7月21日~7月31日

7月31日(4名)
小口泰與
翡翠の番いや木木を震わせて★★★
さもなくば庭の薔薇見て帰られよ★★★
翡翠や魚を雌に届けける★★★
廣田洋一
炎天下背広の上着手に抱え★★★
炎天に木の葉のアーチ段葛★★★
浴衣着て連立ち散歩古都暮色★★★
多田有花
夏の朝腰赤燕の巣を出でぬ★★★
暁や日の出を呼びぬほととぎす★★★★
入道雲育ち盛りの午後の空★★★★
桑本栄太郎
 <JR嵯峨野線を京都より亀岡へ>
亀岡へ西日の中を嵯峨野線★★★
嵯峨野線の夕日の中を嵐山★★★
涼風の部屋吹き抜ける今日の朝★★★
7月30日(5名)

小口泰與
雨蛙奇岩の妙義さまよえる★★★
勝糸に蚯蚓を付けて置鈎に★★★
夕焼の覚めて終えば鳥の夜★★★

桑本栄太郎
朝五時の鳴り響き居り威し銃★★★
さるすべりあの日あの時想い居り★★★
日を合わせ逢う約束も帰省かな★★★★

廣田洋一
厄払うかわらけ投げて晩夏光★★★★
神鈴に心を浄め夏の果★★★
水馬結界もなくはね廻り★★★

多田有花
夏の朝下弦の月が中天に★★★
かなかなや夜明けの街に響きおり★★★
ボランティア夏の花壇を手入れする★★★

弓削和人
夏朝や一湖と吾のほかになし(原句)
「夏朝」は「夏の朝」とするべきです。一句の流れからすれば、切字「や」は欲しいですね。それを生かして添削しました。(髙橋正子)
朝涼や一湖と吾のほかになし(正子添削)

じーじーと蟲の浄める夏夜かな★★★
背表紙のやわくしおれり女梅雨★★★
7月29日(3名)

小口泰與
翡翠や終の楽しみ見つけたる★★★
老犬の昼寝さまたぐ昼雷★★★
芝刈られ虫の出で来る夏の朝★★★
いい目の付け所ですが、あと少しです。(髙橋正子)

廣田洋一
からからと氷鳴らして夜の秋★★★★
駅出でて雨に深まる夜の秋★★★★
突然に泳ぎ出したる媼かな★★★

多田有花
冷房の通勤電車の静けさよ★★★
女子大前駅夏服の女学生★★★
武庫川駅ホームは夏の川の上★★★
そうですよね。惜しい句ですね。(髙橋正子)
7月28日(4名)

多田有花
月鈍くぼやけて上がる熱帯夜★★★
蚊取線香きれいな渦を崩す朝★★★
「崩す」が、句を平凡にしているのが惜しいです。むしろ、「崩す」前の「残る」とかの方がいいと思います。(髙橋正子)

花火の音遠き夜空に響きおり★★★★

廣田洋一
生垣の上に鮮やか凌霄花★★
二階より流れ落ちたる凌霄花★★★
 見方が面白いです。(髙橋正子)
木から木へ移りて行ける蝉の声★★★
 この句も目の付け所がいいと思います。(髙橋正子)

桑本栄太郎
ぎらぎらと京の町屋に極暑来る★★★
南座の大屋根灼ける酷暑かな★★★
鴨川の河に迫り出す川床料理★★★

小口泰與
銀鱗を日に晒したる夏の沼★★★
両岸で鳴き合う蝦蟇の声高し★★★
忽然と夕立ちありて木木の色★★★
7月27日(3名)
廣田洋一
七変化緑色にて締めにけり
句意はとてもいいです。「締めにけり」がおしいです。(髙橋正子)
七変化緑色にて花を終ゆ(正子添削例)

茄子の紺そのまま生かしすまし汁
この句も句意はとてもいいです。「生かし」が気になります。写生の方向で。(髙橋正子)

胡瓜一本おやつにしたる小学生(原句)
小学生の様子が分かるとさらにいいと思います。(髙橋正子)
胡瓜一本おやつに齧る小学生(正子添削例)

多田有花
泉州が沖に横たう夏の海★★★
青信号横断歩道を日傘の波★★★
空蝉のきれいに割れし背中かな★★★
桑本栄太郎
短夜や新聞受けの音に起き★★★★
朝仕事終えて玉なす汗しずく★★★
ぎらぎらと枝葉透きたる極暑かな★★★ 
 
7月26日(5名)

小口泰與
さまざまな形のありて雲の峰★★★★
大鯰髭を振り上げ沼覚ます★★★
夏の朝沼を賑わす野鳥達★★★

多田有花
夏休みの朝はラジオ体操に★★★
ひと皿の激辛カレー炎暑かな★★★
日が昇るやがて熊蝉大合唱★★★

廣田洋一
走り根や大きく育つ夏茸★★★★
蟬飛び来たり一声もなく飛び去りぬ★★★
三河産鰻を食べる家族連れ★★★

桑本栄太郎
朝五時の早や競い合う蝉しぐれ★★★
刻々と梅雨出水なるニュースかな★★★
地ぼてりや餌曳く蟻の木蔭道★★★

弓削和人
涼しさや雨つぶふくむ葉の揺れに★★★
「ふくむ」が正確さに欠けるように思います。写生が大事です。(髙橋正子)

隣る世へ長針わずかの昼寝覚★★★
炎天を遠ざかりたるは吾の影 ★★★
7月25日(4名)
小口泰與
弓なりの竿に山女や女の子★★★
翡翠の飛び立つ構え蒼き空★★★
蜥蜴出で九十九折をばさ迷えり★★★

