●デイリー句会投句箱/12月21日~31日●

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今日の秀句/12月21日~31日

[12月31日]
山茶花へ朝陽明るし今日が来る/古田敬二
山茶花の花へ朝日が射すと、今日が明るく、溌剌とやって来たと思う。山茶花の花の明るさがよい。(高橋正子)

[12月30日]
注連かざる江戸よりつづく太柱/小口泰與
代々続く家の太柱に注連が飾られ、風格のある注連飾りとなった。新年のめでたさも一層である。(高橋正子)

[12月29日]
寒柝や高き子の声まぎれ居り/祝 恵子
凍てつく寒い夜に打ち鳴らされる寒柝の音は、もの寂しさを感じさせる。その拍子木の音に、子どもの高い声で「火の用心」と元気に叫んでいるのがまぎれている。微笑ましく、ほっと心和むのだ。(高橋正子)

[12月28日]
★松積んで軽トラがゆく年の暮/多田有花
歳晩の風景としてめでたい。軽トラックに乗るほどの松の枝。常盤の緑がいきいきとして弾んでいるようだ。(高橋正子)

[12月27日]
★雪山を間近く仰ぐ頂に/多田有花
山に登り頂に立つと、雪山は、頂よりもさらに高く聳え間近に見える。山に登りさらなる雪山が身近に迫り、すばらしい。(高橋正子)

[12月26日]
★冬山の襞ひと所へ夕日差す/小口泰與
凛とした冬山の襞のひと所を浮かびあがらせ、今日の日を終える夕日が力強い。(高橋正子)

[12月25日]
★菜を刻むその音すらも歳の暮/河野啓一
冬至を過ぎ、ほんのわずかに日は長くなってきているが、暮れ方はやはり歳晩の感じが強まる。夕餉の仕度の菜を刻む音にも「年の暮」が感じ取れる。(高橋正子)

[12月24日]
★今着きしカードも飾るクリスマス/川名ますみ
クリスマスの楽しさは、クリスマスに纏わるいろいろなものを飾る楽しみにもある。クリスマスに合わせて届いたカードも早速飾ると、楽しさがまた加わる。(高橋正子)

[12月23日]
★木枯らしや友の訃報のメール鳴る/古田敬二
木枯らしが吹き、寒さが募る日、携帯電話のメール着信音が鳴る。予期せぬ着信音に何か予感を感じてメールを開けたのでは。着信音は、自然の深くから鳴って来たように思われる。(高橋正子)

★括られし白菜畑の畝真直ぐ/小川和子
白菜がしっかりと玉を巻いた畝がまっすぐに続く。冬の清潔さを思わせる風景だ。(高橋正子)

[12月22日]
★冬至真昼海の輝きの極む/多田有花
一年で一番昼が短い冬至だが、真昼に海を見れば、海は力強く輝いている。太陽はその力を真昼に集中させている。冬至を詠んだ句では珍しい。(高橋正子)

★花八手食器の触れあう厨窓/桑本栄太郎
八手は、厨の窓の下あたりによく植えられている。厨の窓からは、食器の触れ合う音が聞こえる。食器の音から湧くイメージは白い磁器だが、花八つ手の白い花と静かに響きあっている。(高橋正子)

[12月21日]
★乗り換えの国ざかい駅雪深し/福田ひろし
乗り換えで立ち降りた駅は国ざかい。思わぬ雪の深さに、国を境に、こんなにも雪の降りようが違うものかと感慨も深む。(高橋正子)

★コンクリの坂に冬樹の影を踏む/小西 宏
コンクリートの坂道は冬の日にからりとして、木の影がくっきりと映っている。ありありとした木の影を踏み上る坂道がなにか面白い。(高橋正子)

12月21日-31日

12月31日(3名)

●古田敬二
土深く根伸ばす冬草引き抜けり★★★
山茶花へ朝陽明るし今日が来る★★★★
山茶花の花へ朝日が射すと、今日が明るく、溌剌とやって来たと思う。山茶花の花の明るさがよい。(高橋正子)

長靴の底から冷える鍬を振る★★★

●小口泰與
行く年や星を小出しに赤城山★★★★
晦日蕎麦犬の遠吠え聞こえける★★★
校庭に雀群れおり年の暮★★★

●高橋秀之
大晦日は妻に連れられ商店街★★★
年越しのそばを食べつつ裏番組★★★
仏前の供花を新たに大晦日★★★★

12月30日(3名)

●小口泰與
注連かざる江戸よりつづく太柱★★★★
代々続く家の太柱に注連が飾られ、風格のある注連飾りとなった。新年のめでたさも一層である。(高橋正子)

冬休み鴨居隠しをこゆる孫★★★
初暦公民館の正面に★★★

●桑本栄太郎
た耕や白き稲株見え隠れ★★★★
ワイパーのとき折り振るるしぐれバス★★★
玄関戸磨き拭き上げ注連飾る★★★

●小西 宏
晩歳の届かぬ汚れそのままに★★★
年の瀬の空あたたかや親子凧★★★★
若き二人アルミのドアの松飾★★★

12月29日(7名)

●小口泰與
鍋割山(なべわり)も榛名山(はるな)も雪を賜りし★★★★
よみがえる空の蒼さやよべの雪★★★
手袋の指じんじんと暁の道★★★

●福田ひろし
冬麗の光纏いて書を開く★★★★
数え日をあえて数えず一人旅★★★
ヒタヒタと老犬歩む冬の夜★★★

●内山富佐子
年の瀬や仏具を磨く母の背★★★★
雪晴れやシャキッと白き雲一つ★★★
手袋は主の指の形かな★★★

●祝 恵子
寒柝や高き子の声まぎれ居り★★★★
凍てつく寒い夜に打ち鳴らされる寒柝の音は、もの寂しさを感じさせる。その拍子木の音に、子どもの高い声で「火の用心」と元気に叫んでいるのがまぎれている。微笑ましく、ほっと心和むのだ。(高橋正子)

