8月15日

●高橋秀之
京の街見晴らす高台盂蘭盆会★★★
盆灯篭まっすぐ続く参拝道★★★
墓洗うときも喧嘩の元気よさ★★★

●小口泰與
きちこうや一朶の雲の生まれけり★★★★
「桔梗」と書いて「きちこう」とも「ききょう」とも読む。きちこうの紫色と一朶の雲の白い色のとりあわせが美しい。ただそれだけでなく、きちこうの咲く季節が、ゆったりと爽やかに表現されている。(高橋正子)

靄を呼ぶ硬き風吹き沢桔梗★★★
葛咲くやポテトチップス重ね食ぶ★★★

●小西 宏
トンボ飛ぶ海の明るい墓参り★★★★
大鉢に芋の葉青く天に揺れ★★★
電柱に当たり飛び散る秋の蝉★★★

8月14日

●小口泰與
線香の馥郁たるや魂迎え★★★
きちこうや一朶の雲の生まれおり★★★
靄をを呼ぶ硬き風吹き沢桔梗★★★

●祝恵子
ハイビスカス連日咲いて鉢にあり★★★★
水遊びする子は自転車乗りいれて★★★
とうがんのズシリ重さを蔓支え★★★

●迫田和代
曇り空日傘をどこかに置き忘れ★★★
遠くから海鳴りの音夜の秋★★★
草むらにかそけき虫の音秋に入り★★★

●多田有花
ふるさとは墓参の道のあるところ★★★
花筒に冷たき清水盂蘭盆会★★★★
百日紅木陰に並ぶ地蔵尊★★★

●下地鉄
雷鳴去り暫しの揺れのしずけさよ★★★
雷鳴の去り行く空の蒼さかな★★★★
鳴り響いた雷鳴が小さくなって去って行く。去ってゆく空を見れば、青々とした空である。もう、雷鳴もないだろう。ほっと安心するはれやかな心。(高橋正子)

雷雨さり水平の線くっきりと★★★

●小西 宏
蜩の鳴きいし森の流れ星★★★
海近くトンボ集える墓参り★★★★
それぞれの家の墓地は、山裾にあったり、市街地を眺める丘にあったりする。宏さんの墓参は海の近くのお墓。見晴らしのよい墓地には、トンボが集い爽やかである。(高橋正子)

法師蝉鳴いて半月やや西へ★★★

8月13日

●祝恵子
前篭に買われし夏花帰りゆく★★★
木漏れ日て冬瓜肌を光らせる★★★
新しき靴の一歩よ秋きたる★★★★
新しい靴をおろし、一歩を踏み出す。新しいものを履く快い緊張がある。新しい季節、秋も同時にやって来た。(高橋正子)

●小口泰與
あけぼのの山路色取る赤のまま★★★
朝顔や冷気あふるる赤城山★★★
武蔵野や丘に溢れし女郎花★★★★

●多田有花
八月の風求め部屋を移動する★★★
早朝の光新たに涼しけり★★★
じりじりと午後の残暑のいや増せり★★★

●藤田洋子
空淡く瀬戸の夕凪始まりぬ★★★
八月の海は静かに藍満ちて★★★
蜻蛉の頭くるりと朝の晴★★★★
ちょっと愉快な蜻蛉である。朝も気持ちよく晴れ、頭をくるりと回してあたりを眺めたのだ。これから飛び立つのか、しばらく止まっているのか。(高橋正子)

●古田敬二
まっすぐな竹通り来る風涼し★★★
耳に鳴る新涼うれし森を行く★★★
新涼やまっすぐ伸びる森の道★★★

●小西 宏
朝顔の紫紺に触れし細き道★★★
楠深き稲荷の杜の蝉時雨★★★
赤々と残暑一日沈みゆく★★★

8月11日-12日

8月12日

●小口泰與
草の秀の露の並びて朝日かな★★★★
露草や靄に沈みし赤城山★★★
かなかなやケーイトボールに集いおり★★★

●佃 康水
鳴き変わる日と記しおく法師蝉★★★

音遥か選句をしつつ遠花火★★★
選句していると、遠くに花火の揚がる音がする。ほどよい緊張をもって選句しながらも、目に華やかな花火が浮かぶ。心ゆたかな時間である。(高橋正子)

暮れ残る湾へ場所取る花火船★★★★

●小西 宏
よれよれのシャツ着残暑の街歩く★★★
さるすべりの白が揺れてる稲光★★★
稲妻の次第に繁く草の陰★★★

8月11日

●小口泰與
草の秀をかざる朝露かがよえる★★★
秋晴や浅間高原水青し★★★
浅間嶺をきままに流る秋の雲★★★

●桑本栄太郎
秋暑し嶺の端潤みうねり居り★★★
日差し受け襤褸親しき古すだれ★★★
部活子の日焼け厭わずおらびけり★★★

●多田有花
早稲の田に稔りの色の兆しおり★★★
まだほかの田は稲の花が咲き始めたころなのに、早稲田は稔りの色が兆している。はやも見つけた稔りの兆しの色に驚きがある。(高橋正子)

提灯の吊られ今宵の踊り待つ★★★
橋の霞む残暑の光かな★★★

8月10日(土)

