自由な投句箱/11月21日~11月30日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/11月21日~11月30日

11月30日(1句)
 <播磨町・大中遺跡公園>
★冬浅し野路菊たっぷり香りおり/多田有花
まだ晩秋の感じが残っていて、枯れ始めた蓮など目に付き始めるが、野路菊は咲き残り、日差しを受けてたっぷりと香っている。冷え始めた大気に菊の香りが快い感触をもたらしてくれる。(髙橋正子)
※ノジギクは、牧野富太郎が発見し命名。六甲山系が東限とされる。(正子注)
11月29日(1句)
★太陽のこよなき日なり花八手/小口泰與
「太陽のこよなき日」は、太陽がありがたく、うららかな日と解釈したい。八手の花はそんな日に思いきり白い花を開いているように見える。(髙橋正子)
11月28日(1句)
★時雨来る逃げ急ぎたる子らの声/廣田洋一
さっと一降り来る時雨の様子が「逃げ急ぎたる子らの声」によく表され、この時を逃さず的確情景を捉えていて、景色がよく見える句となっている。(髙橋正子)
11月27日(1句)
★花八手かっちり嵌らぬねじ回し/多田有花
全く同じように見えるねじでありながら、嵌めるとかっちりと嵌らない。これも経験すること。微妙に違っているのだろうが、これも不思議というほかない。きっちり決まった形の八手の花を見るにつけ、この世のかっちり決まったものが意外や違っている。(髙橋正子)
11月26日(1句)
★短日や日々の日課を確実に/多田有花
日々日暮れが早くなっていき、年末へと近づくと、するべき仕事も多くなる気がする。そういうときは、日々のすべきことを確実に、慌てずこなしてゆくのが一番だと悟る。(髙橋正子)
11月25日(2句)
★髪切りて冬菊の道帰りけり/多田有花
冬菊は日当たりのよいところに咲くが、その道を歩くにせよ、髪を切ったうなじにはひんやりと風があたる。この言い難い感触が冬菊を通して伝わってくる。「冬菊」によって句に品がでた。(髙橋正子)
★餐会生け飾られる実南天/弓削和人
午餐会の少し華やいだ温かい雰囲気が実南天によってよく伝わってくる。(髙橋正子)
11月24日(1句)
★色艶磨き売られけり/廣田洋一
寒々とした冬の日、よく磨かれた、色も艶もよい林檎が店頭にあると、その健康的な明るさに元気がもらえる。(髙橋正子)
11月23日(1句)
★大根の葉のひろびろと雨を受け/弓削和人
大根がよく育ち、葉が青々としている。凍えるような冷たい雨なら、「ひろびろ」と言う感覚にはならないが、いい冬の雨なのだろう。無理のない表現がいい。(髙橋正子)
11月22日(1句)
★渓流の速きに踊る散紅葉/小口泰與
渓流の水に散った紅葉は、それだけ十分美しいが、流れに翻弄されて踊る様子も流れゆく方を思えば味わいが増してくる。(髙橋正子)
11月21日(1句)
★児童らの雲梯渡る冬うらら/桑本栄太郎
雲梯にぶら下がっている児童たちが楽しそうだ。うららかな冬の日の児童たちにほっこりとした暖かさをもらう。(髙橋正子)

