今日の秀句/7月11日-17日


[7月17日]
★田の上を今反転の夏つばめ/小口泰與
夏つばめが反転する田は、青田。その青田の上を風を切って飛ぶつばめが力強く、颯爽としている。蒸し暑さも忘れそうだ。(高橋正子)

[7月16日]
★夏の雲輝き流る台風前/多田有花
夏の雲が輝き流れている。そのことは通常のことなのだが、「輝き流る」を意識したのは、輝きがいつもに増していたからだろう。台風前の雲の輝きに、台風前の平常と緊張の入り混じった感情が読める。(高橋正子)

[7月15日]
★目が合えば大きく跳ねる青田の蛙/上島祥子
青田のそばを通っていると、不意に蛙が現れて、目があった。蛙はうれしくなったんだろうか、大きくぴょんと跳ねた。ちょっとユーモラスな句。(高橋正子)

[7月14日]
★夕暮れて西瓜をもらいに実家へと/高橋秀之
実家に西瓜をもらいにゆくというのがいい。大きな西瓜はみんなで分け合って食べるところがいい。夕涼みに家族で西瓜を食べるあかるい家庭が想像できる。(高橋正子)

[7月13日]
★涼風の通れるところへ机置く/多田有花
朝のうちなどは、涼風がよく通り抜ける。そこへ机を置いて仕事をすれば仕事が気持ちよくできることは必至。クーラーに頼る時代に、自然の涼風の恵みはありがたい。(高橋正子)

★匂うほど丘の青葉の湧きあがる/川名ますみ
丘に湧き上がる青葉。その緑の勢いが「匂うほど」となった。青葉の輝く緑に英気をもらう。(高橋正子)

★七色の暖簾の文字はかき氷/高橋秀之
夏は、冷たい食べ物や飲み物は、たのしみなもの。かき氷はその代表。かき氷屋の暖簾も楽しげに七色。かき氷を食べる人は誰も笑顔になる。(高橋正子)

[7月12日]
★老鶯や水の香強き紀の川に/古田敬二
紀ノ川も上流の方か。水辺近くに寄ると、水の匂いが立ち上がる。老鶯の美しい声がのびやかに水を渡る。心洗われるところ。(高橋正子)

★氷菓舐めみんな裸の帰り道/谷口博望
少年期の思い出だろうか。クーラーもない時代、氷菓は子供たちには涼をもとめての大いなる楽しみ。日焼けした裸でアイスキャンデーをなめながら帰ったのも楽しい思い出。(高橋正子)

★大山の樹海涼しく乗馬せり/桑本栄太郎
大山のブナの樹海は西日本でも大きな樹海。樹海を馬で行く涼しさを楽しむ。優雅な気分だろうか。(高橋正子)

[7月11日]
★すずやかに笹飾りしてデイの朝/河野啓一
デイケアに通う日は、仲間の人たちと触れ合う楽しみな日であろう。ケアセンターに到着一番、笹飾りが目に入った。朝のことだけに、笹飾りがさやさやと揺れ、目にすずやかなな印象である。(高橋正子)

7月11日~17日


7月17日(4名)

●谷口博望
黒南風や巨大タンカー島間(しまあい)に★★★★
草芙蓉お多福面の踊りたる★★★
蟇鳴くやアメリカよりも国連ぞ★★★

●小口泰與
田の上を今反転の夏つばめ★★★★
夏つばめが反転する田は、青田。その青田の上を風を切って飛ぶつばめが力強く、颯爽としている。蒸し暑さも忘れそうだ。(高橋正子)

峰雲や川を征する長き竿★★★
束の間のこの世に生まる蝉時雨★★★

●広田洋一
赤白黄松葉ボタンの賑わへり★★★
コツコツと毎日開く松葉ボタン★★★
松葉ボタン暑さにめげず花白し★★★★

●川名ますみ
椎落葉硬き響きを風に交ぜ★★★
青嵐カーラジオから魔笛鳴る★★★★
青嵐凌ぎし鉢植を起こす★★★

7月16日(5名)

●谷口博望
蝉の穴日を見るまでの幾年ぞ★★★
蝉の穴登りつめたる枝の先★★★
緑陰に海の匂いと潮騒と★★★★

●小口泰與
夕暮の鳥語激しき端居かな★★★
梔子の雨にも錆びず香るかな★★★
里山も舗装されたり田水沸く★★★★

●多田有花
静けさの中夏台風を待つ★★★
夏の雲輝き流る台風前★★★★
夏の雲が輝き流れている。そのことは通常のことなのだが、「輝き流る」を意識したのは、輝きがいつもに増していたからだろう。台風前の雲の輝きに、台風前の平常と緊張の入り混じった感情が読める。(高橋正子)

夏茜姿を消しぬ嵐前★★★

●広田洋一
外出に傘と扇子を手放さず★★★★
外出に傘を扇子を携えり(正子添削)※俳句は「今」を詠む。
試験場やたらにあおぐ扇子かな★★★
試験場あおぎづめなる扇子かな(正子添削)
口元を隠す扇の半開き★★★

●桑本栄太郎
白き筋しごき芒の草矢かな★★★★
教会のとんがり屋根や夏の峰★★★
部活子の上気の顔や日の盛り★★★

7月15日(5名)

●谷口博望
遠目にも微笑みかけて草芙蓉★★★
夜のカンナフラッシュの中艶めかし★★★★
睡蓮や天から菩薩降り給ふ★★★
※アメリカ芙蓉=草芙蓉

●小口泰與
単線の汽笛聞こゆる端居かな★★★★
噴煙の流るる先のとまとかな★★★
日照草九十九折なる溶岩の道★★★

●多田有花
梅雨明けと思いし今朝の青空よ★★★★
ガジェットを充電夏の台風待つ★★★
万緑をぐいぐい自転車漕ぎ上がる★★★

●桑本栄太郎
駅中の祇園囃子や河原町★★★
カップルの靴脱ぎ涼むせせらぎに★★★★
百日紅もやもや出づる塀の外★★★

●上島祥子
夏草の刈られて真白二の鳥居★★★
目が合えば大きく跳ねる青田の蛙★★★★(信之添削)
青田のそばを通っていると、不意に蛙が現れて、目があった。蛙はうれしくなったんだろうか、大きくぴょんと跳ねた。ちょっとユーモラスな句。(高橋正子)

猫の背に野性の静けさ四十雀★★★

7月14日(5名)

