自由な投句箱/9月21日~9月30日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/9月21日~9月30日

9月30日(1句)
★鵙高音車停めたる頭上より/多田有花
車を停めたところは、公園の端にあるような青空駐車場か。住宅地の中でもいい。車のエンジンの音が止まると、途端に頭上から鵙の高鳴く声。いよいよ秋が深まる。(髙橋正子)
9月29日(1句)
★神主が先頭に立つ秋祭り/廣田洋一
日本の祭りの多くは稲作にまつわる催事である。秋は豊作を祝い感謝する里祭りが行われる。神主が先頭にたって、祭りの神輿や行列を引き連れて歩く。神主の衣を秋風が通り抜けて目にも清々しい祭りの様子が窺える。(髙橋正子)
9月28日(1句)
★大工の音聞こゆ明りの窓に秋/弓削和人
夕べの窓に明かりが灯り、大工が釘を打つ音や木を挽く音などが聞こえてくる。暮れが早くなる秋、仕事を急ぐ大工が灯りをともして作業をすすめているようだ。窓に嵌められたような秋の夜の景色が、しずかに伝わってくる。(髙橋正子)
9月27日(2句)
★宵闇や川辺の書肆の薄明り/小口泰與
宵闇に浮かぶ書肆のほうっとした灯り。民話の雰囲気を醸し出した川辺の書肆の薄明りに魅かれる。こぎつねが本が読みたくて獲ったやまべを持って戸をトントンと叩きそうな川辺の書肆。(髙橋正子)
★天高し弓担ぎゆく女子高生/多田有花
弓道部の女生徒であろう。長い弓を担いで颯爽と歩く姿は女生徒ながら雄姿だ。天高く晴れ渡った空が弓を張る強さと重なってくる。(髙橋正子)
9月26日(1句)
★秋燕日取りの近きクラス会/廣田洋一
近くクラス会が予定されて楽しみな日々。大方の燕も帰ってしまったが、残る燕が音もなくさっそうと飛んで、喜びの姿にもみえてくる。澄んだ秋の日のうれしいこと。(髙橋正子)
9月25日(1句)
★水音のリズム乱して木の実落つ/小口泰與
木の実が降っている。流れにも落ちているのだろう、流れる水音のリズムが乱れる。それは木の実がパラパラと落ちて水を騒がせているから。秋も森がたのしい。(髙橋正子)
9月24日(1句)
★城ほのかに浮かび上がりぬ星月夜/多田有花
城は有花さんの住むところの白鷺城であろう。星も月もある夜に、ほのかに浮かび上がる城が往時を偲ばせるように幻想的なのであろう。(髙橋正子)
9月23日(1句)
★彼岸花蕊に触れたる雲一片/多田有花
彼岸花が蕊をりんりんと伸ばして咲く姿は、よく見かける。軽やかな秋の雲がひとひら曼珠沙華に軽く触れて流れていく感じがいい。(髙橋正子)
9月22日(1句)
★石垣を被い垂れ居り風の萩/桑本栄太郎
石垣の上の庭に植えられた萩であろうが、石垣を被うほどに垂れて、風に吹かれるまま揺れている。萩の枝のしなやかさ、風の声ともなりそうなさわさわとした萩のゆれに感興が湧く。(髙橋正子)
9月21日(1句)
★澄む秋を並んで下校の小学生/多田有花
小学生が仲良く並んで下校しているのは、いつもと変わらない景色なのかもしれない。けれども、空気が澄んでくる秋は、下校の小学生の姿がくっきりと見えてくる。小学生らしい姿が改めて印象付けられる。(髙橋正子)

