今日の秀句/6月11日~6月20日

6月20日(2句)

★明日祭り音のかそけき真夜の雨/小口泰與
明日の祭りを気にかけている真夜中、雨が降るかすかな音が聞こえる。祭り前のしっとりと静かな心持がいい。(髙橋正子)

★だんだんと緑濃くなる青嶺かな/弓削和人
日々青嶺を見ていると、緑が濃くなっていくのがわかる。次第に夏らしくなっていく青嶺を眺める日々の楽しさが伝わってくる。(髙橋正子)

6月19日(1句)

★堰水の音に沿いゆく暑さかな/桑本栄太郎
堰の水が落ちる音を聞きながら、その音に沿って歩いている。暑さは真夏並みだが、かたや堰水は涼しい音を立てている。どこまでも沿って歩きたい。(髙橋正子)
6月18日(1句)

★砂利道の水溢れおり走り梅雨/廣田洋一
「走り梅雨」は梅雨入りの前に梅雨に似た曇りや雨のぐずついた天気が続くことをいうが、この句では、「砂利道の水溢れおり」で、それを感じた。人は、記憶のなかにも梅雨の景色をありありと持っている。(髙橋正子)
6月17日(1句)

★つばめ旋回夏陽沈みゆくなかを/多田有花
「つばめ旋回」はよく見る場面だが、これにつづけて「夏陽沈みゆくなかを」の場面は驚かされた。旋回するつばめがしみじみと思われる。(髙橋正子)

6月16日(2句)

★写真機の収む浅間や夏の風/小口泰與
泰與さんの写真の腕はたくさんの賞をとるほどで、すばらしいのだ。会心の浅間山を写真機に収めて涼やかな夏の風を受けている。(髙橋正子)

★かたわらに燕眠らせ夏の月/多田有花
「かたわらに」言葉がやわらかい。「眠る燕」と「夏の月」の童話の絵本に画かれた絵のようで、これもやさしい。(髙橋正子)

6月15日(1句)

★紫を縁に揃えて花菖蒲/多田有花
花菖蒲は紫や白が多いとはいえ、観察すると、淡い紫色や、白に紫のすじがはいったり、この句のように紫が縁にあるものなどいろいろある。縁に紫があるのは珍しく、涼しい印象がしていい。(髙橋正子)
6月14日(2句)

★草原の果なき空や天の川/廣田洋一
この句から草原は、「サバンナ」をイメージする。草原の果てしない空にかかる天の川の砂のような無数の星に、原初の夜空が呼び起こされそうだ。(髙橋正子)

★滴りの岩間の端も滴れる/弓削和人

描写が細かいが、「岩間の端」は、岩の飛び出ているところと読んだ。岩の間から滴っている。その岩の飛び出たところからも滴っている。あまねく滴る岩がクローズアップされ、涼しくて、力強い景色を眼前にすることができる句。(髙橋正子)
6月13日(1句)

★家庭菜園とうきびの花出そろいぬ/多田有花
家庭菜園が一番いきいきとしているのは夏だろう。定番の茄子やトマト、胡瓜を始め、とうきびも植えられる。花が揃って出そろうのもうれしいことだ。「出そろう」喜びが目に見えるようだ。(髙橋正子)
6月12日(1句)

★あじさいの毬をひと枝剪り活ける/桑本栄太郎
「あじさいの毬」と言われれば、大きなふんわりした紫陽花の花を思い起す。ひと枝剪れば花瓶に足りるほどの花。「剪りて活ける」と言う行為もいい。(髙橋正子)

6月11日(1句)

★短夜や開きしままの文庫本/廣田洋一
作者は文庫本を読みながら、いつの間にか眠ったのであろうか。目覚めてみれば、文庫本は開いたまま短い夜は明けていた。このような場面が想像できた。短夜と文庫本の取り合わせが絶妙で、作者の生活を垣間見させてくれる。(髙橋正子)

6月11日~6月20日

6月20日(5名)

小口泰與
翡翠の川えび咥え来りけり★★★
明日祭り音のかそけき真夜の雨★★★★
翡翠の潜りし水の噴火せり★★★

多田有花
ステーキ重食べる涼しき卓につき★★★★
鹿よけに守られ青き紫陽花咲く★★★
あじさいを飾る神社の手水鉢★★★

桑本栄太郎
あじさいの紺の色濃く雨を待つ★★★★
木蔭ゆく朝の散歩の夏日かな★★★
ふんぷんと匂い立ち来る草刈り機★★★

廣田洋一
百合の花大きく開き蕊光る★★★★
お互いにそっぽ向きたる百合の花★★★
河骨や池のよどみに黄の澄みて★★★
弓削和人
つりがね草こぼれんばかりの袋提げ★★★

だんだんと緑の濃ゆる青嶺かな(原句)
「濃し」は形容詞で、動詞ではないので、「濃ゆる」は問題です。(髙橋正子)
だんだんと緑濃くなる青嶺かな(正子添削)

