今日の秀句/2月11日-20日


[2月20日]

★ほっこりと野の香の立ちて蓬餅/佃 康水
「ほっこりと」に、なごまされる。蓬餅の蓬の香りは、春の野の香りといってよい。蓬餅もまるまるとして、手作りの良さが見えておいしそう。(高橋正子)

[2月19日]

★沈みゆく日を見送りて春の橋/祝恵子
「沈みゆく日」には人はどこか感傷的な気持ちを持つが、この句はもっと自然体で、沈む日を心に収めつつ見送っているのがいい。日が永くなった春の橋は、沈む日の始終をよく見せてくれる。(高橋正子)

★さまざまの花芽蕾に春の朝/川名ますみ
さまざまな花芽が気づくと蕾になって、膨らんでいる。朝なので、「一夜にして蕾になった」ような気持もするのだろう。うれしいことだ。(高橋正子)

[2月18日]

※該当作品なし

[2月17日]

★日脚伸ぶ鳥は枯木の懐に/河野啓一
枯木には日が暖かそうに差し込んで、その中に鳥が遊んでいるのがよく見える。枯木のふところに居て、鳥は自由だ。(高橋正子)

[2月16日]

★飛び発ちて何処へ消えし春の鳥/河野啓一
枝移りする春の鳥を眺めていたら、飛び発ってしまった。何処へ消えてしまったのだろう。春の鳥へ慈しみ。(高橋正子)

★ごつごつと触れ合う船や春の潮/古田敬二
ゆったりと流れる春の潮もあるけれど、春一番などの風が吹くと潮が荒れる。繋いである船が船体と船体をぶつけて「ごつごつ」という音を立てる。それがリアルに詠まれている。(高橋正子)

[2月15日]

★青麦や光り弾くる鳩の胸/小口泰與
鳩の胸は丸く出っ張って、光りを虹色に弾いていることがある。麦はあおあおと光りを反射させ、風は寒くとも、光りは強く春本番へと近づいている。(高橋正子)

[2月14日]

★神護寺へ長き石段春淡し/多田有花
「神護寺」に私は参ったことはないが、その奥の方には栂尾「高山寺」があって、一度は行ってみたい寺である。京都高雄山の中腹にある紅葉の名所と知られ、日本寺院の中でもの重要な寺とされる。長い石段に覆いかぶさるような紅葉の写真からみると、古びた長い石段を上りつつ「春淡し」が身に感じられてくる。(高橋正子)

[2月13日]

★広い野に膨らみかけた蕗の薹/迫田和代
蕗の薹は山水のしみ出るところ、庭の片隅、野原にも蕗の薹がある。広い野に膨らみかけた蕗の薹は、空に憧れて花を咲かせようとしている風にも見える。心が広々となる句。(高橋正子)

★春泥をき踏み散らし来る孫二人/河野啓一
男のお孫さんの、中学生か、高校生を想像する。二人が元気よく、春泥も厭わず、春泥を踏み散らしてやってくる。飾り気がなくて、溌剌とした行動が頼もしい。(高橋正子)

[2月12日]

★テレビには雪山窓に梅蕾/河野啓一
テレビには凛とした雪山が映し出され春は遠いと見えるが、私の傍近くの窓には、梅の蕾が膨らんで、咲きそうである。日本列島、こうも季節が違うものか。(高橋正子)

[2月11日]

★茎立や菜園それぞれ仕切らるる/桑本栄太郎
菜園のに蕪やあぶら菜の薹が立って、あちこちにすっくと茎が伸びている。その茎立った様子を見れば、一目瞭然菜園が仕切られているのが分かる。早春の景色。(橋正子)

2月11日~20日


2月20日(6名)

●小口泰與
たらの芽や淵に佇むてんから師★★★
釣人の魚籠あふれけり蕗の薹★★★★
安曇野の畦の雪間に蕗の薹★★★

●小川和子
日当たれば幹温かき欅かな★★★★
日の少し差し込む藪の紅椿★★★
長閑さに莟ほのぼの枝だれ梅★★★

●多田有花
小綬鶏に呼ばれて窓を開けにけり★★★★
春眠をたっぷりとって風邪癒す★★★
春の雨更地となりし河川敷★★★

●古田敬二
ランナーの足音梅の咲き初むる★★★
豊かなり地にイヌフグリ枝に梅花★★★
蜜を吸うメジロとしばし遊びけり★★★★

●佃 康水
河原鶸零れて葦に啼きたつる★★★
ほっこりと野の香の立ちて蓬餅★★★★
「ほっこりと」に、なごまされる。蓬餅の蓬の香りは、春の野の香りといってよい。蓬餅もまるまるとして、手作りの良さが見えておいしそう。(高橋正子)

車窓より火事丸見へに冴え返る★★★

●上島祥子
梅枝の二心無く青空へ★★★
雪残る天満宮への路静か★★★
御嶽に向き合い座る春テラス★★★★

2月19日(4名)

●小口泰與
耕やダックスフント駆け抜けし★★★
犬ふぐりプラネタリウム出づる吾子★★★
鳥交る芝にあまねく日の差しぬ★★★★

●祝恵子
薄氷やバケツのヒシャク持てば割れ★★★
沈みゆく日を見送りて春の橋★★★★
「沈みゆく日」には人はどこか感傷的な気持ちを持つが、この句はもっと自然体で、沈む日を心に収めつつ見送っているのがいい。日が永くなった春の橋は、沈む日の始終をよく見せてくれる。(高橋正子)

春の鳥尾をひくひくと切り株に★★★

●古田敬二
春野行く故郷の夢見し朝★★★
春風の音せぬほどに梢揺れ★★★★
春の海三角波に風遊ぶ★★★

●川名ますみ
さまざまの花芽蕾に春の朝★★★★(正子添削)
さまざまな花芽が気づくと蕾になって、膨らんでいる。朝なので、「一夜にして蕾になった」ような気持もするのだろう。うれしいことだ。(高橋正子)

川縁の小さき梅苑白満つる★★★
しだれ梅萼の裏にも蕾あり★★★

2月18日(2名)