9月21日~9月30日

9月30日(5名)
小口泰與
すれ違う度に会釈の花野かな★★★
牧草を刈りて積み上ぐ秋の駒★★★
木道の天へ伸び行く紅葉かな★★★
廣田洋一
クラス会無事に終わりて九月尽★★★
突き出しにつるりと出し衣被★★★
差し向かひ酒酌み交はす衣被★★★
多田有花
雨上がりはや秋冷の忍び寄る★★★
鵙高音車停めたる頭上より★★★★
車を停めたところは、公園の端にあるような青空駐車場か。住宅地の中でもいい。車のエンジンの音が止まると、途端に頭上から鵙の高鳴く声。いよいよ秋が深まる。(髙橋正子)
彼岸花の色の褪せゆく日和かな★★★
桑本栄太郎
生垣をはみだし居りぬ金木犀★★★
嶺の端の茜色とや秋の夕★★★
山並みのうねりの黒く九月尽★★★
弓削和人
梵鐘に家路を忘るる秋の駅★★★
半袖か迷いてありく九月尽★★★
玄米を提げる山路や秋高し★★★★
9月29日(5名)
小口泰與
木犀の香に包まれて帰宅せり★★★
落鮎や残照の巌置き去りに★★★
草の葉にまた戻りくる蜻蛉かな★★★★
多田有花
レコードのスクラッチノイズ秋の暮★★★
爽やかに自転車を駆る女子高生★★★★
稲妻に照らされ川は南流す★★★
桑本栄太郎
昼間より風に鳴き居り草ひばり★★★★
何処からか香り来たるや金木犀★★★
鈍行のホームの脇に案山子かな★★★
廣田洋一
神主が先頭に立つ秋祭り★★★★
日本の祭りの多くは稲作にまつわる催事である。秋は豊作を祝い感謝する里祭りが行われる。神主が先頭にたって、祭りの神輿や行列を引き連れて歩く。神主の衣を秋風が通り抜けて目にも清々しい祭りの様子が窺える。(髙橋正子)
産土の神木に聞く秋の声★★★
黄ばみたる木の葉の散りて秋の声★★★
弓削和人
九月尽き窓の陽ざしはやわらかに★★★
かの店のピザとなりたる唐辛子★★★
ぎんなんの落ちゆくところ誰も見ず★★★
9月28日(5名)
小口泰與
刻刻とかわる嶺雲荻の声★★★
海を越え翔る蝶かな藤袴★★★
流星や波の切先風に舞う★★★★
廣田洋一
竹伐られ藪中少し整へり★★★★
竹伐りて横たはる竹切り揃へ★★★
道の端一直線に曼殊沙華★★★
多田有花
秋曇り彼方の空に風の音★★★
シャワー止めれば虫集く夜となり★★★★
戸一枚隔ててありぬ虫の闇★★★
桑本栄太郎
菜園の賑わい居りぬ秋高し★★★★
ゑのころの風にうべなうばかりなる★★★
暮れゆきて天の茜や赤とんぼ★★★
弓削和人
朝顔の天命知るように咲く★★★
大工の音聞こゆ明りの窓に秋★★★★
夕べの窓に明かりが灯り、大工が釘を打つ音や木を挽く音などが聞こえてくる。暮れが早くなる秋、仕事を急ぐ大工が灯りをともして作業をすすめているようだ。窓に嵌められたような秋の夜の景色が、しずかに伝わってくる。(髙橋正子)
秋の蟇ひと鳴きするや夜は更けて★★★
9月27日(5名)
小口泰與
宵闇や川辺の書肆の薄明り★★★★
宵闇に浮かぶ書肆のほうっとした灯り。民話の雰囲気を醸し出した川辺の書肆の薄明りに魅かれる。こぎつねが本が読みたくて獲ったやまべを持って戸をトントンと叩きそうな川辺の書肆。(髙橋正子)
文机の堆書や窓へ月あかり★★★
上流へ行くや急流崩れ簗★★★
廣田洋一
燕帰り軒下の道静まりぬ★★★★
町内の子供の山車や秋祭★★★
秋祭終えてくぐれり赤提灯★★★
多田有花
澄む秋に唱歌次々流れ来る★★★
天高し弓担ぎゆく女子高生★★★★
弓道部の女生徒であろう。長い弓を担いで颯爽と歩く姿は女生徒ながら雄姿だ。天高く晴れ渡った空が弓を張る強さと重なってくる。(髙橋正子)
南海に嵐生まれて秋暑し★★★
桑本栄太郎
午後よりの秋雨降りぬ暮れゆけり★★★
国葬の追悼あはれすずろ寒★★★
身に入むや遺影微笑む武道館★★★
弓削和人
秋霖の香の立ちこめし帰途の路★★★
水引のかそけき花や露と揺れ★★★
長雨のあとの静けさ秋の夜★★★★
9月26日(5名)
小口泰與
秋の草雨後の川辺に光りける★★★
竜胆や志賀高原の脇道に★★★
杣道にほのと明るき秋薊★★★
廣田洋一
秋茄子黒く萎びて残りをり★★★
秋燕日取りの近きクラス会★★★★
近くクラス会が予定されて楽しみな日々。大方の燕も帰ってしまったが、残る燕が音もなくさっそうと飛んで、喜びの姿にもみえてくる。澄んだ秋の日のうれしいこと。(髙橋正子)
乙女子も神輿を担ぐ秋祭り★★★
多田有花
墓参後の膳を囲みぬ秋彼岸★★★
ケーキ屋のハロウィンリースに迎えられ★★★
紅葉載せ運ばれてくるモンブラン★★★
桑本栄太郎
ぎんなんを拾う媼や孫を連れ★★★
ゑのころや風の行方に抗わず★★★
溝川のながれさやかに稲穂波★★★
弓削和人
コスモスの丘のかなたの秋の山(原句)
「コスモス」「秋の山」は、季語が二つ、つまり、テーマが二つありますので、これは「季重なり」として嫌われます。(髙橋正子)
コスモスの丘のかなたに山並び★★★補遺s(正子添削)
峠を越え千草の花の通り路★★★
秋の里凍るる西瓜をふるまわれ(原句)
「凍る(こおる)」の連体形は「こお・る(とき)」のようになります。
(髙橋正子)
秋の里凍る西瓜をふるまわれ★★★
9月25日(5名)
小口泰與
ジーンズの着物や帯の赤蜻蛉★★★
秋ばらの枝の切先鉢に挿し★★★
水音のリズム乱れし木の実落つ(原句)
水音のリズム乱して木の実落つ★★★★(正子添削)
木の実が降っている。流れにも落ちているのだろう、流れる水音のリズムが乱れる。それは木の実がパラパラと落ちて水を騒がせているから。秋も森がたのしい。(髙橋正子)
多田有花
秋駆ける少女のポニーテール揺れ★★★★
秋彼岸の寺に読経を聴いている★★★
お下がりのシャインマスカットを食べる★★★
桑本栄太郎
青空に柿の色づく軒端かな★★★
ゑのこ草風の行方の定まらず★★★
休耕の三年目とや泡立草★★★
廣田洋一
大柄の婦人張り切る秋祭り★★★
ゆらゆらと肩に零れし萩の花★★★
獺祭の新酒飾られ子規庵かな★★★★
弓削和人
出逢いたし秋の散歩の七草よ★★★
剪定やわずかに触るる秋の雲★★★
救急車道の空きたる秋の空(原句)
救急車に道を空け待ち秋の空★★★★
9月24日(5名)
小口泰與
はたはたの耳を掠むや通学路★★★
釣具屋のへら浮子はしき石叩★★★
贋作と決まりし絵画稲光★★★
廣田洋一
燕帰る巣はそのままに軒の下★★★
この辺り帰る燕の集ひをり★★★
秋祭り提灯飾りて景気付け★★★
桑本栄太郎
おそろしき事となりたるそぞろ寒★★★
おはぎ喰いふるさと偲ぶ秋彼岸★★★
句を得んと訪ね来て居り藤ばかま★★★
多田有花
快晴の柿のうしろは青一色★★★
おのおのの庭の片隅鶏頭燃え★★★
城ほのかに浮かび上がりぬ星月夜★★★★
城は有花さんの住むところの白鷺城であろう。星も月もある夜に、ほのかに浮かび上がる城が往時を偲ばせるように幻想的なのであろう。(髙橋正子)
弓削和人
秋出水用水路より飛沫あげ★★★
アリウムの玉浮かべたる秋の辻★★★
浮かびたる葛の草露寄りにけり★★★
意味が少し取りにくい感じです。(髙橋正子)
葛の葉に浮かぶ草露寄りあえり(正子添削)

