自由な投句箱/4月21日~30日(平成31年)


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※投句は、一日1回3句に限ります。
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今日の秀句/4月21日~30日


4月30日(1句)

★風に乗る紙飛行機や花楓/小口泰與
花楓が明るい緑を輝かせ、風が心地よくぬける。飛ばされた紙飛行機が花楓を吹く風にのって、飛距離を伸ばす。花楓のゆたかさが思われる。(高橋正子)

4月29日(1句)

★アパートの軒下までも蓮華草/桑本栄太郎
アパートは、田圃のほとりにあるのか。軒下まで、蓮華草が咲いて、ささやかな生活を彩っている。洗濯物のいい匂いがして来そうで、可愛い子どもや優しい母が住んでいそうなアパートを想像して、平和な気持ちになる。(高橋正子)

4月28日(2句)

★山吹や遡上の鱗きらきらと/小口泰與
山吹は渓川の川辺によく咲いている。遡上する魚が瀬をのぼるとき、きらきらと鱗が光る。渓流釣りの景色が楽しめる句だ。(高橋正子)

★婚礼の車を照らすシクラメン/廣田洋一
華やかなシクラメン。婚礼の車は特によく磨かれている。シクラメンが祝福するかのように、婚礼の車を照らしているのだ。婚礼という特別な場を得て、祝福の句が生れた。(高橋正子)

4月27日(2句)

★山藤や猿の横切る九十九折/小口泰與
四国松山から、峠を越え高知に至る国道で、道に出た猿を見たことがある。日本で一番高いところを走る国鉄バスであったから、こんな偶然にも出会った。山藤が垂れ下がり、九十九折に差し掛かるとひょいと猿が出てきて横切る。山深さのなかに野生動物と出会う偶然と驚きがある。(高橋正子)

★波の音聞いているのかチューリップ/多田有花
チューリップが勢ぞろいで咲いている。咲いている景色は平らであるようだが、リズムがある。一つ一つの花は人の顔の輪郭が偲ばれて、そば近く寄せる波の音を聞いているかのようである。一つ一つの花が生きている。聞いているのが、波の音なので納得できるのだ。(高橋正子)

4月26日(2句)

<湖北・海津大崎>)
★水清き湖北よ喇叭水仙よ/多田有花
湖北の春は冷たい。湖北の生活と相俟って、水は清い。湖北の水に映えて喇叭水仙が咲いている。イギリスの詩にある喇叭水仙が想像できて、意外な取り合わせに新しい日本の景色を見た思いだ。(高橋正子)

★サッチモのラッパの音色花水木/小口泰與
サッチモは、ルイ・アームストロングの愛称。花水木はアメリカの花。アフリカ系アメリカ人のサッチモのジャズトランペットの響きを聞いている至福の時間。取り合わせと生かした句。(高橋正子)

4月25日(2句)

★桜しべ散りこむ園の水飲み場/小口泰與
園は、公園か、幼稚園のようなところだろう。外に水飲み場があって、桜しべが盛んに散りこむ。水飲み場なので、濡れてくっついて、紅の蕊の印象がくっきりしている。桜しべと水飲み場の取り合わせがいい。(高橋正子)

★一画の畑に明るき花菜/桑本栄太郎
あるところにある一画の畑。花菜を吹く風が吹いて、明るく畑が輝いている。やわらかな春の日のかがやきに、心が明るくなる。(高橋正子)

4月24日(2句)

<湖北・海津大崎>
★湖上ゆく人に手を振る花見かな/多田有花
湖をゆく船に乗り、すれ違う船の人に手を振る。花見のうきうきした気分が手を振りたくさせるのだろう。ずっと前、ライン下りの船からすれ違う船の人たちと手を振りあったことを思い出した。これも楽しさの一つ。(高橋正子)

★花の種蒔きて心の解放感/廣田洋一
花の種を蒔いて、ほっとしている。この解放感はいいものだ。蒔き時を逃さなければ、芽生えて、花を咲かせてくれることは大方約束できる。(高橋正子)

4月23日(2句)

★目を閉じて見上げる空の遅日かな/廣田洋一
読み耽っていた本を閉じ、空を見上げた。春の日は、まだ暮れかねている。日がずいぶん長くなったと実感するが、日暮れが近いことも確かだ。「遅日」の季語がよく効いている。(高橋正子)

<湖北・海津大崎>
★満開の桜の沖へヨットゆく/多田有花
青春性のある句だ。満開の桜を岸辺に残して若々しいヨットは沖へ出て行く。(高橋正子)

4月22日(2句)

★全身の花粉に溺れ熊ん蜂/小口泰與
羽音が猛々しい熊ん蜂。蜜を吸いに花に来たのはよいが、丸々とした体、全身が、花粉まみれになった。花粉に溺れて、なんだか、可愛い。(高橋正子)

草引きし軍手はずして夏近し/廣田洋一
軍手を嵌めて草引きをした。草引きが終わり軍手をはずすと、手が汗に濡れて、素手になると、快い。「夏近し」を急に感じるときだ。(高橋正子)

4月21日(1句)

<湖北・海津大崎>
★石積の湖岸に寄せる春の波/多田有花
情景は石積の湖岸に湖の波が寄せているだけなのだが、思いは、繰り返され打ち寄せる波の静かな力が感じとられる。行く春を惜しむ気持ちも。(高橋正子)

4月21日~30日


以下コメントは後ほど
4月30日(4名)

廣田洋一
四月雨平成の世に泣き別れ★★★
昭和去り令和の来る春の果★★★
昭和の日忘れて過ぎる平成の春★★★

小口泰與
風に乗る紙飛行機や花楓★★★★
花楓が明るい緑を輝かせ、風が心地よくぬける。飛ばされた紙飛行機が花楓を吹く風にのって、飛距離を伸ばす。花楓のゆたかさが思われる。(高橋正子)

