※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02
[9月20日]
★秋袷化粧落ちした女あり/迫田和代
秋涼の季節に相応しい織や柄の秋袷も着こなしにより雰囲気はいろいろ。隙なく装うより、少し化粧落ちしたところに、秋のさびしさもあって、個性を感じさせる。(高橋正子)
★佛にと届く大束紫苑かな/黒谷光子
紫苑は丈高く伸びて、ひと茎に咲薄紫の花もたくさんだ。その花を抱えるほどの大束にして、佛にとくれた。紫苑の優しい色があふれる。(高橋正子)
[9月19日]
★マンション群抜けて秋野を送迎車/河野啓一
送迎車は、自宅から多少離れたところへ送り迎えをしてくれ、途中の景色も楽しみなもの。マンション群が途切れたところに急に秋の風情ある野原が現れる。都市近郊の開発中のところなどで見られる景色だが、芒や千々の草を眼にすれば、嬉しいものだ。(高橋正子)
[9月18日]
★校庭に子らの飼う馬秋の風/内山富佐子
校庭で馬を飼うのは、人と馬の生活が親密な北国らしいことであると思うが、「天高く馬肥ゆる秋」の季節を迎えた。子供たちが嬉しそうに馬に餌を与えている様子を思う。(高橋正子)
★カンナ咲く角を曲がれば海に出る/多田有花
生活に海がある瀬戸内海。海の色とカンナの強い色が対比され、明快な瀬戸内らしい風景だ。(高橋正子)
[9月17日]
★名月や北へ来て居る旅の夜半/小川和子
名月の北の夜は、季節も一層進んで、月の光も冴えわたっていることだろう。北の夜半の旅愁の名月。(高橋正子)
★太鼓台金糸銀糸を秋の陽に/多田有花
新居浜の太鼓台は、勇壮できらびやかなことで名高い。太鼓台を飾る金糸、銀糸に秋陽があたるとまばゆい。太鼓台をまぶしくさせる「秋の陽」が、祭りに趣を添える。(高橋正子)
★銀漢や海峡の町の路地深く/福田ひろし
海峡のある町の路地の突き当たりは海であることも多いが、その路地の奥深くに天の川の無数の星が見える。海峡の生活の路地にぴったりと嵌った天の川だ。(高橋正子)
[9月16日]
★上流のはるか鞍馬や秋の雲/桑本栄太郎
京都の北、はるか鞍馬山の方を眺めると秋の雲が浮かんでいる。鞍馬寺、鞍馬山などで知られる鞍馬だが、はるか遠い歴史を思いださせるような秋の雲だ。(高橋正子)
[9月15日]
★子らの乗る土管の汽車や秋の風/内山富佐子
秋の風が心地よく吹くようになると、子供たちはいろんなものを見つけて遊ぶようになる。土管を汽車に見立て、土管にまたがって遊んでいる。かわいらしい風景だ。(高橋正子)
★父母を連れ海峡渡る秋高し/福田ひろし
空は高く晴れ渡り、海峡を流れる潮は明るく輝き、父母を連れての旅がよい旅で、親孝行をされた。海峡の素晴らしい景色を読み手も眺めているようだ。(高橋正子)
[9月14日]
★群れ咲きて水引草の赤の濃し/黒谷光子
水引草は、一すじの茎を伸ばし、それに米粒ほどの小さい花を茎に沿ってつける。まばらに茎が伸びていると、花の存在も空気にまぎれてしまうほど。しかし、群れ咲くとその紅色が鮮やかで、水引草の印象も強まる。(高橋正子)
[9月13日]
★数珠玉の川風に添い水に沿う/桑本栄太郎
川沿いの数珠玉を吹く風に馴染み、そこを過ぎれば、川の水の流れに沿って歩く。風に沿い、水に沿う逍遥は、数珠玉があってどこかさびしくなる。(高橋正子)
[9月12日]
★草の実や羽音きびしき群雀/小口泰與
草の実を食べる雀たちは、人が近づいたり物音がすると、一斉に飛び立つ。この時の、音が厳しく空気を切る。草の実を糧に日々命をつなぐ雀たちの厳しさを見た。(高橋正子)
★群れ飛んで夕日眩しき塩蜻蛉/小西 宏
この句では赤とんぼではなく、塩から蜻蛉が詠まれて、少し珍しい光景だ。夕日を翅に反射させる蜻蛉が眩しいのだが、夕日を取り立てて「夕日眩しき」としたのがよい。蜻蛉と夕日が一体化した。(高橋正子)
[9月11日]
★間引菜やあかあかと朝日出づ/小口泰與
朝の露を踏んで菜を間引くと、朝日があかあかと昇る。素晴らしい秋晴れの朝だ。間引菜の稚いみずみずしさと朝日は生まれ出た喜び。(高橋正子)
9月20日
●小口泰與
菩提寺の堂の柱へ鬼やんま★★★
朝顔の葉末そよぐや黙の中★★★
洋館にはだかる蔦の初紅葉★★★★
●迫田和代
朝の部屋まっすぐ飛び込む秋の風★★★
秋袷化粧落ちした女あり★★★★
秋涼の季節に相応しい織や柄の秋袷も着こなしにより雰囲気はいろいろ。隙なく装うより、少し化粧落ちしたところに、秋のさびしさもあって、個性を感じさせる。(高橋正子)
丸い月ガラクタ照らしつ去って行く★★★
●黒谷光子
松茸の先ずは香りを頂けり★★★
到来の松茸酢橘も添えられて★★★
佛にと届く大束紫苑かな★★★★
紫苑は丈高く伸びて、ひと茎に咲薄紫の花もたくさんだ。その花を抱えるほどの大束にして、佛にとくれた。紫苑の優しい色があふれる。(高橋正子)
●小西 宏
秋の花満ちたる原は子らの畑★★★★
犬枇杷ちょう秋の実犬と分け食べる★★★
ひょろひょろと風に揺れてる秋のバラ★★★
●多田有花
秋曇り英作文の練習中★★★★
真夜中にひいやりとして毛布出す★★★
萩咲くや朝の散歩の彩りに★★★
●桑本栄太郎
おはぐろの椎の実ほぐれ丘の上★★★
一山となりし残土や草の花★★★
母の名は智恵子と云いし秋彼岸★★★★
9月19日
●小口泰與
塊りて影のみだれぬ稲雀★★★★
明け五つ日は激しくもきりぎりす★★★
半月や博徒忠治の墓の石★★★
●河野啓一
カラコロと外湯めぐりや秋深し★★★
裏通り行けば湯けむり湯の香して★★★
マンション群抜けて秋野を送迎車★★★★
送迎車は、自宅から多少離れたところへ送り迎えをしてくれ、途中の景色も楽しみなもの。マンション群が途切れたところに急に秋の風情ある野原が現れる。都市近郊の開発中のところなどで見られる景色だが、芒や千々の草を眼にすれば、嬉しいものだ。(高橋正子)
●小川和子
津軽平野
陽に映える稲田貫く車窓かな★★★
四方より雲湧き上がる稲の秋★★★★
林檎樹に紅きりんごの撓わなる★★★
●小西 宏
子規の忌や心にカメラ持ち歩く★★★