9月23日(5名)
小口泰與
丁字路に石仏在りし放屁虫★★★
忽然と朝の畦道曼珠沙華★★★
蜩や沼へひと筋没日伸び★★★
廣田洋一
録画せしドラマ見続け夜長かな★★★
人通り絶えたる道の良夜かな★★★★
一文字のメール着信良夜かな★★★
多田有花
秋分やゆっくり伸ばす股関節★★★
彼岸花蕊に触れたる雲一片★★★★
彼岸花が蕊をりんりんと伸ばして咲く姿は、よく見かける。軽やかな秋の雲がひとひら曼珠沙華に軽く触れて流れていく感じがいい。(髙橋正子)
秋彼岸山法師の実熟れ始む★★★
桑本栄太郎
前かごに子犬乗せゆく秋彼岸★★★
咲き残る花もありたる合歓は実に★★★
街路樹の天辺橡の実掲げけり★★★
弓削和人
秋分に雨降る朝の囀りや★★★
秋分のひねもす雨のひといかな★★★
秋分や読みたし本を積み上げて(原句)
「読みたし本」の「読みたし」が「本」(名詞・体言)に続くときは、「よみたき」となります。(髙橋正子)
秋分や読みたき本を積み上げて★★★(正子添削)
9月22日(4名)
小口泰與
露草や今朝のすそ野は紫紺にて★★★
木道を沼へ向かひし荻の声(原句)
原句は、「木道を沼へ向かった荻の声」という意味になります。
木道を沼へ向かえば荻の声★★★(正子添削)
新涼や糊利きたる割烹着(原句)
新涼や糊の利きたる割烹着★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
色づきし桜並木やうす紅葉★★★
石垣を被い垂れ居り萩の風(原句)
原句は「萩の風が垂れ居り」の意味になります。(髙橋正子)
石垣を被い垂れ居り風の萩★★★★(正子添削)
街路樹の橡の並木や実を掲ぐ★★★
多田有花
秋草を刈る人のあり河川敷★★★
静けさを連れて降り出し秋の雨★★★★
手羽元を手づかみで食ぶ秋の昼★★★
弓削和人
秋空の飼い主の顔犬の顔★★★
白銀のヨシやふわりと揺れており★★★★
葛かづら車両の通る高架下★★★
9月21日(5名)
小口泰與
唐黍や夜店の灯り煌煌と★★★★
畔川を堰きとむ火種狐花★★★
山風に誘われている女郎花★★★★
廣田洋一
残り蚊を手で払ひつつ立話★★★
残り蚊に引導渡す法の庭★★★
秋簾風に逆らひ揺れてをり★★★
多田有花
マヨネーズとチーズをかけてオクラ焼く★★★
秋冷や窓開け過ごす日の終わり★★★
澄む秋を並んで下校の小学生★★★★
桑本栄太郎
雲間より蒼空のぞく野分晴れ★★★
野分去り歩数伸びゆく万歩計★★★
ぷちぷちと踏んで気が付く木の実かな(原句)
ぷちぷちと踏みて鳴る音木の実かな★★★★(正子添削)
弓削和人
白粉の際を横切る車輪かな★★★
紫苑花吾の背にまで伸びて咲き★★★
曼珠沙華浅黄の葯の浮きて揺れ★★★

自由な投句箱/9月11日~9月20日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/9月11日~9月20日

