自由な投句箱/3月21日~31日

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主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/3月21日~31日

3月31日(1句)
★花時を終えたる山のいきいきと/多田有花
花の時は花の時で、心豊かな季節であることには違いないが、花にも倦んでくる。入れ替わるように、山は新緑に燃え始める。まさに、「山がいきいきと」してくるとき。元気が湧く季節。(高橋正子)
3月30日(2句)
★漆黒の森へ朝日や花こぶし/小口泰與
森が漆黒であったが、朝日がさすと、辛夷の白い花が浮かび上がる。漆黒の夜から明るい朝へのあざやかな展開が物語の舞台を見るようだ。(高橋正子)
★大空よりも青く澄みたる春の海/廣田洋一
空より青く澄んだ春の海は、沖縄の海だろうかと想像する。穏やかな春の海が青という色に澄むのは、ひたすらに美しい。(髙橋正子)
3月29日(2句)
★花時の鎖樋より水走る/小口泰與
花時の鎖樋は、触れば冷たい鎖ながら、春雨が走り伝うと、艶めいて見える。水が生きている。(高橋正子)
★奥山のかわず鳴き居り十輪寺
「十輪寺」が効いている。業平寺とも言われている洛西の寺。奥山で聞くかわずの声が、のどかに、健やかに感じられる。(高橋正子)
3月28日(1句)
★坂道を登り来れば花の雲/桑本栄太郎
坂道を上ってきて下を眺めれば、花の雲。上っている最中は見えなかった景色に心が晴れやかに広がる。花の雲の見事さ。(高橋正子)
3月27日(2句)
★山桜に滴残して雨あがる/多田有花
山桜の魅力は山に置いてこそ。雨のあと訪ねれば花に雨の滴が残っている。雨はこの美しい滴を残してあがった。それにより、山桜にまた別の美が加わった。(高橋正子)
釣り上げし雪代山女手の冷ゆる/小口泰與
釣り上げた山女。釣り針を外そうと手に山女を持てば、手は悴んで冷たい。こんな冷たい水で泳いでいた山女とわが手への愛おしさ。冷たさの感覚がいい。(高橋正子)
3月26日(1句)
★チューリップ日の射す方に傾けり/廣田洋一
チューリップの茎が日の射すほうに傾いている。そのままの景色を写生した句だが、チューリップのかわいらしい動きが捉えられている。(高橋正子)
3月25日(2句)
★昼時を告げる鐘の音桜散る/廣田洋一
桜ののどかさが、昼を告げる鐘の音でいっそう強く意識される。鐘の音も桜によって、きよらかに、のどかに響いている。桜と鐘の響きあいがいい。(高橋正子)
★慎ましく楓の花の咲きにけり/多田有花
桜が満開のとなり、新緑が目にまぶしくなり始めると、楓の花が咲く。若緑に開いた葉の陰に「慎ましく」咲いている。見逃してしまいそうな楓の花に静かに心を止めた。(高橋正子)
3月24日(1句)
★渓音に育つや独活の青あおと/小口泰與
山に山菜が育つ季節。渓川が雪解け水を集めて力強く流れる音。その音が聞こえるところに育つ独活。渓音を聞いて、青あおと育っている。渓音と青あおと育つ独活のもつ感覚がいい。(高橋正子)
3月23日(1句)
★春暁の雲の流れの早きかな/廣田洋一
春暁は枕草子の冒頭の章句でも詠まれているが、日本人が心引かれるテーマ。この句は雲の流れの速さに、春暁の寒さ、なにかいつもと違う気配や緊張を感じ取っている。(高橋正子)
3月22日(1句)
★公魚や火灯しごろの鄙の宿/小口泰與
公魚釣りには、釣りの楽しみと、鄙びた宿に泊まる楽しみがあるようだ。公魚と鄙びた宿の灯の醸す抒情がいい。癒される句。(高橋正子)
3月21日(1句)
★山桜離れて生まるさくら色/多田有花
山桜は近くで見るとやや白く見える。離れて、塊としてみると、たしかに、さくら色なのだ。白く見える桜も桜の色をもっている。(高橋正子)