波広きススキが原を雲のゆく★★★★
桃の香や遅れて来たるかぶと虫★★★
9月18日
●小川和子
岩風呂の湯の湧く音や秋灯★★★
山荘の夜は花野に更けにけり★★★
朝霧の晴れて岩木の山蒼し★★★★
●内山富佐子
秋風と競い下校の男の子★★★
校庭に子らの飼う馬秋の風★★★★
校庭で馬を飼うのは、人と馬の生活が親密な北国らしいことであると思うが、「天高く馬肥ゆる秋」の季節を迎えた。子供たちが嬉しそうに馬に餌を与えている様子を思う。(高橋正子)
噴水に小さき虹や秋日和★★★
●小口泰與
あけぼのの稲田滂沱の雫かな★★★★
榛名湖の忽と消えけり霧巻きぬ★★★
稲妻やはげしき妙義山(みょうぎ)闇の中★★★
●多田有花
カンナ咲く角を曲がれば海に出る★★★★
生活に海がある瀬戸内海。海の色とカンナの強い色が対比され、明快な瀬戸内らしい風景だ。(高橋正子)
瀬戸渡る秋夕焼けの消えゆく中★★★
頂に残る燕の飛び交いぬ★★★
●黒谷光子
破れ蓮の池に一輪遅れ咲く★★★
白萩の一株紅萩続く路★★★★
秋風に乗り籾殻を燃す煙★★★
9月17日
●小口泰與
懸命に鮎下りけり静寂のみ★★★★
湖の端を襲う木立や鬼やんま★★★
皺の手を見くらぶ顔や残る蝿★★★
●河野啓一
どんぐりを求め並木を散策す★★★★
つくつくし季節を惜しみ枝の先★★★
ゆうパック供物届くや秋彼岸★★★
●小川和子
水差しの秋水旨し岩木山(やま)の宿★★★
岩木山からの秋水喉にしみ透る★★★
名月や北へ来て居る旅の夜半★★★★
名月の北の夜は、季節も一層進んで、月の光も冴えわたっていることだろう。北の夜半の旅愁の名月。(高橋正子)
●桑本栄太郎
大橋を過ぎて祇園へ秋の色★★★
童子かと想う田中の案山子かな★★★
秋蝉のいつしか鳴かず日暮れけり★★★★
●多田有花
<西条市にて>
澄む水の湧き出すところ西条は★★★
<新居浜市にて二句>
澄む秋の沖に連なるしまなみの島★★★
太鼓台金糸銀糸を秋の陽に★★★★
新居浜の太鼓台は、勇壮できらびやかなことで名高い。太鼓台を飾る金糸、銀糸に秋陽があたるとまばゆい。太鼓台をまぶしくさせる「秋の陽」が、祭りに趣を添える。(高橋正子)
●小西 宏
杣道に紫やわき木通(あけび)の実★★★★
そよ風に桜もみじの一葉かな★★★
虫の音にビルの灯遠く瞬ける★★★
●福田ひろし
旅の朝水澄みわたる武家の町★★★
秋の水わが身冷たく癒しけり★★★
銀漢や海峡の町の路地深く★★★★
海峡のある町の路地の突き当たりは海であることも多いが、その路地の奥深くに天の川の無数の星が見える。海峡の生活の路地にぴったりと嵌った天の川だ。(高橋正子)
9月16日
●古田敬二
一歩ごと屈んで木の実拾いけり★★★★
先ず一輪朝陽を受けて彼岸花★★★
コスモスの蕾も花も揺れ優し★★★
●小口泰與
野路暮れて草の陰へと稲雀★★★
あけぼのの畦のおちこちきりぎりす★★★★
里山の雀被ける案山子かな★★★
●黒谷光子
なだらかな反り橋渡る蓮は実に★★★
女郎花切ればほろほろ黄の零れ★★★
澄む水を汲みて仏の花を挿す★★★★
●内山富佐子
影の濃く風の乾きて秋来たる★★★★
青空を掃き清めたる秋の風★★★
青空の模様替えかな秋の風★★★
●桑本栄太郎
<四条大橋~祇園界隈>
上流のはるか鞍馬や秋の雲★★★★
京都の北、はるか鞍馬山の方を眺めると秋の雲が浮かんでいる。鞍馬寺、鞍馬山などで知られる鞍馬だが、はるか遠い歴史を思いださせるような秋の雲だ。(高橋正子)
弁柄の一力茶屋に秋日かな★★★
外つ人の路地をカメラに秋日影★★★
●佃 康水
孫と手を繋ぐ絵届く敬老日★★★
柿たわゝ色の出始め子規忌来る★★★★
白塀に沿い彩れる葉鶏頭★★★
●小西 宏
冠のクヌギどんぐり王の顔★★★★
惜し惜しと森騒ぎあり秋うらら★★★
枝豆を唇に吸い夕の雲★★★
●多田有花
秋の雲流れる高架駅の上★★★★
石鎚に立ち遠望す秋の海★★★
雲の湧く頂に咲き岩桔梗★★★
9月15日
●小口泰與
きらきらと滴はく゜くむ稲田かな★★★★
木道の野末へ伸びし芒かな★★★
浅間山(あさま)へと日の退くや夕化粧★★★
●内山富佐子
九月晴れ夏のなごりの雲残し★★★
今日は北明日はひがしの秋出水★★★
子らの乗る土管の汽車や秋の風★★★★
秋の風が心地よく吹くようになると、子供たちはいろんなものを見つけて遊ぶようになる。土管を汽車に見立て、土管にまたがって遊んでいる。かわいらしい風景だ。(高橋正子)
●黒谷光子
築地塀少し崩れて実むらさき★★★★
石庭の紋様くっきり秋日差し★★★
古刹へは白壁の塀新松子★★★
●桑本栄太郎
天の地を地は天讃え秋気満つ★★★
柿の実のぬつと色づく日差しかな★★★
妻電話の赤子と話す敬老日★★★★
●小西 宏
澄む風に若きススキの硬く立つ★★★★
穂が出たばかりの若いススキが、澄んだ風にしっかりと立っている。「澄む風」「硬く立つ」の表現から、わかわかしい穂ススキの姿が読み取れる。(高橋正子)
その色も木の葉に合わせ秋の蝶★★★
ガラス窓擦(さす)るごとくに虫の声★★★
●福田ひろし
父母を連れ海峡渡る秋高し★★★★
空は高く晴れ渡り、海峡を流れる潮は明るく輝き、父母を連れての旅がよい旅で、親孝行をされた。海峡の素晴らしい景色を読み手も眺めているようだ。(高橋正子)
秋の水柄杓ことりと戻しけり★★★
海峡をまたぎて赤きうろこ雲★★★
9月14日
●小口泰與
榛名富士ねたまし霧の妙義山★★★
おしろいや羽音はげしき群雀★★★★
蔦かずら逃るる如き早き雲★★★
●桑本栄太郎
野分めく風に雄叫ぶ庭の木々★★★
山里は人住まぬかに秋の園★★★
青き網掛けて無花果熟れにけり★★★★
●黒谷光子
飛ぶことをためらっており草の絮★★★
水引草古刹の庭の片隅に★★★
群れ咲きて水引草の赤の濃し★★★★
水引草は、一すじの茎を伸ばし、それに米粒ほどの小さい花を茎に沿ってつける。まばらに茎が伸びていると、花の存在も空気にまぎれてしまうほど。しかし、群れ咲くとその紅色が鮮やかで、水引草の印象も強まる。(高橋正子)
9月13日
