今日の秀句/8月11日-20日

[8月20日/2句]
★青山椒こぼれる香り笊に盛り/河野啓一
山椒の青い実が採れるころになった。ごみなどと選り分けて、水洗いし笊にあげておくと、山椒の香りが辺りに立ち込め、実の青さにも増して、すがすがしい。(高橋正子)

★長雨のふと途切れては虫時雨/福田ひろし
しとしとと降る秋の長雨。ふと気付けば雨音に代わり、虫がしきりに鳴いている。自然界はすっかり秋になっている。(高橋正子)

[8月19日]
★紅蜀葵木陰を照らすその色よ/河野啓一
紅蜀葵の赤いいろは、緑濃い夏の風景のなかで目立つ。木陰のような薄暗がりでは、特にその色は印象的だ。(高橋正子)

[8月18日]
  鳥取へ盆帰省
★発電塔のプロペラゆるく秋暑し/桑本栄太郎
風力発電のプロペラがゆっくり回るのは、風が吹かないからで、秋暑しをいやでも感じさせる。(高橋正子)

[8月17日/2句]
★奥利根の更なる奥や法師蝉/小口泰與
奥利根のさらに奥に行くと法師蝉が鳴くばかり。「つくつくほうし」の鳴き声も哀調を帯びてくる。(高橋正子)

★かなかなの鳴く森を抜け薄い雲/小西 宏
ひぐらしの鳴く森を抜け、空を見上げると薄い雲が流れている。ひぐらしの「かなかな」の哀愁を帯びた透明感のある声と空の薄雲に通じ合うものがある。(高橋正子)

[8月16日]
  鳥取へ盆帰省
★渋滞の道路を挟み稲穂波/桑本栄太郎
自動車道は田んぼを貫いていることが多く、渋滞をしていても車窓からは稲穂の波が見られ、故郷の秋を感じさせてくれるのは幸せだ。故郷へ向かう懐かしい気持ちがさらに増してくる。(高橋正子)

[8月15日]
★青柿の並びさわさわ風に揺れ/河野啓一
青い柿の葉のなかにある青い柿の実。風が吹くと青柿がさわさわ揺れ、新涼のさわやかさを目にみせてくれる。(高橋正子)

[8月14日]
★蝉時雨その真ん中に座りけり/福田ひろし
情景は、「蝉時雨が四方八方から聞こえる」なのだが、「蝉時雨の真ん中に座る」と作者の行為を中心に捉えて、作者の存在感が強く打ち出された。(高橋正子)

[8月13日]
★浮雲のほのと明るし赤のまま/小口泰與
赤のままのやさしい抒情と、丸みを帯びた浮雲のほのと明るい情景がよくマッチしている。(高橋正子)

[8月12日/2句]
★青空の野山にひびき威し銃/桑本栄太郎
高く澄んだ青空の下の野山にこだまする威し銃。田の明るさと静かなさびしさをより深く感じさせる威し銃だ。(高橋正子)

★胸青きみんみん蝉の声高し/小西 宏
みんみん蝉の透き通った羽には、緑の筋が走っている。その緑の筋も魅力だが、青光りする胸にも
はっとさせられる。その胸を膨らませて声高く鳴くみんみん蝉が、いまだ「少年」を魅了する。(高橋正子)

[8月11日]
★嵐去り虫の音聞こえ初めにし夜/多田有花
嵐が去ると、季節がひとつ新しくなる。夜、静かに耳澄ませば、虫の音が聞こえる。聞えはじめた虫の音に秋の訪れを思う。はっきりとした句だ。(高橋正子)

8月11日-20日

8月20日

●河野啓一
青山椒こぼれる香り笊に盛り★★★★
山椒の青い実が採れるころになった。ごみなどと選り分けて、水洗いし笊にあげておくと、山椒の香りが辺りに立ち込め、実の青さにも増して、すがすがしい。(高橋正子)

水の辺を風吹き抜けて深緑★★★
雪の下葉も花も今盛りなる★★★

●多田有花
すぐそばでつくつくぼうしが鳴き始む★★★★
見上げれば朝の光に山澄みぬ★★★
秋めきてくっきり見える男鹿島★★★

●小口泰與
あけぼのの野川の風と虫の声★★★
眼間の雲遁走すほうせん花★★★★
あけぼのの田に限りなき露の玉★★★

●福田ひろし
八月の屋根たたきたる温き雨★★★
野分過ぎ夕空一朶の黒き雲★★★
長雨のふと途切れては虫時雨★★★★
しとしとと降る秋の長雨。ふと気付けば雨音に代わり、虫がしきりに鳴いている。自然界はすっかり秋になっている。(高橋正子)

●桑本栄太郎
秋めくや日差しと影の濃くなりぬ★★★★
嶺の端の雲の黄金や秋入日★★★
真夜の闇騒がせ秋の夜立ち来ぬ★★★

8月19日

●古田敬二
そこここに色ある楓秋に入る★★★
信号を待てば背中に吹く新涼★★★
庭に立ち虫の初音を妻と聴く★★★★

●小口泰與
えびずるや瀞の常陰(とかげ)へ浮子を打つ★★★★
歳月やちんちん電車霧に消ゆ★★★
時無しの利根の波間や秋の駒★★★

●多田有花
宵闇に踊りの歌が流れ出す★★★
秋茄子に味噌だれたっぷりかけて食ぶ★★★★
初秋の城を映せるドアミラー★★★

●福田ひろし
降りて照るやはりアジアの八月よ★★★

生温き雨のぼとりと秋暑し★★★
墓参り柏手を打つ子を叱る★★★

●桑本栄太郎
花びらの雨滴きらめき白木槿★★★★
畦豆や野辺の朝の耀きて★★★
新涼の窓の夜風にもの想う★★★

●河野啓一
紅蜀葵木陰を照らすその色よ★★★★
紅蜀葵の赤いいろは、緑濃い夏の風景のなかで目立つ。木陰のような薄暗がりでは、特にその色は印象的だ。(高橋正子)

鴨の子の群れて耀く疏水の水★★★
秋の風さやかに午後の美術展★★★

●小西 宏
本抱えDVD借り秋休み★★★
蜩に夕の山並み雲澄めり★★★★
サンゴ礁に白波を聞き天の川★★★

8月18日

●小口泰與
民宿の卓袱台古りぬ秋時雨★★★
山を分く坂東太郎男郎花★★★★
三山も靄にただよう酔芙蓉★★★

●河野啓一
四方山の話弾みて盂蘭盆会★★★★
蓮池や楽土の灯しほの紅く★★★
新涼の蝉の声聞く朝かな★★★

●桑本栄太郎
 鳥取へ盆帰省
発電塔のプロペラゆるく秋暑し★★★★
風力発電のプロペラがゆっくり回るのは、風が吹かないからで、秋暑しをいやでも感じさせる。(高橋正子)

糸とんぼ雨の墓石につらなりて★★★
追憶をたどり絆や盆の客★★★

●小西 宏
カンナ朱の立つ広き葉に青空に★★★★
故郷の新しき名の甲子園★★★
鴉ゆく空あかあかと秋の暮★★★

8月17日

●小口泰與
奥利根の更なる奥や法師蝉★★★★
奥利根のさらに奥に行くと法師蝉が鳴くばかり。「つくつくほうし」の鳴き声も哀調を帯びてくる。(高橋正子)

蜩や利根の瀬頭波やわし★★★
藤袴浅黄斑の飛び違う★★★

●古田敬二
夕焼けも秋の実りの色となり★★★★
新涼に行く散歩道新しく★★★
森戦ぐそこから我に涼あらた★★★

●迫田和代
白い雲ポカリ浮かんだ秋の空★★★★
懐かしい仏も集まる盂蘭盆会★★★
心にも走馬灯あり闇の中★★★

●多田有花
太陽の見えぬ日続く盆休み★★★
つくつくぼうし主役となりぬ蝉時雨★★★
新しき寝具が届く初秋に★★★★

●桑本栄太郎
<盆帰省の日本海>
長芋の砂地畑や盆の海★★★★
盆波のサーファー独り波の上★★★
潮騒の聞こえ寄せ来る盆の海★★★

●小西 宏
【原句】かなかなと鳴く森を抜け薄い雲
【添削】かなかなの鳴く森を抜け薄い雲★★★★
ひぐらしの鳴く森を抜け、空を見上げると薄い雲が流れている。ひぐらしの「かなかな」の哀愁を帯びた透明感のある声と空の薄雲に通じ合うものがある。(高橋正子)

