今日の秀句/11月11日~11月20日

11月20日(1句)
黄をかざし日蔭なればや石蕗の花/桑本栄太郎
「日蔭なればや」は、「日蔭であるからこそ」の意味。石蕗の花の黄色は枯れの進む冬景色のなかで特に目を引く黄色であるが、日蔭では特に石蕗の花の風情がいい、と言うのだ。(髙橋正子)
11月19日(1句)

★夜明前寒気放てる星一つ/廣田洋一
冬の夜明け前の美しさの極みが「寒気放てる星一つ」で表現されている。遠い星を見て「寒気放てる」の実感が伝わる。(髙橋正子)
11月18日(1句)

★初冬の松どっしりと龍野城/多田有花
松は一年中色を変えないように思えるが、やはり、季節ごとの趣は違っている。初冬の松、寒さに向けて気構えが感じられる。色も緑を少し失い、古風な感じが、龍野城を趣ある城に仕立てている。(髙橋正子)

11月17日(1句)
活発な冬翡翠や湖眠る/小口泰與(原句)
泰與さんはアマチュア写真家としてご活躍ですが、俳句と写真は似ているようでん、違うところがあります。原句は、光景が静止していて、翡翠の動きが感じられません。冬も活発な翡翠を表現するには、添削のようにするとよいと思います。
湖眠る冬翡翠の活発に/小口泰與(正子添削)
11月16日(4名)

★駅出でて時雨に濡れし上野かな/廣田洋一
時雨が降る時分の上野駅の風情がよく出ている。昭和的な雰囲気がまだ残る上野である。(髙橋正子)

★冬虹の程なく消える山の池/小口泰與
山の池の上の生まれた冬の虹は、「程なく」消えた。虹は儚いというけれど名残りを惜しむように「程なく」消えたのである。ここに作者の心情が読み取れる。(髙橋正子)
11月15日(1句)

★鳰のいて葦のまにまにに顔さらす/小口泰與
鳰は水に潜っては、潜ったところから離れて浮き出る。潜水の名手と言っていい。脚が体の後ろの方についていて、櫂の役目を果たすという。葦の間に間に浮いて顔をさらしているところは画になるのだろう。(髙橋正子)
11月14日(2句)

★冬紅葉映せる川面平らかに/廣田洋一
冬紅葉が色を極めるころ、静寂な時間が訪れる。川面は平らかに、冬紅葉を映して、時を止めているかのようである。(髙橋正子)

★白き実を鴉ついばむ冬初め/桑本栄太郎
「白き実」で思い出すのは、ナンキンハゼの実だが、そうなのか、どうか。「白い実」の白と「鴉」の黒の印象が、「冬初め」の気候に印象に合っている。(髙橋正子)
11月13日(1句)

★オカリナのようには鳴らずひょんの笛/桑本栄太郎
「ひょんの笛」をご存じだろうか。句会仲間に旧家の人がいて、庭の木のひょんの笛をもってきて見せてくれた。
イスノキの葉っぱにある種のアブラムシが卵を産み付け、葉が丸く固く木のように変形し、その中に幼虫が育ち、抜け出たあとに穴があく。これが木の上で風に吹かれると「ひょう」と言う音を出す。

穴に息を入れ吹くと笛のような音がでるので、江戸時代から子供のおもちゃになったようだ。オカリナに似た音だが、オカリナを吹くようにはいかない。音は面白くも淋しくもある。(髙橋正子)
11月12日(1句)

★故郷の土間に置かれし茎の桶/廣田洋一
「茎の桶」は、茎漬をする桶のことで、茎漬は、大根や蕪の葉や茎に塩を振り重石をのせて数日すると発酵した少し酸味のある漬物のこと。冬の間の食事には欠かせない、楽しみな漬物である。それが故郷の土間に置かれている。故郷の冬の生活を懐かしんだのであろう。(髙橋正子)
11月11日(1句)

★冬の薔薇庭の手入れの鋏音/多田有花
「薔薇」と「鋏音」の取り合わせに快感がある。鋏音からは冷たい鉄の出す小さい音、薔薇からは寒さに耐えながら、美しさを保とうとする姿がイメージできる。(髙橋正子)

11月11日~11月20日

11月20日(4名)

小口泰與
寒波来ぬ上州見事晴渡り★★★★
目陰して浅間の雪を確かめし★★★
我が声の岩を射落とし神渡し★★★

多田有花
初冬の玄関に白筋アマリリス★★★
実南天色を深める街角に★★★
冬浅し醤油饅頭売る老舗★★★

桑本栄太郎
朝の日に綿虫浮かぶ散歩かな★★★
カリカリと種の干乾び末枯るる★★★
黄をかざし日蔭なればや石蕗の花★★★★ 

弓削和人
窓硝子せんべい汁の湯気の粒★★★★
初雪を獣の足あと知らせけり★★★★
湖の浪打つ巌白き鳥★★★
 
11月19日(4名)
小口泰與
冬翡翠の煩悩此処に在りしかな★★★
曲がごとのうつつに覚めし隙間風★★★
目陰して冬の浅間を確かめし★★★

廣田洋一
夜明前寒気放てる星一つ★★★★
緑濃きセーターを着て外出す★★★
マフラーを二重に巻きて顎埋まる★★★

多田有花
しぐれおる龍野に醤油ソフト食ぶ★★★
時雨あがる醤油蔵の煉瓦煙突★★★★
冬菊に小さき蕾数多あり★★★

桑本栄太郎
木枯や水色空のせまり来る★★★★
鼻ふさぎ横向きにゆく冬一番★★★
終活の頃となりたる落葉散る★★★
11月18日(3名)
小口泰與
仲間らに寒波来ること仄めかす★★★
水中よりすいっと抜ける冬翡翠★★★
ほろほろと枯葉舞い落つ池の朝★★★