●古田敬二
森を行く秋の入日のほうへ行く★★★★
秋入日あれは伊吹の山の形★★★
栗実る夕陽の輝く毬の中★★★
●小口泰與
初紅葉湖は朝日を独り占め★★★
コスモスの風をまとうや川清し★★★★
つんつんと雨を刺したる濃竜胆★★★
●桑本栄太郎
数珠玉の川風に添い水に沿う★★★★
川沿いの数珠玉を吹く風に馴染み、そこを過ぎれば、川の水の流れに沿って歩く。風に沿い、水に沿う逍遥は、数珠玉があってどこかさびしくなる。(高橋正子)
高黍や風吹きすさぶ乙訓に★★★
川べりの木を覆いけり葛の花★★★
9月12日
●小口泰與
草の実や羽音きびしき群雀★★★★
草の実を食べる雀たちは、人が近づいたり物音がすると、一斉に飛び立つ。この時の、音が厳しく空気を切る。草の実を糧に日々命をつなぐ雀たちの厳しさを見た。(高橋正子)
里山の名も無き川や草の花★★★
川岸の桜紅葉のげに散りぬ★★★
●福田ひろし
明月や夜空も蒼きことを知る★★★
群青の夜空にかかる月今宵★★★★
霧の町汽笛のあとは瀬音のみ★★★
●河野啓一
新御堂青葉の陰に銀杏が★★★
笛太鼓聞きつつ歩く秋遍路★★★
鳥渡る野越え丘越え水の辺に★★★★
●桑本栄太郎
轟音の真夜に響けり秋の雷★★★
秋澄むや山河色濃くなりにけり★★★★
蘆原のオ-べーションや池の風★★★
●小西 宏
白雲の木々に眩しき九月晴★★★
柿少し色づき深き葉に重し★★★
群れ飛んで夕日眩しき塩蜻蛉★★★★
この句では赤とんぼではなく、塩から蜻蛉が詠まれて、少し珍しい光景だ。夕日を翅に反射させる蜻蛉が眩しいのだが、夕日を取り立てて「夕日眩しき」としたのがよい。蜻蛉と夕日が一体化した。(高橋正子)
●古田敬二
名月や一句浮かぶまで歩く★★★★
名月や三十八万キロ先にある丸さ★★★
名月やラジオから平家物語★★★
9月11日
●小口泰與
間引菜やあかあかと朝日出づ★★★★
朝の露を踏んで菜を間引くと、朝日があかあかと昇る。素晴らしい秋晴れの朝だ。間引菜の稚いみずみずしさと朝日は生まれ出た喜び。(高橋正子)
水滴に逆光みつる稲田かな★★★
コスモスや紫紺に暮れし赤城山★★★
●桑本栄太郎
朝冷えやコーヒーカップを掌に★★★
新駅の高架通過や稲穂波★★★★
山里はすでに燈灯り秋入日★★★
●高橋信之
秋の野を妻と二人のバスの旅★★★
白芙蓉を咲かせバス終点の村★★★
バス降りてここより歩く秋高し★★★★
バスの窓から見える景色もよいが、バスを降りて、バスの通らない道を歩くものよい。空は頭上に、青く高くあり、歩くには格好の天気だ。(高橋正子)
●高橋正子
咲き垂るる葛の花ある谷の村★★★★
少年の無口に答う葛の花★★★
秋の野に遊びて夜の薬風呂★★★
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02
[9月10日/2句]
★色鳥や心楽しむこと多し/小口泰與
大気が澄み、よい季節になった。いろんな小鳥の鳴き声や羽の色、仕草ひとつひとつがかわいらしく、楽しませてくれる。この気持ちのありように、心楽しいことが他にもいろいろある。(高橋正子)
★赤とんぼ見ていて闇の迫りけり/桑本栄太郎
夕方を飛び交う赤とんぼ。見ているうちにも宵闇がせまる。秋の日暮れはたちまちに夜を迎える。(高橋正子)
[9月9日/2句]
★草の穂の靡く先へとペダル踏む/黒谷光子
草の穂をそよそよと風が吹き、その道をさっそうとペダルを踏んでゆく快いひと時。草の穂と自転車の取り合わせがやさしい。(高橋正子)
★月昇る一直線の丘の道/小西 宏
一直線の丘の道は、月へまっすぐ向かっている道だ。明るくて大きな月が、すっきりと私の前に昇る。(高橋正子)
[9月8日/2句]
★鬼やんま街の景色を軽やかに/内山富佐子
鬼やんまが一匹飛ぶことで、街の景色が明るく軽やかになる。 一匹の鬼やんまを街の景色に描きこんだようなイメージだ。こんな画を飾りたい。(高橋正子)
★芋名月子ら皆元気西東/河野啓一
啓一さんのお子さんたちは、日本の西や東にお住まいで、名月がそのお子さんたち家族を統べるように輝いて、その月を見れば、みんな元気で暮らしていることに安心する。これこそが良い月である。(高橋正子)
[9月7日/4句]
★街路樹の立ち尽くしたり霧の朝/福田ひろし
「立ち尽したり」は、的確な描写。街路樹を立ち尽させることで、霧の動きや深さがありありと読める。(高橋正子)
★鈴虫の声を聞きつつ写経する/迫田和代
写経すれば心が落ち着いてくるということもあるが、この句はそうではなく、静かな心で写経していると、鈴虫の声が一層親しく思われ、そのきれいな声に心洗われるという心境だ。(高橋正子)
★秋祭り園児の出番太鼓打ち/祝恵子
秋祭りには、それぞれに役目があるが、園児たちの出番は太鼓打ち。園児たちは喜び勇んで、太鼓を思い切り打つ。その様子が微笑ましく、みんな揃っての秋祭りが明るい。(高橋正子)
広島土砂災害跡
★山積の瓦礫離れぬ鬼やんま/佃 康水
広島の土砂災害の瓦礫の山は痛ましいかぎりだが、災害を知るよしもない鬼やんまがそこを離れない。自由にすいすい空を飛ばない鬼やんまは、異変を感じているのかもしれない。(高橋正子)
[9月6日/2句]
★零余子採るコロコロ笊を撥ね零れ/古田敬二
零余子の素朴さには、笊が似合う。笊に零余子を採れば、よく実の勢いで笊を撥ね零れる。その勢いがまた嬉しいものだ。(高橋正子)
★降りてきてまた昇りゆく秋の蝶/高橋秀之
蝶が降りてきて、また昇ってゆくことに、蝶の本質、また蝶の幻想的な世界が見える。(高橋正子)
[9月5日/2句]
★秋風を身体一杯橋の上/迫田和代
橋の上に出れば、秋風が身体を包んで吹く。橋の上は四方八方から風がもっとも通うところ。その風が身体を包んでくれる。秋風を心おきなく身体に受ける爽やかさがいい。(高橋正子)
★地は低く千草の花を煌めかす/佃 康水
「煌めかす」の主語は、「地」なので、その主語をはっきりさせるために、つまり、句意をはっきりさせるために、「地の」を「地は」とした。