蜩の清き身をもて森ゆらす★★★
秋茄子を肴に政治談議かな★★★

●高橋秀之
伏見から見渡す京と秋の山★★★
法師蝉聞きつつ歩く下り道★★★★
鳴く声の途切れることなし秋の蝉★★★

8月16日

●小口泰與
青空へ一朶の雲や秋薊★★★
湯の町の長き石段秋めける★★★★
横丁の灯ともりけり虫の声★★★

●多田有花
土砂降りの中を出かける墓参り★★★
彫像の如くに盆の守宮かな★★★
茄子の馬岸辺の波に洗われて★★★★

●河野啓一
緑赤黄とり合わせたる夏料理★★★★
大文字ほのお見納め霊送る★★★
青葦の濡れて戦ぐや川尻に★★★

●桑本栄太郎
<鳥取へ盆帰省>
渋滞の道路を挟み稲穂波★★★★
自動車道は田んぼを貫いていることが多く、渋滞をしていても車窓からは稲穂の波が見られ、故郷の秋を感じさせてくれるのは幸せだ。故郷へ向かう懐かしい気持ちがさらに増してくる。(高橋正子)

トンネルの入り口飾り葛垂るる★★★
百日紅咲く石州瓦の赤き屋根★★★

8月15日

●小口泰與
夕さりの城址に立つや法師蝉★★★
秋日射す茄子の茎の撓みけり★★★
今朝赤城山(あかぎ)紫紺や利根川(とね)の風さやか★★★★

●河野啓一
青柿の並びさわさわ風に揺れ★★★★
青い柿の葉のなかにある青い柿の実。風が吹くと青柿がさわさわ揺れ、新涼のさわやかさを目にみせてくれる。(高橋正子)

暮れ初めて夕立ちは星の涙雨★★★
白き香を雨に滲ませ花蜜柑★★★

●小西 宏
残暑などどこ吹く風と百日紅★★★
蜩の寝転んでいま青き空★★★
孫と見るのび太の恋の秋清し★★★★

8月14日

●小口泰與
色鳥や一朶の雲へ朝日差し★★★★
止め腹の鮭を吊るすや潮の風★★★
秋鯖をでんと我が前夕餉かな★★★

●福田ひろし
蝉時雨その真ん中に座りけり★★★★
情景は、「蝉時雨が四方八方から聞こえる」なのだが、「蝉時雨の真ん中に座る」と作者の行為を中心に捉えて、作者の存在感が強く打ち出された。(高橋正子)

熱帯夜途切れ安らぐ子の寝息★★★
もつれ飛ぶ蜻蛉二匹の速さかな★★★

●小西 宏
ひぐらしの切り裂き流る森の揺れ★★★
秋の蚊のわが手に触れて小さきこと★★★
虫の音の公園夜のサイクリング★★★

●高橋信之
丘の家に盆来て盆の瓜なすび★★★★
丘の家は、風がよく通い、陽もよく当たり、空に近い。そこに盆が来て、瓜やなすびの馬が霊迎えのために置かれている。盆の瓜なすびが「明らか」だ。(高橋正子)

丘の坂上がれば盆の瓜なすび★★★
盆が来て吾に父あり母ありき★★★

8月13日

●小口泰與
浮雲のほのと明るし赤のまま★★★★
赤のままのやさしい抒情と、丸みを帯びた浮雲のほのと明るい情景がよくマッチしている。(高橋正子)

とんぼうやつと迫りたる浅間山★★★
野路の秋背後気にするチワワかな★★★

●多田有花
盆花をおのおのカートに積み並ぶ★★★
開き初む白蓮に盆の朝日さす★★★
シベリアの脱出記読む盂蘭盆会★★★★

●小西 宏
草の原踏めばバッタの空青し★★★★
父さんと走るサッカー盆の入り★★★
蜩のひとり鳴くこそ秋澄めれ★★★

●高橋信之
三角に切られ西瓜の立ち並ぶ★★★★
葡萄の粒の一つ一つに灯を映し★★★
鮎すらりとして黄緑が皿に載る★★★

●高橋正子
白皿に山河の色の鮎並び★★★★
鮎の姿がありありと眼に浮かんでくる。山河の色をして、天然の姿を見せてくれるのだ。(高橋信之)
       
黒々と葡萄の粒が粉をふく★★★
西瓜切って西瓜の匂いを囲む子ら★★★

8月12日

●小口泰與
虫の音や小犬と語る独り酒★★★
湯の町の検番消ゆる露の秋★★★
検番のいにしえ語り秋扇★★★

●桑本栄太郎
青空の野山にひびき威し銃★★★★
高く澄んだ青空の下の野山にこだまする威し銃。田の明るさと静かなさびしさをより深く感じさせる威し銃だ。(高橋正子)

嵐去り月中天に満ちにけり★★★
走りゆく雲輝かせ盆の月★★★

●河野啓一
野分過ぎ青空覗く木の梢★★★★
萩の寺ようやく去りぬ雨嵐★★★
かささぎの渡せる橋を探す夜★★★

●古田敬二
観音像をまわりて戻るオニヤンマ★★★
蓮の葉に花びら水玉ゆったりと★★★
花びらと光る水玉蓮の葉に★★★★

●佃 康水
打球追う子らへ湧き出づ赤蜻蛉★★★
夏休み父の手借りて逆上がり★★★★
朝の陽へ白さ眩しむ花木槿★★★

●小西 宏
胸青きみんみん蝉の声高し★★★★
みんみん蝉の透き通った羽には、緑の筋が走っている。その緑の筋も魅力だが、青光りする胸にも
はっとさせられる。その胸を膨らませて声高く鳴くみんみん蝉が、いまだ「少年」を魅了する。(高橋正子)

初秋の朝のジョギング並び合い★★★
朝の陽の塩辛とんぼ水澄めり★★★

8月11日

●小口泰與
浮雲を放つ浅間山(あさま)や秋桜★★★★
「放つ」という表現に、浮き雲の軽さ、浅間山の雄大さが読み取れる。浮き雲を放つ浅間山を向こうにして秋桜がそよそよと揺れている。すっかり秋だ。(高橋正子)

次々に県境違う七変化★★★
コスモスや雲育て上ぐ浅間山★★★

●多田有花
嵐去り虫の音聞こえ初めにし夜★★★★
嵐が去ると、季節がひとつ新しくなる。夜、静かに耳澄ませば、虫の音が聞こえる。聞えはじめた虫の音に秋の訪れを思う。はっきりとした句だ。(高橋正子)

枝あまた山路に落ちし台風過★★★
蓮池の畔を巡る秋日傘★★★

●古田敬二
コーヒーは少し熱めに今朝の秋★★★★
今朝の秋の爽やかさに、朝一番に飲むコーヒーは、少し熱めに淹れた。この少し熱めの温度が、心身に快い。(高橋正子)

開ける窓少しだけにし夜の秋★★★
カーテンをふうわり押して秋が来る★★★

●桑本栄太郎
対岸のはるか遠くや秋出水★★★
嵐去り今夜はスーパー満月に★★★
野分凪ぎ青き実の散るバス通り★★★★

●黒谷光子
捨て舟の一艘囲み葦の花★★★★
止まりたる木肌の白さ秋の蝉★★★
夕暮れの声こと更に秋の蝉★★★

●小西 宏
扇風機まわして街の工場の音★★★
家おおう藍朝顔にガラスきらめく★★★★
嵐去り月昇りくる屋根の影★★★

今日の秀句/8月1日-10日

[8月10日]
★高架路をカーブしかなかなの森へ/川名ますみ
高架の路をカーブすると、かなかなの鳴く森へ入った。「高架」「カーブ」が案内する別世界は、かなかなの声が響き渡る、森の童話を思わせるようなところ。(高橋正子)

[8月9日]
★亡き父の好物だった新豆腐/迫田和代
新豆腐は、今年できた大豆で作られる。残暑きびしい中で食べる新豆腐は、夏ばてした体を元気にしてくれるようだ。新豆腐に亡き父の笑顔が思い浮かんでくる。(高橋正子)

[8月8日/2句]
★川底の魚のしるきや秋近し/小口泰與
秋が近づくと水も澄んでくる。川底の魚もはっきりと見える。自然界は、こんなところから秋になっていく。(高橋正子)

★鱸釣り大物提げし男かな/河野啓一
鱸(すずき)の旬は6月から8月で夏の代表的魚。すらりとした精悍な顔つきの鱸は、出世魚でもあり、その大物を提げた男の姿は実に逞しい。(高橋正子)

[8月7日/2句]
★女子高生連れ立ち帰る青田道/多田有花
女子高校生は、青田のような時代。若く溌剌としている。その青田道を連れ立って帰るのは、農村地帯の純朴そうな女子高生。その女子高生と青田道の取り合わせがいい。(高橋正子)

★大空は淡き水色今朝の秋/高橋秀之
「今朝の秋」が実感をもって詠まれて、それがさわやかだ。「大空」もいい。広々とした空が淡い朝の水色で詩情がある。(高橋正子)