涌き出でて集落おおう杉花粉★★★
青柳や風に従う雲一朶★★★

多田有花
若楓重なりあいて輝けり★★★★
山寺の伽藍に近く八重桜★★★★
霞桜風心地よく吹き渡る★★★

桑本栄太郎
平成の大晦日とや若葉寒★★★★
忘れものをたずね家路や蝶の昼★★★
外つ人の一家着物や京の春★★★

4月29日(4名)

多田有花
本堂や枝垂桜のそのむこう★★★
山路いま三葉躑躅の色に染め(原句)
山路いま三葉躑躅の色に染まり★★★(正子添削)
蝶々となりて集いぬ頂に★★★★

小口泰與
マルメロの花や諏訪湖の見ゆる墓地★★★★
遠山は斑なりけり葡萄の芽★★★
山山をつなぐ鉄塔若緑★★★

桑本栄太郎
雨だれの音に朝寝や今朝の雨★★★
アパートの軒下までも蓮華草★★★★
アパートは、田圃のほとりにあるのか。軒下まで、蓮華草が咲いて、ささやかな生活を彩っている。洗濯物のいい匂いがして来そうで、可愛い子どもや優しい母が住んでいそうなアパートを想像して、平和な気持ちになる。(高橋正子)

忘れものは遠き過去とや蝶の昼★★★

廣田洋一
太陽の塔立ちたる如し辛夷の木★★★
馬酔木咲く御殿山の風吹き渡る★★★
忙しなく吾が肩叩く春落葉★★★★

4月28日(4名)

多田有花
仰ぎ見る高きに光る若楓★★★★
濃きもあり薄きもありて八重桜★★★
夏近し塩屋蜻蛉の生まれけり★★★★

小口泰與
山吹や遡上の鱗きらきらと★★★★
山吹は渓川の川辺によく咲いている。遡上する魚が瀬をのぼるとき、きらきらと鱗が光る。渓流釣りの景色が楽しめる句だ。(高橋正子)

噴煙の流るる先や花りんご★★★
見晴るかす千曲の蛇行花林檎★★★

廣田洋一
婚礼の車を照らすシクラメン★★★★
華やかなシクラメン。婚礼の車は特によく磨かれている。シクラメンが祝福するかのように、婚礼の車を照らしているのだ。婚礼という特別な場を得て、祝福の句が生れた。(高橋正子)
小さき門明るくせむとシクラメン★★★
縁取りの白のまぶしき紅シクラメン★★★

桑本栄太郎
中腹に十字架抱き山笑ふ★★★★
奉仕終え帰途に会いたり揚羽蝶★★★
竹秋の峰のつづくや天王山★★★

4月27日(4名)

小口泰與
海棠へ雨の重さのうつむけり(原句)
海棠や雨の重さにうつむけり★★★(正子添削)

山藤や猿の横切る九十九折★★★★
四国松山から、峠を越え高知に至る国道で、道に出た猿を見たことがある。日本で一番高いところを走る国鉄バスであったから、こんな偶然にも出会った。山藤が垂れ下がり、九十九折に差し掛かるとひょいと猿が出てきて横切る。山深さのなかに野生動物と出会う偶然と驚きがある。(高橋正子)

桜蘂降る分教場の水飲み場★★★★

廣田洋一
「御成婚」てふ躑躅咲く平成の果★★★
春雨や平成惜しむ豊玉姫★★★
平成を雨に流すか暮の春★★★

多田有花
波の音聞いているのかチューリップ★★★★
チューリップが勢ぞろいで咲いている。咲いている景色は平らであるようだが、リズムがある。一つ一つの花は人の顔の輪郭が偲ばれて、そば近く寄せる波の音を聞いているかのようである。一つ一つの花が生きている。聞いているのが、波の音なので納得できるのだ。(高橋正子)

花描く人とあいさつ花を撮る★★★
光浴び大島桜みずみずし★★★

桑本栄太郎
畑中に一本ありぬ花大根★★★
谷間の濃淡ふかく山笑ふ★★★
樟の枝の大きくしなり春嵐★★★★

4月26日(5名)

<湖北・海津大崎三句>
奥琵琶湖桜並木のまだ続く★★★

春の陽はまだ高かりしムスカリに(原句)
春の陽はまだ高かりきムスカリに★★★★(正子添削)
水清き湖北よ喇叭水仙よ★★★★
湖北の春は冷たい。湖北の生活と相俟って、水は清い。湖北の水に映えて喇叭水仙が咲いている。イギリスの詩にある喇叭水仙が想像できて、意外な取り合わせに新しい日本の景色を見た思いだ。(高橋正子)

小口泰與
海棠や夕べの擬宝珠雨の中★★★
サッチモのラッパの音色花水木★★★★
サッチモは、ルイ・アームストロングの愛称。花水木はアメリカの花。アフリカ系アメリカ人のサッチモのジャズトランペットの響きを聞いている至福の時間。取り合わせと生かした句。(高橋正子)

春暁や再来患者はや数多★★★

廣田洋一
色白の津軽娘や花林檎★★★
林檎の花白の合間に紅き蕾★★★
林檎の花白の合間に蕾赤き★★★★(正子添削①)
林檎の花白の合間に蕾赤し(添削②)
故郷を思えば見ゆる林檎の花★★★★

桑本栄太郎
藤色と云うはこの色藤の棚★★★
校庭にチャイム響くや花は葉に★★★★
菜の花や甍きらめく乙訓郷★★★

4月25日(5名)

小口泰與
黄昏や本流に出づ花筏★★★
桜しべ散りこむ園の水飲み場★★★★
園は、公園か、幼稚園のようなところだろう。外に水飲み場があって、桜しべが盛んに散りこむ。水飲み場なので、濡れてくっついて、紅の蕊の印象がくっきりしている。桜しべと水飲み場の取り合わせがいい。(高橋正子)

太古より利根の恵みや春の土★★★

廣田洋一
マンションの庭の光や花水木★★★★
白き花今朝も増えたり花水木★★★
道端を白く埋めたる花水木★★★

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
自転車が桜のアーチをやってくる★★★
大崎や枝垂桜もときにあり★★★
湖と空の青さに花の色★★★★

