自由な投句箱/8月21日~31日


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今日の秀句/8月21日~31日


8月31日(1句)

★雷雨去りたちまち風ある虫の闇/桑本栄太郎
雷雨の間は、ひっそりとしていた虫も雷雨が去ると、真暗闇に風が吹き、虫が盛んに鳴き出す。自然の現象に敏感な秋の虫である。(高橋正子)

8月30日(1句)

★身の内の何かほぐれり新涼に/多田有花
暑さが続くと、暑さに身構える、暑さに耐えるような気持が働くが、新涼となると、体の中のなにか、ほぐれる、体が和らぐような気持になる。新涼の爽やかさ。(高橋正子)

8月29日(1句)

★水槽を洗い終わりて涼新た/小口泰與
金魚や目高を飼っていれば、水槽の水を替えたり、洗ったり、手がいるが、洗って、新しい水をいれると、さっぱりと気持ちよい。目にも涼しい。「涼新た」である。(高橋正子)

8月28日(1句)

★稜線の木々月光に影を成す/多田有花
月光が静かに作り出す稜線の木々のシルエット。影絵のような美しさ。(高橋正子)

8月27日(1句)

★乙訓の丘に風生れ夕あきつ/桑本栄太郎
乙訓は「弟国」の意味がある奈良時代ごろからの歴史ある山城の国の要所。「山崎の戦(天王山の戦)」もあった。そういった丘に夕べ佇むと風がよく吹き、蜻蛉が行き来する。歴史に思いが及びもするだろう。(高橋正子)

8月26日(1句)

★朝顔や咲きのぼりたる庇かな/廣田洋一
朝顔がついに庇まで咲きのぼり、そこには朝日がよく当たり、明るく涼しげに見える。が、少しさびしさも。庇までのぼった朝顔は、そのまま季節の移り変わりの姿でもある。(高橋正子)

8月25日(1句)

★池の面を明日には帰燕となる一群/古田敬二
九月が近づくと燕は南方へ帰るために集まる。集まってすぐ飛び立つわけではないらしく、池の面や川面
を飛んでいる。明日は帰るのだろう。この一群が帰ると日本の空は淋しくなる。

余談だが、最近では、「帰燕」の季題を出されて、燕の生態に沿って正しく詠んだ句は、例えば、十句中四句くらいで、少ないそうだ。(高橋正子)

8月24日(2句)

★台風の雲色色や山は蒼/小口泰與
台風が来る前であろう。風の影響を受けてかいろいろな雲があり、動きも様々。山は泰然として蒼い。山の蒼さが雲の様々を引き立て、大きな自然を感じさせてくれる。(高橋正子)

★稲の香や乙訓郷に風生るる/桑本栄太郎
風があれば、稲の香がよく香る。稲穂もさざめく。乙訓の里の実りの秋がよく詠まれている。(高橋正子)

8月23日(2句)

★清らかな野川や鳥と鰯雲/小口泰與
鰯雲が空に広がり、鳥が囀る。野川は清らかに流れる。ふるさとは麗しきかな。(高橋正子)

★早風呂を済ませ二人の零余子飯/古田敬二
子どもたちも独立し、夫婦二人の暮らし。早風呂を済ませ、零余子飯の夕飯をいただく。清潔で、つましい、心豊かな暮らし。
アメリカの小説(題名は失念)に、老婦人が庭からレタスを採ってきて、きれいに洗い、丁寧にちぎって食事をする場面があったのを思い出した。アメリカは初めピューリタンが移住したから、そんな暮らしがあったのだろうと思ってみたりもした。(高橋正子)

8月22日(2句)

★山下りて熟れし早稲田の中帰る/多田有花
山を下りると山とは違う景色は田んぼがあること。早稲田の中を帰るとき、平地の実り、平地の生活の温みを感じる。(高橋正子)

★露草や耳立てて聞く風の音/廣田洋一
露草の青が空気を澄ませる。涼しい風が来そうだ。耳を立てて風の音を聞く。繊細な感覚。(高橋正子)

8月21日(1句)

★頂の昼食に来る秋の蝶/多田有花
頂には、蝶や蜻蛉などが意外といるようだ。秋山の頂の爽やかな昼ご飯に蝶が訪ねてくる。下界の喧騒を離れて、たのしい頂のひとときである。(高橋正子)

8月21日~31日


8月31日(3名)