[8月6日]
 広島平和記念式典参列
★黙祷や雨の青芝踏みしめて/佃 康水
広島平和記念式典は、8月6日の原爆投下の日に行われる。原爆投下の日は、暑い日であったことを思えば、青芝に雨が降る式典は戦後69年経った歳月の経過を思わせる。式典に参列したケネディ大使がレインコートを着る新聞を見て、広島がこの日雨だったことを知った。(高橋正子)

[8月5日]
★ベランダにピザとワインの遠花火/小西 宏
ベランダで涼みながらピザとワインを楽しもうとしていると、遠くに花火の音が聞こえ、見えるのだろう。花火でワインとピザを楽しむ生活が今風で洒落ている。(高橋正子)

[8月4日/2句]
★夏富士の風乾くとき影の濃し/小西 宏
「風乾く」は、風が肌にさらりと感じられる日だろう。そういった日遠く眺められる富士山の影が濃い。あきらかである。(高橋正子)

★大皿に白く四角い冷奴/高橋秀之
大人数に用意された冷奴。大皿の白く四角な冷奴が、「白」「四角」のイメージで如何にも冷たく涼やかだ。(高橋正子)

[8月3日/2句]
★どこまでも波打つ稲穂のうすみどり/黒谷光子
どこまでも波打つ稲田のあるのどかな村。稲の穂のうすみどりが新鮮だ 。(高橋正子)

★バッグ背にバスに乗り来る日焼の子/桑本栄太郎
夏休みのちょうど真ん中。すっかり日焼けた子がバッグを背負って勇んでバスに乗ってきた。
夏休みを楽しんでいる子、それに温かいまなざしを注ぐ作者がいる。(高橋正子)

[8月2日]
★故郷の青い鬼灯水の音/迫田和代
故郷の夏の思い出は青い鬼灯と水の音である。鬼灯にはお盆と重ねて、暑い戦争の夏を思い出させるものがある。(高橋正子)

[8月1日]
★草むしり清められたる慰霊碑前/佃 康水
旧盆近くなると、墓の草取りや屋敷周りの草取りをして、きれいさっぱりとしてお盆を迎える。慰霊碑の周囲もきれいに除草されて、御霊を迎える。ただ草を取るのではなく「清める」のである。(高橋正子)

8月1日-10日

8月10日

●小口泰與
黄昏の城址に立つや秋の声★★★
大屋根の葺き終わりけり秋の風★★★
ご祝儀はおおかた奇数秋うらら★★★★

●川名ますみ
高架路をカーブしかなかなの森へ★★★★
高架の路をカーブすると、かなかなの鳴く森へ入った。「高架」「カーブ」が案内する別世界は、かなかなの声が響き渡る、森の童話を思わせるようなところ。(高橋正子)

かなかなの声が一時車窓から★★★
首都高にかなかなの森聴き過ぎぬ★★★

●小西 宏
公園の棚田の荒れて沢桔梗★★★★
夜の更けてまで二つ三つ秋の蝉★★★
降りて止みまた吹きなぐり秋の雨★★★

●桑本栄太郎
雨音の硬き音立て颱風来る★★★★
咆哮の木々の雄叫び颱風圏★★★
刻々と警報メールや颱風圏★★★

●古田敬二
草はらへ前進前進かぼちゃ蔓★★★
畑の外へ自由に伸びてかぼちゃ蔓★★★★
街に出るウイーン生まれのパナマ帽★★★

●多田有花
台風はいま我が頭上通過中★★★
台風下宅配便の届きおり★★★
濁流の上の青空台風過★★★★
台風が過ぎ去り、青空となったが、川は逆巻き濁りながら流れている。この対比に、台風のすざましさがある。(高橋正子)

8月9日

●小口泰與
谷川岳(たにがわ)の薙の修羅場や秋の晴★★★
ゆったりと田川流れし秋日和★★★
雲放つ赤城の嶺や虫の声★★★★

●黒谷光子
初秋の川音よりも雨の音★★★
桃の箱ゆるりと蓋を持ち上げる★★★
仏前のほのかに匂う桃三つ★★★★

●迫田和代
亡き父の好物だった新豆腐★★★★
新豆腐は、今年できた大豆で作られる。残暑きびしい中で食べる新豆腐は、夏ばてした体を元気にしてくれるようだ。新豆腐に亡き父の笑顔が思い浮かんでくる。(高橋正子)

台風が幸いそれて雨走る★★★
流星や遠い空の旅無事に終え★★★

●多田有花
ゆっくりと台風南方海上に★★★★
八月の嵐大気のひんやりと★★★
接近する嵐を待ちぬ長崎忌★★★

●桑本栄太郎
なだれ込む蝉のしぐれや自動ドア★★★★
自動ドアが開くとドア一枚で遮られていた内と外。外の蝉音がまさに「なだれ込む」。「なだれ込む」が身体的実感である。(高橋正子)

青空の雲の疾く行き野分めく★★★
新涼の窓より来たる夜半の風★★★

●河野啓一
海近き大川染めて秋入り日★★★★
秋の森を描きし額を壁に架け★★★
渦巻ける巨き雨雲秋台風★★★

●小西 宏
初秋の空の白むを蝉に知る★★★★
台風の未だ来ぬ空に雲巻ける★★★
露草の葉の群れたるに花も群れ★★★

●高橋秀之
台風に備えて船が出港す★★★★
台風が来ると、小舟は港に入るけれど、大型船は港の外へ出て碇を下ろす。来つつある台風に備えて、何隻もの船があわただしく出港する。台風前の港の活写。(高橋正子)

台風の近づくニュース夜は更けて★★★
束の間の晴れ間の後に台風が★★★

8月8日

●祝恵子
手に余るものはポッケにミニトマト★★★★
朝一番水たっぷりと夏野菜★★★
寝そべりし犬の鼻先白粉花★★★

●古田敬二
睡蓮や薄紅色の縁どりに★★★
打ち水や工事現場の守衛さん★★★★
夏草やサッカーボールの忘れ物★★★

●小口泰與
川底の魚のしるきや秋近し★★★★
秋が近づくと水も澄んでくる。川底の魚もはっきりと見える。自然界は、こんなところから秋になっていく。(高橋正子)

あけぼのや利根本流の波さやか★★★
北軽の草の波打つ秋気かな★★★

●河野啓一
鱸釣り大物提げし男かな★★★★
鱸(すずき)の旬は6月から8月で夏の代表的魚。すらりとした精悍な顔つきの鱸は、出世魚でもあり、その大物を提げた男の姿は実に逞しい。(高橋正子)

初秋の月淡くして中天に★★★
初秋や午後の紅茶とカステーラ★★★

●桑本栄太郎
土砂降りと云うほかはなし蝉時雨★★★
夏果ての蔓の葉黄ばむ支柱かな★★★
陸橋を走り驟雨のバスに乗る★★★★

●小西 宏
登り来て一杯の水お花畑★★★★
刺青のごと二の腕の日焼跡★★★
里山を行きヒグラシの波の中★★★

●高橋秀之
初秋の朝の晴れ間が夕に雨★★★
秋初め雲が真っ直ぐ流れ行く★★★★
立ち止まる秋の暑さの淀屋橋★★★

8月7日

●古田敬二
穂先から実りの色へ猫じゃらし★★★★
穂先から実り輝く猫じゃらし★★★
触れ合いて実りの色を猫じゃらし★★★

●小口泰與
大旱の金輪際の犬の舌★★★
頭(ず)に肩に雨を伴うさるすべり★★★★
雷鳴に寝屋より落ちぬ小犬かな★★★

●河野啓一
青空の見え隠れして秋立ちぬ★★★★
ホクホクと煮えし南瓜を皿に盛る★★★
新小豆思うや丹波の農の人★★★

●多田有花
女子高生連れ立ち帰る青田道★★★★
女子高校生は、青田のような時代。若く溌剌としている。その青田道を連れ立って帰るのは、農村地帯の純朴そうな女子高生。その女子高生と青田道の取り合わせがいい。(高橋正子)

青田波跨ぎ螺旋のバイパス路★★★
ゆく夏を空の青さに送りけり★★★

●桑本栄太郎
青空に向けて喇叭やダチュラ咲く★★★★
せせらぎの川風生むや白木槿★★★
さやさやと窓より夜気の涼夜かな★★★

●佃 康水
小さき森成せる札所や蝉時雨★★★★
盆用意先ずは仏具を磨き終ゆ★★★
平和の鐘余韻波打つ晩夏かな★★★

●小西 宏
広島や行く川土手に緑濃し★★★
土手走り追いし花火の落下傘★★★★
鳥目覚め囁く声や今朝の秋★★★

●高橋秀之
大空は淡き水色今朝の秋★★★★
「今朝の秋」が実感をもって詠まれて、それがさわやかだ。「大空」もいい。広々とした空が淡い朝の水色で詩情がある。(高橋正子)