多田有花
冬霧を眼下に見るか朝霞城★★★
初冬の松どっしりと龍野城★★★★
発酵ランチ食べに入れば初しぐれ★★★
桑本栄太郎
木枯やしがみつきたるフレディ君★★★
日を透きて火炎と想う冬もみじ★★★
散り積もる葉を吹き飛ばす冬一番★★★
11月17日(4名)
小口泰與
活発な冬翡翠や湖眠る(原句)
泰與さんはアマチュア写真家としてご活躍ですが、俳句と写真は似ているようでん、違うところがあります。原句は、光景が静止していて、翡翠の動きが感じられません。冬も活発な翡翠を表現するには、添削のようにするとよいと思います。
湖眠る冬翡翠の活発に(正子添削)

冬ばらの燃え立つ赤の焔かな★★★
沼廻る冬翡翠の羽音かな★★★

多田有花
冬紅葉見あげ龍野神社へと★★★
冬浅き紅葉始まる聚遠亭★★★
ちらほらと御涼所の冬紅葉★★★

廣田洋一
一茶忌や難民保護の募金箱★★★
綿虫や払いてもまた目の前に★★★
山茶花や大きな墓のひとところ★★★

桑本栄太郎
 <京都四条大橋界隈>
背ナに京車夫の街ゆく冬うらら★★★
せせらぎの落葉散り敷く高瀬川(原句)
せせらぎに落葉散り敷く高瀬川(正子添削)
外つ人のベビーカー押し冬の京
11月16日(4名)
廣田洋一
日当たり良き庭につつじの帰り花★★★
駅出でて時雨に濡れし上野かな★★★★
大綿のひとかたまりに飛び来たる★★★

小口泰與
冬虹の程なく消える山の池★★★★
行くほどにすそ野の長し冬赤城★★★
目の前の長きすそ野や小春空★★★

桑本栄太郎
朝しぐれ峰の彼方の日差しけり★★★
嶺の端を超えて里へとしぐれ雲★★★
冷えまさる曇り空なる村しぐれ★★★

多田有花
冬はじめ銀杏色づく大阪に★★★
くっきりと入日が照らす冬紅葉★★★★
柿の実の枝に残れる十一月★★★
「柿の実の枝に残れる」は季語「十一月」を説明した形になっています。これは季語の使い方として避けるのが良いと思います。(髙橋正子)
11月15日(4名)
多田有花
塩を振り南瓜の種を炒る初冬★★★
診察を終えれば夕暮れ日短か★★★
帰路につく冬の紅葉仰ぎつつ★★★

小口泰與
銀鱗を光らす沼や冬木立★★★
空風に慣れるも仕事嫁ぎ人★★★
鳰のいて葦のまにまにに顔さらす★★★★

桑本栄太郎
三階の眼前はかつら黄葉かな★★★
くもりても更に明るき銀杏黄葉★★★
北山のくもり来たるや一ト時雨★★★

廣田洋一
新堂の赤銅光る十一月★★★
その奥に楸邨の墓帰り花★★★
寒禽の鳴き移りたる法の庭★★★
11月14日(4名)

廣田洋一
冬紅葉映せる川面平らかに★★★★
産土の社に一樹冬紅葉★★★
松の色変わらず冴えて十一月★★★

小口泰與
大鷹や葦に逃げ込む鳥一羽★★★
初冬の水面賑わす水輪かな★★★
山の沼冬翡翠の水輪かな★★★

多田有花
もぎたての蜜柑に残る陽の温み★★★
滑り台何度も滑り冬ぬくし★★★
白菜を刻み味噌汁に入れる★★★

桑本栄太郎
白き実を鴉ついばむ冬初め★★★★
冬蝶の躊躇い舞いぬ日向かな★★★
ゑのころの枯れて群れ居り街の墓地★★★
11月13日(4名)
小口泰與
寒暁の沼や水音絶え間なし★★★
沁み渡る沼へ朝日や冬の鯉★★★
風も無き沼へ枯葉の限りなし★★★

多田有花
おはようの看板初冬の小学校★★★
路地を曲がれば冬の小菊かな★★★
大公孫樹色づき染めし冬はじめ★★★
廣田洋一
そこはかと甘き香りや冬薔薇★★★
冬薔薇一つちょこんと丸まりて★★★
丹沢の稜線すらり山眠る★★★★

桑本栄太郎
落葉して緋色極むる唐かえで★★★
日に向い塀より出ずる石蕗の花★★★
オカリナのようには鳴らずひょんの笛★★★★
11月12日(4名)
小口泰與
山の幸干して秋風ほしいまま★★★
鳥声や上つ枝の熟柿風の中★★★
魚跳ねし秋翡翠の沼ほとり★★★