桑本栄太郎
一画の畑に明るき花菜風★★★★
あるところにある一画の畑。花菜を吹く風が吹いて、明るく畑が輝いている。やわらかな春の日のかがやきに、心が明るくなる。(高橋正子)

ひな芥子の刈り残されし畦の中★★★
饒舌と言うは淋しき揚ひばり★★★

古田敬二
ネモフィラのプランターからこぼれ咲く★★★
真っ白なソックスきょうから新中学生★★★
糸繰草女子中学生は賑やかに★★★★

4月24日(4名)

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
いっぱいの人載せ巡る花見船★★★
奥琵琶湖花の彼方に竹生島★★★★
湖上ゆく人に手を振る花見かな★★★★
湖をゆく船に乗り、すれ違う船の人に手を振る。花見のうきうきした気分が手を振りたくさせるのだろう。ずっと前、ライン下りの船からすれ違う船の人たちと手を振りあったことを思い出した。これも楽しさの一つ。(高橋正子)

小口泰與
八重桜浅間山頂斑なり★★★★
逆光の沼輝かせ花の滝★★★
境内の風をこらうる残花かな★★★

廣田洋一
花の種蒔きて心の解放感★★★★
花の種を蒔いて、ほっとしている。この解放感はいいものだ。蒔き時を逃さなければ、芽生えて、花を咲かせてくれることは大方約束できる。(高橋正子)

蒔き終えて隅に差し込む種袋★★★★
生えるかも知れぬと古き花種蒔きにけ★★★り

桑本栄太郎
ぼつてりと雨に咲きたり八重桜★★★
さくら蘂降る襤褸となりぬ舗道かな★★★
花柄の雨にくもりぬ著我の花★★★★

4月23日(4名)

小口泰與
松籟の浅間山(あさま)まだらや揚ひばり★★★
山を分け岩を翻弄春の川★★★
若芝やホースのたうち水阿修羅★★★

廣田洋一
若き日の妻と遊べり春の夢★★★★
書を閉じて見上げる空の遅日かな★★★★
読み耽っていた本を閉じ、空を見上げた。春の日は、まだ暮れかねている。日がずいぶん長くなったと実感するが、日暮れが近いことも確かだ。「遅日」の季語がよく効いている。(高橋正子)

西空の真赤に染まる遅日かな★★★

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
満開の桜の沖へヨットゆく★★★★
青春性のある句だ。満開の桜を岸辺に残して若々しいヨットは沖へ出て行く。(高橋正子)

揚げたての鮎の天ぷら食ぶ花見★★★
若楓先にありけり血天井★★★

桑本栄太郎
葉の裏の通りすがりや花楓(原句)
花楓通りすがりの葉裏かな★★★★(正子添削)
棚下に立つや香りと虻の昼★★★
蛙鳴く午後の曇りや雨催い★★★

4月22日(4名)

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
カヤックで水の上からお花見を★★★★
湖と桜並木のあわいゆく★★★
どこまでも染井吉野は満開に★★★

小口泰與
全身を花粉に溺る熊ん蜂(原句)
全身の花粉に溺れ熊ん蜂★★★★(正子添削)
羽音が猛々しい熊ん蜂。蜜を吸いに花に来たのはよいが、丸々とした体、全身が、花粉まみれになった。花粉に溺れて、なんだか、可愛い。(高橋正子)

湧水の棚田かけるやおそ櫻★★★★
遠山の銀嶺映うや朝櫻★★★

廣田洋一
草引きし軍手はずして夏近し★★★★
軍手を嵌めて草引きをした。草引きが終わり軍手をはずすと、手が汗に濡れて、素手になると、快い。「夏近し」を急に感じるときだ。(高橋正子)

鉢の土篩にかけて花種蒔★★★
電車の中新顔ばかり四月かな★★★

桑本栄太郎
想い出をたどり舞い居り蝶の昼★★★
からし菜の中洲占めたり桂川★★★
柿の葉に日差し明るく新芽伸ぶ(原句)
柿の葉に日差し明るし新芽伸ぶ★★★★(正子添削)

4月21日(3名)

小口泰與
さえずりや瀬尻の渦の白き影★★★
あなかまと妻を制すや雲雀の巣★★★
花うぐいつけ場めがけて投網せり★★★★

桑本栄太郎
雲間より峰に日差しや花の雲★★★
乙訓の風の田道や葱坊主★★★★
溝川のあふれ滲みだす穀雨かな★★★

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
石積の湖岸に寄せる春の波★★★★
情景は石積の湖岸に湖の波が寄せているだけなのだが、思いは、繰り返され打ち寄せる波の静かな力が感じとられる。行く春を惜しむ気持ちも。(高橋正子)

花の下琵琶湖眺めつお弁当★★★
寄す波に枝差し伸べし桜かな★★★★

自由な投句箱/4月11日~20日


※当季雑詠3句(春の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
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今日の秀句/4月11日~20日


4月20日(2句)

★松籟に乗りてふわりと雀の子/小口泰與
「ふわりと」が子雀のかわいらしさをよく表現している。松籟との取り合わせも、すっきりとしていていい。

★それぞれの花色選び蝶の昼/桑本栄太郎
蝶が花から花へ飛ぶ真昼。見ておれば、それぞれの蝶は、それぞれの花色を選んでいるように、同じ色の花から花へ移る。蝶と私との楽しい昼。(高橋正子)

4月19日(2句)

★うぐいすや棚田の水の満ちにける/小口泰與
棚田に水が満たされ、田植えの準備が次第に整う頃、田水を震わすようにうぐいすが美声を響かせる。山田ののどかな風景がこれからも続くことを祈りたい気持ちになる。(高橋正子)

★頂の小楢の芽吹き銀色に/多田有花
芽吹きが「銀色に」というのが、いい。芽吹いたばかりは、緑ではなく、銀色。ういういしさに輝いている。(高橋正子)