路の照りへ土より離れ蚯蚓出づ ★★★
6月19日(3名)

小口泰與
山女釣り徒歩渡りたる山の渓★★★
姦しき蝦蟇の鳴き声銅鑼のごと★★★
翡翠や一直線に水面へ★★★

多田有花
夏山に立てば淡路島はるか★★★
入道雲湧く城跡の山の上★★★
夏暖簾くぐり老舗の和菓子店★★★

桑本栄太郎
堰水の音に沿いゆく暑さかな★★★★
白花の風の木蔭に夾竹桃★★★
涼風の木蔭に入りてひと休み★★★
6月18日(5名)
小口泰與
翡翠や長き嘴より水垂らす★★★
水過行く此処かしこに鮎の群★★★
置き鈎に掛かりし鯰子の笑顔★★★

多田有花
夕刻にさっと仲夏の通り雨★★★
仰ぎたる青葉若葉の尊けれ★★★
睡蓮を見つつ太平記の山へ★★★

廣田洋一
白靴を際立たせたる長き脚★★★
砂利道の水溢れおり走り梅雨★★★★
亀の子や万年生きよと神の池★★★

桑本栄太郎
夜の更けて音に目覚むる夜立ちかな★★★
雨音の激しく聞こゆ梅雨入りまだ★★★
雨あがり楓若葉のきらめける★★★

弓削和人
故郷のひそり奥間の走馬灯★★★
尾の欠ける不動のとかげ陽に満ちて★★★
花菖蒲ひそか咲きいる清き湫★★★
6月17日(4名)

小口泰與
川蝉やかぎろう沼の面に魚★★★
青田風赤城のすそ野隠れなし★★★
隠れ沼や川蝉枝を動かざる★★★

多田有花
つばめ旋回夏陽沈みゆくなかを★★★★
扇風機羽根を付ければ生き返る★★★
水茄子を浅漬けにして食しけり★★★

廣田洋一
取り敢えず盥に入れし子亀かな★★★★
青芝にぽとりと落ちて安打かな★★★
また一匹茶碗に落ちる小蠅かな★★★

桑本栄太郎
曇りいて降らぬ朝や花南天★★★
帰り来て一気に汗の溽暑かな★★★
黒蟻の慌てふためく雨予報★★★★
6月16日(4名)
廣田洋一
裸足にて青芝駆ける子の笑顔★★★★
青芝やきらきら光る雨上がり★★★
亀の子や親の背中にまどみおり★★★

小口泰與
写真機の収む浅間や夏の風★★★★
風薫る垣穂に隠る野鳥かな★★★
牛蛙鳴き合い沼を狭くせり★★★

桑本栄太郎
じりじりと京の町家の炎暑かな★★★
もつこりと嶺に育てる雲の峰★★★
父の日や父はなけれど爺の我★★★

多田有花
蚊取線香点ければ始まる宵の時★★★★
かたわらに燕眠らせ夏の月★★★★
うるささに作る手製の蠅叩き★★★
6月15日(3名)

小口泰與
利根川の波の遊びて夏の月★★★
鮎掛かるさびき釣なり利根の風★★★
浅間嶺に夏雲遊び限りなし★★★

多田有花
鳴いてまた虚空へ飛び出す夏つばめ★★★
南北の窓開け六月の風通す★★★
紫を縁に揃えて花菖蒲★★★★

廣田洋一
城跡の小さき丘や杜鵑★★★
街角に白き幕垂れ山法師★★★
白靴やボール蹴り合う父と子等★★★
6月14日(5名)

小口泰與
おおよその赤城のすそ野麦青む★★★
参考までに「麦青む」は春の季語です。(髙橋正子)

夏霧や尾瀬の木道眼間に★★★
塩鮎をがぶりと食し面映ゆし★★★

多田有花
しもつけに細かき雨の続きおり★★★
猫がいておだやかに暮れ夏の夕★★★
青鷺の大きな影が頭上ゆく★★★★
参考までに。「鷺」だけでは季語にならないのに、「白鷺」「青鷺」となれは夏の季語になる
ので気をつけないといけない季語です。(髙橋正子)

桑本栄太郎
お使いの行きも帰りも片かげり★★★
花合歓のうすき紅さし佳人かな★★★
ドローンの夜空に虹の京の夜★★★

廣田洋一
地の果ての岬遠くに雲の峰★★★
草原の果なき空や天の川★★★★
杜鵑産土の森鳴き渡り★★★

弓削和人
滴りの岩間の端も滴れる★★★★
夏の月生きたるものの囃子かな★★★
羅の掛けたるままにゆるぎなく★★★
6月13日(5名)