多田有花
小六月土手に咲きおり姫女苑★★★
百葉箱冬の紅葉をしたがえて★★★
校庭にコスモス揺れて冬浅し★★★

桑本栄太郎
白き実を鴉ついばみ冬晴るる★★★
あおぞらに雲見当たらぬ小春かな★★★★
冬蜂と云えど日差しの目の前に★★★

廣田洋一
点々と燃えたつ如く冬紅葉★★★
故郷の土間に置かれし茎の桶★★★★
十一月友はコロナに罹患せり★★★

11月11日(4名)
小口泰與
早朝の秋翡翠の狩猟かな
渓流の波のほぐれし秋日和
紅葉の妙義に登り浅間観る

多田有花
小春日の鳶ゆっくりと旋回す★★★
冬浅き真昼の土手を歩きけり★★★
冬の薔薇庭の手入れの鋏音★★★★

桑本栄太郎
あおぞらに柚子の色づく狭庭かな★★★
カサコソと枯葉競いぬ坂の風★★★
亜浪忌のかつら黄葉の散り敷きぬ★★★

廣田洋一
街中をライトアップや十一月★★★
まだまだ色付き足らぬ冬紅葉★★★
法輪の煌めく塔や冬紅葉★★★

自由な投句箱/11月1日~11月10日

※当季雑詠3句(秋の句・冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。 

         🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂 🍂
      今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
  名前の右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
11月10日
★やわらかき毛糸の嵩をおし包む    中村 汀女(なかむら ていじょ)
11月9日
★枯芙蓉形くずさず枯れつくす     馬場 江都(ばば えつ)🌸
11月8日
★初冬やシャベルの先の擦り切れて   山口 誓子(やまぐち せいし)
11月7日
★冬来れば母の手織りの紺深し     細見 綾子(ほそみ あやこ)
11月6日
★風ひそひそ柿の葉落としゆく月夜   野村 朱燐洞(のむら しゅりんどう)
11月5日
★白菊を活ける長さにすぱと切る    おおにし ひろし🌸 
11月4日
★銀杏黄葉市電は丸くカーブする    髙橋 正子(たかはし 正子)🌸 
11月3日
★柿食ぶやあからさまなる灯のもとに  中村 汀女(なかむら ていじょ)
11月2日
★鴨渡る鍵も小さき旅鞄        中村 草田男(なかむら くさたお)
11月1日
★一本の線で描く秋冷の町       川本 良子(かわもと よしこ)🌸

今日の秀句/11月1日~11月10日

11月10日(1句)

★初時雨傘打つ音の程もなく/廣田洋一
時雨はさっと降って上がったり、夕立のように強く降ったり、雨脚が移動するのが見えたり、趣のある雨。初時雨は傘を打つ程の音も立てなかった、というのだ。初時雨らしく、顔見世と思うような降り方だった。(髙橋正子)
11月9日(1句)

★落葉踏む音に帰宅を知りにける/小口泰與
落葉が降り積もった玄関までの路。出かけていたのは妻だろうか。落葉を踏む音がすると、「あ、帰ってきた」と帰宅を知る。足音で誰とわかるのだろう。冬の初めの家族のあたたかさが知れる。(髙橋正子)
11月8日(1句)

★底抜けに晴るるあおぞら冬日さす/桑本栄太郎
快晴の冬空を読んだ句。あまりにもよく晴れた空を「底抜けに晴るる」と言った。手放しの喜びようだ。冬の日はこんな晴がうれしい。(髙橋正子)
11月7日
該当句無し
11月6日(1句)

★陽に風に芒吹かれるばかりなる/多田有花
秋も深まる野に、陽にも風にもが芒が吹かれている。自然の静かさと明るさが感じられる句。自然そのままの芒がいい。(髙橋正子)
11月5日(2句)

★整然とひつじは風に吹かれおり/多田有花
ひつじは漢字で穭と書く。稲の刈り株から芽生えた新芽のこと。稲の株あとから芽生えた「ひつじ」は整然としている。丈低くも、整然と晩秋の風にそよぐ「ひつじ」に心を寄せた句。(髙橋正子)
 
★冷まじや湯気白々と露天の湯/廣田洋一
「冷まじ」は「すさまじ」と読み、この句では、この季語がよく効いている。晩秋、気温が急に下がると、露天風呂に湯気が白々とあがっているが、肌が知るのは「冷まじ」の感覚。(髙橋正子)
11月4日(2句)
★再びは生まれこぬ世や秋惜しむ/小口泰與
現実は、この世には再び生まれてこない。そう思うと、この秋が惜しまれる、というのだ。秋のわびしさ、もの悲しさは古来和歌に詠まれ、それが受け継がれて日本人のだれもが感じる感情となっている。そういう秋は命が惜しまれるのだ。(髙橋正子)

★豪雨止み一安心の秋夕焼/廣田洋一

最近の雨の降り方は、台風や嵐というものでなくても、豪雨となって災害を方々で起こしている。豪雨が止んで夕焼けが見られると、安心を覚え、美しい夕焼けを眺めるのである。「一安心」には実感がこもっている。(髙橋正子)
11月3日(1句)

★嵐去り今朝のあおぞら冷ややかに/桑本栄太郎
激しく荒れた嵐のあとに、あおぞらが、冷ややかに静かに広がっている。清涼で深い心持になる句。(髙橋正子)
11月2日(1句)

★郵便の間に挟まり赤い羽根/上島祥子
さりげなく郵便物の間に挟まっている赤い羽根に、心にほっと灯が灯るような感じがする。詠みかたが、素直でいい。
赤い羽根共同募金は、10月1日から翌年の3月31日が募金期間で、戦後地域の社会福祉のために始まった。だれもが幸せに暮らせることを願う募金。(髙橋正子)
11月1日(2句)

★水音を間近く聞けり貴船菊/多田有花
貴船菊は、秋明菊とも呼ばれる。赤紫色の細い菊のような花びらをもつのが、もともとの貴船菊である。最近は花びらが少ない白い花が多くなっている。楚々とした姿に、水音が添うのもゆかしい。(髙橋正子)

★神在りの月の出雲や海荒るる/桑本栄太郎
出雲の神在りの月は、十月になる。「そのころの出雲は、海が荒れるのですよ。」という句意。「神在りの月」の「月」は「月の出雲」のようになり、修辞的な面白さがある。さりげないようだが、実感がこもっている。(髙橋正子)