4月18日(1句)

★風のたび空へ花びら放たれり/多田有花
咲き満ちた花も散り始める時期が来て、風が吹くたびに花が枝から放たれる。さびしさも微かに花が散る。(高橋正子)

4月17日(4句)

★溶岩原の広漠とあり麦青む/小口泰與
溶岩原は、広漠として、麦が青んでいる。心が伸び伸びする景色だ。群馬県は国内でも最大の麦の産地と聞く。その産地もこんな景色から生まれるものであろう。(高橋正子)

★奈良漬や吉野の山の別れ霜/廣田洋一
𠮷野に遊んだ。終霜の時期は、京都で4月9日といわれるが、吉野の山の別れ霜も、おおよそその頃であろうか。桜が満開の季節と重なるかよくわからないが、下千本、中千本、奥千本と咲く桜の楽しみのなかに、奈良漬の添えられた食事は、渋くていい味わいかも。奈良の奈良漬は特別美味しい印象がある。(高橋正子)

★笹の葉の天より降りぬ竹の秋/桑本栄太郎
竹は、春に葉を入れ替えて落とす。それを竹の秋というが、歩いていると、高いところからひらひらと竹の葉が舞い落ちる。軽い竹の葉は、天から降ってくるように思える。(高橋正子)

★蒼天の色がこぼれてネモフィラに/古田敬二
ネモフィラはオオイヌノフグリを大きくしたような青い花。公園や丘陵などに一面に植えられ、今や親しい花となっている。蒼空の色とグラデーションをなして、見事でいる。「蒼天の色がこぼれ」たのだと思える。(高橋正子)

4月16日(2句)

★桜咲く絶えず小鳥をとまらせて/多田有花
桜の密を吸いに小鳥がやってくる。満開の花には、入れ替わり小鳥がやってくる。「絶えず」やってくる。うららかな春の日が快い。(高橋正子)

★塗りたての畔真昼の日を返す/古田敬二
田を打ち終わりいつでも植えられるようになると、田の水が漏れたりしないように、田の泥土で塗り固める。塗ったばかりの畔は日をてらてらと日を返して、見事である。この見事さは、営々と続いて来たもの。(高橋正子)

4月15日(2句)

★静かなる古刹は花にあふれおり/多田有花
古刹の桜は大木であろう。訪れる人もなく、ただ花があふれる古刹。静かさがあふれ咲く桜を引き立てている。その花をひとりじめして楽しむ作者が見える。(高橋正子)

★芽吹き盛ん相生山の膨れけり/古田敬二
調べると、相生山は名古屋市にある標高60mほどの低山とある。市民の緑地として整備され自然もゆたか。オオタカの巣も見られると言う。生活の中に楽しめる相生山の木々が芽吹き山が膨らむ。これからいい季節が待っている。(高橋正子)

4月14日(1句)

★初燕鏡のような水面を/古田敬二
初燕が、鏡のように静かな水面を、水面すれすれに飛んでいるのだろう。初燕の艶やかな羽の色が、鏡のような水面によく呼応している。(高橋正子)

4月13日(3句)

★飛騨川の峪崖深し飛花落花/古田敬二
飛騨川は流れも急であるが、峪の崖も深い。そこに舞い込む桜の花びらは、捨身の如くひたすらに散っているのだ。(高橋正子)

★ものの芽の彼方や山の連なれり/多田有花
ものの芽の色が柔らかい。その向こうには連山が見え、遥かな景色が望める。なにか希望がもてそうな景色だ。(高橋正子)

★遠山はまだ銀嶺や桜狩/小口泰與
山国では、桜が咲いても遠い山は雪を冠っている。桜と銀嶺とが山国春を物語っている。(高橋正子)

4月12日(1句)

★トンネルを出れば鉄橋風光る/多田有花
トンネルを出たとたん、鉄橋となり、辺りの風が光る。鉄橋の両側は、吹く風が自由で、輝いている。気持ちのよい季節だ。(高橋正子)

4月11日(1句)

★トンネルの闇の向こうに春の昼/多田有花
トンネルの向こうには、こちらとは違う世界がある。トンネルの闇を抜ければ、向こうには光眩しい春の昼がある。(高橋正子)

4月11日~20日


4月20日(4名)

小口泰與
我が郷は赤城根っこしつばくらめ★★★
さえずりや浅間南面斑なり★★★
松籟に乗りてふわりと雀の子★★★★
「ふわりと」が子雀のかわいらしさをよく表現している。松籟との取り合わせも、すっきりとしていていい。

多田有花
<湖北・海津大崎三句>
お花見や湖北の駅に降り立ちぬ★★★
満開の桜湖岸を縁取りぬ★★★★
奥琵琶湖残雪の山遠望す(原句)
一読してイメージが纏まりにくいので、添削しました。
残雪の山遠望に奥琵琶湖★★★★(正子添削)

廣田洋一
厚化粧の熟女の如し八重桜★★★
斎場や塀際に散る八重桜★★★
桜並木どんじり締める八重桜★★★

桑本栄太郎
ぐずぐずの飛行機雲や春の空★★★
それぞれの花色選び蝶の昼★★★★
蝶が花から花へ飛ぶ真昼。見ておれば、それぞれの蝶は、それぞれの花色を選んでいるように、同じ色の花から花へ移る。蝶と私との楽しい昼。(高橋正子)
散りしきる傍へ咲き初む八重桜★★★

4月19日(4名)

小口泰與
うぐいすや棚田の水の満ちにける★★★★
棚田に水が満たされ、田植えの準備が次第に整う頃、田水を震わすようにうぐいすが美声を響かせる。山田ののどかな風景がこれからも続くことを祈りたい気持ちになる。(高橋正子)
菜の花や千曲流るる詩の里★★★
青空へ万朶の花や鳥の声★★★

多田有花
頂の小楢の芽吹き銀色に★★★★
芽吹きが「銀色に」というのが、いい。芽吹いたばかりは、緑ではなく、銀色。ういういしさに輝いている。(高橋正子)