9月20日(2句)
★子規庵に糸瓜を探す子規忌かな/廣田洋一
根岸の子規庵は一度訪ねたことがあるが、私もまず糸瓜棚を見た。結核を患った子規が痰を切るのによいとされた糸瓜水を採るために植えた糸瓜は、はらかずも絶筆の三句を作らせた。子規庵に糸瓜を探すのは「心のおのずから」のなせること。共感の一句。(髙橋正子)
糸瓜咲て痰のつまりし佛かな 子規
痰一斗糸瓜の水も間に合はず 〃
をとゝひのへちまの水も取らざりき  〃
★金色に稲穂稔りて空透けり/弓削和人
稲穂が金色に稔り、その間に空が透けている。金と青の対比が、エジプトの秘宝ように美しく輝いて、今現代の日本の稔の秋を伝えている。「黄金(こがね)」ではなく、稲穂に「金色」を感じたのは新しい感覚と言えるだろう。(髙橋正子)
9月19日(1句)
★雨後の藪竹伐る音の聞ゆなり/小口泰與
「竹伐る」は秋の季語。用材としての竹は秋伐るのがよいとされる。春は筍に養分をとられ竹はおとろえているが、秋は竹から虫が逃げ、竹幹が充実している。降り続く雨が止んだ後、竹を伐る鋸の音や、枝を掃う音が竹藪から聞こえる。静かな音である。(髙橋正子)
9月18日(1句)
★供えらる束の野菊や辻地蔵/桑本栄太郎
「野菊の束」と言わないで、「束の野菊」と言った理由は、はっきりしている。辻地蔵に供える野菊は、辺りに咲いているものを手折って一二本というのをよく見かける。束にするほどたくさん摘んで供えた人の気持ちに、人の心の有り様が思える。(髙橋正子)
9月17日(1句)
★稲の香や夜の家並み途切れれば/多田有花
夜の家並みを抜けて歩いていくと、家並みが途切れたところから急に稲の香が漂ってくる。家並みが途切れてそこから田んぼになっているのだ。熟れた稲の香りは稔りの秋の象徴。心が落ち着くなんともいい香りだ。(髙橋正子)
9月16日(1句)
★色鳥と仄語らいし森の中/小口泰與
「色鳥」は秋に渡って来るいろいろな小鳥。「仄語らう」は、「少し語らう」の意味。森の中に入っていくと渡って来たいろんな小鳥が鳴いている。しばし耳を傾けると少しばかり語り合えたような気持ちになった。小鳥の鳴き声も言語として科学的に研究されていて、小鳥の言葉が分かればどんなにたのしいことであろうか。(髙橋正子)
9月15日(1句)
★青空の風に群れなす赤とんぼ/桑本栄太郎
青空の中空を風が吹くと、その風に赤とんぼが群れをなしてくる。翅を光らせあいがなら群れ飛ぶ赤とんぼは、秋の爽やかさそのもの。「風に群れなす」が新しい。(髙橋正子)
9月14日(1句)
★落日の蕊の紅さよ曼珠沙華/弓削和人
落日のなかに立つ曼珠沙華の蕊が、入日に染まり紅く輝いている。今日の終わりの曼珠沙華の紅さが心に残る。(髙橋正子)
9月13日(1句)
★「ひえい」ゆく秋の比叡の懐へ/多田有花
「ひえい」は、比叡電車の列車で、京都市内から比叡山へ30分足らずで行ける観光電車とのこと。比叡山の名を採った「ひえい」に乗って、日本仏教の母山の比叡の懐へ入っていく言葉上の面白さもあって納得。(髙橋正子)
9月12日(1句)
★蟋蟀や耳を澄ませば鳴き止まり/弓削和人
蟋蟀が鳴いているので、よく聞こうと耳を澄ませると、何かを察知したかのように鳴き止む。経験することながら、改めて秋の夜の深さ、自己ひとりの存在を思う。(髙橋正子)
9月11日(1句)
★浅間より吹かれ来し雲鵙高音/小口泰與
空には浅間から吹かれ来た雲が伸びやかに浮かび、鵙が高鳴きする声が響いてきてくる。秋の風景が晴れ晴れと詠まれている。(髙橋正子)