●小口泰與
記憶より小さき沼や時鳥★★★
朝に採り夕べにとりし杏かな★★★
夏座敷はや板の間へ行く小犬★★★★

●谷口博望
藤の実の崖からぶらり花のあと★★★
赤レンガ蘇鉄の雄蕊男らし★★★★
鈴生りの玄関先にミニトマト★★★

●多田有花
葉を鳴らす涼風のなか森歩く★★★★
夏の陽に白く輝き白鷺城★★★
明日蝉となる幼虫が地を這いぬ★★★

●桑本栄太郎
夜鷹鳴く団地の朝の目覚かな★★★
朝涼や腹の掛ものたぐり居り★★★
腹巻のずれを直すや朝涼し★★★★

●高橋秀之
梅雨晴れ間洗濯物の並ぶ家★★★
夕暮れて西瓜をもらいに実家へと★★★★
実家に西瓜をもらいにゆくというのがいい。大きな西瓜はみんなで分け合って食べるところがいい。夕涼みに家族で西瓜を食べるあかるい家庭が想像できる。(高橋正子)

夏空に輝く光は一番星★★★

広田洋一
風に舞ひ人を呼びをる曼珠沙華
赤き爪空に伸ばせし曼珠沙華
失恋に沈む日癒す曼珠沙華
「曼珠沙華」は秋の季語です。秋の季節にご投句ください。

7月13日(7名)

●小口泰與
捩花や芝へ三羽の雀どち★★★★
滝しぶき巌の凹凸呼吸せり★★★
大欅雹降る中の喘ぎかな★★★

●谷口博望
走馬灯海辺の少年佇みて★★★★
宙吊りの太き胡瓜や爺いづこ★★★
金糸梅ガバと音して鯉の来る★★★

●多田有花
涼風の通りしところへ机置く★★★★
涼風の通れるところへ机置く(正子添削)
「通りし」の「し」は過去の助動詞です。意味として不自然。
朝のうちなどは、涼風がよく通り抜ける。そこへ机を置いて仕事をすれば仕事が気持ちよくできることは必至。クーラーに頼る時代に、自然の涼風の恵みはありがたい。(高橋正子)

窓揺らす梅雨台風の先触れが★★★
独唱が合唱団に蝉の声★★★

●広田洋一
梅雨前線留まる上にまた台風★★★
台風一過落葉渦巻く道の端★★★★

昨日は北今日は南に地震起きる★★★
昨日北今日は南に夏の地震(正子添削)
もとの句には季語がありません。

●桑本栄太郎
馬の背に幼子乗るや蝉の声★★★
鷺舞うや遙かかなたの青田風★★★★
初蝉のいつしか止みて午後に日に★★★

●川名ますみ
嵐来む小さき鉢からひとつずつ★★★
歓声を上げ万緑のどこまでも★★★

匂うほど丘の青葉の湧きあがる★★★★
丘に湧き上がる青葉。その緑の勢いが「匂うほど」となった。青葉の輝く緑に英気をもらう。(高橋正子)

●高橋秀之
旅先で聞く初蝉は山の中★★★
夏の虹ローカル列車の車窓から★★★
虹の弧をローカル列車の車窓から(正子添削)
「虹」は夏の季語なので、わざわざ「夏の虹」としなくてよい。

七色の暖簾の文字はかき氷★★★★
夏は、冷たい食べ物や飲み物は、たのしみなもの。かき氷はその代表。かき氷屋の暖簾も楽しげに七色。かき氷を食べる人は誰も笑顔になる。(高橋正子)

7月12日(8名)

●迫田和代
郭公の声をたよりに道急ぐ★★★
歩を進め新緑新緑の森の中★★★
緑陰の涼やかな風にカモミール★★★★

●古田敬二
紀の川の靄の上なる紀伊山塊★★★
老鶯や水の香強き紀の川に★★★★
紀ノ川も上流の方か。水辺近くに寄ると、水の匂いが立ち上がる。老鶯の美しい声がのびやかに水を渡る。心洗われるところ。(高橋正子)

百十余石段登れば杜鵑★★★

●小口泰與
欠伸して信号を待つ茂りかな★★★
日暮しの雨に凌霄花こぼれなし★★★★
茄子の花婆の異見を聞かぬ孫★★★

●広田洋一
片陰を拾ひつ向かふ喫茶店★★★
片陰を拾ひつつ向かふ喫茶店(正子添削)
助詞「つ」の用法を辞書でご確認ください。

片陰を過ぎれば見ゆる連れの影★★★
老鶯や渡良瀬の谷渡りをり★★★★

●小川和子
カサブランカ咲かせ野にある百合ゆかし★★★
花の精潜むかに百合ひらかんと★★★
麦茶飲む児の息軽し湯浴みあと★★★★

●谷口博望
肝試し百物語聞いたあと★★★
氷菓舐めみんな裸の帰り道★★★★
少年期の思い出だろうか。クーラーもない時代、氷菓は子供たちには涼をもとめての大いなる楽しみ。日焼けした裸
でアイスキャンデーをなめながら帰ったのも楽しい思い出。(高橋正子)

釣忍夫婦の会話風が吹き★★★

●河野啓一
海開き南紀の浜の白い波★★★★
月見草臨海野外センターに★★★
半夏生写真マニアの友想う★★★

●桑本栄太郎
<鳥取帰省>
大山の樹海涼しく乗馬せり★★★★
大山のブナの樹海は西日本でも大きな樹海。樹海を馬で行く涼しさを楽しむ。優雅な気分だろうか。(高橋正子)

白鷺やはるか田圃の風来たる★★★
海からの風の仏間の昼寝かな★★★

7月11日(5名)

●多田有花
草刈機の音がどこかで梅雨曇★★★★
量り売りの米焼酎を徳利へ★★★
飲んでみるココナッツウォーターなるものを★★★

●谷口博望
TPP交渉難航
TPPは分かり合ふまでソーダ水★★★
木槿咲く下から上へ二つずつ★★★
天辺に向日葵一つ燦燦と★★★★

●小口泰與
ブティックのショウウインドの菖蒲かな★★★
頭(づ)の青き僧の念仏千日紅★★★
布袋草沼のすみずみ満ちにける★★★★

●桑本栄太郎
<鳥取帰省より>
夏つばめ旋回している村の路地★★★
大山の夏の霞や青き空★★★★
あじさいの色褪せ来たる日差しかな★★★

●河野啓一
初蝉やセーラー服の女の子★★★
すずやかに笹飾りしてデイの朝★★★★
デイケアに通う日は、仲間の人たちと触れ合う楽しみな日であろう。ケアセンターに到着一番、笹飾りが目に入った。朝のことだけに、笹飾りがさやさやと揺れ、目にすずやかなな印象である。(高橋正子)

雨止みて合歓の花咲く森陰に★★★

●デイリー句会投句箱/7月1日~10日●


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今日の秀句/7月1日-10日

[7月10日]
★梅雨晴やうす墨色の赤城山/小口泰與
「梅雨晴」であれば、いつもの「赤城山」も墨絵に見るような美しい姿を見せてくれる。身近に見る、美しい風景との出会いは、「梅雨晴」であれば、なお嬉しい。(高橋信之)

