8月24日

●迫田和代
もう会えぬ人と別れて白もくげ★★★
宇宙から永い旅終えた流星を★★★
打ち上げの花火の音に橋行き来★★★

●佃 康水
月光へ牡蠣種垂らす瀬戸の海★★★★
穏やかな瀬戸の海にさす月光は、平らかに海を照らし、海の命をはぐくんでいるようだ。牡蠣種も命のひとつ。(高橋正子)

笑む友の野良着の汚れ稲穂垂る★★★
盆法会媼は何時も聞き上手★★★

●小口泰與
青空を乗せ馳せ行けり秋の河★★★

三山の靄の消えけり稲の花★★★★
三山は、作者の住んでいる上州の三山であろう。三山にかかる靄が消え、すっきりとした山容を向こうに稲の花が咲いている。爽やかで、晴れやかな景色である。(高橋正子)

あけぼのの靄の中より桔梗かな★★★

●桑本栄太郎
朝方は家事を手伝う秋涼し★★★★
帰り来てすぐに湯浴みの残暑かな★★★
空覆う雲に歓喜や処暑の雨★★★

●多田有花
<叔母三回忌>
秋の百合法要の朝の庭に白し★★★★
仏前に秋のくだものとりどりに★★★
雨降って残る暑さをおさめけり★★★

●小西 宏
柿の実のやや色づいた堅い四角★★★★
銀色に光る西瓜の種の穴★★★
夕暮の窪地に入れば法師蝉★★★

●高橋秀之
ドラえもん音頭で二重に踊りの輪★★★
提燈のわが名を探し地蔵盆★★★
秋の風提燈揺らし影も揺れ★★★

8月23日

●小口泰與
ひぐらしや山の湯煙りゆったりと★★★
あけぼのや風に遊びし牽牛花★★★
田一枚影の越ゆるや鬼やんま★★★★

●桑本栄太郎
風少し乾きを覚ゆ処暑の朝★★★
処暑の日の雲の途切れや青空に★★★
秋蝉の午後ともなれば黙り居り★★★

●多田有花
主旋律おーしつくつくばかりなり★★★
秋の蝉したたか背にぶつかりぬ★★★
処暑の風感じて山を歩く午後★★★

●小西 宏
葉に浮かぶ芙蓉の白の柔らかし★★★
忽ちに雨降り過ぎて涼新た★★★

丘の灯に風ゆるやかや虫の声★★★★
「風ゆるやか」がいい。風だけでなく、虫の声もゆるやかに響いている。ゆるやかさが快い。(高橋正子)

8月22日

●小口泰與
川風の起ちて影増す蜻蛉かな★★★★
「影増す」の観察がよい。涼しい川風が吹くと、強い日差しを受けてだろう、蜻蛉の飛ぶ影が稲の上に、道にと、あちこち見える。残暑のなかにも、さわやかさが感じ取れる。(高橋正子)

朝靄の中に聞こゆや木の実落つ★★★
露草や忽と消えたり赤城山★★★

●古田敬二
残照の中に涼しき風気配★★★
信号の赤の向こうの百日紅★★★
猫じゃらし全てが風にカーブする★★★

●桑本栄太郎
<高速道の深夜走行にて京都へ>
出発は星の涼しき米子道★★★★
昼間の暑さや混雑を避けて深夜高速道路を走る。故郷へ帰省を済ませた安堵に、星の涼しい高速道路を走るのは、気持ちのよいものであろう。(高橋正子)

ほしづく夜はるか眼下に里灯り★★★
新涼の夜気に背伸びや仮眠あと★★★

●多田有花
鮮やかな夕焼け明日も残暑の日★★★
ときおりは雲に隠れて盆の月★★★
燕去る空に高さの加わりぬ★★★★
いつの間にか燕が去ってしまった空。がらんとした空に、そういえば高さが加わった感じだ。秋空の高さになりつつある。(高橋正子)

●小西 宏
真っ白に花たかく澄み百日紅★★★
丸刈に夏の終わりの優勝旗★★★
残雲や西の明かりの法師蝉★★★

8月21日

●祝恵子
早暁の音に始まり鵙の音も★★★
畑の井戸囲んでおりぬ稲の花★★★★
畑の井戸は旱のときの灌漑用であろう。旱の続きの猛暑の夏も終わり、無事稲が花をつけている。いよいよ、稲は実をつけ、熟れて実りのときを迎えるのだ。(高橋正子)

●小口泰與
朝顔や雨後紺青の赤城山★★★★
雨に洗われてすっきりとした紺青色になった赤城山。その山を背景に朝顔が開く。きっぱりと開く朝顔だ。(高橋正子)

薄野や風のもつれし山の裾★★★
浅間嶺と望月久にま見えけり★★★

●多田有花
夕焼けは背中に消えて宵月夜★★★
熱き茶を汲み新秋の風の中★★★
秋の陽の傾くままに描きおり★★★★

●桑本栄太郎
<故郷の海>
夕凪の眼下はるけく盆の海★★★
見晴るかす島根半島夕映えに★★★
いさり火の沖へつらなり盆の海★★★

8月20日

●小口泰與
虫の音や今朝の赤城は靄の中★★★
芙蓉咲く赤城の風のやわらかし★★★
遠き日や名前刻みし椿の実★★★★

●多田有花
朝夕にほのかに秋の顔の見え★★★
山すその稲田群れ飛ぶ赤とんぼ★★★
秋口の風が揺らせるカレンダー★★★

●桑本栄太郎
<盆帰省より>
水平線蒼き円みの盆の海★★★★
盆の海は、すでに秋の海となって幾分さびしさがある。遠く長い水平線は、地球の丸みで弧を描いている。「蒼き円み」である。そのような盆の海を眺めるときの心境の句。(高橋正子)

