保津川下りの舟を上流へ
★トラックに空舟積みぬ風薫る/桑本栄太郎
保津川下りの準備が進んでいる。トラックに積む空舟が、薫風のなかで、その軽さが、さわやかに感じられる。(髙橋正子)
5月9日(1句)
★花山葵魚すいすい石の間を/小口泰與
清流に育つ山葵にも花が咲いた。流れの石の間を魚がすいすい自由に泳いでいる。花山葵が地味ながらも景色に色を添えている。(髙橋正子)
5月8日(2句)
★はつ夏の幼子笑顔で一歩一歩/多田有花
初夏を迎えて、歩き始めた幼子は身軽な洋服になった。歩くのがうれしくてたまらない様子で、笑顔で、一歩一歩歩む。見ていてほほえましい。(髙橋正子)
★ジャスミンの白き香りや教会に/桑本栄太郎
ジャスミンの香りを「白」と捉えたのは、花の色からの連想があるだろうが、教会という場所が大きく関係している。教会に咲くジャスミンの花は香りをも清らか。(髙橋正子)
5月7日(1句)
★風薫る木道続く山の裾/小口泰與
ハイキングコースなどに歩きやすいように設置された木道。足取りも軽く山裾を巡る木道に青葉を抜けて吹く風がすがすがしい。(高橋正子)
5月6日(2句)
★敷藁を雨に打たせて瓜の花/小口泰與
瓜の花が咲くころ、藁が敷かれる。敷かれた藁は、雨を弾きつつ、しっとり濡れてゆく。そんな時の瓜の黄色い花はみずみずしく輝く。生き生きした光景だ。(髙橋正子)
★塵出しの朝の静寂や月見草/桑本栄太郎
朝の静寂の中の月見草がすずやかだ。ごみを出すときであっても、かえってその清らかなすずやかさが目に映る。(髙橋正子)
5月5日(1句)
★おのおのの水滴を持ち蓮浮葉/多田有花
蓮の浮葉とは、蓮の根茎から出てしばらく水面に浮いている新葉のことを言う。初夏、蓮の浮葉を見ると、涼し気で、夏が来た嬉しさそのもののように思える。その浮葉がそれぞれ水滴をのせている浮いている。それもいい景色だ。(髙橋正子)
5月4日(1句)
★熊蜂の花粉にまみれ曇天へ/小口泰與
(特に「曇天」でなくてもよいわけですが、春の曇り空というのもいいものだと思います。)
まるまるとした熊蜂が黄色い花粉にまみれて、茫洋とした曇り空へ飛んで行った。こういう景色は良さを言葉で述べにくいが、いい印象の句と思う。(高志正子)
5月3日(1句)
★豌豆の花家並みの途切れれば/多田有花
家並みを歩いてきて、その家並みが途切れるところに、家庭菜園ほどの畑があるのだろう。豌豆が植えられ、花を咲かせている。急に現れた豌豆の花に嬉しさがある。(髙橋正子)
5月2日(2句)
★八十八夜快晴が山の向こうまで/多田有花
快晴の空の下にはるか向こうまで山が続いている。山の色にも八十八夜の光が降り注ぎ、近づく夏を予告している。「快晴の山が向こうまで」に、明るさが満ち満ちている。(髙橋正子)
★楓葉の影のかさなり五月来る/桑本栄太郎
楓の葉の若緑も美しいが、その影が地面にかさなり、揺れたりするのも、すずやかで気持ちがよいものだ。五月が来るうれしさが読み取れる句。(髙橋正子)
5月1日(1句)
★春の鳥鳴くや夜明けの雨の中/多田有花
小鳥たちは夜明け早くから鳴いている。雨がひどければ鳴かないが、小雨程度ならよく鳴いている。春の小鳥が鳴くくらいの雨の降り様と小鳥の声の重なりが春の夜明けらしい。(髙橋正子)