9月11日~9月20日

9月20日(5名)
小口泰與
竜胆や嶺嶺を離るる雲一朶★★★
並び咲く雨後の水玉曼珠沙華★★★★
強風にまどう秋蝶中天へ★★★
多田有花
眠りけり野分の音を聞きながら★★★★
嵐去り秋の彼岸に入りにけり★★★
快晴や西瓜に光る刃を入れる★★★
廣田洋一
台風の近づく朝の茜雲★★★
子規庵に糸瓜を探す子規忌かな★★★★
豆の数くっきりと見え莢隠元★★★
桑本栄太郎
ベランダの雑多整理や野分来る★★★
野分去り峰の茜の入日かな★★★
汀女忌の追ひつつ追はれ赤とんぼ★★★★
弓削和人
月草の葎に添うて咲きひかる★★★
デュランタのすみれ色した秋来る★★★★
金色の稲穂は稔り空透きて(原句)
金色に稲穂稔りて空透けり★★★★(正子添削)
9月19日(5名)
小口泰與
咲き乱れ道を塞ぎし秋桜★★★
榛名湖の桟橋打つや秋の波★★★
雨後の藪竹伐る音の聞ゆなり★★★★
廣田洋一
二畝の田実り豊かに色付きぬ★★★
コスモスを揺らして遊ぶ子らの笑み★★★★
コスモスを愛でて動かぬ二人連れ★★★
多田有花
台風よりちぎれ来し雲かかりけり★★★
ゆっくりと列島を辿る台風よ★★★
ヘッドフォンで恋の歌聴く台風圏★★★
桑本栄太郎
ベランダの鉢もの室へ台風来る★★★
夢に見る父のおもかげ敬老日★★★★
子規の忌の根岸の里の豪雨かな★★★
弓削和人
生涯の現役を期する敬老日★★★
ひろびろと蕊のながしや曼珠沙華★★★
駅を降り曇りの坂の秋思かな★★★
9月18日(5名)
廣田洋一
北国の青き光や秋刀魚買ふ★★★
秋日和順番待ちの滑り台★★★
名刹はみどりに満ちて秋日和★★★
小口泰與
二千里を翔る蝶おり藤袴★★★
大様な神代の恋や秋祭★★★
岩削る波の強さや稲光★★★★
多田有花
連休は嵐の予報秋うらら★★★
台風の北上前に買い出しに★★★
台風接近窓閉め切って床に就く★★★
桑本栄太郎
青空に雲走り行く野分まえ★★★
川上へ風に抗い赤とんぼ★★★
供えらる束の野菊や辻地蔵★★★★
弓削和人
雲流れ風のぬるしや台風圏★★★
颱風やテトラポッドの切りし波(原句)
颱風やテトラポッドを切りし波★★★(正子添削)
颱風ののた打ち回り叫び過ぐ★★★
9月17日(5名)
小口泰與
黄緑の田を賑やかす曼珠沙華★★★
富草や鳶の舞いたる空の色★★★
湖の日や戯るる秋の蝶★★★★
多田有花
秋晴れへふわりと発ちぬロープウェイ★★★
十六夜の月鮮やかな家路ゆく★★★
稲の香や夜の家並み途切れれば★★★★
夜の家並みを抜けて歩いていくと、家並みが途切れたところから急に稲の香が漂ってくる。家並みが途切れてそこから田んぼになっているのだ。熟れた稲の香りは稔りの秋の象徴。心が落ち着くなんともいい香りだ。(髙橋正子)
廣田洋一
敬老の日老人どもの食事会★★★
椎の実や産土神の贈り物★★★
先生に見せる椎の実温かし★★★★
桑本栄太郎
畦ごとの仕切りと為すや曼珠沙華★★★
物憂げに鳴き出で居りぬ法師蝉★★★
新酒酌む夕餉摂りたる牧水忌★★★★
弓削和人
合唱す思い出尽きぬ敬老の日★★★
芸術祭歌手たからかに音頭する★★★
草の花遊具に並ぶ園児の帽★★★★
9月16日(5名)
小口泰與
すり足の落鮎釣師川の中★★★
ひたひたと夕闇歩む秋の雨★★★
色鳥と仄語らいし森の中★★★★
「色鳥」は秋に渡って来るいろいろな小鳥。「仄語らう」は、「少し語らう」の意味。森の中に入っていくと渡って来たいろんな小鳥が鳴いている。しばし耳を傾けると少しばかり語り合えたような気持ちになった。小鳥の鳴き声も言語として科学的に研究されていて、小鳥の言葉が分かればどんなにたのしいことであろうか。(髙橋正子)
多田有花
<比叡山三句>
天高しここはおみくじ発祥地★★★
秋気澄む比叡横川をそぞろ歩く★★★
色づくにはまだしばしある楓かな★★★
廣田洋一
秋の灯や歌声高く澄み渡り★★★
見上げたるビルの屋上秋灯★★★
一声のじきに止みたる名残り蝉★★★
桑本栄太郎
グランドの部活賑わう秋入日★★★★
夕暮れの畑かしましき草ひばり★★★
烏瓜熟れて垣根にしな垂るる★★★
弓削和人
網目より無花果たわわに熟しけり(原句)
網かけられ無花果たわわに熟しけり★★★(正子添削)
きりぎりす一草なりて揺れもせず(原句)
きりぎりす止まる一草揺れもせず★★★★(正子添削)
爽籟の通りや急く人立ち止まり★★★
9月15日(5名)
廣田洋一
店先に秋刀魚光らせ誘ひけり★★★
じゅうじゅうと煙鳴らして秋刀魚焼く★★★
月祀る友と二人の酒宴かな★★★★
多田有花
<比叡山三句>
堂塔の朱塗り鮮やか秋の山★★★
森渡る風爽やかに比叡山★★★
鐘楼の鐘ひとつつき秋うらら★★★★
小口泰與
背に腹に飛びかかり来る草虱★★★
赤蜻蛉火の見櫓の中段に★★★★
蓑虫や赤城の風を目の当り★★★
桑本栄太郎
朝冷えや二度寝の夢の心地良き★★★
さやけしや風に吹かれて推敲す★★★
青空の風に群れなす赤とんぼ★★★★
青空の中空を風が吹くと、その風に赤とんぼが群れをなしてくる。翅を光らせあいがなら群れ飛ぶ赤とんぼは、秋の爽やかさそのもの。「風に群れなす」が新しい。(髙橋正子)
弓削和人
開店を待つや古書店秋うらら★★★★
古書を手に水筒腰に秋日和★★★
古書買うて繰るるページに秋の香や★★★
9月14日(5名)
小口泰與
水替えて水槽の魚秋の空★★★
蟋蟀や今も我家の納戸藏★★★
打ち出しは忙しせわしと鉦叩★★★
廣田洋一
月見れば逝きし人々浮かび来る★★★
川沿ひの畦道歩む月見かな★★★★
秋灯に一人味はふ郷の酒★★★
多田有花
<比叡山三句>
爽やかに離合するなりケーブルカー★★★★
秋高しかわらけ投げの的があり★★★
秋天へぐんぐん登るロープウェイ★★★
桑本栄太郎
ぬか味噌を今朝も掻き混ぜ妻の秋★★★
西山の嶺の端うねろ秋気満つ★★★
さやけしや遊びせんとて生まれをり★★★
弓削和人
落日の蕊の紅さよ曼珠沙華★★★★
落日のなかに立つ曼珠沙華の蕊が、入日に染まり紅く輝いている。今日の終わりの曼珠沙華の紅さが心に残る。(髙橋正子)
案山子帽吹かれし風に怺うかな★★★
家居より眺めてひさし稲の秋★★★
9月13日(5名)
小口泰與
秋ばらのこぼるる川辺風の中★★★
底紅や昭和の御代の繁華街★★★
泡立ち草切りし切先匂い立つ★★★★
廣田洋一
細過ぎて食欲湧かぬ秋刀魚かな★★★
矢印の綺麗に残り焼秋刀魚★★★
台風の前の晴天稲穂刈る★★★★
多田有花
<比叡山三句>
「ひえい」ゆく秋の比叡の懐へ★★★★
「ひえい」は、比叡電車の列車で、京都市内から比叡山へ30分足らずで行ける観光電車とのこと。比叡山の名を採った「ひえい」に乗って、日本仏教の母山の比叡の懐へ入っていく言葉上の面白さもあって納得。(髙橋正子)
秋のせせらぎ渡ればケーブルカー乗り場★★★
仲秋や大悲万行と大書★★★
桑本栄太郎
秋暑し爆音立てるカーラジオ★★★
とんぼうの群れ飛びをりぬ停留所★★★★
心地良き風のベンチや秋日蔭★★★
弓削和人
ふるさとの書棚を眺め夜長し★★★★
水引の粒みなかかる夕日かな(原句)
「みなかかる」の部分がわかりにくいです。(髙橋正子)
水引の粒のどれもに夕日かな★★★★(正子添削)
秋川は小海老の血管流れたり★★★
9月12日(5句)
小口泰與
がちゃがちゃや星無き畦の真の闇(原句)
がちゃがちゃや星無き畦の真暗闇★★★★(正子添削)
蟷螂の迷い出でたる仏間かな★★★★
段畑は泡立ち草や遠の里★★★
廣田洋一
満月を見たさに出たり入ったり★★★
西天に白き満月浮かびをり★★★
園児らのお手々つなぎて秋日和★★★
弓削和人
静かなる遠くの風や二百ニ十日★★★
蟋蟀や耳を澄ませば鳴き止まり★★★★
蟋蟀が鳴いているので、よく聞こうと耳を澄ませると、何かを察知したかのように鳴き止む。経験することながら、改めて秋の夜の深さ、自己ひとりの存在を思う。(髙橋正子)
秋草を刈るや袋に秋つもる★★★
多田有花
みな若き歳月ありて秋思う★★★
秋の朝駆け抜けてゆく少年ら★★★★
ぽつぽつと刈田が住宅地の中に★★★
桑本栄太郎
一木を占めて垂れ居り葛の花★★★
合歓の実の色づき干乾ぶ川の風★★★
青空に編隊飛行や赤とんぼ★★★★
9月11日(3名)
小口泰與
浅間より吹かれ来し雲鵙高音★★★★
夕映えの峠越え来る雁の棹★★★★
邯鄲や旧家の池の水の色★★★
桑本栄太郎
山の端の雲育ち居り秋気満つ★★★★
東屋に座り虫の音聞きにけり★★★
十六夜の今夜も嬉し在所かな★★★
弓削和人
鈴虫の音に誘われし奈良格子(原句)
「誘われし」の「し」は、過去の助動詞「き」の連体形で、奈良格子に掛かります。「奈良格子が鈴虫の音に誘われた」という意味になってしまいます。(髙橋正子)
鈴虫の音に誘われて奈良格子★★★★(正子添削)
ふと目覚め厠の窓やちちろ虫★★★
秋花のひっそり咲くや隠し道★★★