廣田洋一
さわさわとそよげる木の葉晩夏光★★★★
公園の木椅子に二人夕涼み★★★
県境一つ越えれば旱川★★★

多田有花
片陰に休む巣立ちの燕たち★★★
土用丑うなぎたっぷり売られおり★★★
日焼けせし少年の髪つややかに★★★★

桑本栄太郎
ゲリラなる雷雨のありや黒き雲★★★
日盛りや予報疑い傘を持つ★★★
一瞬の途絶えのありぬ蝉しぐれ★★★
7月24日(5名)
小口泰與
一天に比ぶ榛名と夏赤城★★★
鮎釣りの長竿収む雨もよい★★★
赤赤の百日紅へ夕日かな★★★

多田有花
救難訓練猛暑の河川敷★★★
朝焼やいくつ飛び交う鳥の影★★★
朝の雨街に打水のごとし★★★★

廣田洋一
蝉の声気温と共に高まりぬ★★★
公園のベンチに座り蝉時雨★★★
陽は西に項垂れている大向日葵★★★

桑本栄太郎
河童忌や虚実のしれぬ人の世に★★★
激雷や天の壊れたかと思う★★★
染みる眼を閉じつつ流し髪洗う★★★

弓削和人
真夏日といえども樹の根動かざる★★★
アスファルト白き夏野を貫けり
「白き夏野」の「白き」はどんな様子なのでしょうか。(髙橋正子)
アラームのさきゆく蝉の時雨かな★★★
7月23日(5名)

小口泰與
魚咥え川蝉喜々と木木の中★★★
落選や悔し涙の夏の夕★★★
翡翠や森の暗みに光差す★★★

多田有花
梅雨明けの風吹き抜ける部屋に寝る★★★
耐えるべきやり過ごすべき酷暑来る★★★
朝夕の活動さかん夏つばめ★★★

廣田洋一
水替えてゆらりと動く金魚かな★★★★
一杯のジントニックや夕晩夏★★★
庭の草みな丈高く晩夏かな★★★

桑本栄太郎
冷房の効き過ぎいたるバス車内★★★
午後からは棲み分けしたるあぶら蝉★★★
嶺の端のくつきり赤く西日落つ★★★

弓削和人
打水の跡のわずかへ車輪過ぎ★★★
動かざる嶺より来る大暑かな★★★★
犬が下影を求める大暑かな★★★
7月22日(5名)

小口泰與
尺物の鮎つり上げし小学生★★★
翡翠の組する枝や夕間暮れ★★★
夕立ちや葉裏に隠くる野鳥達★★★

廣田洋一
雲の無き大暑の空を仰ぎたり★★★★
べたべたとまといつきたる大暑かな★★★
風死してじっと耐えたる道の草★★★

多田有花
川波を光らせ月の涼しかり★★★★
南海に嵐生まれたる大暑★★★
さて大暑掃除洗濯さっぱりと★★★★

桑本栄太郎
ベランダに高く設え古すだれ★★★★
梅雨明けの京の町家の日射しかな★★★
西山の入日茜や大西日★★★

弓削和人
ピーマンやみどりのどこか照りびかり(原句)
「照りびかり」の合成語に無理があると思います。(髙橋正子)
ビーマンやみどりのどこか照りひかり(正子添削①)

桃の実の剥きたる指にゆだねたり(原句)
桃の実を剝きたる指にゆだねたり(正子添削)

向日葵のこの世を見渡すばかりかな ★★★
7月21日(4名)
廣田洋一
長雨の終わりし高さ立葵★★★
打水や開店前の一仕事★★★
打水や風匂い立つ花舗の前★★★★

小口泰與
目の前の薔薇くずおれし雨の中★★★
小魚を咥え翡翠枝に来し★★★
川蝉の日を受け羽のきららなる★★★

多田有花
ピアノ弾くことは瞑想夏の朝★★★
盛夏早暁世の極楽と思うなり★★★
遠くまで行った心地の昼寝覚め★★★★

桑本栄太郎
干乾びてのの字に果つる蚯蚓かな★★★
かなかなや夢見哀しき幼き日★★★
同調のうねりとなりぬ蝉しぐれ ★★★

自由な投句箱/7月11日~7月20日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/7月11日~7月20日

7月20日(1句)

★白シャツや土用太郎の風はらむ/多田有花
「土用太郎」とは、土用入りの日。土用に入った第1日目のこと。その日に吹く風は、爽やかな風ではなく、蒸した風である。白シャツが、蒸して吹く風をさわやかにして、潔い風景となっている。(髙橋正子)

7月19日(1句)
★大西日犬にホースの水しぶき/弓削和人
西日が照り付けて、今日も一日暑かった。庭に水を撒いたり、鉢物に水をやったり、あるいはホースで水を流し洗車しているのかもしれない。犬も近くにいるので、ホースの水飛沫を浴びてしまった。楽しく、涼しそうな光景だ。(髙橋正子)
7月18日(1句)

★八十年浅間を仰ぎ竹落葉/小口泰與
竹は初夏新芽が出始めると古葉がひらひらと切りもなく降る。竹の落葉が降る様子を見ていると、生まれて八十年間、浅間山を仰ぎ続けた生涯の様々な思いが湧いてくる。(髙橋正子)
7月17日(1句)
★弓なりに草を弾ます川蜻蛉/小口泰與
蜻蛉のように軽いものでも、草に止まれば、草の葉は弓なりになる。飛び立つときには、草が弾む。軽いものにも重さや力がある生き物の神秘。(髙橋正子)
7月16日(1句)

★緑蔭の窓辺に座して推敲す/桑本栄太郎
緑蔭の窓辺は、涼しそうで、穏やかな場所。推敲には、苦しみもあるが、また楽しいことでもある。(髙橋正子)
7月15日(2句)

★ほととぎす細かき雨の降る夜明け/多田有花
ほととぎすが、夜明けの空を鳴いてゆく。細かい雨が降り、ほととぎすの鋭い声も小雨の向こうで趣ある声に聞こえる。(髙橋正子)