小口泰與
川蝉や川面めがけて翔けにける★★★
おおらかに利根の流れや通し鴨★★★
けたたましく翡翠鳴きて沼の面へ★★★

廣田洋一
百合の香や人を引き付け夕間暮れ★★★
都会では水不足なり天の川★★★
プールにてバレーゲームや賑やかに★★★

多田有花
ほととぎす血潮の如き朝焼けに★★★
家庭菜園とうきびの花出そろいぬ★★★★
高架橋の上の夏空ひこうき雲★★★

桑本栄太郎
せせらぎの坂を下りぬ木下闇★★★
手弱女と云うは西施や合歓の花★★★
堪らずに扇風機出す暑さかな★★★

弓削和人
夏めくやカーテン越しの淡き風★★★
雨を乞うように角上ぐカタツムリ★★★
夏木立一葉一枝の寝息かな★★★
6月12日(5名)
小口泰與
翡翠や静寂の中の鯉の鰭★★★
万緑や牧の子牛のおっとりと★★★★
利根川の岸辺おおむね夏景色★★★

廣田洋一
明易き庭に飛び来る鳥の声★★★★
門前に人を迎える黄花百合★★★
竹林の奥より聞こゆ杜鵑★★★

多田有花
赤子抱く父とあいさつ夏の朝★★★
腸内を覗きこまれている入梅★★★
水田はすでに梅雨入り待つばかり★★★

桑本栄太郎
夏あかね舗道に影の数多かな(原句)
夏あかね鋪道に影の数多飛び(正子添削)

あじさいの毬をひと枝剪り活ける★★★★
緑蔭の風をひと時憩いけり★★★

弓削和人
枇杷の実のごろごろごつと薄紙へ★★★
一房のあじさい小虫の城と見ゆ★★★

玉苗の美(は)しきは雲と並びけり★★★★
景色はいいと思います。「玉苗」は「早苗」の美称でそれ自体美しいイメージを持っているので、「玉苗の美しきは」の表現がリアリティを欠く結果になっていると思います。ここを工夫されるといいと思います。★印4つですが、秀句にあげなかった理由です。(髙橋正子)
6月11日(4名)

小口泰與
隠れ沼や川蝉枝を動かざる★★★
白鷺の羽音激しき山の沼★★★
虹指して子等騒ぎけり下校時★★★
「騒ぐ」が気になります。(髙橋正子)

多田有花
羽音して蚊取線香を点火★★★
銭葵日差し日ごとに強くなり★★★
集まりて花壇植え替え夏の朝★★★

桑本栄太郎
青鷺の途方に暮れるように佇つ★★★
緑蔭にしばし憩うや朝歩き★★★
信号を待つ間も入りぬ片かげり★★★

廣田洋一
羽ばたきの練習開始燕の子★★★
この句で、「開始」は詩の言葉としてどうでしょうか。「始め(はじめ)」でいいのではと思います。(髙橋正子)
短夜や開きしままの文庫本★★★★
川風を受け流したる青芒★★★

自由な投句箱/6月1日~6月10日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/6月1日~6月10日

6月10日

該当句無し
6月9日(2句)

★鮎釣や浅間に遊ぶ雲数多/小口泰與
浅間山の景色を見ながらの鮎釣。「遊ぶ雲」が釣り人、つまり作者の楽しい気持ちを表していて、読み手にもその楽しさが伝わってくる。(髙橋正子)

★七変化旅の始めは白き色/廣田洋一
七変化は紫陽花のことだが、色が次第に変わってゆく花である。旅に出かけるときは白色。旅から帰ったときはどんな色になっているのか楽しみ。白に始まる旅の心も、旅を終えた時はどんな色に染まっているのか。(髙橋正子)
6月8日(1句)

★家々と空を映して代田あり/多田有花
代田は田植の準備が整って水が張られた田んぼのことをいう。水を湛えた代田には、近くの家々と空が映っている。「家々」だけでなく、「空」に気づいたことで、代田に映る景色がはっきりしてきた。ここがいい。(髙橋正子)
6月7日(1句)

★山形の澄みたる空やさくらんぼ/廣田洋一
山形はさくらんぼの一大産地。佐藤錦など有名な品種もあって、さくらんぼが熟れるころ訪ねたいところ。「澄みたる空」が作者の思い入れでもあり、さくらんぼに相応しい。(髙橋正子)
6月6日(1句)

★来客を妻出迎えに若葉風/桑本栄太郎
来客を迎えるのは、たいていうれしいもの。若葉を吹く心地よい風へでて来客を迎える行為も嬉しさの表れ。季節の良さがなおさら感じられる。(髙橋正子)

6月5日(1句)

★水入りし田の漣に立葵/多田有花
立葵は蕾の先まで咲くと梅雨があがるとも言われる花。水の入った田んぼはそよ風に漣が立っている。そこに丈高く立葵が咲いて、景色が涼やかなのがいい。(髙橋正子)

6月4日(1句)

★十薬や午後の光を強く浴び/多田有花
十薬は強い植物。しっかり根を張り、はびこっている。午後の強い光にも動じない。その一方、強さを思わせぬ白い十字の花は可憐。二つともがあっての十薬。(髙橋正子)
6月3日(1句)