3月21日~31日

3月31日(5名)
小口泰與
支流より利根へ水増す弥生かな★★★★
吾妻の峡の棚田の菫かな★★★
潤える色のほのかに楓の芽★★★
川名ますみ
さくらさくらさくら人なき公園★★★
その先のひかりを透かす花曇★★★★
春陰に小動物を照らす小屋★★★
桑本栄太郎
花びらの花びら追うや花の塵★★★★
うす暗き屋敷畑や蘇芳咲く★★★
散る時を知りて紅差す花あはれ★★★
多田有花
花時を終えたる山のいきいきと★★★★
花の時は花の時で、心豊かな季節であることには違いないが、花にも倦んでくる。入れ替わるように、山は新緑に燃え始める。まさに、「山がいきいきと」してくるとき。元気が湧く季節。(高橋正子)
花の下母娘が自転車で通る★★★
通勤の車が並ぶ花の下★★★
廣田洋一
雨空に黄金振りまく花いっぺい★★★
焼け跡に蒲公英光る首里の城★★★★
瑠璃越しの世界遺産や風薫る★★★
3月30日(4名)
小口泰與
雪形や日矢の差したる波頭★★★
初花や菓子の訳あり市へ来よ★★★
漆黒の森へ朝日や花こぶし★★★★
森が漆黒であったが、朝日がさすと、辛夷の白い花が浮かび上がる。漆黒の夜から明るい朝へのあざやかな展開が物語の舞台を見るようだ。(高橋正子)
多田有花
おぼろ月おぼろのなかへ沈みゆく★★★★
本堂へ枝さしのべし花満開★★★
郵便ポスト桜吹雪を浴びている★★★★
桑本栄太郎
川べりの満開なるや霾ぐもり★★★
花屑のほんのり紅の地道かな★★★
折り返す対岸となる花明かり★★★★
廣田洋一
大空よりも青く澄みたる春の海★★★★
空より青く澄んだ春の海は、沖縄の海だろうかと想像する。穏やかな春の海が青という色に澄むのは、ひたすらに美しい。(髙橋正子)
春雨を浴びし草の葉生き生きと★★★
春の水滴り落ちて鍾乳仏★★★
3月29日(4名)
小口泰與
薇の三和土に干せり婆の顔(原句)
薇を三和土に干せり婆の顔★★★(正子添削①)
薇を三和土に干して老婆なり(正子添削②)
花時の鎖樋より水走る★★★★
花時の鎖樋は、触れば冷たい鎖ながら、春雨が走り伝うと、艶めいて見える。水が生きている。(高橋正子)
桃の花散るや狭軌の足尾線★★★
桑本栄太郎
奥山のかわず鳴き居り十輪寺★★★★
「十輪寺」が効いている。業平寺とも言われている洛西の寺。奥山で聞くかわずの声が、のどかに、健やかに感じられる。(高橋正子)
山里の背につづきけり花の雲★★★
さみどりの混じり片方や春落葉★★★
多田有花
昇りゆく車に花吹雪しきり
「昇り」にちょっと違和感があります。
春雨に洗われし木々眺めおり★★★
幾人の人を迎えし桜かな★★★
廣田洋一
蝶二頭縺れ合ひつつ飛び去りぬ★★★
囀りに取り巻かれおる玉泉洞★★★★
春風や霊気満ちたる遥拝所★★★
3月28日(4名)
小口泰與
薇や里人以外入山禁★★★
奥利根の峡の田径の蕨かな★★★
頂上や見事ひともと花明かり★★★★
廣田洋一
道端に丸まり咲きしたんぽぽかな★★★★
蒲公英や絮の飛ぶ先新天地★★★
一便に乗り損ねたる蒲公英の絮★★★
多田有花
日輪を隠す山桜の大樹(原句)
日輪を隠す大樹の山桜★★★★(正子添削①)
日輪を隠す大樹や山桜    (正子添削②)
切れ字「や」を使うと古い感じになるので、それを避けたければ添削①にします。
花びらのながれ来るなか演奏す★★★
春風がしきりに楽譜めくりおり★★★
桑本栄太郎
二巡目の春の宴の自粛かな★★★
坂道を登り来たりぬ花の雲(原句)
「来たりぬ」の「ぬ」は動作の完了の意味で強く切れています。したがって「花の雲」が付け足したようになっています。その関係は、不即不離で。(高橋正子)
坂道を登り来れば花の雲★★★★(正子添削)
坂道を上ってきて下を眺めれば、花の雲。上っている最中は見えなかった景色に心が晴れやかに広がる。花の雲の見事さ。(高橋正子)
密となるピンク色濃くにはざくら★★★
3月27日(4名)
多田有花
奏でれば鶯鳴くよ絶え間なく★★★
山桜に滴残して雨あがる★★★★
山桜の魅力は山に置いてこそ。雨のあと訪ねれば花に雨の滴が残っている。雨はこの美しい滴を残してあがった。それにより、山桜にまた別の美が加わった。(高橋正子)
境内は甍の波と花の波★★★★
小口泰與
釣り上げし雪代山女手の冷ゆる★★★★
釣り上げた山女。釣り針を外そうと手に山女を持てば、手は悴んで冷たい。こんな冷たい水で泳いでいた山女とわが手への愛おしさ。冷たさの感覚がいい。(高橋正子)
葦の芽や水きり石の対岸へ★★★
轟ごうと谷川駆ける雪濁★★★
廣田洋一
卒業の紫袴早稲田かな★★★
夕茜映して紅き夕桜★★★★
遠富士の裾に浮かびし夕桜★★★
桑本栄太郎
花影のさくら並木やトンネルに★★★
