自由な投句箱/2月21日~28日

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※投句は、一日1回3句に限ります。
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主宰:高橋正子・管理:高橋信之

今日の秀句/2月21日~28日

2月28日(1句)
★さわさわと菜の花に吹く海の風/古田敬二
菜の花に吹く海の風を「さわさわ」と表現しているので、菜の花の柔らかさ、その匂いが現実感をもって快く伝わってくる。菜の花と海の取り合せが明るい。(高橋正子)
2月27日(1句)
★茶箪笥に紙の雛の置かれけり/小口泰與
紙の雛は、思うところに、どこにでも飾れるよさがある。家族がくつろぐ茶の間の茶箪笥に、紙雛を置く。とたんに明るく艶めいて、暮らしを美しく彩ってくれる。(高橋正子)
2月26日(1句)
★二階より紙飛行機や春の宵/小口泰與
思わぬ方向の二階から紙飛行機が飛んできた。ふいのことに驚いた。紙飛行機を飛ばした二階の少年に幼いころの自分を重ねたのだろう。浪漫的な感傷の漂う春の宵のことだから。(高橋正子)
2月25日(1句)
★雉啼くや山火事いまた収まらず/小口泰與
時事の山火事を詠んだ句。栃木県足利市の山火事が5日目となるが、赤城颪の風も吹いてか、燃える区域が広がっている。消火には10日から2週間かかるとみられる。山に棲む雉の鳴き声も哀しげに尾をひいて聞こえる。鎮火を祈る。(高橋正子)
2月24日(2句)
★風吹けば風の行方になずな咲く/桑本栄太郎
風が吹いて行く方へ、歩いて行くとそこになずなが咲いていた。風の案内を受けて歩いた野道がやさしく詠まれている。(高橋正子)
★紅梅を仰げば空のみずいろに/多田有花
紅梅が咲く空は、真っ青ではなく、みずいろ。春の空は青く見えながらも、霞がかかっていて淡い。紅梅の紅とみずいろの取り合わせが若々しい。(高橋正子)
2月23日(2句)
★大小の水車廻りて水温む/廣田洋一
流れにある大小の水車。大きい水車はたくさんの水を、小さい水車は少しの水を汲み流している。のどかな光景に水の温みを感じる。遠近感とリズム感があり、景色が生きている。(高橋正子)
★荷造りの紐の緩みや春菜着く/桑本栄太郎
荷物は遠くから運ばれ来た。人の手に渡り、車に揺られ、しっかり縛っていた紐が緩んでいる。荷には故郷の春菜がいろいろと。「緩み」と「春菜」の関係がいい。(高橋正子)
2月22日(1句)
★根元には日色を残しほうれん草/廣田洋一
ほうれん草の根元の赤い色は、緑濃い葉に対比されて、印象に残る。その赤い色をこの句では、「日色」と言った。太陽のもとに育ち、日の色を溜めたとも言える。生き生きとしたほうれん草だ。(高橋正子)
2月21日(1句)
★びょうびょうと風が耳過ぎ揚げひばり/桑本栄太郎
ひばりが鳴く野に出ると、耳元を風がびょうびょうと過ぎる。野を吹く強い風の中、高揚がるひばりの姿が力強い。(高橋正子)

2月21日~28日

2月28日(5名)
小口泰與
松風や四つの古墳へ春日影★★★★
日おもてを好む小犬や犬ふぐり★★★
雪岱の余白の挿絵春の波★★★
廣田洋一
ものの芽の緑を秘めし花壇かな★★★
西天に春満月の冴々と★★★★
一人でて春満月を仰ぎたる★★★
多田有花
春寒を戻りて熱きポトフ食ぶ★★★
雨あがる未明の街を春疾風★★★
枝垂梅風を誘いて枝垂れおり★★★★

桑本栄太郎

U・F・Oと見たる思いや土佐水木★★★
かすみ立つ遥か彼方や淀川に★★★
けぶり立つ畑となりたる二月尽★★★
古田敬二
落日にその影はっきり春の雪★★★
さわさわと菜の花に吹く海の風★★★★
菜の花に吹く海の風を「さわさわ」と表現しているので、菜の花の柔らかさ、その匂いが現実感をもって快く伝わってくる。菜の花と海の取り合せが明るい。(高橋正子)
一斉に菜の花なびく海風に★★★
2月27日(3名)
小口泰與
公魚や見えて遥けき湖の舟★★★
大試験家の哀歓ひひめける★★★
茶箪笥に紙の雛の置かれけり★★★★
紙の雛は、思うところに、どこにでも飾れるよさがある。家族がくつろぐ茶の間の茶箪笥に、紙雛を置く。とたんに明るく艶めいて、暮らしを美しく彩ってくれる。(高橋正子)
廣田洋一
妖艶な桃色光る椿かな★★★
小さき木に一輪咲きし椿かな★★★
走り根を紅く挟みて落椿(原句)
「紅く挟み」の「挟み」が気になりす。
走り根の間をうづめ落椿★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
こつ然と天の静寂や雲雀落つ★★★
春寒のほつえにありぬ青き空★★★★
もくれんのにつと微笑み咲くばかり★★★
2月26日(3名)
小口泰與
春荒やいつもの事よ上州は★★★
夕食の会話弾みぬ大試験★★★
二階より紙飛行機や春の宵★★★★
思わぬ方向の二階から紙飛行機が飛んできた。ふいのことに驚いた。紙飛行機を飛ばした二階の少年に幼いころの自分を重ねたのだろう。浪漫的な感傷の漂う春の宵のことだから。(高橋正子)