●小口泰與
川風のいまだ硬しや牡丹の芽★★★★
産土の砂利懐かしき蜆汁★★★
噴煙の先の細きや冴返る★★★

●多田有花
快晴の明石海峡春早し★★★
春の野を朝日に向かい新幹線★★★
春朝日白鷺城を薔薇色に★★★★

2月17日(4名)

●河野啓一
日脚伸ぶ鳥は枯木の懐に★★★★
枯木には日が暖かそうに差し込んで、その中に鳥が遊んでいるのがよく見える。枯木のふところに居て、鳥は自由だ。(高橋正子)

春昼の枯れ木に遊ぶ鳥の影★★★
梅が香や南部(みなべ)紀の国海青し★★★

●小口泰與
産土の鍋割山(なべわり)雪消鳥の声★★★
畑打や猫の足跡点点と★★★
下萌や里は寒風なお残り★★★★

●多田有花
廃屋の取り壊されて春寒し★★★★
春あられ年金引き出す人の列★★★
春の風邪鼻炎カプセル服用す★★★

●谷口博望 (満天星)
肩に触れ被爆柳や千羽鶴
肩に触る被爆の柳千羽鶴★★★★(正子添削)
ピーヒャラと鳶舞いたる日永かな★★★
手をつけば鯉の旋回水温む★★★

2月16日(4名)

●小口泰與
噴煙の見ゆる溶岩道すみれ咲く★★★★(正子添削)
朝晩の御勤めの如蜆汁★★★
摘草や子のスカートの揺れかすか★★★

●河野啓一
飛び発ちて何処へ消えし春の鳥★★★★
枝移りする春の鳥を眺めていたら、飛び発ってしまった。何処へ消えてしまったのだろう。春の鳥へ慈しみ。(高橋正子)

冴えかえる朝の生駒のあざやかに★★★
チューリップ伸び来る若葉やわらかに★★★

●桑本栄太郎
春眠の目覚め夢追い又ゆめに★★★
雲奔り雲影走る春の嶺★★★
目刺焼きひとり夕餉や妻の留守★★★★

●古田敬二
ごつごつと触れ合う船や春の潮★★★★
ゆったりと流れる春の潮もあるけれど、春一番などの風が吹くと潮が荒れる。繋いである船が船体と船体をぶつけて「ごつごつ」という音を立てる。それがリアルに詠まれている。(高橋正子)

立春や過る小鳥の羽透ける★★★
枝渡る鳥影多し春立つ日★★★

2月15日(3名)

●小口泰與
青麦や光り弾くる鳩の胸★★★★
鳩の胸は丸く出っ張って、光りを虹色に弾いていることがある。麦はあおあおと光りを反射させ、風は寒くとも、光りは強く春本番へと近づいている。(高橋正子)

前向ける尾長の嘴や春の土★★★
春の日や会釈なき子へ手を振りぬ★★★

●河野啓一
青年の合格を喜びて
大和なる明日香の里の初音かな★★★★
薄日さす二月はもはや半ば過ぎ★★★
冴えかえる池の氷の鈍き色★★★

●桑本栄太郎
姦しき田面の天(そら)や揚ひばり★★★★
屈みこみ一頻り愛づ犬ふぐり★★★
止まりて春の楽聞く小川かな★★★

2月14日(5名)

●古田敬二
反芻の黒牛の背に春陽濃し★★★
青き踏み放牧牛ののしのしと★★★
木蓮の蕾の向こうの空広し★★★★

●小口泰與
梢より落ち来るものよ牡丹雪★★★★
春の暮採餌に尾長来りける★★★
噴煙の先や真鳥の春の山★★★

●多田有花
神護寺へ長き石段春淡し★★★★
「神護寺」に私は参ったことはないが、その奥の方には栂尾「高山寺」があって、一度は行ってみたい寺である。京都高雄山の中腹にある紅葉の名所と知られ、日本寺院の中でもの重要な寺とされる。長い石段に覆いかぶさるような紅葉の写真からみると、古びた長い石段を上りつつ「春淡し」が身に感じられてくる。(高橋正子)

春の空錦雲渓の底に光る★★★
バレンタインデー終日風の音高し★★★

●桑本栄太郎
山裾の里のけぶりて揚ひばり★★★★
あるが儘咲いて競える野梅かな★★★
バレンタインデー愛は誤解と知りつつも★★★

●谷口博望(満天星)
梅見茶屋水琴窟の音を聴き★★★
梅咲いて久々に聞く孫の声★★★★
春一番からす毅然と橋の上★★★

2月13日(4名)

●小口泰與
春の鳥句会仲間と居るごとし★★★★
眠ぶさたの昼や畦道揚ひばり★★★
のったりと横たわりたる春の昼★★★

●迫田和代
広い野に膨らみかけた蕗の薹★★★★
蕗の薹は山水のしみ出るところ、庭の片隅、野原にも蕗の薹がある。広い野に膨らみかけた蕗の薹は、空に憧れて花を咲かせようとしている風にも見える。心が広々となる句。(高橋正子)

雨の中負けるものかと鶯や★★★
梅の花香りしらじら花も白★★★

●河野啓一
春泥をき踏み散らし来る孫二人★★★★
男のお孫さんの、中学生か、高校生を想像する。二人が元気よく、春泥も厭わず、春泥を踏み散らしてやってくる。飾り気がなくて、溌剌とした行動が頼もしい。(高橋正子)

春衣着せてマネキン若くなり★★★
春昼やどら焼きを手に舟を漕ぐ★★★

●桑本栄太郎
さみどりも赤きもありぬ新芽立つ★★★
野梅咲き遠きふるさと想い見る★★★★
野に立つや高き天なる揚ひばり★★★

2月12日(5名)

●河野啓一
テレビには雪山窓に梅蕾★★★★(正子添削)
テレビには凛とした雪山が映し出され春は遠いと見えるが、私の傍近くの窓には、梅の蕾が膨らんで、咲きそうである。日本列島、こうも季節が違うものか。(高橋正子)