つんつんと赤き垣根や新芽立つ★★★
咲き初むる黒き目玉や豆の花★★★
3月26日(3名)
小口泰與
山峡の一人静へ夕日影★★★
園児らの楽しい歌や筆の花★★★
大利根の渡しの跡や蘆の角★★★
廣田洋一
春なれど明るく揺れる芥子の花★★★
チューリップ日の射す方に傾けり★★★★
チューリップの茎が日の射すほうに傾いている。そのままの景色を写生した句だが、チューリップのかわいらしい動きが捉えられている。(高橋正子)
チューリップ赤き一花重たげに★★★
桑本栄太郎
ふるさとを遠くに偲ぶ犀星忌★★★
川べりの花の三分や地道行く★★★
花影の鋪道に揺るる散歩かな★★★
3月25日(4名)
小口泰與
揚雲雀空の近づく展望台★★★★
春宵や両面染めの江戸小紋★★★
物の芽や窓をさえぎる通り雨★★★
廣田洋一
沈丁の香に誘われて遠まわり★★★
昼時を告げる鐘の音桜散る★★★★
桜ののどかさが、昼を告げる鐘の音でいっそう強く意識される。鐘の音も桜によって、きよらかに、のどかに響いている。桜と鐘の響きあいがいい。(高橋正子)
産土の桜の下に幼稚園★★★
多田有花
降る雨に桜の白く浮き立ちぬ★★★
楓の芽ほぐれればはや陽を透かす★★★
慎ましく楓の花の咲きにけり★★★★
桜が満開のとなり、新緑が目にまぶしくなり始めると、楓の花が咲く。若緑に開いた葉の陰に「慎ましく」咲いている。見逃してしまいそうな楓の花に静かに心を止めた。(高橋正子)
桑本栄太郎
ほつほつと頬に雨つぶ春曇り★★★
さみどりの釣鐘かさね土佐みづき★★★
咲き分けの源平桃の軒端かな★★★★
3月24日(4名)
小口泰與
渓音に育つや独活の青あおと★★★★
山に山菜が育つ季節。渓川が雪解け水を集めて力強く流れる音。その音が聞こえるところに育つ独活。渓音を聞いて、青あおと育っている。渓音と青あおと育つ独活のもつ感覚がいい。(高橋正子)
囀りや割り箸すぱっと割れにける★★★★
夕暮の雨後の椿や潦★★★
廣田洋一
次々と小鳥飛び来る桜かな★★★
朝桜歩みゆるめて仰ぎけり★★★
道端に画帳広げし桜かな
「(広げ)し」は、「(広げ)き」の連体形なので、桜を修飾することになります。口語になおせば、「画帳広げた桜」となります。
桑本栄太郎
岩走る垂水となりぬ春の川★★★
足元のクッションなりぬ草芽吹く★★★★
春の夢遠くの孫と遊び居り★★★
多田有花
沈丁花白一色の香を放つ★★★
まだ若き枝垂桜が境内に★★★★
この山にこれほど桜ありしとは★★★
3月23日(4名)
小口泰與
ごうごうと男波を踏まえ雪解川★★★
囀りや園児の描くクレヨン画★★★★
隠れ沼に影震わすや春の蝶★★★
廣田洋一
春暁や高層ビルの窓暗し★★★
春暁の目覚まし止めてまどろみぬ★★★
春暁の雲の流れの早きかな★★★★
春暁は枕草子の冒頭の章句でも詠まれているが、日本人が心引かれるテーマ。この句は雲の流れの速さに、春暁の寒さ、なにかいつもと違う気配や緊張を感じ取っている。(高橋正子)
桑本栄太郎
咲き満つる丘一面の花菜かな★★★★
山里に旧知と出会う春日さす★★★
つんつんと赤き垣根や新芽立つ★★★
多田有花
朝ごとに今日の桜へ挨拶を★★★
手水舎に寄り添い枝垂桜咲く★★★★
残る梅の下に座りて鍵ハモを★★★
3月22日(4名)
小口泰與
花咲きてひときは老し我と犬★★★
公魚や火灯しごろの鄙の宿★★★★
公魚釣りには、釣りの楽しみと、鄙びた宿に泊まる楽しみがあるようだ。公魚と鄙びた宿の灯の醸す抒情がいい。癒される句。(高橋正子)
産土は今ひたすらに花のころ★★★
廣田洋一
墓参終へ珈琲すする彼岸かな★★★
彼岸桜は菩薩の笑みや墓参り★★★★
春疾風たまらず入る軒のした★★★
桑本栄太郎
花冷えや未だ三分のさくら咲く★★★★
ひこばえの幹に咲き初む桜かな★★★
びょうびょうと耳朶過ぎぬ春疾風★★★
多田有花
雨のなか染井吉野の咲き始め★★★
アスファルトの隙間に咲ける菫かな★★★
山桜さくらの色もさまざまに★★★★
3月21日(4名)
小口泰與
木蓮やテレビアンテナみな西へ★★★
雛菊やひたと日の出る地平線★★★★
ひたぶるに朝の読経や松の花★★★
廣田洋一
ふらここの順番待ちの母一人★★★
十年経てなほ余震有り彼岸かな★★★
お彼岸や手を取り合ひて老夫婦★★★
多田有花
対岸は桜の山となりにけり★★★
春分や曇りて夜には雨となり★★★
山桜離れて生まるさくら色★★★★
山桜は近くで見るとやや白く見える。離れて、塊としてみると、たしかに、さくら色なのだ。白く見える桜も桜の色をもっている。(高橋正子)
桑本栄太郎
ふるさとを遠くに想う入り彼岸★★★★
房枝垂れ雨の滴や馬酔木咲く★★★
囀りに合わせ口笛真似にけり★★★