囀りの山より見やる沖青し★★★★
坂下る桜吹雪を浴びながら★★★

廣田洋一
白藤や斎庭を香り満たしをり★★★
房の先未だ開かぬ藤の花★★★
小さき風ゆったり揺れる藤の房★★★★

桑本栄太郎
放課後のドッジボールや春嵐★★★★
若芝の足裏(あうら)ふかふか跳ねいたり★★★
入園のすでに過ぎたりすみれ咲く★★★

4月18日(4名)

多田有花
風のたび空へ花びら放ちおり(原句)
花びらからみれば、「放ちおり」ではなく、「放たれる」ではないでしょうか。
風のたび空へ花びら放たれり★★★★(正子添削)
咲き満ちた花も散り始める時期が来て、風が吹くたびに花が枝から放たれる。さびしさも微かに花が散る。(高橋正子)

花吹雪視線あげれば遠き島(原句)
「花吹雪」と「視線あげれば」の情景がよくわからないです。
花吹雪視線の先の遠き島★★★★(正子添削)

絶え間なく花びら降り注ぐ山路★★★

小口泰與
わたらせのトロッコ列車桃の花★★★
せめぎ合う激しき鋭声百千鳥★★★
うぐいすやボート漕ぎ行く山上湖★★★★

廣田洋一
ちょんちょんと何か啄む雀の子★★★
丸まりて辺り見回す雀の子★★★★
鳥かごには落ち着かざりし雀の子★★★

桑本栄太郎
さくら蘂降るや地道の川辺行く★★★
川に添い鳶の高舞い風光る★★★★
すかんぽの赤き穂が伸び夕暮るる★★★

4月17日(5名)

小口泰與
溶岩原の広漠とあり麦青む★★★★
溶岩原は、広漠として、麦が青んでいる。心が伸び伸びする景色だ。群馬県は国内でも最大の麦の産地と聞く。その産地もこんな景色から生まれるものであろう。(高橋正子)

噴煙の韋駄天走り花りんご★★★
たんぽぽや赤城七峰靄の中★★★

多田有花
青空に映えし桜と甍かな★★★★
鳥になり潜り込みたし花のなか★★★
すでに風心地よきかな花の下★★★

廣田洋一
奈良漬や吉野の山の別れ霜★★★★
𠮷野に遊んだ。終霜の時期は、京都で4月9日といわれるが、吉野の山の別れ霜も、おおよそその頃であろうか。桜が満開の季節と重なるかよくわからないが、下千本、中千本、奥千本と咲く桜の楽しみのなかに、奈良漬の添えられた食事は、渋くていい味わいかも。奈良の奈良漬は特別美味しい印象がある。(高橋正子)

霜の別れとつくに済ませ湘南は★★★
白々と別れ霜なり狭庭かな★★★

桑本栄太郎
花屑の祇園白川勇歌碑★★★
花屑の酔いたるようにうすき紅★★★
笹の葉の天より降りぬ竹の秋★★★★
竹は、春に葉を入れ替えて落とす。それを竹の秋というが、歩いていると、高いところからひらひらと竹の葉が舞い落ちる。軽い竹の葉は、天から降ってくるように思える。(高橋正子)

古田敬二
蒼天がこぼすネモフィラ紫に★★★
蒼天の色がこぼれてネモフィラに★★★★
ネモフィラはオオイヌノフグリを大きくしたような青い花。公園や丘陵などに一面に植えられ、今や親しい花となっている。蒼空の色とグラデーションをなして、見事でいる。「蒼天の色がこぼれ」たのだと思える。(高橋正子)

残る鴨二匹そろいて水脈を引く(原句)
残る鴨二羽がそろいて水脈を引く★★★★(正子添削)

4月16日(5名)

小口泰與
うぐいすや暁の厨の忙しかり★★★
夕映えの一朶の雲や花あんず★★★
洋洋と榛名湖蒼き春日傘(原句)
洋々と榛名湖蒼し春日傘★★★★(正子添削)

多田有花
花びらの先に伸び行く飛行機雲★★★
桜咲く絶えず小鳥をとまらせて★★★★
桜の密を吸いに小鳥がやってくる。満開の花には、入れ替わり小鳥がやってくる。「絶えず」やってくる。うららかな春の日が快い。(高橋正子)

こんな見事な桜をひとりで見る★★★

廣田洋一
白き紐ゆらゆら揺れる雪柳★★★
零れさうでこぼれぬ花や雪柳★★★★
せせらぎのたゆみなき音雪柳★★★

古田敬二
春水分け真鯉緋鯉が餌による★★★★
塗りたての畔真昼の日を返す★★★★
田を打ち終わりいつでも植えられるようになると、田の水が漏れたりしないように、田の泥土で塗り固める。塗ったばかりの畔は日をてらてらと日を返して、見事である。この見事さは、営々と続いて来たもの。(高橋正子)

走り去る車の風やすみれ咲く★★★

桑本栄太郎
花屑の酔いたるようにうすき紅★★★
せせらぎへ枝の残花や高瀬川★★★
花屑の風にたゆとうにわたずみ★★★★

4月15日(5名)

小口泰與
山風に白波立ちて蝌蚪の紐★★★
背景は真っ青な空嶺桜★★★★
いざ跳ばん草掴みたる初蛙★★★

多田有花
静かなる古刹は花にあふれおり★★★★
古刹の桜は大木であろう。訪れる人もなく、ただ花があふれる古刹。静かさがあふれ咲く桜を引き立てている。その花をひとりじめして楽しむ作者が見える。(高橋正子)
山桜その大きさを見上げおり★★★
花は咲く誰も訪ねぬ山中に★★★