杯を挙ぐ建国日なり青山河★★★
樹の洞に小鳥連れ立ち水を飲む★★★

●谷口博望 (満天星)
下萌や落ちて朽ちたる金鈴子★★★
春の風朽ちて破れし朴落葉★★★★
朽ちつつも二月の空の茨の実★★★

●小口泰與
払いてもとび来る虻ぞ浮子沈む★★★
小座布団ならぶ茶店や梅の花★★★
紅梅やほっと茶柱立ちにける★★★★

●多田有花
早春の人影まばらな高山寺★★★
お抹茶をいただく余寒の高山寺★★★
トレイルを歩き二月の池に出る★★★★

●桑本栄太郎
芽柳の青き枝垂れや小畑川★★★★
まんさくの青き空へと見上げ居り★★★
うらうらと歩む街道菜の花忌★★★

2月11日(5名)

●小口泰與
境内の一隅照らす梅の花★★★
隠れ沼へ一目散の雉子かな★★★
亀鳴くや非通知電話かかり来る★★★

●谷口博望(満天星)
春きざす猿の手温め確かなり★★★
春淡しさざ波光る被爆川★★★
川面照り顔ぶれ変る今日の鴨★★★★

●河野啓一
春温し縄文土偶のほほえみて★★★★
杯を挙げて談笑春の午後★★★
せせらぎは春を流れて水車へと★★★

●祝恵子
広き空求めて凧は高くあり★★★★
婆の木という椿の札に苦笑する★★★
降雪機子らにそそぎて春広場★★★

●桑本栄太郎
茎立や菜園それぞれ仕切らるる★★★★
菜園のに蕪やあぶら菜の薹が立って、あちこちにすっくと茎が伸びている。その茎立った様子を見れば、一目瞭然菜園が仕切られているのが分かる。早春の景色。(橋正子)

春禽の見えざる枝を探しけり★★★
紅梅のいつも青空丘の梅★★★

●自由な投句箱/2月1日~10日●


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今日の秀句/2月1日-10日


[2月10日]

★日差し背に初の蓬を摘み飽かず/佃 康水
暖かい日差しを背なにして、今年初めての蓬摘み。やわらかい蓬を摘み始めると、摘むことがうれしくてどんどん摘んでします。草餅になる蓬だろうか。(高橋正子)

★耕せば黒き光の畑となる/古田敬二
「耕す」が春の季語。元の句は切れが二つあるので添削した。耕すと、掘り返された黒々とした土が現れる。次第に強くなってきた春の光に塗れて、「黒き光の畑」となった。これからの種まきや植え付けが楽しみ。(高橋正子)

[2月9日]

★枕辺のひかりは借りし黄水仙/川名ますみ
早春のひかりはことにうれしいものだ。暖かい春を待ちわびながら、早春に咲きだす黄水仙に心躍らせる人も多いだろう。枕辺に明るいひかりを撒く黄水仙に気持ちは外へ、ひかりへと向く(高橋正子)

[2月8日]

★水温むえびや目高を掬う子ら/河野啓一
水が温んだのをいち早く知るのは、えびや目高だろう。次に知るのは子どもたちであろう。少し暖かくなると、子どもたちは、水辺でえびや目高を掬ってあそぶ。水温むよい季節が来た。(高橋正子)

[2月7日]

★栴檀の天つつぬけて余寒かな/満天星
高木となった栴檀は冬は葉をすっかり落とし、花火のように散らばる実も大方落ちている。高々と聳える天は、筒抜けに晴れている。それだけに余寒が身に沁みる。(高橋正子)

★薪を割る音響きおり春の山/多田有花★★★★
早春の肌寒さに、暖房もまだまだ必要。薪ストーブや、竈や風呂に使われる薪かもしれないが、春の山に薪を割る音が響く。人の生活が生活が感じられる春の山は、生き生きとしている。(高橋正子)

[2月6日]

★野火走り黒い野に待つ春色を/迫田和代
野焼きの火が走り、野が黒々と焼き尽くされると、やがて、そこから草草のみどりの芽が伸びる。一面春の野となる。それを今から楽しみに待っている。いい時間を過ごされている。(高橋正子)

★池多き東播磨や春はじめ/多田有花
雨が少ない瀬戸内、なかでも讃岐平野や向いの東播磨もため池が多い。その池が陽光を跳ね返すと、春が来たと思う。(高橋正子)

[2月5日]

★立春のひかり眩しきかもめかな/谷口博望(満天星)
風はまだまだ冷たくても、立春となれが、太陽の光はずいぶん強くなっている。白い鴎に光が当たり眩しいほど。やはり、春だ。(高橋正子)

[2月4日]

★花桃のま直ぐに挿され凛として/河野啓一
花桃は花を観賞するために作られたもので、庭木に植えられるようだが、新暦の雛祭りに飾られる桃の花は、真直ぐな茎に丸く濃い桃色の花蕾が付く。かわいいというより、寒さの中では凛とした感じを受けるのだろう。(高橋正子)

[2月3日]

★嶺の端の群青色や寒の果/桑本栄太郎
嶺の端は、山の稜線あたり。見るものの気持ちによるもであろうが、寒が果てたと思うと、嶺の稜線が群青色にくっきりとしてくる。(高橋正子)

[2月2日]

★黒檜嶺も鍋割山も雪催い/小口泰與
「黒檜嶺」と「鍋割山」も民話を思い起こさせる山の名前。「雪催い」の今日は、民話の世界に紛れ込んだ気持ちになる。(高橋正子)

[2月1日]

★白腹に会う春近き森の道/多田有花
春近い森の道で、小鳥に出会うと何か楽しい気持ちになる。冬鳥の白腹が落葉を散らして餌をあさっていたのだろうか。(高橋正子)

2月1日~2月10日


2月10日(7名)