11月1日~11月10日

11月10日(4名)
小口泰與
寒鯉の水塊と共に跳ね★★★
上空を常に意識や秋翡翠★★★
山裾の住む方遠き秋灯し★★★

多田有花
凩へ漕ぐやブランコ思いきり★★★
落葉を終えし桜の空仰ぐ★★★
風無く晴れて冬耕に良き日和★★★

桑本栄太郎
<京都四条大橋界隈>
堰水のはるか鞍馬や小春空★★★
小春日や四条大橋人の波★★★
大橋の人の行き交う街小春★★★

廣田洋一
初時雨傘打つ音の程もなく★★★★
生垣に彩り添えて冬紅葉★★★
池渡る風に揺れたる枯れ尾花★★★
11月9日(4名)

小口泰與
秋雨や読書に迷う事もなし★★★
落葉踏む音に帰宅を知りにける★★★★
振る舞いの熱燗ぐいとコップ酒★★★

廣田洋一
教室の入口飾る冬紅葉★★★
枯色も少し混じりて冬紅葉★★★
古き友便りをくれる十一月★★★

桑本栄太郎
小春日の前かご占める小犬かな★★★
前足をさらす嬰児や小六月★★★
「前足」は嬰児の「手」のことですか。(髙橋正子)
色鳥の尾羽ひこひこ来たりけり★★★

弓削和人
信号を待ちつ足踏み今朝の冬★★★
ヒーターの埃をはらう今朝の空★★★
布団より少し顔出す夜明けかな ★★★
 
11月8日(4名)
小口泰與
見事なる立ち振る舞いや秋時雨★★★
木犀や路地裏より風の径★★★
秋目高尾を振る如く霊ふるう★★★

多田有花
秋惜しみつつ渓流の音の中★★★
閉鎖さるキャンプ場に秋暮れる★★★
ひとつひとつ片付けてゆき冬来る★★★

桑本栄太郎
点描のような紅葉やアメリカ楓★★★
火と燃ゆるどうだん躑躅の紅葉かな★★★
底抜けに晴るるあおぞら冬日さす ★★★★

廣田洋一
池の面を華やかに染め散紅葉★★★
立冬や冠雪したる富士の山★★★
初冬の街を飾れる灯の光★★★
1月7日(4名)
小口泰與
行く秋や風の強弱あらわなる★★★
潜る度賢者になりし秋の鴨★★★
天からの賜わる雨や秋の畑★★★

廣田洋一
立冬の陽射し浴びたり庭の草★★★
初冬の街を飾れる灯の光★★★
紅葉散り渦をなしたる木立かな★★★

多田有花
来る冬を真正面に見て不動★★★
細き滝岩を下れる暮秋かな★★★
滑滝が岩を濡らして行く秋ぞ★★★

桑本栄太郎
雲奔り風の冷たき今朝の冬★★★
朝日さす照葉もみぢの在所かな★★★
コスモスの花の仕舞いや赤き茎 ★★★

11月6日(5名)

廣田洋一
土手道を下る階段紅葉且つ散る★★★
暮れ残る空に点灯秋深し★★★
立冬やしみじみ唄うアベマリア★★★

小口泰與
天からの賜わる雨や秋の畑★★★
山の辺の沼の落葉の限りなし★★★
水槽の草の揺れ居り秋目高★★★

多田有花
渓流のそば近くあり柿紅葉★★★
鮮やかに廃墟のタイル秋深し★★★
陽に風に芒吹かれるばかりなる★★★★

桑本栄太郎
こつ然と風の冷たき今朝の空★★★
合歓の実の風に乾ぶる高さかな★★★
蘆刈られ鳥の足あと二つ三つ★★★

弓削和人
拾う葉の一枚撰りて秋闌ける(原句)
拾う葉を一枚撰りて秋闌ける(正子添削)

身に入るや襟を正して裏通り(原句)
「身に入む(みにしむ)」は、季語なので、「身に入る」は無理な使い方です「身に沁む」とも書きます。秋も闌けるころから冷たさをしみじみ感じるようになり、秋が深まれば、一層その感じは強くなってくる。そういう感じをいうときに使います。(髙橋正子)
(髙橋正子)
身に入(し)むや襟を正して裏通り(正子添削)
菊人形瞳は宙(そら)へ隣り世へ★★★
11月5日(4名)

小口泰與
毬栗の落ちたる先の子犬かな★★★
強風に降りず降らずみ葡萄棚★★★
三尺の秋水与う文化の日★★★
※三尺の秋水:冴えわたった剣のこと。三尺は剣の標準の長さ。(髙橋正子)

多田有花
整然とひつじは風に吹かれおり★★★★
 ひつじ:漢字では穭と書く。稲を刈り取ったあとの株から芽生える新芽のこと。また、その田んぼを「穭田」という。(髙橋正子)

楓紅葉へ陽の傾きの早し★★★
冬隣る渓流に沿い歩きけり★★★

廣田洋一
朝な夕な掃き清めたり桜紅葉★★★
冷まじや湯気白々と露天の湯★★★★
  ※冷まじ(すさまじ、晩秋の季語)
窓の外光撒きつつ紅葉散る★★★

桑本栄太郎
はけ雲の空の青さや天高し★★★
乙訓は丘なる里ぞ柿すだれ★★★
せせらぎの里の辻なる石蕗の花★★★
11月4日(4名)
小口泰與
再びは生まれこぬ世や秋惜しむ★★★★
文机や秋の夜長の辞典にて★★★
堰堤を超ゆるが如し秋の雨★★★