11月21日~11月30日

11月30日(5名)
小口泰與
夕暮の梢や二羽の寒雀★★★
剣山の如き妙義山や鷹一つ★★★
水蹴りて羽音重たき小白鳥★★★★
多田有花
<播磨町・大中遺跡公園三句>
冬の朝弥生住居を燻す煙★★★
時おりは風が誘いし楢落葉★★★
冬浅し野路菊たっぷり香りおり★★★★
まだ晩秋の感じが残っていて、枯れ始めた蓮など目に付き始めるが、野路菊は咲き残り、日差しを受けてたっぷりと香っている。冷え始めた大気に菊の香りが快い感触をもたらしてくれる。(髙橋正子)
廣田洋一
散紅葉赤く染めたる法の庭★★★
庭の隅一灯点す山茶花かな★★★
笙の音の挙式を祝ひ小春かな★★★
桑本栄太郎
くさぐさの色を散り敷く落葉かな★★★
との曇り十一月の仕舞いけり★★★
鉢ものを室に取り入れ寒波来る★★★
弓削和人
布団着て起きる眼や朝日和★★★
枇杷の花咲くや昼日のかきぐもり★★★★
白菜の四方八方庭のすみ★★★
11月29日(5名)
小口泰與
山風の荒める里や蒸飯★★★
太陽のこよなき日なり花八手★★★★
「太陽のこよなき日」は、太陽がありがたく、うららかな日と解釈したい。八手の花はそんな日に思いきり白い花を開いているように見える。(髙橋正子)
白銀の浅間や今朝の冬雲雀★★★
廣田洋一
浅漬けや半端な野菜集めたり★★★
軒の下薪を積上げ冬構★★★
川の鯉池に移して冬構★★★
多田有花
<播磨町・大中遺跡公園三句>
ねずみもちの実の上はつつぬけの青空★★★
冬晴が弥生遺跡を包みおり★★★
冬はじめ弥生の住まいに入りけり★★★
桑本栄太郎
しぐるるや眼下に赤き冬紅葉★★★
雷雨予報雪起こしかも知れず★★★
信号の尾灯つづくよ冬の雨★★★
弓削和人
大輪の花に冬蜂身をあずけ★★★
小糠雨雲にとどかむ枇杷の花★★★
花八ツ手大樹に寄りてはじけ咲く★★★★
11月28日(5名)
小口泰與
煮凝や手に温もりの小鹿田焼★★★
水割りの氷かちかち江戸切子★★★
細かなる雨や木叢の木の葉散る★★★
廣田洋一
短日や献灯点る段葛★★★
時雨来る逃げ急ぎたる子らの声★★★★
さっと一降り来る時雨の様子が「逃げ急ぎたる子らの声」によく表され、この時を逃さず的確情景を捉えていて、景色がよく見える句となっている。(髙橋正子)
浅漬けの大根当てに一人酒★★★
多田有花
<兵庫県立考古博物館三句>
古代にもありけり播磨の冬の晴れ★★★
枯葦にたっぷり朝の日差しかな★★★★
博物館彩る蔦の冬紅葉★★★★
桑本栄太郎
鈴生りの柚子の色づく垣根かな★★★
綿虫に手を差し伸べて逃げらるる★★★
宵空の凛と尖りぬ冬の月(原句)
元の句は、<宵空の凛と尖りぬ/冬の月>と「尖りぬ」のあとで切れています。意味は「宵空が凛と尖った」になります。これでよろしいですか。(髙橋正子)
弓削和人
農機具の音やひびける冬の空★★★
農機具が具体的に示されるとよいです。(髙橋正子)
紅葉散る飛石をさけ立ちゆけり★★★
〈春日山原始林〉
冴ゆる杉原始林のつづく路★★★
11月27日(4名)
小口泰與
白鳥の影乱さずに熟寝せり★★★★
余燼なお身の内にあり冬木の芽★★★
山からの風の落差や息白し★★★
多田有花
花八手かっちり嵌らぬねじ回し★★★★
全く同じように見えるねじでありながら、嵌めるとかっちりと嵌らない。微妙に違っているのだろうが、これも不思議というほかない。きっちり決まった形の八手の花を見るにつけ、この世のかっちり決まったものが意外や違っている。(髙橋正子)
<播磨町・大中遺跡公園>
冬晴に弥生の住居を復元中★★★
<別府鉄道跡>
冬ぬくし廃線車両に陽がいっぱい★★★★
桑本栄太郎
歯噛みつく葉の下枝なる冬木かな★★★
枯萩となりて残りぬ花のあり★★★
カラカラと軽ろき音たて木の葉舞う★★★
弓削和人
二階より見下ろし石蕗のにこにこと★★★★
暮早し客間のあかりへ通されり★★★★
かそけくも鳴きたる虫や冬の草★★★
11月26日(4名)
小口泰與
老残にあらず髪膚や寒牡丹★★★
裂帛の鋭声や沼の小白鳥★★★
鳥の群忽と飛び立つ枯野かな★★★★
多田有花
小鳥群れ残る紅葉の枝に来る★★★
冬の空青きが常よ瀬戸内は★★★
短日や日々の日課を確実に★★★★
日々日暮れが早くなっていき、年末へと近づくと、するべき仕事も多くなるきがする。そういうときは、日々のすべきことを確実に、慌てずこなしてゆくのが一番だと悟る。(髙橋正子)
桑本栄太郎
階段を降りて眼下に冬紅葉★★★
庭先にパンパグラスや冬ざるる★★★
八つ手咲く厨明かりや夕餉の香★★★
弓削和人
摘みきれぬ蜜柑畠なりきのくに線(原句)
摘みきれぬ蜜柑畠やきのくに線★★★(正子添削)
海凪て冬雨弾く急行線★★★
このままで、問題はありません。
海は凪ぎ冬雨を弾く急行線【訂正後】
冬虫の鳴きはじめるや人恋し★★★
11月25日(5名)
小口泰與
雲間より夕日差したり花八手★★★
柊の香やかの時のかの想い★★★
裏庭に日の射しにけり枇杷の花★★★★
廣田洋一
公園を摸細工染めの落葉かな★★★
お土産は水戸納豆と旅の朝★★★
大振りの葉を押しのけて石蕗の花★★★
多田有花
髪切りて冬菊の道帰りけり★★★★
冬菊は日当たりのよいところに咲くが、その道を歩くにせよ、髪を切ったうなじにはひんやりと風があたる。この言い難い感触が冬菊を通して伝わってくる。「冬菊」によって句に品がでた。(髙橋正子)
蕪炒める煮物と違うやわらかさ★★★
つやつやと陽を照り返し石蕗の花★★★
桑本栄太郎
市ヶ谷の銀杏散りぬる憂国忌★★★
日当たりの猫毛繕い冬うらら★★★
踏みゆけば匂い立ちけり落葉道★★★
弓削和人
午餐会生け飾られる実南天★★★★
午餐会の少し華やいだ温かい雰囲気が実南天によってよく伝わってくる。(髙橋正子)
珈琲や色を深める夕冬日★★★
草枯れの通り路ゆかばとの曇り★★★
11月24日(5名)
小口泰與
ハイボール氷の遊ぶグラスかな★★★
寒犬の声のこぼるる風の夜★★★
隼や一過の如き新幹線★★★
多田有花
冬紅葉見て薬膳の昼餉かな★★★
<山崎城跡・紙屋門>
初冬の城跡の門くぐりゆく★★★
戻りけり白き山茶花咲く庭に★★★
廣田洋一
陸奥の温泉宿や霜の朝★★★
落葉して広き林を見渡しぬ★★★
冬林檎色艶磨き売られけり★★★★
寒々とした冬の日、よく磨かれた、色も艶もよい林檎が店頭にあると、その健康的な明るさに元気がもらえる。(髙橋正子)
桑本栄太郎
山肌の更に色濃く山眠る★★★
匂い立つ銀杏落葉を歩きけり★★★
元の木の何処にありや朴落葉★★★
弓削和人
石蕗花にかの家は玩具を添えて居り★★★
土温し白き大根の実はあらわ(原句)
土温し白き大根の根のあらわ★★★★(正子添削)
冬の薔薇立ちたる二本寄りて咲く★★★
11月23日(5名)
小口泰與
森からの風の霊気や鷹一つ★★★
枯柳小川隔てて日を分つ★★★
隠れん坊の小さき背中置き炬燵★★★★
多田有花
<宍粟市・最上山公園もみじ山三句>
山茶花の咲く東屋より町を見る★★★
下りゆく冬の紅葉のその中を★★★
万両や鐘撞堂より降り来れば★★★
廣田洋一)
稜線のなだらかに伸び山眠る★★★★
雨上がり落葉光れる道の端★★★
朝日浴びきらきら光る霜畑★★★
桑本栄太郎
寝坊せし夢や勤労感謝の日★★★
上げ髪の才媛つづる一葉忌★★★
しぐれ居て人出あまたや冬紅葉★★★
弓削和人
水鳥の雨にさらされ浮きにけり★★★★
大根の葉のひろびろと雨を受け★★★★
大根がよく育ち、葉が青々としている。凍えるような冷たい雨なら、「ひろびろ」と言う感覚にはならないが、いい冬の雨なのだろう。無理のない表現がいい。(髙橋正子)
姫椿遠回りする園生かな★★★
11月22日(4名)
小口泰與
舞ふ空の此の面彼の面の寒鴉★★★
山よりの強き北風身に受けし★★★
渓流に落ちし紅葉の乱舞せり(原句)
元の句は、少し説明的なので直しました。
渓流の速きに踊る散紅葉★★★★(正子添削)
渓流の水に散った紅葉は、それだけ十分美しいが、流れに翻弄されて踊る様子も流れゆく方を思えば味わいが増してくる。(髙橋正子)
多田有花
<宍粟市・最上山公園もみじ山三句>
足元も頭上も冬の紅葉かな★★★
冬浅し木々は名残の鮮やかさ★★★
冬紅葉官兵衛飛躍の城址に★★★
桑本栄太郎
冬靄の我が街埋もる朝かな(原句)
「冬靄の我が街」が何に埋もれるのか、わかりません。「の」の使い方にお気をつけください。(髙橋正子)
冬靄に我が街埋もる朝かな★★★★(正子添削)
緋を尽くす満天星つつじ冬日さす★★★
おもいでを誘うように雪ばんば★★★
弓削和人
冬ざれの蚊の鳴き過ぎぬ夕べの灯★★★
硝子戸に垂れる結露や今朝の冬★★★
朝明けや原のあなたに冬の霧★★★
11月21日(4名)
小口泰與
木枯らしの言霊のごと吾にまとい★★★
霜の夜や小半酒をたしなみし★★★
冬星の湖を木の間に酒酌めり★★★★
多田有花
ゆるやかに斜面をゆくや冬紅葉★★★
水落ちて浮かぶ落葉を揺らしおり★★★
初冬の彩の山歩きけり★★★
桑本栄太郎
児童らの雲梯渡る冬うらら★★★★
雲梯にぶら下がっている児童たちが楽しそうだ。うららかな冬の日の児童たちにほっこりとした暖かさをもらう。(髙橋正子)
枝先に花の残りぬ萩枯るる★★★
想い出のように現はる雪ばんば★★★
弓削和人
〈春日野〉
隆々と杉は立ちけり冬やしろ★★★★
冬ざれの大社の路や春日巫女★★★
朱にそめし春日大社や山眠る★★★

