■2020年月例ネット句会金賞作品第1席発表■

2020年月例ネット句会金賞作品について、好きな句を一人、3句選をしていただきました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。12月30日で選を締め切りました。結果を下記アドレスの月例ネット句会ブログに発表しています。ご覧ください。(高橋正子)

自由な投句箱/12月21日~31日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

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今日の秀句/12月21日~31日

12月31日(1句)
★うち揃い星空のもと除夜詣/小口泰與
除夜詣は、大晦日の日の入りから元旦の日の出までの間に、普段着で神社仏閣にお参りすることで、江戸時代からの風習と聞く。初詣よりも、打ち解けた感じがする。星空の道を歩く子とも、暗い境内の篝火も情趣がある。この句は、みんな揃って星空のもとをお詣りに出かけたこと。それが、なごやかでいい。(高橋正子)
12月30日(2句)
★店先の松の枝濡らす冬の雨/廣田洋一
店先にあるのは、正月の用の松の枝か。はやばやと売られる松の枝に冬の雨がかかり、緑濃い松の枝もさびさびした印象に。(高橋正子)
★ゆずり葉も添えられありぬ松飾る/桑本栄太郎
松飾にゆずり葉が添えられて、ゆずり葉の赤い色が品よく華やかさをかもしだしている。ゆずり葉を添える地方も、添えないところもある。(高橋正子)
12月29日(2句)
★数え日の赤き実ばかり目立ちけり/多田有花
日を数えるようになると、赤い実が目につく。実南天、万両、千両、藪柑子、もちの実、かまずみなど、フランスヒイラギなど。寒さの中、赤い小さい実が可愛く、印象に残る。赤色の温かさと、鳥を呼ぶその色が、歳晩をあかるくしてくれる。(高橋正子)
★フレームの光の中にアフリカの木/廣田洋一
植物園の温室に入ると、アフリカの植物がたくさん見られる。日本の真夏に元気に咲く花には、アフリカ原産のものが多い。木々も見られる。光がさんさんと差し込み。アフリカの木が異色をはなって立っている。(高橋正子)
12月28日(1句)
★毛筆の一句添えたり賀状書く/桑本栄太郎
賀状は、プリンターで印刷されたものが多いが、ひとこと手書きの言葉があると、まごころが伝わってきて、うれしいものだ。毛筆で一句したためてあれば、風雅な年賀状となって、正月らしさにふれることになる。(高橋正子)
12月27日(1句)
★数へ日の一時過ごす理髪店/廣田洋一
数へ日となると、男性方は煤逃れではないだろうが、理髪店で髪を整えてもらる人が多い。待合はよく暖房されて、石鹸の匂いなどがして、思い思いに新聞や雑誌、スマホなどをみて過ごしている。師走のひと時のゆっくりした時間がある。(高橋正子)
12月26日(1句)
★埋火や俳画楽しき蕪村の忌/桑本栄太郎
蕪村は絵描きとしても評価されている。私は、展示会などで蕪村の画を見ると、一幅欲しくなるのだが、俳味もあって、楽しいところがある。埋火のようなほのかな温かみがある。忌日俳句として楽しさがある句は、珍しい。(高橋正子)
12月25日(1句)
★風花や箒目しかと華やかに/小口泰與
風花は遠くの山に降った雪が風に乗って飛んでくるもの。粛然とした立てられた箒目を風花が華やかにしてくれる。(高橋正子)
12月24日(2句)
★再会の語尾の弾みて師走かな/小口泰與
師走のあわただしい中、会いたい人に再び会えた嬉しさ。話す言葉も語尾が上がり調子に弾んでいる。(高橋正子)
★改札口出れば聖夜の灯が迎へ/廣田洋一
いつもの改札口を出ると、迎えてくれる聖夜の灯。聖夜の灯がことさらに清らかに、瞬いている。(高橋正子)
12月23日(1句)
★冬未明起きだすことの楽しさよ/多田有花
冬の未明は一番気温が下がる時。大方の人は温かい布団から抜け出すのは、いやな時間帯だが、作者は違って、冬の未明を楽しんでいる。未明の空の星や月、外気温、窓からの暗い景色など。発見も多いことだろう。(高橋正子)
12月22日(2句)
★冬空へメタセコイアの三角錐/古田敬二
メタセコイヤの三角錐の樹形が高々と聳えている。人工的とも思えるような三角錐も冬ざれの中の印象に残るものの一つ。(高橋正子)
★窓開けよ富士の四方に冬夕焼/川名ますみ
「窓開けよ」と思わず叫びたくなる富士山の景色。富士の四方に夕焼けが力強く広がっている。生活圏内に富士山が見える特別な恩恵とも言えそう。(高橋正子)
12月21日(2句)
★赤城嶺へ開く北窓冬椿/小口泰與
北窓を開くと産土の山、赤城山が見える。冬椿も赤く、あたたかそうに咲いている。この景色こそ、作者には心落ち着く景色なのではなかろうか。(高橋正子)
★兼ねし今朝の柚子湯や溢れさす/廣田洋一
冬至の柚子湯を待ちかねていた。朝湯を立てて柚子を入れ、湯を溢れさせて入る柚子湯に、身も心もすこやかになれる。至福の時を味わう。(高橋正子)

12月21日~31日

12月31日(4名)
小口泰與
うち揃い星空のもと除夜詣★★★★
除夜詣は、大晦日の日の入りから元旦の日の出までの間に、普段着で神社仏閣にお参りすることで、江戸時代からの風習と聞く。初詣よりも、打ち解けた感じがする。星空の道を歩く子とも、暗い境内の篝火も情趣がある。この句は、みんな揃って星空のもとをお詣りに出かけたこと。それが、なごやかでいい。(高橋正子)
見守らる星影の道除夜の鐘★★★
年の夜やパソコンの塵拭きにける★★★★
廣田洋一
黒豆をことこと煮たる大晦日★★★
大晦日一人厨で蕎麦を茹で★★★★
腰痛をなだめすかして年を越す★★★
桑本栄太郎
雪晴れや日差し煌めく庭の木々★★★★
朝よりのおせち料理や年暮るる★★★
きしきしとガラス磨きや年の果★★★