廣田洋一
人気無き通りにかさと春落葉★★★
滑り台順番待ちの春落葉★★★
二三枚川に浮かびし春落葉★★★

古田敬二
青空へ揺れて楢の木芽吹きけり★★★
芽吹き盛ん相生山の膨れけり★★★★
調べると、相生山は名古屋市にある標高60mほどの低山とある。市民の緑地として整備され自然もゆたか。オオタカの巣も見られると言う。生活の中に楽しめる相生山の木々が芽吹き山が膨らむ。これからいい季節が待っている。(高橋正子)

豆の花豆にならんと咲きにけり★★★

桑本栄太郎
建仁寺土塀の中に花かりん★★★
花屑の舞いて立ち居りつむじ風★★★
花虻や幼き日々の母想う★★★★

4月14日(5名)

小口泰與
欅大衆の山風を鷲づかみ
「欅大衆」は「欅大樹」の間違いでしょうか。

夜桜や二人乗りたる観覧車★★★★
傘寿にて趣味は二つよ亀の鳴く★★★

廣田洋一
行き付けの書店閉じられ春惜しむ★★★
春惜しむ丹沢の山煙りをり★★★★
道端に咲く花々に春惜しむ★★★

多田有花
廃線の枕木のそばすみれ咲く★★★★
すみれ咲くアスファルトに咲く花として★★★
青空に花見の歌の聞こえ来る★★★

桑本栄太郎
山並の京へとつづく花の雲★★★
土手草の青む車窓や阪急線★★★★
からし菜の中州占めたり桂川★★★

古田敬二
初燕池の賑わい始まれる★★★
初燕鏡のような水面に(原句)
初燕鏡のような水面を★★★★(正子添削)
今年また無人駅舎につばくらめ★★★

4月13日(5名)

古田敬二
飛花落花飛騨川の峪崖深し(原句)
飛騨川の峪崖深し飛花落花★★★★(正子添削)
友見舞う窓辺に飛び交う初燕★★★★
満開を見上げる空の飛行体★★★

多田有花
山頂まで三葉躑躅の道をゆく★★★
ものの芽の彼方に山の連なりが(原句)
「が」で止めたところは、落ち着きが悪いです。
ものの芽の彼方や山の連なれり★★★★(正子添削)

山ひとつ登って下りる谷朧★★★★

小口泰與
遠山はまだ銀嶺や桜狩★★★★
花筵ギター片手に乾杯す★★★
うとうとと辞書に顔伏し亀鳴けり★★★

廣田洋一
仔馬跳ね草露跳ねる牧の朝★★★★
大流星しっかり継ぎし仔馬かな★★★
馬の仔の額の白は母親似★★★

桑本栄太郎
平成の御代を惜しめり花吹雪★★★
散り敷きてなほ蘂酔ふや花あはれ★★★
休日の園の花壇にチューリップ★★★★

4月12日(5名)

古田敬二
陽光の入り陽に続く春の海★★★
にぎやかに満開近きシデコブシ★★★★
白々と街路両側シデコブシ★★★

多田有花
のどけしや残る枕木踏みつゆく★★★
トンネルを出れば鉄橋風光る★★★★
遠目にも大きく見えて江戸彼岸★★★

廣田洋一
覚ましを止めて遠ざけ朝寝かな★★★
大朝寝時計は鳴らず烏も鳴かず★★★
朝寝など許されぬ旅吉野山★★★★

小口泰與
上り簗越後魚沼魚野川★★★★
水荒き春の魚野川(うおの)の簗場かな★★★
春なると決まって出づる恙かな★★★

桑本栄太郎
校門の花や早くも花吹雪★★★★
花屑の舞いて立ち居りつむじ風★★★
赤白黄斑もありぬチューリップ★★★

4月11日(4名)

多田有花 
うららかや廃線跡をハイキング★★★
渓流と桜を愛でしハイキング★★★
トンネルの闇の向こうに春の昼★★★★

小口泰與
砂びの穴の五六個牡丹百合★★★
咲き満ちて烈風にあう杏かな★★★
利根川の煌煌とせる桃の花★★★★

廣田洋一
うつすらと白き流れや春の雲★★★
ビルの窓白く光れる春の雲★★★★
逆上がりやつと出来たり春の雲★★★

桑本栄太郎
坂道をたゆとう歩む花の屑★★★★
花びらの舞いて散り初む花あはれ★★★
風吹かば誰れぞ留めん花吹雪★★★

自由な投句箱/4月1日~10日


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今日の秀句/4月1日~10日


4月10日(1句)

★空堀にたんぽぽ溢れ彦根城/桑本栄太郎
花冠の大阪大会で、琵琶湖・長浜を案内いただいたとき、湖畔から彦根城を眺めた。空堀は見なかったが、彦根城の空堀にたんぽぽが咲いて、春の季節ならは特にであろうが、今は昔を思い知らされる。(高橋正子)

4月9日(1句)

★の花競ひて天に伸び行けり/廣田洋一
松の花がたくさん、密に伸びている様子は、春空へ伸びるのを競っているようにも思える。それだけ勢いのある松の花だ。(高橋正子)

4月8日(1句)

★咲き満ちし花を散らせる禽の数/小口泰與
もとの句は、「咲き満ちて花を散らす」のが「禽(の数)」となって、句意が通りにくい。
咲き満ちた花を散らすのは、風ではなく、花の蜜を吸いに来た禽たち。いろんな禽がいるのだろう。豪華な景色だ。(高橋正子)

4月7日(2句)

★はくれんの飛び立つ如し不動堂/多田有花
飛び立とうとするような純白のはくれんに不動堂が取り合わされて、構成のしっかりした句になっている。(高橋正子)

★いずこかに鳥の巣の有り声高し/廣田洋一
高いところから盛んに鳥の声が聞こえる。この声高さは、鳥の巣がきっと近くにあると思える。春なればこその朗さ。(高橋正子)

4月6日(1句)

★たそがれて残花散り行く街の角/廣田洋一
たそがれの街を残花が散ってゆく。街角にきてそうなのだ。花の哀愁とでも言うのだろうか。(高橋正子)

4月5日(3句)