★夕暮れて苗田を走る車の灯/古田敬二
日常の生活感のある句なので、ありふれた表現だと見られがちだが、この生活感がいいのだ。(高橋信之)

[7月9日]
★片陰に車を止めて野菜売/広田洋一
車の移動販売の野菜売りが、片陰の涼しいところで、店を広げている。色とりどりの夏野菜が目に浮かび。夏は、生き生きと新鮮なものに気持ちが涼やかになる。「片陰」が効いている。(高橋正子)

[7月8日]
★遠くより雨音が来る梅雨の森/多田有花
上五の「遠くより」がいい。「森」を詠んで詩の言葉となった。それも「梅雨の森」である。写生の心を失わずに詩となったのである。(高橋信之)

[7月7日]
★初西瓜井戸のことなど母のこと/祝恵子
今年初めて西瓜を食べながら、昔は井戸で西瓜を冷やしたこと、そのころ子どもたちの中心にいた母のことなど思い出された。西瓜はそういった昭和の生活を思い起こさせるところがある。(高橋正子)

★七夕の和菓子の出来て友招く/佃 康水
七夕の和菓子を手作りし、友を招く。七夕の和菓子は、七夕への思いがあって、童心に帰ったように、友と楽しいお茶の時間が持てたのだろう。よろこびたい。(高橋正子) 

[7月6日]
★橋からは瀧を目指して歩を速め/上島祥子
橋を渡れば、瀧へと一段と近づく。景色も変わって、瀧を訪ねる気持ちが逸る。歩く速度も早まる。瀧の様子を思い浮かべながらのこと。涼しさに出会うのも間もなくだ。(高橋正子)

[7月5日]
★空蝉や青い地球のあるかぎり/谷口博望
空蝉をどう受け止めるかが問題だが、この句では、命の生まれたあとものという意味だろう。青い地球がある限り、命は生まれ続ける。(高橋正子)

★青スイレン水の青きを滲みだせり/広田洋一
睡蓮の色はさまざまで、水色のような青色の睡蓮もある。水に浮かぶと、水の青さを滲ませたような感じだ。水に生れる花、睡蓮を観察してこそ見出したこと。(高橋正子)

[7月4日]
★向日葵が高く咲き初めし朝/多田有花
朝の空に、向日葵がすっと伸びて、高く花をつけた光景に、心が洗われるような明るさがある。俳句は心境の詩。(高橋正子)

[7月3日]
★ハッカ飴香りは薄く空へ抜け/河野啓一
ハッカ飴を口に含むと、すうすうとして清涼感がある。薄荷の香りが、すうっと空へと抜けていく気分もまたいいものだ。(高橋正子)

★木漏れ日や林へ誘う夏の蝶/上島祥子
夏の蝶が誘いゆく先が林であるのが、うれしい。蝶は、木漏れ日に紛れ飛び、林へと誘ってくれた。(高橋正子)

[7月2日]
★黒南風に暖簾の重く揺れにけり/福田ひろし
黒南風は梅雨の陰鬱な空模様のときに吹く南風。じっとりと湿気を含んで、風が通る暖簾が「重く」揺れる。梅雨が明ければ、風が軽やかに暖簾を揺らすだろうに。(高橋正子)

★籐椅子や強き日の差す山上湖/小口泰與
山上湖は、甲府のヘラ鮒つりで有名な湖だろうか。籐椅子にゆったりと座れば、山の日差しが強く届く夏の時間だ。(高橋正子)

[7月1日]
★髪を切る鏡の奥の夕焼雲/川名ますみ
髪を切ってもらうとき、鏡の奥に映る夕焼雲のきれいなこと。鏡の中へ入ってあの夕焼雲のところへ行ってみたい気持ち。(高橋正子)

★一本は必ず倒れグラジオラス/多田有花
グラジオラスの球根は、あまり根を深く張らず、花も多く重いためか、全部がまっすぐ立っていることは少ない。どれかが倒れている。梅雨の時期雨を受けているときは特にそんな様子が見れる。面白いことだ。 (高橋正子)

7月1日~10日

7月10日(7名)

●谷口博望
 若竹
若竹や松陰の志士奮ひ立ち★★★
ほんのりと色づき始む石榴の実★★★★
足腰に力を溜めてカンナ燃ゆ★★★

●小口泰與
梅雨晴やうす墨色の赤城山★★★★
「梅雨晴」であれば、いつもの「赤城山」も墨絵に見るような美しい姿を見せてくれる。
身近に見る、美しい風景との出会いは、「梅雨晴」であれば、なお嬉しい。(高橋信之)

妻かかえ来しばらの香りのゆたけしや★★★
床の間の武者人形や冷し酒★★★

●多田有花
折れ茎の先にとまりし夏茜★★★
開け放つ窓を吹き抜け南風★★★
陽を受けて立つ梅雨の入道雲★★★★

●河野啓一
住吉の御田も青き田となりて★★★
祇園祭鉾立て手配裏通り★★★
アサガオの苗出そろいて網を張る★★★★

●桑本栄太郎
<鳥取帰省>
漁火の沖に滲むや夏の夜★★★
鷺の舞う日差し明るき青田晴★★★★
あじさいの色の褪せくる日差しかな★★★

●上島祥子
ベランダに一鉢増えて涼招く★★★★
水際に赤を添えたり合歓の花★★★
夏草や白を秘めつつ丈伸ばす★★★

●古田敬二
噴水は空に留まる術知らず★★★
紀の川に投網ひろがる梅雨晴間★★★
夕暮れて苗田を走る車の灯★★★★
日常の生活感のある句なので、ありふれた表現だと見られがちだが、この生活感がいいのだ。(高橋信之)

7月9日(7名)

●谷口博望
挫折とは生きる始まり蝸牛★★★
合歓の花夜の帳の下りにけり★★★
故郷の夜の川行く鵜舟かな★★★★

●小口泰與
紫陽花の露天湯警護するごとし★★★
次々に山女飛び出す夕まずめ★★★
あじさいや雨の露天湯音もなし★★★★

●多田有花
雨あがり梅雨の茸の濡れて立ち★★★★
西瓜食ぶ頂点の甘きところより★★★
一週間おいて食べよとマスクメロン★★★

●広田洋一
片陰の途切れし所駐車場★★★
片陰に車を止めて野菜売★★★★
車の移動販売の野菜売りが、片陰の涼しいところで、店を広げている。色とりどりの夏野菜が目に浮かび。夏は、生き生きと新鮮なものに気持ちが涼やかになる。「片陰」が効いている。(高橋正子)

片陰に松葉ボタンのプランター★★★

●桑本栄太郎
老鶯のドライブインの朝餉かな★★★★
ハイウェイの谷を飾るや合歓の花★★★
老鶯や裏山せまる叔母の家★★★

●河野啓一
初蝉やデイの門にてお出迎え★★★
初蝉の静かな声を聞く朝★★★★
梅雨明けを待ちかねたるや蝉の声★★★

●古田敬二
暮れなずむそこだけ明るき合歓の花★★★
梅雨雲の稜線まで来る吉野線★★★★(正子添削)
(もとの句には、季語がありません。)