多田有花

家揺らし風荒れるなり小晦日★★★
珍しや風荒れ続け大晦日★★★★
ゆく年の光静かに消えてゆく★★★
12月30日(4名)
廣田洋一
笹鳴や遠く近くに竹揺れる★★★
冬の川白く光りて笹鳴ける★★★
店先の松の枝濡らす冬の雨★★★★
店先にあるのは、正月の用の松の枝か。はやばやと売られる松の枝に冬の雨がかかり、緑濃い松の枝もさびさびした印象に。(高橋正子)
小口泰與
小晦日午睡の犬の鼾かな★★★
カンロ飴頬張り日向ぼこかな★★★
小晦日洗車終わりて星仰ぐ★★★★
桑本栄太郎
年の瀬や妻の腰痛出で来たる★★★
小晦日の夜ともなりてみぞれ降る★★★
ゆずり葉も添えられありぬ松飾る★★★★
松飾にゆずり葉が添えられて、ゆずり葉の赤い色が品よく華やかさをかもしだしている。ゆずり葉を添える地方も、添えないところもある。(高橋正子)
多田有花
釣り人の声が聞こえる枇杷の花★★★
駆けてゆく少年たちの息白し★★★★
大型犬連れ立ち散歩年の内★★★
12月29日(4名)
小口泰與
隼や夕映えの沼騒めきぬ(原句)
隼や夕映えの沼騒めかし★★★★(正子添削)
雲速く川は平らや冬の鳥★★★
夕映えの沼きらめくや小白鳥★★★
多田有花
水鳥やさざ波たてて渚を歩く★★★
数え日の赤き実ばかり目立ちけり★★★★
日を数えるようになると、赤い実が目につく。実南天、万両、千両、藪柑子、もちの実、かまずみなど、フランスヒイラギなど。寒さの中、赤い小さい実が可愛く、印象に残る。赤色の温かさと、鳥を呼ぶその色が、歳晩をあかるくしてくれる。(高橋正子)
歳末や弁財天に人ぽつぽつ★★★

廣田洋一

温室を出でて匂へるシクラメン★★★
フレームの光の中にアフリカの木★★★★
植物園の温室に入ると、アフリカの植物がたくさん見られる。日本の真夏に元気に咲く花には、アフリカ原産のものが多い。木々も見られる。光がさんさんと差し込み。アフリカの木が異色をはなって立っている。(高橋正子)
捨てるもの先づ積み上げし年用意★★★
桑本栄太郎
日矢となる天の梯子や冬日さす★★★
吹きさらす風に怖気ず八つ手咲く★★★★
極月のレジに並びぬディスタンス★★★
12月28日(4名)
小口泰與
笛鳴らし歩む山道冬の蝶★★★★
日向ぼこ飛行機雲と鳥声と★★★
売り物の鷹のはく製峠茶屋★★★
廣田洋一
止り木に羽根を広げし若き鷹★★★★
久方の雨音聞こゆ温め酒★★★
平穏に一日過ぎし温め酒★★★
多田有花
ウォーキングの人の数多や年の暮★★★
餌与う人あり鴨の群れており★★★
光の環きらめく中に鴨の群★★★★

桑本栄太郎

毛筆の一句添えたり賀状書く★★★★
賀状は、プリンターで印刷されたものが多いが、ひとこと手書きの言葉があると、まごころが伝わってきて、うれしいものだ。毛筆で一句したためてあれば、風雅な年賀状となって、正月らしさにふれることになる。(高橋正子)
煤逃げもならず指示受け二日目に★★★
お使いの今日は何度目年用意★★★
12月27日(4名)
小口泰與
咳込むや妻の差し出すあめ袋★★★
社外掃く人皆がみな息白し★★★★
シーソーの日向ぼっこの老夫婦★★★
多田有花
<姫路城フォーシーズンファンタジアhitotose三句>
数え日のイルミネーション姫路城★★★
年暮れぬ真白き城が夜空に立ち★★★★
音楽と光と城と年惜しむ★★★

廣田洋一

予約せしお節届きて年詰まる★★★
数へ日の一時過ごす理髪店★★★★
数へ日となると、男性方は煤逃れではないだろうが、理髪店で髪を整えてもらる人が多い。待合はよく暖房されて、石鹸の匂いなどがして、思い思いに新聞や雑誌、スマホなどをみて過ごしている。師走のひと時のゆっくりした時間がある。(高橋正子)
数へ日と思ひつつ過ごす一日かな★★★
桑本栄太郎
予報聞き慌てて掛る煤払★★★
歳晩の茜となりぬ街の夕★★★
極月の月を臨むや夕空に★★★

12月26日(4名)
小口泰與
夕映えの沼の水輪や二羽の鴨★★★
爪切りの爪見失いたる師走かな★★★
良く効くと里の古老の風邪薬★★★
廣田洋一
小さくも紅は濃きかな寒椿★★★
青空に光を返す寒椿★★★★
数へ日やジムのレッスン一つ有り★★★
多田有花
水仙はうつむき加減に咲きにけり★★★
分譲住宅鉢に小さき葉牡丹を★★★★
花八つ手午後の日差しのやわらかく★★★