小口泰與
あさがおや焼き饅頭の味噌の出来★★★
上州の小泉稲荷秋桜★★★
今朝赤城くっきり見ゆや秋茜★★★★

廣田洋一
竿持ちて鮭の群待つ浦日和★★★★
鮭切身塩味薄く焼きにけり★★★
鮭上る思ひ詰めたる背波立て★★★

桑本栄太郎
土の香に目覚む朝や秋驟雨★★★
哀しみの数多過ぎ居り八月尽★★★

雷雨去りたちまち風の虫の闇(原句)
雷雨去りたちまち風ある虫の闇★★★★(正子添削例)
「闇」に掛かるのが「風の」「虫の」と「の」が多用されて、調べはきれいなのですが、句がくっきりしなく、観念的になっています。そのところを工夫が必要と思います。
雷雨の間は、ひっそりとしていた虫も雷雨が去ると、真暗闇に風が吹き、虫が盛んに鳴き出す。自然の現象に敏感な秋の虫である。(高橋正子)

8月30日(4名)

小口泰與
紺碧の暁の赤城や秋あかね★★★
露草や老いの手助け猫車★★★★
蒼天に雲ひと刷けや花芙蓉★★★

多田有花
身の内の何かほぐれし新涼に(原句)
「ほぐれし」の「し」は「き」の連体形なので、「新涼に」かかります。それで、この句意の場合は、「し」は不自然な感じがします。
身の内の何かほぐれり新涼に★★★★(正子添削)
暑さが続くと、暑さに身構える、暑さに耐えるような気持が働くが、新涼となると、体の中のなにか、ほぐれる、体が和らぐような気持になる。新涼の爽やかさ。(高橋正子)

前山に日ごと増しつつ秋の色★★★
秋の夜の火星見上げて床に就く★★★

廣田洋一
秋空に浮かぶ車両のリニアかな★★★
やや薄く色づく稲田曇り空★★★★
道端の垂れし稲穂に触れてみる★★★

桑本栄太郎
長き夜や真夜の団地に救急車★★★
干上がりてさざれや秋の旱川★★★
赤とんぼ連れて田道の入日かな★★★★

8月29日(3名)

小口泰與
水槽を洗い終わりて涼新た★★★★
金魚や目高を飼っていれば、水槽の水を替えたり、洗ったり、手がいるが、洗って、新しい水をいれると、さっぱりと気持ちよい。目にも涼しい。「涼新た」である。(高橋正子)

もれも無く鳩の翔るや秋の朝★★★
榛名富士映る水面や赤とんぼ★★★

廣田洋一
黒葡萄一皮剥けば赤き汁★★★
一人一房巨峰のおやつ奢りけり★★★
また新種試食してみる白葡萄★★★

桑本栄太郎
うそ寒や肩を竦めて目覚め居り★★★
夜半忌の底紅積もる垣根かな★★★
ベランダの鉢に聞き居りきりぎりす★★★

8月28日(4名)

小口泰與
秋澄むや赤城離るる暁の雲★★★
山間の利根の支流や秋の雲★★★★
台風やいまだ河川の整わず★★★

廣田洋一
ピカピカと帰宅促す稲光★★★
絶え間なく駅舎の上の稲光★★★★
稲光追ひかけ来たる豪雨かな★★★

桑本栄太郎
きちきちの飛び出し誘う田道かな★★★★
溝そばの花や小川の楽を聞き★★★
音のみの鳴りて終いや秋の雷★★★

多田有花
秋の雷音激しくて雨少し★★★
町並みからオレンジ色の月が出て★★★
稜線の木々月光に影を成す★★★★
月光が静かに作り出す稜線の木々のシルエット。影絵のような美しさ。(高橋正子)

8月27日(4名)

多田有花
秋の蛇蛇行の形に固まりぬ★★★
蝉の声消えて静かな秋の朝★★★

蜘蛛の巣の枝に光りし残暑かな(原句)
蜘蛛の巣の枝に光れる残暑かな★★★(正子添削)
「光りし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で「光った」の意味。「光れる」は、「光っている」の意味。(高橋正子)

小口泰與
靴紐を結び直せり秋の山★★★★
蜩や山今だ日を寄せ付けず
「今だ」は、「未だ」のこと?