聞けばバイト大きくなりて冬休み★★★
大根の青菜生きいきしだれたる★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋~建仁寺>
鴨川の風に平らやゆりかもめ★★★
冬椿松にかこまれ建仁寺★★★
せせらぎにさくら冬芽や高瀬川★★★★

●小西 宏
冬日透く雑木の丘に遠い船★★★★
冬の芽にきらめき残し雨あがる★★★
とりたてて残すものなし年の暮★★★

●川名ますみ
 祖母葬儀
冬灯ろうそくの火の直立す★★★★
手をふりて笑うて別れ冬の雨★★★
いろ紙を折る子と隣り年の暮★★★

12月28日(5名)

●小口泰與
あかあかと朝日昇るや畑は霜★★★★
冬の月父の齢を越えにけり★★★
酔うことを知らぬや今宵虎落笛★★★

●多田有花
松積んで軽トラがゆく年の暮★★★★
歳晩の風景としてめでたい。軽トラックに乗るほどの松の枝。常盤の緑がいきいきとして弾んでいるようだ。(高橋正子)

降り積もる落葉踏み分け下りけり★★★
上る道下る道あり年惜しむ★★★

●桑本栄太郎
理髪終え寒風に出す頬と耳★★★
木枯や家路の空の青きこと★★★★
何処より吹かれ積もるや落葉松散る★★★

●小西 宏
固く暗く尖る冬芽の空青し★★★★
野良猫の餌待つ崖に青木の実★★★
ジムの窓に歳末の灯を見て息す★★★

●高橋秀之
山茶花が咲く庭を見て立ち止まる★★★
会館に歳末警戒の提灯並ぶ★★★
ネクタイのごとくマフラーを強く締め★★★★

12月27日(4名)

●小口泰與
貝独楽の揺らぎや夕日あかあかと★★★★
屋根を葺く木槌の音や冬木の芽★★★
生きるとは史記をよすがや虎落笛★★★

●桑本栄太郎
借換えの図書館行きも年用意★★★★
数へ日の分担残る掃除かな★★★
年の瀬や段取り考えひと眠り★★★

●多田有花
クリスマス赤き三日月山の端に★★★
数え日の朝日が山を照らしおり★★★

雪山を間近く仰ぐ頂に★★★★
山に登り頂に立つと、雪山は、頂よりもさらに高く聳え間近に見える。山に登りさらなる雪山が身近に迫り、すばらしい。(高橋正子)

●小西 宏
年の瀬の空青々と窓磨く★★★★
青空に部屋開け放つ煤払い★★★
園庭に子供背丈の冬もみじ★★★

12月26日(4名)

●小口泰與
冬山の襞ひと所へ夕日差す★★★★
凛とした冬山の襞のひと所を浮かびあがらせ、今日の日を終える夕日が力強い。(高橋正子)

水仙のほのと夕影ふくみける★★★
夕影の梢にふくら雀かな★★★

●桑本栄太郎
もくれんの曰くありそな冬芽かな★★★
一言のお詫びも添えて賀状書く★★★
煤逃げや図書館人のあふれ居り★★★★

●小西 宏
オーバーのポケットに手をつなぐ岸辺★★★★
木の葉少し残れる欅大通り★★★
犬抱いて寄せ鍋つつく妻の酔い★★★

●高橋正子
牡蠣洗う水のついには凍ててきし★★★★
牡蠣焼けば火の色赤く目に刺さる★★★
洗わられて地御前牡蠣のミルク色★★★

12月25日(7名)

●小口泰與
露天湯へ枯葉舞い込む刹那かな★★★★
山風の行く手や岸辺枯柳★★★
ゆくりなく時雨や畦の猫車★★★

●迫田和代
山に向き末枯れた野菊道端に★★★★
枯草のそれでも芽吹く力見る★★★
橋近く牡蠣舟いずれか去るらしい★★★

●小川和子
  キャンドルサービス
戦禍にある子等へと祈る降誕祭★★★★
はらからと燭火に讃美する聖夜★★★
聖誕の星空想うクリスマス★★★

●多田有花
母と墓参り万両の実の紅し★★★★
真っ赤な夕陽のクリスマスイブ★★★
リフォームのベスト仕上がるクリスマス★★★

●桑本栄太郎
落葉松の散り積もりたるベンチかな★★★
山茱萸の朱き実空へ冬ざるる★★★
一人づつキャンドル胸に降誕祭★★★★

●河野啓一
菜を刻むその音すらも歳の暮★★★★
冬至を過ぎ、ほんのわずかに日は長くなってきているが、暮れ方はやはり歳晩の感じが強まる。夕餉の仕度の菜を刻む音にも「年の暮」が感じ取れる。(高橋正子)

白菜の巨きを割りて塩で漬け★★★
空暗く遠き山の辺雪模様★★★

●小西 宏
園児らの畑駆けゆくクリスマス★★★
枝に明るき蜜柑をカラス咥え去る★★★
冬の陽に赤く丘の家照り昏れる★★★★

12月24日(7名)