桑本栄太郎

埋火や俳画楽しき蕪村の忌★★★★
蕪村は絵描きとしても評価されている。私は、展示会などで蕪村の画を見ると、一幅欲しくなるのだが、俳味もあって、楽しいところがある。埋火のようなほのかな温かみがある。埋火が効いて、忌日俳句として楽しさがある句は、珍しい。(高橋正子)
数へ日や今日は今日とて先送り★★★
起きて見る西空早やも冬茜★★★
12月25日(3名)
廣田洋一
予定事一つ残して暦果つ★★★
ハイド氏のあぶりだされしクリスマス★★★
句座終へて弥撒に向かひし聖夜かな★★★
小口泰與
風花や箒目しかと華やかに★★★★
風花は遠くの山に降った雪が風に乗って飛んでくるもの。粛然とした立てられた箒目を風花が華やかにしてくれる。(高橋正子)
朝焚火ニッカポッカの鳶の人★★★
沼架かる入日の橋や小白鳥★★★
桑本栄太郎
みどり児の飼葉桶とやクリスマス★★★
日差したる水面きらめき鳰潜く★★★
寒風にゆれて絡みぬ木々の枝★★★
12月24日(5名)
小口泰與
今年我何事も無き師走かな★★★
再会の語尾の弾みて師走かな★★★★
師走のあわただしい中、会いたい人に再び会えた嬉しさ。話す言葉も語尾が上がり調子に弾んでいる。(高橋正子)
美しき鯉の飛びはね師走かな★★★
廣田洋一
信仰は別のことなり聖菓買ふ★★★
改札口出れば聖夜の灯が迎へ★★★★
いつもの改札口を出ると、迎えてくれる聖夜の灯。聖夜の灯がことさらに清らかに、瞬いている。(高橋正子)
鯉二匹口を開けたり冬日かな★★★
多田有花
降誕祭聖母マリアに花飾る★★★★
聖樹立つみなの心に祈りあり★★★
久々のお湿りなりしクリスマス★★★

桑本栄太郎

大木の剪り株白し冬ざるる★★★
黒猫の金のひとみや雪気雲★★★★
イブの夜の雨がみぞれに替りけり★★★
川名ますみ
牡蠣洗う匂いゆるゆる流れ来る★★★
人形のサンタクロースの手を握る★★★★
年用意親子喧嘩の声もあり★★★
12月23日(5名)
小口泰與
数え日やヒューズ飛びたる家の中★★★
両県にはだかる浅間師走かな★★★
空風や里の訛の同級生★★★
廣田洋一
ポインセチア道にはみだす花舗の前★★★★
ポインセチア第九の曲の響きけり★★★
かき分けて光見せたり龍の玉★★★
多田有花
木星土星隣り合いたり冬至の夜★★★
冬未明起きだすことの楽しさよ★★★★
冬の未明は一番気温が下がる時。大方の人は温かい布団から抜け出すのは、いやな時間帯だが、作者は違って、冬の未明を楽しんでいる。未明の空の星や月、外気温、窓からの暗い景色など。発見も多いことだろう。(高橋正子)
クリスマス厩のイエス飾られて★★★

桑本栄太郎

裸木となりし銀杏やバス通り★★★
ぴこぴこと尾羽上下や冬の鳥★★★
道端に献花とボトル冬ざるる★★★
古田敬二
重力に浮力が勝る柚子湯なり★★★
浴室に鬼柚子の香あふれさす★★★
全身に柚子の香つけて風呂あがる★★★★
12月22日(6名)
廣田洋一
大鮪解体ショーに横たわり★★★
大トロを一切れ加へ鮪丼★★★
取り置きし南瓜を煮たる冬至かな★★★
小口泰與
冬ざれの谷川岳や髑髏★★★
歳晩や焼き饅頭を頬張りて★★★
加湿器や稀代の難事ふつふつと★★★
桑本栄太郎
照るくもる雲の間にまに冬日かな★★★
吹き晒す風に動ぜず八つ手咲く★★★
裸木となりし銀杏や芽のとびとび★★★

多田有花

<トランプ米大統領再選支持集会・デモ in 大阪三句>
年の瀬や星条旗連ね御堂筋★★★
プラカード掲げ師走の大阪を★★★
被り物デモを楽しみ十二月★★★

古田敬二

独酌すあては冬至南瓜とす★★★
冬至から新しき事始めんと★★★
冬空へメタセコイアの三角錐★★★★
メタセコイヤの三角錐の樹形が高々と聳えている。人工的とも思えるような三角錐も冬ざれの中の印象に残るものの一つ。(高橋正子)
川名ますみ
窓を開け夕焼けに照る冬の富士★★★
窓開けよ富士の四方に冬夕焼★★★★
「窓開けよ」と思わず叫びたくなる富士山の景色。富士の四方に夕焼けが力強く広がっている。生活圏内に富士山が見える特別な恩恵とも言えそう。(高橋正子)
冬薔薇ひとひら垂らし枯れ始む★★★
12月21日(5名)
小口泰與
赤城嶺へ開く北窓冬椿★★★★
北窓を開くと産土の山、赤城山が見える。冬椿も赤く、あたたかそうに咲いている。この景色こそ、作者には心落ち着く景色なのではなかろうか。(高橋正子)
炭の香や妻を待つ間の一人酒★★★★
埋火や赤城の風に起こされし★★★
廣田洋一
待ち兼ねし今朝の柚子湯や溢れさす★★★★
冬至の柚子湯を待ちかねていた。朝湯を立てて柚子を入れ、湯を溢れさせて入る柚子湯に、身も心もすこやかになれる。至福の時を味わう。(高橋正子)
頂きし柚子に囲まれ朝湯かな★★★
電車にて冬至の朝の日差し浴ぶ★★★★
多田有花
<トランプ米大統領再選支持集会・デモ in 大阪三句>
集い来し残る紅葉の公園に★★★
冬空の下に集いし二千人★★★
横断幕手に歩く師走の街★★★

