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3月8日-9日
3月9日
●小口泰與
奥利根の木々の芽吹きや硬き風★★★★
神代より雪解雫の信濃川★★★
たんぽぽや背負い鞄の赤き色★★★★
たんぽぽが咲き、赤い背負い鞄が背中で弾んでいる。たんぽぽも赤い鞄の少女も春らしい映像と思える。(高橋正子)
●河野啓一
若ごぼう河内平野に時を得て★★★★
河内平野に育つごぼう。まだ、若いが早も収穫できるまでになった。豊かな土も香らんばかりだ。(高橋正子)
山裾のハウスの中で若ごぼう★★★
春雨や傘の下なる車椅子★★★
●祝恵子
子に詰める春の荷色々分けて入れ★★★
風に散る吾を越しゆく梅の花★★★
春きゃべつ値札は風に裏返る★★★★
春きゃべつは、形も特徴あって、葉も見るからにやわらかそうだ。値札が付けられ店頭に溢れるほど置かれているのだろう。寒々とした風に値札が裏返っている。春きゃべつはそんな季節の野菜だ。(高橋正子)
●桑本栄太郎
濃く淡く遅速もありぬ梅の園★★★
さざ波の揺れて眩しく春の鴨★★★
水底の透けて煌めき蘆の角★★★★
湿地の水が日差しに澄んで、蘆の緑の角が伸び始めた。枯から再生する緑の新芽が力強く美しい。(高橋正子)
●小西 宏
梅の陽に父娘釣りする日曜日★★★
風清し青木芽立ちのうす緑★★★★
小犬嗅ぐ�壓縷(はこべら)の花咲く原を★★★
●黒谷光子
囀りや村中総出の道普請★★★
蕾いくつ付け我が植えし白椿★★★
ふっくらと咲き初む一輪白椿★★★★
●高橋秀之
起こしても変わらぬ寝顔大朝寝★★
新聞の一面踊る春闘の文字★★
寒戻る生駒の山がくっきりと★★★★
●多田有花
沿線の家々の庭梅咲きぬ★★★
たこ焼きを囲む三月のテーブル★★★
大阪のビルの谷間の淡紅梅★★★★
大阪のビルというと、近代的なビルさえも生活感にあふれている感じがする。そのビルの谷間にも淡い紅梅が咲き、淡く紅梅を咲かせる人間の生活が垣間見れる。(高橋正子)
3月8日
●迫田和代
今だから全てをあとに帰り鳥★★★
春の海傷んだ船の帰船あり★★★
足らぬ世辞皆の笑いの和の願い★★
●小口泰與
春昼の彼我の違いの釣の技★★★
百千鳥香煙流る大広間★★★
雪のひま三羽の烏かまびすし★★★
●桑本栄太郎
天辺の剥がれ落つとも春の雪★★★
かけ声の部活の娘等の春きざす★★★
ほつほつと垣根にこぼれ山茱萸黄★★★★
●小西 宏
まだ寒き風に舞い初む梅花びら★★★
ひとつずつ地に触れ消える春の雪★★★★
春の雪の降る行方を見ていると、雪片は一つずつ地に触れて消えてゆく。水分を多く含んだ春の雪の美しくも儚い様子。(高橋正子)
空青き枝に鴉の春眺む★★★
●高橋秀之
春の海照り返す陽が波に揺れ★★★★
波に乗った春の日が照り返し、その波が揺れる。「照り返す陽が波に揺れ」は、なにげないようでいてユニークな捉え方。(高橋正子)
母の炊くいかなご今年も同じ味★★★
入り船も出船も春の波に乗り★★★
3月6日~7日
3月7日
●河野啓一
真青なる朝空嬉し梅の花★★★★
梅の花が咲くころはきれいな青空の日が意外に多い。真っ青に晴れ渡り、凛と冷たい朝空に咲く梅の花は本当にきれいだ。「嬉し」という素直な表現が句を優しくしている。(高橋正子)
播磨灘岩に寄せ来る春の波★★★
沖遠くサワラを漁りて戻る船★★★
●小口泰與
湯の町のきざはし飾る雛かな★★★★
伊香保などの湯の町を想像する。石段をのぼる傍らの家々に雛が飾られている。湯の町情緒に浸りながら、雛を楽しめる春先の小さな旅はいいものだ。(高橋正子)
あけぼのの雪間にぎわす百舌鳥の群★★★
雪汁を被りし利根の岩硬し★★★
●佃 康水
縮景園 松の菰外し
