9月30日(5名)
小口泰與
背びれ見せ沼を横切る秋の鯉★★★
とある日の沼に翔け來る小鳥かな★★★
沼を黄に点じおり黄鶺鴒★★★
※三句とも「沼」がありますが、この「沼」が読み手には漠然とした景色に映るのでそれが残念です。(髙橋正子)
多田有花
帰り道すでにひつじの伸びたる田(原句)
「退院」という言葉を入れたので、「すでに」は、省けると思います。(髙橋正子)
退院の道にひつじの伸びたる田(正子添削)
帰宅してわが裏山に小望月★★★★
名月や斜めに飛行機雲伸びる★★★
桑本栄太郎
名月の手の届かざるあの娘かな★★★
雲の連れなく淋しそう望の月★★★
高層の団地を照らす良夜かな★★★★
廣田洋一
タイガースアレを達成九月尽★★★
一歩ごとに桜紅葉の散りにけり★★★
桜紅葉残り少なき木の有りて★★★
弓削和人
闇深く秋雨ばかり立ち止まり★★★
十六夜は雨に隠れり軒の縁★★★
溝に落つ木の実のいのち息づいて(原句)
「息づく」がやや観念的ですね。(髙橋正子)
溝に落つ/木の実のいのち輝いて(正子添削)
9月29日(5名)
小口泰與
縄張の鳥の定位置枯木かな★★★
参道の木木紅葉や蒼き空★★★★
妄想にどつぷり浸り真夜の秋★★★
廣田洋一
星一つ見えぬ空や今日の月★★★
もう一度外に出てみる良夜かな★★★★
隣人の家を売りたる愁思かな★★★
多田有花
退院す運動会の声聞こゆ★★★
澄む秋となりたる街へ退院す★★★★
彼岸花咲くふるさとへ帰り着く★★★★
※退院おめでとうございます。久しぶりの家ですね。お大事に。(髙橋正子)
桑本栄太郎
風のなくひやりと天に望の月★★★★
名月を撮るため棟の上に待つ★★★
酔うほどに酌めども尽きぬ月見酒★★★
弓削和人
名月の虫の音殊に澄みにけり★★★★
主季語は「虫の音」(髙橋正子)
望の月夜の香を伴いて★★★
やや寒の湖に影さす辰子像 ★★★★
9月28日(5名)
廣田洋一
日差し受け弾け飛びたり椿の実★★★★
色付きたる湘南の田や豊の秋★★★
ビル谷間ゆるゆる登る今日の月★★★
小口泰與
外つ国へ帰る燕の逞しき★★★★
赤城よく嶺までさらし早生蜜柑★★★
夜の風に木犀の香のたたなわる★★★
多田有花
<近大病院三句>
外はもう涼しくなりぬ彼岸過★★★
今日退院街秋涼になるという★★★
秋朝日葛城山の上に出て★★★
桑本栄太郎
桐の実の青空遠く色づきぬ★★★★
コスモスの風に煽られ揺れ止まず★★★
坂下る桜並木やうす紅葉★★★
弓削和人
待宵や梢を離れてゆくばかり★★★★
湖の外輪山や小名月★★★
「小名月」は見たことのない季語ですが、歳時記に例句はありますか。(髙橋正子)
和人さんが次の句を挙げてくれました。
隣へも酒のあまりや小名月 才磨
「才磨」は江戸時代前期の俳人。
待宵やムーンロードをひとり占め★★★
9月27日(名)
小口泰與
曙の鵙の鋭声や沼の木木★★★
鋭き出刃を鯉にあてけり秋の暮★★★
母刀自の写真整理や秋の暮★★★
多田有花
<近大病院三句>
病む人に夜はいつでも長き夜★★★
秋の陽が病棟廊下に落ちている★★★
産土を離れ迎える秋社かな★★★
桑本栄太郎
八雲忌の遠くに想う松江城★★★
八雲と桑にはどんな関係があるのでしょうか。日本昔話などに「雷さまと桑の木」があるには、ありますが。(髙橋正子)
この件について、失礼しました。桑本さんの「桑」をひっかけて転記したようです。お詫びし訂正します。(髙橋正子)
ぎんなんの潰れ散らばるバス通り★★★
夕闇を歩き鳴きた居りちちろかな★★★
廣田洋一
半月やくっきり登るビル谷間★★★
秋耕を終へたる畑サイロ白し(原句)
リズムが落ち着かないので、添削しました。「白」を言わなくても、すっきりと耕された畑にサイロがすっと立っている景色に、爽秋の感じは出ると思います。(髙橋正子)
秋耕を終へたる畑サイロ立つ(正子添削)
防災の品々書かれ秋団扇★★★
弓削和人
行く秋を起床の窓より眺めおり★★★
行く秋や瀬の鳴る方へ耳かたぶ(原句)
行く秋や瀬の鳴るほうへ耳かたぶけ(正子添削)