桑本栄太郎

燦々と日差し明るき冬至かな★★★
弟の退院報らす冬至の日★★★
ぷかぷかと実の寄り来たる冬至の湯★★★

古田敬二

快晴の空からまっすぐ石叩き★★★
雪晴れに快音させてゲートボール★★★★
樹間より初冠雪の伊吹山★★★

自由な投句箱/12月11日~20日

※当季雑詠3句(冬の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆花冠発行所◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan100
◆月例ネット句会
https://blog.goo.ne.jp/kakan02d
◆俳句日記/高橋正子◆
https://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/12月11日~20日

12月20日(1句)
★霊験な祈りの中や虎落笛/小口泰與
霊験な祈りのさなか、祈りを中断させるような虎落笛。神仏の加護やご利益も願いたい今の新型コロナの感染拡大に、霊験あらたなことを願わずにおれない。風土性のある句。(高橋正子)
12月19日(1句)
★みつしりと詰まりし房や実南天/廣田洋一
暮れになると南天の実がまっかに熟れて、まだ鳥にも食べられず、落ちることもなく、「みつしりと詰まって」いるのを見かける。このいきいきとした南天の実に正月がくるお目出度さを思ったりする。(高橋正子)
12月18日(1句)
★あおぞらに高き梢や冬木立/桑本栄太郎
あおぞらに冬木立が高々と梢を広げている。ただそれだけの景色が澄んだ空気感とともに伝わり、すっきりとしていて快い。(高橋正子)
12月17日(1句)
★夜の内に雫はぐくむ霜柱/小口泰與
霜柱は、寒い夜は、植物的に育ち数センチ以上にもなることがる。「雫はぐくむ」という言葉が実感として出て来る。(高橋正子)
12月16日(2句)
★裸木を組みしばかりに群雀/小口泰與
裸木の枝が交差している様子を「組む」と見たところが面白い。その裸木へたくさんの雀が止まって、その姿も丸見え。寒々とした冬の景色ながらも、群雀の命が小さくも温かい。(高橋正子)
★凩の日の夕焼けの澄み渡る/多田有花
凩が吹くと塵が吹き払われるせいだろう、夕焼けが澄んでいる。ただそれだけを言っているが、冬の夕焼け雲の形や色が西洋の画を見るように浮かんで来る。(高橋正子)
12月15日(1句)
★らきらと木の葉散り行く街の川/廣田洋一
洒落た句。街を流れる川に日差しを受けてきらきらと光りながら木の葉が散りこんでいる。この軽さがいい。(高橋正子)
12月14日(1句)
★シクラメン密に並んで白を買う/上島祥子
シクラメンは春の季語であるが、クリスマスシーズンには、ポインセチアと並んでシクラメンの鉢が並ぶ。色も赤やピンク、白など。白いシクラメンが寄り合っていると、白の良さに惹かれ、白を買う決断。(高橋正子)
12月13日(1句)
★冬の陽が薄く路面にわが影を/多田有花
冬の陽ざしの透明感と、冬という季節の私の存在の淡さが主張することなく伝わってくる。(高橋正子)
12月12日(1句)
★雪女郎に酌をされたき四畳半/小口泰與
秘湯の宿の四畳半であろうか。飲んでいる背中が冷え冷えとしてくる。雪女郎が居るような気配も。居るならば酌をされてみたいものだ。(高橋正子)
12月11日(1句)
★湯豆腐の崩れし頃や酒尽きる/廣田洋一
酒は湯豆腐と飲むべしと言わんばかりに飲んでいた酒も尽きてしまった。湯豆腐も崩れて、終わりにするころあいになった。ほろ酔いのような間合いがいい。(高橋正子)

12月11日~20日

12月20日(3名)
小口泰與
霊験な祈りの中や虎落笛★★★★
霊験な祈りのさなか、祈りを中断させるような虎落笛。神仏の加護やご利益も願いたい今の新型コロナの感染拡大に、霊験あらたかなことを願わずにおれない。風土性のある句。(高橋正子)
世の異変子ら帰省せぬ冬灯★★★
冬座敷夕映えの日の満ちにける★★★★
廣田洋一
米櫃の残り確かめ年詰まる★★★
工事用足場解体年の暮★★★★
帰省すると決めし友や年の暮★★★
桑本栄太郎
ふわふわとメタセコイヤの落葉踏む★★★★
燦々と冬日を背ナに朝餉かな★★★
深吉野の山にこもりぬ石鼎忌★★★
12月19日(4名)
廣田洋一
実南天鳥よけ網に覆はれぬ★★★
みつしりと詰まりし房や実南天★★★★
暮れになると南天の実がまっかに熟れて、まだ鳥にも食べられず、落ちることもなく、「みつしりと詰まって」いるのを見かける。このいきいきとした南天の実に正月がくるお目出度さを思ったりする。(高橋正子)
紅白のポインセチアや花舗の棚★★★
小口泰與
先頭の鋭声に翔つや小白鳥★★★
雀躍の雀や庭の青木の実★★★
雲の影榛名を刷きし枯薄★★★
桑本栄太郎
寒波来る虫養いの午後三時★★★
山茶花の散りし舗道や煉瓦道★★★
茎折れて水にささりぬ蓮枯る★★★★
多田有花
冬枯の中の鉄橋電車来る★★★★
枯草にひしめきあいて群雀★★★
シーバスを釣る人影や冬の川★★★
12月18日(4名)
小口泰與
ひれ酒や八十の端を忘れける★★★
一斉に翔ける羽音や小白鳥★★★
川音もかすかや草木枯初めし★★★★