●小口泰與
春荒や遊技場より出づる顔★★★
鐘鳴りてぽとりと落ちし椿かな★★★
囀りや同胞の卓はや灯る★★★★

●谷口博望(満天星)
息こらし日を浴びながら福寿草★★★
烏瓜蝋梅の木に朽ちにけり★★★
春の風被爆柳を吹き抜けて★★★★

●多田有花
春浅き海辺の町へ蟹食べに★★★
残雪の峠を越えて但馬へと★★★
春寒の万年筆が吸うインク★★★★

●河野啓一
すみれ咲く門辺の鉢の小さくて★★★★
むらさきと黄の取り合わせかな菫草★★★
残雪を惜しむやひとは高みへと★★★

●桑本栄太郎
嶺を越え里から街へ春しぐれ★★★
むらさきの小枝潤めり春の雨★★★★
花落ちて乙女椿と知りにけり★★★

●佃 康水
日差し背に初の蓬を摘み飽かず★★★★
暖かい日差しを背なにして、今年初めての蓬摘み。やわらかい蓬を摘み始めると、摘むことがうれしくてどんどん摘んでします。草餅になる蓬だろうか。(高橋正子)

受験子の微妙と小さく言うて去り★★★
牧場へと顔上げ上る梅見坂★★★

●古田敬二
耕せば黒き光の畑となる★★★★(正子添削)
「耕す」が春の季語。元の句は切れが二つあるので添削した。耕すと、掘り返された黒々とした土が現れる。次第に強くなってきた春の光に塗れて、「黒き光の畑」となった。これからの種まきや植え付けが楽しみ。(高橋正子)

大根抜く地球の恵みの太さかな★★★
陽の温み溜めて芽吹きの気配あり★★★

2月9日(5名)

●小口泰與
淡雪や村に残りし芝居小屋★★★★
風光る鳥を宿せし岨の松★★★
くわえたるうぐいす餅よ高気圧★★★

●小川和子
森の樹の芽吹く音なす気配かな★★★
子等遊ぶ声の天へと日脚伸ぶ★★★★
玻璃ごしの立春の陽の眩しさよ★★★

●河野啓一
エキスポの跡地静かな春の雨★★★★
枯木立潤い得たる春の雨★★★
受験子の合格電話涙声★★★

●桑本栄太郎
春きざすサッカー遊びの父子かな★★★
真つ直ぐに満天星躑躅の新芽立つ★★★★
早春の若枝むらさき青空へ★★★

●川名ますみ
枕辺のひかりは借りし黄水仙★★★★
早春のひかりはことにうれしいものだ。暖かい春を待ちわびながら、早春に咲きだす黄水仙に心躍らせる人も多いだろう。枕辺に明るいひかりを撒く黄水仙に気持ちは外へ、ひかりへと向く(高橋正子)

梅の蘂花びらを越え空に在り★★★
待ちし日の長くて楽し梅咲く朝★★★

8日(5名)

●古田敬二
鉛筆を削り吟行へ春立つ日★★★
難問に挑戦の孫よ明日は春ぞ★★★
春立つ日子の書き込みの独和辞書★★★★

●小口泰與
春昼の野を駆け来る犬の顔★★★
単線や霞隠れの城の跡★★★
どどどどと大庇より雪消かな★★★★

●満天星
二月早ビル谷間より日の光★★★
遊園地光と風と金縷梅(まんさく)と★★★★
水無くて鴨の見えない潮干川★★★

●河野啓一
水温むえびや目高を掬う子ら★★★★
水が温んだのをいち早く知るのは、えびや目高だろう。次に知るのは子どもたちであろう。少し暖かくなると、子どもたちは、水辺でえびや目高を掬ってあそぶ。水温むよい季節が来た。(高橋正子)

梅が香に丘の辺よぎる風さやか★★★
花咲いて乙女椿と知れにけり★★★

●桑本栄太郎
触れ歩むうす紅色や丘の梅★★★★
木々の枝の静脈天(そら)へ春淡し★★★
雲晴れて遙かはだれや鞍馬山★★★

2月7日(7名)

●小口泰與
春の夜や和紙に墨痕黒黒と★★★★
露天湯の遅日の風や鳶の笛★★★
春の日や和菓子の店の淡淡し★★★

●古田敬二
池全面陽光返す春立つ日★★★★
わが畑の一番乗りはいぬふぐり★★★
空青く板黒塀超え咲く蝋梅★★★

●満天星
栴檀の天つつぬけて余寒かな★★★★
高木となった栴檀は冬は葉をすっかり落とし、花火のように散らばる実も大方落ちている。高々と聳える天は、筒抜けに晴れている。それだけに余寒が身に沁みる。(高橋正子)

土手の風低唱しつつ早春賦★★★
春浅し川辺を歩くかもめかな★★★

●多田有花
播磨灘沖に早春の光★★★

薪を割る音響きおり春の山★★★★
早春の肌寒さに、暖房もまだまだ必要。薪ストーブや、竈や風呂に使われる薪かもしれないが、春の山に薪を割る音が響く。人の生活が生活が感じられる春の山は、生き生きとしている。(高橋正子)

春の雪降りしきる中子ら遊ぶ★★★

●佃 康水
風硬き牧場跡の梅探る★★★
春霜の解けて遠出の靴濡らす★★★★
 早朝岩国基地より
瀬戸海を軍機飛ぶ音冴え返る★★★

●桑本栄太郎
はらりほろ祇園小路の春の雪★★★
淡雪のほほに帽子に京町家★★★
木々の枝の水色天(そら)に春浅し★★★★

●河野啓一
春浅き梅見ドライブ大阪城★★★
大試験結果待つのみあと二日★★★
早春の里山二羽のこうのとり★★★★

2月6日(4名)

●小口泰與
長閑さや里の社へ杖つきて★★★★
下萌や榛名十峰朝日浴び★★★
薄氷や光の破片身の内へ★★★

●迫田和代
痛み萎え胸に広がる春の色★★★
野火走り黒い野に待つ春色を★★★★
野焼きの火が走り、野が黒々と焼き尽くされると、やがて、そこから草草のみどりの芽が伸びる。一面春の野となる。それを今から楽しみに待っている。いい時間を過ごされている。(高橋正子)

川流れ戦い終えた白魚や★★★

●桑本栄太郎
春寒の雲の奔るや嶺の上★★★★
梅が香や老人たちのフリスビー★★★
老梅や幹のしろきに凛と紅★★★

●多田有花
池多き東播磨や春はじめ★★★★
雨が少ない瀬戸内、なかでも讃岐平野や向いの東播磨もため池が多い。その池が陽光を跳ね返すと、春が来たと思う。(高橋正子)