★黒蟻の鋪道を歩む孤独かな/桑本栄太郎
鋪道を歩む黒蟻を見つけ、その歩み続ける姿を孤独だと感じた。夏の鋪道の暑さの中、黒蟻の静かな姿がくっきりと目に映る。(髙橋正子)
6月2日(1句)

★目覚めても眠りても鳴きほととぎす/多田有花
ほととぎすは日没後や夜明けによく鳴くといわれている。昼間も空を駆け飛びながら鳴くのもめずらしくない。5月から6月にかけホトトギスの声は和歌にも多く詠まれ、初夏を象徴している。今も変わらず実際の声を聞く。(髙橋正子)

6月1日(2句)

★夏蝶や黄色き光撒き散らし/廣田洋一
夏の蝶としては、アゲハなど大型な蝶をよく見るが、ときに、ちいさい黄色い蝶を見かける。ひらひら舞う黄色の蝶は、光を撒き散らして夏の庭をかがやかしている。(髙橋正子)

★今年竹大きく揺れて戻りけり/小口泰與
竹の生長は驚くべきはやさ。丈高く伸びた今年竹が大きく揺れて撓うと、大きく揺れもどる。その振幅の躍動感は竹の力強さとなって見るものを驚かす。
(髙橋正子)

6月1日~6月10日

6月10日(2名)

廣田洋一
庭の主新しくなり山法師★★★
昼顔の優しく咲けり法の庭★★★
押し合いて口を開けたる燕の子★★★

桑本栄太郎
小手毬の白に紅さす狭庭かな★★★
ふるさとの”エリザベス”とうメロン着く★★★
曇りても天の明るき走り梅雨★★★
6月9日(4名)

多田有花
田植機や夫操縦妻誘導★★★
出勤の始まる頃や時計草★★★
夏の風洗濯物を片寄せす★★★

小口泰與
鮎釣や浅間に遊ぶ雲数多★★★★
翡翠やかぎろう沼の面に魚★★★
青田風赤城のすそ野隠れなし★★★

廣田洋一
七変化旅の始めは白き色★★★★
白紫陽花ほんのり紅を刺しにけり★★★
紫の紫陽花多き法の池★★★

桑本栄太郎
  <阪急電車に乗り京都市内へ>
みどりさす河川畑や桂川★★★
せせらぎに紫陽花浸かる高瀬川★★★
見晴るかす遥か鞍馬や梅雨曇★★★
6月8日(4名)

多田有花
家々と空を映して代田あり★★★★
つややかに陽を返しおり松葉菊★★★
風を待つ蓬髪のごと栗の花★★★

小口泰與
鮎掛かるさびき釣なり利根の風★★★
浅間嶺に夏雲遊び限りなし★★★
写真機に収む浅間山や夏の風 「あさま」★★★

廣田洋一
新玉葱細かくきざみカレーかな★★★
訳もなく捨てられてをり新玉葱★★★
味噌つけて生の胡瓜の夕べかな★★★

桑本栄太郎
木下闇隙間の天の青きかな★★★
房咲きの蹲踞となりぬ筒あじさい★★★
夾竹桃早も団地を飾りけり★★★
6月7日(金)

弓削和人
旅人を常世へ通す茅の輪かな★★★
渓谷の滝のしぶきや甘味店★★★
藍甕をこぼすに似たり夏の湖★★★

多田有花
ひとつずつもの片付けて梅雨を待つ★★★
花好きの人の庭なり花葵★★★
小さくも艶やかに光り茄子の紺★★★★

小口泰與
おおらかに翡翠鳴きて夏の沼★★★
夏霧や尾瀬の木道思い出づ★★★
塩鮎を丸ごと食し面映ゆし★★★

廣田洋一
黙々と草を取りたり狭き庭★★★
山形の澄みたる空やさくらんぼ★★★★
青梅のほのと紅さしうら若し★★★

桑本栄太郎
姫女苑のうす紅さすや雨催い★★★
あじさいの雨待ち顔や紺の色★★★
「「~顔」が問題です。(髙橋正子)

山桃の赤き実の落つ鋪道かな★★★★
6月6日(3名)

小口泰與
緑陰に覆われ子牛のおっとりと★★★★
おっとりと利根の流れや通し鴨★★★
おおよその赤城のすそ野麦青む★★★

多田有花
雀来て代田に餌をついばみぬ★★★
透百合面をあげて咲きにけり★★★
南天の花は実よりも控え目に★★★

桑本栄太郎
産直の婆の露店や胡瓜買う★★★
緑蔭となりし窓辺や句の推敲★★★
来客を妻出迎えに若葉風★★★★
6月5日(5名)