千草の花のやさしいさ、美しさを詠んでいるが、それに終わらず、「地は低く」に作者の深い思いを感じさせている。(高橋正子)
[9月4日]
★秋の野に薄く煙の上がりけり/多田有花
夏のほてりが抜けた秋の野は、夏には旺盛だった作物や草などが勢いを失ってくる。それらを抜き取り、燃やしたりする。 そいう煙りだろうが、うすうすと上がっている。秋の野の落ち着いたたたずまいだ。(高橋正子)
[9月3日]
★秋色の四万十川に棹さして/河野啓一
清流で知られる四万十川。秋となれば、水はことに澄んで平らかになる。その水の一点に掉さし、四万十川と人との静かな関わりが生まれている。秋色は、辺りの景色をも含めた四万十川を表現している。(高橋正子)
[9月2日/2句]
★ほんのりと色つきだして式部の実/祝恵子
式部の実は、黄緑から白っぽい色となり、その色がほんのりと紫色になる。色づき始めの色が秋らしく新鮮だ。(高橋正子)
★赤とんぼ西向き行ける新学期/小西 宏
赤とんぼが西に飛んでいくことに必然はない。西は夕焼けの空もあるだろうし、西へ飛んでゆく飛行機もあるだろう。「西向き行ける」がこの句に味わいを出した。(高橋正子)
[9月1日]
★秋扇手に馴染みたる軽さかな/福田ひろし
夏の間使い続けた扇子だが、秋暑しの今日も扇子を使う。使い馴染んだ扇子が片手でひらけるほどなのだろう、軽く扱える。「手に馴染みたる軽さ」にこの句の妙味がある。(高橋正子)
9月10日
●小口泰與
色鳥や心楽しむこと多し★★★★
大気が澄み、よい季節になった。いろんな小鳥の鳴き声や羽の色、仕草ひとつひとつがかわいらしく、楽しませてくれる。この気持ちのありように、心楽しいことが他にもいろいろある。(高橋正子)
朝夕の鉄路の遠音初紅葉★★★
忘れ音や水琴窟へ秋の風★★★
●河野啓一
秋水の白く逆巻く吉野川★★★
生駒山狭霧の中に横たわり★★★★
秋の日の暖かき中に立ちつくす★★★
●多田有花
秋草に翅の破れし蝶の来る★★★
山際の雲を離れていざよう月★★★
雨多き今年は不作と梨農家★★★★
●桑本栄太郎
秋日さす嶺のうねりや送電塔★★★
翅ふるえ夕日に光り赤とんぼ★★★
赤とんぼ見ていて闇の迫りけり★★★★
夕方を飛び交う赤とんぼ。見ているうちにも宵闇がせまる。秋の日暮れはたちまちに夜を迎える。
(高橋正子)
●小西 宏
ほとばしる懸樋に交える塩蜻蛉★★★
漆黒の雲浮き立たせ稲光★★★
秋刀魚太り武骨の皿に安酒と★★★★
秋刀魚は、上品な皿に載せられるより、焼きたてを載せるには武骨な皿が似合う。酒も安酒がよい。きどらないところに野趣と寛ぎがあり、熱々の秋刀魚がうまい。(高橋正子)
9月9日
●小口泰與
鈍色の空や湖畔の花カンナ★★★★
抜きんでて天をかけるや葛の蔓★★★
山上湖にわかに色葉なりにけり★★★
●河野啓一
満月は生駒の山を越えて来る★★★★
杖突いて覗き見たるや月の影★★★
生駒山越え来るかな月今宵★★★
●多田有花
仲秋や午後の日差しが部屋に入る★★★
水色の空へ昇りぬ今日の月★★★★
澄む秋の朝日のなかを山へゆく★★★
●黒谷光子
秋茄子の色つややかに篭満たす★★★
一木を虜に天辺葛の花★★★
草の穂の靡く先へとペダル踏む★★★★
草の穂をそよそよと風が吹き、その道をさっそうとペダルを踏んでゆく快いひと時。草の穂と自転車の取り合わせがやさしい。(高橋正子)
●桑本栄太郎
角曲がり目玉と出遇う鬼やんま★★★★
釣り人の湾処をかこみ秋日傘★★★
八朔の松尾大社や泣き相撲★★★
●福田ひろし
秋の宵象の飼育舎固く閉じ★★★
左右から鼓膜くすぐる秋の蝉★★★
どの家も窓開けられし良夜かな★★★★
良夜の明るさに、家々の幸せが見える。どの家にも温かい灯がともり、窓から月の光が差しこんでいる。(高橋正子)
●小西 宏
雨の音聴きつつ秋の中にいる★★★
日の照れば森また忙し法師蝉★★★
月昇る一直線の丘の道★★★★
一直線の丘の道は、月へまっすぐ向かっている道だ。明るくて大きな月が、すっきりと私の前に昇る。(高橋正子)
●古田敬二
句帳買う余白を秋の句で埋めん★★★
目的地決めたか真直ぐオニヤンマ★★★
つくつくし家路へ急ぐ時に鳴く★★★★
9月8日
●小口泰與
電線の稲雀にぞ囃されし★★★
糠雨に雀飛び交う稲穂波★★★★
朝顔や沛雨の中の蔓の丈★★★
●古田敬二
新芋はてんぷらにすべし柔らかし★★★★
野におれば残暑の汗に風涼し★★★
火照る背に涼しき雨の落ち来たる★★★
●内山富佐子
朝空に教会の鐘秋来たる★★★
窓少し閉じて読書の白露かな★★★
鬼やんま街の景色を軽やかに★★★★
鬼やんまが一匹飛ぶことで、街の景色が明るく軽やかになる。 一匹の鬼やんまを街の景色に描きこんだようなイメージだ。こんな画を飾りたい。(高橋正子)
●河野啓一
宵待や雲厚けれど便り待つ★★★
芋名月子ら皆元気西東★★★★
啓一さんのお子さんたちは、日本の西や東にお住まいで、名月がそのお子さんたち家族を統べるように輝いて、その月を見れば、みんな元気で暮らしていることに安心する。これこそが良い月である。(高橋正子)
月影のさやか漣すすき原★★★
●多田有花
秋高しチャペルの鐘が麓より★★★★
「秋高し」は、また「天高し」。澄み渡る空へ麓のチャペルの鐘の音が響いてくる。晴れやかで、清々しい日だ。(高橋正子)
野も山も色変わり初む白露なり★★★
南北に空を泳ぎしいわし雲★★★
●桑本栄太郎
天辺の庭木色づく白露かな★★★
坂道のそこのみいつも萩の風★★★★
高階の灯を凌駕せり今日の月★★★
9月7日
●古田敬二
緩き坂をゆっくり空にはいわしぐも★★★★
風向きが変われば蜩遠くから★★★
蔓引けば重しかぼちゃの転げ出る★★★
●福田ひろし
仕事場に葡萄ひと房輝けり★★★
鰯雲消したき記憶の多きこと★★★
街路樹の立ち尽くしたり霧の朝★★★★(信之添削)
「立ち尽したり」は、的確な描写。街路樹を立ち尽させることで、霧の動きや深さがありありと読める。(高橋正子)
●小口泰與
椋鳥や長き影なす城の松★★★★
秋雨のしるき音たて来たりけり★★★
稲妻の託ちながらも旅の空★★★
●河野啓一