廣田洋一

ものの芽の色に染まりし花壇かな(原句)
「色に染まり」では、読み手は「色」が具体的にイメージしにくいので、句が漠然とします。なにか想像の手がかりが欲しいです。
参考までに草田男の句を挙げます。
「青もかち紫も勝つ物芽かな 中村草田男」
ものの芽の色いろいろに花壇かな★★★★(正子添削例)
着古せし衣類を捨てて2月尽★★★
積まれし本地震にも耐え2月尽★★★
桑本栄太郎
目覚めても追憶つづく朝寝人★★★
竹の枝の支柱立てらる花ゑんどう★★★★
春風のパタパタ叩くトタン屋根★★★
2月25日(4名)
小口泰與
囀りや風吹かぬ日の厩橋★★★
雉啼くや山火事いまた収まらず★★★★
時事の山火事を詠んだ句。栃木県足利市の山火事が5日目となるが、赤城颪の風も吹いてか、燃える区域が広がっている。消火には10日から2週間かかるとみられる。山に棲む雉の鳴き声も哀しげに尾をひいて聞こえる。鎮火を祈る。(高橋正子)
山茱萸の花かたまりて毬の如★★★
廣田洋一
公園を駆けまわる子ら春めきぬ★★★
春めくや名を知らぬ花咲きにけり★★★
マンションの工事の音や春めけり★★★
多田有花
紅梅の後ろも紅梅色さかん★★★
陽を透かす高き梢の藪つばき★★★★
ピアニカを奏でておれば春の鳥★★★

桑本栄太郎

レシピ添え花菜売らるる無人店★★★
揚ひばり畑の真中にいちご園★★★★
春風のトタンの屋根を叩きけり★★★
2月24日(4名)
小口泰與
春眠の中に入りくる猫の声★★★
春泥や次つぎ庭へ群雀★★★
春疾風端山へ対う鳥の群★★★
廣田洋一
庭の草はたと揺れ止み冴返る★★★
濃紅梅白梅に割り込みにけり★★★
枝垂梅一輪残る枝の先★★★
桑本栄太郎
パンジーの蝶となる日か日差しけり★★★
風吹けば風の行方になずな咲く★★★★
風が吹いて行く方へ、歩いて行くとそこになずなが咲いていた。風の案内を受けて歩いた野道がやさしく詠まれている。(高橋正子)
青空を透いて並木や銀杏の芽★★★
多田有花
春の夜懐かしき人の夢を見る★★★
あけぼのの春山ぎわの空を見る★★★
紅梅を仰げば空のみずいろに★★★★
紅梅が咲く空は、真っ青ではなく、みずいろ。春の空は青く見えながらも、霞がかかっていて淡い。紅梅の紅とみずいろの取り合わせが若々しい。(高橋正子)
2月23日(3名)
小口泰與
赤城はや雪解水はも放ちける★★★
自転車の通学女子へ春疾風★★★
雨後の庭朝日賜わる牡丹の芽★★★
廣田洋一
指文字を書きたる水の温みけり★★★
鯉の群広がる淵の水温む★★★
大小の水車廻りて水温む★★★★
流れにある大小の水車。大きい水車はたくさんの水を、小さい水車は少しの水を汲み流している。のどかな光景に水の温みを感じる。遠近感とリズム感があり、景色が生きている。(高橋正子)
桑本栄太郎
花びらの一重楚々たり薮椿★★★
川べりにひそと番いや残り鴨★★★
荷造りの紐の緩みや春菜着く★★★★
荷物は遠くから運ばれ来た。人の手に渡り、車に揺られ、しっかり縛っていた紐が緩んでいる。荷には故郷の春菜がいろいろと。「緩み」と「春菜」の関係がいい。(高橋正子)
2月22日(4名)
小口泰與
浅間刷く霞の波や鳥の声★★★
春の宵土偶の尻の豊かにて★★★
外にも出よ春満月を浴びてみよ★★★
廣田洋一
川の鯉大きく跳ねて春動く★★★
温度差の大きな日々や春動く★★★
根元には日色を残しほうれん草★★★★
ほうれん草の根元の赤い色は、緑濃い葉に対比されて、印象に残る。その赤い色をこの句では、「日色」と言った。太陽のもとに育ち、日の色を溜めたとも言える。生き生きとしたほうれん草だ。(高橋正子)
多田有花
観梅の人の数多に陽のやさし★★★
家島の影ぼんやりと春霞★★★
天をさすまだ枝のみの山桜★★★★
桑本栄太郎
嶺の端に送電塔やかすみ立つ★★★
こつ然と空の静寂や雲雀落つ★★★
菜の花を供華と抱きたる祠かな★★★
2月21日(4名)
小口泰與
着水の禽の飛沫へ春日影★★★
黄水仙朝日含みて向きむきに★★★★
春の日や芝のおちこち醜草よ★★★
廣田洋一
梅祭日帰り旅に出かけたり★★★
光る海遠くに見つつ梅見かな★★★★
この辺で一寸一服梅見茶屋★★★
多田有花
観梅の人の数多に陽のやさし★★★
家島の影ぼんやりと春霞★★★
天をさすまだ枝のみの山桜★★★★
桑本栄太郎
枝垂れ梅しだれ軒端に日差しけり★★★
びょうびょうと風の耳過ぐ揚ひばり(原句)
びょうびょうと風が耳過ぎ揚げひばり★★★★(正子添削)
ひばりが鳴く野に出ると、耳元を風がびょうびょうと過ぎる。野を吹く強い風の中、高揚がるひばりの姿が力強い。(高橋正子)
ほろ苦き菜の花和えの夕餉かな★★★