廣田洋一

真中に肝の並べる鮟鱇鍋★★★
鮟鱇のぷりと跳ねるを呑み込みぬ★★★
座敷童棚に飾りて鮟鱇鍋★★★★
多田有花
冬景色つきぬけてゆく新幹線★★★
鷺河鵜鴨の並んで堰堤に★★★★
短日の折り返し点の一樹かな★★★

桑本栄太郎

しがみつく冬の紅葉の日に映ゆる★★★
あおぞらに高き梢や冬木立★★★★
あおぞらに冬木立が高々と梢を広げている。ただそれだけの景色が澄んだ空気感とともに伝わり、すっきりとしていて快い。(高橋正子)
山茶花の散りし舗道や赤煉瓦★★★
12月17日(3名)
小口泰與
参道や落葉に混じる鳥の羽★★★
朝日受け錫刷く如き雪浅間★★★
夜の内に雫はぐくむ霜柱★★★★
霜柱は、寒い夜は、植物的に育ち数センチ以上にもなることがる。「雫はぐくむ」という言葉が実感として出て来る。(高橋正子)
桑本栄太郎
暁闇の雪しんしんと音を消し★★★★
初雪や南天の実の赤きこと★★★
初雪の根雪となりぬ母の里★★★
多田有花
窓ガラス揺らして北風のつのりけり★★★
緋鳥鴨つがいの並び波に揺れ★★★
子ら遊ぶ歓声響く凩に★★★

12月16日(5名)

小口泰與
冬ばらの散るに散りたり山の風(原句)
山風に散るに散りたり冬のばら★★★★(正子添削)
蒼空へ忽然と起つ雪浅間★★★★
裸木を組みしばかりに群雀★★★★
裸木の枝が交差している様子を「組む」と見たところが面白い。その裸木へたくさんの雀が止まって、その姿も丸見え。寒々とした冬の景色ながらも、群雀の命が小さくも温かい。(高橋正子)
廣田洋一
密避けて四人で開く忘年会★★★
鮟鱇の肝から取りぬ鍋奉行★★★
雑炊はもう入らぬと鮟鱇鍋★★★

多田有花

ひととおり餌食べ終わり緋鳥鴨★★★
枯葦の揺れれば光揺れにけり★★★★
凩の日の夕焼けの澄み渡る★★★★
凩が吹くと塵が吹き払われるせいだろう、夕焼けが澄んでいる。ただそれだけを言っているが、冬の夕焼け雲の形や色が西洋の画を見るように浮かんで来る。(高橋正子)

桑本栄太郎

あご髭の硬く尖りぬ霜の朝★★★
風吹けば木の葉しぐれの煌めけり★★★★
落葉松の散りて舗道の割目かな★★★
12月15日(4名)
小口泰與
隼の狙い定めて急降下★★★
買い物の車内の妻へ冬の蜂★★★
はかなむや寒雀のみ集い来し★★★
廣田洋一
きらきらと木の葉散り行く街の川★★★★
洒落た句。街を流れる川に日差しを受けてきらきらと光りながら木の葉が散りこんでいる。この軽さがいい。(高橋正子)
残りたる木の葉光れる桜の木★★★
寒空に凛とそびゆる富士の峯★★★
桑本栄太郎
山茶花の散りて襤褸や園児踏む★★★
ビル壁の日差し明るく寒波来る★★★★
みちのくの雪山恋いぬ青邨忌★★★

多田有花

アーチ橋映して流れ冬の川★★★
凩のつのるほど日差し明るくて★★★★
マフラーをたっぷり巻きしセーラー服★★★
12月14日(5名)
小口泰與
二羽の鳶枯野へ眼定かなり★★★★
隼の忽然と急降下せり★★★
トヨタ車の家族の中へ冬の蜂★★★
廣田洋一
濡れタオルにしがみつきたる冬の蠅★★★
マウス持つ手に手袋やメール打つ★★★
手袋や入れっぱなしのポケットかな★★★
上島祥子
冠雪の御嶽山は昼かぎり★★★
シクラメン密に並んで白を買う★★★★
シクラメンは春の季語であるが、クリスマスシーズンには、ポインセチアと並んでシクラメンの鉢が並ぶ。色も赤やピンク、白など。白いシクラメンが寄り合っていると、白の良さに惹かれ、白を買う決断。(高橋正子)
病室に孫より届くシクラメン★★★
多田有花
極月の空を仰げばこうのとり★★★
枯葦に支流一本流れ込む★★★★
鉄骨の橋げた冬ざれを跨ぐ★★★

桑本栄太郎

雲の間の水色空やしぐれ来る★★★★
朝餉摂るふたりの窓に虎落笛★★★
濯ぎもの風に煽られ寒波来る★★★
12月13日(4名)
小口泰與
赤城より風花呼びし鳶の笛★★★★
狐火や宇宙船にて金星へ★★★
熱燗や傘寿の髪膚生き生きと★★★
廣田洋一
バーバリーのマフラー厚し女学生★★★
タオル地のマフラー軽くなびきけり★★★
外套の襟立て待てる流れ星★★★
桑本栄太郎
人の世の枯野となりぬ旅路かな★★★
山茶花の散りて襤褸や花盛り★★★
川風の彷徨い土手に枯尾花★★★