廣田洋一
雨上がり清らに澄みし秋の空★★★
豪雨止み一安心の秋夕焼★★★★
澄みしそら木の葉舞い散る冬隣★★★

桑本栄太郎
朝冷えや午後より日差す乙訓郡★★★
代議士の選挙報告秋うらら★★★
午後よりの風の田道や冬隣り★★★

多田有花
公園に親子ふた組秋うらら★★★
青空を背負いて鳴けり尉鶲★★★
廃屋の庭に残りぬ萩の花★★★
11月3日(4名)
小口泰與
瓢箪と寝転ぶ子らや猫もじやれ★★★
絶壁の立塞がるや芋嵐★★★
稲雀逃げ去るやうに飛び立ちし★★★

桑本栄太郎
正倉院展人の賑わう文化の日★★★
嵐去り今朝のあおぞら冷ややかに★★★★
どの風もなべて里へと暮の秋★★★

廣田洋一
文化の日純金入りの茶を喫す★★★
文化の日俳句手帳を新たにす★★★
身に入むや喪中挨拶受け取りぬ★★★

多田有花
橋脚を洗う濁流秋出水★★★
文化の日弾くやバッハのインヴェンション★★★
秋深し宇宙の動画を見ていたり★★★
11月2日(4名)
小口泰與
飛び出でし大砲岩より懸巣かな★★★★
点点と団栗落ちし沼の淵★★★
茸狩や腑に落ちぬ日の数多ある★★★

多田有花
澄む秋の手すりに集う雀たち★★★★
瞑想に浮かぶあれこれ夜長かな★★★
秋雨と思えぬほどの土砂降りに★★★

桑本栄太郎
冷まじや雨に明るき銀杏の樹★★★
雨風の最後のあがき野分荒れ★★★
断捨離の雨籠りとや白秋忌★★★

上島祥子
郵便の間に挟まり赤い羽根★★★★
送迎の車頼まれ白秋忌★★★
黄葉す若木の雌は雄に続き ★★★
11月1日(5名)
多田有花
珍しきEV十月の終わる★★★
水音を間近く聞けり貴船菊★★★★
親鸞像足下に咲きぬ槍鶏頭★★★

小口泰與
秋深し出荷の菓子の数数多★★★
夕暮れの沼を狭めし雁の群★★★
八方へ雑魚ひろごる秋の沼★★★

桑本栄太郎
神在りの月の出雲や海荒るる★★★★
色鳥と云うは小鳥の葉蔭かな★★★
半分はわれの手伝い栗ごはん★★★

廣田洋一
盥舟夫を引き寄せ天高し★★★★
紅葉散る枯れ池の底赤く染め★★★
錦木や向こうに見ゆる朱鷺番★★★

弓削和人
鶏頭のずしと雄々しく揺れ戻り★★★
行秋やジャズを求めて喫茶店★★★★
宵寒の土産のチョコの甘きかな ★★★

自由な投句箱/10月21日~10月31日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。

         🌰 🌰 🌰 🌰 🌰 🌰 🌰 🌰
        今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
  名前の右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
10月31日
★わが触れて来し山の樹や秋深し    中村 汀女(なかむら ていじょ)
10月30日
★鰯雲甕担がれてうごき出す      石田 波郷(いしだ はきょう)
10月29日
★朝霧の晴れて港に外国船       安増 恵子(やすます けいこ)🌸
10月28日
★菊活けられ水の硬さに茎立ちぬ    脇 美代子(わき みよこ)🌸
10月27日
★啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々    水原 秋櫻子(みずはら しゅうおうし)
10月26日
★雁一聯窓の一画截り去ぬる      臼田 亞浪(うすだ あろう)
10月25日
★朴の葉の落ちをり朴の木はいづこ   星野 立子(ほしの たつこ)
10月24日
★桐一葉日当たりながら落ちにけり   高浜 虚子(たかはま きょし)
10月23日
★露草を踏みつけ朝の測量に      加納 淑子(かのう としこ)🌸
10月22日
★爛爛と昼の星見え菌生え       高浜 虚子(たかはま きょし)
10月21日
★朝霧の玄関声が先に入る       日野 正人(ひの まさと)🌸

今日の秀句/10月21日~10月31日

10月31日(1句)

★コスモスや風に任せて乱れ咲く/多田有花
もとの句は「コスモスや風に吹かれて乱れ咲く」だったので、「コスモスや風に任せて乱れ咲く」と添削した。作者は違う感覚だったかもしれないが、俳句を詩として成り立たせるためには、自分なりの見方が必要。(髙橋正子)
10月30日

該当句無し
10月29日(2句)

★曇りいて更に明るき銀杏黄葉/桑本栄太郎
銀杏黄葉は背景が青空であっても、明るく映えるが、曇っていても、灰色の空には黄葉がよく映る。「更に明るき」と感じるほど、色彩がくっきりしている。(髙橋正子)

★斜張橋白く濡れたり冬近し/廣田洋一

美しい白い斜張橋が濡れている様子を、「白く濡れたり」と、感覚的に映杭イメージ捉えている。表現に無駄がなく、「冬近し」が感覚としてよくわかる。(髙橋正子)
10月28日(2句)
★薄紅の秋雲夕餉の四畳半/小口泰與
もとの句は季語がなかったので、「雲」を「秋雲」にした。
早い夕餉であろう。まだ夕焼け雲が薄く紅色に染まっている。こじんまりとした四畳半のささやかで幸せな夕餉の様子が想像できる。(髙橋正子)

★飛行機雲やがてほぐれてうろこ雲/多田有花
勢いよく引かれた飛行機雲はやがてふわふわとほどけて、うろこ雲になる。雲の姿が変わるたのしさがある。(髙橋正子)
10月27日(1句)

★手のひらを開くや秋の日の温み/小口泰與
縁側などに座っていて、手のひらを開くと、秋の日が差してほのかな温みを感じる。このほのかな温みを生きている温みとして読み手は感じ取ることができる。(髙橋正子)
10月26日(2句)