★宵山の四条通の小雨かな/桑本栄太郎
祇園祭の宵山でにぎわう四条通に小雨が降っている。賑わう宵山にしっとりと「小雨」の醸す情緒は、一味違う宵山を演出した感じだ。(髙橋正子)
(この後、海の日の15日は土砂降りの雨で大混乱のようでしたが、大丈夫でしたか。)

7月14日(1句)

★梅雨荒れやはるか鞍馬は雲の中/桑本栄太郎
梅雨に荒れる空の雲の向こうには、「鞍馬」がある、と思い描いている。京の人が「鞍馬」に寄せる思いはさまざまだろうが、荒れる梅雨と荒々しい鞍馬とが離れていながら一つにつながった感じがある。(髙橋正子)
7月13日(1句)

★鮎釣りの懸命に行く上流へ/小口泰與
渓流の鮎釣りは良い景色のなかで鮎を釣る楽しみがある。狙った場所で釣れなければ、次の場所をさがして上流へ行く釣り人の懸命さは、一通りの釣りではなさそうだ。(髙橋正子)

7月12日(1句)

★ナイターに行く人数多阪神電車/多田有花
関西人の阪神ファンは知られるところであるが、ナイターとなれば、大勢が阪神電車で球場へ出かける。乗り合わせた電車に早くもナイター観戦の熱気がある。(髙橋正子)

7月11日(1句)

★海峡と大橋望み夾竹桃/多田有花
夾竹桃と言えば、たくましい印象と、また裏腹に敗戦や原爆を思いださせる悲しい印象の、夏を象徴する花である。夾竹桃の袂から海峡と大橋をのぞむ大きな景色が「夏」を象徴した景色となっているのがいい。(髙橋正子)

7月11日~7月20日

7月20日(4名)

多田有花
白シャツや土用太郎の風はらむ★★★★
電線へ等間隔に夏つばめ★★★
ヘッドフォン越しに聞こえし蝉の声★★★

小口泰與
山道の石清水にて口濯ぐ★★★
夏桑や日の出と共に摘みにける★★★
この川の鮎をみざるや口惜しき★★★

廣田洋一
うなぎ屋のうの字のはねて土用かな★★★
熱きコーヒーゆっくりと飲む土用入★★★
自転車の補助輪取れて夕晩夏★★★

桑本栄太郎
茅舎忌の明の東雲うすあかね★★★
風あれど溽暑の午後となりにけり★★★
かなかなや赤く染まりし西の天★★★
7月19日(5名)

小口泰與
燕の子赤城の風に口を開け★★★
ばら咲くや黄色の葉っぱ風の中★★★
蝦蟇ふた声鳴いてそれっきり★★★

多田有花
涼しさや風通る部屋で書き物を★★★
夏鶯盛んに鳴ける日の出かな★★★★
土用入真昼の街路を救急車★★★

廣田洋一
鷺草のなおつつましく法の池★★★
土用の入り風心地良き法の庭★★★
山門を潜りて拭う玉の汗★★★

桑本栄太郎
暁闇にかなかな鳴きて目覚めけり★★★★
じわじわと日毎姦し蝉しぐれ★★★
夏草や廃墟の庭にいきおいて★★★

弓削和人
大西日犬にホースの水しぶき★★★★
夏のごみ朝一番の清掃車★★★
ブルーベリー青藍色に口を染め★★★
7月18日(3名)
小口泰與
八十年浅間を仰ぎ竹落葉★★★★
山風にくつがえりたる青葉かな★★★
くちなはに子ら集まりて囃しける★★★

多田有花
捨てるべきものを捨てたり梅雨晴間★★★
押し入れを吹き抜けてゆく夏の風★★★
熱中症アラート放送土用前★★★

桑本栄太郎
山鉾のごつとん揺るる辻回し★★★
さらさらとお歯黒蜻蛉苔上に★★★
黒蟻の直ぐ歩み居り雨上がり ★★★
7月17日(3名)

小口泰與
百本の薔薇に夕日のさしにけり★★★
三山の横たう里や麦の秋★★★
弓なりに草を弾ます川蜻蛉★★★★

多田有花
たっぷりのもぎたてトマトをいただきぬ★★★
汗ぬぐいつつすっきりと片付ける★★★
南北の窓吹き抜ける夏の風★★★

桑本栄太郎
バスの行く並木通りや青葉闇★★★
山鉾の巡行日和や雨上がる★★★
バス道の分離帯とや草茂る★★★

7月16日(3名)

多田有花
夏暖簾揺れる古民家ステーキ屋★★★
生ハムに千切りキャベツ添えらるる★★★
海の日の海は雨なりステーキ食ぶ★★★

弓削和人
てんとむし壁に並びて飛びいづる★★★
親つばめ開けたる嘴を探し分け★★★
蟻の道夏の匂いを辿りけり★★★

桑本栄太郎
緑蔭の窓辺に座して推敲す★★★★
古すだれ越しの戸外の青葉かな★★★
梅雨闇や窓より風の通りゆく★★★
7月15日(3名)

小口泰與
朝日差す合歓咲く木木を紅に染め★★★
朝日差し合歓咲く木木をあかあかと(正子添削例)
「紅に染め」を感じた「感覚」を大切して詠むと、読む人に共感してもらいやすくなります。(髙橋正子)

ぽこぽこと芝生に落し杏子かな★★★
翡翠のしかと授かる沼の魚★★★

多田有花
入れ替わり首を出しおり燕の子★★★
ほととぎす細かき雨の降る夜明け★★★★
梅雨深し耳になじみし雨の音★★★

桑本栄太郎
朝方の家事手伝いの溽暑かな★★★
じゅりじゅりと子燕鳴きぬ嬉しさに ★★★
宵山の四条通の小雨かな★★★★
7月14日(2名)
小口泰與
くちなしを見しよりしばし足止まり
「くちなし」は、「くちなわ」の間違いですか。(髙橋正子)