★清明の水吸う苔のふくらみぬ/廣田洋一
「清明の水」と言われ、冷たく清らかな水が思える。その水を含んで苔がふくらむ。清明の日より万物は明るく潤っていくように思える。(高橋正子)

★おにぎりを頬張るごとに山笑う/小口泰與
縁先でも、野山でもいい。塩味の効いたおにぎりの美味さ。頬張るごとに山が笑う。健康な句だ。(高橋正子)

★あぜ道の吾に鳴くなり揚雲雀/桑本栄太郎
もとの句には「一人」があった。吾に鳴くのであるから、仮に周りに人がいたとしても、雲雀が高くより鳴声を落としてくれるのは、「吾一人」にである。揚雲雀とつながる嬉しさ。(高橋正子)

4月4日(1句)

★花を見て仁王像見て山に向かう/多田有花
仁王像があるのは、寺であろう。山すその寺の桜花、そして仁王像。花の匂わしさ、仁王像の力強さがうまくマッチして英気を養ってくれるようだ。そして山へ向かう。その溌剌さがいい。(高橋正子)

4月3日(1句)

★花冷やもてなしの茶を頂きぬ/廣田洋一
花冷」という寒さに、もてなされた茶のあたたかさ。花の季節の麗しさが加わり一服の茶にしみじみと心和む。(高橋正子)

4月2日(1句)

★木の芽時溶岩台地のうるおえり/小口泰與
溶岩が流れ出て作られた台地。そんな台地も木の芽時の雨にうるおい萌える気配がある。(高橋正子)

4月1日(2句)
★染井吉野咲き初む高き一枝より/多田有花
高い枝、空に一番触れる枝から咲き始めた桜。さきがけの瑞々しさに触れた嬉しさ。(高橋正子)

★植込みのつつじ咲き初む駅舎かな/桑本栄太郎
「つつじ」と「駅舎」の取り合わせがリアル。日常という現実感の強さに惹かれた。(高橋正子)

4月1日~10日


4月10日(4名)

多田有花
朝日さすやまとごころの山桜★★★
少年の手足は長く伸びて春★★★★
快晴の空に舞いおり初燕★★★

小口泰與
湖釣の竿に魚信(あたり)や春炬燵★★★

砂浴びの雀や風の黄水仙(原句)
砂浴びの雀と風の黄水仙★★★★(正子添削)
砂浴びの雀と風の黄水仙は、同じくらいの意味の重みがあります。片方だけに「かな」を付けると句がまとまらなくなります。

耕しの鍬振り上げて禽を追う★★★

廣田洋一
雨に打たれ花弁一つ零れけり★★★
道の端ぱつと明るく躑躅咲く★★★
紅躑躅広く見えたる狭庭かな(原句)
紅躑躅狭庭の広く見えしかな★★★★(正子添削)
「広く見えた(る)」ことに心が動いたのではないでしょうか。「かな」は、感動の中心につけてください。

桑本栄太郎
<彦根城三題>
空堀にたんぽぽ溢れ彦根城★★★★
花冠の大阪大会で、琵琶湖・長浜を案内いただいたとき、湖畔から彦根城を眺めた。空堀は見なかったが、彦根城の空堀にたんぽぽが咲いて、春の季節ならは特にであろうが、今は昔を思い知らされる。(高橋正子)

生きてなお散る時想う花の宴★★★
天守より眼下に春の淡海かな★★★

4月9日(3名)

小口泰與
ほわほわと赤子指差す桜かな★★★
あと一杯止むや目の前桜餅★★★
春灯やカメラの前の吾子二人★★★

多田有花
五重塔春しぐれあがる青空に★★★
リズムが整っていないのが難点です。

花時の中金堂から南円堂★★★★
花満喫そば定食で締めくくる★★★

廣田洋一
下枝の若葉鮮やか桜かな★★★★
花吹雪風にあおられ散り散りに★★★
松の花競ひて天に伸び行けり★★★★
松の花がたくさん、密に伸びている様子は、春空へ伸びるのを競っているようにも思える。それだけ勢いのある松の花だ。(高橋正子)

4月8日(4名)

小口泰與
咲き満ちて花を散らせる禽の数(原句)
咲き満ちし花を散らせる禽の数★★★★(正子添削)
もとの句は、「咲き満ちて花を散らす」のが「禽(の数)」となって、句意が通りにくい。
咲き満ちた花を散らすのは、風ではなく、花の蜜を吸いに来た禽たち。いろんな禽がいるのだろう。豪華な景色だ。(高橋正子)

はくれんや池を賑わす鯉の群★★★
咲き満ちて花二三片散りにけり★★★

多田有花
春雨の二月堂から大鐘へ★★★
桜咲く大仏殿に来ています★★★
柱くぐり再誕生の春となる★★★

廣田洋一
虚子の忌や「一日一句」開きたる★★★★
花祭り釈迦駅中に立ちたまふ★★★
天を指す御手にも甘茶かけにけり★★★

桑本栄太郎
外灯の電線うなる春疾風★★★
たぷたぷと波の岸辺に春嵐(原句)
たぷたぷと岸辺の波や春嵐★★★★(正子添削)
「たぷたぷと」が修飾しているのが「岸辺」となって、句意が分かりにくいです。

風に躍る下枝や花の冷え★★★

4月7日(4名)

多田有花
はくれんの飛び立つ如し不動堂★★★★
飛び立とうとするような純白のはくれんに不動堂が取り合わされて、構成のしっかりした句になっている。(高橋正子)

しぐれくる枝垂桜や二月堂★★★
衆生われ春の坂道を下る★★★

廣田洋一
巣造りの枝を咥へし小鳥かな★★★
高枝に鳥の巣一つかけられし★★★
いずこかに鳥の巣の有り声高し★★★★
高いところから盛んに鳥の声が聞こえる。この声高さは、鳥の巣がきっと近くにあると思える。春なればこその朗さ。(高橋正子)