★秋草を紐解く如くわけ進む/小口泰與
晩秋のころになると、秋草も枯れるものが混じる。人が通らねば,互いに絡んでくる。そんなところを通ろうとすれば、紐を解くように草を分けて進まねばならない。自然のままの姿が見える。(髙橋正子)

★露草の小径はどこも憩うとこ/弓削和人
散歩に出たのだろう。小径を辿ると露草が咲いている。しばらく歩くとまた露草が咲いている。露草が咲くところは、心休まるところ。憩うところ。(髙橋正子)
10月25日(3句)
★陽は明るく紅葉かつ散る桜なり/多田有花
「紅葉かつ散る」には、秋のかげりを感じるが、この句の良さは、「陽は明るく」で、桜もみじが明るく透き通るように詠まれていることである。(髙橋正子)

★修繕の畳ふすまや秋一日/桑本栄太郎
今も、畳や襖の張替えなど家に出向いてしてくれる職人がいるのだろうか。その仕事は、一日仕事である。子どものころ、畳職人が泊りがけで畳表を張り替えていたことを思い出す。子どもには面白いものであったが。(髙橋正子)

★朝寒や廊下に引き戸の音響き/弓削和人
昭和的な香りのする句。寒さを覚える朝、廊下の引き戸を引く音が、拭き磨かれた廊下に響く。静かな暮らしの良さが偲ばれる。(髙橋正子)
10月24日(2句)

★群れて咲く黄花コスモス陽を招く/多田有花
コスモスと言えば優しい色合いのピンクや白、紅色の花を思うが、この頃はオレンジ色や黄色の黄花コスモスをよく見るようになった。たくさんの花が風にそよぐと陽を招いて明るい印象である。(髙橋正子)

★晩秋の青き松葉や蒼き空/小口泰與
晩秋の深い空に、松葉の青が力強く映えている。色変えぬ松であるが、晩秋には、晩秋の趣がそなわっている。(髙橋正子)
10月23日(1句)

★張り替えて障子明るし鳥の声/廣田洋一
「障子」は冬の季語だが、「障子張る」は秋の季語。つまり、冬に備えて、さむくないよう、また正月を迎えることもあるだろう、そのために障子を張り替える。びんと白く張られた障子の内側は明るく、鳥の声が聞こえて来る。なんとも清々しいたのしいひと時であろう。(髙橋正子)
10月22日(1句)

★合掌のマリアの像へ菊の花/多田有花
マリアは、南米だと黒人のマリアとして拝まれたりするように、信仰する人々の国や土地のマリアとなっている。日本のマリア像には菊の花が供えられ、人々の気持ちを表している。(髙橋正子)
10月21日(1句)

★どこまでも風吹き抜ける刈田かな/桑本栄太郎
刈田となった田んぼには、自在に風が吹き抜ける。風は際限なく、どこまでも吹き抜ける。広々とした、秋淋しい刈田の風景が想像できる。(髙橋正子)

10月21日~10月31日

10月31日(3名)

多田有花
柿をもぐ人あり甘柿かと尋ぬ★★★
道の辺の畑の小菊を愛で歩く★★★
コスモスや風に吹かれて乱れ咲く(原句)
コスモスや風に任せて乱れ咲く(正子添削)

小口泰與
水天を割し野鳥や秋の声★★★
秋声を聴けり赤城の風のごと★★★
下り簗利根の閃く流れかな★★★

廣田洋一
餌求め群れ来る鴎暮れの秋★★★
ひつじ田や水の溜まりし雨上がり★★★
曲がる度彩り変わる秋の山★★★
10月30日(4名)

小口泰與
ぴちぴちと小魚跳ねる沼の秋★★★
さらさらと稲の触れ合う田道かな★★★
冷まじや波の穂先の尖りける★★★

多田有花
部屋に籠りぬ晩秋の雨の午後★★★
秋曇遊具に遊ぶひとときよ★★★
紅葉忌恋は金より尊いか★★★

廣田洋一
末枯れを誘う雨なり並木道★★★
この道の銀杏並木や末枯るる★★★
林檎剥く蜜の香りの漂いぬ(原句)
林檎剥き蜜の香りの漂いぬ(正子添削)

Unknown
飛び急ぐ鴉群れなし秋の夕★★★
秋の夜半手紙の返書封はせず★★★
秋の蚊や利き手に留まるを仕留めけり★★★
10月29日(5名)
小口泰與
小魚や秋翡翠の喉ふとし★★★
風も無き葦にとまりし秋翡翠★★★
ゆっくりと沼の小岩に秋の亀★★★

多田有花
秋草の蒼空へ高く背を伸ばす★★★
光陰は矢の如しなり赤まんま★★★
秋の日のジャングルジムを上り下り★★★

桑本栄太郎
帽子ごと拾い来たるや櫟の実★★★
曇りいて更に明るき銀杏黄葉★★★★
橡の葉の繁れどすでに実の在らず★★★

廣田洋一
甲板のありや無きかの秋時雨★★★
船を待つ子ら賑やかに秋深し★★★
斜張橋白く濡れたり冬近し★★★★
弓削和人
行秋の水戸の駅舎に小雨かな★★★
秋風や街灯ひとつ消えており★★★
秋晴を胸いっぱいに低き山★★★★