水蘚の香りの岸辺に鳴く老鶯★★★

7月8日(5名)
●谷口博望
織姫の年に一度の逢瀬かな★★★
梅雨寒やトリプル台風発生す★★★
噴水の大樹のごとく揺れており★★★★

●小口泰與
定刻や植田見回る老夫婦★★★
梅雨晴の上目づかいの小犬かな★★★
袋掛途中や忽と雨気付く★★★★

●河野啓一
薄日差す今朝の嬉しき梅雨晴れ間★★★★
鬱蒼と低き雲間の夏木立★★★
垣根沿い紫蘭咲けども孫は来ず★★★

●桑本栄太郎
崩れいる八重の梔子まだ匂う★★★
梅雨晴や病院バスの左折のみ★★★
青柿をかざす日射しや雨あがる★★★★

●多田有花
梅雨明けを待ちつつ茹でる玉蜀黍★★★(正子添削)
飛行機の音に重なる初蜩★★★
遠くより雨音が来る梅雨の森★★★★
上五の「遠くより」がいい。「森」を詠んで詩の言葉となった。それも「梅雨の森」である。写生の心を失わずに詩となったのである。(高橋信之)

7月7日(6名)

●谷口博望
蛍狩幼児の記憶今もなほ★★★
鮎くれし碁の友今はいづこかな★★★★
出目金や松の廊下をずいずいと★★★

●祝恵子
二種類の香りを立たせ百合の咲く★★★
笑い持つ胡瓜娘の手に渡されて★★★

初西瓜井戸のことなど母のこと★★★★
今年初めて西瓜を食べながら、昔は井戸で西瓜を冷やしたこと、そのころ子どもたちの中心にいた母のことなど思い出された。西瓜はそういった昭和の生活を思い起こさせるところがある。(高橋正子)

●小口泰與
滝つぼや馬の尿する牧の窪★★★
ランドセル忽と集いし蛇の殻★★★
走り来て杏を知らぬ園児かな★★★★

●河野啓一
カサブランカ咲いて今年も晴れやかに★★★★
庭さきの青柿しんと静まれる★★★
白南風の時季を待ちつつ留守居かな★★★

●広田洋一
台風の進路計りつ予定立つ★★★
台風一過心静まる青き空★★★★
物干場満艦飾の台風過★★★

●佃 康水
七夕の和菓子の出来て友招く★★★★
七夕の和菓子を手作りし、友を招く。七夕の和菓子は、七夕への思いがあって、童心に帰ったように、友と楽しいお茶の時間が持てたのだろう。よろこびたい。(高橋正子) 

小さき手の大き夢書く笹飾り★★★
庭箒ふと樹に触れて青時雨★★★

7月6日(4名)

●河野啓一
射干の朱くチラチラ窓越しに★★★★
青芝にゴール求めて球を蹴る★★★
ようやくに検査終わりぬ月見草★★★

●谷口博望
まんまるの風船葛灯を点し★★★
凌霄花地に落ちてなほ夢の中★★★
向日葵や壺の中なるゴッホの絵★★★★

●小口泰與
凌霄花や長き裾野へ雲一朶★★★
青田風田川滔滔流れける★★★★
から桃を枇杷と言うたる園児かな★★★

●上島祥子
橋からは瀧を目指して歩を速め★★★★
橋を渡れば、瀧へと一段と近づく。景色も変わって、瀧を訪ねる気持ちが逸る。歩く速度も早まる。瀧の様子を思い浮かべながらのこと。涼しさに出会うのも間もなくだ。(高橋正子)

夏の昼芝生広場の青々と★★★
向日葵の一輪夏を宣言す★★★

7月5日(4名)

●谷口博望
空蝉や青い地球のあるかぎり★★★★
空蝉をどう受け止めるかが問題だが、この句では、命の生まれたあとものという意味だろう。青い地球がある限り、命は生まれ続ける。(高橋正子)

尊きや命生まれし蝉の殻★★★
空蝉や同期の桜帰らざる★★★

●小口泰與
凌霄花や雲たたなわる赤城山★★★★
声こえの牧へ谺やほととぎす★★★
錬雲雀竹かご背負う老夫婦★★★

●広田洋一
青スイレン水の青きを滲みだせり★★★★
睡蓮の色はさまざまで、水色のような青色の睡蓮もある。水に浮かぶと、水の青さを滲ませたような感じだ。水に生れる花、睡蓮を観察してこそ見出したこと。(高橋正子)

一つずつ灯の点るごと未草★★★
ほいほいと顔出して笑む睡蓮かな★★★

●河野啓一
七月や笹に送られ車出る★★★
軒下に七夕竹を立てにけり★★★★
 戦後70年
七夕を祭るときなしその昔★★★

7月4日(3名)

●小口泰與
蓮沼や声の沸き立つ遊覧船★★★★
おりおりに鳥の鳴きける苔清水★★★
老いてこそ頼むは連れぞ風かおる★★★

●多田有花
向日葵が高く咲き初めし朝★★★★
朝の空に、向日葵がすっと伸びて、高く花をつけた光景に、心が洗われるような明るさがある。俳句は心境の詩。(高橋正子)

舗装路をすれすれに飛び夏燕★★★
お弁当広げる梅雨の頂に★★★

●谷口博望
半夏生散水中の薬草園★★★
時計草交番は今巡回中★★★
白粉花塀の向こうのテニス音★★★★

7月3日(5名)

●河野啓一
雑草をものともせずにミント伸び★★★
ハッカ飴香りは薄く空へ抜け★★★★
ハッカ飴を口に含むと、すうすうとして清涼感がある。薄荷の香りが、すうっと空へと抜けていく気分もまたいいものだ。(高橋正子)

薄荷油の歴史北見の記念館★★★

●広田洋一
風死せり吐息ばかりの運動場★★★
あちこちに行けど風死す吉田山★★★★
風死すやちょっと横になりにけり★★★

●小口泰與
山間の青き芥子をば知らざりき★★★
利根川を下り来し雲走馬灯★★★
病葉や町並み古りぬ中心街★★★★

●上島祥子
木曽川を越えて夏山引き寄せん★★★
完熟のトマト並べる直売所★★★

木漏れ日や林へ誘う夏の蝶★★★★
夏の蝶が誘いゆく先が林であるのが、うれしい。蝶は、木漏れ日に紛れ飛び、林へと誘ってくれた。(高橋正子)

●谷口博望
宝珠てふ美しき木槿の蕾★★★
ヘリの音風船葛密やかに★★★★
ヘリコプターの音が空の静寂を破っているが、風船蔓は、かわいらしい緑の風船たくさんつけている。ヘリの音とは別の世界。(高橋正子)