自由な投句箱/11月11日~11月20日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/11月11日~11日20日

11月20日(1句)
★勇忌の句碑にしぐるる祇園かな/桑本栄太郎
勇は耽美派の歌人の吉井勇のこと。1886年東京高輪に生まれ、1960年11月19日、京都で亡くなっている。「かにかくに祇園はこひし寝(ぬ)ときも枕にしたに水のながるる」の歌碑があり、祇園を愛した歌人として知られる。大衆に知られたところでは、「ゴンドラの唄」(中山晋平作曲)の作詞をしている。「しぐるる祇園」は祇園の芸妓たちに「しらぎくになってしまわれた」と嘆かせた心境に通じるものがある。(髙橋正子)
11月19日(1句)
★浮かび咲く八手の花や夕の空/弓削和人
夕べの空に八手の白い花が咲いている。夕べなので、花火のような白い花が濃い緑の葉に浮いたように見える。抒情的なやさしい句。(髙橋正子)
11月18日(1句)
 <書写山もみじまつり曼荼羅特別奉納公演>
★冬暮色払いて太鼓の一打かな/多田有花
曼荼羅の特別奉納には、般若心経を唱える中で和太鼓が奉納演奏されたとのこと。和太鼓がどんと一打ちされると、寺の暮色が払われるような響きが広がる。堂々とした寺は、「冬暮色」もまた堂々と深みがある。(髙橋正子)
11月17日(2句)
★高嶺まで眼間に見ゆ霜の朝/小口泰與
泰與さんのお住まいからは、榛名山、浅間山、赤城山など高い山が見える。晴れた夜の冷え込みで朝には霜を見るようになった。朝の研ぎ澄まされた冷気に高嶺さえも眼間に見えるすばらしさ。それが句になった。(髙橋正子)
★朝明けや空までつづく道に冬/弓削和人
朝が明けてくると、空までつづく道が寒々としてそこに冬が来たように思えた。空までつづく道は、うねうねとした人ひとりいない、偶然にも車が一台通り過ぎる山道か、丘の道が空へつづいているのか。(髙橋正子)
11月16日(1句)
★寄せ合うて本を読む児ら冬電車/弓削和人
電車に並んで座った幼い子が本を寄せ合うようにして読んでいる姿はほほえましい。冬の電車のほっこりとした暖かさが幼子を包んで眺めているものも幸せな気持ちになる。(髙橋正子)
11月15日(1句)
<故郷の風呂焚きの追憶>
★外焚きの榾火ごとんと夕暮るる/桑本栄太郎
「榾火」は、季語としては囲炉裏にもちいる焚きものを指すが、この句では解釈をひろげてよいと思う。榾をくべて沸かす風呂は、夕暮れも早い冬には体を温まりながら風呂を焚く。そろそろ沸くころになると急に日暮れて人恋しい気持ちにもなる。「ごとん」にその気持ちが出ている。(髙橋正子)
11月14日(1句)
★とびとびに青空見ゆる初時雨/廣田洋一
初時雨のせいか、青空が雲間にとびとびに見えている。そんな空からの時雨に冬の初めが思い知れる。(髙橋正子)
11月13日(1句)
★踏みゆけば匂い立ち居り落葉かな/桑本栄太郎
公園や道に積もっている落葉は、さほど匂いを感じないが、踏んでゆくと、踏まれた力のせいか、落葉の匂いがする。日々深まる季節の匂いが落葉の匂いでもあろうか。(髙橋正子)
11月12日(2句)
★ぶらりゆけば切株燃やす焚火の香/多田有花
ぶらりと歩いていくと庭の木をせいりたのか、切株を燃やしている。その焚火の匂いに懐かしさを覚えるのは、私だけか。(髙橋正子)
★日向ぼこ猫がそうしていた部屋で/川名ますみ
飼っていた猫は亡くなったのだろうが、その猫が気持ちよさそうに日向ぼこをしていた部屋に入るとぽかぽかと日が差している。猫がしていたように私もしてみた。かわいい猫がそこにいるようだ。(髙橋正子)
11月11日(1句)
★初雪や索道の荷の天へ進み/小口泰與
索道に吊り下げられた荷物が、天へと進んで行くように運ばれている。おりしも初雪が降ってきて絵にしたいような場面になっている。初雪が効いている。(髙橋正子)