自由な投句箱/9月1日~9月10日

※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
※印の基準について。
「心が動いている」句を良い句として、★印を付けています。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/9月1日~9月10日

9月10日(1句)
★鯉の群行きつ戻りつ水澄めり/廣田洋一
川の黒い鯉であろう。あたりを行きつ戻りつ群れになって泳いでいる。水が澄んできて、鯉の泳ぐ姿がよく見える。ものみな澄んできれいな秋となっている。(髙橋正子)
9月9日(1句)
★秋桜の揺れる畑よ青き空/友田修
「畑」の秋桜を詠んだのがいい。「青き空」がすっきりとしている。野にありながら畑という人の営みが関わってあたたかさと優しさが生まれている。(髙橋正子)
※友田修さんへ
8月月例ネット句会の入賞発表をご覧ください。
9月8日(1句)
★鶏頭の一群風にうねるかな/弓削和人
台風の余波を受けてか、鶏頭の一群がうねっている。鶏頭にある「うねる力強さ」が作者の目に訴え、実景が率直に詠まれているのがいい。(髙橋正子)
9月7日(1句)
★夕月のひかり増しゆく厨事/多田有花
厨の仕事、米を研いだり、野菜を洗ったり、切ったり。夕月がごく淡くひかっていたのが、次第にひかりを増して黄色い月の色になってゆく。日常の厨事ながら、きれいな時間が過ごせている幸せ感がいい。(髙橋正子)
9月6日(1句)
★へら浮子のかろき魚信や秋桜/小口泰與
鮒を釣るのは釣りの醍醐味らしい。へら鮒釣りの浮子も、目にも楽しい。浮子にくる軽い魚信と、秋桜のかろやかさに相通じるものがあって、一句が成り立っている。(髙橋正子)
9月5日(1句)
★爽籟や下校の子の吹くリコーダー/桑本栄太郎
さわやかな風が吹くなかを、リコーダーを吹きながら学校から帰って来る子がいる。「籟」はもと三つ穴のある笛を指したというから、リコーダーの幼い音色も、秋風に和して聞こえる。(髙橋正子)
9月4日(1句)
★快晴に桜紅葉の始まりぬ/多田有花
桜が紅葉し始めるのは、意外と早い。快晴となった日は、朝も冷えこんだのだろう。さっそく桜が紅葉し始めた。(髙橋正子)
9月3日(1句)
★ふと目覚めすこやかならむ母の秋/弓削和人
秋の夜中ふと目覚め、ふるさとの母のことが思いうかんだ。「母はこの秋すこやかであろう」と。「ならむ」の「む」の意味は断定の推量。これをしっかり読みとりたい。ここに作者が母を気に掛けながらも、母へのたしかな安心が読み取れる。(髙橋正子)
9月2日(1句)
★めはじきや女子大生のはや上京/小口泰與
めはじきは紫蘇科の薬草で、益母草とも呼ばれる。子どもが茎を短く切って目を大きく開かせ瞬きする勢いでそれを遠く飛ばせて競った遊びからきている。句意は、夏休みがはやも終わり、東京から故郷へ帰省していた女子大生が、東京へと帰って行くということ。夏休みの間、ふるさとは若い女子大生が帰り、若やいでいたことだろう。幼いころの顔がどこかに残っているそんな女子大生をまた送り出す、ふるさとの一抹の淋しさである。(髙橋正子)
9月1日(1句)
★サバンナの草々光る星月夜/廣田洋一
「サバンナ」と聞けば、きりんやライオンなどが住んでいるアフリカの、ところどころに高い木が立っている草原の景色を思い起こすだろう。サバンナの草は狗尾草などもある、イネ科の植物がほとんどらしい。それらが熟れたり、枯れたりした色が広がる広大な草原に、夜は月や星が出る。星月夜に包括された人間はどんな気持ちになるのだろう。魅力的だ。(髙橋正子)