「かたぶ」は「かたぶく」を端折ったものと考えられますが、こういう言い止めかたはありません。字余りになっても、「かたぶく」とします。(髙橋正子)
橋たもと笛吹く人や曼珠沙華★★★
9月26日(4名)
小口泰與
湯の街の磴上りけり火の恋し★★★★
時の火の山の形や秋夕焼★★★
夕暮の谷川岳や身に染みし★★★★
「染みし」の「し」が落ち着かないですね。「き」か「ぬ」がよいと思います。(髙橋正子)
多田有花
<近大病院三句>
病棟の窓より見るや夕月夜★★★★
退院の予定聞くなり秋晴に★★★
彼岸花見ることもなく彼岸明★★★
廣田洋一
蟷螂の斧を引きずる蟻の列★★★
蟷螂や雌の出方を窺へり★★★
柿十個友と分け合ひ子規忌かな★★★
桑本栄太郎
夕闇を歩きちちろの迎えけり★★★★
ぎんなんのつぶれ数多やバス通り★★★
嶺の端に集う茜やいわし雲★★★
9月25日(4名)
小口泰與
長月の砂場熱砂子や子の声よ★★★
飛び鳴きの鵯や三山晴れ渡る★★★
草刈りの音も構わず懸巣かな★★★
多田有花
<近大病院三句>
月の舟太陽風に帆をあげて★★★
満ちてゆく月待つ今宵芋煮付★★★★
秋の朝今朝の採血六本で★★★
桑本栄太郎
朝冷えや君の夢見のひと頻り★★★
やや寒み一枚羽織り又眠る★★★
秋雲の茜となりぬ入日かな★★★
弓削和人
鶏頭のすくと立ちたる茶店寄り★★★
「茶店寄り」は、「茶店に寄り」とすべきところです。(髙橋正子)
乳頭の温泉巡りはな薄★★★
「はな薄」は、中句からのつながりで一見して読みにくいです。
「花すすき」とする方がよいと思います。(髙橋正子)
コスモスを離れぬ蝶や暮小径 ★★★
下五は「暮の径」でよいと思います。(髙橋正子)
9月24日4名)
小口泰與
満月を手水に移す吾子の顔★★★
暁の沼黄を点じたる黄鶺鴒★★★
菊を切ることは手なれや寺の主★★★
多田有花
<近大病院三句>
秋分の夜の病院食はお寿司かな★★★
大阪湾隔て秋晴れ六甲山★★★
金剛山うろこ雲を戴きて★★★
桑本栄太郎
朝冷えや君の夢みてなみだせり★★★
身に入むや朝の静寂の青き空★★★
その後の想うすべなき芙蓉の実★★★
廣田洋一
彼岸花供えて来る旅の空★★★★
道なりに歩む花野や花踏まず★★★★
赤蜻蛉しきりに叩く水面かな★★★
9月23日(3名)
小口泰與
銃眼を稲妻抜ける夕間暮★★★
蜻蛉や沼に映つれる樹木の影★★★
暁の沼秋の野鳥の声数多★★★
多田有花
<近大病院三句>
去る人と来る人ありぬ秋彼岸★★★
一週間ぶりの入浴秋彼岸★★★
秋分の雨が隠せり金剛山★★★
桑本栄太郎
父の夢またも見て居り秋彼岸★★★
秋風の音たつるこそ哀しけり★★★
木々の枝の躍る眼下や野分荒れ★★★
9月22日(4名)
小口泰與
ちょんちょんと水輪生み出す蜻蛉かな★★★
柔らかき風に包まる秋の沼★★★
稲妻や書肆に逃げ込む女学生★★★
多田有花
<近大病院三句>
わが足で歩くは嬉し秋の夕暮★★★
夜の雨あがりし秋の金剛山★★★
秋分をはさみ点滴始まりぬ★★★
桑本栄太郎
秋雨やうすく色づく庭の木々★★★
桜木の早も色づくうす紅葉★★★
歩き行く辻に色づく花梨の実★★★
弓削和人
朝がおの蕊しろたえに萌えいづる★★★
アサガオの花びら瑠璃に託したり★★★
露二つ寄りて一つになりたしや★★★
「なりたし」が問題です。写生が大事です。(髙橋正子)
9月21日(4名)
小口泰與
曙につと鳴き出せる鶲かな★★★
水澄むや赤城の裾野つばらなる★★★
ごうごうと蝦蟇の吠えるや秋の沼★★★
廣田洋一
莢隠元細長く垂れ下がりけり★★★
道端の隠元畑や緑濃し★★★
紫の日毎濃くなる式部の実★★★
多田有花
<近大病院三句>
秋彼岸ようやく病名定まるか★★★
点灯が終える病棟の長き夜(原句)
「点灯によって、病棟の長い夜が終わる」という意味だと思いますが、一読してすぐには、わかりにくいです。(髙橋正子)
点灯され病棟の長き夜が終わる(正子添削)
傷の癒え歩行許可おり爽やかに★★★
桑本栄太郎
夢語る星の夜空や賢治の忌★★★★
下冷えや目覚めて想うよべの夢★★★
秋彼岸哀しかりけり父の夢★★★