青空をくつかえりつつ夏燕★★★
あけぼのの沼を震わす蝦蟇の声★★★

桑本栄太郎
駅中のホームに祇園囃子かな★★★
梅雨荒れやはるか鞍馬の雲の中(原句)
一読して、「の」より「は」のほうが分かりやすのでは、と思います。(髙橋正子)
梅雨荒れやはるか鞍馬は雲の中(正子添削)

鴨川の濁る早瀬や梅雨深し★★★
7月13日(4名)

桑本栄太郎
街中を歩み行くほど蝉しぐれ★★★
塊りの撓り揺れ居りさるすべり★★★★
吾が足の丈に長きや半ズボン★★★

小口泰與
歳時記の夏のくだりや不如帰★★★
鮎釣りの懸命に行く上流へ★★★★
忽然と水輪を残す蝦蟇二匹★★★

多田有花
青鷺の静かに佇む夕の川★★★
「暑いですね」あいさつ交わし別れおり★★★
青あらし川面を白く波立たす★★★

廣田洋一
草を食む羊散らばる夏野かな★★★
草刈るや地肌の見ゆる野原かな★★★
夕焼けや野の中天赤く染め ★★★
7月12日(3名)
小口泰與
大空を映す大沼おおでまり★★★
利根川の径くさぐさや山女釣★★★
老翁のくさぎる畑や夏の鴨★★★

多田有花
七月の淀川河口を渡りおり★★★
坂上り青蔦豊かな病院へ★★★
ナイターに行く人数多阪神電車★★★★

桑本栄太郎
ベランダの手すりの滴梅雨荒るる★★★
初蝉の三日前のみそれつきり★★★
”えっちらこ”とみみずを運ぶ蟻の列★★★

7月11日(3名)

小口泰與
ギヤマンの桶に揺らゆら夏の夜★★★
ぎいぎいと湖畔の木木や夏の雲★★★
忽然と雨にみまわる夏の鳥★★★

多田有花
ため池を囲み揺れおり青田波★★★
海峡と大橋望み夾竹桃★★★★
大橋を抜ければ梅雨の大阪湾★★★

桑本栄太郎
驟雨来る音に目覚むや朝まだき★★★

子烏の居付きというは愛しけり(原句)
子烏の居付きというは愛しかり(正子添削)
「愛し」は形容詞です。また「けり」は連用形に接続します。
したがって「けり」を使うなら「愛しかりけり」となります。
※「愛し」は古文では、いわゆる「カリ活用」をします。現代語では「シク活用」です。以下の活用表をご覧ください。(髙橋正子)
活用形 語幹 活用語尾(ク) 活用語尾(カリ) 識別方法
未然形 から ずを付ける
連用形 かり てを付ける
終止形 ーーー 。を付ける
連体形 かる 物を付ける
已然形 ーーー けれ ばを付ける
命令形 ーーー かれ !を付ける

サングラス取れば優しきパパの顔★★★

自由な投句箱/7月1日~7月10日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/7月1日~7月10日

7月10日(1句)

★谷川の流れの綺羅や翡翠よ/小口泰與
きれいな谷川の流れに、宝石のような鳥の翡翠を見た喜びに、思わず、「~よ~よ」と感嘆の気持ちがあらわれた。きれいなものを俳句に詠むことは、実はむずかしい。素直に喜びを述べたのがいい。(髙橋正子)

7月9日(2句)
★風さわわ鈴なりのミニトマトかな/廣田洋一
「さわわ」と言う言葉は、そよぎを感じさせる。そよぐ風が菜園に吹いて、ミニトマトは鈴なりに熟れている。たのしい菜園である。(髙橋正子)

★星涼し遠くの犬の静まりぬ /弓削和人

星が涼しく感じられる夜、遠くで鳴いていた犬の声も聞こえなくなり、静かな涼しい夜となった。星空のもとの広い静けさ、涼しさがいい。(髙橋正子)

7月8日(1句)

★白日傘のたたまれてあり喫茶店/廣田洋一
喫茶店に入ると白日傘がたたまれ、立てかけられている。日盛りを白い日傘をさしてきた女性がいることは間違いない。喫茶店で憩う女性の姿は見えないが、白日傘にほんのりと涼し気な女性の姿がイメージされる。(髙橋正子)

7月7日(1句)

★地下広場七夕笹に華やげり/廣田洋一
昔は七夕笹は家庭で飾られたが、最近は商店街などに飾られ、街行く人に涼を醸してくれている。地下広場の七夕笹に出会い、気持ちも華やぐというもの。(髙橋正子)
7月6日(1句)

★ボールペン使い切ったる小暑なり/多田有花
「小暑」は二十四節季の一つで今年は、7月6日が小暑となった。梅雨の開けるころで、また、蓮の花が初めて咲くころでもある。小暑と大暑をくるめて暑中となるので、夏もいよいよ本格的になる。なかなか使い切れないボールペンを使い切った小さいことながらの区切り、さっぱりした感じは小暑と言う区切りと重なりいいものだ。(髙橋正子)
7月5日

※該当句無し
7月4日(2句)

★朝日浴び赤く染まりし合歓の花/小口泰與
合歓の花は夕方から咲く。朝日を浴びると、毛羽だったような花が赤く染まって目覚めている姿が、かわいらしい。「赤く染まり」に夏の朝らしい、清々しさが見て取れる。(髙橋正子)

★川の鯉大口開けて夏盛ん/廣田洋一
夏真っ盛り。里川の景色だろうか。川を覗くと鯉が口を大きく開けていたむろしている。元気に泳ぐ鯉は見るからに涼しそうだ。(髙橋正子)

7月3日(1句)

★手花火の命果つなりぷいと落つ/桑本栄太郎
線香花火では特にそうだが、最期は火の雫となって「ぷいと落つ」のだ。「ぷいと命が果てる」感覚を覚えたのだ。(髙橋正子)

7月2日(1句)