自由な投句箱/2月11日~20日

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今日の秀句/2月11日~20日

2月20日(2句)
★春きざす窓に風音空の青/川名ますみ
窓辺に聞こえる風の音、窓から見える空の青にたしかに「春のきざし」を感じた。形としてとらえられない音や色にまず季節の変化が現れると言っていいだろう。(高橋正子)
★俳句誌を開きたるまま春の宵/古田敬二
春の宵。それまで読んでいた俳句雑誌を開けたまま宵の時が過ぎる。明るく艶めいた浪漫的な感傷の漂う俳句がありそうな俳誌なのか。(高橋正子)
2月19日(1句)
★春きざす園児らはしゃぐ庭一杯/桑本栄太郎
庭一杯に広がってはしゃぐ園児がかわいらしく、にぎやかで、春のきざしの確かさがある。(高橋正子)
2月18日(2句)
★紙雛を共に飾りて賑やかに/廣田洋一
雛飾りは、女子のすこやかな成長を願い、また季節の美しさを愛でて飾られる。桜や橘の木木、菱餅や白酒を供え、桃の花を飾って、華やかな節句である。段飾りの雛の周りに紙雛も飾って、にぎやかにする。さびしくないようにの親心であろう。心のこもった雛飾り。(高橋正子)
★春泥の靴に重たく残りけり/古田敬二
春泥は、おのずから柔らかく、てらてらと光る感じがする。雪解けや凍てが緩み雨が降ると泥濘はあちこちに生じる。靴につくと粘って靴から離れず重い。それは、春泥特有の重さだ。(高橋正子)
2月17日(1句)
★渓流の音の方へと蕗の薹/小口泰與
渓流は、雪解け水に嵩を増して岸辺を濡らしながら流れている。蕗の薹は湿ったところを好むのか、水ぎわへと芽生えている。渓流のそばの蕗の薹が清冽な印象で詠まれている。(髙橋正子)
2月16日(1句)
★余寒あり蕪とろとろに煮えて/多田有花
余寒の寒さは身にしみて、温かいものが食べたくなる。ポトフなどに煮込んだ蕪がとろとろに甘く煮えて、一口食べれば、身も心も温まる。蕪がとろとろに煮えたイメージが余寒の空気感によくマッチしている。(高橋正子)
2月15日(1句)
★せせらぎの音涼やかに山笑ふ/廣田洋一
「山笑ふ」を遠くから眺めたのではなく、近くで実感した意義が大きい。山川のせせらぎの音が涼やかに音を立てて、木々の芽も吹くらんできている。日差しが明るく、にこやかな光景。(高橋正子)
2月14日(1句)
★さざ波の立ちて薄氷流れけり/桑本栄太郎
さざ波が立っていると川を覗けば、薄氷が溶けながら流れている。小さな波とうすうすとした氷の、儚いものの世界に作者の好みが読める。(高橋正子)
2月13日(1句)
★春きざす我を追い抜きトラクター/桑本栄太郎
春が来ると畑仕事が忙しくなる。出会ったトラクターも人が歩くを追い越して勢いをつけて農道を走っている。こんなところにも春のきざしが見えてうれしいものだ。(高橋正子)
2月12日(1句)
★淀川の下流かすみぬ菜の花忌/桑本栄太郎
菜の花忌は、2月12日の司馬遼太郎の命日。今、有名な忌日の一つとなったかもしれない。イメージの親しみやすさ、明るさや優しさがあるせいだろう。この日、淀川の上流から遠く下流をながめれば、かすんでいる。かすんでいるあたりに故人の姿がありそうである。(高橋正子)
2月11日(1句)
★畔青む農婦の足の軽やかに/廣田洋一
農婦へのまなざしが温かい。田の畔の草が青く萌えだすと、それまでの寒さから幾分開放されて、農婦の足取りも軽やかに。(高橋正子)