小口泰與
翡翠や静寂の中の鯉の跳ね★★★
万緑や牧の子牛のおおらかに★★★★
利根川の岸辺おおむね夏景色★★★ 

多田有花
水入りし田の漣に立葵★★★★
ほととぎす盛んに鳴きぬ快晴に★★★
アマリリス防犯カメラの下に咲き★★★ 

廣田洋一
駆けて来る日傘を待ちて市バスかな★★★
雨傘の日傘に変わる雨上がり★★★
黙然と席に座りて夏句会★★★ 

弓削和人
宿に着き薄暑と別れ旅鞄★★★
紫陽花の薄みどりなる四の辻󠄀★★★
新築に停留所かな立葵★★★ 

桑本栄太郎
頬赤き粒もありたり梅漬ける★★★
山影の映る田水や晩稲田に★★★
溝川の音に沿い行き風薫る★★★ 

6月4日(4名)

小口泰與
奇岩なる妙義の峰峰や夏の雲★★★
流れ行く野球ボールや夏の朝★★★
翡翠の眼光光る水辺かな★★★ 

多田有花
散歩する薔薇咲く庭のかたわらを★★★
飛び交わす巣作り中の夏つばめ★★★
十薬や午後の光を強く浴び★★★★ 

廣田洋一
夕凪や波平らかに由比ヶ浜★★★
翡翠や水面掠めて飛び去りぬ★★★
行列し氷菓子待つ小町通り★★★ 

桑本栄太郎
緑蔭の高き梢の空の青★★★
泰山木の花の朽ち居り錆色に★★★
ふるさとは峰の辺りや夏入日★★★ 
 
6月3日(4名)
小口泰與
夕虹やカメラ手入れの我と妻★★★
おほどかの赤城のすそ野青田かな★★★
燕の子池の水飲むこと覚ゆ★★★

多田有花
水たっぷり流れ六月の用水路★★★
雨宿りしているつがいの雨燕★★★
鉄塔の影を映して代田あり★★★

桑本栄太郎
雨あがり今朝の青空五月晴れ★★★
黒蟻の鋪道を歩む孤独かな★★★★
青空に木々の枝躍る若葉寒む★★★

廣田洋一
友と居て宵の一刻薪能★★★
神宮の森をしっとり夏の雨★★★
高楼を赤く光らせ夏の雨★★★
6月2日(4名)

多田有花
目覚めても眠りても鳴きほととぎす★★★★
その影を甍に映し夏つばめ★★★★
下校の子駆けゆく薄暑の横断歩道★★★

廣田洋一
同じ木の一花毎に七変化★★★
一礼してざぶと飛び込むプールかな★★★
老人が群れて歩けるプールかな★★★

小口泰與
夏の沼強き朝日の射しにけり★★★
仰せの如く魚籠いっぱいの岩魚かな★★★
引き算も難なく出来て朝の虹★★★

桑本栄太郎
外つ人のひげの濃くあり京の夏★★★
鴨川に迫り出し並ぶ川床座敷★★★
外つ人のファミリー着物夏日かな★★★
6月1日(4名)

廣田洋一
雨を待つ遊水池の夏薊★★★
夏蝶や黄色き光撒き散らし★★★★
翡翠や一閃したる橋の下★★★

多田有花
はつなつのふるさと城山に登る★★★
見渡せば代搔きを待つ田の並ぶ★★★★
昼ごはん青葉の城跡に座り★★★

小口泰與
ばら咲くや訪う人の数多なり★★★
煽られて向き向き変える庭の百合(原句)
一句に動詞はなるべく一つに。言いたいことの中心がはっきりします。(髙橋正子)
煽られて花向き向きに庭の百合(正子添削)
今年竹大きく揺れて戻りけり★★★★

桑本栄太郎
雷鳴の夢のどこかに目覚めけり★★★
片蔭を伝い散歩や今朝の晴れ抓む★★★
手を伸ばし泰山木の花抓む ★★★

自由な投句箱/5月21日~5月31日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/5月21日~5月31日

5月31日(1句)
★縁側を開けるや蜥蜴走りけり/小口泰與
縁側を開けるや蜥蜴訪えり(原句)

原句は縁側を開けると蜥蜴が入ってきたと言う意味ですが、肝心の「訪えり」が蜥蜴の描写に不足です。添削は人間の住まうところに蜥蜴がいきいきと棲息していることを詠んだ例です。(髙橋正子)
5月30日(1句)

★草笛を吹いて孫らを驚かす/小口泰與
草笛で「ふるさと」の曲を吹きながら歩いている人に里山公園で出会ったことがある。曲といい、場所といい、ふさわしさに驚いた。私の世代さえ驚くのであるから、お孫さんたちの驚きようも想像できる。(髙橋正子)

5月29日(1句)

★麦秋の備前平野の入日かな/桑本栄太郎
山陽線沿いは広い平野が少ないなかで、備前平野は広々としている。麦秋の平野に入日が沈む景色は郷愁を誘う。旅にあれば、なおさら。(髙橋正子)
5月28日(2句)

★紫陽花や雨の色にぞ染まりたる/廣田洋一
紫陽花は雨の季節に咲く花なので、雨に染められ、雨の色になったのだという。その感覚がいい。(髙橋正子)