★目の前を小魚過ぎる箱眼鏡/廣田洋一
「箱眼鏡」は箱の底にガラスを張って、水中を透視するもので、浅い海などで岩陰に潜む魚など突いて獲るのが目的。ガラスの底に小魚が元気よく過ぎるのが見えたりするので楽しく面白い。(髙橋正子)

7月1日(1句)

★子燕の店番となり道の駅/弓削和人
道の駅の高いところに燕の巣が掛けられ、親燕が餌を探しに出ている間、子燕が残される。その子燕が元気よく並んで、店番をしている格好になっている。人と燕の暮らしが密着していて、楽しそう。(髙橋正子)

7月1日~7月10日

7月10日(4日)
小口泰與
川蝉に興じ帰宅を忘れたり★★★
翡翠の羽の美しきや沼の上★★★
谷川の流れの綺羅や翡翠よ★★★★

桑本栄太郎
初蝉の一瞬のみに鳴きやみぬ★★★
パソコンの雷雨予報や窓を閉ず★★★
いやいやと言いつつ我に扇風機★★★

廣田洋一
日は西に大向日葵は東向き★★★
水替えてぴちぴち跳ねる金魚かな★★★
夕張の青空見せるメロンかな★★★★

多田有花
ピリオドは一個人として鷗外忌★★★
終日を吹き通してや青あらし★★★
山川を光らせ渡る青あらし★★★
7月9日(5名)

小口泰與
紫陽花や四花寄木細工の箱根山★★★
源流の岸辺にぎわす四葩かな★★★
天霧らう杣道細し四十雀★★★

多田有花
七夕や酷暑なれども珈琲は熱く★★★
裏窓に風を通して梅雨晴間★★★
晴嵐に身をあずけおる燕かな★★★

桑本栄太郎
日射し無く風さえなきや油照★★★
風死すや木々の枝葉のひつそりと★★★
目覚むれば既に止み居る驟雨かな★★★

廣田洋一
風さわわ鈴なりのミニトマトかな★★★★
青々と水気たっぷりメロンかな★★★
プールにてひたすら歩く病み上り★★★

川名ますみ
焼酎やつるむらさきに柚子胡椒★★★
生え際をハンカチの縁一周す★★★
富士現る夕焼雲を押し上げて★★★★

弓削和人
滴りの表面張力くさの珠★★★
炎天や銀のカフスの外しおり(原句)
「カフスの」の「の」の使い方が文法的に違っています。(髙橋正子)
炎天や銀のカフスの外れおり(正子添削)
炎天や銀のカフスを外しおり(正子添削)

星涼し遠くの犬の静まりぬ ★★★★
7月8日(4名)
小口泰與
何し負う世界の滝を見てみたし★★★
日を受けて岸辺彩る葵かな★★★
紫陽花や篠突く雨の薄明かり★★★

多田有花
七夕の城は真夏の陽の中に★★★
七夕のランチを食す盛夏の街★★★
七月のデザートはチョコレートムース★★★

廣田洋一
熱気満つる街より帰り昆布茶かな★★★
しっかりと網目の包むメロンかな★★★
白日傘日傘たたまれ喫茶店(原句)
白日傘のたたまれてあり喫茶店(正子添削)

桑本栄太郎
炎天の木蔭つたいや朝歩き★★★
外つ人の男日傘や京の街★★★
待合の長くなり居り昼寝かな★★★

7月7日(3名)

多田有花
七夕や今宵は梅雨の晴間かな★★★
明易し活動早し朝燕★★★
大輪の百合よその名はソルボンヌ★★★

廣田洋一
地下広場七夕笹に華やげり★★★★
老楽や二人で食べる鰻めし★★★★
好天の散歩を終えて昆布茶飲む★★★

桑本栄太郎
想い出は夢の中とや蛍の夜★★★
蜘蛛の子の生れて散りじり糸千本★★★★
長屋門出でて小川や蛍狩り★★★
7月6日(5名)
小口泰與
翡翠の水より出し羽の色★★★★
川蝉の羽音厳しく枝を発つ★★★
翡翠の嘴の切っ先魚の居り★★★

廣田洋一
松葉牡丹花弁ごとに光りおり★★★★
生ハムの紅光るメロンかな★★★
ビルの陰過ぎれば日傘開きけり★★★

多田有花
ボールペン使い切ったる小暑なり★★★★
まだ眠る町へ小暑の朝日差す★★★
小暑の週末押入れを片付ける★★★

弓削和人
山小屋に停まるオートバイ合歓の花★★★
泳ぎ子を見守る飼犬湖の浜★★★
さんさんと陽にこうこうと月の百合★★★
7月5日(4名)

小口泰與
花合歓の中より出し野鳥かな★★★
丘の沼静寂を破る蝦蟇★★★
あけぼのの池を挟みて蝦蟇★★★

多田有花
短パンに素足で過ごす今朝からは★★★
「短パンに素足」はいいのですが、「過ごす今朝からは」は、説明になっています。(髙橋正子)
紫陽花の名残の色が足元に★★★
「紫陽花の名残りの色」はいいですが、「足元に」がわかりにくいです。(髙橋正子)
丁寧に支えを受けしグラジオラス★★★

廣田洋一
UVの数字を競う日傘かな★★★
男子用日傘の売場広がりぬ★★★
お見舞いにアンデスメロン買いにけり★★★

桑本栄太郎
次々と洗いもの増え梅雨晴間★★★
心地よき風に託すや青あらし★★★

<故郷の夕映えの想い出より>
夕映えの帯の耀く日本海
「夕映え」は季語ではありません。ただし、角川季寄せでは「夕焼け」の傍題として「夕映え」があるそうです。その例句をお知らせいただければ幸いです。(髙橋正子)
 