11月11日~11月20日

11月20日(5名)
多田有花
日当たればさらに鮮やか冬紅葉★★★
地蔵尊桜落葉のちらほらと★★★
南天のつやつや赤き地蔵尊(原句)
「赤き」(連体形)とすると、「地蔵尊」に掛かります。「赤し」(終止形)とし、切れを入れます。(髙橋正子)
南天のつやつや赤し地蔵尊★★★(正子添削)
小口泰與
小春日や我にまつわる風丸し★★★
凍蝶や今朝の浅間の裾まだら★★★
ことごとくカメラ任せや冬の波★★★
廣田洋一
小屋の中目だけ動かす鷹一羽★★★
羽ばたきの練習したる鷹一羽★★★★
木の根元掻き寄せられし落葉かな★★★
桑本栄太郎
歩道濡れ雨のあがりぬ冬ざるる★★★
火と燃ゆる冬の紅葉やバス通り★★★
勇忌の句碑にしぐるる祇園かな★★★★
勇は耽美派の歌人の吉井勇のこと。1886年東京高輪に生まれ、1960年11月19日、京都で亡くなっている。「かにかくに祇園はこひし寝(ぬ)ときも枕にしたに水のながるる」の歌碑があり、祇園を愛した歌人として知られる。大衆に知られたところでは、「ゴンドラの唄」(中山晋平作曲)の作詞をしている。「しぐるる祇園」は祇園の芸妓たちに「しらぎくになってしまわれた」と嘆かせた心境に通じるものがある。(髙橋正子)
弓削和人
短日や児らの遊具に日影さす★★★
帰り花閉時を告げる植物園★★★★
葉牡丹や繕う垣にあふれ咲く★★★