自由な投句箱/3月11日~20日

※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
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主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/3月11日~20日

3月20日(2句)
★芽柳や紙飛行機の風に乗り/小口泰與
芽柳がやわらかにそよぐほどの風がある。紙飛行機が軽く風にのって飛ぶ。春風の姿がよく詠まれている。(高橋正子)
★五分咲きの桜の枝の活気かな/廣田洋一
桜が五分ほど咲いた。十分花を楽しめる咲き具合。これから満開へとぐっと力を溜めている。いきいきとした桜の様子に励まされる思いだ。(高橋正子)
3月19日(2句)
★桜の芽緑色濃くふふみけり/廣田洋一
桜の芽が膨らんできている。今、芽は生気に満ちた緑色。日々刻々に変化して開花に向かう桜を楽しみにしている心。(高橋正子)
★来し方を振り返りつつ花仰ぐ/多田有花
「さまざまな事思ひ出す桜かな 芭蕉」の句を思い出すが、桜は一年の区切りを印象付けてくれる花。多くの人が持つ心境。(高橋正子)
3月18日(2句)
★道はたと途絶え端山の牧開き/小口泰與
端山への道を辿ると、はたと途絶えるところ。そこに牧場が開かれ、思わぬ景色にであう。いよいよ放牧の季節となった明るさが感じられる。(高橋正子)
★鴬の啼く姿見ゆ三角点/古田敬二
三角点は山の頂上あたりに設置されている。そこで、鴬が啼く姿を目の当たりにした。普段は声を聞くのみの鴬だけに、感激である。「三角点」を詠み込んだのが新しい。(高橋正子)
3月17日(3句)
★あたたかや使ひ古しの木の定規/廣田洋一
最近は木の定規が珍しくなったが、使い馴染じみ古した木の手触りがあたたかい。暖かな日が差すところにある木の定規。昭和のなつかしさが湧く(高橋正子)
★朝を呼び幾度も雉の鳴き続く/多田有花
春山に雉の声が鋭く響く。いく度もなく鋭声に記事は朝を呼んでいるようでもある。春の朝が雉に呼ばれてやって来る。(高橋正子)
★御嶽の遠くかすんで桜咲く/古田敬二
御嶽と桜がある景色。霞がかかり御嶽は遠くかすんでいる。桜の雲がやわらかに前景にある。(高橋正子)
3月16日(2句)
★つばくろや軒の広びろ菓子問屋/小口泰與
「つばくろ」は「つばめ」のこと。春になってつばめが南の国から帰って来てくれるのはうれしいことだ。代々続く菓子問屋の広い軒のつばめの巣。さそじゃ貫録のあるものであろう。(高橋正子)
<洛西の山里>
★白壁の築地に添いぬ白木蓮/桑本栄太郎
白壁の築地は、日にあたると白が眩しい。白木蓮の白も眩しい。白に白が重なる眩しさがいい。(高橋正子)
3月15日(1句)
★春雷や玻璃戸を囃す山の風/小口泰與
春雷が轟き、山から吹く風はガラス戸をガタガタ鳴らす。座っている部屋の出来事。雷やガラス戸を鳴らす山の風が上州の作者の生活を語っている。(高橋正子)
3月14日(3句)
★山峡の田水に走る蝌蚪の影/小口泰與
山峡の田には、昭和の景色がそのままが残っているようで、懐かしい。光が差し込む澄んだ田水には蝌蚪が泳ぐ影が映っている。(高橋正子)
★鴬の囀り響く濃き朝霧/多田有花
朝霧が濃く立ち込める中に鴬の囀りが聞こえる。「濃い朝霧」に山深さを思い起こす。鴬の声は、山で聞きたい。(高橋正子)
★蓬餅思い起こせば母がおり/古田敬二
蓬餅を食べると、母を思い出す。思い出す以上にそこに母がいる。野で摘んだ蓬がたっぷりと入った蓬餅は母が作ってくれるものだった。「母がおり」の心境がいい。(高橋正子)
3月13日(1句)
★春の野や摘みたる花を押花に/廣田洋一
春の野に遊んだ一日。摘んだ花を押し花にした。春の野の記憶を残すように、花を押し花にした。もちろん花好きのせいで。(高橋正子)
3月12日(1句)
★ものの芽や在校生のランニング/桑本栄太郎
在校生とあるから、上級生が卒業していないのだろう。残された在校生たちが、ランニングに励んでいる。上級生が欠けた一時は、ものの芽が育つとき。その時が上手く詠まれている。(高橋正子)
3月11日(2句)
★我が浅間今ひたすらに雪解かな/小口泰與
「我が浅間」は、毎日毎日見ている浅間山。私のもの、私の体となった浅間山。それほど親しい浅間山は今雪解けの季節なのだ。浅間山賛歌。(高橋正子)
★友を訪う分葱一束携えて/古田敬二
友を訪うときにもってゆくもの。酒や魚もあるだろうが、この日は分葱。早春の料理としてぬたに和えて食べるとおいしい分葱だ。ご自分が丹精してつくられたのだろう。心の籠った一束に友は喜ばれたことだろう。(高橋正子)