多田有花

鉄橋を響かせ電車来る師走★★★★
冬の陽が薄く路面にわが影を★★★★
堰堤の流れに群て緋鳥鴨★★★
12月12日(3名)
小口泰與
風花や白内障の予防薬★★★
雪女郎酌をされたき四畳半(原句)
雪女郎に酌をされたき四畳半★★★★(正子添削)
秘湯の宿の四畳半であろうか。飲んでいる背中が冷え冷えとしてくる。雪女郎が居るような気配も。居るならば酌をされてみたいものだ。(高橋正子)
短日や温泉プールの老夫婦★★★
廣田洋一
湯豆腐は絹ごしが好き妻の声★★★
冬ぬくしゲートボールの音高し★★★
冬ぬくし地下鉄駅のなじみ顔★★★★
桑本栄太郎
早々と巣籠り人の年用意★★★
身支度のかたち調え煤払ふ★★★
ゆつくりと皺のばし居り煤湯かな★★★
12月11日(3名)
小口泰與
隼の田へ急降下群雀★★★
冬ばらのひらき損ねていたりけり★★★
一本の枯木へ不気味群雀★★★
廣田洋一
湯豆腐の崩れし頃や酒尽きる★★★★
酒は湯豆腐と飲むべしと言わんばかりに飲んでいた酒も尽きてしまった。湯豆腐も崩れて、終わりにするころあいになった。ほろ酔いのような間合いがいい。(高橋正子)
湯豆腐や分厚き昆布利尻産★★★
足袋ソックス履いて来たるやトレーナー★★★
桑本栄太郎
山茱萸の赤き実乾ぶ垣根かな★★★
散り急ぐ木の葉しぐれの風来たる★★★
土となる彼の日を想い落葉踏む★★★★

自由な投句箱/12月1日~10日

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今日の秀句/12月1日~10日

12月10日(1句)
★飛沫上げ水鳥又も来たりけり/桑本栄太郎
水鳥が川や池に着水するとき、あざやかn水飛沫を上げる。それが日に輝くと広げた羽とともに躍動感あふれる美しい姿となる。それは、水鳥を迎える作者の喜びでもある。(高橋正子)
12月9日(1句)
★青き水を静かに進む鴨の群/多田有花
鴨が群れをなして泳ぐときも、水音を立てることもなく、青い水を胸で押すように静かに進む。群れながらの静かさがいい。(高橋正子)
12月8日(1句)
★大堰の上は雲無き冬青空/多田有花
大きな堰の上はすぐ冬の混じるもののない青空。シンプルな構図の景色がさっぱりとしていて、潔さが冬に似合う。(高橋正子)
12月7日(1句)
★墓苑一つふところに抱き山眠る/廣田洋一
都会近郊では墓苑が山ふところに開かれていることが多い。墓苑一つをふところに抱く山は、死者たちを、その魂もあたたかく抱いてくれているようだ。(高橋正子)
12月6日(3句)
★冬ざれの山河となりぬ開戦日/桑本栄太郎
「開戦日」は、第二次世界大戦の局面の一つ太平洋戦争(大東亜戦争)が真珠湾攻撃によって開始された日の12月8日を指していると解釈できるが、この日は、山河は荒涼と冬ざれの景色を見せていたということ。私は戦後すぐに生まれたが、このころの冬は「冬ざれ」ということばが、ぴったりだったと思う。戦争の傷痕は、今も残っている。(高橋正子)
★風吹けば小楢木の葉を放ちけり/多田有花
小楢の黄葉が風が吹くと、自らが葉を放つように落葉する。小楢は、意志があるように立っている。(高橋正子)
枯れ葦を刈れば乾きし音のする★★★★
枯芝に座せば背中に温い陽来る/古田敬二
枯芝に座っていると背中がほんわかと温かくなってくる。遮るものが無く、存分に日があたる枯芝。「温い陽来る」が力強い。(高橋正子)
12月5日(1句)
★枯草やふはと返さる靴の底/廣田洋一
枯草を歩いて行く人をすぐ前に見たのだろう。靴裏を見せて靴が「ふはと」返された。クローズアップされた靴の底が枯草のやわらかさを表している。(高橋正子)
12月4日(1句)
★真ん中に鉄橋がある冬景色/多田有花
高いところからの眺めか。冬景色の真ん中を川が流れ、鉄橋がかかっている。
しばらく佇んでおれば、鉄橋を電車が渡るかもしれない。鉄道パノラマのような実景が楽しい。(高橋正子)
12月3日(1句)
★青空にきらきら光り時雨来る/桑本栄太郎
時雨は日本海の水蒸気を含んで降る京の時雨が一番情趣があるように思える。この日は青空から時雨がこぼれるように降った。青空にきらきら光って降る時雨。そこが作者の住まう京都である思うと、趣深い。(高橋正子)
12月2日(5句)
★花枇杷や牛舎の牛の一か所に/小口泰與
枇杷の花が咲くころは、寒さが募って来る。牛舎の牛も一か所にかたまって、暖まろうとしいている。牛舎を飾るのが花枇杷なので、きれいな句になっている。(高橋正子)
★セーターの毛玉の増えて愛しかり/廣田洋一
着慣れたセーターの着心地の良さは捨てがたい。気になるのは長年着ると毛玉ができること。その毛玉さえも愛着の一つとなる。(高橋正子)
★冬の波残してダブルスカル去る/多田有花
細い船体に二人がのって漕ぐボート、ダブルスカルが滑るように近づいて来て、去っていく。去った後には冬波が残っている。ダブルスカルの軽快さ、爽快さが愉快。「冬の波」が効いている。(高橋正子)
★真つすぐに畝の伸び居り冬菜畑/桑本栄太郎
真っすぐに畝が作られ、畝には冬菜が青々と育っている。「まっすぐに・・伸び居り」は、作者の心持そのものであろう。(高橋正子)
★冬耕す背中いっぱい陽を浴びて/古田敬二
冬の野に出て耕す楽しみは、空にある日の恵みだろう。背中いっぱい日がさして風は冷たくも体は暖かい。晴れ晴れと気持ちの良い畑の仕事である。(高橋正子)
12月1日(1句)
★山水の音して落葉の長屋門/古田敬二
山のふもとの長屋門のある家は無人かもしれない。落葉が降り積もって往時を忍ばせている。山から流れる水音が変わらず生き生きとしている。(高橋正子)