地虫鳴く声を聞きつつ句作かな★★★
そよ風を桔梗と並び頬に受け★★★★
松虫草鉢植えしたるその姿★★★
●迫田和代
鈴虫の声を聞きつつ写経する★★★★
写経すれば心が落ち着いてくるということもあるが、この句はそうではなく、静かな心で写経していると、鈴虫の声が一層親しく思われ、そのきれいな声に心洗われるという心境だ。(高橋正子)
草むらのあちらこちらに秋の色★★★
老眼をかけて書を読む秋の夜★★★
●多田有花
曇天に秋蝉の声幽かなり★★★
秋驟雨そのまま夜になりにけり★★★★
朝の陽に桜紅葉の一葉落ち★★★
●祝恵子
秋祭り園児の出番太鼓打ち★★★★
秋祭りには、それぞれに役目があるが、園児たちの出番は太鼓打ち。園児たちは喜び勇んで、太鼓を思い切り打つ。その様子が微笑ましく、みんな揃っての秋祭りが明るい。(高橋正子)
展示花画板に写す子秋始め★★★
お見舞いは小さなブーケ秋の窓★★★
●桑本栄太郎
土曜日の校門すいと鬼やんま★★★★
葉の色のうすき黄色や銀杏の実★★★
すいれんの葉裏うごめく秋の池★★★
●黒谷光子
きしませて篭にいっぱい秋茄子★★★★
秋の風窓全開に迎え入れ★★★
門前を通る人声月の夜★★★
●高橋秀之
秋雨の後の朝日に光る玉★★★
欄干に佇み居れば秋の風★★★
日曜の御堂を秋風吹き抜ける★★★★
●佃 康水
広島土砂災害跡
切も無く土砂を出す人泥の汗★★★
山崩れ顕わなるまま秋思かな★★★
山積の瓦礫離れぬ鬼やんま★★★★
広島の土砂災害の瓦礫の山は痛ましいかぎりだが、災害を知るよしもない鬼やんまがそこを離れない。自由にすいすい空を飛ばない鬼やんまは、異変を感じているのかもしれない。(高橋正子)
9月6日
●小口泰與
にぎわしく雀集うや威銃★★★
薄もやの稲田の面を野鳥かな★★★
顔中に綿菓子舞うや秋祭★★★★
●多田有花
通勤の車の列や秋の雷★★★
露草や朝の驟雨を宿しつつ★★★
頂の風に薄の立つ朝★★★★
●古田敬二
零余子採るコロコロ笊を撥ね零れ★★★★
零余子の素朴さには、笊が似合う。笊に零余子を採れば、よく実の勢いで笊を撥ね零れる。その勢いがまた嬉しいものだ。(高橋正子)
ころころと笊へ零余子こぼしけり★★★
正確な小節数よつくつくし★★★
●桑本栄太郎
高槻の晩稲田圃や稲の花★★★
乙訓の片方(かたえ)に垂るる稲穂かな★★★
たて笛を吹きつつ戻る新学期★★★★
●高橋秀之
降りてきてまた昇りゆく秋の蝶★★★★
蝶が降りてきて、また昇ってゆくことに、蝶の本質、また蝶の幻想的な世界が見える。(高橋正子)
はばたきもゆっくり空へ秋の蝶★★★
秋の蝶駅の待合に迷い来る★★★
9月5日
●小口泰與
似あわしや舞茸飯に熱きお茶★★★
秋ばらの赤き新芽のにぎわしき★★★
白露や高らかに鳴く野鳥どち★★★★
●河野啓一
杜鵑草野にあるままの背の高さ★★★★
蕎麦の花白く白くと咲き乱る★★★
衛星の映す列島秋の雲★★★
●迫田和代
秋風を身体一杯橋の上★★★★
橋の上に出れば、秋風が身体を包んで吹く。橋の上は四方八方から風がもっとも通うところ。その風が身体を包んでくれる。秋風を心おきなく身体に受ける爽やかさがいい。(高橋正子)
朝陽浴び大きな木陰の秋の風★★★
夕月夜明るく光る道を行く★★★
●桑本栄太郎
<四条大橋~祇園~建仁寺>
見下ろせば鯉の数多や水の秋★★★
べんがらの花見小路の秋意かな★★★
まだ青く高きところや花梨の実★★★★
●福田ひろし
霧の朝星占いは凶とある★★★
久々の月の明かりは霞みたり★★★★
霧の日はうつむきがちに襟立てて★★★
●佃 康水
秋高し被災地へゆく黄の列車★★★
凝らし見るほどに千草の花盛ん★★★
【原句】地の低く千草の花を煌めかす
【添削】地は低く千草の花を煌めかす★★★★
「煌めかす」の主語は、「地」なので、その主語をはっきりさせるために、つまり、句意をはっきりさせるために、「地の」を「地は」とした。
千草の花のやさしいさ、美しさを詠んでいるが、それに終わらず、「地は低く」に作者の深い思いを感じさせている。(高橋正子)
9月4日
●小口泰與
白露や畷にぎわす鳥の声★★★
にぎわしく波立つ湖や雁渡る★★★★
どんぐりの犬小屋に落つ音すなり★★★
●河野啓一
コスモスの花束抱え女子高生★★★★
コスモスと女子高生の取り合わせは、さわやかさ、素直さがあって、好感がもてる句だ。今の女子高生にもこんな姿が見られるのはうれしい。(高橋正子)
吾亦紅ひっそり地下の売店に★★★
秋夕焼け鴉の羽音空高く★★★
●多田有花
木漏れ日の森歩く新涼の朝★★★
コンビニにコーヒーの香り秋の朝★★★
秋の野に薄く煙の上がりけり★★★★
夏のほてりが抜けた秋の野は、夏には旺盛だった作物や草などが勢いを失ってくる。それらを抜き取り、燃やしたりする。 そいう煙りだろうが、うすうすと上がっている。秋の野の落ち着いたたたずまいだ。(高橋正子)
●桑本栄太郎
秋澄むや雲の過ぎゆく峰の影★★★★
峰の間の白きチャペルや秋澄めり★★★
秋蝉の落ちて気高きむくろかな★★★
●黒谷光子
早朝のホームを渡る秋の風★★★
稲の秋田ごとに実りの色違え★★★
車窓より近江平野の稲の秋★★★★
●小西 宏
オムレツの湯気に秋聞く朝の鳩★★★★
苦瓜の紅割れ甘き香の垂るる★★★
唇に枝豆の毛のやわき触れ★★★
9月3日
●小口泰與
上州の稲妻なれや風の中★★★
秋の野や群し野鳥の高き声★★★
チャンプルのほろりと苦し秋旱★★★★
●河野啓一
ひたひたと河口寄せ来て秋の水★★★
秋色の四万十川に棹さして★★★★
清流で知られる四万十川。秋となれば、水はことに澄んで平らかになる。その水の一点に掉さし、四万十川と人との静かな関わりが生まれている。秋色は、辺りの景色をも含めた四万十川を表現している。(高橋正子)
吉野川秋光のなかカヌー隊★★★
●桑本栄太郎
彼岸花汝れも憤怒のあふるるや★★★★
秋風の池にせり出す木蔭かな★★★
どこまでも番いはなれず赤とんぼ★★★
9月2日
●小口泰與
秋ばらの枝の触れ合う音すなり★★★★
隠沼へ小川の瀬音芦の花★★★
草庵のそばをすするや酔芙蓉★★★