9月1日~9月10日

9月10日(5名)
小口泰與
凝りもせずまた聞こし召す新走り★★★
どぶろくや鉄路の音の聞ゆなり★★★
渡鳥三国峠を越ゆるなり★★★★
廣田洋一
エリザベス女王永久の休みや身に沁みぬ★★★
鯉の群行きつ戻りつ水澄めり★★★★
川の黒い鯉であろう。あたりを行きつ戻りつ群れになって泳いでいる。水が澄んできて、鯉の泳ぐ姿がよく見える。ものみな澄んできれいな秋となっている。(髙橋正子)
重陽の菊の揺れたる線路際★★★
多田有花
買い出しの人波の上赤とんぼ★★★★
歯科医院の窓から見えし色づく★★★田★★★
歯のケアを終えて仰ぎし鰯雲
桑本栄太郎
雲奔る空見上げを居り月今宵★★★
名月の無月とならん今宵かな★★★
名月や愛でる言葉の見つからず★★★
弓削和人
名月の通過駅をも降りたりし(原句)
名月の通過駅にも降りたしと★★★(正子添削)
名月は駅から駅へ歩きたし★★★
名月の映る車窓や人それぞれに★★★★
9月9日(5名)
小口泰與
秋灯下文机の辺に堆書かな★★★
随神色と甘さの葡萄かな★★★
小鷹狩言葉発する鳥のおり★★★★
廣田洋一
台風の吹き清めたる空の色★★★★
冷凍と注を付けたり秋刀魚かな★★★
初物は小ぶりで高し秋刀魚買ふ★★★
桑本栄太郎
久しぶりの友と語らう秋うらら★★★
柔らかな寝床に居りぬ櫟の実★★★
窓外のかつら黄葉のもみずれる★★★
弓削和人
ドビュッシーを聴ききたくなりし月の夜★★★
月やさしドビュッシーを聴きながら★★★★
秋に入りつけわすれたし万歩計★★★
友田修
秋桜の揺れる畑よ青き空★★★★
重陽の雲間に見ゆる白き月★★★
夕暮れの葉陰に揺れる栗のいが★★★
9月8日(5名)
小口泰與
少女らの湯の香りせる残暑かな★★★
索道に乗せたる早稲の碧空へ★★★★
赤のまま切らるる事を感ずなり★★★
廣田洋一
台風の目玉くっきり北上す★★★
台風に落ちざる林檎売り出され★★★
高級魚より高値となりし初秋刀魚★★★
多田有花
嵐去り白露のひかり野に溢れ★★★★
秋川の上や遠目に白い花★★★
秋のベランダ磯鵯の声盛ん★★★
桑本栄太郎
ひと雨にもみづり居りぬ庭の木々★★★
身に入むや木々の葉濡れて色づきぬ★★★
おしろいの咲き分けありぬ雨の夕★★★鋪アイ
弓削和人
新涼や団旗を振るう運動場★★★
鶏頭の一群風にうねるかな★★★★
公園のジャングルジムや秋日傘★★★
9月7日(5名)
小口泰與
コスモスの一番端や揺れおおき★★★★
落鮎や魚籠かろがろと帰り來る★★★
蒼天や声かろくなる秋の山★★★
廣田洋一
門前に風を呼びたり糸芒★★★
北斎の富士を描きたる秋扇★★★
秋刀魚焼く煙を囲みワイン酌む★★★
多田有花
秋の朝磯鵯の鳴いて飛ぶ★★★
厨事夕月ひかり増してゆく★★★★
仲秋に入る風の音空の色★★★
桑本栄太郎
きざわしに桂紅葉のひと葉かな★★★
フィリリリと闇を占めたる草ひばり★★★★
うそ寒や夜ともなれば窓を閉ず★★★
弓削和人
腰を手に寝返りを打つ灸花★★★
雨止むを忘れし良書法師蝉★★★★
秋天へ歩みて覗く商店街★★★
9月6日(5名)
小口泰與
へら浮子のかろき魚信や秋桜★★★★
天界は晴やコロナの秋の邦★★★
休み田の群の棲家や泡立ち草★★★
多田有花
窓揺らす北の海ゆく野分かな★★★★
虫の声朝の瞑想の耳に★★★
午後の風よく入る残暑の部屋★★★
廣田洋一
吟行になくてはならぬ秋扇★★★
朱の花を散りばめし絵や秋扇★★★
道はさみ交し合ひたる虫の声★★★★
桑本栄太郎
生ぬるき風の後なり野分雨★★★
うす暗きひと日終わりぬ台風裡★★★
綾子忌の今日も野菜の夕餉かな★★★
弓削和人
数珠玉の伽藍の壁となりにけり★★★
妹嫁ぎ畑人となり白粉花★★★
毬栗の木は街角を見張りけり★★★
 