春の雪松の菰取る朝にかな★★★
菰外れ松の木肌や風光る★★★
啓蟄や松の菰解く鋏音★★★★
啓蟄に合わせての松の菰外し。春の日差しに植木屋の使う鋏の音も軽快だ。菰を解かれた松は、緑の色もいきいきと輝き出してくるだろう。(高橋正子)
●多田有花
山の名を呼びけり春の頂に★★★★
春山の山頂から、あの山の名は何々、この山の名は何々と指さし呼んでみる。春山の頂からの眺めに心も柔らかに開放されたからだろうが、山への親しみがあって楽しいことだ。(高橋正子)
見上げれば紅梅白梅青い空★★★
雪こぼす雲去り切株に春陽★★★
●桑本栄太郎
下萌えや支柱張り出す梨畑★★★
耕さる畝の干乾び風光る★★★
色めきて枝の三叉や芽もくれん★★★★
●黒谷光子
梅園をめぐる開演の時までを★★★★
演劇や音楽会の開演までの余裕の心。開演をたのしみそれまでを梅園巡りで梅の花をたのしむ。これもまた至福のときだ。(高橋正子)
朝日差し見る間に溶ける春の雪★★★
紅梅の二本並びて咲き競う★★★
3月6日
●多田有花
吹かれ来て春雪日差しの中へ降る★★★★
春の日が差しながら雪がちらちら舞っている。その雪もどこからか吹かれてきていかのだ。明るくて、不思議な世界が生まれている。(高橋 正子)
昼の月出しところに梅咲きぬ★★★
白梅にほろほろ雪のこぼれ降る★★★
●桑本栄太郎
京都四条~祇園界隈
建仁寺塀の高みの藪椿★★★★
建仁寺塀は竹の塀で美しい。丈高く組まれることが多いが、その塀の上に覗く藪椿が自然の様で風趣がある。(高橋正子)
提灯の早くも都踊りかな★★★
芽柳の橋のあまたや高瀬川★★★
●小西 宏
さざ波の光り走るよ池の春★★★
葦の田を起こして畔の耀ける★★★★
先生に投げる春日のドッジボール★★★
●黒谷光子
下萌えの足裏にやさし池巡る★★★★
池の土手を巡りながら、足裏に柔らかさを感じる。土手はもう下萌えている。足裏より全身に伝わる柔らかさが春の訪れを実感させている。
(高橋 正子)
春の鴨殊に美しきが群れのなか★★★
池巡る遠近に群る春の鴨★★★
●小口 泰與
家に飼う犬と小魚春の雪★★★★
日常生活を詠んで気負いがない。春の雪に、小さい生き物たち、飼っている犬と小さい魚とで家籠りとなる。(高橋 正子)
山風に雪解の畑を鳶の笛★★★
風の郷支う赤城に花辛夷★★★
●佃 康水
竹原(竹の町)雛巡り
享保雛飾る町屋の梁太し★★★★
「梁太し」であれば、その町屋には歴史があり、「享保雛」にも歴史がある。「雛」と「梁」との取り合わせは、一見意外に思われるが、歴史があれば、不思議なことではない。いい風景を見せていただいた。未来へと残してもらいたい日本の風景だ。(高橋信之)
梁太き二階を占める雛飾り★★★
工房や手焙り据えて竹を編む★★★
●高橋信之
白梅の五弁をしかと団地の空に
白梅が青い空に五弁の花びらをしっかりと開き仄かな香りを漂わせています。凛と咲き春の陽気に包まれた団地の爽やかな景色が見えて参ります。 (佃 康水)
早咲き桜さくら色して満開に
あしび咲く今日のこの刻はなやかに
2月20日~3月5日
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●投句箱3月6日~10日●
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2月18日-19日
2月19日
●小口泰與
木の芽和水嵩増えし里の川★★★
円かなる梢の雨粒春の昼★★★★
かんかんと竹林鳴るや春暖炉★★★
●桑本栄太郎
枝先の艶の伸びいる雨水かな★★★
まんさくの瀬音聞きつつ下りけり★★★★
段堰の飛沫(しぶき)きらめき風光る★★★
●多田有花