3月11日~20日

3月20日(4名)
小口泰與
密やかに一人静や丘の辺に★★★
芽柳や紙飛行機の風に乗り★★★★
芽柳がやわらかにそよぐほどの風がある。紙飛行機が軽く風にのって飛ぶ。春風の姿がよく詠まれている。(高橋正子)
春セーターおちこち青き庭の芝★★★
多田有花
辛夷咲く蒼天のほか何もなし★★★★
連翹の黄色輝くカーブの先★★★
春分やリコーダーを吹きならす★★★
廣田洋一
観音像の裳裾に揺れる枝垂桜★★★
五分咲きの桜の枝の活気かな★★★★
桜が五分ほど咲いた。十分花を楽しめる咲き具合。これから満開へとぐっと力を溜めている。いきいきとした桜の様子に励まされる思いだ。(高橋正子)
お彼岸のお萩を供へ母の味★★★
桑本栄太郎
藁立てる支柱のぼりぬ花ゑんどう★★★
敷き詰もる紅の地獄や落つばき★★★
白れんの傷み散りたる道の辺に★★★
3月19日(5名)
小口泰與
春風やゲートボールの婆の声★★★
亀鳴くや十三仏を暗誦す★★★
如月や飴に五家宝に塩せんべい★★★
廣田洋一
啓蟄の雀遊べる潦★★★
啓蟄の庭に忘れしスコップかな★★★
桜の芽緑色濃くふふみけり★★★★
桜の芽が膨らんできている。今、芽は生気に満ちた緑色。日々刻々に変化して開花に向かう桜を楽しみにしている心。(高橋正子)
多田有花
咲き初めし陽光桜に日の光★★★
せせらぎの音を背後に山桜★★★
来し方を振り返りつつ花仰ぐ★★★★
「さまざまな事思ひ出す桜かな 芭蕉」の句を思い出すが、桜は一年の区切りを印象付けてくれる花。多くの人が持つ心境。(高橋正子)
桑本栄太郎
校門のつぼみ紅立つ桜の芽★★★
堰水の白く煌めき新芽立つ★★★
白れんの並木通りや商店街★★★
古田敬二
残り鴨まだ泳いでいる山の池★★★
散る前の木蓮揺れる川向う★★★
鶯の姿を見せて鳴くを見る★★★
3月18日(5名)
廣田洋一
今朝もまた主見送る風信子★★★
紫は立子の色や風信子★★★★
早咲きの桜真白や並木道★★★
小口泰與
奥利根の峡の棚田の菫かな★★★
釣竿の穂先くぐりて虻唸る★★★
道はたと絶える端山の牧開き(原句)
道はたと途絶え端山の牧開き★★★★(正子添削)
端山への道を辿ると、はたと途絶えるところ。そこに牧場が開かれ、思わぬ景色にであう。いよいよ放牧の季節となった明るさが感じられる。(高橋正子)
多田有花
いま朝日とどき初めにし山桜★★★
いそひよどり囀りのいと軽やかに★★★★
桜咲く列島のうえ飛機がゆく★★★★
桑本栄太郎
コンクリの風の割目やすみれ咲く★★★★
無垢と云う白れん早も萎れけり★★★
でこぽんのおでこ膨らむ春うらら★★★
古田敬二
馬酔木咲くレンズ一杯溢れる程★★★
残雪の御岳見える三角点★★★
三角点鶯の啼く姿見ゆ(原句)
鴬の啼く姿見ゆ三角点★★★★(正子添削)
三角点は山の頂上あたりに設置されている。そこで、鴬が啼く姿を目の当たりにした。普段は声を聞くのみの鴬だけに、感激である。「三角点」を詠み込んだのが新しい。(高橋正子)
3月17日(5名)
小口泰與
庭いまやひたすらに萌え木の芽時★★★
また二人蓬を摘みに来たりける★★★★
忽然と鋭声の雉や藪の中★★★
廣田洋一
あたたかや使ひ古しの木の定規★★★★
最近は木の定規が珍しくなったが、使い馴染じみ古した木の手触りがあたたかい。暖かな日が差すところにある木の定規。昭和のなつかしさが湧く(高橋正子)
日の射せる庭に出てみて暖かし★★★
篩いたる土を干したり暖かし★★★
多田有花
遠山をすべて隠せる春霞★★★★
暖かやわが肋骨を伸ばしおり★★★
朝を呼び幾度も雉の鳴き続く★★★★
春山に雉の声が鋭く響く。いく度もなく鋭声に記事は朝を呼んでいるようでもある。春の朝が雉に呼ばれてやって来る。(高橋正子)
桑本栄太郎
空おおう園の桜や咲き初むる★★★★
目覚むれど未だ明るき遅日かな★★★
嶺の上のうすきピンクや春の宵★★★
古田敬二
御嶽の遠くにかすんで桜咲く(原句)
御嶽の遠くかすんで桜咲く★★★★(正子添削)
御嶽と桜がある景色。霞がかかり御嶽は遠くかすんでいる。桜の雲がやわらかに前景にある。(高橋正子)
さらさらと音させ春の種を蒔く
「種蒔き」「種を蒔く」は春の季語なので、「春の」は不要と思います。「さらさらと音させ」は大変いいと思います。
こんなにも高く欅芽吹きけり(原句)
こんなにも高く欅の芽吹きけり★★★★(正子添削)
3月16日(5名)
小口泰與
照鷽(てりうそ)や榛名湖へボート漕ぎ出づ★★★
小綬鶏や呼ばふ岸辺の船着き場★★★
つばくろや軒の広びろ菓子問屋★★★★
「つばくろ」は「つばめ」のこと。春になってつばめが南の国から帰って来てくれるのはうれしいことだ。代々続く菓子問屋の広い軒のつばめの巣。さそじゃ貫録のあるものであろう。(高橋正子)
多田有花
桜咲く真昼の風のやわらかし★★★★
講演を終えて眺める春の山★★★
桜咲く重たき髪を切りにけり
「重たき」が気持ちを重くさせます。髪を切ったあとの「軽さ」をいうのが桜と合っていいと思います。(高橋正子)
廣田洋一
雪柳夜目にも白く揺れてをり★★★
通学の子らの自転車雪柳★★★★
雨上がりいよよ真白き雪柳★★★
桑本栄太郎
<洛西の山里>
長屋門ありし旧家や春の里★★★
白壁の築地に添いぬ白木蓮★★★★
白壁の築地は、日にあたると白が眩しい。白木蓮の白も眩しい。白に白が重なる眩しさがいい。(高橋正子)
菜の花や目鼻分かたぬ辻地蔵★★★★
古田敬二
高山線上り列車に山桜★★★★
そこだけを明るく照らして山桜★★★★
青ぬたや母の味には追いつけず★★★
3月15日(4名)
小口泰與
渓流の逸る流れや木の芽時★★★
山峡の隣家は遠し巣立鳥★★★
春雷や玻璃戸を囃す山の風★★★★
廣田洋一
鷺の二羽春日を浴びて佇めり★★★
頬白来光あふれる公園に★★★★
頬白や声も出さずに飛び去りぬ★★★
桑本栄太郎
ほろほろと雨の滴や馬酔木咲く★★★
びょうびょうと耳朶過ぎぬ春田風★★★★
あおぞらに無垢の蒼ざめ白木蓮★★★
古田敬二
柔らかき色となりたる芽吹き山★★★
猫柳生家を川へ下る道★★★
山躑躅咲きそむ数え切れぬほど★★★★
3月14日(5名)
小口泰與
山峡の田水に走る蝌蚪の影★★★★
雁帰る秋田諸越届きける★★★
裏庭へひそかに招く沈丁花★★★
廣田洋一
春の野や夕を告げたる童歌★★★
春の野を渡る鐘の音杳々たり★★★
春の虹半円のまま留まりぬ★★★★
多田有花
雨あがり山の桜の咲きはじめ★★★★
春寒の東屋に鍵盤ハーモニカ★★★
鶯の囀り響く濃き朝霧に(原句)
鴬の囀り響く濃き朝霧★★★★(正子添削)
古田敬二
蓬餅思い起こせば母がおり★★★★
フクシマの涙かと思う春の雨★★★
初黄蝶風吹くままに流れ行く★★★
桑本栄太郎
白れんの少し蒼ざめ今日満開★★★
咲き満ちて摘んで見たる白木蓮★★★
みちのくの風の電話や春愁ふ★★★
川名ますみ
嵐やみわが家に架かる春の虹★★★
春の虹その大きなる眩しさよ★★★
すぐそこに大き二重の春の虹★★★★
3月13日(3名)
廣田洋一
春の野に草食む馬の散らばりて★★★
春の野や摘みたる花を押花に★★★★
ブラスバンドのマーチ流れる春野かな★★★
小口泰與
ひたすらにカメラ構える雉かな★★★
春の雲榛名を刷きて照り曇り★★★
駄菓子屋の婆は元気や紙風船★★★
桑本栄太郎
ほゆほつと咲き初め至る雪柳
吾が影の田道に長き日永かな★★★★
春雲の嶺を奔りて止まらず★★★
3月12日(5名)
小口泰與
青麦やひょこんと下りる禽一羽★★★
赤城より秀づる風や麦青む★★★
牡丹の芽毛筆の如ふふみける★★★
廣田洋一
並木の芽紅く染まりて時を待ち
「芽」だけでは、季語となりません。「芽吹く」などは、季語です。
枝毎に声をかけたり木の芽晴★★★★
ゆるやかな川の流れに木の芽張る★★★
桑本栄太郎
ものの芽や在校生のランニング★★★★
小雨降り嶺の連なる木の芽山★★★
しつとりと芽吹きを誘う小雨かな★★★
多田有花
サングラスして運転の日永かな★★★
春の昼ラジオ体操一二三★★★
のどけしや多機能トング使い初め★★★
古田敬二
飛騨川の瀬音届きぬ猫柳★★★★
薄闇の二人に香る沈丁花★★★
マスクして表情見えぬ人ばかり★★★
3月11日(5名)
廣田洋一
鶴引きて水面のしんと鎮まりぬ★★★
プランターの土と苗札新たにす★★★★
苗札を覗きて名前教りぬ★★★
小口泰與
足の爪切りたる先や揚雲雀★★★
轟ごうと谷は雪解や日闌ける★★★
我が浅間今ひたすらに雪解かな★★★★
多田有花
明けてくる朝の光に鶯鳴く★★★★
三月や集いて食べる混ぜご飯★★★
日が永くなったねと言いドアを入る★★★
桑本栄太郎
春光の甍きらめく山の里★★★
窓開ける市バスの中や春日燦々★★★★
十年の早やも東北震災忌★★★
古田敬二
猫柳活けて賑わう饅頭屋★★★
暖かき色の塊紅梅は★★★
友を訪う分葱一束携えて★★★★