●福田ひろし
掘りたての人参や陽を集めおり★★★★
長期予報裏切る今日の寒さかな★★★
寒波来る川面の鳥の高き声★★★

●古田敬二
さんざめく冬のオリオン家路行く★★★★
しっかりと歩く家路へ冬の大三角形★★★
大股に家路を冬の大三角形★★★

●小口泰與
青空や目路に溢れし雪浅間山(あさま)★★★★
利根の水行く末定か室の花★★★
行きずりの山あいの宿枯尾花★★★

●河野啓一
クリスマスイブとて子ら笑顔★★★
枯落葉集めて妻の思案顔★★★
蔓バラのアーチきらきら冬至の朝★★★★

●桑本栄太郎
極月の忙中閑や遊歩道★★★
立枯れのようなまんさく冬の葉に★★★
枯蘆の穂絮なびくや吾を迎え★★★★

●小西 宏
木の葉閉じ池に氷の大広間★★★
泥靴の深さも楽し霜柱★★★★
葉牡丹を植えて公園完成す★★★

●川名ますみ
今着きしカードも飾るクリスマス★★★★
クリスマスの楽しさは、クリスマスに纏わるいろいろなものを飾る楽しみにもある。クリスマスに合わせて届いたカードも早速飾ると、楽しさがまた加わる。(高橋正子)

りんごジャム炊き純白のヨーグルト★★★
窓際に置いた林檎の朝匂う★★★

12月23日(8名)

●古田敬二
木枯らしにあいつもこいつも先に逝き★★★
木枯らしや友の訃報のメール鳴る★★★★
木枯らしが吹き、寒さが募る日、携帯電話のメール着信音が鳴る。予期せぬ着信音に何か予感を感じてメールを開けたのでは。着信音は、自然の深くから鳴って来たように思われる。(高橋正子)

ミシミシと冬の園舎を象歩く★★★

●小口泰與
冬ばらの開かんとして朝日受く★★★★
冬の湖電飾映す波の上★★★
短冊の文字ととのわず師走かな★★★

●小川和子
括られし白菜畑の畝真直ぐ★★★★
白菜がしっかりと玉を巻いた畝がまっすぐに続く。冬の清潔さを思わせる風景だ。(高橋正子)

下校児らに冬至の日差し実にやさし★★★
母の炊く冬至南瓜よ遠き日よ★★★

●下地鉄
行く歳の水脈引く如く過ぎ去りて★★★
ポインセチア神父の愛に染められて★★★
吹かれれば八つ手の花のこぼれ散り★★★★

●佃 康水
今日冬至根菜入れて南瓜汁★★★
風花や子ら帰る日の近付きて★★★★
曲がりゆく列車の煽る枯尾花★★★

●桑本栄太郎
括られてなお凜と起つ冬の菊★★★★
橡の木の冬芽ぬめりの尖りけり★★★
天皇誕生日大御心の天地に★★★

●小西 宏
枯芝に犬と睦みて胡坐かく★★★
二つ三つ昏々と星冬の街★★★
冬至の夜静かに止まる山手線★★★★

●高橋秀之
富士山と青き冬空だけがある★★★★
冬の夜の寒さはどこへ初ライブ★★★
冬林檎居間からシャリシャリ齧る音★★★

12月22日(6名)

●小口泰與
木の葉雨高層ビルヘ朝日かな★★★
一色の銀杏落葉や子等の顔★★★
ひと筋の枯木の影の移りけり★★★★

●河野啓一
旬日を残すのみかな年用意★★★
鳥声も一陽来復快晴に★★★★
水草の掃除や湖の年の暮れ★★★

●多田有花
トンネルを抜ければ雪の積む町に★★★
おだやかによく晴れ今朝の冬至かな★★★

冬至真昼海の輝きの極む★★★★
一年で一番昼が短い冬至だが、真昼に海を見れば、海は力強く輝いている。太陽はその力を真昼に集中させている。冬至を詠んだ句では珍しい。(高橋正子)

●桑本栄太郎
花八手食器の触れあう厨窓★★★★
八手は、厨の窓の下あたりによく植えられている。厨の窓からは、食器の触れ合う音が聞こえる。食器の音から湧くイメージは白い磁器だが、花八つ手の白い花と静かに響きあっている。(高橋正子)

いつまでも冬至の入日見て居りぬ★★★
掻き分けて湯舟に浸かる柚子湯かな★★★

●小西 宏
学び舎の遠き空なる冬木立★★★★

冬ざれの小楢の山や空の澄む★★★
冬薔薇のハート膨らむ蕾かな★★★

●下地鉄
障子貼る夕陽の映える仏間かな★★★
里山の灯し暮れいく年の暮れ★★★
孫育ち背丈の同じ冬至かな★★★★

12月21日(5名)

●小口泰與
暮れ方の山ふところの霜畳★★★★
冬の虹やおら流るる利根支流★★★
霜畳青菜に朝日差しにける★★★

●福田ひろし
乗り換えの国ざかい駅雪深し★★★★
乗り換えで立ち降りた駅は国ざかい。思わぬ雪の深さに、国を境に、こんなにも雪の降りようが違うものかと感慨も深む。(高橋正子)

山茶花や雅さ漂う京の道★★★
鈍色の近江の冬野北へ行く★★★

●河野啓一
冬帝や柿の実ついに全て落ち★★★
実万両今年も鳥の恵みにて★★★★
餌なくて地面ついばむ冬鴉★★★

●桑本栄太郎
部活子の寒風ついてランニング★★★
初雪の三日経つても嶺に筋★★★
雨に起つ辛夷冬芽の光りけり★★★★

●小西 宏
きりきりと雪輝かせ朝の富士★★★

コンクリの坂に冬樹の影を踏む★★★★
コンクリートの坂道は冬の日にからりとして、木の影がくっきりと映っている。ありありとした木の影を踏み上る坂道がなにか面白い。(高橋正子)