水槽の魚の動きや涼新た★★★

廣田洋一
生垣につかまり鳴くや秋の蝉★★★

蜩の声波打つ夕べかな(原句)
蜩の声の波打つ夕べかな★★★(正子添削)

平成の最後の秋や蝉の声★★★★

桑本栄太郎
干上がりて石のさざれや秋暑し★★★

乙訓は風の丘なり夕あきつ(原句)
乙訓の丘に風生れ夕あきつ★★★★(正子添削)
「風の丘」が甘いです。つまり、観念とか、言葉自体に傾いています。そうなると、句に現実感、リアリティが薄れます。
乙訓は「弟国」の意味がある奈良時代ごろからの歴史ある山城の国の要所。「山崎の戦(天王山の戦)」もあった。そういった丘に夕べ佇むと風がよく吹き、蜻蛉が行き来する。歴史に思いが及びもするだろう。(高橋正子)

送電塔の背ナに雲生れ秋の嶺★★★

8月26日(4名)

小口泰與
ラジオより流る和楽よ麗人草★★★
日を浴びてカーテンの色秋薊★★★
秋ばらの下刈り済ませ入日かな★★★

多田有花
盆の月下に火星を従えて★★★
朝霧の晴れてあらわる山の影★★★
つくつくぼうし今にぎやかに森の道★★★★

廣田洋一
朝顔のカーテン揺れて老夫婦★★★
朝顔や宿題用の写真撮り★★★

朝顔や咲きのぼりたる庇かな★★★★
朝顔がついに庇まで咲きのぼり、そこには朝日がよく当たり、明るく涼しげに見える。が、少しさびしさも。庇までのぼった朝顔は、そのまま季節の移り変わりの姿でもある。(高橋正子)

桑本栄太郎鉄塔の背ナは山の端秋の雲★★★
高槻のブルーシートや秋暑し★★★
酔芙蓉薫香いまだ色に出ず★★★

8月25日(5名)

古田敬二
池の面を明日には帰燕となる一群★★★★
九月が近づくと燕は南方へ帰るために集まる。集まってすぐ飛び立つわけではないらしく、池の面や川面
を飛んでいる。明日は帰るのだろう。この一群が帰ると日本の空は淋しくなる。

余談だが、最近では、「帰燕」の季題を出されて、燕の生態に沿って正しく詠んだ句は例えば、十句中四句くらいで、少ないそうだ。(高橋正子)

<印象派絵画展>
初秋の壁面大きくルノアール★★★
髪長くひとみは涼しルノアール★★★

多田有花
台風一過二羽の雀が電線に★★★★
台風の余りの風が山に吹く★★★
枯木ひとつ倒して台風の去りぬ★★★

小口泰與
漢薬を煎ず土瓶の残暑かな★★★
鶺鴒や彩雲利根川(とね)に留まれり★★★
赤城嶺へ雲ひと刷けや渡り鳥★★★★

廣田洋一
桃の香にひかれ売場に立ち寄りぬ★★★★
手に乗せし桃の香りを吸ひこめり★★★
水蜜桃最後に種をしゃぶりけり★★★

桑本栄太郎
青空の雲の途切れや野分過ぐ★★★
ゆさゆさと揺れて香りぬ稲穂かな★★★★
稲穂垂る街の田圃にモノレール★★★

8月24日(5名)

多田有花
嵐近づく秋蝉のなお盛ん★★★★
嵐来るなかを去り行く秋の蝶★★★
台風の目は三百キロの沖にあり★★★

小口泰與
台風の雲色色や山は蒼★★★★
台風が来る前であろう。風の影響を受けてかいろいろな雲があり、動きも様々。山は泰然として蒼い。山の蒼さが雲の様々を引き立て、大きな自然を感じさせてくれる。(高橋正子)

同胞の各各老いて天高し★★★
カンナ咲く村の真中の鍛冶屋かな★★★

廣田洋一
秋天へぐいぐい伸びる雑草魂★★★
秋天に白き航路や飛行雲★★★

秋天の流れる如き富士の峯(原句)
文語なら「流るる如き」となります。「峰」は尾根の突き出た部分を指します。

秋天に流るる如し富士稜線★★★★(添削)

桑本栄太郎
稲の香や乙訓郷に風生るる★★★★
風があれば、稲の香がよく香る。稲穂もさざめく。乙訓の里の実りの秋がよく詠まれている。(高橋正子)

柿畑の柿の実いよよ天を向く★★★
青き実の小枝襤褸や野分跡★★★

古田敬二
新涼や飛騨の川面の風の道★★★
カナカナが彼方にかすか夕暮れる★★★
初紅葉病院前のポプラから★★★★

8月23日(5名)

小口泰與
清らかな野川や鳥と鰯雲★★★★
鰯雲が空に広がり、鳥が囀る。野川は清らかに流れる。ふるさとは麗しきかな。(高橋正子)