●河野啓一
若枝の伸びし勢い秋のバラ★★★★
つかの間の秋の日差しや朝の空★★★
柚子ありて武骨な柚と円い柚★★★
●祝恵子
石段を登りつめれば秋の空★★★
島よりの便りと写真秋の海★★★
ほんのりと色つきだして式部の実★★★★
式部の実は、黄緑から白っぽい色となり、その色がほんのりと紫色になる。色づき始めの色が秋らしく新鮮だ。(高橋正子)
●多田有花
納豆にモロヘイヤ混ぜ夕月夜★★★
蝉の声里に途絶えし九月に入る★★★
芙蓉描く窓辺に二度の通り雨★★★★
芙蓉の咲く季節、通り雨によく出会う。芙蓉を描いていると、一度ならず二度、窓辺を通り雨がすぎっていった。画に描かれた芙蓉にかかる雨のようである。(高橋正子)
●桑本栄太郎
さるすべり看板古び琴三絃★★★
秋すだれ今日の日陰の黒きこと★★★★
虫の音の宿る垣根や夕餉の灯★★★
●高橋秀之
軒下に雀の鳴き声秋の朝★★★
休暇明け朝の列車の賑やかさ★★★
秋の風潮の香りを運び来る★★★★
●小西 宏
赤とんぼ西向き行ける新学期★★★★
赤とんぼが西に飛んでいくことに必然はない。西は夕焼けの空もあるだろうし、西へ飛んでゆく飛行機もあるだろう。「西向き行ける」がこの句に味わいを出した。(高橋正子)
蜩の空かるがると森澄める★★★
蝉残り夜は松虫の鳴く静夜★★★
9月1日
●小口泰與
石段の芙蓉は空をなまめかす★★★
秋の山長き裾野はならびなく★★★★
本流のなまじ色ある秋日かな★★★
●河野啓一
街を出て翁も出合う赤トンボ★★★★
七草の名を数えつつ九月かな★★★
朝顔のつぼみの色や朝の夢★★★
●福田ひろし
秋扇手に馴染みたる軽さかな★★★★
夏の間使い続けた扇子だが、秋暑しの今日も扇子を使う。使い馴染んだ扇子が片手でひらけるほどなのだろう、軽く扱える。「手に馴染みたる軽さ」にこの句の妙味がある。(高橋正子)
窓わずか開けて虫の音寝間に入れ★★★
威筒夕闇貫く寂しさよ★★★
●桑本栄太郎
山よりの風に倒さる稲穂かな★★★
秋蝶の黒きひとひら樹の闇へ★★★
吾が立てば応え波打つ蘆の風★★★★
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02
[8月30日]
★稲干して古き時代を語りけり/河野啓一
刈りとった稲を干して、昔の稲刈りのことなど話たのであろう。今は刈りとりと同時に脱穀までしてしまうほど機械化されて、あっけない感じがする。昔ながらの方が、稲に対する思いが清らかなように思う。(高橋正子)
[8月29日]
★霧の朝子はしんしんと眠りけり/福田ひろし
「霧」は秋の季語。子は、秋となって、「しんしん」と静かに深く眠り、安らかである。特別なことではないが、平和な、いい生活がある。(高橋信之)
[8月28日]
★白波の立ちし榛名湖荻の声/小口泰與
榛名湖に白波を立たせて吹く風は、また荻を吹く風でもある。荻を吹く風はすでに秋のわびしさを感じさせる風なのだ。(高橋正子)
[8月27日]
★霧動き白樺静かに現われり/古田敬二
白樺と霧の実景に詩情がある。それを「静かに現われり」と、合唱の幕が徐にあがるように詠んだのが魅力。(高橋正子)
[8月26日/2句]
★時折は硬き音たて秋雨降る/小川和子
秋雨の降る音を聞いておれば、静かな音のなかに、時折、硬くものを叩いて降る音が聞こえる。一様でない秋雨の降り方に、聞く心も心なし揺らぐ。(高橋正子)
★手のとどく丈に椎の実弾け居り/桑本栄太郎
幼いころ椎の実を食べた思い出のある作者だろう。手を伸ばせば届く位置に椎の実が弾けている。あまりの懐かしさに、また、この秋という感傷的な季節に、一句となった。(高橋正子)
[8月25日]
★野の草をしとどに浸し秋出水/河野啓一
大雨のあとの川をのぞくと、出水が川辺の草を水草のように巻き込み、浸して流れている。災害をもたらすほどの雨でないのが幸いで、勢い流れる出水に「野の草をしとどに浸す」風情を見た。(高橋正子)
[8月24日/2句]
神戸の港湾
★秋澄むや港湾跨ぎ大橋梁/桑本栄太郎
港湾に架かる橋梁は硬質の力と美がある。大気が澄み、海の水も青さを増して、港湾の景色が魅力を増す。(高橋正子)
広島土石流災害
★秋出水乾かぬ泥の匂い立つ/佃 康水
このたびの広島の土石流の災害は、まったく酷い。「泥の匂い立つ」が罹災された人たちの悲しみと、現場の生々しい惨状を伝えている。(高橋正子)
[8月23日]
★子らの絵の行灯並び地蔵盆/黒谷光子
地方によって地蔵盆の送り方はいろいろであろうが、光子さんの地方は、行灯に子どもが絵を絵を描き、それを幾灯も灯しているようだ。微笑ましい行灯の絵に囲まれた本当に子どものための地蔵盆だ。(高橋正子)
[8月22日/2句]
★蝶のせて女郎花揺る万博の森/祝恵子
女郎花に蝶がのって揺れる可憐な姿は、山にある女郎花とは趣の違った、万博の森の女郎花。女郎花は意外にも強い花だが、目にはいかにもしなやかだ。(高橋正子)
★荒れ畑の野鳥の声や野分晴/小口泰與
野分が去ったあとの、すっきりと晴れた空。その晴れた空の下に荒れた畑があるが、野鳥が嵐が去ったことを喜び鳴き交わしている。荒れた畑は野鳥たちの喜ぶ自然の野なのだ。(高橋正子)
[8月21日/2句]
★燕すでに去りにし空の飛行機雲/多田有花
残暑の暑さに空を見るのを忘れていたが、空の燕はいつの間にか去って、さびしくなった空には飛行機雲が線を描いて伸びている。もう秋が来ているのだ。(高橋正子)
★街の灯の清らに見ゆる秋の夜/小西 宏
まだ暑さが残る頃、昼間の空気は澄んでいるとは思えないが、夜になると、街にともる灯は、清らかに澄んで見える。街の灯がきれいな夜は気持ちも爽やかになる。(高橋正子)
8月31日
●小口泰與
逆光の数多のしずく稲穂かな★★★
笹を食む山羊や秋野の蒼き空★★★
田の面を白き腹見せ秋つばめ★★★★
●河野啓一
八月尽秋の雨をば憾みつつ★★★
秋の日を浴びて柿の葉揺れており★★★
秋澄めり島熊山のレストラン★★★★