「夕映え」の言葉がある例句:
冬泉夕映えうつすことながし/柴田白葉女
夕映えの一村囲む桑若葉/桂信子
檐近き夕映空や鳥帰る/寺田寅彦
雄阿寒に長き夕映え洗鯉/奈良文夫
鹽竃は夕立すらん沖夕映/寺田寅彦
かいつぶり人は夕映着て帰る/林翔
夕映えの遠き焚火は地の吐息/林翔
夏山の萱の刈あと夕映えぬ/瀧春一
夕映に何の水輪や冬紅葉/渡辺水巴
金色の夕映え鶴を呼びもどす/原裕
夕映えや茂みの漏るる川の跡/丈草
豆畑に吸筒ぬるみ夕映す/寺田寅彦
夕映の蚊柱の胴緊めがたし/澁谷道
豊年や夕映に新聞を読み/加畑吉男
箒木の茫々として夕映えぬ/杉山岳陽
秋夕映の海より来たり鮃の死/森澄雄
麦枯れて鮎の水上夕映えぬ/石原舟月
山々の夕映のくるスキー場/京極杞陽
寒林讃根元根元で濃き夕映/香西照雄
夕映のしばらく倚るは冬襖/角川源義
花明り夕映の黄が退りつつ/香西照雄

7月4日(4名)
小口泰與
夏川に声を鍛えし応援団★★★
川蝉の長き嘴よりあめんぼう★★★
朝日浴び赤く染まりし合歓の花★★★★

多田有花
雨上がり霧の流れる夏の朝★★★
よく降りて一息つきぬ梅雨の空★★★
巣作りには遅くないのか夏つばめ★★★

桑本栄太郎
お使いの日射し無けれど溽暑かな★★★
戻り来て背ナに噴き出す汗しずく★★★
午後よりの雨の催いや梅雨の闇★★★

廣田洋一
高く低く乱れ飛びたる真夏の蝶★★★
川の鯉大口開けて夏盛ん★★★★
鳥の声高く続きて梅雨晴間★★★
7月3日(4名)
小口泰與
川蝉をカメラに収め帰宅かな★★★
翡翠や気散じの歩を岸辺まで★★★
川蝉の声を競いて水面へ★★★

多田有花
まだ低く咲くや庭木の山法師★★★
風に乗り百合の香不意に流れ来る★★★
紫陽花の色の長靴梅雨の午後★★★

桑本栄太郎
雨雲の峡にとどまる梅雨深し★★★
でで虫の葉蔭に殻の雨上がる★★★
手花火の命果つかにぷいと落つ(原句)
手花火の命果つなりぷいと落つ(正子添削)

廣田洋一
楸邨忌霊気透けたる九品仏★★★
木々の葉を騒がす風の涼しかり★★★
真夏の蝶扇ぐがごとく飛び来たる★★★
7月2日(5名)
小口泰與
合歓咲くや曇り天より鳥の声★★★
芝の中捩花つんと背伸びせり★★★
捩花の咲き競いたる芝庭へ★★★

桑本栄太郎
捩花や雨のしずくの捩じれ居り★★★
窓よりの雨の匂いや梅雨深し★★★
バスの出るたびに揺れ居り金糸梅★★★

多田有花
七月の激しき雨のなかにいる★★★
しばらくは梅雨空となる予報かな★★★
雲きれて白百合へ陽の差し初めし★★★
廣田洋一
目の前を小魚過ぎる箱眼鏡★★★★
首根っこつかまえたろか子かまきり★★★
友来たり昆布をあてに酒を酌む★★★

弓削和人
祭笛夜空へ放ち星のなか(原句)
「放ち」の主語が問題です。もう一つも問題は、祭笛に対して、「放ち(つ)」と言う感じ方に多少違和感を感じます。(髙橋正子)
祭笛夜空へ放たれ星のなか(正子添削)

夏山の木立は風にすこし揺れ★★★
睡蓮の水の張りつつ安かりき(原句)
睡蓮の水の張りつつ安らけし(正子添削)
7月1日(5名)

小口泰與
川蝉の声聞き分ける山の森★★★
早朝の沼へ翡翠声かすか★★★
川蝉の声の機嫌や山の沼★★★

多田有花
ミーティング終えて遅めの午睡とる★★★
半夏生エンディングノート書き始む★★★
珈琲にJ.C.バッハ半夏雨★★★

廣田洋一
弱火にて昆布だし作る昼餉時★★★
老若を総動員の昆布干し★★★
電車降り眼鏡拭きたる夏の昼★★★

桑本栄太郎
赤児泣く朝の静寂や梅雨寒し★★★★
今日よりは水無月と云う七月に★★★
雨雲の峡にとどまり梅雨晴間★★★

弓削和人
梅雨晴間野路に沿いたる鳥の声★★★
子燕の店番となり道の駅★★★★
陽の去りてしずかに梅雨ははじまりぬ★★★

自由な投句箱/6月21日~6月30日

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

今日の秀句/6月21日~6月30日

6月30日(1句)

★ばらの香をまとい朝日の出でにけり/小口泰與
ばら園など、一面にばらがさいているのだろう。日の出とともに、ばらは匂い立って明るい色を広げる。そんなとき、朝日がばらの香りをまとって昇った感じがした。早朝の清々しい薔薇園が想像できる。(髙橋正子)

6月29日(1句)

★かろがろと浴衣に成りて町中に/小口泰與
温泉街なのだろう。浴衣になって町中を歩くと浴衣のかるさに開放感と安らぎを感じる。着るもので人の気持ちも左右されているようだ。(髙橋正子)

6月28日(2句)

★見えていて遠き浅間や夕蛍/小口泰與
浅間山がいつも見えていて、身近な存在なのだが、思えば実際の距離は遠い。夕蛍に抒情がある。(髙橋正子)

★夕日浴び赤く燃えたる夏野かな/廣田洋一

夕日を浴びて赤く燃える夏野は見ているだけで美しい。その静かな感動に共感できる。(髙橋正子)
6月27日(1句)