●小口泰與
秋うらら渡りくる風透き通る★★★★
朝顔や夜雨の雫のかがよえる★★★
利根川へ支流落ち合う下り鮎★★★

●小西 宏
夜は風の失せて寝苦し秋の蝉★★★
有りの実のひたすら甘き昼餉あと★★★
太陽を走る直球甲子園★★★

●高橋秀之
秋暑し天気予報の赤き地図★★★★
今年の残暑は、これまでになく厳しい。明日は少しは涼しくなるかと天気予報のテレビ画面を見るが、日本列島ほとんどが赤く塗られている。明日も暑に耐える気構えでおらねばならぬ。(高橋正子)

朝顔の数を数えて観察記★★★
初秋の朝の木漏れ日縞模様★★★

●桑本栄太郎
立秋の風の匂いの田道かな★★★★
朝靄の潤む田道や稲の花★★★
稲の穂の早やも出揃い香りけり★★★

8月9日(金)

●小口泰與
ほろほろと百日紅の散りにけり★★★
秋光や木道沼へつづきおり★★★
秋光や大きくまがる小海線★★★

●小西 宏
ひぐらしを静かに聴けば森の風★★★
喉晒す空に鴉の残暑かな★★★
真っ黒な顔の泣いてる甲子園★★★

●桑本栄太郎
田へ注ぐ水音ゆかし稲の花★★★
稲の花が咲き、残暑が厳しいと言いながらも、田へ注ぐ水音に秋の気配が感じられるようになたった。静かな明るさのある句に、さわやかさがある。(高橋正子)

朝の黄の畑の垣根や花南瓜★★★
立秋のビルに茜の夕日かな★★★

8月8日(木)

●小口泰與
露草や長き裾野も靄の中★★★
啄木鳥や巨木豊かな深き森★★★★
秋光や志賀高原の空深し★★★

●多田有花
稲妻の一閃南の窓走る★★★★
午後の雨残暑流して夕暮れる★★★
三日目は音のみで過ぎ秋の雷★★★

●桑本栄太郎
坂道の風を下れば稲の花★★★★
「風を下れば」に詩がある。稲の花が咲くころは、暑い暑いと言いながらも、ときに心地よい風が吹く。そんな日に咲く稲の花
は爽やかである。(高橋正子)

窓よりの夜気しのび寄り秋立ちぬ★★★
香り来る朝の田道や稲の花★★★

●小西 宏
虫篭の軽きを子らのそれぞれに★★★★
虫篭をもった子がそれぞれ。篭に虫が入っているのか、いないのか。それはこの句では問題ではない。虫篭の軽さが子供の幼さ、風の軽さを表している。(高橋正子)

秋風の雲の高きや百日紅★★★
選ばれし鉢真っ直ぐに菊蕾★★★

8月7日(水)

●小口泰與
赤城から朝の大気や秋近し★★★
新刀の反りや夜涼の星の数★★★
朝涼や赤城の肌の浅葱色★★★

●多田有花
空蝉の数多落ちたる山の道★★★
護摩堂より香の流れ来る原爆忌★★★
朝の日の壁に差しけり秋に入る★★★

●桑本栄太郎
炎ゆれ鐘に黙祷原爆忌★★★
突風の吹けば忽ち雷雨かな★★★
和菓子屋の帰省みやげの混雑に★★★

●小西 宏
水色の海に櫂おき熱帯魚★★★★
「海に櫂おき」で、この句が軽くなった。そのため、熱帯魚の動きも、作者の心も軽やかになった。沖縄の水色の海だろうか。熱帯魚の泳ぐ海が楽しい。(高橋正子)

栗毬の青く小さく今日の秋★★★
立秋の我が家のカレー五穀米★★★

8月6日(火)


●小口泰與
雲海の忽とうごめき渦巻けり
頂上やあびる大気と時鳥
ラベンダーの香のひろごれる山の駅

●古田敬二
野に立ちて齧るトマトに日の温み
先端を振り上げ伸びゆくかぼちゃ蔓
鍬先が跳ね返される夏の畑

●多田有花
蝉捕らえしばらく眺め放ちやる
街ほっと一息つくや驟雨あと
青空に雲はや立ちぬ広島忌

●藤田裕子
鐘の音の地上清めし原爆忌
いそいそと母の手を引き浴衣の児
大夕焼和太鼓ふるわす女衆

●桑本栄太郎
<鎮魂の三句>
献水の竹筒青き原爆忌
「竹筒青き」でこの句が生きた。汲みたての清水を青竹を筒に入れて持参した参拝者。「水を!」と言って亡くなった多くに人がいたことを思えば、清水は鎮魂の意味が大きい。(高橋正子)

炎ゆれ篤き誓いや広島忌
君逝きて早やも七年芙蓉咲く

●佃 康水
大夕立叩き跳ねたる万の椅子
原爆慰霊祭に用意された万の椅子。突然の大夕立が椅子を叩き、跳ね上がる。その夕立の水が目に見える。壮観ではなく壮絶となる。(高橋正子)

たそがれて祈りの影や夏終わる
梧桐の実やくれないの莢ひらく

●小西 宏
琉球の甍の太し夏の雲
谷戸ゆけば夏蜩の四方より
肥え膨らむ青団栗の炎天下