2月11日~20日

2月20日(5名)
小口泰與
湖の面へ夕日差しける日永かな★★★★
暖かや芝に座りて醜草を★★★
放たるる犬の躍動春兆す★★★
廣田洋一
ものの芽のつんつん伸びて光りけり★★★
ものの芽や乳呑児あやす母の声★★★★
ものの芽の一つ大きくほぐれけり★★★
川名ますみ
春浅しレースのカーテン越しの空★★★
春きざす窓に風音空の青★★★★
窓辺に聞こえる風の音、窓から見える空の青にたしかに「春のきざし」を感じた。形としてとらえられない音や色にまず季節の変化が現れると言っていいだろう。(高橋正子)
拾いきし梅一輪の香を卓に★★★★
桑本栄太郎
すすぎもの干すや霾る峰を背に★★★
乙訓の丘を歩めば風光る★★★
あぢさいの芽の艶やかに風生忌★★★★
古田敬二
夕暮れに畑に一人冴え返る(原句)
「夕暮れに」の「に」が説明的に思えます。
夕暮れの畑(はた)に一人や冴え返る★★★★(正子添削)
俳句誌を開きたるまま春の宵★★★★
春の宵。それまで読んでいた俳句雑誌を開けたまま宵の時が過ぎる。明るく艶めいた浪漫的な感傷の漂う俳句がありそうな俳誌なのか。(高橋正子)
春の雪縦横無尽に吹かれけり(原句)
主語「春の雪」と述部「吹かれけり」の不一致が気になります。
春雪に縦横無尽に吹かれけり★★★★(正子添削①)
春の雪縦横無尽に吹きにけり(正子添削②)
2月19日(4名)
小口泰與
さくさくと土踏む音や冴返る★★★
沛然と利根川の雨春寒し★★★★
笛太鼓控ふ雛を飾りけり★★★
廣田洋一
春の川鯉の動きのおほらかに★★★★
水切りの石の伸び行く春の川★★★
丹沢の山青くして春の川★★★
桑本栄太郎
春きざす園児らはしゃぐ庭一杯★★★★
庭一杯に広がってはしゃぐ園児がかわいらしく、にぎやかで、春のきざしの確かさがある。(高橋正子)
鳴き声の背ナをくすぐる猫の恋★★★
いよいよと日差し向き居り桜芽木★★★
古田敬二
春灯をともし俳句誌三月号★★★★
落日にその影くっきり春の雪★★★
落日に行きつ戻りつ春の雪★★★
2月18日(4名)
小口泰與
あらあらと窓を刷きたる春の雪★★★
くねくねの径を歩みて蓬かな★★★
家長我父の年忌や春暖炉★★★
廣田洋一
逝きし子の雛人形を飾りけり★★★★
紙雛を共に飾りて賑やかに★★★★
雛飾りは、女子のすこやかな成長を願い、また季節の美しさを愛でて飾られる。桜や橘の木木、菱餅や白酒を供え、桃の花を飾って、華やかな節句である。段飾りの雛の周りに紙雛も飾って、にぎやかにする。さびしくないようにの親心であろう。心のこもった雛飾り。(高橋正子)
雛あられ買ふ気もなしに見やりたる★★★
桑本栄太郎
目覚むればすでに明るき春障子★★★★
すずめ等のふくらみ群るる凍返る★★★
愛ありて愛人同居のかの子の忌★★★
古田敬二
薄氷に風の風紋残りけり★★★
春泥の靴に重たく残りけり★★★★
春泥は、おのずから柔らかく、てらてらと光る感じがする。雪解けや凍てが緩み雨が降ると泥濘はあちこちに生じる。靴につくと粘って靴から離れず重い。それは、春泥特有の重さだ。(高橋正子)
潮干狩りかがむ姿の二三人★★★
2月17日(4名)
小口泰與
火の山の匂いや春の佐久の鯉★★★
春寒や選挙カーの次つぎと★★★
渓流の音を頼りや蕗の薹(原句)
「頼り」のところを「写生する」といいと思います。
渓流の音の方へと蕗の薹★★★★(正子添削)
渓流は、雪解け水に嵩を増して岸辺を濡らしながら流れている。蕗の薹は湿ったところを好むのか、水ぎわへと芽生えている。渓流のそばの蕗の薹が清冽な印象で詠まれている。(髙橋正子)
廣田洋一
露店湯の湯気を浴びたり蕗の薹★★★★
道路工事終へたる土手に蕗の薹★★★★
蕗の薹焼くか揚げるか決めかねて★★★