島熊山(しまくまやま)は、大阪万博の開かれた千里丘陵にある一番高いところと聞く。今は住宅地として開発はされているものの、見晴らしのよいレストランからの眺望に「秋澄めり」をしっかりと感じ取られた。(高橋正子)
●多田有花
不揃いの産地直売梨を食ぶ★★★
朝空の青さを仰ぐ八月尽★★★
桃色の鶏頭囲む角の家★★★★
【添削】桃色の鶏頭の囲む角の家
【添削2】鶏頭の桃色が囲む角の家
●桑本栄太郎
青空の胡桃色づくバス通り★★★
いつせいに雀飛び翔つ稲田かな★★★
さわさわと溝の流れや彼岸花★★★★
彼岸花が溝川の流れに沿って咲いている景色はよく見かけるが、溝川の流れが「さわさわ」としているので、気持ちのよい句になった。さわさわと流れる水と、赤い彼岸花がよく季節を表している。(高橋正子)
●古田敬二
一葉だけ白樺落とす木曽初秋★★★
北へ行く列車に揺れる芒原★★★
秋海棠白磁の花挿し木曽の店★★★★
8月30日
●小口泰與
ひぐらしや鍬打つ婆の長き影★★★★
秋の闇畷の猫と小犬かな★★★
つれなくも忽ち過ぐる秋祭★★★
●河野啓一
稲干して古き時代を語りけり★★★★
刈りとった稲を干して、昔の稲刈りのことなど話たのであろう。今は刈りとりと同時に脱穀までしてしまうほど機械化されて、あっけない感じがする。昔ながらの方が、稲に対する思いが清らかなように思う。(高橋正子)
そよ風の林を抜けて涼新た★★★
木々の葉も朝日に映えて彼岸花★★★
●桑本栄太郎
秋雨の書を読むままに眠りけり★★★
うそ寒やカーテンふくれ小窓閉ず★★★★
日の高きうちに湯浴みや新酒酌む★★★
●黒谷光子
秋草に本丸跡とう碑の一つ★★★
湖を見に公園よぎる萩の風★★★
夕近き湖はにび色秋はじめ★★★★
8月29日
●小口泰與
逆光の稲田黄金の雫満つ★★★★
鬼やんま来しあと何も足湯かな
新走り届くやこの日休刊日★★★
●河野啓一
白雲の生駒発して水澄める★★★
たちまちに秋冷来る朝の風★★★
園児たち揃いて挨拶爽やかに★★★★
●多田有花
薔薇を描く窓辺に秋蝉のかすか★★★★
部屋に差す朝の光の秋めける★★★
蜂一匹窓を出入りす秋の昼★★★
●桑本栄太郎
底紅忌しかと夜半の雨となる★★★
ベランダの鉢に鳴き初むきりぎりす★★★
鳩吹くやうすく色づく庭の木々★★★★
●川名ますみ
底紅の紅いっぱいに見せひらく★★★
まだ空を向いて巻きたる花木槿★★★
入り梨の集荷へ走る午後三時★★★★
●小西 宏
カーテンに吹き上げられて秋の空★★★
蜩に昼なお暗き雨上がり★★★★
雨上がり紅萎めたる花芙蓉★★★
●高橋秀之
水平線の上は大きく高き空★★★★
絹雲の広がる空に鳥の群れ★★★
秋の日が照らす対岸駒ヶ岳★★★
●福田ひろし
霧の朝子はしんしんと眠りけり★★★★
「霧」は秋の季語。子は、秋となって、「しんしん」と静かに深く眠り、安らかである。特別なことではないが、平和な、いい生活がある。(高橋信之)
目の見えぬ老犬に降る銀河かな★★★
缶コーヒーあおりて染みる秋の空★★★
8月28日
●小口泰與
稲の花靄を被りし赤城山★★★
秋暑し何かと言いてよく食ぶる★★★
白波の立ちし榛名湖荻の声★★★★
榛名湖に白波を立たせて吹く風は、また荻を吹く風でもある。荻を吹く風はすでに秋のわびしさを感じさせる風なのだ。(高橋正子)
●古田敬二
木曽音楽祭3句
秋雨に洗われ白樺いよよ白★★★
コンサート果てて薄暮に男郎花★★★★
弦楽の響き溢れて木曽は秋★★★
●桑本栄太郎
錦木の早やも紅差す秋の雨★★★
図書館へ向かうすがらや露しぐれ★★★
妻が寝てまだ書を読みし夜長かな★★★★
妻が寝てもまだ読み続けたい本がある。夜も長いことだし、ひとり本の世界に遊ぶ楽しみ。これこそ読書の楽しみではなかろうか。(高橋正子)
●小西 宏
窓多き家に雨降る秋の空★★★★
霧雨に蝉の音とおく消えゆける★★★
秋の蚊の追われて暗き部屋の隅★★★
●河野啓一
あわあわと散る百日紅雨の中★★★★
雨止んで苑の花畑ひろびろと★★★
軽やかに爪を摘む午後鳳仙花★★★
8月27日
●古田敬二
霧動き白樺静かに現われり★★★★
白樺と霧の実景に詩情がある。それを「静かに現われり」と、合唱の幕が徐にあがるように詠んだのが魅力。(高橋正子)
木曽は秋白き指弾くピチカート★★★
雨粒もひとつの花びら萩咲けり★★★
●小口泰與
秋蝉や老いの一徹鎌を研ぐ★★★★
稲妻や犬と散歩の田んぼ道★★★
稲の花もやの中より一嶺出づ★★★
●河野啓一
秋蝉の声気づかざるまま夜の明ける★★★★
マンション群ポプラ並木を見下ろして★★★
朝露に濡れし無花果そっと捥ぎ★★★
●多田有花
青空に翅きらめかせ赤とんぼ★★★★
青空にきらめく翅は、ガラスのように空の青さを透かせたイメージだが、そこに「赤とんぼ」が配されて、きらめく翅は、青い翅ではなかったと気付かされる意外性。青空を輝き飛ぶ一匹の赤とんぼだ。(高橋正子)
デラウェア食べつつ読めり遭難記★★★
掃除機の音を消したり秋驟雨★★★
●桑本栄太郎
秋雷の雲の彼方は日射しけり★★★
雨雲の街の空のみ秋の雷★★★
葉裏見せ花に雨降る葛嵐★★★★
●川名ますみ
店先の白木槿散り弁当屋★★★★
店先に木槿散らせし弁当屋★★★
笛の音のすこし寂しき盆踊★★★
●小川和子
花筒に供う竜胆青深む★★★★
秋暑し連山望む丘の墓地★★★
毬栗の青し甥らと義兄偲ぶ★★★
8月26日
●古田敬二
木曽へ来てなじみの店の今年そば★★★
新芋を塩つけて食う木曽の旅★★★★
恵那山は夏の名残りの雲が立つ★★★
●小口泰與
雨ながら朝顔けなげ色異(け)なり★★★
灯を透かす和紙の有り様長き夜★★★
新しき器となりて秋高し★★★★
●多田有花
雨音のやめばいつしか虫の闇★★★
情熱の落としどころやカンナ咲く★★★
雨あがり森に茸の色とりどり★★★★
●小川和子
時折は硬き音たて秋雨降る★★★★
秋雨の降る音を聞いておれば、静かな音のなかに、時折、硬くものを叩いて降る音が聞こえる。一様でない秋雨の降り方に、聞く心も心なし揺らぐ。高橋正子)
草むしる狗尾草を惜しみつつ★★★
萩の葉の雨滴にふるる蜆蝶★★★
●桑本栄太郎