カーテンの色変えにけり秋の蝉★★★
常連の客の占めたり月見豆★★★

多田有花
野分来る山肌駆ける雲の影★★★★
南海の嵐から来る秋暑かな★★★
青空に台風近づく風の音★★★

廣田洋一
人気取りお化け南瓜を持ち込みぬ★★★
出刃の背を何度も叩き南瓜割る★★★
南瓜煮る種を集める子等の居て★★★★

古田敬二
早風呂を済ませ二人の零余子飯★★★★
子どもたちも独立し、夫婦二人の暮らし。早風呂を済ませ、零余子飯の夕飯をいただく。清潔で、つましい、心豊かな暮らし。
アメリカの小説(題名は失念)に、老婦人が庭からレタスを採ってきて、きれいに洗い、丁寧にちぎって食事をする場面があったのを思い出した。アメリカは初めピューリタンが移住したから、そんな暮らしがあったのだろうと思ってみたりもした。(高橋正子)

二人して食む幸せの零余子飯★★★
大きめの零余子は零れるものと知る★★★

桑本栄太郎
突然の突風来たり野分来る★★★
雲奔り風の軋むや野分来る★★★
日もすがらテレビ報すや野分荒れ★★★★

8月22日(4名)

小口泰與
初秋や雲駆け上がる赤城山★★★★
石階へ湯の香漂う木槿かな★★★
湖へ差すつれなき朝日秋の風★★★

多田有花
山下りて熟れし早稲田の中帰る★★★★
山を下りると山とは違う景色は田んぼがあること。早稲田の中を帰るとき、平地の実り、平地の生活の温みを感じる。(高橋正子)

秋茄子の規格外れをいただきぬ★★★
むかし人通いし峠秋の風★★★

廣田洋一
露草や耳立てて聞く風の音★★★★
露草の青が空気を澄ませる。涼しい風が来そうだ。耳を立てて風の音を聞く。繊細な感覚。(高橋正子)

露草や朝の雫を光らせて★★★
露草の雨に打たれて怯まざる★★★

桑本栄太郎
赤とんぼ辻に集いて浮かび居り★★★★
小諸なる馬子唄峰に藤村忌★★★
干上がりし中州となりぬ秋旱★★★

8月21日(4名)

小口泰與
花芙蓉次つぎ山は雲を生み★★★★
雨後の朝日は邪険にも秋の風★★★
花芙蓉利根の白波日日変わり★★★

多田有花
稜線の傾斜を登る風は秋★★★
頂の昼食に来る秋の蝶★★★★
頂には、蝶や蜻蛉などが意外といるようだ。秋山の頂の爽やかな昼ご飯に蝶が訪ねてくる。下界の喧騒を離れて、たのしい頂のひとときである。(高橋正子)

秋の陽の香りあふれる頂に★★★

桑本栄太郎
発電のプロペラ高く秋暑し★★★
葉の空きし桜並木やうす紅葉★★★★
林火忌の蝉の声止む日照雨かな★★★

廣田洋一
アジア大会記録に迫る台風かな★★★

台風や目玉連ねて近づきぬ(原句)
台風の目や連なって近づけり★★★(正子添削)

台風来電車動くを祈りけり★★★★

自由な投句箱/8月11日~20日


※当季雑詠3句(秋の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/8月11日~20日


8月20日(1句)

★秋蝉や目覚めて遠き少年期/桑本栄太郎
秋蝉はどこか淋しく、遠くへ思いを誘うような鳴き方をする。秋蝉が鳴く中、昼寝から目覚めると、遠く少年のころへ誘われる気持ちになったのだ。(高橋正子)

8月19日(2句)

★奥利根の水まろまろと蕎麦の花/小口泰與
奥利根の「水まろまろ」と「蕎麦の花」の取り合わせがいい。奥利根の景色が思い浮かぶ。(高橋正子)

★富士暮れて港に花火始まれる/川名ますみ
富士山が遠く暮れてシルエットとなり、港には花火が揚がる。素敵な眺めで、シチュエーションがいい。(高橋正子)

8月18日(2句)

★朝靄の晴れて確たり稲穂垂る/桑本栄太郎
立ち籠めていた朝靄がきれいに晴れて、稲田には稲穂が垂れている。「晴れて確たり」は的確で見事な表現だ。(高橋正子)

★参道に萩の花咲く妻の墓/廣田洋一
亡き妻を思う優しい句。(高橋正子)

8月17日(1句)

★秋海棠赤城九峰朱に染まり/小口泰與
「秋海棠」が初秋の空気を句全体に広げ、朝焼けの赤城の峰々を力強く浮かばせた。(高橋正子)

8月16日(2句)

★花葛や一直線の湖の径/小口泰與
湖への径が一直線で、花葛が咲き垂れている。「一直線」すっきりとして初秋の気配をよく感じさせている。(高橋正子)