★高速の橋脚映り田水張る/桑本栄太郎
高速道路は、田んぼであったところを貫いている。水が張られた田に巨大な橋脚だ逆さに映って、自然相手の農と現代都市の橋脚とが併存している景色もまれではない。(髙橋正子)

5月27日(1句)

★神坐す奥宮青嶺を仰ぎけり/多田有花
神聖なこと、いやます奥宮から、青嶺を仰ぐと、青嶺が神々しく思われる。(髙橋正子)

5月26日(1句)

★ありがたや章魚の卵と身を食す/多田有花
章魚の卵からはたくさんの子章魚が生まれるであろうが、その卵と、卵を孕んでいた親章魚の身を両方頂く行為に、食物をいだたく「ありがたさ」を意識させられる。章魚の卵は珍味であろうが、その裏には生物の犠牲もある。

5月25日(2句)

★虞美人草ひねもす風に揺られおり/廣田洋一
「虞美人草」はひなげしのこと。漱石の小説の題名や、中国の秦の劉邦に負けた項羽の愛人の虞美人と言う名前に忍ぶことができる。虞美人草は明るく風通しの良いところを好むので、ひねもす野に吹かれている光景をみることができる。軽やかな花の揺れは心和む風景だ。(髙橋正子)

★田染荘(たしのぶのしょう)棚田に水の入り初めし/多田有花
田染荘は、古代の頃から開発がなされ、平安時代には宇佐神宮の荘園「田染荘」として誕生以来、昔ながらの田園風景が今もなお色濃く残されているということだ。棚田に水が入り、いよいよ田植えとなる。棚田の美しい景観が見られることだろう。(髙橋正子)

5月24日(1句)

★空蝉のこの世にしかとしがみ付き/小口泰與
もとの句は「しがみ付にけり」だったが、「けり」の詠嘆が弱く描写に終わるので、自分の見方、感じ方として「しかと」を入れて添削した。
空蝉はこの世の無常を示す象徴とされることが多く、その空蝉が蝉殻となってもまだ執着して木にしっかりとしがみついているところに着目。これを見て人は何を思うであろうか。(髙橋正子)
5月23日(1句)

★若葉して明礬温泉硫黄の香/多田有花
明礬温泉は別府の温泉で湯の色が青いことで知られているようだ。温泉の硫黄の匂いと、温泉の色と、若葉の色が明礬温泉の景色となって印象付けられる。この句を読むと明礬温泉に入ってみたいと思うだろう。(髙橋正子)
5月22日(1句)

★青葉雨少年の弾くヴィヴァルディ/川名ますみ
ヴィヴァルディを力強く弾いている少年が思い浮かぶ。青葉に降る雨は、これまでに成長した少年の演奏に陰影を与えている。(髙橋正子)
5月21日(2句)

★赤赤と強き朝日や麦畑/小口泰與
麦畑は最近少なくなっているが、泰與さんの住む群馬は小麦の産地なので、麦畑は近くに広がっているのだろう。赤々と力強い朝日が麦畑に昇り、いきいきとした一日が始まる。力強く、人を励ましてくれる光景がいい。(髙橋正子)

★十薬の跋扈せる庭匂いたち/廣田洋一
十薬の花は繁殖力が強いので、「跋扈」することもまれではない。洋一さんの庭にも十薬が生い茂り、匂いをあげている。夏と言う季節の生命力を嫌でも感じさせられる。そんな時の俳句がいい。(髙橋正子)

5月21日~5月31日

5月31日(4名)

小口泰與
蟇蛙ドラムを叩く声のせり★★★ 

縁側を開けるや蜥蜴訪えり(原句)
縁側を開けるや蜥蜴走りけり(正子添削)
原句は縁側を開けると蜥蜴が入ってきたと言う意味ですが、肝心の「訪えり」が蜥蜴の描写に不足です。添削は人間の住まうところに蜥蜴がいきいきと棲息していることを詠んだ例です。(髙橋正子)

勾玉と同じ曲がりの守宮かな★★★

多田有花
じゅうじゅうと鮪ステーキ夏きざす★★★
青嵐伊予の島影あらわにす★★★
甘夏ソフト豊後水道の青し★★★

廣田洋一
ざざと降りさっと上がりて夏の雨★★★
雨上がりふわと吹き来る風涼し★★★
苑涼し水浴びしたる雀どち★★★

桑本栄太郎
断水のままの能登とや五月尽★★★
曇りても天の明るき走り梅雨★★★
木々の枝の躍り明るく夏あらし★★★

5月30日(4名)