被爆樹の青桐今や花万朶★★★

7月2日(6名)

●福田ひろし
黒南風に暖簾の重く揺れにけり★★★★
黒南風は梅雨の陰鬱な空模様のときに吹く南風。じっとりと湿気を含んで、風が通る暖簾が「重く」揺れる。梅雨が明ければ、風が軽やかに暖簾を揺らすだろうに。(高橋正子)

北の地へ行きたし今日の合歓の花★★★
夏服の老女小さく蕎麦すする★★★

●河野啓一
ヒマラヤの空遥か蒼いけしの花★★★★
芥子粒のごとく吾ら宇宙に漂える★★★
ひなげしや色とりどりのロウ細工★★★

●桑本栄太郎
梅雨晴や嶺につらなる送電塔★★★★
梅雨晴になると、それまで雨や靄に煙っていた峰々の送電塔が、はっきりと見えるようになる。遠くまで連なる様子に、軽快な気持ちが湧く。(高橋正子)

白と黄の木槿垣根を教会へ★★★
忽然と嶺に明るき梅雨の月★★★

●小口泰與
籐椅子や強き日の差す山上湖★★★★
山上湖は、甲府のヘラ鮒つりで有名な湖だろうか。籐椅子にゆったりと座れば、山の日差しが強く届く夏の時間だ。(高橋正子)

あじさいやずぶ濡れの猫過ぎ行ける★★★
雨粒にたわむ葉っぱの菖蒲かな★★★

●多田有花
合歓の花の香り漂う朝の森★★★★
合歓の花の香りは、「朝の森」であれば、その香りはよりよく届いたことだろう。(高橋正子)

網持ちて夏茜追う夫婦かな★★★
風羅堂跡に咲いたる富士薊★★★

●谷口博望
美しき白鷺歩く潮干川★★★★
潮の引いた川の干潟に、白鷲が歩きながら餌を探している。一羽の白鷺が潮干川の涼しそうな夏の景色としている。(高橋正子)

兄弟で川へ遠出の鴉の子★★★
向日葵は花といふには似合わざる★★★

7月1日(7名)

●川名ますみ
髪を切る鏡の奥の夕焼雲★★★★
髪を切ってもらうとき、鏡の奥に映る夕焼雲のきれいなこと。鏡の中へ入ってあの夕焼雲のところへ行ってみたい気持ち。(高橋正子)

サンドレス病みし躰にこともなげ★★★
病める身を包みて明るサンドレス★★★
【添削】病める身を包みて明るいサンドレス

●広田洋一
黒き土白く乾けり酷暑かな★★★★
土の色の黒から白への変化は、酷暑による乾燥によるものだが、白い土はいかにも暑そうだ。 (高橋正子)

アスファルト湯気をたておる酷暑かな★★★
酷暑かな野菜冷やして凌ぎけり★★★

●桑本栄太郎
木槿咲く愁いの色と見る吾に★★★★
木槿には、真っ白いもの、宗旦木槿など、白い花の中心に赤い色のあるもの、薄紫や薄紅のものといろいろある。憂いの色と映ったのは、薄紫の色だろうか。 (高橋正子)

爪先のネイルアートやサンダルに★★★
梅雨晴れや遺跡に集う説明会★★★

●多田有花
一本は必ず倒れグラジオラス★★★★
グラジオラスの球根は、あまり根を深く張らず、花も多く重いためか、全部がまっすぐ立っていることは少ない。どれかが倒れている。梅雨の時期雨を受けているときは特にそんな様子が見れる。面白いことだ。 (高橋正子)

夏萩に揚羽蝶来る雨あがり★★★
七月の濁流見下ろし頂に★★★

●河野啓一
あわあわと合歓の大樹の明かりかな★★★★
合歓の大樹なればこそ、たくさんの花があって、その様子があわあわとしているのだろう。「あわあわ」に花の様子が目に浮かぶ。 (高橋正子)

友尋ぬ合歓の花咲く昼下がり★★★
孫ひ孫ねむの花咲く山路かな★★★

●小口泰與
夏つばめ一閃せりや波の上★★★★
一閃の「鋭さ」と、波の「やわらかさ」とが引き立てあって夏つばめの本質を言いえている。 (高橋正子)

掬いたる金魚の数の漏れもなし★★★
雨粒を並べ菖蒲の葉っぱかな★★★

●谷口博望
蟇の声安保法制許すまじ★★★★
「原爆ゆるすまじ」を叫んできたのに、またもや違憲と言われる安保法制を可決しようとしているが、これには、黙ってはおれない。「蟇の声」がやりきれない怒りを物語っている。難しい題材をよく詠んでいる。 (高橋正子)

楸の大樹高きに花と実と★★★
棚に同窓会の団扇かな★★★

●デイリー句会投句箱/6月21日~30日●


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※投句は、一日1回3句に限ります。
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今日の秀句/6月21日-30日


[6月30日]
★漁火の沖につらなり蚊帳の内/桑本栄太郎
海の見える家。開け放った部屋に蚊帳を吊り、寝ようとすれば、沖の漁火が涼やかに見える。夏の夜の故郷の美しい光景。(高橋正子)

[6月29日]
★清流の対岸揺れる合歓の花/多田有花
合歓の花は、山霧の湧く山中や川岸に咲き、どれも優しく夢見るようだ。けれども、清流の向こうの岸に咲き揺れる合歓の花が、一番、きよらかで、清々しい思いになるのではないだろうか。(高橋正子)

[6月28日]
★樗の実青々として遊園地/谷口博望
樗は栴檀の古名。樗の実は、真ん丸くて青く、花火のように実が散った様子だ。遊園地などでは、木陰を広げ、子どもたちを憩わせてくれる。「青々として」が涼やかだ。(高橋正子)

★雪渓に夕陽の朱の深まりぬ/川名ますみ
高山の渓間に残る雪は、夏山の魅力だ。周囲の山々が緑に覆われているのに、まだ残っている雪に感動する。この句は、夕陽が深く差し込み、あかあかと染まって荘厳なたたずまいの雪渓だ。(高橋正子)

[6月27日]
★早乙女や華やかに香る笠の中/迫田和代
田植えは、今はずいぶん機械化されて、早乙女が田植えをするのは、儀式や観光のためという場合が多い。たとえ、そんな場合にでも、笠を冠って顔もよく見えないようでも、どこか、ういういしい色香がただうものだ。(高橋正子)

★手のひらの天道虫を飛び立たす/小川和子
「飛び立たす」がいい。大空へ飛び立って欲しい作者の願いどおり、天道虫は手のひらから飛びたった。手のひらの上の小さな、うれしい出来事。(高橋正子)

[6月26日]
★噴水や木々に囲まれ水柱/広田洋一
緑の木々に囲まれた中に、真っ白く吹き上がる水の柱。目に清涼な雰囲気が漂い、一読さわやかになる句。
(高橋正子)