多田有花

あたたかや久々にするストレッチ★★★
虹置いて春のしぐれの去りにけり★★★★
春疾風ショパンの英雄ポロネーズ★★★

桑本栄太郎

冴返る想い出ばかりの夢見かな★★★
登校の児童の列に春の雪★★★★
群青の高嶺となりぬ春の宵★★★
2月16日(5名)
小口泰與
フロントのガラスに斜め春驟雨★★★
鳶舞いて湖華やぐや春シール
「春シール」は春ショールでしょうか。
麦踏や夕べの赤城茜色★★★
廣田洋一
けきょけきょと練習中の鶯かな★★★
川べりに潜む鶯高き声★★★★
古き家の庭に紅白梅の花★★★
桑本栄太郎
春寒料峭マルチはためく畑かな★★★
カタカタと校旗はためく春の風★★★
料峭のさざ波走るにはたづみ★★★
多田有花
余寒あり蕪とろとろに煮えて★★★★
余寒の寒さは身にしみて、温かいものが食べたくなる。ポトフなどに煮込んだ蕪がとろとろに甘く煮えて、一口食べれば、身も心も温まる。蕪がとろとろに煮えたイメージが余寒の空気感によくマッチしている。(高橋正子)
地に開く星の瞬きいぬふぐり★★★
咲き初めてやさしき香りフリージア★★★
2月15日(4名)
小口泰與
公魚のはつかに光り遡上せる★★★
山風に紛るる初音はつはつに★★★
「はつはつに」は意味としてはよいのですが、古語ですので、句が浮いて、実感がなく無くなっているので惜しいです。(高橋正子)
橋桁の朽ちし抜け道川鴉★★★
廣田洋一
青空に剪定の音弾みけり★★★
せせらぎの音涼やかに山笑ふ★★★★
「山笑ふ」を遠くから眺めたのではなく、近くで実感した意義が大きい。山川のせせらぎの音が涼やかに音を立てて、木々の芽も吹くらんできている。日差しが明るく、にこやかな光景。(高橋正子)
盛土せし道路開通山笑ふ★★★

桑本栄太郎

雨脚の上がり滴や春日さす★★★
揚ひばり遥か彼方にヘリコプター★★★★
言い訳のこの頃増えし冴え返る★★★

多田有花

春眠から覚めてこの世に戻りけり★★★
赤ペンで卒業試験を採点す★★★
頂のうえに出ている春の雲★★★
2月14日(3名)
小口泰與
榛名富士朝日賜り雪解かな★★★★
雨後の庭朝日に恥じず牡丹の芽★★★
丹精の薔薇一斉に芽吹きける(原句)
「丹精」は省略しましょう。説明になっています。
一斉に芽吹きぬ薔薇の赤き芽よ★★★★(添削例)
廣田洋一
散歩道横にそれたり犬ふぐり(原句)
散歩道横にそれれば犬ふぐり★★★★(正子添削)
春耕や畝の溝をば切り込みぬ★★★★
春耕を終へし畑に佇みぬ★★★
桑本栄太郎
さざ波の立ちて薄氷流れけり★★★★
さざ波が立っていると川を覗けば、薄氷が溶けながら流れている。小さな波とうすうすとした氷の、儚いものの世界に作者の好みが読める。(高橋正子)
溝川の細き流れや犬ふぐり★★★
芽柳の土手に日差しや川の風★★★
2月13日(3名)
小口泰與
父の忌や同胞集ひ蕨餅★★★
初めての山や鳥鳴き木の芽晴★★★
校庭に大樹はだかり残る雪★★★
廣田洋一
日溜りに空を映して犬ふぐり★★★★
畦道に枝をさしかけ梅の花★★★
紅白の枝を交わせり梅の花★★★
桑本栄太郎
春暑し煙まつすぐ野に立ちぬ★★★
畦道に茎の伸びたり仏の座★★★
春きざす我を追い抜きトラクター★★★★
春が来ると畑仕事が忙しくなる。出会ったトラクターも人が歩くを追い越して勢いをつけて農道を走っている。こんなところにも春のきざしが見えてうれしいものだ。(高橋正子)
2月12日(3名)
小口泰與
佐保姫と一献組みし夜半の夢★★★
諸子魚釣る子らよ榛名へ雲一朶★★★★
山祇や谷川岳の雪崩れ★★★
廣田洋一
下萌えや風柔らかき街の川★★★★
春霜や日を返したる駐車場★★★
鎮まりしままの畑や春の霜★★★
桑本栄太郎
淀川の下流かすみぬ菜の花忌★★★★
菜の花忌は、2月12日の司馬遼太郎の命日。今、有名な忌日の一つとなったかもしれない。イメージの親しみやすさ、明るさや優しさがあるせいだろう。この日、淀川の上流から遠く下流をながめれば、かすんでいる。かすんでいるあたりに故人の姿がありそうである。(高橋正子)
ものの芽や川べり歩み日差し居り★★★
春宵や嶺の端ほのと赤くあり★★★
2月11日(4名)
小口泰與
春の日や河原の子らの声高き★★★★
蕗の芽やゲートボールの打球音★★★
春光に包まれて居る二人かな★★★

多田有花
春の霜駆けぬけてゆく女子高生★★★
建国記念日真昼の風のやわらかし★★★
河川敷春の芝生に球追う人★★★

廣田洋一
吾が帰宅待ちたる如し犬ふぐり★★★
通り道少しよけたる犬ふぐり★★★
畔青む農婦の足の軽やかに★★★★
農婦へのまなざしが温かい。田の畔の草が青く萌えだすと、それまでの寒さから幾分開放されて、農婦の足取りも軽やかに。(高橋正子)