廣田洋一
額の花外縁の花紅くなり★★★
桜の実色濃くなりて落ちにけり★★★
ビルに沿い一列続く濃紫陽花★★★

多田有花
手作りの苺ケーキに迎えらる★★★
夏かぼすたっぷりもいでいただきぬ★★★
アマリリス咲く菩提寺に参拝す★★★

小口泰與
忽然と風の襲えり夜店かな★★★
大利根の波恐ろしや走り梅雨★★★
草笛を吹いて孫らを驚かす★★★★

桑本栄太郎
あじさいのいよよ蕾のふふみけり★★★
紫陽花や雨を待ち居て水色に★★★★
ぽつぽつと雨の気配や花南天★★★

5月29日(4名)

小口泰與
金雀枝や朝日彩る日の光★★★
山峡の鳥の起き伏し夏帽子★★★
我が庭のばらと起き伏しひと日くれ★★★

廣田洋一
曇天をぱっと明るく花胡瓜★★★★
唐黍の花つんつんと天を指し★★★
枝下すのこぎりの音響きけり★★★

多田有花
デザートをいくつ並べて夏の朝★★★
巨大こけし寝かせ大分駅の夏★★★
ザビエルに宗麟公に青嵐★★★

桑本栄太郎
山影の映る田水や麦の秋★★★
西日受け城郭映ゆる福山城★★★
麦秋の備前平野の入日かな★★★★

5月28日(5名)

小口泰與
翡翠の魚とらふる長き嘴★★★
一輪のほのと咲きたる庭のばら★★★
老鶯のうらうら鳴けり山の池★★★

多田有花
大分に来れば一面麦の秋★★★★
旧友と話は尽きぬ夏の夕★★★
明早し別府湾から陽が昇る★★★

廣田洋一
紫陽花や雨の色にぞ染まりたる★★★★
花南天道にはみ出し揺れており★★★
縁側に木椅子を寄せて簾かな★★★

桑本栄太郎
<新幹線、山口への車窓風景>
高速の橋脚映り田水張る★★★★
吉井川の遥か上流夏かすみ★★★
麦秋の備前平野の黄金なる★★★

弓削和人
隣家よりとりこむ音す走り梅雨★★★
村らくは雨戸で断てり五月闇★★★
河骨をついの棲み家に鯉の鰭★★★

5月27日(4名)
小口泰與
鈴鳴らすような鳥声初夏の森★★★
老鶯の池を挟みて鳴き交わす★★★
夏めくや赤城のすそ野うまし山★★★

廣田洋一
新人を止める壁なし五月場所★★★
夾竹桃燃えたつ如く街の角★★★
バナナとチーズを食べて朝餉かな★★★

多田有花
宇佐神宮青葉若葉に朱の鳥居★★★
花嫁に赤き唐傘夏はじめ★★★
神坐す奥宮青嶺を仰ぎけり★★★★

桑本栄太郎
<新幹線、京都から山口への旅の車窓>
幹線”のぞみ”は西へ風薫る★★★★
緑蔭の駅のホームや新神戸★★★
みどりさす古墳の森や岡山の★★★

5月26日(3名)

小口泰與
翡翠の羽の手入れや木の枝に★★★
老鶯や木木を揺さぶる山の風★★★
倒木の枝へ野鳥や初夏の丘★★★

多田有花
夏料理韃靼そば茶に始まりぬ★★★
ありがたや章魚の卵と身を食す★★★
夏料理蕎麦のコースは蕎麦で締め★★★

廣田洋一
中興塔の如来を仰ぎ風薫る★★★
釈迦像の燦然として薄暑かな★★★
虚子句碑や夏日の燦と法の庭★★★

5月25日(3名)

小口泰與
榛名湖の器の中のつばくらめ★★★
樹のうつろ中よりいづる蜥蜴かな★★★
産土の風に育む青田かな(原句)
「風に育む」は主語が何になるのでしょうか。本来なら「風に育まる」となるところではないでしょうか。(髙橋正子)

産土の風の育む青田かな(正子添削①)
産土の風に育てる青田かな(正子添削②)

廣田洋一
草引くや小さき花を残したり★★★
虞美人草ひねもす風に揺られおり★★★★
雛罌粟や人を見送る線路際★★★

多田有花
田染荘(たしのぶのしょう)棚田に水の入り初めし★★★★
薫風に吹かれ蕎麦屋の門に立つ★★★
涼しさやふたり切り盛りする蕎麦屋★★★★

5月24日(3名)

廣田洋一
蚕豆や一畝青く染めており★★★
蚕豆のどんぶり一つ分け合いし★★★
豆飯の緑くっきり夕間暮★★★

多田有花
海地獄熱帯睡蓮咲かせおり★★★
はつなつの日差したたえて海地獄★★★
夏浅し龍巻地獄閉じ込めて★★★

小口泰與
翡翠やこの現し世を飲み込みし★★★
翡翠の現の嘴の長きかな★★★
空蝉のこの世にしがみ付にけり(原句)
空蝉のこの世にしかとしがみ付き(正子添削)

5月23日(3名)