手のとどく丈に椎の実弾け居り★★★★
幼いころ椎の実を食べた思い出のある作者だろう。手を伸ばせば届く位置に椎の実が弾けている。あまりの懐かしさに、また、この秋という感傷的な季節に、一句となった。(高橋正子)
耕衣忌の鉢の葱摘み味噌汁へ★★★
新駅の上はバイパス稲穂垂る★★★
8月25日
●小口泰與
秋雲の頓に形のかわりける★★★
秋の野や羨(とも)しむものに空の鳥★★★★
秋晴やこの頃とんと杖要らぬ★★★
●河野啓一
野の草をしとどに浸し秋出水★★★★
大雨のあとの川を除くと、出水が川辺の草を水草のように巻き込み、浸して流れている。災害をもたらすほどの雨でないのが幸いで、勢い流れる出水に「野の草をしとどに浸す」風情を見た。(高橋正子)
秋の鮎粗塩ちらし焼き上げる★★★
白木槿ふと目が合いし片えくぼ★★★
●桑本栄太郎
長雨の朝の路地行き地虫鳴く★★★
鴨川に立ち込み釣りや秋の鮎★★★
新涼や女子運転の阪急線★★★★
●高橋信之
曙の空も地も露けしと思う★★★★
この数日、一時の猛暑に比べれば、すずしい日だ。とくに、曙であれば、すずしく、「空も地も露けし」感じを抱く。曙であるのがよい。(高橋正子)
遠くのことを近くと思う秋出水★★★
物思う此の頃多く秋暑し★★★
8月24日
●小口泰與
あけぼののコスモスの空深き蒼★★★★
曙光の空の蒼が、コスモスと取り合わせて、深々と詠まれている。(高橋正子)
十州の山にかこまる林檎かな★★★
朝顔や鉄路の遠音聞こえしよ★★★
●桑本栄太郎
神戸の港湾
秋澄むや港湾跨ぎ大橋梁★★★★
港湾に架かる橋梁は硬質の力と美がある。大気が澄み、海の水も青さを増して、港湾の景色が魅力を増す。(高橋正子)
秋潮の河口につどう神戸かな★★★
台船の起重機うごき秋の潮★★★
●多田有花
秋蝉のボリューム少し落ちし朝★★★
フリスビー犬が捕らえし秋初め★★★★
熱々の稲荷寿司食ぶ秋涼し★★★
●佃 康水
広島土石流災害 2句
秋出水乾かぬ泥の匂い立つ★★★★
このたびの広島の土石流の災害は、まったく酷い。「泥の匂い立つ」が罹災された人たちの悲しみと、現場の生々しい惨状を伝えている。(高橋正子)
救援の作業阻むや秋驟雨★★★
ふと日差す寸時に処暑の風通す★★★
●小西 宏
外野走り明るい空よ秋の雲★★★★
みな色に染まり傾げる猫じゃらし★★★
西空に嶺くっきりと秋の暮★★★
●黒谷光子
紅萩も白萩も咲き池めぐる★★★★
甲羅干す亀池の辺の秋芝に★★★
秋雨に心残りの茣蓙たたむ★★★
8月23日
●小口泰與
稲の花雨の帳となりにけり★★★
とどまると帽子にとどむ蜻蛉かな★★★★
水滴の次から次と秋の雨★★★
●黒谷光子
子らの絵の行灯並び地蔵盆★★★★
地方によって地蔵盆の送り方はいろいろであろうが、光子さんの地方は、行灯に子どもが絵を絵を描き、それを幾灯も灯しているようだ。微笑ましい行灯の絵に囲まれた本当に子どものための地蔵盆だ。(高橋正子)
地蔵会の子供に分ける袋菓子★★★
地蔵会の読経にまじる子らの声★★★
●多田有花
つくつくぼうし鳴く下をゆく森の朝★★★★
秋口や窓に午後の陽入り初めし★★★
髪切ってうなじに処暑の風受ける★★★
●河野啓一
秋出水人智を超えし土砂一瞬★★★
秋の虹箕面の滝にかかりおり★★★
百日紅並木となりて苑の道★★★★
●桑本栄太郎
<広島土石流災害追悼>
山肌の明かり哀しや秋出水★★★
<神戸へ>
淀川の鉄橋あまたや秋澄める★★★
芦屋には想い出多く酔芙蓉★★★★
●小西 宏
蜩の風の涼しき森に入る★★★★
森に入れば、そこは蜩が鳴き、涼しい風が吹いている。蜩の風にさざめくような鳴き声が、すこし寂しさを帯びている。(高橋正子)
朝露を駆けて濡れたる犬の腹★★★
雨上がり先触れ太鼓秋祭り★★★
8月22日
●祝恵子
蝶のせて女郎花揺る万博の森★★★★
女郎花に蝶がのって揺れる可憐な姿は、山にある女郎花とは趣の違った、万博の森の女郎花。
女郎花は意外にも強い花だが、目にはいかにもしなやかだ。(高橋正子)
鹿おどし秋水ちろろと流れおり★★★
桔梗咲く茶屋に座れば風ぬける★★★
●小口泰與
荒れ畑の野鳥の声や野分晴★★★★
野分が去ったあとの、すっきりと晴れた空。その晴れた空の下に荒れた畑があるが、野鳥が嵐が去ったことを喜び鳴き交わしている。荒れた畑は野鳥たちの喜ぶ自然の野なのだ。(高橋正子)
D五一の罐のあかあか花カンナ★★★
講堂の真夜の外の面(とのも)の虫の声★★★
●小西 宏
山土を黄の濁流に秋の雨★★★
二の腕をくすぐり笑う猫じゃらし★★★
ガラス窓に遠く揺らめく稲光★★★★
●桑本栄太郎
神戸へ
静かなる淀の大河や秋日さす★★★
さるすべり煉瓦の町の芦屋かな★★★
新涼の清流眼下にモノレール★★★★
●河野啓一
秋の雲コバルトブルーの画布の上★★★★
芋虫と速さを競う杖歩行★★★
法師蝉積もる話に割り込んで★★★
●高橋秀之
静けさの吉野の山に法師蝉★★★
初秋の吉野の道を一人歩く★★★
南朝の都跡地に秋日差す★★★★
8月21日
●小口泰與
葛の花渦巻く瀞にとどこおる★★★
群蜻蛉あぜ道を閉づ如きかな★★★
大沼の景色ととのう蜻蛉かな★★★★
●多田有花
燕すでに去りにし空の飛行機雲★★★★
残暑の暑さに空を見るのを忘れていたが、空の燕はいつの間にか去って、さびしくなった空には飛行機雲が線を描いて伸びている。もう秋が来ているのだ。(高橋正子)
蜘蛛の巣が絡みつきたる残暑かな★★★
秋めきて白蓮ひとつずつ終わる★★★
●桑本栄太郎
濃く淡く高槻平野の稲穂波★★★★
爽涼の木蔭の坂に風立ちぬ★★★
あな惜しと煩悩更なり法師蝉★★★
●小西 宏
街の灯の清らに見ゆる秋の夜★★★★
まだ暑さが残る頃、昼間の空気は澄んでいるとは思えないが、夜になると、街にともる灯は、清らかに澄んで見える。街の灯がきれいな夜は気持ちも爽やかになる。(高橋正子)
がっしりと残暑が風をはねつける★★★
風動かぬ残暑の部屋に蟄居せり★★★
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02