[6月25日]
★ポストあるこの路地が好き凌霄花/祝恵子
ポストは手紙を投函するためにあるが、昭和の雰囲気があって、特に生活の匂いのする路地などにあると懐かしさを誘う。凌霄花の花の明るさが、路地の明るさでもある。(高橋正子)

★梔子の花と向き合う水飲み場/上島祥子
水飲み場に梔子の花が咲いている。水を飲もうとするとき、ちょうど梔子の花と向き合うこととなって、花の匂いも吸い込む感じだ。水と梔子はどこか深いところで繋がっている。(高橋正子)

[6月24日]
★花合歓の白きがあると教えられ/河野啓一
白い色の合歓の花もあることは知らなかったが、You Tubeに白合歓の花がさぬき市で6月初めに咲いたという投稿があって、初めて見た。薄紅色の合歓とまた違った、神秘的で、少しさびしい花に思えた。四国霊場にあるのかと思うような白合歓だった。(高橋正子)

★触りては誉めそやしける花氷/広田洋一
料理屋になじみの者たちが集まって会食をしたのだろう。花氷があって、みなで触ったり、眺めたり、出来をほめそやしたり。和気藹藹とした華やかな雰囲気のなかで、花氷が一段と涼しく、きれいだ。(高橋正子)

[6月23日]
★香らせて香草畑の苗を抜く/古田敬二
最近は、家庭で作る料理も多様化し、香草を使うことも多くなった。敬二さんは香草を育てておられる。香草を摘もうとすると、すぐに匂い立ってくる。暑い夏には特にさわやかに感じる。(高橋正子)

★ざっと降りぴたと止みたり夏の雨/広田洋一
夏の雨の潔さ。ざっと降ったと思うと、ぴたっと止んで、青空を見せたりする。夏の雨の降り様をあっさりと詠み、句の内容とあっているのがよい。(高橋正子)

[6月22日]
★女学生の掛け声響く夏山路/谷口博望
女学生が掛け声をかけあって山路を登っている。夏の山路と女学生が若々しくて、さわやかだ。(高橋正子)

★老鶯の声満つ谷間名水汲む/佃 康水
名水の湧く谷間は、空気も水も澄んでいるのだが、その上に、老鶯がきれいな声を谷いっぱいに響かせてしきりに鳴いている。名水の湧く谷間が老鶯の声によって一段と素晴らしくなった。(高橋正子)

[6月21日]
★老鶯や大吊橋の軋みける/小口泰與
老鶯が妙なる声を響かせる谷川。大吊橋がかかり、渡ろうとすればギシと軋む。深山幽谷のような景色。(高橋正子)
30

6月21日~30日

6月30日(4名)

●小口泰與
夏つばめ畑に鍬ふる嫗にて★★★
笹の葉のささら波なる山清水★★★
紅ばらを買う少年の眉太し★★★★

●桑本栄太郎
大山の牧場(まきば)のアイス最中かな★★★
幼子の昼餉かしまし蠅入らず★★★

漁火の沖につらなり蚊帳の内★★★★
海の見える家。開け放った部屋に蚊帳を吊り、寝ようとすれば、沖の漁火が涼やかに見える。夏の夜の故郷の美しい光景。(高橋正子)

●川名ますみ
俎板に白子選るゆび梅雨寒し★★★
選り分けて伊佐木の白子涼しさへ★★★
汗ばみし後れ毛シュシュに掻き上げる★★★★

●広田洋一
万緑へ噴煙上げる箱根山★★★
万緑を少し削りて茶を喫す★★★

万緑を映せし池に鯉の水脈★★★★
万緑を映した池に鯉が水脈を立てて泳いでいる。穏やかで涼しそうな景色です。(高橋正子)

6月29日(4名)

●小口泰與
老鶯や舟化粧せり山上湖★★★
真昼間の蟻の行列軒下へ★★★
ほととぎす沼のおちこちほしいまま★★★★

●桑本栄太郎
深梅雨やアガパンサスの雨催い★★★
赤子泣く夜の団地や梅雨の雷★★★
桑の実や想い出遠き母なれば★★★★

●多田有花
雨上がり車内清掃梅雨最中★★★
草野球試合の後の生ビール★★★

清流の対岸揺れる合歓の花★★★★
合歓の花は、山霧の湧く山中や川岸に咲き、どれも優しく夢見るようだ。けれども、清流の向こうの岸に咲き揺れる合歓の花が、一番、きよらかで、清々しい思いになるのではないだろうか。(高橋正子)
..
●谷口博望
カンナ燃ゆ静御前の舞のよう★★★
凌霄や島恋唄の聞こえくる★★★★
松陰の幽閉の時辛夷の実★★★

6月28日(6名)

●小口泰與
あけぼのの早苗南へ靡きけり★★★
鳥声と瀬音の中の氷水★★★
青き靴履きて夏野を駆くるかな★★★★

●河野啓一
虎尾草の咲いて一面優しかり★★★★
草刈りて露に濡れたる鋏かな★★★
伊勢志摩の夕べ香れや合歓咲いて★★★

●谷口博望
大合歓の木陰に花の透き通る★★★
川流れ雨の悟桐や花万朶★★★

【原句】遊園地青々として樗の実
樗の実青々として遊園地★★★★(正子添削)
樗は栴檀の古名。樗の実は、真ん丸くて青く、花火のように実が散った様子だ。遊園地などでは、木陰を広げ、子どもたちを憩わせてくれる。「青々として」が涼やかだ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
遠雷となり深みゆく眠りかな★★★★
七日目の車窓に見ゆや青田原★★★
梅雨冷や葉擦れさらさら音たてて★★★

●上島祥子
消毒を終えて切子の指に鳴る★★★★
梅雨の窓和柄のブックカバーの娘★★★
五月雨がかき消す内緒話かな★★★

●川名ますみ
雪渓に夕陽の朱の深まりぬ★★★★
高山の渓間に残る雪は、夏山の魅力だ。周囲の山々が緑に覆われているのに、まだ残っている雪に感動する。この句は、夕陽が深く差し込み、あかあかと染まって荘厳なたたずまいの雪渓だ。(高橋正子)

梅雨晴の暮れゆく雲の朱激し★★★
梅雨晴のベイブリッジと富士窓に★★★

6月27日(7名)

●谷口博望
 広島大学病院キャンパスにて
キャンパスの遠目に灯る泰山木★★★
キャンパスの山桃熟れてこぼれけり★★★★
キャンパスの鈴懸の実に墜栗花雨★★★

●迫田和代
早乙女や華やかに香る笠の中★★★★
田植えは、今はずいぶん機械化されて、早乙女が田植えをするのは、儀式や観光のためという場合が多い。たとえ、そんな場合にでも、笠を冠って顔もよく見えないようでも、どこか、ういういしい色香がただうものだ。(高橋正子)