10月28日(4名)
小口泰與
薄紅の雲や夕餉の四畳半(原句)
薄紅の秋雲夕餉の四畳半(正子添削)
一匹の蜻蛉とまるや沼の葦★★★
蜻蛉と亀の競演沼の岩★★★

廣田洋一
今朝秋の川に佇む鷺一羽★★★
撫でまわし凸凹多き林檎買う★★★
選挙終え悲喜こもごもの秋行けり★★★

多田有花
電車過ぐえのころぐさを揺らしつつ★★★
柿たわわ鈍色瓦の上にあり★★★
飛行機雲やがてほぐれてうろこ雲★★★★
桑本栄太郎
穂すすきの解け波打つ花壇かな★★★
秋草や売地看板埋もりて★★★
野いばらの尖る実生や黄の色に ★★★
10月27日(3名)
多田有花
庭のコキア紅葉して人を待つ★★★
穂をつけてひつじ青さを保ちおり★★★
端正に花びら広げ秋の薔薇★★★

小口泰與
手のひらを開くや秋の日の温み★★★★
へら浮子の垂直に立ち沼の秋★★★
水天を狙いし秋の翡翠ぞ★★★

桑本栄太郎
外つ人の白人多し秋の京★★★
行き交える花見小路や秋日さす★★★
穂すすきの中州占めをり桂川★★★
10月26日(4名)
多田有花
干し物や下弦の月の空高く★★★
秋真昼ハイビスカスはなお赤し★★★
MRIの轟音の中末の秋 ★★★

桑本栄太郎
稲滓火の煙棚引く山の里★★★
鬼貌となりて仕舞いぬ芙蓉の実★★★
あばたとて持て囃さるる杜鵑草★★★

小口泰與
秋草を紐解く如くわけ進む★★★★
上下するへら浮子ありし沼の秋★★★
へら浮子の微動だにせぬ暮の秋 ★★★

弓削和人
夕雨や車窓をさやぐ蕎麦の花★★★
露草の小径はどこも憩うとこ★★★★
いのこづち野辺から遠く競い合い★★★
10月25日(名)
廣田洋一
上り行く初鴨三羽街の川★★★
土手道や泡立草の花盛り★★★
縄のれん女将の酌で温め酒★★★

多田有花
木の実落つ墓苑にしばし坐しており★★★
秋深し最前列は戦死者よ★★★
陽は明るく紅葉かつ散る桜なり★★★★

小口泰與
十月や賑わい増せり山の幸★★★
満腹の雑魚跳ね出で秋の沼★★★
鵯の嘴よりこぼす赤き実を★★★

桑本栄太郎
朝露の靴ぬらしつつ川辺行く(原句)
朝露に靴ぬらしつつ川辺行く(正子添削)
修繕の畳ふすまや秋一日★★★★
袖ものの濯ぎひと竿秋日和★★★

弓削和人
夕暮に隠れる靴のいのこづち★★★
本棚のぬくみの色の木の実かな★★★
朝寒や引き戸に廊下音響き(原句)
朝寒や廊下に引き戸の音響き(正子添削)

10月24日(5名)
多田有花
低くともわが名は背高泡立草★★★
群れて咲く黄花コスモス陽を招く★★★★
廃屋に蔦の紅葉の始まりぬ★★★

小口泰與
行く秋を長きすそ野に味わいし★★★
晩秋の青き松葉や蒼き空★★★★
秋雲の点となりしや赤城山★★★

廣田洋一
駅前の赤提灯や温め洒★★★
旅空に友と二人で温め酒★★★
沈みたる木の葉艶やか秋の川★★★

弓削和人
夕の宿レモン欠片に身の軽し★★★
栗飯の実のみちみちて友親し★★★
湖の外輪山や薄紅葉★★★

桑本栄太郎
推し活の選挙支援や秋うらら★★★
秋灯の尾灯つづくよ9号線★★★
暮れなずむ嶺の真つ赤ぞ秋入日★★★
10月23日(4名)
小口泰與
銀鱗を光らす魚や沼の秋★★★
ひねもすの草野球なり神無月★★★
鳴きながら秋翡翠の沼の辺を★★★

多田有花
帰天せし人の墓前に菊花かな★★★
異国の人眠れる晩秋の墓所★★★
どんよりと曇りて霜降の夜明け★★★

桑本栄太郎
梢ほど空の明るき銀杏黄葉★★★
休耕の畑のにぎわう泡立草★★★
大木の天に香りぬ金木犀★★★

廣田洋一
張り替えて障子明るし鳥の声★★★★
荒れし跡すっきりしたる秋の川★★★
大玉と小玉を混ぜて林檎買う★★★
10月22日(4「名)
小口泰與
鳥声の途絶えし沼や秋の蝶★★★
四頭の黄蝶遊ぶや沼の秋★★★
ぴょんぴょんと跳ねし小魚秋の沼★★★
多田有花
合掌のマリアの像へ菊の花★★★★
木星が月の隣を通る夜★★★
高く鳴きわれはここぞと鵙の朝★★★

桑本栄太郎
歩みゆくほどに静寂や草ひばり★★★
穴あきの彩の錦や柿もみじ★★★
ゑのころの風の吹くまま逆らわず★★★

廣田洋一
恙なく今日も終えたり温め酒★★★
満遍に霧吹きかけて障子貼る★★★
秋深し逝きたる友に献杯す★★★
10月21日(3名)
小口泰與
なだらかな沼の水面へ紅葉かな★★★
三頭の秋蝶舞えり沼の岸★★★
一斉に小魚跳ねし秋の沼★★★

廣田洋一
縁側に一枚立てかけ障子貼る★★★
最後に霧を吹きかけ障子貼る★★★
昼日中旧友と酌む温め洒★★★

桑本栄太郎
ふるさとの大山想う直哉の忌★★★
秋冷や見るべきほどの事は見き★★★
どこまでも風吹き抜ける刈田かな★★★★

自由な投句箱/10月11日~10月20日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※★印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
         🌰 🌰 🌰 🌰 🌰 🌰 🌰 🌰
        今日の俳句『現代俳句一日一句鑑賞』(髙橋正子著)より
  名前の右端に🌸の印が付いている句は、(現)または(元)花冠会員の句
     名前の右端に🍁の印が付いている句は、花冠に縁の深い方の句
 