自由な投句箱/3月1日~10日

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主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/3月1日~10日

3月10日(1句)
★ヘリコプター春の雲間に旋回す/古田敬二
実物のヘリコプターが旋回していながら、句に詠まれて、模型のヘリコプターのようになっている軽やかな面白さ。(高橋正子)
3月9日(1句)
★2Bの鉛筆削りて春吟行/古田敬二
暖かくなったので、吟行に出かけるのも億劫でなくなった。鉛筆と手帖を携えての吟行。立ち止まりながら書くのなら、柔らかい芯の鉛筆がいい。削ることは、出かける前の心準備。(高橋正子)
3月8日(2句)
★春の闇浅間火柱眼間に/小口泰與
春の闇に、浅間の噴火の火柱が眼間に迫って見える。春の闇が妖艶にさえ思える。(髙橋正子)
★さみどりに太りて尖る辛夷の芽/古田敬二
辛夷の花芽は、うぶ毛のようなさみどりの毛のつつまれている。そして太くて、逞しく尖っている。開けばひらひらと風に舞うような花の花芽とは思えないが、実際はこうなのだ。(高橋正子)
3月7日(1句)
★初桜演奏帰りの山の辺に/多田有花
何を演奏されたのか。舞台の高揚感はいつしか覚め、山の辺にさしかかれば、初桜が目に止まる。舞台の成功をささやかに祝福するようだ。(高橋正子)
3月6日(1句)
★畦道の右も左揚雲雀/小口泰與
畦道を歩くと、右からも左からも雲雀が飛び立つ。驚かされつつ見て居れば、あれよと言う間に雲間にいる。こんなにも雲雀がいて、豊かな自然だ。(高橋正子)
3月5日(2句)
★山茱萸の花の明かりの軒端かな/桑本栄太郎
料峭の花、山茱萸は、研ぎすまされたようなきれいな黄色。それが軒端にあると軒端は花明かりに浮き立つようだ。(高橋正子)
★風光る新生児抱く父親へ/川名ますみ
抱くことに慣れない父親が新生児をこわれそうなものを抱くように大事に抱いている。それを風がきらきらと吹いてゆく。命の輝きを見るようだ。(高橋正子)
3月4日(2句)
★轟ごうと谷川揺るや杉の花/小口泰與
杉の花が咲くころ、谷川は雪解け水に水量を増して、轟ごうととどろきながら身を揺らして流れる。谷川に迫る杉木立も谷川の音に揺れるほど。堂々とした男性的な句。(高橋正子)
★離れ住むわが娘(こ)へ運ぶ雛料理/古田敬二
離れ住むわが娘に、幼いころを姿を重ね、いまも変わらぬ愛情で、ひな料理を運ぶ。懐の深さと温かさが父親たるところ。(高橋正子)
3月3日(2句)
★一枝の桃の節句てふ厨かな/廣田洋一
厨に桃の花の一枝をさした。一枝の桃の花で厨はすっかり桃の節句の雰囲気となる。ささやかながらも心華やぐ。(高橋正子)
★ひな祭りよく晴れ朝のまだ寒し/多田有花
ひな祭の朝は、晴れた朝なら、特に寒さが残る。昼間はあたたかくなるであろうが、ひな祭りの華やぎに凛とした空気が加わる。(髙橋正子)
3月2日(1句)
★ランドセル光らせ下校春日和/多田有花
低学年の児童であろうか。まだ日が高いうちの下校。ランドセルに春の日が当たっててらてらと光っている。のどかな下校風景を少し離れて見守る作者のあたたかさがいい。(高橋正子)
3月1日(2句)
★おぼろ月夕餉のしたくしておれば/多田有花
夕餉の支度をしながら窓をみるとおぼろ月が懸かっている。夕餉の支度さえも艶めいて思えるおぼろ月。(高橋正子)
★春立てば梢の天へなお高し/古田敬二
春になった。そのことで梢は天へさらに伸びようとし、天は梢をはるか下にしてなお高くある。万物は高く、明るく、春へ動き始める。(高橋正子)