草の中動く光や蛍かな★★★
細い雨蓮の浮葉に円い玉★★★

●小口泰與
夏霧の沸き立つ中や鳥の声★★★
病葉や草に沈みし道祖神★★★
五月晴父の形見の杖軽し★★★★

●小川和子
青田今眩しきほどの頃合いに★★★
葉隠れに花を抱けり泰山木★★★

手のひらの天道虫を飛び立たす★★★★
「飛び立たす」がいい。大空へ飛び立って欲しい作者の願いどおり、天道虫は手のひらから飛びたった。手のひらの上の小さな、うれしい出来事。(高橋正子)

●多田有花
車窓より犬が顔出す梅雨晴間★★★★
したたかに蚊に喰われたる夕べかな★★★
紫陽花のいきいきとして雨の降る★★★

●祝恵子
鬼門という茂りより飛ぶ揚羽蝶★★★
梅雨曇りとうがんの花授粉する★★★
夏野菜夫の手書きのスケジュール★★★★

●桑本栄太郎
梅雨冷えやアガパンサスの花の色★★★
桑の実や想い出遠き母のこと★★★
早や風呂を終えて甚平袖通す★★★★

6月26日(4名)

●谷口博望
 動物園三態
エッサッサ走る駝鳥や風薫る★★★★
姐さん坐りのキリンや夏の草★★★
凌霄やインコの鳥語かしましき★★★

●小口泰與
夏霧の白樺林包みける★★★★
あけぼのの牧に谺や時鳥★★★
ほととぎす湖へよこたう谺かな★★★

●広田洋一
噴水や水芸のごとリズム変へ★★★
噴水のライトアップに夜の虹★★★

噴水や木々に囲まれ水柱★★★★
緑の木々に囲まれた中に、真っ白く吹き上がる水の柱。目に清涼な雰囲気が漂い、一読さわやかになる句。
(高橋正子)

●桑本栄太郎
夕暮れて黒雲集い梅雨の雷★★★
夏草や売地看板見えもせず★★★
戻り来て汗の噴き出す昼下り★★★★

6月25日(6名)

●谷口博望
雲を買う時代となるや蟇★★★
短夜や読み返したる「こころ」かな★★★
風薫るアガパンサスの散歩道★★★★

●小口泰與
甘酒や山ふところの野天風呂★★★★
冷酒やちらちら小犬我を見し★★★
夏ひばり水田へ声の横たわる★★★

●広田洋一
氷室てふ真白き餅に若葉添へ★★★★
給与前妻と分け合ふ水羊羹★★★
金平糖異国の想ひ散りばめる★★★

●祝恵子
ポストあるこの路地が好き凌霄花★★★★
ポストは手紙を投函するためにあるが、昭和の雰囲気があって、特に生活の匂いのする路地などにあると懐かしさを誘う。凌霄花の花の明るさが、路地の明るさでもある。(高橋正子)

切り戻す夏花バケツに入れてゆく★★★
【原句】学童の笑いつ帰る梅雨じめり★★★
【添削】学童の笑いつつ帰る梅雨じめり(正子添削)
「つ」と「つつ」は意味が違うので、辞書でご確認を。

●上島祥子
胡瓜棚巻かれる蔓の勢いに★★★
紫陽花の溢れた萼に残る青★★★

梔子の花と向き合う水飲み場★★★★
水飲み場に梔子の花が咲いている。水を飲もうとするとき、ちょうど梔子の花と向き合うこととなって、花の匂いも吸い込む感じだ。水と梔子はどこか深いところで繋がっている。(高橋正子)

●桑本栄太郎
黒雲の雨とはならず夕焼に★★★★
花びらの萎れピンクや額の花★★★
蘂の黄や開ききつたる花南天★★★

6月24日(6名)

●谷口博望
山路来て雲霓橋(うんげいばし)の花空木★★★★
  雲霓橋:雲と虹の橋
合歓の花孫の手に来る鵞鳥かな★★★
幼日のこと思い出す井守かな★★★

●小口泰與
桑の実や幼き時の塗り絵帳★★★★
水柱立つや田んぼの通し鴨★★★
あけぼのの田へ滑空の軽鴨の水脈★★★

●河野啓一
花合歓の白きがあると教えられ★★★★
白い色の合歓の花もあることは知らなかったが、You Tubeに白合歓の花がさぬき市で6月初めに咲いたという投稿があって、初めて見た。薄紅色の合歓とまた違った、神秘的で、少しさびしい花に思えた。四国霊場にあるのかと思うような白合歓だった。(高橋正子)

苑の池蜻蛉生まれし物語★★★
大橋を渡りきりたる讃岐富士★★★

●広田洋一
花氷閉じ込められて花哀れ★★★
料理屋の粋の見せどこ花氷★★★

触りては誉めそやしける花氷★★★★
料理屋になじみの者たちが集まって会食をしたのだろう。花氷があって、みなで触ったり、眺めたり、出来をほめそやしたり。和気藹藹とした華やかな雰囲気のなかで、花氷が一段と涼しく、きれいだ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
<沖縄戦追悼式典より>
記念碑の礎(いしじ)と云うや炎暑来る★★★★
夢なれば人に話せず昼寝覚★★★
温度差のこの世となりぬ炎暑来る★★★

●古田敬二
鍬引けばジャガイモ太りいる気配★★★
鍬打てば土からジャガイモこぼれ出る★★★
ゆっくりと陽を巻き込んでいるレタス★★★★

6月23日(5名)

●谷口博望
父の日のピンクのシャツに若返る★★★
父の日に似顔絵孫に貰ひけり★★★★
心太今日はスッキリ休肝日★★★

●古田敬二
夏木立リコーダーはマルセリーノ★★★
香らせて香草畑の苗を抜く★★★★
最近は、家庭で作る料理も多様化し、香草を使うことも多くなった。敬二さんは香草を育てておられる。香草を摘もうとすると、すぐに匂い立ってくる。暑い夏には特にさわやかに感じる。(高橋正子)

露のありどんな小さな葉の先も★★★

●小口泰與
眼間の花に声沸く青き芥子★★★★
風音と瀬音にまさる河鹿かな★★★
山風や光こぼして未央柳★★★

●広田洋一 
ざっと降りぴたと止みたり夏の雨★★★★
夏の雨の潔さ。ざっと降ったと思うと、ぴたっと止んで、青空を見せたりする。夏の雨の降り様をあっさりと詠み、句の内容とあっているのがよい。(高橋正子)

夏の雨椅子にもたれて眺めけり★★★
川向う近づいて来る夏の雨★★★

●桑本栄太郎
濯ぎもの花と開きし梅雨ごもり★★★
梅雨雲のぽつかり穴の青空に★★★★
草を引くことも奉仕や礼拝に★★★

6月22日(6名)