桑本栄太郎

来てみれば密とは知らず梅見かな★★★
遅き日やひと眠り後の窓明かり★★★
海苔掻やの潮のたゆとう岩の間に★★★★

自由な投句箱/2月1日~10日

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今日の秀句/2月1日~10日

2月10日(2句)
★蕗味噌や魚の腹へたっぷりと/小口泰與
たっぷりの蕗味噌と食べる魚の美味。故郷の味がぎっしりと詰まって、心底故郷の良さを味わう。(高橋正子)
★楢の木の幹が吸い上ぐ春の水/古田敬二
春になると、実際、大きな木の幹に耳を当てると、木が水を吸い上げる音が聞こえる。楢の木の芽吹きの美しさがはやも想像できる。(高橋正子)
2月9日(2句)
★春風やスクランブルの交差点/廣田洋一
スクランブル交差点。ここには人が入り乱れているが、春風も自由に吹いている。スクランブル交差点の賑わいが春の明るさに満ちている。(高橋正子)
★春立てば樹影は高し青空へ/古田敬二
春の声を聞くと、人の心もおのずと明るくなる。木木も黒々と樹影を空へ伸ばしている。伸びあがる樹影がたのもしく思える。(高橋正子)
2月8日(句)
2月7日(2句)
★春の夜やポートレートを撰定す/小口泰與
寒さも少し和らいだ春の夜。春の灯の下に写したポートレートの数々。その中のどれにするかの撰定作業は、厳しいといえば厳しいが楽しい時でもある。納得の作品が選ばれたことだろう。(高橋正子)
★ものの芽やときには句帳開きつつ/桑本栄太郎
芽吹きのとき、散歩しつつも、心を打つものがあり、時に句帳を開く。「ときに」が余裕。がむしゃらでも、必死でもない。余裕から見えてくるものがある。(高橋正子)
2月6日(2句)
★川岸を駆けるD51春の朝/小口泰與
川岸の草が萌え、川の水が雪解けに急ぐ春の朝、D51が力強く駆ける。見ていて元気が湧く一句。(高橋正子)
★堰水の飛沫きらめく猫やなぎ/桑本栄太郎
堰の水が落ちるところの猫やなぎ。堰の水の飛沫がかかり、赤い芽も、義い色の花もきらめいている。早春のまぶしい景色がいい。(高橋正子)
2月5日(1句)
★縄文の土偶の乳房春兆す/小口泰與
縄文時代の土偶。ふっくりと丸い乳房の素朴さに、春の兆し、生まれ出るものの命の素朴さを思う。(高橋正子)
2月4日(1句)
★三和土土間薪ストーブの終夜燃ゆ/古田敬二
三和土に、古い民家の土間を想像する。薪ストーブを終夜焚いて暖をとる寒いところの、新しい暮らしがあたたかく伝わる。(高橋正子)
2月3日(2句)
★春寒をほぐす青空明かるけり/廣田洋一
春の寒さは疑いないけれど、青空の明るさを見れば、寒さがほぐれる気がする。光はまぎれもなく春の光となっている。(高橋正子)
★春立つ日小さき焚火でコーヒーを/多田有花
寒が明け今日から春だと思うと、気持ちがうきうきして来る。焚火の小枝を集め、焚火でお湯を沸かし、焚火の炎をたのしみ、コーヒーの香りを楽しむこと、外の空気を吸うこと。コーヒー一杯に至福の時間が生まれている。(高橋正子)
2月2日(1句)
★護摩の炎や豆を撒かざる節分会/廣田洋一
新型コロナウィルスの感染が収まらなく、節分も、11都道府県に非常事態宣言が出された。人の混雑を避けて豆撒くをやめた寺などがあった。その事態下の句。護摩の炎に、厄病退散を願う。(高橋正子)
【追記】
この句の「護摩の炎」は、「ごまのほ」と読ませています。
俳句では、慣例的に炎(ほのお)を「ほ」と読ませることが多くあります。
理由は炎の説明として「炎(ほのお)は、火の中でも、気体が燃焼するときに見られる穂のような、光と熱を発している部分を指す。語源は火の穂(ほのほ)から由来していると言われている。」に元があるようです。炎を「ほ」と読ませるかどうかは、問題もあると思われますが、今回の添削は慣例の多くに従いました。(高橋正子)
2月1日(1句)

★日脚伸ぶ松の葉末の青あおと/小口泰與
日脚に明るさを感じ、辺りを見れば、ものみな生き生きとして見える。常緑の松も緑が青あおと、真冬とは違っている。春に向かっているのは、確か。その嬉しさ。(高橋正子)恵

2月1日~10日

2月10日(4名)
小口泰與
まんさくや赤城すっぽり靄の中★★★
蕗味噌や魚の腹へたっぷりと★★★★
たっぷりの蕗味噌と食べる魚の美味。故郷の味がぎっしりと詰まって、心底故郷の良さを味わう。(高橋正子)
ふわふわの沼の夕日や花みもざ★★★
廣田洋一
三日月の高く昇りて凍返る★★★★
雲流れ雪山浮かび凍返る★★★
帰り道瞬く星や冴返る★★★
桑本栄太郎
あおぞらの売家の庭にうす紅梅★★★
丘上の天を占め居りいかのぼり★★★★
いたずらと思えどにくし春の風★★★