11月19日(5名)
小口泰與
北風の背なを押しくる山の道★★★★
微醺にて炬燵に眠る宵の口★★★
一椀の昆布ゆらゆら息白む★★★
多田有花
帰路に着くライトアップの冬紅葉★★★★
冬の夜に瞬くものは街の灯り★★★
ストールを巻いて机に向かいけり★★★
廣田洋一
霜覆ふ車窓にかけるやかんの湯★★★
すぐそこと傘を持たずに初時雨★★★
スコップの残りし砂場初時雨★★★★
桑本栄太郎
火と燃ゆる冬の紅葉の眼下★★★
葉が散れば銀杏梢や冬木めく★★★
吾が影の丈の長きや落葉踏む★★★★
弓削和人
日おもてに石蕗の花咲く診療所★★★★
ともしびの泳ぐ下山や暮早し★★★
浮かび咲く八手の花や夕の空★★★★
夕べの空に八手の白い花が咲いている。夕べなので、花火のような白い花が濃い緑の葉に浮いたように見える。抒情的なやさしい句。(髙橋正子)
11月18日(5名)
小口泰與
寒鴉支離滅裂に鳴きにけり★★★
山峡の湖の毛嵐暁の星★★★
小春日や背に日を浴びる峠道★★★★
多田有花
<書写山もみじまつり曼荼羅特別奉納公演三句>
声明の響く短日常行堂★★★★
冬暮色払いて太鼓の一打かな★★★★
曼荼羅の特別奉納には、般若心経を唱える中で和太鼓が奉納演奏されたとのこと。和太鼓がどんと一打ちされると、寺の暮色が払われるような響きが広がる。堂々とした寺は、「冬暮色」もまた堂々と深みがある。(髙橋正子)
冬の宵声明と響く大太鼓★★★
廣田洋一
小春日や順番待ちの滑り台★★★
代々の墓に返り咲きたる躑躅かな★★★
庭の隅どっと灯れる山茶花かな★★★★
桑本栄太郎
小春日のランナー走る半袖に★★★
見上げれば銀杏梢の裸木に★★★
午後四時の早やも暮れゆく冬日かな★★★
弓削和人
柊の白き花ほら葉にかくれ★★★
〈生駒山〉
落葉敷く路を頼るや生駒山★★★
山茶花や歩を軽くする登山道 (原句)
「何」が「歩を軽くする」のか、曖昧です。現代俳句では、特に主語が示されなければ、作者が主語となるのがほとんどです。(髙橋正子)
山茶花や歩の軽くなる登山道★★★★(正子添削)
11月17日(4名)
多田有花
<書寫山圓教寺大講堂>
幾冬を西向き座せる釈迦如来★★★
<書寫山圓教寺常行堂>
阿弥陀如来の青き螺髪や冬うらら★★★
短日の地は暮れ残照飛機に差す★★★★
小口泰與
吹き下ろす名物の風鷹一つ★★★
高嶺まで眼間に見ゆ霜柱(原句)
高嶺まで眼間に見ゆ霜の朝★★★★(正子添削)
泰與さんのお住まいからは、榛名山、浅間山、赤城山など高い山が見える。晴れた夜の冷え込みで朝には霜を見るようになった。朝の研ぎ澄まされた冷気に高嶺さえも眼間に見えるすばらしさ。それが句になった。(髙橋正子)
桑本栄太郎
大根の立ちあがりたる白さかな★★★★
みどり濃き畝の並びぬ冬菜畑★★★
綿虫に我が手を躱し逃げらるる★★★
弓削和人
蛇口より雫したたる冬の宵★★★
ぬくとさのかたまり過ぎぬ冬はじめ★★★★
朝明けや空までつづく道に冬★★★★
朝が明けてくると、空までつづく道が寒々としてそこに冬が来たように思えた。空までつづく道は、うねうねとした人ひとりいない、偶然にも車が一台通り過ぎる山道か、丘の道が空へつづいているのか。(髙橋正子)
11月16日(4名)
小口泰與
大沼の波の言の葉冬の月★★★
今日も事なし小春日に書肆に居り★★★
大利根の波ことさらに神無月★★★
多田有花
<書写山もみじまつり三句>
摩尼殿より冬の紅葉を見下ろしぬ★★★
千年杉ゆるり見上げて冬晴に★★★
冬浅き青空戴く大講堂★★★
桑本栄太郎
山茶花のつぼみ笑みたる歩道かな★★★
枯萩となりて明るき小径ゆく★★★
着水の白き飛沫や鴨来たる★★★
弓削和人
初時雨ほのかに淡き宿の窓★★★
七五三細める眼の神社かな★★★
寄せ合うて本を読む児ら冬車両(原句)
寄せ合うて本を読む児ら冬電車★★★★(正子添削)
電車に並んで座った幼い子が本を寄せ合うようにして読んでいる姿はほほえましい。冬の電車のほっこりとした暖かさが幼子を包んで眺めているものも幸せな気持ちになる。(髙橋正子)
11月15日(5名)
小口泰與
連峰はなべて冠雪峠道★★★
冠雪の山は深閑川答ふ★★★
縦横に庭を荒らせし冬土竜★★★
廣田洋一
八重にして薄紅混じる返り花★★★
何となく明るき空や冬の雨★★★
冬めくや旅行鞄の膨らみぬ★★★
多田有花
<書写山もみじまつり三句>
陽を受けてなお艶やかに冬紅葉★★★
鈍色に古刹の甍冬紅葉★★★
冬うららみな靴を脱ぎ摩尼殿へ★★★
桑本栄太郎
インフルエンザ予防接種や朝早く★★★
冬茜残す入日や嶺の奥★★★
<故郷の風呂焚きの追憶>
外焚きの榾火ごとんと夕暮るる★★★★
「榾火」は、季語としては囲炉裏にもちいる焚きものを指すが、この句では解釈をひろげてよいと思う。榾をくべて沸かす風呂は、夕暮れも早い冬には体を温まりながら風呂を焚く。そろそろ沸くころになると急に日暮れて人恋しい気持ちにもなる。「ごとん」にその気持ちが出ている。(髙橋正子)
弓削和人
立ち止るさきもつづくや冬紅葉★★★
天守いまそそり立ちけり神の留守★★★
落ちそうや寄せ合う冬の柿の房★★★
11月14日(5名)
小口泰與
鷹舞うや凹凸激し妙義山(原句)
鷹舞うや凹凸激しき妙義山★★★(正子添削)
渓流の小石流るや神無月★★★
こだわりて寒鮒釣の浮子を変ふ★★★
多田有花
<書写山もみじまつり三句>
ロープウェイで書写山上の冬紅葉★★★
冬紅葉の彼方に見える姫路城★★★
小春日の山路を歩き仁王門★★★
廣田洋一
とびとびに青空見ゆる初時雨★★★★
初時雨のせいか、青空が雲間にとびとびに見えている。そんな空からの時雨に冬の初めが思い知れる。(髙橋正子)
大根干す媼の腕のまくれけり★★★
歩きつつ上着脱ぎたる小春日和★★★
弓削和人
北風(きた)に樹や割れ目を覆う枝葉なく★★★
身構える梢ばかりや北の風★★★
北風に向かうは吾子の受験かな★★★
桑本栄太郎
木々の葉の吹かれいるさへ冬きざす★★★
黄落となりぬ銀杏の梢かな★★★
時雨るるや炎のような唐かえで★★★
11月13日(3名)
多田有花
白菜を豚肉と炒め夕餉とす★★★
朝の月十一月の山の端に★★★
冬枯のえのころ光る流れのそば(原句)
冬枯のえのころ光る流れあり★★★★(添削例)
元の句はリズム的に気になります。妙案が浮かびませんが、添削例のようになおしました。(髙橋正子)
廣田洋一
鶺鴒のさっと餌を捕る冬の川★★★
絶え間なく散りたる紅葉青き空★★★
一輪の赤く丸まり冬薔薇★★★
桑本栄太郎
吹き溜まる落葉を選び踏みゆけり★★★
踏みゆけば匂い立ち居り落葉かな★★★★
公園や道に積もっている落葉は、さほど匂いを感じないが、踏んでゆくと、踏まれた力のせいか、落葉の匂いがする。日々深まる季節の匂いが落葉の匂いでもあろうか。(髙橋正子)
スーパーの跡地に枯るるゑのこ草★★★
11月12日(6名)
小口泰與
北風に流され離る二羽の鳶★★★
健児等は赤城颪に鍛えられ★★★★
凩や軽自動車の中華蕎麦★★★
多田有花
ぶらりゆけば切株燃やす焚火の香★★★★
ぶらりと歩いていくと庭の木をせいりたのか、切株を燃やしている。その焚火の匂いに懐かしさを覚えるのは、私だけか。(髙橋正子)
レンズ越し十一月の薔薇を見る★★★
貨物列車が頭上過ぎゆく冬の朝★★★
廣田洋一
神棚の榊取り換へ神の留守★★★
風強し木の実時雨となりにけり★★★
二人してレモン掛け合ふ生牡蠣かな★★★
川名ますみ
眉墨をやや長くひく今朝の冬★★★
日向ぼこ猫がそうしていた部屋で★★★★
飼っていた猫は亡くなったのだろうが、その猫が気持ちよさそうに日向ぼこをしていた部屋に入るとぽかぽかと日が差している。猫がしていたように私もしてみた。かわいい猫がそこにいるようだ。(髙橋正子)
からからと笑うヘルパー小春風★★★
桑本栄太郎
校門の冬の紅葉の枝垂れかな★★★
穂芒の解け銀波そよぎけり★★★
また一羽飛沫立てつつ鴨来たる★★★★
弓削和人
皆枯るる蓮に一茎立ちにけり★★★★
枯蓮の池の湖面や淡き雲
「池の湖面」が気になります。「湖面」は「湖の面」です。(髙橋正子)
枯蓮の池の水面や淡き雲★★★(正子添削)
枯蓮やものみなすべて夕の中★★★
11月11日(5名)
小口泰與
空風や焼き饅頭を売る老舗★★★
初雪や索道天へ進みたる(原句)
初雪や索道の荷の天へ進み★★★★(正子添削)
索道に吊り下げられた荷物が、天へと進んで行くように運ばれている。おりしも初雪が降ってきて絵にしたいような場面になっている。初雪が効いている。(髙橋正子)
色褪せし紺の暖簾や焼芋屋★★★
多田有花
近づくほど白さを増せり冬の菊★★★
積まれたる薪に浅き冬の日差し★★★★
背後より冬の光が薔薇に差し★★★
桑本栄太郎
バスを待つ人の厚着や朝の客★★★
小春日やデートのように人と逢う★★★
亜郎忌の今日も晴れたる田道かな★★★
廣田洋一
縁側に新聞広げ大根干す★★★
引き売りの行列乱れ時雨かな★★★
神の留守陸奥の地に旅をせり★★★
弓削和人
夜が更けて湯ざめばかりの良書かな(原句)
読みふけて良書に湯ざめしておりぬ★★★★(正子添削)
祖母の手の入れし湯婆や夜を待ちて★★★
言の葉のぽつりぽつりや冬来る★★★