●谷口博望
女学生の掛け声響く夏山路★★★★
女学生が掛け声をかけあって山路を登っている。夏の山路と女学生が若々しくて、さわやかだ。(高橋正子)

滝を背にオブジェの踊る名所跡★★★
凌霄やオカリナの音の聞えくる★★★(正子添削)

●小口泰與
人びとの見知らぬ花や青き芥子★★★
青芥子にすっぽり入るや夏の蝶★★★★
花あやめ映れる水の面かな★★★

●佃 康水
老鶯の声満つ谷間名水汲む★★★★(正子添削)
名水の湧く谷間は、空気も水も澄んでいるのだが、その上に、老鶯がきれいな声を谷いっぱいに響かせてしきりに鳴いている。名水の湧く谷間が老鶯の声によって一段と素晴らしくなった。(高橋正子)

印刷紙重なり出づる梅雨湿り★★★
紅と黄と橋が分けたる睡蓮花★★★(正子添削)

●桑本栄太郎
金枝梅ゆらし発車や路線バス★★★
乗り換えの駅のホームや燕の子★★★★
梅雨の雷去つて暮れゆく茜かな★★★

●多田有花
雲晴れて際立つ半夏生草の白★★★
植田中ナビ案内で走りけり★★★★
夏至や今日日差しなきまま日の暮れる★★★

●古田敬二
噴水も戦争反対高く噴く★★★
Nor Warの唱和に噴水噴き上がる★★★
No Warの隊列薄暑の街を行く★★★★

6月21日(4名)

●小口泰與
老鶯や大吊橋の軋みける★★★★
老鶯が妙なる声を響かせる谷川。大吊橋がかかり、渡ろうとすればギシと軋む。深山幽谷のような景色。(高橋正子)

貝を焼く浜辺の小屋や柿の花★★★
蟇蛙瀬の音よりも勝りけり★★★

●多田有花
テニスコートに出れば梅雨雲の迫る★★★
朝の窓に雨滴たっぷり梅雨半ば★★★
夏葱を刻み冷凍にする夕べ★★★★

●谷口博望
青桐や禍津日神(まがつひのかみ)忘れまじ★★★
煙の木薄むらさきの風薫る★★★★
カンナ咲きたくましき葉は山の如★★★

●桑本栄太郎
ふと見上ぐ朝の鏡や父の日に★★★★
奔流となりて鴨川梅雨の荒れ★★★
金枝梅ゆれて発車の路線バス★★★

●デイリー句会投句箱/6月11日~20日●


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今日の秀句/6月11日-20日

[6月20日]
★早苗田の香り届くや道の駅/上島祥子
道の駅に立ち寄ると、早苗田の、覚えある匂いがしてくる。道の駅は、近隣の野菜や、手作りの漬物やジャムなどが売られて立ち寄るのも楽しみなところだ。早苗の育つ季節を楽しむ明るい句だ。(高橋正子)

★夏日さす朴の葉蔭に憩いけり/桑本栄太郎
夏日が真上から差す日は、歩いていて葉蔭があれば救われる。大きな朴の葉蔭であれば、しばし安心して憩える。(高橋正子)

[6月19日]
★朝の雨紫陽花少し光りおり/河野啓一
生き生きとした雨の紫陽花というよりも、「かそけき光」の紫陽花が詠まれている。紫陽花色が光に滲んだような優しい句だ。(高橋正子)

[6月18日]
★石榴咲き被爆川行く遊覧船/谷口博望
平和を象徴するような「遊覧船」と被爆を象徴するような「石榴咲き」との対比がいい。無理のない「対比」がいいのだ。(高橋信之)

[6月17日]
★説教に充たさる帰路の青葉風/小川和子
身に染む説教はなかなか聞けないものだが、説教に充たされた心には、帰路の青葉風が快く身を吹く。(高橋正子)

★竹林の青葉闇ゆく路線バス/桑本栄太郎
竹の多い京都にお住いの作者。路線バスも竹林を抜ける。竹林の「青葉闇」も、みやびやかな雰囲気だ。
(高橋正子)

★田植え済み湯で笑い合う百姓ら/福田ひろし
百姓にとって、田植えは最大の農事。無事に田植えが済み、慰労の湯だろう。朗らかな声を湯に響かせて笑い合って、話をしている。笑い声を相伴にあずかると、朗らか気持ちに。共に田植えを済ませた気分にも。(高橋正子)

[6月16日]
★渓の雨おりおり強し山女釣/小口泰與
「おりおり強し」が渓の雨の降り具合をよく表している。渓流釣りは、釣りだけでなく、渓流の風景を楽しむことも大いにあるのだろう。(高橋正子)

[6月15日]
★子も真似て丸ごと食す香魚かな/小口泰與
鮎は香魚とも書かれるが、口にすると、ほのかないい匂いに気づく。腸のほろ苦さもいい。子どもが鮎は丸ごと食べるのが流儀と、大人をまねて、ちょっと大人びた気持ちで食したのであろう。(高橋正子)

[6月14日]
★紫陽花の青解き放つ寺の空/上島祥子
紫陽花が、自分の色を「解き放つ」という感覚が素晴らしい。静かな寺の庭。紫陽花は、空に向かって伸びやに、青という自分の色を解き放っている。寺という場所がそうさせている。(高橋正子)

★船虫や舟近づけば逃げ散りぬ/広田洋一
船虫は、ものの気配に敏感で、何かが近づこうものならば、一目散に逃げ散る。近づいた舟は釣りのための舟だろうか。何気ない詠み方だが、夏の磯岩の風景が生き生きと思い描ける。(高橋正子)

[6月13日]
★梅雨兆す竿竹売りの女声/内山富佐子
竿竹売りは、いつの季節でもよさそうだが、梅雨の走りのころの竿竹売りの声は印象に残っている。竿竹売りの声が今の季節にぴったりで、この句では、竿竹売りが女声というのが、今風だ。(高橋正子)

[6月12日]
夏つばめ山影映す田をかすめ/河野啓一
山影を映してひんやりとした田の面。その田の上を、時には田の水をかすめるように飛び、自在な動きを見せている。夏つばめの颯爽と飛ぶ姿がいい。(高橋正子)

★梅雨空の雲の絶え間に鳥の声/広田洋一
梅雨空に広がる雲の間にも、少し青空がのぞく。その雲の絶え間から鳥の声が漏れてくる。梅雨空はうっとうしいばかりではない。こんな明るい気持ちにさせてくれる時もある。丁寧な観察がよい。(高橋正子)

[6月11日]
★田水満ち忽と水輪の水澄し/小口泰與
満々と水を湛えた田は、見るものをのびやかにさせてくれる。田水が満ちている風景に気をいっていると、水澄ましがゆうゆうと水輪を作って泳いでいるではないか。すっとぼけたように現れた水澄ましは、驚きである。(高橋正子)