小口泰與
まっさおな空に下校や花ミモザ★★★★
竹秋や割れ煎餅の量り売り★★★
夕暮の魚籠よりこぼる蕗のとう★★★

桑本栄太郎
京なれや源平桃の鴨川に★★★★
せせらぎの祇園白川花かがり★★★
自由とは斯くも哀しき放哉忌★★★

4月6日(4名)

多田有花
ウエディングドレスを乱し春疾風★★★★
春疾風に押されつ鶯塚古墳★★★
広々と若草山の春の芝★★★

小口泰與
赤城嶺のなで肩にして笑いける★★★
若柳や小舟を担ぐささら波★★★
落椿雀の嘴の光おり★★★★

廣田洋一
残花なほとどまる道を出勤す★★★
たそがれて残花散り行く街の角★★★★
雨雫朝日に光る残花かな★★★

桑本栄太郎
川べりを埋めて花見の地道かな★★★
堰水の音を聞きつつ花見人★★★★
愛の巣の軒の内なりつばめ来る★★★

4月5日(4名)

多田有花
春の鹿寄りくる何か食べおれば★★★
奈良一望春の若草山に立つ★★★
咲き満てる桜の下で昼ご飯★★★

廣田洋一
清明やスマッシュしたる卓球台★★★
清明の水吸う苔のふくらみぬ★★★★
清明の風にそよげる庭の草★★★

小口泰與
丈六へ風を纏うや鐘おぼろ★★★
太古より変わる川筋鳥曇★★★
おにぎりを頬張るごとに山笑う★★★★

桑本栄太郎
あぜ道の吾一人なり揚雲雀(原句)
あぜ道の吾に鳴くなり揚雲雀★★★★(正子添削)
「一人」が効いていないように思います。

菜の花や西へ東に選挙カー★★★
川風に躍る下枝や花の冷え★★★

4月4日(4名)

多田有花
氷室神社奈良の一番桜かな★★★
花を見て仁王像見て山に向かう★★★★
仁王像があるのは、寺であろう。山すその寺の桜花、そして仁王像。花の匂わしさ、仁王像の力強さがうまくマッチして英気を養ってくれるようだ。そして山へ向かう。その溌剌さがいい。(高橋正子)

桜咲く若草山を目指しけり★★★

小口泰與
物言わぬ巨石や春の里の川★★★
里川を下る六羽の春の鴨★★★
初雷や焼き饅頭の味噌の味★★★★

廣田洋一
えいやつと持ち上げられしたんぽぽかな★★★
自己主張の黄色たんぽぽ土手に咲く★★★
渡来人の住みたる里や帰化たんぽぽ★★★

桑本栄太郎
つくし野や夕日の畑に遊びをり★★★
鳴き明かし真つ逆さまに雲雀落つ★★★
夕風のふるさと偲ぶ著我の花★★★

4月3日(4名)

小口泰與
釣糸の雁字搦めや独活もどき★★★★
たんぽぽや出入り激しき駐車場★★★
おにぎりを結ぶ手のひら未開紅★★★

多田有花
曙の空見て春の奈良に向かう★★★
工場にも療養所にも桜咲く★★★
ボートゆく桜並木の下をゆく★★★★

廣田洋一
花冷のコートの厚さ迷ひたる★★★
花冷やもてなしの茶を頂きぬ★★★★
花冷」という寒さに、もてなされた茶のあたたかさ。花の季節の麗しさが加わり一服の茶にしみじみと心和む。(高橋正子)
花冷の雨にたたられ吉野かな★★★

桑本栄太郎
風吹けば手招きしたる雪柳★★★
豌豆と云えどからすの花咲きぬ★★★
何もかも記憶飛びそう揚ひばり★★★★

4月2日(4名)

小口泰與
三代の御代を寿ぎ未開紅★★★

畦道を猫の駆け行く諸葛菜(原句)
句意をはっきりさせると句の姿が整う。
諸葛菜猫の駆け行く畦の道★★★(正子添削)

うるおえる溶岩の台地や木の芽時(原句)
木の芽時溶岩台地のうるおえり★★★★(正子添削)
溶岩が流れ出て作られた台地。そんな台地も木の芽時の雨にうるおい萌える気配がある。(高橋正子)

多田有花
八重紅梅に当たる日差しの強さ増す(原句)
「当たる」は余分。
八重紅梅強さ増したる日差しかな★★★★(正子添削)

枝垂桜まだ幼きが咲き始め★★★
四月来る高き主塔の彼方より★★★

廣田洋一
芽吹きたる柳の揺れる平城京跡★★★
鬱蒼たる林抜ければ桜かな★★★

せせらぎの音に揺れける滝桜(原句)
せせらぎの音に揺れけり滝桜★★★★(正子添削①
せせらぎの音にも揺れて滝桜(正子添削②)

桑本栄太郎
揚ひばり途切れとぎれや風の野に★★★
花冷えや遠くの孫の今日入園★★★
東風荒れや独り昼餉の妻の留守★★★

4月1日(4名)

小口泰與
浅間燃えなぞえに川や花杏★★★
噴煙の垂直に起ち風光る★★★★
霾や眼鏡のパット替えにける★★★

多田有花
染井吉野咲き初め高き一枝より(原句)
染井吉野咲き初む高き一枝より★★★★(正子添削)
高い枝、空に一番触れる枝から咲き始めた桜。さきがけの瑞々しさに触れた嬉しさ。(高橋正子)

その白き色こそ貴し山桜★★★
咲き初めし桜へ一日雨の降る★★★

廣田洋一
見はるかす山並み染める桜かな★★★
山肌になだれ咲きける辛夷かな★★★

山門に音立てて降る春霰(原句)
山門に音立て降るや春霰★★★★(正子添削)

桑本栄太郎
元号の令和と決まり春惜しむ★★★
裏庭の鉢に爛れや黄水仙★★★
植込みのつつじ咲き初む駅舎かな★★★★
「つつじ」と「駅舎」の取り合わせがリアル。日常という現実感の強さに惹かれた。(高橋正子)