9月5日(5名)
多田有花
新涼の朝焼け空を覆いけり★★★
真昼の部屋一転暗く秋の雷★★★
稜線へ斜めに差せる秋陽かな★★★
小口泰與
丹精の田に集い来る鬼やんま★★★★
魔の山へ利鎌の月の出しかな★★★
渓流の鶺鴒の影魚の影★★★
廣田洋一
紺色の多く使はれ秋扇★★★
秋扇帯に挟みて講演会★★★
虫の声愛でつつ酌むや一人酒★★★
桑本栄太郎
爽籟や学校帰りのリコーダー(原句)
爽籟や下校の子の吹くリコーダー★★★★(正子添削)
夕刻の鳩吹く風に帰宅かな★★★
翅音のぷるぷる聞こゆ鬼やんま★★★
弓削和人
待ちたるや秋川へ来る乳母車★★★
勤務地へ黙と向うや唐辛子★★★
川浸る足を過ぎゆく秋の雑魚(原句)
川に浸けし足を過ぎゆく秋の雑魚★★★★(正子添削)
 
9月4日(5名)
多田有花
快晴に桜紅葉の始まりぬ★★★★
わが背より高きカンナを見て過ぎる★★★
爽やかに風あり雲を吹き払う★★★
小口泰與
藤袴千里を翔る蝶の宿★★★
竜胆や尾根を伝いて山小屋へ★★★★
花眞菰長竿肩に徒渉る★★★
廣田洋一
土手の道歩む先々虫の声★★★★
マンションの灯りみな消え星月夜★★★
秋耕を終えたる畑黒々と★★★
桑本栄太郎
秋冷の朝の目覚めや君の夢★★★
気がつけば忽と鳴かざる秋の蝉★★★★
大原野の雲の茜や秋の峰★★★
弓削和人
車窓を見うつりし秋の過ぎゆくか★★★
隣家より行ってきますと秋さやか★★★★
受話器口あらぶる友と夜長し★★★

9月3日(5名)
廣田洋一
あちこちに虫の声湧く露天風呂★★★★
師の句集読み返したる夜長かな★★★
吟行の鞄に入れし秋扇★★★
小口泰與
啄木鳥や湖の水面の平らなり★★★★
榛名富士松虫草の湖の風★★★
芙蓉咲き裏山からの風柔き★★★
多田有花
秋の蝉思い出したるように鳴き★★★
陽が入る午後は残暑の部屋を避け★★★
遠山のくっきり見えて秋めく日★★★★
桑本栄太郎
雨上がり少しもみづる銀杏かな★★★
三階の眼下に臨むうす紅葉★★★
京なれやちくりん良しと秋の蝉★★★
 
弓削和人
秋つゆの電車遅延やあちみこちみし★★★
かの虫の鳴き始めるや夜長し★★★
ふと目覚めすこやかならむ母の秋★★★★
9月2日(5名)
多田有花
落雷で断水となる二百十日★★★
湯に入ればさらに虫の声近く★★★★
秋めきて雨がちの日が多くなる★★★
小口泰與
無住寺を塒とせしや小鳥來る★★★
めはじきや女子大生のはや上京★★★★
みそ萩やかの戦争の星の数★★★
廣田洋一★★★
縁の下覗けば止みぬ虫の声
さくさくと梨を嚙む音一人の夜★★★
秋高し八幡宮の階上る★★★★
桑本栄太郎
暁闇の寝床に聞こゆ威し銃★★★
ふるさとの”新甘泉”や梨届く★★★★
木々の枝の色なき風に色づけり★★★
弓削和人
朝窓の目覚めの風や二百十日★★★★
傘さすも秋のついりの空眺め★★★
秋霖のいきもの皆や息ひそめ★★★
9月1日(5名)
廣田洋一
死亡記事一番に読む秋の朝★★★
雨戸閉め今日も息災虫の声★★★
サバンナの草々光る星月夜★★★★
小口泰與
噴煙のから紅や渡り鳥★★★
飛来せる小鳥や猫の目の光★★★
秋雨や鎖樋より禽の羽★★★
多田有花
法面の草刈られたり八月尽★★★★
二学期は白雨の中に始まりぬ★★★
新涼やシェイカーで溶かすプロテイン★★★
桑本栄太郎
秋の雷名残を惜しむかのように★★★
もみづるや一雨後の庭の木々★★★
腹巻の今夜も付ける夜の秋(原句)
腹巻を今夜も付ける夜の秋★★★★(正子添削)
弓削和人
軒先に雨宿りするとんぼかな★★★★
どしゃ降りや秋の夕べのアーケード★★★
長雨や灯火親しく手を休め★★★