古田敬二

楢の木の幹吸い上げる春の水(原句)
楢の木の幹が吸い上ぐ春の水★★★★
春になると、実際、大きな木の幹に耳を当てると、木が水を吸い上げる音が聞こえる。楢の木の芽吹きの美しさがはやも想像できる。(高橋正子)
春の空オリオン星座見つけたり★★★
雪柳五弁の白き花咲かせ★★★
2月9日(5名)
小口泰與
新しき牧舎の牛や木の芽時★★★★
春の雨雀の糞を洗いそめ★★★
梅が香や帰宅の庭の薄明り★★★
廣田洋一
薄氷岸を離れて光りけり★★★★
薄氷を透かして見ゆる鯉の口★★★
火の用心バケツ覆ひし薄氷★★★
多田有花
余寒なお今宵は豆乳鍋とする★★★
名のみの春光の春にて御座候★★★
奥山に化粧をさせて春の雪★★★★

桑本栄太郎

ハングルの文字の瓶見え磯菜摘む★★★
春潮の円く広がる水平線★★★★
海苔掻の潮のたゆとう岩間かな★★★
古田敬二
雪柳互生のつぼみを正確に★★★★
御嶽の見える高みへ青き踏む★★★
伊吹颪煙は横になびきおり★★★
2月8日(4名)
小口泰與
うららなる浅間や佐久の鯉料理★★★
永き日や耳標新たな子牛達★★★★
遅き日や浅間は没日近づけず★★★
廣田洋一
春風やスクランブルの交差点★★★★
スクランブル交差点。ここには人が入り乱れているが、春風も自由に吹いている。スクランブル交差点の賑わいが春の明るさに満ちている。(高橋正子)
神木の赤き実揺らし風光る★★★
宅配の台車は緑風光る★★★
桑本栄太郎
登り来て遥か淀川よなぐもり★★★★
金縷梅の花や枯葉を付けしまま★★★
さざ波のわらわら走り春浅し★★★
古田敬二
舗装路の割れ目に伸びる青き踏む★★★
春立てば樹影は高し青空へ★★★★
春の声を聞くと、人の心もおのずと明るくなる。木木も黒々と樹影を空へ伸ばしている。伸びあがる樹影がたのもしく思える。(高橋正子)
樹影高しメジロどち群れて飛ぶ★★★
2月7日(5名)
廣田洋一
黄水仙丈を競ひて咲きにけり★★★
遊具より飛び下りる子よ黄水仙★★★★
一つだけそつぽを向きし黄水仙★★★
小口泰與
春の夜やポートレートを撰定す★★★★
寒さも少し和らいだ春の夜。春の灯の下に写したポートレートの数々。その中のどれにするかの撰定作業は、厳しいといえば厳しいが楽しい時でもある。納得の作品が選ばれたことだろう。(高橋正子)
あたたかや餡いっぱいのおやき食む★★★
のどけしや五色団子を妻と食ぶ★★★
桑本栄太郎
犬ふぐり昨日の夜の星ならむ★★★
森閑と里の庭なり梅ひらく★★★
ものの芽やときには句帳開きつつ★★★★
芽吹きのとき、散歩しつつも、心を打つものがあり、時に句帳を開く。「ときに」が余裕。がむしゃらでも、必死でもない。余裕から見えてくるものがある。(高橋正子)
多田有花
梅が香や挨拶交わし行き過ぎる★★★★
稜線の二月の木々に朝日差す★★★
春眠やふとんの引力に負ける★★★

古田敬二

約束の木陰に万作まず咲けり★★★
いかのぼり町一番の高台に★★★★
つくしんぼ一つ除草の鍬先に★★★

2月6日(4名)
小口泰與
飛び石のそぼ濡る庭や白椿★★★
川岸を駆けるD51春の朝★★★★
川岸の草が萌え、川の水が雪解けに急ぐ春の朝、D51が力強く駆ける。見ていて元気が湧く一句。(高橋正子)
消防車駆け春昼の寺の街★★★
廣田洋一
青空へ枝を突き立て梅の花★★★★
小公園一人見上げる梅の花★★★
鶯や枝移りつつ飛び去りぬ★★★
桑本栄太郎
下萌や地道を歩む川のへり★★★
まんさくの早も咲き初め居たりけり★★★
堰水の飛沫きらめく猫やなぎ★★★★
堰の水が落ちるところの猫やなぎ。堰の水の飛沫がかかり、赤い芽も、義い色の花もきらめいている。早春のまぶしい景色がいい。(高橋正子)
古田敬二
ケットル鳴るコーヒー淹れむ春立つ日★★★★
校舎から子らの歓声春立つ日★★★
柊指す古びし雨戸の穴探す★★★
2月5日(3名)
小口泰與
蒼空へ一ノ倉沢冴返る★★★
病院の長き廊下の余寒かな★★★
縄文の土偶の乳房春兆す★★★★
縄文時代の土偶。ふっくりと丸い乳房の素朴さに、春の兆し、生まれ出るものの命の素朴さを思う。(高橋正子)
廣田洋一
雲雀来る虫も捕らずに飛び去りぬ★★★
窓を打つ木の葉の音や春一番★★★
外出を抑へる如く春一番★★★
桑本栄太郎
畝ごとのマルチ煌めく春日さす★★★
からす飛ぶ嶺の茜や春入日★★★
自粛とう値打ち無き日や春暮るる★★★
2月4日(5名)
小口泰與
春立や榛名九嶺紫紺なり★★★
早春や棚田の空へ鳶の笛★★★
春浅し榛名は雲を育て初め★★★★
廣田洋一
春寒やビルの谷間に寄せ来たり★★★
右左杖をつく人春寒し★★★
鶯の声晴れやかに朝かな★★★★
多田有花
春始まるおかしな電話より★★★
寒明けや小枝集めに野にいずる★★★★
余寒あり空き缶空き瓶出しにゆく★★★