今朝の秋窓から吹き込む風涼し★★★
秋に入る遠くの生駒がくっきりと★★★

8月6日

●小口泰與
秋近し朝の赤城山(あかぎ)の迫りける★★★
土用芽のいきおい猛し風の中★★★★
雲の峰生垣伸びし伸びしまま★★★

●河野啓一
たましいの底の嘆きや原爆の日★★★★
人の世の平和を希う原爆忌★★★
百日紅散りくる花の淡きこと★★★

●桑本栄太郎
君逝きしより八年や原爆忌★★★
茜さす通夜の日暮れや芙蓉咲く★★★
殺生のなき世なれやと蝉放つ★★★★

●小西 宏
向日葵の夢のでっかし隠れんぼ★★★★
白砂の熱き底なる蟻地獄★★★
部屋全て吹き抜きにして処暑の風★★★

●佃 康水
 広島平和記念式典参列
黙祷や雨の青芝踏みしめて★★★★
広島平和記念式典は、8月6日の原爆投下の日に行われる。原爆投下の日は、暑い日であったことを思えば、青芝に雨が降る式典は戦後69年経った歳月の経過を思わせる。式典に参列したケネディ大使がレインコートを着る新聞を見て、広島がこの日雨だったことを知った。(高橋正子)
 
広島忌雨の激しくテント打つ★★★
夾竹桃雨に散り敷く祈りの日★★★      

●古田敬二
本棚の「はだしのゲン」へ黙祷す★★★★
八時十五分蝉も慟哭広島忌★★★
殷殷と止まぬ鐘の音広島忌★★★

●多田有花
空に雲高々と立ち原爆忌★★★★
原爆忌の空に雲が高々と湧きあがる。暑い日であるが、きのこ雲でなく白い峰雲であることに
今日の日を思う。私は6日、横浜の空にめったに見ないかなとこ雲を見た。(高橋正子)

秋隣る頂に聞く風の音★★★
見上げれば六甲連山夏の雲★★★

8月5日

●小口泰與
D五一の罐の火あつし朝曇★★★
土用芽や顔くろぐろと夏季練習★★★★
ひまわりや半世紀過ぐ同窓会★★★

●小川和子
細き沢流れ避暑地の樹々深し★★★★
木立の間を細い沢が流れて、避暑地らしい風景だ。「樹々深し」に樹間を通る光をさまざま想像する。(高橋正子)

浅間岳晴れて眩き雲の峰★★★
木の十字架晩夏の空に仰ぎけり★★★

●河野啓一
初秋の木々の葉擦れに風を知る★★★
秋台風そろりりそろりと列島に★★★
青柿の顔を並べて空にあり★★★★

●多田有花
窓閉めて終日の雨秋近し★★★
青空と夏雲映しガラスのビル★★★★
桜葉の色づき初めし晩夏かな★★★

●桑本栄太郎
かしましき寺苑となりぬ蝉しぐれ★★★
菜園の葉の黄ばみ来る晩夏かな★★★
涼風の窓より来たる夜気の闇★★★★

●小西 宏
犬の舌曳き炎天の大通り★★★
とんぼ蚊を追いつつ鳥に食われけり★★★

ベランダにピザとワインの遠花火★★★★
ベランダで涼みながらピザとワインを楽しもうとしていると、遠くに花火の音が聞こえ、見えるのだろう。花火でワインとピザを楽しむ生活が今風で洒落ている。(高橋正子)

●高橋秀之
夏の風雲と雲とが交差する★★★
夏風と木々のざわめきリズムよく★★★
南から北へと夏風船は航く★★★★

8月4日

●小口泰與
地下足袋の屋根葺く人や油照★★★★
炎昼の職人屋根にたむろせり★★★
朝焼けや傘を携え旅に出づ★★★

●祝恵子
お昼には採りたて野菜とソーメンと★★★★
屋上の祭り提灯連なりぬ★★★
目標の土手の花合歓夕歩き★★★

●河野啓一
雨上がり銀杏並木は浅緑★★★★
透明な空の画布かな飛行機雲★★★
夕顔の太き蔓かな逞しき★★★

●桑本栄太郎
蝉しぐれ小雨の午後も鳴き止まず★★★
雲つどう雨の予報の晩夏かな★★★★
じりりりと蝉の寝言や真夜の闇★★★

●小西 宏
夏富士の風乾くとき影の濃し★★★★
「風乾く」は、風が肌にさらりと感じられる日だろう。そういった日遠く眺められる富士山の影が濃い。あきらかである。(高橋正子)

真夏日に花ゆらゆらと百日紅★★★
丘越えて音やわらかき宵花火★★★

●高橋秀之
大皿に白く四角い冷奴★★★★
大人数に用意された冷奴。大皿の白く四角な冷奴が、「白」「四角」のイメージで如何にも冷たく涼やかだ。(高橋正子)

雨上がりと同時に蝉の大合唱★★★
真っ青な南の空に雲の峰★★★

●古田敬二
睡蓮や目瞑り立てる観音像★★★
睡蓮や慈母観音像の真正面★★★★
睡蓮も観音像も真っ白に★★★

8月3日

●小口泰與
雨粒を揺らしておりぬ百合の蕊★★★
土用芽や再生の槌遅々として★★★
あけぼのの千曲の流れさやけしや★★★★
「千曲」に詩情が湧く。暮らしの周りは暑い時なのに、あけぼのの千曲の流れはさやかだ。(高橋正子)

●古田敬二
しなやかに実りて揺れる猫じゃらし★★★★
草の穂も実る季節になった。猫じゃらしも実り、「実りてしなやか」なのが猫じゃらしの特性。(高橋正子)

天辺へ咲き切り膨れる百日紅★★★
しなやかな曲線揺れる猫じゃらし★★★

●河野啓一
岐阜提灯組み立て今年も盆用意★★★★
先祖の霊を迎えるお盆にふさわしく、岐阜提灯は薄紙が張られ繊細な草草が描かれ、灯を入れれば、静かに透ける。今年もお盆の用意の一つに岐阜提灯の組み立てがある。(高橋正子)

夏空へ朝の飛翔や鳥の群れ★★★
ビーチバレー浜辺に水着ジャンプして★★★

●黒谷光子
どこまでも波打つ稲穂のうすみどり★★★★
どこまでも波打つ稲田のあるのどかな村。稲の穂のうすみどりが新鮮だ 。(高橋正子)

朝の畑いろ鮮やかに茄子胡瓜★★★
初生りは先ず仏前に真桑瓜★★★

●桑本栄太郎
バッグ背にバスに乗り来る日焼の子★★★★
夏休みのちょうど真ん中。すっかり日焼けた子がバッグを背負って勇んでバスに乗ってきた。
夏休みを楽しんでいる子、それに温かいまなざしを注ぐ作者がいる。(高橋正子)

故郷のブランドミルクやかき氷★★★
街灯のあかりを惜しみ蝉しぐれ★★★

●小西 宏
海あおあお丸き地球に夏の雲★★★
息詰めて潜るメガネに熱帯魚★★★★
小さき砂に波音の揺れ北斗星★★★

●佃 康水 
 夏休みの子供達へ 寺祭り
素麺を茹で上げ小さく纏めおく★★★
境内に竹樋の素麺流しかな★★★★
読み聞かせ子らの集える夏休み★★★

8月2日

●小口泰與
山霧のとよむ鍋割山(なべわり)眼間に★★★★
学生の合宿長し百日草★★★
玉虫や妹の買いたる宝くじ★★★

●迫田和代
故郷の青い鬼灯水の音★★★★
故郷の夏の思い出は青い鬼灯と水の音である。鬼灯にはお盆と重ねて、暑い戦争の夏を思い出させるものがある。(高橋正子)

何もない風だけ通る夏座敷★★★
口だけで笑ってくれるサングラス★★★

●桑本栄太郎
夏草や廃車埋もる赤き色★★★★
旅ごころ想い果てなく秋近し★★★
涼風の窓に哀しき夕べかな★★★

●河野啓一
木から木へ渡りてすだく蝉の恋★★★
青空の四方に耀く雲の峰★★★★
雲光りいざ本番とアロハシャツ★★★

●小西 宏
まだ明けぬ森動き初む一つ蝉★★★★
太陽に汗かき叫べ油蝉★★★
夕日陰る向かいの丘に涼しい風★★★

●多田有花
夜の秋静かに雨の降りだしぬ★★★★
夜はいくぶん涼しくなってきた。遠いところにいる台風の雨かもしれないが、「静かに」降りだした。その静かさは秋だ。(高橋正子)