鳩集い日向の落葉突いており★★★

今日の秀句/12月14日~20日

[12月20日]
★球を打ちおりなば夜空から粉雪/多田有花
今年は寒波の来襲で、普段の雪の降らない地方にも雪が積もったりしている。夜のテニスコートだろう。球を打っていると粉雪が舞い降りる。急に冷え込んだ夜の思いがけない幻想的なプレゼント。(高橋正子)

[12月19日]
★忌中告ぐ白木の札や雪激し/内山富佐子
雪が激しく降る日に、忌中の札を見ると、冥福を祈りながらも、人の死の悲しみが、悲痛なまで深くなる。
(高橋正子)

★日輪のいろ水鳥の羽根にあり/川名ますみ
水鳥の羽が日輪の色を置いている。朝の水鳥、あるいは夕べの水鳥か。詩的な水鳥の情景。(高橋正子)

[12月18日]
★湯気のたつ銭湯(ゆや)入口の石路の花/下地 鉄
銭湯の湯気と石蕗の花の取り合わせが、いい。石蕗の明るい黄色、湯気のやわらかな白さに気持ちがなごむ。(高橋正子)

★味噌の香や朝の厨の根深汁/桑本栄太郎
寒い朝の味噌汁の香りはいいものだ。旬の根深の旨さに身がしゃんとする。(高橋正子)

★窓明りに急ぎ起床や今朝の雪/佃 康水
あまりに明るい窓の明かりに寝過ごしたのではと、急いで起床。ところが、窓の明かりは一夜にして降り積もった雪であった。雪が降り思わぬ詩的な世界を得た。(高橋正子)

[12月17日]
北風に掃かれて街の清きかな/下地鉄
元の句は、「や」「かな」と切字が併用されていたが、これは避ける。
北風が吹き、街の塵を一掃し、街は青空も、街並みも清らかになった。北風の吹いた後「清き」と感じるのは、沖縄の暖かさがあってのことだろう。(高橋正子)

[12月16日]
★冬山の鋼の襞の迫りけり/小口泰與
鉄壁のように迫る冬山の厳しさ、力強さに対峙し、冬山を同じような心境に立った作者の姿が見える。(高橋正子)

★ビル街を突き抜けてくる冬日かな/河野啓一
「突き抜けてくる冬日」を得てビル街の風景が改まった。静かでありながら、緊張感と温かさがある。「突き抜けてくる」の率直な実感がよい。(高橋正子)

[12月15日]
★癒えし眼に白山茶花や青み帯び/佃 康水
白内障の手術を終えられて、周囲が新たな景色のように目に映るのではと思う。山茶花の白い花も白が青みを帯びて鋭く目に映る。感覚が冴え冴えしている。(高橋正子)

★翔ぶよりも羽ばたくことよ冬の雁/小西 宏
秋渡って来た雁は、冬の今は地上に落ち着いて、空を翔ぶことよりも、羽ばたいて見せることが多い。雁の美しくはかなげな印象を覆して、現実のリアルな姿が詠まれた。(高橋正子)

[12月14日]
★青色の灯し飾りてクリスマス/河野啓一
青色の灯は、北欧の幻想的な夜を思い起こさせる。また多色の灯りよりも、より現代的、宇宙的なイメージが湧く。 今年はノーベル賞で青色ダイオードが有名になったことも青色の灯りを増やす一つの理由にせよだ。(高橋正子)

★月冴えて地上に流れる賛美歌や/迫田和代
清らかで美しい賛美歌がさらに身に沁みて感じられるのは、月光がさえざえと届くときであろう。地上も聖なるものに満たされる。(高橋正子)

12月14日-20日

12月20日(5名)

●多田有花
球を打ちおりなば夜空から粉雪★★★★
今年は寒波の来襲で、普段の雪の降らない地方にも雪が積もったりしている。夜のテニスコートだろう。球を打っていると粉雪が舞い降りる。急に冷え込んだ夜の思いがけない幻想的なプレゼント。(高橋正子)

厳寒のゆるみし今朝の雨の音★★★
荷物届く冬の雨激しき中を★★★

●小口泰與
山の端に冬満月の朝ぼらけ★★★★
あけぼのの鋭声おちこち寒鴉★★★
よる虎落笛瑞穂の国のあるかぎり★★★

●桑本栄太郎
翔ぶよりも跳ぶごときなり冬の鵯★★★
手のひらを天にかざすやしぐれ来る★★★
もくれんの冬芽濡れ居り光りつつ★★★★

●下地鉄
千両の隣の寡婦の出入り口★★★★
野良猫の舗道に現れて四温かな★★★
悪さして襖の奥の父の顔★★★

●高橋正子
ジャコ天と田芹が馳走饂飩食ぶ
田芹の丈短くそれが絡み合い
冬の雨窓打つ音の暮れにけり

12月19日(9名)

●小口泰與
冬の雨八千草濡らし我ぬらし★★★★
北颪固き大地を踏みにけり★★★
鈍色の八百重の雲や切炬燵★★★

●古田敬二
岩に寝てアシカのしあわせ日向ぼっこ★★★
アザラシの滑らか遊泳冬のプール★★★
見つめれば河馬の瞳の吾に向く★★★

●河野啓一
実満両今年も鳥の恵みかな★★★
餌なくて地面ついばむ冬烏★★★
大寒波柿の実すべて落ち尽し★★★★

●内山富佐子
鶴嘴と鍬にスコップ雪を割る★★★
雪帽子かぶって車走りゆく★★★
忌中告ぐ白木の札や雪激し★★★★
雪が激しく降る日に、忌中の札を見ると、冥福を祈りながらも、人の死の悲しみが、悲痛なまで深くなる。
(高橋正子)