自由な投句箱/11月1日~11月10日

※当季雑詠3句(秋の句・冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句//11月1日~11月10日

11月10日(1句)
★小春日や銀杏梢のすでに散る/桑本栄太郎
小春日の陽ざしに映える銀杏もよく見れば、梢の黄葉は散って棒のような枝になっている。そんな梢も日に輝いて眩しいほどの景色。(髙橋正子)
11月9日(1句)
★立冬の快晴山野を輝かせ/多田有花
きっぱりとした立冬の景色がいい。立冬と言いながらも快晴で野山は日差しを受け生き生きとしている。(髙橋正子)
11月8日(1句)
★川波をきらきら光らせ冬に入る/多田有花
暦の上で立冬と聞けば、ものみな一斉に冬の気配に包まれる気がする。きらきらと光る川波の光の鋭さ。冬の明るい一景色がさりげなく詠まれている。(髙橋正子)
11月7日(1句)
★深秋の須磨寺に弾く一弦琴/多田有花
須磨寺は源平の戦にまつわるものが諸々ある寺。須磨寺の一弦琴は、須磨琴と呼ばれているようで、私はYou Tubeで初めてその音色を聞いた。曲は「三千世界」であったが、細い琴板に弦が一本張られ数人で演奏していた。素朴と言う音色でもなく、音数は限られ、独特のわびしさの残る音色に思えた。やはり、深秋が似合う音色と思えた。(髙橋正子)
11月6日(1句)
★秋惜しみいつもの道を一人行く/廣田洋一
なんでもないような読みぶりながら、人生の深さが淡々と詠まれていて、ひとり、しみじみとした気持ちになった。(髙橋正子)
11月5日(1句)
★日蔭とて光放てり石蕗の花/桑本栄太郎
石蕗の花の黄色は日蔭にあれば、「光を放つ」ほどの強烈な印象の黄色である。晩秋の小暗さに明るさを足してくれる石蕗の花の生命力自然体で詠まれている。(髙橋正子)
11月4日(1句)
★網棚に秋気残れり終着駅/弓削和人
終着駅で降りるときの特別な気持ち。網棚に置いた荷物を下すときに、物のあったところに残る気配。暗がりの網棚に残る秋気に終着駅の哀愁が感じられる。(髙橋正子)
11月3日(1句)
★紅葉や蒸気霧たつ沼に居り/小口泰與
蒸気霧は、水面の温度と空気との差が8度C以上あるときに発生するとされる。紅葉する沼に冷気が押し寄せたのだろう。沼からは霧が立ち上り、その中に居て、霧と一体となったような幻想的な世界を経験した。(髙橋正子)
11月2日(1句)
★秋の蝶小さき花壇を離れずに/廣田洋一
秋の蝶は花から花へ活発に飛び回るというより、ひとところの花をひらひらと光を撒くように飛んでいる姿をよく目にする。小さな花壇にやって来た蝶もそんな様子。秋の蝶の可憐な澄み切った姿がいい。(髙橋正子)
11月1日(2句)
〈奈良大菊人形展〉
★屋上の菊人形や山暮れて/弓削和人
菊人形は大勢に見られて華やかに輝いているが、屋上の菊人形は、日が陰れば陰り、山が暮れれば菊人形も暮れる。日暮れのわびしさが菊人形にも忍び寄る。(髙橋正子)

★竜胆のふれれば傾ぐやわらかさ/川名ますみ
竜胆はいろいろな種類があって、背の高いものから、細い茎を草地に埋めて花を開くのもある。群生しない竜胆は日が差せば青い花を開く。ふれると傾くほどの青い花のやわらかさに寄り添いたい気持ち。(髙橋正子)