★滝の水水に押されて落ちにけり/廣田洋一
滝の水が落ちて来るのを見ていると、水が水を押して水が落下しているように見える。その感覚が面白い。(髙橋正子)

6月26日(1句)

★昇り来る陽を縦横に夏つばめ/多田有花
「昇り来る陽」の新鮮さが夏らしい清々しさがある。夏つばめも縦横に飛び交い生き生きとしている。(髙橋正子)

6月25日(1句)

★水換えて目高生き生き泳ぎけり/小口泰與
目高の水を替えると、目高がよろこんで、生き生き泳いでいる。それを見ているものまで、たのしく、元気が湧いてくる。(髙橋正子)

6月24日(1句)

★牛肉と馬鈴薯を食ぶ独歩の忌/多田有花
国木田独歩は、短編小説『牛肉と馬鈴薯』がある。牛肉を現実主義、馬鈴薯を理想主義と考えて倶楽部に集まったものたちが、それぞれの考えを述べる、思想的、哲学的小説。牛肉と馬鈴薯を合わせた煮ものや、牛ステーキに馬鈴薯を添えたり、牛肉と馬鈴薯を合わせ食べる機会は多い。そんなとき、独歩を思い出すということ。(髙橋正子)

6月23日(2句)

★前をゆく軽トラックの早苗積み/多田有花
田植のシーズン。道路を走る車はいろいろだが、早苗を積んだ軽トラックも走っている。道路を走る車に早苗をみたとき、田植の季節を強く感じた。別世界のものが紛れ込んだ新鮮さがいい。(髙橋正子)

★威勢よく草刈る男の腕まくり/弓削和人
勢いよく草を刈っている男がいる。繁った草を刈りこむ意気込みが「腕まくり」によく現れている。(髙橋正子)

6月22日(1句)

★社務所より雷気遣う声もらう/多田有花
神社で雨宿りをしていたのだろうか。ひどい雷がなり、雨も激しくなったのだろう、社務所から「大丈夫ですか」と声を掛けられた。「声をもらう」に、社務所の気遣いに対しての感謝の気持ちが何気ないが、表れている。(髙橋正子)

6月21日(2句)

★霊木の雫を零す夏至の雨/廣田洋一
「夏至」という天文的に特別な日と、「霊木」との取り合わせに、その日の雨が特別な、霊験あらたかな雨に感じられる。緑茂る霊木の雰囲気がよく伝わってくる。(髙橋正子)

★六月の樹々雨音を迎えたり/弓削和人
ひとつひとつの雨音が六月の樹々の葉に撥ねて、樹々は雨をよろこび、楽しんでいる感じがする。「六月の樹々」は感覚的に新しい。(髙橋正子)

6月21日~6月30日

6月30日(4名)
小口泰與
いただきし竹の子ひとつ子と分くる★★★
川蝉のかんばせ振りて水上へ★★★
ばらの香をまとい朝日の出でにけり★★★★

多田有花
人にひとつ物語あり梅雨曇★★★
梅雨空や巣立ち燕の群れて舞う★★★
車好きが車をいじる梅雨晴間★★★

桑本栄太郎
雨雲の峰より里へ梅雨深し★★★
梅雨寒や読書の間にも肩の凝り★★★
寝てすぐの音に起こさる夜立ちかな ★★★

廣田洋一
ずんぐりと太きバナナを買いにけり★★★
早速にキーボード蹴る梅雨晴間★★★
自転車の補助輪外す梅雨晴間★★★
6月29日(5名)
小口泰與
釣り糸のからまる音や岩魚釣★★★
朝からの曇り空より梅雨滂沱★★★
かろがろと浴衣に成りて町中に★★★★

多田有花
椋大樹の茂り一本佐伯神社★★★
胸はりて近くとまりぬ夏燕★★★
紫陽花の色を濃くする朝の雨★★★

桑本栄太郎
土曜日の園の静寂や蔦青し★★★
いそいそとお使いへ行く梅雨晴間★★★
夏蝶の黄色は黄花白は白★★★

廣田洋一
サッカー場の歓声聞こゆ大夏野★★★
雨上がり少し濁れる夏の川★★★
梅雨晴間釣竿提げて川べりに★★★

弓削和人
小雨やむ六月風の通うとき★★★
青空のいついつまでも夏衣★★★
やわらかな陽光を背に貸浴衣★★★
6月28日(4名)
小口泰與
風死すや明けの鴉のかまびすし★★★
神代より咲き続けたる栗の花★★★
見えていて遠き浅間や夕蛍★★★★

廣田洋一
草刈女噂話を広めたり★★★
夕日浴び赤く燃えたる夏野かな★★★★
釣堀に父子の笑顔広がりぬ★★★

多田有花
のうぜんの色鮮やかな雨あがり★★★
親おらぬ間はおとなしく燕の子★★★
夏つばめ次々巣から飛び出しぬ★★★

桑本栄太郎
五厘までしるす日記や芙美子の忌★★★★
真夜に降る音に目覚むや梅雨深し★★★
青梅雨やすすきの白線目立ち居り★★★
6月27日(3名)

小口泰與
かわだれの沼へ川蝉翔け来たる★★★
鮎のぼる利根の川音(かわと)の盛んなり★★★
牛蛙げぼっと鳴きてそれっきり★★★

桑本栄太郎

曇りいて日射しなけれど溽暑かな★★★
朽ち来ても山梔子の花匂い居り★★★
老鶯の訛りのままに”ホ~ケチョビ~”★★★

廣田洋一
河骨や黄色き鯉の流れゆく★★★
ゆらゆらと池のほとりに白菖蒲★★★
滝の水水に押されて落ちにけり★★★★
 
6月26日(4名)
小口泰與
発条の羽のごと飛ぶかわほりよ★★★
眼間の浅間溶岩風死せり★★★
かにかくに里の風習夏の夜★★★

多田有花
昇り来る陽を縦横に夏つばめ★★★★
裏庭に小さく咲きぬ濃あじさい★★★
陽を恋いて梅雨のひまわり大輪に★★★

桑本栄太郎
朝よりの日射し明るき梅雨晴間★★★
黒蟻の砂場にかかり焦りけり★★★
ノンアルと云えど泡立つビールかな★★★

廣田洋一
釣堀の鯛を釣りたる竹輪餌★★★
釣堀や子が釣り親が掬いたる★★★
きらきらと小川の光る夏野かな★★★

6月25日(5名)