12月1日~10日

12月10日(4名)
小口泰與
炉火赤し手持ち無沙汰の犬と居り★★★★
返り花彼方の山の沼の鳥★★★
暖房や犬の寝言の聞こゆなり★★★
多田有花
鴨の群浮かべ大河は悠々と★★★★
シングルスカル冬陽の中をゆく★★★
冬紅葉残せる一樹のそばに憩う★★★

廣田洋一

ノーベル賞候補で終へし年逝きぬ★★★
来年の健診予約年惜しむ★★★
足袋をはく仕種に色気溢れをり(原句)
少し引いて見たほうが足袋をはく人の姿がよく見えると思います。
足袋をはく仕種に色気溢るなり★★★★(正子添削)
桑本栄太郎
八つ手咲く厨の窓の日陰かな★★★
飛沫上げ水鳥又も来たりけり★★★★
水鳥が川や池に着水するとき、あざやかn水飛沫を上げる。それが日に輝くと広げた羽とともに躍動感あふれる美しい姿となる。それは、水鳥を迎える作者の喜びでもある。(高橋正子)
土となる日のいつの日や落葉踏む★★★
12月9日(5名)
小口泰與
日当りの良き絨毯に小犬かな★★★
埋火や犬の寝言の凄まじき★★★
冬虹やシャッター音と歓声と★★★
廣田洋一
朗人てふ巨匠逝きたる年の暮★★★
向き合ひて湯豆腐掬ふ清水坂★★★
湯豆腐に弾む話や友二人★★★
多田有花
寄り添いて真鴨つがいの河原にあり★★★
青き水を静かに進む鴨の群★★★★
鴨が群れをなして泳ぐときも、水音を立てることもなく、青い水を胸で押すように静かに進む。群れながらの静かさがいい。(高橋正子)
白鷺のたたずむ流れに姿映しつつ★★★

桑本栄太郎

からからと硬き音立て木の葉舞う★★★
さめざめと満天星つつじや冬もみじ★★★
ポン菓子の音におどろく小春かな★★★
古田敬二
<ベートーベン250>
明日への元気をもらう第九かな★★★
ブルーダーの一人として聴く第九かな★★★
汗飛ばし指揮者恍惚第九かな★★★
12月8日(4名)
歪みたる山の稜線開戦日★★★
夕さりの浅間のすそ野桜鍋★★★
卓袱台に麦飯と味噌開戦日★★★★
廣田洋一
巨星一つ極月に吸ひ込まれけり★★★
極月の地下に湧きたる歓喜の音★★★★
極月の講座を聴くやオンライン★★★
桑本栄太郎
背の低く支柱立てらる蜜柑かな★★★
チャイム鳴り校内放送小春日に★★★
紅葉散る残るもみじの日を透きぬ★★★★

多田有花

大雪の窓辺に日差しあふれおり★★★
大堰の上は雲無き冬青空★★★★
大きな堰の上はすぐ冬の混じるもののない青空。シンプルな構図の景色がさっぱりとしていて、潔さが冬に似合う。(高橋正子)
真鴨群れ川の中州に憩いおり★★★
12月7日(4名)
小口泰與
襖絵の松の枝ぶり河豚料理★★★
茎石や言の葉丸くなりにける★★★★
雀らに開けし障子や長廊下★★★
廣田洋一
中天に三日月浮かべ山眠る★★★
墓苑一つふところに抱き山眠る★★★★
都会近郊では墓苑が山ふところに開かれていることが多い。墓苑一つをふところに抱く山は、死者たちを、その魂もあたたかく抱いてくれているようだ。(高橋正子)
白き足袋埃にまみれ托鉢僧★★★
多田有花
冬晴れやラジコン飛行機旋回す★★★★
鴨集い尻あげて餌をついばみぬ★★★
歓声があがりぬ冬のグランドに★★★
桑本栄太郎
大根の下葉残して抜かれけり★★★
日を透きて下枝に残る冬紅葉★★★
廃屋の庭に今年も八つ手咲く★★★
12月6日(5名)
小口泰與
尾を振りて犬はちんちん焼芋屋★★★
鰭酒や利根は白波立ちにける★★★★
風呂吹きやいまや八十路の同級生★★★
廣田洋一
人ごみ避け早く始めし年用意★★★
古本の整理を始め年用意★★★
湯豆腐のことこと煮えて夜の酌★★★
桑本栄太郎
露凝るや朝のきらめく庭の木々★★★
冬ざれの山河となりぬ開戦日★★★★
「開戦日」は、第二次世界大戦の局面の一つ太平洋戦争(大東亜戦争)が真珠湾攻撃によって開始された日の12月8日を指していると解釈できるが、この日は、山河は荒涼と冬ざれの景色を見せていたということ。私は戦後すぐに生まれたが、このころの冬は「冬ざれ」ということばが、ぴったりだったと思う。戦争の傷痕は、今も残っている。(高橋正子)
冬日さす石のさざれの中州かな★★★
多田有花
小枝拾う小さき焚火するために★★★
冬晴れに立ちぬ公孫樹の黄金色★★★★
風吹けば小楢木の葉を放ちけり★★★★
小楢の黄葉が風が吹くと、自らが葉を放つように落葉する。小楢は、意志があるように立っている。(高橋正子)
古田敬二
枯れ葦を刈れば乾きし音のする★★★★
枯芝に座せば背中に温い陽来る★★★★
枯芝に座っていると背中がほんわかと温かくなってくる。遮るものが無く、存分に日があたる枯芝。「温い陽来る」が力強い。(高橋正子)
山眠る今は無くなる木ん馬道(原句)
山眠る今は無きなり木ん馬道★★★(正子添削)
12月5日(4名)
小口泰與
源流の空真っ青な冬黄葉(原句)
源流の空真っ青や冬黄葉★★★★(正子添削)
鰭酒や今宵も里は風の中★★★
湯豆腐や囲炉裏に薪の五六本★★★
廣田洋一
枯草やふはと返さる靴の底★★★★
枯草を歩いて行く人をすぐ前に見たのだろう。靴裏を見せて靴が「ふはと」返された。クローズアップされた靴の底が枯草のやわらかさを表している。(高橋正子)
大売出しの幟はためく年の暮★★★
慰霊碑に花束供え山眠る★★★
桑本栄太郎
しぐるるや時に水色空の見ゆ★★★★
礼拝のオンラインとや待降節★★★
強面と見ゆる貌なり山眠る★★★★