春めきて瀬戸の夕暮れ桃色に★★★
梅が香の間に夕刻の気配★★★

2月5日(3名)

●小口泰與
昇る日に照らされいたり孕鹿★★★★
猫の恋画廊に長居して居りぬ★★★
春なれや野菜作らず魚飼わず★★★

●谷口博望(満天星)
立春のひかり眩しきかもめかな★★★★
風はまだまだ冷たくても、立春となれが、太陽の光はずいぶん強くなっている。白い鴎に光が当たり眩しいほど。やはり、春だ。(高橋正子)

立春の海を見たくて宇品港★★★
引揚げて七十年や梅ふふむ★★★

●桑本栄太郎
あおぞらを背に写しけり梅二月★★★
碧空にくれない放ち丘の梅★★★★(正子添削)
かさぶたのような古木や梅ひらく★★★

2月4日(4名)

●小口泰與
春近し窓を横切る鳥の影★★★★
雲雀の巣我のみ知りて他に告げず★★★
追悼句
春の鳥まてど朝日を見ずにして★★★

●谷口博望 (満天星)
尉鶲犬枇杷の実に集いきたり★★★
キラキラと照葉樹林冬うらら★★★★
冬麗の光芒差して瀬戸遙か★★★

●河野啓一
あたたかき光差し来て春立ちぬ★★★
花桃のま直ぐに挿され凛として★★★★
花桃は花を観賞するために作られたもので、庭木に植えられるようだが、新暦の雛祭りに飾られる桃の花は、真直ぐな茎に丸く濃い桃色の花蕾が付く。かわいいというより、寒さの中では凛とした感じを受けるのだろう。(高橋正子)

出水より鶴とび発つや春立つ日★★★

●高橋正子
買い物の袋に花菜一把あり★★★
立春の梢は高き空を持ち★★★★
とびとびの雪割一華の花あわし★★★

2月3日(4名)

●谷口博望 (満天星)
餌貰う鴨を見ている鴉かな★★★
冬天の皁莢の木に烏かな★★★
樟匂う原生林のひこばゆる★★★★

●小口泰與
水仙や徒渉かなわぬ岨の雨★★★★
虎落笛妻の機嫌はそっちのけ★★★
凍空や杉の切杭凹凸ぞ★★★

●桑本栄太郎
嶺の端の群青色や寒の果★★★★
嶺の端は、山の稜線あたり。見るものの気持ちによるもであろうが、寒が果てたと思うと、嶺の稜線が群青色にくっきりとしてくる。(高橋正子)

恵方向き黙の夕餉や節分に★★★
節分や鬼より怖き山の神★★★

●高橋正子
あかあかと灯ともし恵方巻売られ★★★
巻きずしの五彩めでたし節分会★★★
うす淡き花をかしげて節分草★★★★

2月2日(3名)

●小口泰與
湯豆腐や街灯けぶる雨ななめ★★★
木の卓にパソコン開き寒見舞い★★★

黒檜嶺も鍋割山も雪催い★★★★
「黒檜嶺」と「鍋割山」も民話を思い起こさせる山の名前。「雪催い」の今日は、民話の世界に紛れ込んだ気持ちになる。(高橋正子)

●桑本栄太郎
カタコトと線路交叉や日脚伸ぶ★★★
蝋梅の日射しを透きし垣根かな★★★
暮れ残る枝の影濃く日脚伸ぶ★★★★

●高橋正子
寒蜆採られし場所の水思い★★★★
まるまると太る鰯を塩焼きに★★★
菜の花を茹でてみどりの明るさよ★★★

2月1日(4名)

●小口泰與
夕映えや男が捌く寒の鯉★★★★
日を支う朝の浅間や霜の花★★★
冬ばらの風の中なる一花かな★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋>
寒鯉の影や動かず鴨川に★★★
鴨川の堰水光り寒の晴★★★★
見はるかす遙か鞍馬のはだれかな★★★

●多田有花
白腹に会う春近き森の道★★★★
春近い森の道で、小鳥に出会うと何か楽しい気持ちになる。冬鳥の白腹が落葉を散らして餌をあさっていたのだろうか。(高橋正子)

エルゴノミクスマウスが届く春隣★★★
春近し夜具を一枚取り除く★★★

●高橋正子
春隣蔦より新芽噴き出せる★★★★
春隣る玻璃戸眩しく朝日受け★★★
春近しドアを開け閉めする音も★★★

●自由な投句箱/1月21日~31日●


※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
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今日の秀句/1月21日~31日


[1月31日]
白鳥へ無我の連写の入日かな/小口泰與
「入日」が効いている。写真に、白鳥の素晴らしい場面を残そうと連続でシャッターを押す。白鳥は一瞬の間に魅力ある動きを見せるから、狙って写しても間に合わない。「無我」となって撮るしかない。これは、多くのことに通じることだろうが。(高橋正子)

[1月30日]

★白鳥の雲より忽と飛来せり/小口泰與
曇り空か。雲の色よりやや白い白鳥が雲の中から忽然と飛来する。何かの精であるかのように。(高橋正子)

★梅つぼみ明日ひらく夜の紅薄き/川名ますみ
夜になって、ふと鉢植えの梅に目が行ったのであろう。今にも開きそうな梅の「紅薄き蕾」には、ときめくような春への期待が生まれる。(高橋正子)

[1月29日]

★馴染みたる杖の軽さよ日脚伸ぶ/小口泰與
使い慣れた杖も軽く感じる嬉しさ。日脚が伸び外光が明るくなるうれしさは、心身にも及ぶ。軽さがいい。(高橋正子)

[1月28日]

★寒中の梅が枝担ぎし男かな/多田有花
寒中の梅はまだ蕾も固いだろうが、それを男が担ぐ。「担ぐ」から推察できるのは、体躯頑丈な男。頑丈な男と寒中の梅は、風雅とは別のところで、通じ合うものがある気がする。「温かみ」だろうか。(高橋正子)

[1月27日]

★回り道気にかからずに日脚伸ぶ/河野啓一
寒い日であるにも拘わらず、日脚が伸びて外気は明るい。遠回りとなる道も意に解さず、日脚の伸びた明るさが嬉しくて楽しむ。(高橋正子)