小口泰與
かにかくに翡翠飛べり山の沼★★★
庭のばら今日も咲く日や剪もまた★★★
水換えて目高生き生き泳ぎけり★★★★

多田有花
梅雨の朝緑いちだん濃くなりぬ★★★
梅の雨洗濯物を部屋に干す★★★
明早し燕はすでに活動中★★★
「活動中」はどこを飛んでいるかなど言えば、詩情が出ると思います。読んだ人が景色を想像しにくいです。例えば、「屋根を飛び」「田を飛べり」など。(髙橋正子)

弓削和人
紫陽花のそぼ降る暮に青みたり(原句)
紫陽花のそぼ降る暮は青みたり(正子添削)
紫陽花が青んで見えるのは、「そぼ降る暮」なので、ここを限定するのがいいと思います。つまり、「そぼ降る暮は」とするとよいのではと思います。(髙橋正子)

ダンゴムシ夏黄昏れに丸くなり★★★
風鈴の鳴らぬひといの風さみし★★★★
★4個ですが、「鳴らぬ」「さみし」は似た感じなので、ここの感情を吟味されるといいと思います。(髙橋正子)

桑本栄太郎
鉢植えのアガパンサスの窓辺かな★★★
「鉢植え」はこの句では必要でしょうか。(髙橋正子)

あじさいの水に浸かりぬ高瀬川★★★
荒梅雨や中州の隠れ流れ居り★★★

廣田洋一
草刈るや小学生も鎌を持ち★★★
草刈りて風の抜け道広くなり★★★
列なしてアイスクリーム買いにけり★★★
6月24日(4名)

小口泰與
川蝉の水面を強く潜りけり★★★★
梅雨時の雨降らぬ日の鳥の声★★★
川蝉の一撃不発愛しめる★★★

多田有花
梅雨満月を隠したっぷりと降りぬ★★★
牛肉と馬鈴薯を食ぶ独歩の忌★★★★
今朝すでに溢るるばかり梅雨の川★★★

桑本栄太郎
彼方此方の潦避け散歩かな★★★
青蔦の金網塀を纏いけり★★★
あじさいの色の変化や高瀬川★★★

廣田洋一
汗拭い順番待ちのレストラン★★★
白玉や皇居外苑眺めつつ★★★
公園の木々さわさわと涼しげに★★★

6月23日(5名)
翡翠やどぼんと沼を驚かす★★★
川蝉の鳴くなく飛ぶよ沼の面★★★ 
翡翠の葦に掴まり大揺れに★★★★

多田有花
雨音を連れたる夏至の夜明けかな★★★
会う人と梅雨入りを言う曇り空★★★
前をゆく軽トラックは早苗積み(原句)
「軽トラックは」の「は」はものごとを限定します。「は」ではなく、格助詞の「の」を使って、あっさり言うのが綺麗だと思います。(髙橋正子)
前をゆく軽トラックの早苗積み’(正子添削)

桑本栄太郎
鴨川の流れ逆巻く梅雨の荒れ★★★
荒梅雨や相合傘の観光客★★★
<雨の高瀬川>
サラサラサととうすみ蜻蛉草むらへ★★★

廣田洋一
河骨や水面華やぐ古き池★★★
紫陽花やいよよ艶やか雨上がり★★★
紫陽花の毬の零せる雨しずく★★★★
弓削和人
端居ゐる祖母の背中の小さきかな(原句)
「端居」は「端居する」と使います。(髙橋正子)
端居する祖母の背中の小さきかな(正子添削)

威勢よく草刈る男の腕まくり★★★★
走り梅雨腕の時計の肌につき ★★★
6月22日(5名)
小口泰與
りーんりーんと野鳥鳴きけり夏の沼★★★
川蝉の音立て潜る山の沼★★★
鴉らの異常な声や夏の森★★★

廣田洋一
河骨や黄花ぴょこぴょこ突き立てり★★★
畦道を平らにしたる草刈機★★★
草刈られ広く見えたる空地かな★★★

多田有花
社務所より雷気遣う声もらう★★★★
土砂降りの雷雨の中を戻りけり★★★
びしょ濡れも楽し仲夏の想い出に★★★

桑本栄太郎
堰水の音の激しき梅雨入りかな★★★
雨待つや土手に色濃く七変化★★★
凌霄花の火炎噴くかに垣根越し★★★
弓削和人
蜘蛛の囲の向こうの湖やお天道★★★
ががんぼの事務所隅っこ夜の気配★★★
夏蝶の摘まれそうに寄りて去り★★★
6月21日(5名)
小口泰與
栗の花すいっと隠る野鳥かな★★★
翡翠の水面沸き立つ山の沼★★★
水面へ尾びれ振りふり夏の鯉★★★

多田有花
夏木立太き保存樹加茂神社★★★
あじさい持つ地元スターの案山子かな★★★
雷雨来て社殿の隣で雨宿り★★★

桑本栄太郎
恐ろしき夢を見て居り梅雨の冷え★★★
梅雨入りの午後より晴るる空の青★★★
梅雨晴や木々の葉騒ぐ深緑り★★★

廣田洋一
霊木の雫を零す夏至の雨★★★★
梅雨空に木々の緑や法の庭★★★
法の池雨に打たれて半夏生★★★

弓削和人
万緑の緑となりぬ川瀬かな★★★
紫陽花の鞠を降ろすやわたの雲★★★
六月の樹々雨音を迎えたり★★★★