すれ違う暑いですねと言い交わし★★★
寄ればふわり飛び立つ紋黄揚羽★★★

●古田敬二
高台へ角を曲がれば来る涼風★★★★
高台は耳に鳴るほど吹く涼風★★★
一粒ずつ色付き実るぶどう棚★★★

8月1日

●小口泰與
向日葵や胸板厚き高校生★★★★
松籟や雨を含みし百日紅★★★
遠き日や吹かれて来る落し文★★★

●桑本栄太郎
忽然とみんみん蝉や昼さがり★★★
突然の風吹き雨の晩夏かな★★★
嶺の端の茜真紅や大西日★★★★

●佃 康水
草むしり清められたる慰霊碑前★★★★
旧盆近くなると、墓の草取りや屋敷周りの草取りをして、きれいさっぱりとしてお盆を迎える。慰霊碑の周囲もきれいに除草されて、御霊を迎える。ただ草を取るのではなく「清める」のである。(高橋正子) 

山水の桶に押し合うとまとかな★★★
網張られごろごろ太る大西瓜★★★

●小西 宏
西風の草そよがせて夏の暮★★★
雷鳴を聞き雨となる地の香り★★★
出汁(だし)に漬け彩りを添え夏野菜★★★★

今日の秀句/7月21日-31日

[7月31日]
★炎天や我が影のほか影は無し/古田敬二
炎天の高く立つものがない畑などでは、こうした場面に出会う。炎天の下に静まったところに立っているのは自分だけ。自分の影だけが黒く立つ。(高橋正子)

[7月30日/2句]
★まだ熱き陽のぬくもりの瓜もらう/多田有花
夕方もまだ早い時間だろう。畑の瓜をもらったが、手に受けてみるとまだ陽のぬくもりがある。日中の暑い太陽を受け、野菜も温もっているが、そのほの暖かさに驚く。(高橋正子)

★ふと見上ぐ窓の青さや晩夏光/桑本栄太郎
まだ暑い盛りであるが、草木の繁茂も終わり、烈日にも陰りが見え、夏が終わる感慨が湧くのが、晩夏。ふと見上げた窓の青さに秋めく気配を感じた。(高橋正子)

[7月29日]
★近づくと我へわれへと目高かな/小口泰與
目高などが、自分に近寄ってくるのは、遊びに寄ってくるようで、楽しいものだ。ひと時そんな楽しみを味わう。それも涼しいことだ。(高橋正子)

[7月28日/2句]
★樹にもたれ絵描く数人夏帽子/祝恵子
絵を描くのに、必ずしも座って描くとは限らない。木陰を作る木の幹に持たれ、夏帽子を冠り、スケッチをしているグループなのであろう。暑苦しくなく、軽やかな光景だ。(高橋正子)

★風吹けば光りて現る青胡桃/古田敬二
葉隠れに生っているまだ青い胡桃は、葉に隠れてめだたないが、風が葉を翻えすと、胡桃のありかがよくわかる。ましてや光っているのだから、存在は確かだ。(高橋正子)

[7月27日]
★一面の青田を真っ直ぐ行く列車/高橋秀之
下五を名詞で止めると句のイメージがはっきりする。一面の青田が広がる平野。その中を列車が、まっすぐ行く。青田の清々しい風景が、旅心を誘う句。(高橋正子)

[7月26日]
★鴨はもう植田の高さに隠れおり/祝恵子
植田に鴨を泳がせ、鴨に雑草を食べさせ、鴨の飼育を目的としているケースなのだろう。植田の苗は、みるみる生長し、鴨の姿を隠してしまうほどになった。苗も、鴨も生長盛ん。(高橋正子)

[7月25日/2句]
★白粉花暮れゆく空に咲き揃う/小川和子
白粉花は夕方から咲く花。暮れゆく空に咲く花は、かすかな良い香りがあり、抒情的。(高橋正子)

★嬬恋のきゃべつ山積み湖隠す/小口泰與
夏の冷涼な気候を生かして、嬬恋ではキャベツがたくさん生産される。湖を隠ししてしまうほどのキャベツの収穫量。壮観であろう。(高橋正子)

[7月24日]
★はちきれんばかりの紅トマトもぐ/古田敬二
木で熟れたトマトは真っ赤。それもはちきれんばかりの紅。強い夏の日差しを糧に赤々と熟れるトマトが見事だ。(高橋正子)

[7月23日]
★外つ人のあまた祇園や日盛りに/桑本栄太郎
京都を訪れる外国人は多いが、なかでも祇園の情緒に惹かれる外国人が多いだろう。京の日盛りをものともせず、祇園を楽しむ外国人たちの姿は、京の風景になっているようだ。(高橋正子)

[7月22日]
 六甲アイランド埠頭
★夏潮の海原蒼きカフェレストラン/桑本栄太郎
夏潮の海原の蒼さは、見るだけで爽快な、広々とした気分になる。カフェレストランでゆっくり喫茶しながら眺める時間は至福の時。(高橋正子)

[7月21日]
★黒光りして児の掌にかぶと虫/河野啓一
子ども、特に男の子は、虫の中ではかぶと虫がとりわけ好きだ。黒光りする胴体、たくましい角、決して敏速には動かない堂々とした様子。そのかぶと虫を掌に乗せて、王者の気分だ。(高橋正子)

7月21日-31日

7月31日

●古田敬二
炎天や我が影のほか影は無し★★★★
炎天の高く立つものがない畑などでは、こうした場面に出会う。炎天の下に静まったところに立っているのは自分だけ。自分の影だけが黒く立つ。(高橋正子)

忘れ鍬越えて南瓜の蔓伸びる★★★
地下鉄という涼しき箱に入り座す★★★

●小口泰與
ダリア咲く頭花かがやく雨しづく★★★
手に乗せし桃や小犬の駆け寄りて★★★
青芝を手ずから刈って大の字に★★★★

●桑本栄太郎
雲流れ青空蒼き晩夏かな★★★★
落ち蝉の白き腹見せあおのけに★★★
寝ていても部活の声と蝉しぐれ★★★

●小西 宏
ヒマワリに顔見つめらる知らぬ道★★★★
波音に耳を澄ませば夏の星★★★
窓開けて寝れば澄む夜の風涼し★★★

7月30日

●小口泰與
まんまるなしずくにうつるダリアかな★★★
緋のダリアほろと落ちたる雨雫★★★★
天牛や茎のしずくのほろと落つ★★★

●河野啓一
きゅうり漬カリリと噛んで朝の膳★★★★
異国より来れる芙蓉オクラ咲く★★★
 淡路島西海岸にて
夕凪や人麻呂の歌碑ひとり立ち★★★

●多田有花
まだ熱き陽のぬくもりの瓜もらう★★★★
夕方もまだ早い時間だろう。畑の瓜をもらったが、手に受けてみるとまだ陽のぬくもりがある。日中の暑い太陽を受け、野菜も温もっているが、そのほの暖かさに驚く。(高橋正子)

虫取り網手に少年の夏休み★★★
頂に揚羽蝶の翅残る★★★

●桑本栄太郎
ふと見上ぐ窓の青さや晩夏光★★★★
まだ暑い盛りであるが、草木の繁茂も終わり、烈日にも陰りが見え、夏が終わる感慨が湧くのが、晩夏。ふと見上げた窓の青さに秋めく気配を感じた。(高橋正子)

部活子の校舎に音色や夏深し★★★
すさまじく蚊を打つ吾を恥にけり★★★

●小西 宏
群青の海遥かなる夏の雲★★★
日焼けして目玉ばかりや浮き輪の子★★★★
青草に大の字に寝て星いくた★★★

●高橋秀之
夏の空昇る朝日は眩しくて★★★
拍子打つ神田明神夏の朝★★★★
男坂の階段登り汗拭う★★★

7月29日

●古田敬二
梅を干す四日目塩の光り出ず★★★★
梅干しは土用干しをすると、ふっくらとして甘みがでると聞く。干して四日目にもなると塩の粒が光るようになる。土用の太陽のもとの塩の光がいかにも真夏らしい。(高橋正子)

赤き口見せて烏の暑に喘ぐ★★★
夕風にひそかな秋の気配せり★★★

●小口泰與
近づくと我へわれへと目高かな★★★★
目高などが、自分に近寄ってくるのは、遊びに寄ってくるようで、楽しいものだ。ひと時そんな楽しみを味わう。それも涼しいことだ。(高橋正子)

あけぼのや花粉にまみる黄亀虫★★★
独りなら朝は珈琲秋近し★★★

●桑本栄太郎
黒雲の驟雨来るらし風立ちぬ★★★
さるすべり揺れ特急電車の通過駅★★★★
真夜に起き窓を閉め居る涼夜かな★★★

●高橋正子
しもつけの花の紅色箱根の野★★★★
街とは違った、高原の風景に旅人の目を楽しませてくれる。箱根の野のしもつけは、淡い紅色だが鮮明だ。(高橋信之)

山嫁菜箱根の山の涼しかり★★★
夏雲の水に映りて姫河骨★★★

7月28日

●祝恵子
八百八橋の一つを渡り夏歩き★★★
空蝉の転がりおりぬビルの街★★★
樹にもたれ絵描く数人夏帽子★★★★
絵を描くのに、必ずしも座って描くとは限らない。木陰を作る木の幹に持たれ、夏帽子を冠り、スケッチをしているグループなのであろう。暑苦しくなく、軽やかな光景だ。(高橋正子)