11月1日~11月10日

11月10日(5名)
小口泰與
晩学の俳句や今朝は冬うらら★★★
切岸の一掬の水冬兆す★★★
水切りの十輪や風の冬の鳶★★★

廣田洋一

縁側の媼の背中大根干す★★★
青き首そのまま保ち大根干す★★★
街路樹の木の葉波打つ神渡し★★★
多田有花
残る柿に冬のはじめの日の光★★★
葱刻み昼の味噌汁に入れる★★★
セロシアへ冬の蝶きて蜜を吸う★★★
桑本栄太郎
初冬の早やもひび割れ指のさき★★★
小春日や銀杏梢のすでに散る★★★★
小春日の陽ざしに映える銀杏もよく見れば、梢の黄葉は散って棒のような枝になっている。そんな梢も日に輝いて眩しいほどの景色。(髙橋正子)
穂芒のほどけ銀波そよぎけり★★★
弓削和人
小春の旅隣り座席は縁の人★★★
大根を抜く人はなし猫眠る★★★
鳥居より日ざしやはらか神無月★★★
11月9日(5名)
多田有花
身辺は彩のとき十一月★★★
立冬の快晴山野を輝かせ★★★★
きっぱりとした立冬の景色がいい。立冬と言いながらも快晴で野山は日差しを受け生き生きとしている。(髙橋正子)
冬満月いま沈みゆく夜明け空★★★
廣田洋一
薬屋を囲へる庭の返り花★★★
桜紅葉吹雪の如く散りにけり★★★
からからと絵馬の揺れたり神渡し★★★
小口泰與
赤城よりふり来る風や冬の蜂★★★
八方は枯れ野原なり鳥の声★★★★
小春日や生涯市井の商人よ★★★
桑本栄太郎
紅葉且つ散る並木通りを歩きけり★★★
棚田ゆく畦の彩なす草紅葉★★★
来て見れば早も浮寝の鳥の群れ★★★
弓削和人
〔三笠山〕
冬紅葉三笠の山を朱に染めて★★★
三笠山のぼりくだりや冬紅葉★★★
「三笠山のぼりくだりも冬紅葉(訂正句)」の「も」は、句意を曖昧にしていますので、元の句のほうが良いです。(髙橋正子)
頂きや町村原は冬に入る★★★★
11月8日(5名)
小口泰與
古風なる田舎料理や秋燈★★★
我が庭も初冬の景となりにける★★★
語り部は宿の女将や囲炉裏端★★★
廣田洋一
青空にすっくと立ちし桜紅葉★★★
道端のやはり気になる帰り花★★★
蒲公英の短き茎や帰り花★★★
多田有花
長き夜にヘッドフォンつけピアノ弾く★★★
冬来るたどたどしく弾くショパンかな★★★
川波をきらきら光らせ冬に入る★★★★
暦の上で立冬と聞けば、ものみな一斉に冬の気配に包まれる気がする。きらきらと光る川波の光の鋭さ。冬の明るい一景色がさりげなく詠まれている。(髙橋正子)
桑本栄太郎
陽当たりを選び散策冬来たる★★★
溝川を走る鼬に出会いけり★★★
落葉舞う高校通りの並木かな★★★
弓削和人
冬入りて緋紅なる垣ピラカンサ(原句)
「冬入り」は「冬に入り」としたいです。
冬に入り緋紅の垣はピラカンサ★★★(正子添削)
初冬の皆既月食街あかり★★★★
帰り花夕べの街の坂ゆきて★★★
11月7日(5名)
小口泰與
鵙の贄入日に映える梢かな★★★
枝折戸を押したる音の冷まじや★★★
葦原の隅に朽ち舟ありにける★★★
廣田洋一
産土の幟はためく神渡し★★★
巫女たちの箒目清し神の留守★★★
つやつやと光る柿の実買ひにけり★★★
多田有花
<須磨寺三句>
三重塔雲無き秋天へ立つ★★★
敦盛の首塚彩る薄紅葉★★★
深秋の須磨寺に聴く一弦琴(原句)
深秋の須磨寺に弾く一弦琴★★★★(正子添削)
須磨寺は源平の戦にまつわるものが諸々ある寺。須磨寺の一弦琴は、須磨琴と呼ばれているようで、私はYou Tubeで初めてその音色を聞いた。曲は「三千世界」であったが、細い琴板に弦が一本張られ数人で演奏していた。素朴と言う音色でもなく、音数は限られ、独特のわびしさの残る音色に思えた。やはり、深秋が似合う音色と思えた。(髙橋正子)
桑本栄太郎
火と燃ゆるなんきん櫨や照紅葉★★★
ワクチンの五回目打つや冬来たる★★★
穂芒の風に酔い居り解けたり★★★
弓削和人
土を剥ぎ真白き葱の熱き汁★★★
冬入りに開くる戸口の音透みて(原句)
冬に入る戸口を開ける音澄みて★★★★(正子添削)
小春日やはじめて歩く市場町★★★
11月6日(5名)
小口泰與
群鵙の今に飛来の心当て★★★
心して杣道行くや村芝居★★★
鎮座せる心許なき青瓢★★★
多田有花
<須磨寺三句>
振り返る敦盛像や須磨の秋★★★
六地蔵紅葉の下に並びおり★★★
奥の院真言唱えて巡る秋★★★★
廣田洋一
風吹きて木の実時雨となりにけり★★★
秋惜しみいつもの道を一人行く★★★★
なんでもないような読みぶりながら、人生の深さが淡々と詠まれていて、ひとり、しみじみとした気持ちになった。(髙橋正子)
秋深し波平らかに由比ヶ浜★★★
桑本栄太郎
秋澄むや老夫畑打つ鍬の音★★★
溝川の音の見えずや秋の水★★★
人気なき山里行けば鵙の声★★★
弓削和人
水澄めり水門の辺の渡し舟★★★
花を垂れポストが受けり杜鵑草★★★
風を受け舞い降りたるや芭蕉の葉★★★
11月5日(5名)
多田有花
<震災モニュメント>