小口泰與
打ち返す畑あり麦の青青と★★★
うちつけに鮎見えている岩の間に★★★
川蝉の渦巻く沼へまっしぐら★★★

多田有花
初夏の湯に明石の人と語り合う★★★
若葉して明礬温泉硫黄の香★★★★
地獄蒸しプリンを食す若葉風★★★

桑本栄太郎
木蔭道たどり歩めり夏日かな★★★
茅花の穂絮となりたる流し吹く★★★

夏場所や小兵押し出す俵際(原句)
夏場所や小兵の押し出す俵際(正子添削)
助詞の省略はよくあることですが、俳句のように短いために、意味が紛らわしくなるときは、助詞の省略は避けた方がいいと思います。(髙橋正子)

5月22日(5名)

小口泰與
夏鷹や風を従え鳥狙う★★★
根係の浮子の乱舞や夏の雲★★★
青蘆や風に育む番鳥★★★

多田有花
鮎並や金の器に入りて来る★★★
はつ夏の鯛載る海の色の皿★★★
夏野菜添えし豊後牛ロースト★★★

廣田洋一
湘南と熱海がしこ名五月場所★★★
精彩を放つ幕尻五月場所★★★
太陽の育てし黄金麦の秋★★★★

川名ますみ
母の友梅花空木を提げ来たる★★★
青葉雨少年の弾くヴィヴァルディ★★★★
緑さす友の生徒のコンクール★★★

桑本栄太郎
川縁りの地道を行けば風薫る★★★
風に触れじゃらじゃら鳴りぬ小判草★★★
赤白の箱根卯木や青き空★★★

5月21日(4名)

小口泰與
赤赤と強き朝日や麦畑★★★★
岩のぼる強き一歩の亀の子よ★★★
川蝉や風のうかがう山の湖★★★

廣田洋一
夏めくや木の葉を透かす日の光★★★
十薬の跋扈せる庭匂いたち★★★★
どくだみの十字点々狭庭かな★★★

多田有花
そら豆を入れし豆腐のうすみどり★★★
順才とすだちのジュレが前菜に★★★
ぶり鮪ひらめのお造り夏料理★★★

桑本栄太郎
山法師の花の気勢や木の上に★★★
葉の影の躍り狂うよ青あらし★★★
夕日受け葉の透き通る若葉かな★★★

自由な投句箱/5月11日~5月20日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/5月11日~5月20日

5月20日(1句)
★緑さすやたら編みなる竹の壁/多田有花
「やたら編み」という編み方で作られた壁は風流なものだが、複雑に光を返し、自然の緑の木々のなかで静かな雰囲気を醸し出している。(髙橋正子)

5月19日(1句)

★外つ人の服の気ままや若葉寒む/桑本栄太郎
若葉のころは肌寒さを覚える日がある。外国の人たちは季節を意識するよりも、もっと緩やかに自由に服装を選んでいる。観光地の京都の初夏の風景が眩しい。(髙橋正子)
5月18日(1句)

★玻璃の皿烏賊刺盛りて昼餉かな/廣田洋一
ガラスの皿に白く透き通るような烏賊の刺身は目にも涼やか。旬の食材を季節にふさわしい皿に盛り付け、見た目もおいしさ同時に味わおうというもの。(髙橋正子)
5月17日(1句)

★遠峰の雲を奔らせ青嵐/桑本栄太郎
爽快ですがすがしい印象の景色。遠くの峰を見ると雲がよく奔っている。空の雲は青葉を吹く強い風が奔らせているのだ。(髙橋正子)
5月16日(1句)

★マーガレット遠くに見ゆる青き海/廣田洋一
遠くに青い海が見え、白く可憐なマーガレットが咲いている景色は、清潔感があって、初夏のさわやかさが読みとれる。(髙橋正子)
5月15日

※該当句無し
5月14日(1句)

★青空や無風無音に夏来る/弓削和人
ただ青空だけが広がる、風も音もない時。空からの日差しの明るさを見れば確かに夏が来ている。(髙橋正子)
5月13日(1句)

★サイダーや雲の湧き立つ浅間山/小口泰與
浅間山には実際「雲が湧く」現象がみられる。2500以上ある浅間山の2000mあたりの山の斜面に温かい空気があたり上昇し、冷えて雲になる現象がある。さわやかな味のサイダーの透明感と雲を湧かせる浅間山が読み手に爽快感をもたらせてくれる。(髙橋正子)
5月12日(1句)

★母の日やわが胸に白きカーネーション/多田有花
母の日の白いカーネーションは、亡くなった母に捧げる花。白いカーネーションを贈ることについて最近はあまり関心がもたれないようだが、母を亡くした人は多いはず。胸に挿しひとり母を忍ぶ日となった有花さんだ。(髙橋正子)
5月11日(1句)

★ふるさとの海懐かしき卯波かな/桑本栄太郎
この俳句は、「ふるさとの海/懐かしき卯波かな」のように切れている。ふるさとの海を思い起こせば、穏やかな卯波が懐かしいというのだ。ふるさとを忍ぶ、心穏やかななかにもせつない心情が伝わってくる。(髙橋正子)