桑本栄太郎

料峭の戸締りかたき売家かな★★★
犬ふぐり早も咲きたる土手の道★★★
春疾風吾の帽子を攫いけり★★★

古田敬二
三和土土間薪ストーブの終夜燃ゆ★★★★

三和土に、古い民家の土間を想像する。薪ストーブを終夜焚いて暖をとる寒いところの、新しい暮らしがあたたかく伝わる。(高橋正子)
寒鯉のじっと池底動かざる★★★
寺の坂音立て下る落葉踏み★★★
2月3日(5名)
小口泰與
春立つや朝の利根川波の音★★★
追炊きのスイッチ押すや寒の明★★★
大利根の波が波追う二月かな★★★★
廣田洋一
立春の空青々と澄み渡り★★★
立春の自粛会ひたき友多し★★★
春寒をほぐす青空明かるけり★★★★
春の寒さは疑いないけれど、青空の明るさを見れば、寒さがほぐれる気がする。光はまぎれもなく春の光となっている。(高橋正子)
桑本栄太郎
リセットの大き日過ぎぬ春来たる★★★
巣ごもりの今朝の目覚めや春迎ふ★★★
料峭や会いたき人の夢に見ず★★★
古田敬二
雪しまく少年の日を思い出す★★★
冬の鵙昔の上司の訃報来る★★★
寒鮒釣り動かぬ浮子と竿先と★★★

多田有花
立春の空の雲なく晴れ渡り★★★
窓鳴らす風今日からは春の風★★★
春立つ日小さき焚火でコーヒーを★★★★
寒が明け今日から春だと思うと、気持ちがうきうきして来る。焚火の小枝を集め、焚火でお湯を沸かし、焚火の炎をたのしみ、コーヒーの香りを楽しむこと、外の空気を吸うこと。コーヒー一杯に至福の時間が生まれている。(高橋正子)
2月2日(5名)
小口泰與
新築の木槌の音や春隣★★★★
柊を挿すや赤城の風しまく★★★
部屋ごとに犬を従え鬼は外★★★
廣田洋一
恵方巻どんと積み上げ節分かな★★★
護摩焚きて豆は撒かざる節分会(原句)
「焚きて・・撒かざる」が説明的なので、場面のイメージが湧き、詩情が出るように添削しました。
護摩の炎や豆を撒かざる節分会★★★★(正子添削)
新型コロナウィルスの感染が収まらなく、節分も、11都道府県に非常事態宣言が出された。人の混雑を避けて豆撒くをやめた寺などがあった。その事態下の句。護摩の炎に、厄病退散を願う。(高橋正子)
【追記】
この句の「護摩の炎」は、「ごまのほ」と読ませています。
俳句では、慣例的に炎(ほのお)を「ほ」と読ませることが多くあります。
理由は炎の説明として「炎(ほのお)は、火の中でも、気体が燃焼するときに見られる穂のような、光と熱を発している部分を指す。語源は火の穂(ほのほ)から由来していると言われている。」に元があるようです。炎を「ほ」と読ませるかどうかは、問題もあると思われますが、今回の添削は慣例の多くに従いました。(高橋正子)
頭出し赤蕪の玉ふくらみぬ★★★
桑本栄太郎
陽光の止め処無きなり今日節分★★★
豆撒きや歳の数などもう喰えぬ★★★
枝のみな日差しに向きぬ桜芽木★★★★
古田敬二
いのこずち久女の句碑から付いてくる★★★★
中学生山茶花散り敷く道を行く★★★
麦踏みし母と傾斜の山畑に★★★★

多田有花

節分や南に向かい気功する★★★
二月二日百二十四年ぶりの節分★★★
節分や八幡さまにお参りす★★★
2月1日(5名)
小口泰與
白鳥の暮れ果つ声や塒へと★★★
寄合は恐怖の的や虎落笛★★★
日脚伸ぶ松の葉末の青あおと★★★★
日脚に明るさを感じ、辺りを見れば、ものみな生き生きとして見える。常緑の松も緑が青あおと、真冬とは違っている。春に向かっているのは、確か。その嬉しさ。(高橋正子)
廣田洋一
空覆ふ雲の流れて二月来る★★★
畑の土黒々光り春近し★★★★
受験子に道案内や大学生★★★
桑本栄太郎
楽譜為す銀杏並木の冬芽かな★★★★
剪定のクレーン高く日差しけり★★★
二ン月のあおぞら続く今朝の晴れ★★★

多田有花

紅白が咲きそろいたり寒の梅★★★
寒の陽を受ける平野を見下ろせり★★★★
寒の梅ちょんちょん飛びてじょうびたき★★★

古田敬二

向山に広く日当たり春近し★★★
御嶽見ゆ冷えている三角点★★★
鈴鹿から伊勢湾越えて風花来★★★★