●小口泰與
雲の峰水面に暮の色さだか★★★
あじさいや川に沿いたる吾妻線★★★★
山小屋や俄かに黒雲あらわれし★★★

●古田敬二
風吹けば光りて現る青胡桃★★★★
葉隠れに生っているまだ青い胡桃は、葉に隠れてめだたないが、風が葉を翻えすと、胡桃のありかがよくわかる。ましてや光っているのだから、存在は確かだ。(高橋正子)

チェロケース黒光りして行く炎天★★★
涼風の芦原まあるく撫でて来る★★★

●河野啓一
レース越し道行く人の見え隠れ★★★
ひとしきりうるさき蝉のしづまりて★★★
鱧つつき川を見下ろす天神祭★★★★

●桑本栄太郎
<高瀬川>
せせらぎの木陰に流れ白木槿★★★
<祇園界隈>
紅壁の花見小路や朝驟雨★★★
驟雨去り日差し明るき京町家★★★★

●高橋秀之
列車降り出歩く街に夏の雨★★★
町おこしラリーの店で梅酒飲む★★★

夏の虹海岸線に大きな弧★★★★
虹は雨上がりの水滴に日光が当たって生まれ、この現象は夏に多く見られる。そのため、虹は夏の季語となっているので、「夏の虹」には、問題がある。

7月27日

●河野啓一
蝉の声猛暑を短き一生に★★★★
蝉が羽化してから一生を終える期間は、ごく短い。猛暑を鳴き通して死ぬのは、力強いが気の毒と思える。そういう一生もある。(高橋正子)

人の世もかくて在りなむ蝉すだく★★★
野牡丹の紫の艶愛しかり★★★

●小口泰與
夏枯れやかりつと噛みし花林糖★★★
ゆうがおや畦に鍬おく老夫婦★★★
犬ずれの吾にからみし西日かな★★★★

●桑本栄太郎
さるすべり白という風誘いけり★★★★
炎暑来る音みな黙す午後の二時★★★
風通る一間に集う午睡かな★★★

●多田有花
雲生まれ初めにし盛夏の山の上★★★
暑き日の風よく通る部屋に座し★★★
アイスショー終わり熱帯夜の中へ★★★★

●高橋秀之
一面の青田を真っ直ぐ列車行く
【添削】一面の青田を真っ直ぐ行く列車★★★★
下五を名詞で止めると句のイメージがはっきりする。一面の青田が広がる平野。その中を列車が、まっすぐ行く。青田の清々しい風景が、旅心を誘う句。(高橋正子)

日の盛り旧型汽動車が唸る音★★★
百選の小さな駅舎に扇風機★★★

7月26日

●小口泰與
嬬恋のきゃべつ畑や風と雲★★★★
風死すや寝に着く前の般若湯★★★
雨後の朝日矢を受けたる茄子かな★★★

●迫田和代
空に香があると思える虹が咲く★★★★
虹を花と見たロマンティックな句だが、「空に香がある」には、感覚の鋭さがある。美しいものには、「香」がまとう。(高橋正子)

緑燃え木陰の多い夏館★★★
青田道山陰に向きまっすぐに★★★

●祝恵子
鴨はもう植田の高さに隠れおり★★★★
植田に鴨を泳がせ、鴨に雑草を食べさせ、鴨の飼育を目的としているケースなのだろう。植田の苗は、みるみる生長し、鴨の姿を隠してしまうほどになった。苗も、鴨も生長盛ん。(高橋正子)

墓地の草抜き散策の足のばす★★★
夏休み竹刀の音と掛け声と★★★

●桑本栄太郎
黒瓦屋根が好みよ百日紅★★★★
飛ぶものと鳴くもの黙し炎暑来る★★★
八方に討死したる昼寝かな★★★

7月25日

●河野啓一
早朝の木漏れ日蝉を連れてくる★★★★
「蝉を連れてくる」に、今日一日の生活の楽しさが想像できる。早朝の木漏れ日に蝉がなきはじめている。(高橋正子)

柿の葉のゆらりと揺れて青柿も★★★
白良浜白波寄せて浜木綿に★★★

●小口泰與
嬬恋のきゃべつ山積み湖隠す★★★★
夏の冷涼な気候を生かして、嬬恋ではキャベツがたくさん生産される。湖を隠ししてしまうほどのキャベツの収穫量。壮観であろう。(高橋正子)

爪立ってカメラ構える祭りかな★★★
夏蝶のつかず離れず高みへと★★★

●桑本栄太郎
 真夏の山陰街道
緑蔭の杜の大樹や朱の鳥居★★★★
街道の古び炎暑の犬矢来★★★
バス道の触れんばかりや百日紅★★★

●川名ますみ
茂りから透り来し陽の編み物に★★★
コットンのニットを抜けて風薫る★★★
レース着て母はわたしを抱きたり★★★★

●小川和子
白粉花暮れゆく空に咲き揃う★★★★
白粉花は夕方から咲く花。暮れゆく空に咲く花は、かすかな良い香りがあり、抒情的。(高橋正子)

暮れてゆく一日咲き継ぐ花白粉★★★
 庄内メロン
メロン食ぶ匙よく通る頃合いに★★★

7月24日

●小口泰與
卓袱台の塵の浮き立つ西日かな★★★
白昼に空酒飲みて暑気払い★★★
近づくや水面にぎわす目高どち★★★★

●多田有花
清流に足を浸して夏の午後★★★★
梅雨明けの部屋全開に風入れる★★★
熊蝉の声に囲まれ目を覚ます★★★

●河野啓一
窓越しに見る百日紅デイの朝★★★★
川沿いに酒酌み交わし天神祭★★★
コンチキチン音彩織れる交響詩★★★

●桑本栄太郎
高槻の青田につづく瓦屋根★★★★
青田に瓦屋根は、日本の原風景といってよい。夏の日に輝く青田を遠巻きにするように瓦屋根の民家ある。青田と瓦の色は、懐かしくここと安らぐ日本の風景だ。(高橋正子)

立つ風の淡き隣の扇子かな★★★
峰雲の嶺から谷へ送電線★★★

●小西 宏
マンションにひまわり育つ子らの水★★★★
赤土に木星のごとスイカ寝る★★★
水黽(あめんぼ)の脚止まりたるとき水輪★★★

●古田敬二
はちきれんばかりの紅トマトもぐ★★★★
木で熟れたトマトは真っ赤。それもはちきれんばかりの紅。強い夏の日差しを糧に赤々と熟れるトマトが見事だ。(高橋正子)

桜木の樹形丸ごと蝉しぐれ★★★
人は皆仲よくすべし椋の花★★★

7月23日

●小口泰與
百日紅雨をともない散りにけり★★★★
百日紅は、真夏の暑さにもめげず咲き続ける強靭な花だが、一つ一つのはなは、フリルのような花弁をもって繊細だ。雨が降りかかるとその小花が雨とともに散るが、真夏の暑のなかで儚さを思わせる。(高橋正子)

凌霄花や水に沈みし無人駅★★★
音のして青梅落ちし流れかな★★★

●桑本栄太郎
外つ人のあまた祇園や日盛りに★★★★
京都を訪れる外国人は多いが、なかでも祇園の情緒に惹かれる外国人が多いだろう。京の日盛りをものともせず、祇園を楽しむ外国人たちの姿は、京の風景になっているようだ。(高橋正子)

祇園花見小路界隈
さるすべり寺苑に多き建仁寺★★★
涼風の木陰となりぬ高瀬川★★★

●古田敬二
モロコシの固き実りをごきともぐ★★★★
ごきごきと太きモロコシもげば風★★★
モロコシをもげば畑に風来たる★★★

●高橋信之
夏休みの子ら球を蹴る公園広場★★★
炎天の白い空見上げては歩く★★★★
黄花揺れてそこに涼しい風が吹く★★★

●高橋正子
午後の日の色に染まりて黄花コスモス★★★★
炎天に咲く黄花が明るい。暑さを忘れさせるほどの明るさが嬉しい。(高橋信之)

真昼間の影をもちたる金糸梅★★★
六月に入りたる朝摘むブルーベリー★★★

7月22日

●小口泰與
百日紅そぼふる雨の牧場かな★★★
木道の一筋続くきすげかな★★★★
ありんこは二肢より歩みそめにけり★★★

●河野啓一
梅雨明けて列島覆う高気圧★★★
朝採りのトマト回転楕円体★★★
中玉の西瓜を一つ選びたり★★★★

●桑本栄太郎
<六甲アイランド埠頭海浜レストラン>
夏潮の海原蒼きカフェレストラン★★★★
夏潮の海原の蒼さは、見るだけで爽快な、広々とした気分になる。カフェレストランでゆっくり喫茶しながら眺める時間は至福の時。(高橋正子)