[1月26日]

★冬嶺や毎朝磨く古机/小口泰與
毎朝、仕事の前にであろうが、長年使い古した机を磨く。机を置いた窓からは凛然とした冬の嶺が見える。このささやかなことが、生活の張にもけじめにもなる。(高橋正子)

[1月25日]

★寒林の凛と続けりバス通り/桑本栄太郎
いつものバス通りさえも凛と冬木の木立が続く。「凛と」となれば、寒も極まった木々だ。人も自然も寒さに凛と立ち向かう。(高橋正子)

[1月24日]

★麦の芽や犬と駆け来る都会の子/小口泰與
「麦の芽」に置かれた「都会の子」が新鮮。犬と駆け回れる自由さを得た「都会の子」にとっても麦の芽が揃い伸びる畑は新鮮であろう。(高橋正子)

 男子駅伝
★雪空へ跳び発つ走者胸光る/佃 康水
駅伝はそれを応援する市民にとっても走者との一体感が生まれるスポーツ。襷を受けて雪空へ跳ねるように走り出た走者の胸が光る。走者を送り出す応援の気持ちが輝いている。(高橋正子)

[1月23日]

★花菜摘む二人の昼餉に足りるほど/古田敬二
花菜は、いかにも春らしいもの。二人の昼餉はささやかであろうが、足るだけの菜花にささやかな華やぎも。(高橋正子)

[1月22日]

★一月や格調高き龍太読む/谷口博望(満天星)
一月は年の始めの月。心あたらに俳句に精進しようと思い立つ月でもあろう。そんな一月はやはり、飯田龍太の格調の高い句をしっかりと読んで姿勢を正す気持ちになる。「一月の川一月の谷の中/飯田龍太」を思い出す。(高橋正子)

[1月21日]

★軽鴨のつがい凍れる池の隅/多田有花
軽鴨のつがいの二羽が、薄氷の張った池の隅で凍りそうになって、寒さに耐えている。軽鴨の健気な姿が愛おしい。(高橋正子)

1月21日~31日


1月30日(4名)

●小口泰與
白鳥や入日に沼の静まりぬ★★★
夕映えの沼や白鳥翔けにける★★★
白鳥の雲より忽と飛来せり★★★★
曇り空か。雲の色よりやや白い白鳥が雲の中から忽然と飛来する。何かの精であるかのように。(高橋正子)

●桑本栄太郎
二人目のうから誕生春を待つ★★★★
湯上りののんどに美味し寒の水★★★
夜に起き喉を潤す寒夜かな★★★

●川名ますみ
梅つぼみ明日ひらく夜の紅薄き★★★★
夜になって、ふと鉢植えの梅に目が行ったのであろう。今にも開きそうな梅の「紅薄き蕾」には、ときめくような春への期待が生まれる。(高橋正子)

さまざまに梅の花芽の莟みけり★★★
雪やみて雲の許多の隙から陽★★★

●高橋正子
節分の鬼面ひらひら紙作り★★★
花柚子に氷雨のかかる明るさよ★★★★
結わえられがんじがらめの薔薇冬芽★★★

1月29日(4名)

●谷口博望 (満天星)
五位鷺の孤影悄然冬の川★★★
紅梅を揺るがしながら目白かな★★★★
まん丸の河豚提灯や福来る★★★

●小口泰與
馴染みたる杖の軽さよ日脚伸ぶ★★★★
使い慣れた杖も軽く感じる嬉しさ。日脚が伸び外光が明るくなるうれしさは、心身にも及ぶ。軽さがいい。(高橋正子)

百千の雀の羽音冬の朝★★★
雀居り尾長飛来や枯木立★★★

●桑本栄太郎
うらうらとバスの車内の冬ぬくし★★★
日が射せばものの影濃き春隣★★★★
推敲の言葉に悩み凍つる指★★★

●高橋正子
夕飯の菜に花菜がありて足る★★★★
うっすらと氷雨に濡れし衣を乾せり★★★
新しき傘が氷雨を弾く音★★★

1月28日(5名)

●谷口博望 (満天星)
初場所や神風の吹く大和魂★★★
何思ふ鷺凝然と冬の川★★★
二の丸のふくら雀が屋根の上★★★★

●小口泰與
日脚伸ぶ道具の手入れ始めける★★★★
アイフォンを持ちて湖へと日脚伸ぶ★★★
冬木の芽赤城の襞のもっこりと★★★

●多田有花
ひと冬の寒さ固めし一週に★★★
冬の夜やテニスの後の肘冷す★★★

寒中の梅が枝担ぎし男かな★★★★
寒中の梅はまだ蕾も固いだろうが、それを男が担ぐ。「担ぐ」から推察できるのは、体躯頑丈な男。頑丈な男と寒中の梅は、風雅とは別のところで、通じ合うものがある気がする。「温かみ」だろうか。(高橋正子)

●桑本栄太郎
真夜に起き喉を潤す寒夜かな★★★
三寒の朝や耀よう四温の日★★★
寒晴や部活の子等のランニング★★★★

●高橋正子
鐘楼も夕日に染まり春隣★★★★
金色の夕日を正面春隣★★★
水栽培の水がきらめくヒアシンス★★★

1月27日(5名)

●谷口博望 (満天星)
春隣ゆつくり進む宇宙船★★★
瓢の実を吹けばヒョウヒョウ鳴りにけり★★★
産土の満州遠く紅冬至★★★★

●小口泰與
我が影の冬田を越えて何急ぐ★★★★
日の出受く飛行機雲よ冬雲雀★★★
虎落笛山より来れば山に聴く★★★

●河野啓一
日脚伸ぶ笑顔明るき送迎車★★★
溝掘って念を入れたる寒肥かな★★★

回り道気にかからずに日脚伸ぶ(信之添削)★★★★
寒い日であるにも拘わらず、日脚が伸びて外気は明るい。遠回りとなる道も意に解さず、日脚の伸びた明るさが嬉しくて楽しむ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
さるすべり枝の白きが寒空へ★★★★
子供等の雄叫び走り日脚伸ぶ★★★
<奈良の若草山の山焼き>
印画紙の心に秘めてお山焼き★★★