3月1日~10日

3月10日(4名)
廣田洋一
引鶴や螺旋に飛びて北を向く★★★
引鶴の前を向きたる長き首★★★
引鶴や友の訃報に献杯す★★★★
小口泰與
板塀をひそかに渡る猫の夫★★★
暖かや金平糖の角まるき★★★
支流よりひたと出で來る雪解水★★★★
桑本栄太郎
春風の水面を渡りさざ波に★★★★
紅白の源平咲きや落つばき★★★
青空にもくれん開き摘み見る★★★
古田敬二
ヘリコプター春の雲間に旋回す★★★★
山茱萸の主なき庭に光浴ぶ★★★
犬ふぐり畑に残し草を引く★★★
3月9日(4名)
小口泰與
縄文の出っ尻土偶風光る★★★
畦道へ土塊落とす燕かな★★★★
久方の空へ浅間の雪解かな★★★
廣田洋一
春の野や光さんさん子らの声★★★
春の野や笑顔こぼれる家族連れ★★★
春の野の小川とろとろ流れけり★★★
桑本栄太郎
木蓮の千のつぼみや咲き初むる★★★★
想い出の房のピンクや馬酔木咲く★★★
べんがらの板塀褪せし春半ば★★★
古田敬二
今年又初音を妻に先越され★★★
2Bの鉛筆削る春吟行★★★★
刈り込まれ低きに咲き初むイタチ草★★★
3月8日(4名)
小口泰與
春の闇浅間火柱眼間に★★★★
たぶたぶと湯舟溢れし春の宵★★★
雉啼くや土煙上ぐ耕運機★★★
廣田洋一
雨空に明るき墓碑や立子の忌★★★★
春塵や銀杏並木にクリーニング店★★★
啓蟄や動き出したる団子虫★★★
桑本栄太郎
ほろほろと房のピンクや馬酔木咲く★★★
雨上がる朝の日差しや桜芽木★★★★
みな見上げ通り過ぎ居り白木蓮★★★
古田敬二
菜の花や田原の町の長屋門★★★
青空へこぶしの蕾さみどりに★★★
さみどりに太りて尖る辛夷の芽★★★★
3月7日(5名)
小口泰與
君子欄影をひきいる応接間★★★
鳥雲にズームレンズの重さかな★★★
小綬鶏や大河ドラマの始まりぬ★★★

廣田洋一

遠景色色変りたる砂嵐★★★
春塵に巻かれつつ行く散歩道★★★
駆ける子を追ひかけ上がる春の塵★★★
多田有花
啓蟄や人みな野辺に繰り出しぬ★★★
鶯や朝の体操しておれば★★★
初桜演奏帰りの山の辺に★★★★

桑本栄太郎

乙訓の丘の田道や揚ひばり★★★
橡の芽のてらてら芽吹く日差しかな★★★★
白壁の築地の塀やしだれ梅★★★
古田敬二
雪消えてシルエットとなる鈴鹿嶺★★★
草原の青き草食む羊かな★★★
どこからか公園に飛ぶなシャボン玉(原句)
どこからか公園に飛ぶシャボン玉★★★★(正子添削)
3月6日(5名)
小口泰與
畦道の右も左も揚雲雀★★★★
大いなる浅間控える桜かな★★★
春暁の禽の鋭声や藪の中★★★
廣田洋一
草餅や思ひ出したる野の香★★★★
絶え間なく白き花舞ふ立子の忌★★★
鳥の声一声高く立子の忌★★★
桑本栄太郎
白れんの今に飛翔や咲き初むる★★★★
陸橋の開き初めたる白木蓮★★★
春雲の嶺を奔りて止まらず★★★
多田有花
うぐいすの囀り繁くなる朝★★★
ポストまで駆けてゆくなり春の雨★★★
さんしゅゆの花や遠くで人の声★★★★

古田敬二

鴨引けりさざ波の無き池となる★★★
葦の芽のさざ波来れば見えぬほど(原句)
葦の芽にさざ波来れば見えぬほど★★★★(正子添削)
雪柳咲けり夕べの雨の後★★★
3月5日(6名)
小口泰與
活写せる五羽の白鳥帰りける★★★
諸子魚釣先頭駆ける女の子★★★
白梅や風の秀づる利根川原★★★
廣田洋一
露天湯の雲の流れて日永かな(原句)
露天湯に雲の流れて日永かな★★★★(正子添削)
帰り来て襟元払ふ春の塵★★★
春埃食事の度に拭き清め★★★
桑本栄太郎
淡々と雨にピンクや馬酔木咲く★★★
山茱萸の花の明かりの軒端かな★★★★
料峭の花、山茱萸は、研ぎすまされたようなきれいな黄色。それが軒端にあると軒端は花明かりに浮き立つようだ。(高橋正子)
蘂のみな上に襤褸やつばき落つ★★★
川名ますみ
風光る新生児抱く父親へ★★★★
抱くことに慣れない父親が新生児をこわれそうなものを抱くように大事に抱いている。それを風がきらきらと吹いてゆく。命の輝きを見るようだ。(高橋正子)
葉のうらにましろき莟シクラメン★★★
菜の花の下にサフラン五つ六つ★★★
多田有花
あたたかき雨の降る音春未明★★★
春の空映せる池に鷺来る★★★
雲行くや芽吹きの時を待ちし木々(原句)
雲行くや芽吹きの時を待てる木々★★★★(正子添削)