●下地 鉄
冬ざれの舗道啄む小鳥かな★★★
歳の瀬や波音遠く流れくる★★★★
数え日や集う老婆の若葉会★★★

●多田有花
冬朝日横浜港を薔薇色に★★★★
ランドマークタワー寒風に聳ゆ★★★
北風をゆく人誰も足早に★★★

●桑本栄太郎
白き実を鴉ついばみ冬ざるる★★★
初雪や”女人高野”の本を読む★★★★
父が居て膝に抱かるる風邪寝かな★★★

●川名ますみ
日輪のいろ水鳥の羽根にあり★★★★
水鳥の羽が日輪の色を置いている。朝の水鳥、あるいは夕べの水鳥か。詩的な水鳥の情景。(高橋正子)

夕映えの色を水鳥羽ばたかす★★★
自然薯を擂る音笑い声に似て★★★

●小西 宏
窓枠に何事もなし冬木立★★★★
青空に小楢木の葉の色し★★★
マフラーの風にブランコ一人漕ぐ★★★

12月18日(6名)

●古田敬二
雪豹の雪雲見上げていたりけり★★★★
雪を待つまなざし雪豹檻にいる★★★
耳ピクリ動かし河馬の日向ぼっこ★★★

●小口泰與
生姜酒夕べの風の暴れもよい★★★★
寒鯉や八十瀬の淵も黙の中★★★
補陀落や寒暁の月やすからむ★★★

●下地鉄
湯気のたつ銭湯(ゆや)入口の石路の花★★★★
銭湯の湯気と石蕗の花の取り合わせが、いい。石蕗の明るい黄色、湯気のやわらかな白さに気持ちがなごむ。(高橋正子)

数え日に入りて気付きし卒寿かな★★★
賀状書く宛先に手の止まりけり★★★

●桑本栄太郎
味噌の香や朝の厨の根深汁★★★★
寒い朝の味噌汁の香りはいいものだ。旬の根深の旨さに身がしゃんとする。(高橋正子)

懐かしき夢を見ており風邪寝かな★★★
しぐれ雲少し茜の日暮れけり★★★

●小西 宏
松の色ほのかに映し初氷★★★
竜のひげ触れて真白き霜柱★★★
手袋をして大股で日を浴びて★★★★

●佃 康水
窓明りに急ぎ起床や今朝の雪★★★★
あまりに明るい窓の明かりに寝過ごしたのではと、急いで起床。ところが、窓の明かりは一夜にして降り積もった雪であった。雪が降り思わぬ詩的な世界を得た。(高橋正子)

一色に雪しんしんと降り止まず★★★
高きより夜半のしじまをしづり雪★★★

12月17日(6名)

●小口泰與
青天や襞迫りくる冬赤城山(あかぎ)★★★★
眼間に赤城山(あかぎ)迫るや冬黄葉★★★
手袋の指の節々朝まだき★★★

●河野啓一
メタセコイヤ冬の朝日に凛と立ち★★★★
唐代の磁器や真白き雪の肌★★★
着ぶくれて棋譜並べいる昼下がり★★★

●桑本栄太郎
嶺上の日射しまぶしく時雨れけり★★★
すすぎもの慌て取り込むしぐれかな★★★
雲間より午後の日射しや花八手★★★★

●下地鉄
干し綱の揺れの寂しき冬日かな★★★
冬の湯屋声のぶつかる音に消え★★★

北風に掃かれて街の清きかな★★★★(正子添削)
元の句は、「や」「かな」と切字が併用されていたが、これは避ける。
北風が吹き、街の塵を一掃し、街は青空も、街並みも清らかになった。北風の吹いた後「清き」と感じるのは、沖縄の暖かさがあってのことだろう。(高橋正子)

●多田有花
雨あがれば明日はきっと寒くなる★★★
冬の雨ひかりに乗って横浜へ★★★
冬の夜や港の夜景見て眠る★★★★

●古田敬二
麒麟高く異国の寒さに震えおり★★★
そこにだけ冬の陽温しフラミンゴ★★★★
冬の陽に眼光鋭し檻のエミュー★★★

12月16日(4名)

●小口泰與
冬山の鋼の襞の迫りけり★★★★
鉄壁のように迫る冬山の厳しさ、力強さに対峙し、冬山を同じような心境に立った作者の姿が見える。(高橋正子)

安けくてうたた寝よしや囲炉裏端★★★
返り花今日ひと時を華やぐか★★★

●河野啓一
ビル街を突き抜けてくる冬日かな★★★★
「突き抜けてくる冬日」を得てビル街の風景が改まった。静かでありながら、緊張感と温かさがある。「突き抜けてくる」の率直な実感がよい。(高橋正子)

白花の盛り上がりたるシクラメン★★★
氷上の舞い姫手脚のびやかに★★★

●桑本栄太郎
涸川の石のながれや水無瀬川★★★
冬耕や畝の曲がりの黒き溝★★★
雲影の移りゆきけり冬の嶺★★★★

●小西 宏
薄ら日のすぐ雨となる寒い朝★★★
窓ガラスに細い糸引き雨の冷え★★★
烏二羽声無く行ける冬の雨★★★

12月15日(6名)