●高橋正子
寒満月仰ぎてつつ行く道一本★★★
寒牡丹敷き藁なおも緑がち★★★★
はなびらの先のみ震え寒牡丹★★★

1月26日(5名)

●河野啓一
春隣咲き続け来て寒椿★★★
春隣庭の照葉の輝ける★★★
春近し昇る朝日に力あり★★★★

●小口泰與
冬嶺や毎朝磨く古机★★★★
毎朝、仕事の前にであろうが、長年使い古した机を磨く。机を置いた窓からは凛然とした冬の嶺が見える。このささやかなことが、生活の張にもけじめにもなる。(高橋正子)

小白鳥沼へ一筋入日かな★★★
振り逃げの歓声あぐや冬菫★★★

●桑本栄太郎
白壁の民家軒端や蔦枯るる★★★
万歩計着けて散歩の日脚伸ぶ★★★★
サンルーム欲しき日射しや寒の風★★★

●古田敬二
葉隠れに赤き花びら春隣り★★★
ミツバチが遊ぶ菜花の香り摘む★★★
マフラーで襟元固め受験の子★★★★

●高橋正子
都鳥鴨と並びて波に浮き★★★
都鳥岸辺の石にぬくもれり★★★
青空は古都のものなり梅真白★★★★

1月25日(6名)

●小口泰與
鍬置くや山裾とおき冬ひばり★★★★
湯の街の長き階段寒椿★★★
どよめきの湧きて鮪の競り終わる★★★

●多田有花
厳寒やけれど光の明るさよ★★★
水道をわずかに開けて凍て防ぐ★★★
満月や凍てつく蛇口に湯をかける★★★★
中七から下五に作者の生活が詠まれているが、主題は、上五の「満月」で、それは、冬の「満月」であり、寒の「満月」である。秋の月は美しいとされているが、本当に美しいのは、冬の月ともいわれる。(高橋信之)

●桑本栄太郎
寒林の凛と続けりバス通り★★★★
いつものバス通りさえも凛と冬木の木立が続く。「凛と」となれば、寒も極まった木々だ。人も自然も寒さに凛と立ち向かう。(高橋正子)

終業のチャイム鳴り居り冬木の芽★★★
悴みて文字書き難き句帳かな★★★

●古田敬二
包丁の切れ味の良し大根切る★★★(正子添削)
潔く大根切られ水を噴く★★★★
句がリアルであり、美味しそうな「大根」だ。いい生活だ。(高橋信之)

切干を広げるベランダ風強し★★★

●谷口博望 (満天星)
二の丸のもののふの松雪化粧★★★★
白黒の鴨の艦隊接近中★★★
雪解けの黒鉄黐に目白来る★★★

●高橋正子
都鳥鳴かねば嘴と脚あかし★★★★
寒牡丹ほのかな紅の咲ききれず★★★
透明は白のうちなり葛湯吹く★★★

1月24日(8名)

●谷口博望(満天星)
冬空を鯨のごとく飛行船★★★
覗きたる土竜の鼻や福寿草★★★★
ひたむきに冬に咲きたるクレマチス★★★

●小口泰與
風垣の朽ちし隙間を落暉かな★★★
かんじきを解くや湯煙もうもうと★★★

麦の芽や犬と駆け来る都会の子★★★★
「麦の芽」に置かれた「都会の子」が新鮮。犬と駆け回れる自由さを得た「都会の子」にとっても麦の芽が揃い伸びる畑は新鮮であろう。(高橋正子)

●河野啓一
寒晴れの東天染めて日が昇る★★★★
寒天に鳥声待たる朝は来ぬ★★★
息来ると電話や春待つ日曜日★★★

●多田有花
はぐれたる人を探して雪催い★★★★
雪暗の空見上げては山下りる★★★
ゆっくりと来たり今年の冬将軍★★★

●桑本栄太郎
若枝の青く伸び居り冬木の芽★★★★
米擦りを想い出しけり日脚伸ぶ★★★
燦々と土手の日射しや野水仙★★★

●上島祥子
溶け残る氷入り日を跳ね返す★★★★
風を切る鷹の尾羽を見逃さず★★★
大寒の月の光は真正直★★★

●佃 康水
潮騒や社殿を洗う寒月下★★★
 男子駅伝 2句
雪空へ跳び発つ走者胸光る★★★★
駅伝はそれを応援する市民にとっても走者との一体感が生まれるスポーツ。襷を受けて雪空へ跳ねるように走り出た走者の胸が光る。走者を送り出す応援の気持ちが輝いている。(高橋正子)

駅伝や郷土支援の餅を搗き★★★

●高橋正子
寒牡丹菰をあふれて咲くもあり★★★
寒牡丹花弁の先の吹かるるよ★★★
白梅に鳶の声のゆるやかに★★★★

1月23日(4名)

●小口泰與
汽罐車の黒煙流れ冬の川★★★★
嬬恋の空の蒼さよ寒薔薇★★★
昼なかの膝の小犬や日脚伸ぶ★★★

●谷口博望(満天星)
満開の八重紅梅や鯉も来て★★★
金縷梅のちぢれ始めて春まぢか★★★
かくれんぼ真紅かはいや青木の実★★★★

●桑本栄太郎
窓枠の雨氷となりぬバス来たる★★★★
若枝の青く伸び居り冬木の芽★★★
燦々と土手の日射しや野水仙★★★

●古田敬二
花菜摘む二人の昼餉に足りるほど★★★★
花菜は、いかにも春らしいもの。二人の昼餉はささやかであろうが、足るだけの菜花にささやかな華やぎも。(高橋正子)

冬帽子目深にかぶれば我れ百姓★★★
霜解けの畦に長靴滑らせる★★★

●河野啓一
港江の岸辺に雪の鴎かな★★★★
薄雪の溶けて日差しや春待つ心★★★
鍋物の湯気に潤うデイの昼★★★

1月22日(5名)