多田有花

疫病に忘年会をキャンセルす★★★
見上げればそこにはいつも冬青空★★★★
談笑の声聞こえ来る小春の日★★★
12月4日(3名)
小口泰與
厚紙に毛皮売ります杣の宿★★★★
三山の雲の速さよかじけ鳥★★★
ひれ酒や傘寿の我の酒量なる★★★
廣田洋一
一筋の傷跡残し山眠る★★★
セーターの腕をまくりて採血す★★★
年越しの予算たてたり月始め★★★
多田有花
真ん中に鉄橋がある冬景色★★★★
高いところからの眺めか。冬景色の真ん中を川が流れ、鉄橋がかかっている。
しばらく佇んでおれば、鉄橋を電車が渡るかもしれない。鉄道パノラマのような実景が楽しい。(高橋正子)
冬の河岸駆け抜けてゆく郵便夫★★★
枯枝に集いてとまり河原鶸★★★
12月3日(4名)
小口泰與
河原はや野球の子らや冬の鳥★★★★
夕間暮れ一羽遅れし鴨の沼★★★
田を越ゆる電柱の影冬すみれ★★★
廣田洋一
求めしはアラン模様の白きセーター★★★
セーターの腕をまくりて採決す★★★
暖かき年の暮れなり子らの声★★★
多田有花
大堰に南京櫨の冬紅葉★★★
加古川や枯れの上には青き空★★★★
足音に鴨そそくさと逃げてゆく★★★

桑本栄太郎

青空の高きに聳え冬木立★★★
青空にきらきら光り時雨来る★★★★
時雨は日本海の水蒸気を含んで降る京の時雨が一番情趣があるように思える。この日は青空から時雨がこぼれるように降った。青空にきらきら光って降る時雨。そこが作者の住まう京都である思うと、趣深い。(高橋正子)
木洩れ日をきざみ舞い居り竹落葉★★★
12月2日(5名)
小口泰與
訳ありの餅も売りたる五十集かな★★★
花枇杷や牛舎の牛の一か所に★★★★
枇杷の花が咲くころは、寒さが募って来る。牛舎の牛も一か所にかたまって、暖まろうとしいている。牛舎を飾るのが花枇杷なので、きれいな句になっている。(高橋正子)
水鳥や夕映えの波立ちにける★★★★
廣田洋一
白き雲後に控え冬の月★★★
逝きし妻思ひて仰ぐ冬の月★★★★
セーターの毛玉の増えて愛しかり★★★★
着慣れたセーターの着心地の良さは捨てがたい。気になるのは長年着ると毛玉ができること。その毛玉さえも愛着の一つとなる。(高橋正子)
多田有花
枯茨そこに真っ赤な実が光る★★★★
漕艇がいくつも浮かび冬の川★★★
冬の波残してダブルスカル去る★★★★
細い船体に二人がのって漕ぐボート、ダブルスカルが滑るように近づいて来て、去っていく。去った後には冬波が残っている。ダブルスカルの軽快さ、爽快さが愉快。「冬の波」が効いている。(高橋正子)

桑本栄太郎

踏みしだく落葉色褪せ来たりけり★★★
冬菊の色とりどりに寂び来たり★★★
真つすぐに畝の伸び居り冬菜畑★★★★
真っすぐに畝が作られ、畝には冬菜が青々と育っている。「まっすぐに・・伸び居り」は、作者の心持そのものであろう。(高橋正子)
古田敬二
大根抜く地球に残す黒き穴★★★
青梗菜良きふくらみに育ちけり★★★★
冬耕す背中いっぱい陽を浴びて★★★★
冬の野に出て耕す楽しみは、空にある日の恵みだろう。背中いっぱい日がさして風は冷たくも体は暖かい。晴れ晴れと気持ちの良い畑の仕事である。(高橋正子)
12月1日(5名)
小口泰與
沼風に負けぬ冬帽カメラ女子★★★
山風や鍬振る老の頬被★★★
手袋を咥え荷を積む菓子倉庫★★★
廣田洋一
地下広場電飾灯る十二月★★★
また一つ俳誌の積まれ十二月★★★
巫女三名ゆったり舞へる神楽かな★★★
多田有花
皇帝ダリア見上げて思う十二月★★★
常夜灯に今年の落葉降り積みぬ★★★
ベランダで小さき焚火楽しみぬ★★★

桑本栄太郎

一枚の残る暦や十二月★★★
あはあはと嗤う鴉や冬ざるる★★★
歩みゆくうちに忽ちしぐれ雲★★★

古田敬二

鱗雲瀬戸内海に竿を振る★★★
山からの水音落葉の長屋門(原句)
山水の音して落葉の長屋門★★★★(正子添削)
山のふもとの長屋門のある家は無人かもしれない。落葉が降り積もって往時を忍ばせている。山から流れる水音が変わらず生き生きとしている。(高橋正子)
山の池今年も来ている番鴨★★★