水脈ひろげ舟が船曳く夏の海★★★
岸壁に竿立ち並ぶ晩夏かな★★★

●小西 宏
雷神の水に遊べるガラス窓★★★
紫や白や槿の散歩道★★★
瀬に裸足入れて多摩川梅雨明ける★★★★

7月21日

●古田敬二
 相生山から市街地を望む
夏雲やわが青春の街の上★★★★
青春といえるのは、大学生ぐらいの年代であろうが、その時を過ごした街は、特になつかしいものである。その街の上に浮かぶ真っ白なはつらつとした雲に、わが青春を重ねて思う。(高橋正子)

ラグビー場夕陽に向かって照明塔★★★
明け易しガン病棟の友思う★★★

●小口泰與
百日紅沛雨に打たる野良犬よ★★★
つぶらなる茎立つ皿のさくらんぼ★★★★
喰われたるばらの蕾や鴉二羽★★★

●河野啓一
黒光りして児の掌にかぶと虫★★★★
子ども、特に男の子は、虫の中ではかぶと虫がとりわけ好きだ。黒光りする胴体、たくましい角、
決して敏速には動かない堂々とした様子。そのかぶと虫を掌に乗せて、王者の気分だ。(高橋正子)

浜木綿の咲いてま白の糸紡ぎ★★★
釣果提げ息の来たるや梅雨晴間★★★

●佃 康水
噴水に濡れて雀の小躍りす★★★
語り部と旅人仰ぐ夾竹桃★★★
緑濃き稲に白鷺見え隠れ★★★★

●多田有花
森歩く時おり涼風吹く中を★★★★
日に焼けた少年の肌夏休み★★★
滝行に向う白装束の群れ★★★

●桑本栄太郎
唐黍の採り頃つたえ赤き髪★★★
凌霄花(のうぜん)の夕日にこぼれ風にゆれ★★★★
推敲の窓の茜の西日かな★★★

今日の秀句/7月11日-20日

[7月20日/2句]
★一面の青田のなかをモノレール/河野啓一
真緑の青田を上をモノレールが走っている。田んぼの上を走るモノレールも今では、すっかり田園に調和しているようだ。(高橋正子)

★帯姿涼しき人や能楽堂/黒谷光子
能楽鑑賞に集う人々には、和服姿の人も多い。夏帯をきりっと締めた姿は、目には涼しさを呼ぶ。
(高橋正子)

[7月19日/2句]
★青田中つらぬく道あり海近く/迫田和代
道が一本つらぬいている青田が心象風景のように 思える。海が近いことで青田の緑がさらに鮮やかに明るくなっている。(高橋正子)

 広島・平和公園
★緑陰の窪に砂浴ぶ雀どち/佃 康水
緑陰のちょっとした窪を見つけて砂浴びをする雀たちが、かわいらしく、涼しそうな風景だ。(高橋正子)

[7月18日]
★縁台に大の字に寝て二重虹/小口泰與
縁台に大の字に寝れば、空には二重虹がかかって、これほど心地爽快なことはない。(高橋正子)

[7月17日/2句]
★畑よりスイカ抱く人現れる/祝恵子
スイカを抱いて畑から出てきた人がいることへの驚き。懐かしい光景だったかもしれない。熟れ具合を確かめ、大事に抱いて出てきた。団欒に冷やして食べらるのだろう。(高橋正子)

★草取の朝の匂いに興じけり/小西 宏
日中の暑さを避けての朝の草取。どんどん捗り、青臭い草の匂いがそのたび立ち上る。その匂いに「興じけり」は、都会人。(高橋正子)

[7月16日]
★新生姜水洗いされ笊のなか/河野啓一
新生姜が出回る季節になった。笊には洗ったばかりの新生姜がいきいきとある。甘酢漬けにして保存しでき、さわやかな味が楽しめる。(高橋正子)

[7月15日]
★そびえ立つ青嶺青嶺の熱海かな/桑本栄太郎
熱海というと海に目が向くが、青嶺も続くのである。その新鮮さも旅の目を楽しませてくれる。(高橋正子)

[7月14日]
★梅雨明けの蜻蛉(とんぼう)高く翅の青/小西 宏
梅雨明けを喜ぶものは、人だけではないのだろう。蜻蛉が梅雨明けの空を高く、ゆうゆうと喜び飛んでいる。よく見れば、翅は空の青が透けて青いのだ。梅雨明けの嬉しさ読める句だ。(高橋正子)

[7月15日]
★そびえ立つ青嶺青嶺の熱海かな/桑本栄太郎
熱海というと海に目が向くが、青嶺も続くのである。その新鮮さも旅の目を楽しませてくれる。(高橋正子)

[7月14日]
★梅雨明けの蜻蛉(とんぼう)高く翅の青/小西 宏
梅雨明けを喜ぶものは、人だけではないのだろう。蜻蛉が梅雨明けの空を高く、ゆうゆうと喜び飛んでいる。よく見れば、翅は空の青が透けて青いのだ。梅雨明けの嬉しさ読める句だ。(高橋正子)

[7月13日]
★潮風の涼し花の丘通れば/祝恵子
花が咲き乱れる丘を通れば、涼しい潮風が吹いてくる。潮風の明るい健康的な涼しさがいい。(高橋正子)

[7月12日]
★早朝の池に蓮見の来訪者/高橋秀之
早朝、作者はジョギングか散歩で蓮池を訪ねたのだろう。そのとき、蓮見の来訪者が意外と大勢いるのに驚いた。蓮は早朝に開花するので、この開花の時間を狙っての蓮見客。(高橋正子)

[7月11日]
★風の来て南蛮黍の葉擦れ音/古田敬二
とうもろこしを南蛮黍とも言う。南蛮黍は実が熟れてくるに従って、乾いた葉音がする。風が吹くとざわざわと初秋の気配を感じさせる。(高橋正子)

7月11日-20日

7月20日

●河野啓一
一面の青田のなかをモノレール★★★★
真緑の青田を上をモノレールが走っている。田んぼの上を走るモノレールも今では、すっかり田園に調和しているようだ。(高橋正子)

庭隅に待ち望みたる浜木綿が★★★
朝顔の露に濡れたる一番花★★★

●小口泰與
凌霄花や山の国原もやの中★★★
青桐や浅間仰ぎて深呼吸★★★★
あけぼのや終の栖の薔薇の園★★★

●桑本栄太郎
 浅草・ジャズライブハウス
五十周年記念ジャズ聴く日の盛り★★★★
ジャズに酔いしれた青春の日が懐かしく蘇ってくる。「日の盛り」に哀愁さえ感じられる。(高橋正子)

手をたたき足ふみ鳴らすジャズの汗★★★
真夏日やラッパ吠えおりジャズの昼★★★

●黒谷光子
帯姿涼しき人や能楽堂★★★★
能楽鑑賞に集う人々には、和服姿の人も多い。夏帯をきりっと締めた姿は、目には涼しさを呼ぶ。
(高橋正子)

万緑の中登り来て庵二棟★★★
冷房車能の余韻に浸りつつ★★★

7月19日

●迫田和代
ホームにはホームの心虹の橋★★★
日の入りの空水美し花菖蒲★★★
青田中つらぬく道あり海近く★★★★
道が一本つらぬいている青田が心象風景のように 思える。海が近いことで青田の緑がさらに鮮やかに明るくなっている。(高橋正子)

●小口泰與
竹そよぎ角ぐむばらの朝かな★★★★
羅や常なき雲の浅間山★★★
蛇まれに蛙常なる草いきれ★★★

●桑本栄太郎
 浅草到着
浅草へ着くや溽暑の街中へ★★★
日盛りの鳶装束のいなせかな★★★
頂きの夏雲まとうスカイツリー★★★★

●小西 宏
我が胸も高まる孫の夏休み★★★
梅雨明けを待ち素潜りのフィン擦る★★★
雷去りし丘に花火の遠光り★★★★

●佃 康水  
 広島・平和公園
緑陰の窪に砂浴ぶ雀どち★★★★
緑陰のちょっとした窪を見つけて砂浴びをする雀たちが、かわいらしく、涼しそうな風景だ。(高橋正子)

噴水の飛沫に雀羽ばたけり★★★
よろけつつ大き荷を曳く蟻強し★★★

7月18日

●小口泰與
縁台に大の字に寝て二重虹★★★★
縁台に大の字に寝れば、空には二重虹がかかって、これほど心地爽快なことはない。(高橋正子)

綿菅や浅間の雲の常なけれ★★★
眼間につと這い出づる蝮かな★★★

●桑本栄太郎
 東京駅着旧句友と再会
夏旅の友と待ち合う”銀の鈴”★★★
ジョッキ持てビールで乾杯夏の昼★★★★
相聞句お披露目したり夏の昼★★★

●多田有花
甘夏の果汁四方に飛ばし食ぶ★★★★
甘夏は、汗ばむ季節が美味しい。果汁がたっぷりあればなおのこと。四方に果汁が飛び散って、それが甘夏らしいところ。(高橋正子)