●谷口博望(満天星)
多羅葉に縋る空蝉寒の中★★★
大寒の病院人の生き模様★★★

一月や格調高き龍太読む★★★★
一月は年の始めの月。心あたらに俳句に精進しようと思い立つ月でもあろう。そんな一月はやはり、飯田龍太の格調の高い句をしっかりと読んで姿勢を正す気持ちになる。「一月の川一月の谷の中/飯田龍太」を思い出す。(高橋正子)

●小口泰與
たなごころ込めし豆皿ごまめかな★★★
日脚伸ぶ羽根を広げし孔雀かな★★★★
春近し星何処かへ帰りける★★★

●多田有花
大寒の足裏ほかほかフットローラー★★★
日脚伸ぶ沖にくっきり小豆島★★★★
頂の寒林切り払われて晴れ★★★

●桑本栄太郎
竹林の大きく軋みしまき風★★★
初雪の雨に変化(へんげ)の日射しかな★★★★
黒瓦屋根に残りぬさざれ雪★★★

●高橋正子
大寒の豆餅紅餅子らに遣り
たのしみは夜更けて一人葛湯吹く
三界に家なきがよし葛湯吹く

1月21日(7名)

●小口泰與
伊那谷の井月の里や寒造★★★
松過ぎやあわれチワワの寸胴よ★★★
白鳥や暁の浅間は朱色に★★★★

●谷口博望(満天星)
大寒のエンゼルトランペット枯れ★★★
岩陰のクリスマスローズ俯く★★★
日の丸のはためく墓地や日脚伸ぶ★★★★

●古田敬二
午後十時練習疲れや根深汁★★★
切干の笊に縮まり集まれり★★★
登校児防寒着色色美しき★★★★

●多田有花
寒中の陽の明るさに風荒れる★★★
珍しや二日続きの雪の朝★★★
軽鴨のつがい凍れる池の隅★★★★
軽鴨のつがいの二羽が、薄氷の張った池の隅で凍りそうになって、寒さに耐えている。軽鴨の健気な姿が愛おしい。(高橋正子)

●河野啓一
大寒のストーブの火や赤々と★★★★(正子添削)
春待ちて落葉を貯めしコンポスト★★★
薄氷解けるを見れば春近し★★★

●桑本栄太郎
葉をつけしままに蝋梅咲きにけり★★★★
天空の雲奔り居り寒の風★★★
大寒の空眺めつつ飛出しぬ★★★

●高橋正子
大寒に入りていよいよ空深む★★★★
紅梅の蕊に陽当たる日でありき★★★
寺の梅本堂あたりが咲き始む★★★

●自由な投句箱/1月11日~20日●


※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
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※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
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今日の秀句/1月11日~20日


[1月20日]

★紅梅の冬芽や朝の地震かすか/小口泰與
紅梅の冬芽が寒さに耐えている朝など、かすかな地震にはっとする。「紅梅の冬芽」と「地震かすか」の微妙な取り合わせが、季節感をよく出している。(高橋正子)

[1月19日]

★寒波来て夕陽の色の冴えにけり/多田有花
寒波が来て、厳しい寒さが押し寄せる。日本海側は雪に、太平洋側は晴天をもたらす。有花さんのいるところは、晴れたのであろう。夕陽の色が厳しい寒さに冴えて美しいこと。(高橋正子)

★揺れに揺れ寒波に軋む舫い船/佃 康水
寒波の来襲で荒れる海。港に舫う船が波に翻弄され「揺れに揺れ」る。寒々と荒れる海に自然のすざましさを見る。(高橋正子)

[1月18日]

★地に雪を残して昇る寒の月/小川和子
「地に雪を残して」に、雪の降り積もったあとの情景が目に見えるように表現されている。雪の夜のしじまを昇る月が冴え冴えと澄んだ美しい世界を詠んだ。(高橋正子)

★淋しき日過ごせば其処ら梅つぼむ/川名ますみ
不幸があって淋しい日々を過ごさなければならなかったのだろうが、心の内から心の外へ目をやると、其処に、梅の蕾が膨らんでいる。梅の蕾の明るさに良い予感がする。(高橋正子)

[1月17日]

★竹筒のともし火文字に阪神忌/桑本栄太郎
昨日、1月17日は、阪神淡路大震災が起きた日で、その映し出された情況は今も目に焼き付いているが、はや21年が経つ。竹筒に灯を灯し、祈りの文字を描く。人々のそれぞれの思いが詰まった灯だ。(高橋正子)

[1月16日]

★耳に鳴る鈴鹿の風に冬耕す/古田敬二
鈴鹿颪というのであろうか。野に出て耕していると耳に冷たい風が吹く。吹くどころではなく、耳に鳴る。その寒風にも負けず耕す力が湧いて喜びになっているように思う。(高橋正子)

★拝殿へ母の手を取り初詣/上島祥子
母子の情が無理無く伝わってくる。「初詣」が生活のある季語となり、いい句だ。(高橋信之)

[1月15日]

★冬靄に裾野すっぽり暁の山/小口泰與
暁(あかつき)の「冬靄」である。一月のやさしい風景を見せていただいた。(高橋信之)

★霧湧きて初旅の宿包みけり/古田敬二
紀ノ川であろうか。旅情があり、そして詩情がある。(高橋信之)

[1月14日]

★笹の葉と触れ合いつつ行く初戎/古田敬二
福笹を求めた人たちが行き交う参道のにぎやかさが「笹の葉と触れ合いつつ行く」に詠まれて、臨場感がある句だ。(高橋正子)

★北山を歩けば香り冬の梅/多田有花
北山杉で有名な京都北山。地名の「北山」が生きて、冬の梅の清らかな匂いが肺に満たされる感じだ。(高橋正子)

[1月13日]

★一月の鉢花煌めける門辺/河野啓一
松の内も過ぎたが、「鉢花」には正月の明るさが残って、花の命を煌めかせている。(高橋正子)

[1月12日]

★寒中の北山杉の垂直に/多田有花
「北山杉」は、京都北山に育つ杉。都を離れ、しんしんと冷える北山にあって、「垂直」に育った姿が美しい。(高橋正子)

[1月11日]

★青空の中を悠々凧上がる/高橋秀之
青空を悠々と泳ぐ凧になってみたいものだ。(高橋正子)