10月20日
★朝霧の中に九段のともし哉        正岡 子規(まさおか しき)
10月19日
★天地ふとさかしまにあり秋を病む     三橋 鷹女(みつはし たかじょ)
10月18日
★大空に舞ひ別れたる鶴もあり       杉田 久女(すぎた ひさじょ)
10月17日
★秋ららあの山この山くっきりと      渡辺 酸美(わたなべ すいみ)🌸
10月16日
★安らいてみのりの秋にとりまかれ     川本 臥風(かわもと がふう)🍁
10月15日
★銀杏ちる深空あをあを澄みまさり     五十崎 故郷(いかざき こきょう)
10月14日
★柿の実の中より光りさすごとし      川本 臥風(かわもと がふう)🍁
10月13日 
★星空へ店より林檎あふれをり       橋本 多佳子(はしもと たかこ)
10月12日
★ある僧の月の待たずに帰りけり      正岡 子規(まさおか しき)
10月11日
  三十八番金剛福寺(高知)
★秋雲つぎつぎ寺の庇より離れ       髙橋 信之(たかはし 信之)🌸

今日の秀句/10月11日~10月20日

10月20日(1句)

★秋水の石の河原や鴨川に/桑本栄太郎
京都四条大橋あたりの鴨川の景色は写真でよく見るが、鴨川には浅瀬に飛び石が置かれて、飛び石伝いに川を渡れるところもある。そのあたりには石が転がって、石の間を秋水が流れている。石と秋水の織り成す景色も鴨川の魅力であろう。(髙橋正子)
10月19日(1句)
★色鳥や日向の匂うかけ布団/小口泰與
色鳥は、秋渡ってくる小鳥類のうちジョウビタキなど羽のきれいな鳥のこと。
天気のいい日、布団を干しているところにやってきたのはジョウビタキであろうか。かけ布団には日向の匂いがして、ふんわりとして温かい。秋のよい気候が暮らしに結びついて句となっている。(髙橋正子)
10月18日(1句)

★新堂の屋根の光れる初時雨/廣田洋一
新しいお堂の屋根が初時雨に濡れて輝いている。お堂は新しく、時雨は今年初めて。これらの新しく、初めてのものの美しい出会いが季節の移り変わりをさらりと表現しているのがいい。(髙橋正子)
10月17日(2句)

★鋏音高く秋園の花を切る/多田有花
秋の園で花を切るとき、鋏の音が空にぬけように、高く響く。秋の静けさと対比され鋏音の鋭さと美しさが同時に感じらる。(髙橋正子)

★新藁の青き匂いや日の香とも / 桑本栄太郎:
新しく収穫された藁の青々とした香りは、また、日の香りだと言う。新しい藁の新鮮な香りが、日の光の下で広がる様子が美しく表現されている。(髙橋正子)
10月16日(2句)

★一筋の田の径長し星月夜/小口泰與
星月夜には、田んぼの径が浮き上がって見える。一筋の径がどこまでも続く田径の星月夜の静かな美しさが読み取れる。(髙橋正子)

★桑の葉の少し濡れ居り秋蚕飼う/桑本栄太郎
蚕の餌は桑の葉であるが、桑の葉が乾くと蚕は食べない。そのために新鮮な桑の葉を一日3回、朝昼晩に与えるようである。少し濡れているのは、露や霧で濡れた葉であろうか。深まる秋に蚕を飼う暮らしがしっとりと伝わる。(髙橋正子)

10月15日(2句)

★見上げれば桜紅葉に触れる雲/多田有花
桜紅葉が白い雲に触れていて、ふたつの触れ合う色彩が美しい。のびやかな句。(髙橋正子)

★黄落となりし舗道やかつらの樹/桑本栄太郎
黄落期を迎えた桂の鋪道。桂は丸みのある、美しい形の葉をしており、黄葉も美しい。銀杏とはまた違った味わいのある黄葉である。(髙橋正子)
10月14日(2句)

★秋深むひと日ひと日の句作かな/小口泰與
秋が深まる中で一日一日を俳句作りに費やす静かな充実感が感じられます。季節の移ろいと日々の創作が結びつき、詩的な生活の一瞬を美しく表現しています。
(生成AIのコメントを髙橋正子の責任で貼り付けました。)

★あおぞらの村の梢や鵙の声/桑本栄太郎
青空の下に広がる村の景色と、梢に止まる鵙の声が描かれています。自然の中で響く鵙の声が、村の静けさと調和し、美しい風景を詠み込んでいます。青空と梢、そして鵙の声が一体となり、清々しい自然の一コマが目に浮かびます。
(生成AIのコメントを髙橋正子の責任で貼り付けました。)
10月13日(1句)

★晴れし朝残る燕の舞いにけり/多田有花
晴れた朝の清々しさに、残る燕が舞う姿が、強く印象に残る。「舞いけり」の詠嘆が句に味わいを持たせている。(髙橋正子)
10月12日(1句)

★鈴の音のひときわ高き秋の猫/小口泰與
猫に首に鈴をつけている。動くと地リンチ鳴る。秋になると、猫の鈴の音もよく響いているような感じがしている。金の鈴でもつけているのではないかと。猫が可愛らしくなっている。(髙橋正子)
10月11日(1句)

★流れ星ひとつ未明の南天に/多田有花
シンプルな表現ながら、未明の南天にすっと流れる一つの星が神秘的な雰囲気を醸している。(髙橋正子)