曇り空風の音して雨水かな★★★
新幹線春北風の中を滑り行く★★★
二輪目の紅梅開くを見つけたり★★★
●河野啓一
雪深き信太の森の白狐かな★★★
うす雪の解けて五弁の梅の花★★★
枯れ木にも潤いあらむ雪解けて★★★
●古田敬二
花を愛ず人は優しき椿咲く★★★
樹によれば確かな春の温みあり★★★
命あれば温きものよと樹に触れる★★★★
2月18日
●小口泰與
梅ふふむ靄に沈みし赤城山★★★
ほつほつと梅のふふむや水ゆたか★★★★
雪解け水や雨で水嵩の増えた川。ちょうどその季節梅の蕾がほころび始める。「水ゆたか」に季節をよく詠わせている。(高橋正子)
春雪の止みて榛名の隠れなし★★★
●多田有花
春きざす地蔵にさらのよだれ掛け★★★★
梅林に紅梅一輪開き初む★★★
梅林の斑雪を鳥の飛び立ちぬ★★★
●桑本栄太郎
伊丹へと降りる機影や春きざす★★★
春泥の日蔭の水の光りけり★★★
梅が香の角を曲がれば教会へ★★★★
梅の香りと教会の取り合わせに意外性がある。しかし、その取り合わせは、まったく離れたものの取り合わせではなく、「清らか」という点でつながり、詩情を生んでいる。(高橋正子)
●古田敬二
精一杯開いて陽を受けいぬふぐり★★★
陽だまりに寄りあい開くいぬふぐり★★★
いぬふぐり地を行く風に震えけり★★★
●河野啓一
病院の門や重ねて雪積る★★★
ふんわりと雪かぶせらる伊吹かな★★★★
冴え返る花一つのみ残りいて★★★
2月16日-17日
2月17日
●小口泰與
単線の鉄路かがよう春スキー★★★
あけぼのの雪解の榛名輝かす★★★★
春の雲掲ぐ榛名や鳶の笛★★★
●祝恵子
樹に隠る春鳥を待つ日の温み★★★
まんさくや今来た道を振り返る★★★★
梅ふふむ一人占めする空のあり★★★★
青空に梅の蕾がふくらんでいる。梅のふふむ空の美しさにひとり見惚れている。一人占めして楽しんでいる。心の持ちようでこんなよい世界が生まれる。(高橋正子)
●桑本栄太郎
梅ひらく一木のみの白さかな★★★★
あたりに先駆けて一木だけ梅が満開である。清潔で光に満ちた白さが目を惹く。「一木のみの白さ」が季節感と共に梅の花らしさをよく表現している。(高橋正子)
青空へ紅の一輪丘の梅★★★
、白梅の空の彼方へつづきけり★★★
●小西 宏
庭の雪芯の青みに解けゆけり★★★★
風に耐え雪に影置き春の光★★★
道に雪融けつつあるを跨ぎ行く★★★
2月16日
●小口泰與
春雪の花を咲かせし梢かな★★★
腰までの春雪降りし史上初★★★
ずぶずふと小犬消ゆるや春の雪★★★★
雪にまろび遊ぶのが好きな小犬ではあるが、このたびの春の大雪は、子犬が雪に溺れてしまうほどである。「ずぶずぶと」に水分を多く含んだ春の雪のやわらかさ、深かさ、子犬の重さなどが知れる。(高橋正子)
●桑本栄太郎
吹きさらす風の野面や蓬萌ゆ★★★★
雲奔り日射し眩しき余寒かな★★★
蒼天の楽譜となりぬ銀杏芽木★★★
●多田有花
城跡より城跡を見る春早し★★★
一本の松が立ちたり春の空★★★
山に山重ねて山の朧かな★★★
●小西 宏
春の空青々と澄み雪垂(しず)り★★★★
雪融けて庭に如雨露の口立てり★★★
吹く風に木の芽襞なし空を指す★★★
●川名ますみ
春雪の角度保ちて降りそそぐ★★★★
さつさつと斜めに降る春雪の降り様を「角度保ちて」と表現した。「理」が買っているようだが、よいデッサン力だ。(高橋正子)
春の雪角度を守り降りきたり★★★
春雪を弾く樹花芽に載せる樹★★★★
2月15日
●小口泰與
水玉の梢(うれ)に並ぶや春の雪★★★
春雪や畑に散りたる鴉達★★★
淡雪や淡き昔の学園祭★★★
●黒谷光子
湖辺へと過ぎる公園下萌ゆる★★★
打ち寄せる波に逆らい春の鴨★★★★