半島の入日真紅や盆の海★★★
列車待つミンミン蝉の駅舎かな★★★

●小西 宏
白砂の波の碧にカヌー漕ぐ★★★
心地よき風に重たき石榴の実★★★
一日の火照り遠きや秋入日★★★

8月18日-19日

8月19日

●小口泰與
秋の夜や雨の磴にも湯の煙★★★
秋の夜や雨に包まる湯の煙★★★
赤城より朝の冷気やとんぼ増ゆ★★★

●桑本栄太郎
<盆帰省>
丘上の昔語りや盆迎え★★★★
墓地は丘の上にある。お盆迎えの墓参りにゆくと、村の人たちや帰省した家族などが墓参りに来て、しばし昔の話に花が咲く。これも帰省の楽しみであり、故郷をリアルに感じるときであろう。(高橋正子)

父母眠る丘の上より盆の海★★★
見晴るかす潮の流れや盆の海★★★

●小西 宏
夕暮れて風ながれくる法師蝉★★★
唇に触れ枝豆の夕の風★★★
秋涼し街に小さな川花火★★★

8月18日

●小口泰與
コスモスやリフト静かに行き違う★★★
湯煙をふわり包みし霧におう★★★
石段や霧の下はう湯の煙★★★

●桑本栄太郎
<盆帰省>
星月夜眼下に灯りの道の駅★★★
山里の赤き瓦の残暑かな★★★
発電のプロペラ止まり盆の風★★★

●多田有花
初秋の風に吹かれて描きおり★★★★
暑さのなかにも、初秋には秋を感じさせる風が吹く。さらりとした初秋の風に吹かれて心地よく絵が描けることは嬉しい。(高橋正子)

夜明け前窓辺に虫の声を聞く★★★
稜線にたたずめば風新涼に★★★

●川名ますみ
夕暮れの空澄みゆきて遠花火★★★★
猛暑続きのこの夏、夕暮れの空が澄むことは。稀かもしれない。しかし、そんな夕暮れに遠花火が見えた。色も形もくっきりと、心に残る花火である。(高橋正子)

揚花火きれいな空に散りて落つ★★★
音もなく月下に花火しだれけり★★★

8月17日

●祝恵子
国ことば飛び出し笑う盆の席★★★
家ごとの風鈴音色の違いあり★★★
夕暮れて木槿の花は眠り落つ★★★

●小口泰與
月明や未だ蚯蚓の声聞かぬ★★★
露草や雲ひとつ無き浅間山★★★
やわやわと釣鐘人参風の中★★★

●佃 康水
一区画早も反射の鳥威し★★★
抱く児のばたつく脚も盆踊り★★★ 
特訓の少年弾む盆太鼓★★★

●迫田和代
気付かずに桜の木陰の川風を★★★
滝しぶきかかる処に人溢れ★★★★
滝しぶきがかかるところは、一段と涼しい。そこに誰も彼もが寄って人が溢れている。今年の猛暑に天然の涼しさを恋うのも無理もない。(高橋正子)

もう会えぬ人と別れて花むくげ★★★

●友田修
完熟のトマトの赤き散歩道★★★★
弾けるように熟れた真っ赤なトマトを畑に見つけたのは新鮮な驚き。夏もそろそろ終わる頃、散歩を楽しむゆっくりした時間の、またフレッシュなこと。(高橋正子)

吹く風の柔らかきかな盂蘭盆会★★★
草笛を吹く川べりや盆休み★★★

●桑本栄太郎
<盆帰省夜間走行より>
街騒の街並み後に盆帰省★★★
山百合やヘッドライトのハイウェイに★★★
星涼し眼下に灯りのドライブイン★★★

●下地鉄
日暮時一寸ばかりの秋の影★★★
秋立ちて薄雲染める夕日かな★★★
落日は赤かったあの終戦日★★★

●高橋秀之
ふっと消える小川の上に秋の蝶★★★
せせらぎの流れに添うて赤とんぼ★★★
暑き日も夕暮れ時は秋の空★★★

8月16日

●小口泰與
したたかに伸び行く蔓や牽牛花★★★
単線の朽し犬釘明治草★★★
露草や浅間の空はいぶし銀★★★

●下地鉄 
湾を抱く旱の空の蒼さかな★★★★
旱の空が湾を抱く。空もあくまでも蒼く、湾はあくまでも静か。旱がその静けさを奥深くさせる。(高橋正子)

その日のこと記憶も失せし終戦日★★★
金星を剥がれし人の敗戦日★★★

●多田有花
早稲の田を渡る風受け墓詣★★★★
暑い盛りの墓参だが、早稲の田は稲穂にも熟れ色が兆し、風を渡らせている。心静かで明るい墓参。(高橋正子)

四代の世代が集い墓参り★★★
盆過やつくつくぼうしの森となる★★★

●古田敬二
新涼を大きく吹きあげ飛騨の川★★★
飛騨川の緑の流れ涼新た★★★
緑色して飛騨川流れ終戦日★★★