電柱の付け替え工事梅雨晴間★★★
短夜に動画次々再生す★★★

●小西 宏
涼風(すずかぜ)に小鳥の寝言朝まだき★★★
樹下の道蝉の音重くなりゆける★★★★
白黒の猫うつくしき端居かな★★★

7月17日

●祝恵子
畑よりスイカ抱く人現れる★★★★
スイカを抱いて畑から出てきた人がいることへの驚き。懐かしい光景だったかもしれない。熟れ具合を確かめ、大事に抱いて出てきた。団欒に冷やして食べらるのだろう。(高橋正子)

桔梗開く空気吐き出す広げだす★★★
湿り畑には長靴干されあり★★★

●古田敬二
籠に盛るトマトの紅茄子の紺★★★
鈴鹿から涼しき風の届きけり★★★
ここからはひんやり涼しい森に入る★★★★

●小口泰與
素麺の逃れし樽のひえびえと★★★
つつましく雨に打たれし茄子かな★★★
白めだか水面にすいと集い来し★★★★

●桑本栄太郎
 新幹線車窓より
万緑やトトロの出そうな森の闇★★★
白鷺の一群れ青き水田に★★★
稜線に鉄塔並び雲の峰★★★★

●小西 宏
草取の朝の匂いに興じけり★★★★
日中の暑さを避けての朝の草取。どんどん捗り、青臭い草の匂いがそのたび立ち上る。その匂いに「興じけり」は、都会人。(高橋正子)

風渉り蝉の静かに鳴く朝よ★★★
瀬戸内の寿司振る舞われ句を申す★★★

7月16日

●高橋秀之
夜明けから青き色する夏の空★★★★
夏の空は、夜明けからしっかりと青い色となっている。日中の強烈な青空へと準備万端整っているかのようだ。(高橋正子)

耳元へ目覚まし代わり蚊の羽音★★★
淡路から大空へ伸びる夏の虹★★★

●小口泰與
はたた神あらぬ隅へと犬の居し★★★
木道の続く限りの綿菅ぞ★★★★
竹筒を逃れし冷やし素麺よ★★★

●河野啓一
新生姜水洗いされ笊のなか★★★★
新生姜が出回る季節になった。笊には洗ったばかりの新生姜がいきいきとある。甘酢漬けにして保存しでき、さわやかな味が楽しめる。(高橋正子)

緑陰に朝餉や雀チュンチュンと★★★
星月夜木々はさらさら風にゆれ★★★

●多田有花
いま山を離れるところ梅雨の月★★★★
一夜にて梅雨の茸の育ちけり★★★
白蓮の開き初めにし今朝の池★★★

●桑本栄太郎
 近江平野野洲
乾上りて石の流れや夏の川★★★
 浜名湖
浮き舟の舫い繋がれ夏の湖★★★
 富士吉田市
夏空へ煙突あまたや富士吉田★★★★

●佃 康水
万灯を海に拡げて管弦祭★★★
太鼓打ち始まる茅の輪くぐりかな★★★
梧桐の大き葉の上花溢る★★★★

●小西 宏
一歩ずつ酷暑の坂に影を踏む★★★
カナブンの網戸に憩う甲の色★★★
己が顔叩いて暫し蚊の静寂★★★★

●古田敬二
涼風や白詰草のゆれるほど★★★
高台に来れば涼風音たてて★★★
見つめれば白詰草に紅仄か★★★★

7月15日

●小口泰與
座敷たちまち来たる休肝日★★★
近寄ると水面にすいと目高かな★★★★
夕闇や簾を伝う雨滂沱★★★

●桑本栄太郎
<上京の新幹線車窓より>
夏草の真中にありぬ岐阜羽島★★★
夏川の鉄橋つづけり大井川★★★

そびえ立つ青嶺青嶺の熱海かな★★★★
熱海というと海に目が向くが、青嶺も続くのである。その新鮮さも旅の目を楽しませてくれる。(高橋正子)

7月14日

●小口泰與
萱草の花や野川のごうごうと★★★★
静けさに梅の実落つる音したり★★★
はたた神雨脚太くなりにけり★★★

●桑本栄太郎
 車窓の近江平野
青田晴れはるか遠くに近江富士★★★★
空が晴れて、青田は緑が遠くまで輝き、その果てに近江富士が見える。こうした景色が楽しめるのも日本の旅のよさ。こういう景色を失いたくないものだ。(高橋正子)

無尽とも近江平野の青田波★★★
 新幹線・京都駅待合室
坊んさんのスマフォしている夏の駅★★★

●小西 宏
梅雨明けの蜻蛉(とんぼう)高く翅の青★★★★
梅雨明けを喜ぶものは、人だけではないのだろう。蜻蛉が梅雨明けの空を高く、ゆうゆうと喜び飛んでいる。よく見れば、翅は空の青が透けて青いのだ。梅雨明けの嬉しさ読める句だ。(高橋正子)

日の影の濃きバス停の立葵★★★
七月のカナカナひとつ空に透く★★★

●河野啓一
浜木綿のつぼみの白く顔を出し★★★
台風の去りてみどりの朝の風★★★★
草いきれ狭庭の隅はジャングルに★★★

●小川和子
芝掠め古墳の里の夏つばめ★★★
初蝉の途切れがちなる声流る★★★
蓮池に溢れて蓮の花優美★★★★

●古田敬二
元気かねと亡父来るごと咲く浜木綿★★★
茄子は紺トマトは紅に緑ピーマン★★★
カサブランカ花弁を夕日に透かせたつ★★★★

7月13日

●祝恵子
潮風の涼し花の丘通れば★★★★
花が咲き乱れる丘を通れば、涼しい潮風が吹いてくる。潮風の明るい健康的な涼しさがいい。(高橋正子)

水路の水深くなり植田潤う★★★
立葵井戸端会議の続きおり★★★

●小西 宏
森騒ぐ青葉嵐に魁けて★★★
梅雨の夜やトトロのそばに子の眠る★★★★
被災地画像
向日葵の出水の泥に残り咲く★★★

●小口泰與
わたすげや木道空へ続きおり★★★★
わたすげや木道空へ続きおり★★★★
今年は、わたすげが特に美しいとラジオで聞いたばかりなので、まさにこの句の景と思った。見渡す限りのわたすげに、木道は遥かは空へ続いている。 優しく、美しい。(高橋正子)

雪渓の一の倉沢禽一羽★★★
あぜ道に雨しずく満つ夏ひばり★★★

●多田有花
本を読むうちに昼寝に誘われる★★★
古民家の奥でいただく夏料理★★★★
山行の予定練りつつ葛饅頭★★★

●川名ますみ
葉生姜の淡き色より囓りけり★★★★
酢どりにした葉生姜は、一口噛めばすがすがしい香りと味わいが口に広がる。赤みの濃いところから次第に淡い色になっているが、淡い色のところからそっと囓ってみる。それがさわやかさを呼ぶ。(高橋正子)

硝子器にじゅんさいを掻く箸の先★★★
蓴菜を掻けばひかりぬ箸の先★★★

7月12日

●小口泰與
雨後の空紺を刷きたる夏の湖★★★
虎尾草や夕づく空へ牛の声★★★
次つぎに鮎のあがるや浅間晴★★★★

●高橋秀之
早朝の池に蓮見の来訪者★★★★
早朝、作者はジョギングか散歩で蓮池を訪ねたのだろう。そのとき、蓮見の来訪者が意外と大勢いるのに驚いた。蓮は早朝に開花するので、この開花の時間を狙っての蓮見客。(高橋正子)

正午には夜明けの曇りが夏空に★★★
梅雨晴れの満月ひときわ明るくて★★★

7月11日

●古田敬二
風の来て南蛮黍の葉擦れ音★★★★
とうもろこしを南蛮黍とも言う。南蛮黍は実が熟れてくるに従って、乾いた葉音がする。風が吹くとざわざわと初秋の気配を感じさせる。(高橋正子)

森行けば木漏れ日嬉し梅雨晴間★★★
新緑の木漏れ日道に○○と★★★

●小口泰與
夏山へ白雲湧くや雨後の朝★★★
夏ひばり三山もやに沈みける★★★
ねじ花の乱立せりや雀どち★★★★

●桑本栄太郎
ふるさとの海の香りや烏賊届く★★★★
潮の香に塩を振りつつ烏賊洗う★★★
歩こうかバスに乗ろうか梅雨晴間★★★

●多田有花
梅雨の嵐ほんの少しで過ぎにけり★★★
台風の去りて梅雨の夜の静か★★★
陽の香り残りしトマトを丸かぶり★★★★