「波に逆らい」に感があってよい。。春浅い風が水面を波だたせ、その波が鴨の胸に寄せている。波に逆らいながらも浮く春の鴨に意志と健気さを感じる。(高橋正子)
波寄する湖岸に人無く残る鴨★★★
●迫田和代
青い空梅花(ばいか)白白空に映え★★★
鶯の声茜の空に高々と★★★
川土手の土柔らかく草萌える★★★★
「土柔らかく」がいい。一雨ごとに春めいてくるころ、土手の土も黒々と柔らかになってくる。柔らかな土から緑の草が萌えるのはうれしいものだ。(高橋正子)
●多田有花
その昔飢えは身近に春浅し★★★
すれ違う電車を待って余寒かな★★★
山巡る間に二度の春時雨★★★★
●桑本栄太郎
靴跡の白の行き交い春の雪★★★★
階段のなんば歩きや春の雪★★★
紀州路の南部(みなべ)七分や梅便り★★★
●河野啓一
東北に生まれて春の金メダル★★★
週末の雪山歌声響かせて★★★★
街中に雪解を集め狭き川★★★
●小西 宏
雪の朝鎖の音すバス通り★★★
ベランダに雪解けの音かろやかに★★★★
春の雨静かに屋根の雪融かす★★★
●川名ますみ
ごつごつと桜の花芽雪を載せ★★★★
立春を過ぎてからの春の大雪に二度も見舞われた今年。桜の花芽にも雪が積もり、その形が優しい桜の花に似合わず「ごつごつ」としている。
しかし、このごつごつとした強さが桜の花を一時に咲かせる力の源でもあるのだ。雪に桜の花色を置いて見たくなる句だ。(高橋正子)
春雪を冠す並木のどの枝も★★★
春雪にけぶるさくらのお壕端★★★
2月14日
●小口泰與
歩むるは羽根もつ跡や春の雪★★★
赤あかと朝日出づるや凍返る★★★
山笑う終業ベルの高らかに★★★★
終業のベルが高らかに鳴り響く。日ごと日脚が伸び、山笑うころの日暮れは、明るさがある。(高橋正子)
●多田有花
バレンタインデー粉雪降り続け★★★
春の雪いつしか雨となりし午後★★★
通帳の印字黒々冴返る★★★★
ATMを通した通帳だろう。機械から出て来た通帳の印字がやけに黒々としているのに驚いた。冴え返る空気が余計に数字をはっきりさせた感じだ。嬉しい印字だろう。(高橋正子)
●桑本栄太郎
蝋梅の標となりし門扉かな★★★
茎立や草取り屈む姉被り★★★
豆の花高き支柱の葉の陰に★★★★
●佃 康水
巣組みする鴉や青き枝散らし★★★
荒鋤の田の面の艶や春の風★★★
僧の描く円き箒目風光る★★★★
●河野啓一
屋根の雪どんと音して落ちにけり★★★
雪止めば枯れ枝揺らす鵯の声★★★★
雪空の中から淡雪音もなく★★★
●小西 宏
斑雪野(はだれの)にセキレイ土を選び行く★★★
雪残る街にまた降る春の雪★★★★
花芽もつ鉢植え埋め雪の降る★★★
2月13日
●小口泰與
臼づきて山のととのう遅日かな★★★
春暁や榛名の空の珊瑚色★★★★
春の暁の美しさを「珊瑚色」と捉えた。珊瑚色に春の来た喜びの心が読める。(高橋正子)
錦鯉まだ見えておる遅日かな★★★
●古田敬二
どの木々も根元まっすぐ春の影★★★★
「根元まっすぐ」がすっきりしていてよい。冬の間に寒風に晒され、雨雪に耐えた木々である。余分なものを落としての「根元まっすぐ」だ。
その影が春の影として柔らかなのがいい。(高橋正子)
どの枝も固き尖りや芽吹き待つ★★★
風が来る伊吹遠望残雪嶺★★★
●多田有花
ただいまの声が響きし春の夕★★★
斑雪野に放たれ犬の走りけり★★★★
寒戻るころころ赤子のくるまれて★★★
●桑本栄太郎
薄氷の融けてさざ波走りけり★★★★
「さざ波走り」に料峭の風の吹く様や風に冷たさが想像される。(高橋正子)
その村の斎藤姓や風光る★★★
揚ひばり空の青さに逆らわず★★★
●河野啓一
紅梅のまさに咲かんと淡き色★★★★
小鳥来るスケートリンクに舞うごとく★★★
春近し一歩及ばず金メダル★★★