身に入むや石刻地球儀落下する★★★
<安徳宮・安徳天皇行在所伝承地二句>
水底にも都はありや秋寂し★★★★
杜鵑草モルガンお雪の灯籠に★★★
小口泰與
木隠れの後架豪華や木の実雨★★★
秋草やここら人家もまばらなり★★★
行く秋やけふは小暗き人と居り★★★
廣田洋一
特Aの格付け目指す今年米★★★
品書きに松茸とあり赤提灯★★★
西口の階段上り時雨けり★★★★
桑本栄太郎
日蔭とて光放てり石蕗の花★★★★
石蕗の花の黄色は日蔭にあれば、「光を放つ」ほどの強烈な印象の黄色である。晩秋の小暗さに明るさを足してくれる石蕗の花の生命力自然体で詠まれている。(髙橋正子)
日矢させば天使のはしご山粧う★★★
穂すすきの解け波打つ野風かな★★★
弓削和人
秋星やイルミネーションの花も加え★★★★
図書室へこもりたくなる黄落日★★★
秋深し人の待ちたる時計台★★★★
11月4日(4名)
小口泰與
へら浮子の長きを閲す夜長かな★★★
里人の柿を献ずる村地蔵★★★
湖風を浴びて残菊地に触れし★★★
多田有花
はるばると大阪堺秋の海★★★
爽やかに須磨の海から空港へ★★★
澄む秋の大阪湾を一望す★★★★
桑本栄太郎
身ほとりの一気呵成や庭紅葉★★★★
戻ろうか進もうか秋惜しみけり★★★
紅葉且つ散る鋪道を歩む園児らは★★★
弓削和人
午の月ひとり遠くの秋起し★★★
小駅を過ぎると秋の登山帽★★★
網棚に秋気残れり終着駅★★★★
終着駅で降りるときの特別な気持ち。網棚に置いた荷物を下すときに、物のあったところに残る気配。暗がりの網棚に残る秋気に終着駅の哀愁が感じられる。(髙橋正子)
11月3日(5名)
多田有花
秋澄むや大橋望む展望台★★★
カーフェリー秋海原を南航す★★★
須磨の秋揺れを楽しみカーレーター★★★
廣田洋一
塀越しに光零せる新松子★★★
咳激し腹の底からこみあげる★★★
草草の帰り花あり土手の道★★★
※咳でお辛そうですが、くれぐれもお大事になさってください。(信之・正子)
小口泰與
剥落の里の社や秋の雨★★★
山風に刈田険しき棘の面★★★
紅葉や蒸気霧たつ沼に居り★★★★
蒸気霧は、水面の温度と空気との差が8度C以上あるときに発生するとされる。紅葉する沼に冷気が押し寄せたのだろう。沼からは霧が立ち上り、その中に居て、霧と一体となったような幻想的な世界を経験した。(髙橋正子)
桑本栄太郎
あぜ道をたどる朝や赤のまま★★★
山茱萸の赤き実垂るる川辺かな★★★
刷毛雲の黄金となりぬ秋入日★★★
弓削和人
秋霖や屋根の雀ら寄りて翔ぶ★★★
工場の雨どい朽ちる秋の暮★★★
秋雨の前灯ひらめき車輪過ぐ★★★
11月2日(5名)
多田有花
秋高し電車と海の間を歩く★★★
洋館がありしは昔秋うらら★★★
秋晴やロープウェイでゆく山上★★★
小口泰與
我が庭にけじめを付けし秋の蝶★★★
晩秋の細くなりたる畦を行く★★★
山霧の韋駄天走り嶺下る★★★
廣田洋一
秋の蝶小さき花壇を離れずに★★★★
秋の蝶は花から花へ活発に飛び回るというより、ひとところの花をひらひらと光を撒くように飛んでいる姿をよく目にする。小さな花壇にやって来た蝶もそんな様子。秋の蝶の可憐な澄み切った姿がいい。(髙橋正子)
青空に彩り付けて桜紅葉★★★
青空に且つ散る桜紅葉かな★★★
桑本栄太郎
朝露の水滴光る田道かな★★★
秋晴れや爆音高くヘリの空★★★
園児らの公園遊びや錦秋に★★★
弓削和人
燈籠や遠くの寺社と伍して立つ★★★
ぬばたまの黒き実瞳重なりて(原句)
「瞳重なり」は、「瞳が(の)重なり」の意味です。(髙橋正子)
ぬばあまの黒き実瞳に重なりて★★★(正子添削)
口あける木通の言に耳を澄まし★★★
11月1日(6名)
小口泰與
茫茫の浅間高原赤りんご★★★
分校の閑散として柿熟す★★★
けざやかに夕日に映ゆる蘭の花★★★
多田有花
紅葉初む公園大橋を仰ぐ★★★
野球する向こうに輝く秋の海★★★
萬葉の歌碑のある道薄紅葉★★★
廣田洋一
夜寒しお湯で割りたるウイスキー★★★
角曲がりぱっと見えたる実紫★★★
大きな鳥が先ずついばめり残り柿★★★
桑本栄太郎
秋雨や一気に色づく庭の木々★★★
雨降れば凛と明るき泡立草★★★
妻もどり田舎土産の秋果かな★★★★
弓削和人
〈奈良大菊人形展〉
水盤に浮かぶ舟なり菊細工★★★
菊人形衣の花びら風に揺れ★★★
屋上の菊人形や山暮れて★★★★
菊人形は大勢に見られて華やかに輝いているが、屋上の菊人形は、日が陰れば陰り、山が暮れれば菊人形も暮れる。日暮れのわびしさが菊人形にも忍び寄る。(髙橋正子)
川名ますみ
撫子の花弁を梳いて風静か★★★
竜胆のふれれば傾ぐやわらかさ★★★★
竜胆はいろいろな種類があって、背の高いものから、細い茎を草地に埋めて花を開くのもある。群生しない竜胆は日が差せば青い花を開く。ふれると傾くほどの青い花のやわらかさに寄り添いたい気持ち。(髙橋正子)
初時雨しろき天井仰ぎみる★★★