●小口泰與
寿司桶の中は朱塗りや寒落暉★★★★
山風にかしずく利根川(とね)や枯木立★★★
ガム噛みて試験勉強冬の月★★★

●河野啓一
蘆生うる水辺のひかり鴨の群★★★
枯木立見上げつつ行く丘の道★★★★
ハモニカのお稽古デイのクリスマス★★★

●多田有花
空っ風雲と海とが光りけり★★★
寒波来る空真っ青に晴れあがり★★★★
水使いし後の手をストーブで炙る★★★

●桑本栄太郎
下枝にしがみつき居り冬紅葉★★★
峰上の天の青さやしぐれ雲★★★★
しぐれ雲ひろがり急ぐ家路かな★★★

●佃 康水
悴む手揉みて入り来る投票所★★★
癒えし眼に白山茶花や青み帯び★★★★
白内障の手術を終えられて、周囲が新たな景色のように目に映るのではと思う。山茶花の白い花も白が青みを帯びて鋭く目に映る。感覚が冴え冴えしている。(高橋正子)

冬帽の父が追う児の冬帽子★★★

●小西 宏
翔ぶよりも羽ばたくことよ冬の雁★★★★
秋渡って来た雁は、冬の今は地上に落ち着いて、空を翔ぶことよりも、羽ばたいて見せることが多い。雁の美しくはかなげな印象を覆して、現実のリアルな姿が詠まれた。(高橋正子)

白銀の雲流るるや実万両★★★
冬薔薇の蕾うるわし青き風★★★

12月14日(8名)

●古田敬二
テーブルに冬の菜の花でんと置く★★★
寄り合いて春蘭冬芽を尖らせる★★★
全山を一色にして黄葉期★★★★

●河野啓一
青色の灯し飾りてクリスマス★★★★
青色の灯は、北欧の幻想的な夜を思い起こさせる。また多色の灯りよりも、より宇宙的なイメージが湧く。
今年はノーベル賞で青色ダイオードが有名になったことも一つの理由があるにせよだ。(高橋正子)

胡桃割り人形も居て聖誕祭★★★
縫いぐるみ大きく包み雪だるま★★★

●小口泰與
いしぶみの薄れし文字や枯尾花★★★
冬木の芽白壁に寄る日のぬくみ★★★
寒暁の山もろともに吹かれけり★★★★

●迫田和代
懐かしい青菜を洗う冷たさや★★★
貧富なきホームの暮らし干菜汁★★★
月冴えて地上に流れる賛美歌や★★★★
清らかで美しい賛美歌がさらに身に沁みて感じられるのは、月光がさえざえと届くときであろう。地上も聖なるものに満たされる。(高橋正子)

●小川和子
メール以て「祈り」認む待降節★★★
コントラバス抱えし人と逢う師走★★★★
山茶花の地にも鏤め紅褪せず★★★

●内山富佐子
マスクして目で挨拶の朝かな★★★
除雪車の雪吹き飛ばす早さかな★★★
雪の朝シャベルの音の高らかに★★★★

●桑本栄太郎
<京都南座、吉例顔見世興行>
顔見世の招きに向かうカメラかな★★★
見上げいる招きまぶしき冬日さす★★★★
南座に招きあがりて酢茎買う★★★

●小西 宏
木の葉舞い木の葉すべてが空となる★★★★
冬薔薇や西高東低青い空★★★
雪国を思いつつ見る空の青さ★★★

●デイリー句会投句箱/12月7日~13日●

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※投句は、一日1回3句に限ります。
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今日の秀句/12月7日~13日

[12月13日]
★柊の堅き緑に花香る/小西 宏
柊の堅く濃い緑の葉に比べると、白い小さな花は品のある香りがして、葉の棘に傷つくのではないかと思うほど繊細。そこに目をつけて詠んだ。(高橋正子)

★雪もよいオレンジ色のコート着る/内山富佐子
どんより曇った雪もよいの日、オレンジ色の明るいコートを羽織って出かける。雪国の暗くなりがちな生活をオレンジ色のコートを羽織れば、気持ちが明るくなる。(高橋正子)

[12月12日]
★届きたる荷の早や香る冬りんご/佃 康水
林檎の荷が送られてきた。開けるとすぐさま林檎の匂いが広がる。新鮮な林檎の圧倒的存在感が詠まれている。(高橋正子)

[12月11日]
★リズム出て寡黙な夜に柿を剥く/古田敬二
干し柿にする柿を剥いている。何個か剥くと剥く所作に調子が出ては、面白いようにはかどってくる。干し柿作りの寡黙な夜が柿の色に染まってあたたかい。(高橋正子)

★新しき赤きザックや冬最中/多田有花
身の回りのものを新しくすると嬉しいものだ。冬の最中、赤いザックを買った。暗くなりがちな冬、背中に背負うザックが「赤」であるので、なおさら嬉しく元気が出るというもの。(高橋正子)

[12月10日]
★外套に利根の川風しみにけり/小口泰與
外套を着ていても利根の川風の冷たさは、身に沁みこむ。「外套」の役割で句に渋さが出た。(高橋正子)

★ 寒い朝庭に雀の来てくれる小西 宏
「雀の来てくれる」という喜びがいい。寒い朝にまん丸い雀が庭に来て元気に餌を啄む。遊びに来てくれた雀の可愛さ。(高橋正子)

[12月9日]
★県境は全山黄葉峪深し/古田敬二
山国の県境は峪深く、全山の黄葉も激しいといっていいほどだ。奥深い県境の自然に強い力がある。(高橋正子)

★マスクして自転車こげば歌の出る/祝恵子
風邪の予防にかけているマスクだろう。寒さの中を自転車で走るとき、マスクがあれば温かい。冷たい風にさっそうとペダルを踏んで、歌が口をついて出る。(高橋正子)