古田敬二

煮えたぎる湯へしゃぶしゃぶの蛍烏賊★★★★
残雪も消え影絵となる鈴鹿嶺★★★星
二ン月の時刻の過ぎる早さかな★★★

3月4日(5名)
小口泰與
楤の芽の天ぷらに沸く都会っ子★★★
華やかに沼を囃すや春の鴨★★★
轟ごうと谷川揺るや杉の花★★★★
杉の花が咲くころ、谷川は雪解け水に水量を増して、轟ごうととどろきながら身を揺らして流れる。谷川に迫る杉木立も谷川の音に揺れるほど。堂々とした男性的な句。(高橋正子)
古田敬二
離れ住むわが娘(こ)へ運ぶ雛料理★★★★
離れ住むわが娘に、幼いころを姿を重ね、いまも変わらぬ愛情で、ひな料理を運ぶ。懐の深さと温かさが父親たるところ。(高橋正子)
長男が上手に裁く細魚かな★★★
蛍烏賊入れ歯に堅き目玉かな★★★

廣田洋一

窓際の机うっすら春埃★★★
霞立つ足音だけの人が行く(原句)
「霞立つ」と「行く」の二か所に切れがあります。これは避けたいです。このごろは、このように切ってしまった句を俳句総合誌でも見かけますが、もともと切れは付かず離れずの関係です。(高橋正子)
霞立つ足音だけの人が行き★★★★(正子添削)
丹沢の山々霞む朝かな★★★
桑本栄太郎
溝川の楽となりたる犬ふぐり★★★
休耕の畑を占めたり花なずな★★★
芽柳の佳人のように腰揺るる★★★

多田有花

恋猫の声夜更けにも夜明けにも★★★
遠目にも煙のごとく柳の芽★★★★
はくれんの花芽のほぐれ初めにし日★★★
3月3日(5名)
小口泰與
春の夕秀つ枝下枝に雀かな★★★
初蝶のゆたにたゆたに草の間を★★★
落椿五目並べの手が止まる★★★
廣田洋一
雛飾る形ばかりの雛祭★★★
一枝の桃の節句てふ厨かな★★★★
厨に桃の花の一枝をさした。一枝の桃の花で厨はすっかり桃の節句の雰囲気となる。ささやかながらも心華やぐ。(高橋正子)
遅き日や今日の工程終へにけり★★★
桑本栄太郎
風を避け植え込みに沿い木の芽吹く★★★
陽菜人(ひなと)とう直売所あり春の畑★★★
ものの芽や山里光るさみどりに★★★★
多田有花
ひな祭りよく晴れ朝のまだ寒し★★★★
ひな祭の朝は、晴れた朝なら、特に寒さが残る。昼間はあたたかくなるであろうが、ひな祭りの華やぎに凛とした空気が加わる。(髙橋正子)
雉鳴くや昼餉を終えしその窓辺★★★
雛の日やピアニカで吹くアベマリア★★★

古田敬二

春炬燵きょうから薬一つ増え★★★
寒烏木の天辺に鎮座する★★★
つがい鴨北へ飛びゆく時を待つ★★★★
3月2日(4名)
廣田洋一
シクラメン葉陰に伸びる蕾かな★★★
シクラメン白斑の花の群咲けリ★★★
シクラメンきりりと顔を上げたりき★★★
小口泰與
白鳥帰る声高らかに華やかに★★★
ばらの芽の和紙の如くにほぐれけり★★★
梅の香や縁側に食む塩せんべい★★★
多田有花
ランドセル光らせ下校春日和★★★★
低学年の児童であろうか。まだ日が高いうちの下校。ランドセルに春の日が当たっててらてらと光っている。のどかな下校風景を少し離れて見守る作者のあたたかさがいい。(高橋正子)
春一番吹いて午後には雨あがり★★★
春キャベツ今日の目玉と積まれおり★★★

桑本栄太郎

春荒や傘を斜めに登校生★★★
春一番吹いて雨降る午後の冷え★★★
春睡の赤子のように雨の午後★★★
3月1日(5名)
小口泰與
狂暴の巨花の去りけり春の沼★★★
白鳥の引きゆく沼へ目を張るや★★★
春夕べほつ枝取り合う雀かな★★★
廣田洋一
ものの芽や花壇に秘めし花の色★★★
新築の家に新車や春の風★★★
春塵や道を隔てて舞来たる★★★
多田有花
おぼろ月夕餉のしたくしておれば★★★★
夕餉の支度をしながら窓をみるとおぼろ月が懸かっている。夕餉の支度さえも艶めいて思えるおぼろ月。(高橋正子)
明けてくる窓辺に初音響きおり★★★★
三月や池の畔でピアニカを★★★

桑本栄太郎

山里の地道に迷う春日かな★★★
春日さす南茶屋とや辻看板★★★
UFOと見たるさみどり土佐みずき★★★
古田敬二
陽が落ちるキャベツ畑を黒くして(原句)
春日落つキャベツ畑を黒くして★★★★(正子添削)
キャベツは歳時記では、夏の季語です。キャベツは露地栽培しかできないので、採れる時期によって冬キャベツ、春キャベツ、グリーンボール(夏)、高原キャベツ(夏)があり、今の時期なら春キャベツということになりましょう。
午後からの風に打たれて畑を鋤く★★★
春立てば梢の天へなお高し★★★★
春になった。そのことで梢は天へさらに伸びようとし、天は梢をはるか下にしてなお高くある。万物は高く、明るく、春へ動き始める。(高橋正子)