日紅★★★
選ばれし鉢真っ直ぐに菊蕾★★★
●小口泰與
赤城から朝の大気や秋近し★★★
新刀の反りや夜涼の星の数★★★
朝涼や赤城の肌の浅葱色★★★
●多田有花
空蝉の数多落ちたる山の道★★★
護摩堂より香の流れ来る原爆忌★★★
朝の日の壁に差しけり秋に入る★★★
●桑本栄太郎
炎ゆれ鐘に黙祷原爆忌★★★
突風の吹けば忽ち雷雨かな★★★
和菓子屋の帰省みやげの混雑に★★★
●小西 宏
水色の海に櫂おき熱帯魚★★★★
「海に櫂おき」で、この句が軽くなった。そのため、熱帯魚の動きも、作者の心も軽やかになった。沖縄の水色の海だろうか。熱帯魚の泳ぐ海が楽しい。(高橋正子)
栗毬の青く小さく今日の秋★★★
立秋の我が家のカレー五穀米★★★
●小口泰與
雲海の忽とうごめき渦巻けり
頂上やあびる大気と時鳥
ラベンダーの香のひろごれる山の駅
●古田敬二
野に立ちて齧るトマトに日の温み
先端を振り上げ伸びゆくかぼちゃ蔓
鍬先が跳ね返される夏の畑
●多田有花
蝉捕らえしばらく眺め放ちやる
街ほっと一息つくや驟雨あと
青空に雲はや立ちぬ広島忌
●藤田裕子
鐘の音の地上清めし原爆忌
いそいそと母の手を引き浴衣の児
大夕焼和太鼓ふるわす女衆
●桑本栄太郎
<鎮魂の三句>
献水の竹筒青き原爆忌
「竹筒青き」でこの句が生きた。汲みたての清水を青竹を筒に入れて持参した参拝者。「水を!」と言って亡くなった多くに人がいたことを思えば、清水は鎮魂の意味が大きい。(高橋正子)
炎ゆれ篤き誓いや広島忌
君逝きて早やも七年芙蓉咲く
●佃 康水
大夕立叩き跳ねたる万の椅子
原爆慰霊祭に用意された万の椅子。突然の大夕立が椅子を叩き、跳ね上がる。その夕立の水が目に見える。壮観ではなく壮絶となる。(高橋正子)
たそがれて祈りの影や夏終わる
梧桐の実やくれないの莢ひらく
●小西 宏
琉球の甍の太し夏の雲
谷戸ゆけば夏蜩の四方より
肥え膨らむ青団栗の炎天下
●小口泰與
朝蝉や田園アート眼間に★★★
夕さりの利根へ水切り風かおる★★★
ゆくりやく釣れし鰻や竿うねる★★★
●佃 康水
かなかなや未明の島の動き出す★★★★
かなかなが鳴くと晩夏である。島を包むようにかなかなが鳴き始め未明の島が動き始める。「島」であるのがよい。(高橋正子)
万両の花のこぼるる庫裏の庭★★★
かなかなに目覚むケビンの朝かな★★★
●迫田和代
亡くなった人人人の原爆忌★★★
水の音心に響く夏も行く★★★
夏の陽にはじけるごとく薔薇が咲く★★★
●古田敬二
白桃届く箱から香り溢れさせ★★★★
白桃は、桃のなかでも香りが特に良い。白桃の入った箱から、もうよい香りがあふれている。みずみずしい白桃をもらった嬉しさがあふれている。(高橋正子)
冬瓜を畦に転がし眺めけり★★★
水筒を傾けのその先雲の峰★★★
●桑本栄太郎
キャンパスの煉瓦炎暑や昼下がり★★★
鉄塔の嶺から谷へ雲の峰★★★
ひぐらしの鳴いて郷愁つのりけり★★★
●黒谷光子
夏の旅オープンカーと後先に★★★
雪渓にわずか凸凹撫でてみる★★★
振り返る山に雪渓光りおり★★★
●小西 宏
蝉時雨背に負いてまた道ゆけり★★★★
蝉時雨の道を歩いてきて、ちょっと休憩をしたのだろうか。また、蝉時雨を背に降らせて道を歩いてゆく。「また道ゆけり」に哀愁がある。(高橋正子)
未だ眠き目にミンミンの朝眩し★★★
夏空の青の深きや百日紅★★★
●小口泰與
赤城より矢庭にきたる夕立かな★★★
空蝉やはたとひざ打つ同窓会★★★
唐突に轟音生みしはたた神★★★
●小西 宏
老農の畑にトマトの群真っ赤★★★★
日焼けて深く刻まれた皺の農夫。それに真っ赤に熟れたトマト、トマト。この取り合わせが画になり、意味になっている。(高橋正子)
夏高くオオヤマトンボ巡航す★★★
病葉となりて桜の香の仄か★★★
●黒谷光子
木曽連山掲ぐ入道雲大き★★★★
青々と聳える木曽の山々。その山々が、また堂々と入道雲を掲げている。この連山にして、この入道雲。真夏の雄々しい姿がさわやかだ。(高橋正子)
山頂へ続く雪渓幾筋も★★★
立ち止まりまた立ち止まりお花畑★★★
●多田有花
山の水たっぷり汲んで墓洗う★★★★
墓地は山のふもとにある。冷たい山の水を汲んで、きれいさっぱりと墓を洗う。故人もさっぱりと涼しい思いになられたことであろう。(高橋正子)
暑き日につくつくぼうし鳴き初める★★★
朝の風窓より入りぬ秋近し★★★
●古田敬二
パナマ帽あれば炎暑へ出る勇気★★★
鍬の柄の真昼の極暑の熱のあり★★★
茄子を焼くちらりと母を思い出し★★★
●桑本栄太郎
夏草の午後ともなれば萎れけり★★★
枝先の微風逃さずさるすべり★★★
干上がりて小石の流れ旱川★★★
●高橋秀之
水平線から昇る夏の陽は眩し★★★★
夏は朝日にして、はや力強く眩しい。水平線から昇る朝日は、海を輝かせて特に眩しい。(高橋正子)
昇る日が夏の青海の揺れ照らす★★★
眼前にあるのは夏の空と海★★★