[12月8日]
★隣家の屋根耀ける初霜に/河野啓一
朝窓を開け、隣家の屋根が初霜に輝いているのを見つけた。厳しい寒さの中にも、元気が湧いてくる明るさがある。(高橋正子)

★足跡もなく真っ白に雪の朝/高橋秀之
誰もまだ踏んでいない朝の雪。思いがけずも積もった白くほっこりと、清らかな雪を目に楽しむ作者。(高橋正子)

[12月7日]
★冬紅葉まだ庭隅に在る明るさ小西 宏
師走を迎え、紅葉も散り終わろうとするころになったが、まだ庭隅には冬紅葉が明るく残っている。見るにつけ、気持ちに明るさが加わる。(高橋正子)

★満月が師走の町の上に出る/多田有花
師走の夜空は群青紺を深めている。そこに満月がくっきりと昇って、清らかな、懐かしいような夜となっている。(高橋正子)

12月7日-13日

12月13日(8名)

●小口泰與
隼や夕映えの川雲映す★★★★
愛犬の物言わぬ目や北颪★★★
白鳥の鳥を咥えし湖荒るる★★★

●小西 宏
柊の堅き緑に花香る★★★★
柊の堅く濃い緑の葉に比べると、白い小さな花は品のある香りがして、葉の棘に傷つくのではないかと思うほど繊細。そこに目をつけて詠んだ。(高橋正子)

犬冥利食事の後の日向ぼこ★★★
きりきりと枯葉が空に翻る★★★

●内山富佐子
雪もよいオレンジ色のコート着る★★★★
どんより曇った雪もよいの日、オレンジ色の明るいコートを羽織って出かける。雪国の暗くなりがちな生活をオレンジ色のコートを羽織れば、気持ちが明るくなる。(高橋正子)

しみじみと語り合う夜や十二月★★★
時計屋の九時のメロディ雪盛ん★★★

●下地鉄
和箪笥の年賀の晴れ着其の儘ぞ★★★
障子灯に今は懐かし父の顔★★★★
子ら集う何処に襖の置き所★★★

●桑本栄太郎
ひと年(とせ)の業を洗うや冬の雨★★★
顔見世の吾もなりたき大向う★★★
冴え冴えと”税”と書かれし漢字かな★★★★

●古田敬二
紅葉寺土門拳が見たように★★★
五重の塔逆さに映る池紅葉★★★
吊るし柿に上手い具合に寒さ来る★★★★

●川名ますみ
漱石忌目と猫の目を寄せ合うて★★★
漱石忌母は静かに吾れを生む★★★★
漱石忌昼餉夕餉も母と居る★★★

●高橋秀之
名古屋から帰る旅路も暮早し★★★
冬の夜に明かりも見えず関西線★★★
参道に途切れることなく散紅葉★★★★

12月12日(5名)

●古田敬二
やわらかき深さとなりぬ落葉道★★★★
残る葉に別れ告げたる柿落ち葉★★★
眠る場所決めて散りたり柿紅葉★★★

●小口泰與
鈍色の雲の切れ間や冬落暉★★★★
ごうごうと吹くや河原の寒鴉★★★
山風の物言う夕べはだれ霜★★★

●下地鉄
北風に淋しく騒ぐ選挙旗★★★
佇めば耳鳴りを知る夜長かな★★★
湯豆腐の灯りの何故に寂しさよ★★★★

●桑本栄太郎
枯枝の枝垂れざくらのしだれかな★★★★
冬紅葉地獄の彩と散りにけり★★★
いつもより遅き目覚めや冬の雨★★★

●佃 康水
老僧の箒目立てる霜の朝★★★ 
二人して大釜運ぶ報恩講★★★
届きたる荷の早や香る冬りんご★★★★

12月11日(5名)

●古田敬二
リズム出て寡黙な夜に柿を剥く★★★★
干し柿にする柿を剝いている。何個か剝くと剝く所作に調子が出ては、面白いようにはかどってくる。干し柿作りの寡黙な夜が柿の色に染まってあたたかい。(高橋正子)

柿を剥く己が齢を想いつつ★★★
柿を剥く飛騨川べりの故郷思う★★★

●小口泰與
枯葦や岩の定かな利根川原★★★★
里山の寺の柱や霜柱★★★
覚め際の遊泳あるや夜半の冬★★★

●多田有花
納豆をいろいろ買って食べ比べ★★★

新しき赤きザックや冬最中★★★★
身の回りのものを新しくするとうれしいものだ。冬の最中、赤いザックを買った。暗くなりがちな冬の最中、背中に背負うザックが「赤」であるので、なおさらうれしく元気が出るというもの。(高橋正子)

マフラーを巻き歩きだす山の道★★★

●桑本栄太郎
天よりの命綱かや雪迎え★★★★
バス通り早やも枯木の家路かな★★★
冬うらら辻であくびの運転手★★★

●小西 宏
色褪せてなお青空の冬もみじ★★★
日の暮を時計代わりに落葉踏む★★★★
落葉広く銀杏明るきアスファルト★★★

12月10日(5名)

●小口泰與
外套に利根の川風しみにけり★★★★
外套を着ていても利根の川風の冷たさは、身に沁みこむ。「外套」の役割で句に渋さが出た。(高橋正子)

かの冬の三和土に積みし薪の数★★★
あけぼのの蕊の震える寒椿★★★

●下地鉄
さざ波の砂噛み走る冬の海★★★★
冬の湯や歳それぞれのおもいかな★★★
草原にさざ波つくり北颪★★★

●福田ひろし
雀らが等間隔に冬の午後★★★
良き知らせつい待ちわびる小春かな★★★
かさかさと弁当開く小春日や★★★★

●桑本栄太郎
延々と貨車のつらなり枯野行く★★★
三川のつどう中洲や枯尾花★★★
高槻の医科大かこむ冬木かな★★★★

●小西 宏
寒い朝庭に雀の来てくれる★★★★
「雀の来てくれる」という喜びがいい。寒い朝にまん丸い雀が庭に来て元気に餌を啄む。遊びに来てくれた雀の可愛さ。(高橋正子)

鍬打てば帽子より湯気大根畠★★★
暖房の火のふと赤し一人暮れる★★★

12月9日(7名)

●古田敬二
県境は全山黄葉峪深し★★★★
山国の県境は峪深く、全山の黄葉も激しいといっていいほどだ。奥深い県境の自然に強い力がある。(高橋正子)

落葉に刻字風化し芭蕉句碑★★★
茶屋客に紅葉の光り届きけり★★★

●小口泰與
見晴るかす雨に沈みし枯野かな★★★
夕靄にのっと寒犬出でにけり★★★
谷川岳(たにがわ)の空鈍色や枯木立★★★★

●祝恵子
冬ホーム鮭一尾下げ電車待つ★★★
マスクして自転車こげば歌の出る★★★★
風邪の予防にかけているマスクだろう。寒さの中を自転車で走るとき、マスクがあれば温かい。冷たい風にさっそうとペダルを踏んで、歌が口をついて出る。(高橋正子)

唐辛子干せば冬日を浴び光る★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋~祇園>
大橋をわたり祇園へ時雨来る★★★★
顔見世の記念写真や招き前★★★
外つ人の数多祇園や小春空★★★

●小西 宏
バラ茎の伐口白し漱石忌★★★
山茶花の藪に陽のある朗らかさ★★★★
崖落葉蹴立て小綬鶏声漏らす★★★

●小川和子
冬野ゆく列車の響かすリズム音★★★★(正子添削)
かわたれの新聞の冷え漱石忌★★★
猫の目の小春に憩う漱石忌★★★

●高橋秀之
歳末の募金の呼びかけ一列で★★★
空きはなし冬晴れの日の物干し場★★★
川沿いの並木に光の十二月★★★★

12月8日(7名)

●古田敬二
野に独り居て初雪を見上げけり★★★★
柿紅葉落下の時にいる私★★★
採り終えし柿畑紅葉の散り敷けり★★★

●小口泰與
川風の吹きさらしけるおでん鍋★★★
吹かれ行くおでんの湯気やコップ酒★★★★
冬の夜やがらんどうなる胃袋ぞ★★★

●河野啓一
隣家の屋根耀ける初霜に★★★★
朝窓を開け、隣家の屋根が初霜に輝いているのを見つけた。厳しい寒さの中にも、元気が湧いてくる明るさがある。(高橋正子)

霜の朝ちらと確かむ温度計★★★
シクラメン水遣り終えて出窓へと★★★

●下地鉄
冬ざれや固定電話のうす明かり★★★
大風車ゆたりゆたりと暮秋かな★★★
水枕動けば音の冬寒し★★★★

●多田有花
冬枯れの静かな頂に座る★★★★
蛇行して川は大雪の海へ★★★
ソーラーパネル真っ白にあり霜の朝★★★

●桑本栄太郎
<故郷出身石破地方創生大臣来京>
寒風の中や立会い演説会★★★
大臣の掠れ声聞く冬木風★★★
木の葉舞う風の台座や演説会★★★★

●高橋秀之
早暁の東の空には冬の月★★★
真っ白な山を後ろに冬の虹★★★

足跡もなく真っ白に雪の朝★★★★
誰もまだ踏んでいない朝の雪。思いがけずも積もった白くほっこりと、清らかな雪を目に楽しむ作者。(高橋正子)

12月7日(7名)

●下地鉄
ひととせの薬の仕分け秋の暮れ★★★
寒晴れや海の彼方の霞かな★★★
光芒に奇岩の美しき秋の旅★★★★

●小口泰與
狛犬の眼光据わる冬の雷★★★★
枯蔦をたぐるや池の黙破り★★★
冬ざれの地震の隆起や太柱★★★

●迫田和代
なんとなく気ぜわしくなる年の暮れ★★★
時雨をば狐日和と人は言う★★★
今落ちた冬の紅葉を車中から★★★★

●桑本栄太郎
<故郷鳥取の冬の追憶>
大山の頂しろく菜を洗ふ★★★★
清流の光る小川や菜を洗ふ★★★
海鳴りの遠くに聞こえ榎枯る★★★

●小西 宏
朝の気に身を凛凛と落葉踏む★★★
冬紅葉まだ庭隅に在る明るさ★★★★
師走を迎え、紅葉も散り終わろうとするころになったが、まだ庭隅には冬紅葉が明るく残っている。見るにつけ、気持ちに明るさが加わる。(高橋正子)

枯芝を這う夕陰の脚早し★★★

●多田有花
満月が師走の町の上に出る★★★★
師走の夜空は群青紺を深めている。そこに満月がくっきりと昇って、清らかな、懐かしいような夜となっている。(高橋正子)

雪嶺と輝く海を見る頂★★★
冬の蝶小楢林を無数に飛ぶ★★★

●高橋秀之
ぽたり落ち続いてドサリと枝の雪★★★★
冬の靄ゆったり流れて山隠す★★★
境内は赤い木の葉と白い雪★★★