★送り火やしんがりを行く長男よ/廣田洋一
送り火を焚き盆に返ってきた御霊を送る。御霊のしんがりがご長男であるのは、思いを深くさせられる。(高橋正子)

8月15日(1句)

★爽やかな朝の厨の音聞こゆ/小口泰與
朝の厨の音と言えば、葱を刻む音、食器を並べる音などを思う。爽やかな朝は厨の小さな音が澄んで、快く聞こえる。朝食のいい匂いがして来るようだ。(高橋正子)

8月14日(1句)

★盆か路傍に白き百合供え/多田有花
盆を迎える習わしは、地方で少しずつちがうようであるが、家の前の路傍に白い百合が供えてある。あまりに清らかな生き生きとした白百合なので、新盆の仏を迎えるためではなかろうかと思った。(高橋正子)

8月13日(2句)

★湖へ差す朝日強きよ秋の風/小口泰與
秋の風が吹くとは言え、湖に射す朝日はまだまだ強い。朝日の勢いでもあるし、残暑の厳しさでもある。(高橋正子)

★盆の沖御魂迎えしごと晴れる/多田有花
沖の向こうはどんなであろう。晴れ渡った沖は、開かれている。盆の御魂を迎えるように。そのように感じた。(高橋正子)

8月12日(1句)

★風に乗る霧の迅しや山下る/小口泰與
「風に乗る霧の迅しや」は大自然の景色。湧きたって山を押し下る霧の様子に圧倒される。(高橋正子)

8月11日(2句)

★赤とんぼ夕陽あたれば金色に/多田有花
夕陽にあたった赤とんぼの翅が陽を反射して、金色になった。夕陽の色はまさに金。(高橋正子)

★山すその音に目覚むや威し銃/桑本栄太郎
桑本栄太郎山すそのドンという威し銃の音に目覚めた。故郷に目覚める懐かしい朝だ。(高橋正子)

8月11日~20日


8月20日(4名)

多田有花
豪雨跡越えて登りし秋の山★★★
影選び秋暑の道を歩きけり★★★
一歩ずつ新涼確かめつつ歩く★★★

小口泰與
里山や釣鐘人参そよと揺れ★★★
萩咲くや石段街のお土産屋★★★
鳳仙花夕日蹴りたる水面かな★★★

桑本栄太郎
秋蝉や目覚めて遠き少年期★★★★
秋蝉はどこか淋しく、遠くへ思いを誘うような鳴き方をする。秋蝉が鳴く中、昼寝から目覚めると、遠く少年のころへ誘われる気持ちになったのだ。(高橋正子)

産土の辻に幟や宮相撲★★★
合歓は実に手足伸びたる大姪よ★★★

廣田洋一
秋夕焼雲の一筋棚引けり★★★
秋夕焼ほつと一息山の暮★★★
秋夕焼烏飛び交ふ里の暮★★★

8月19日(5名)

多田有花
森歩く新たに涼し風の音★★★
秋晴れや六甲淡路くっきりと★★★★
秋風にはるか四国の山の影★★★

小口泰與
浅間なお秋月の出にいとまあり★★★
奥利根の水まろまろと蕎麦の花★★★★
奥利根の「水まろまろ」と「蕎麦の花」の取り合わせがいい。奥利根の景色が思い浮かぶ。(高橋正子)
訴うるチワワの眼赤のまま★★★

廣田洋一
初秋刀魚思ひの外の小ぶりなり★★★
居酒屋の煙に混じる秋刀魚の香★★★★
秋刀魚焼く厨に満つる香りかな★★★

川名ますみ
秋風を訪問ナースに教わりぬ★★★
ヘルパーもナースも秋の空気よと★★★
富士暮れて港に花火始まれる★★★★
富士山が遠く暮れてシルエットとなり、港には花火が揚がる。素敵な眺めで、シチュエーションがいい。(高橋正子)

桑本栄太郎
惜しみなく鳴き尽くすかに法師蝉★★★★
仰のけの落蝉白き腹を見せ★★★
合いの手の入りて惜しめり秋の蝉★★★

8月18日(4名)

小口泰與
花芙蓉野川の波の変りおり★★★
枝豆や隣家の灯りともりける★★★★
高原や缶ドロップの音さやか★★★

廣田洋一
道の端ぽつぽつこぼる萩の花★★★
参道に萩の花咲く妻の墓★★★★
亡き妻を思う優しい句。(高橋正子)

雨に耐え枝垂れ咲きたり萩の花★★★

桑本栄太郎
朝靄の晴れて確たり稲穂垂る★★★★
立ち籠めていた朝靄がきれいに晴れて、稲田には稲穂が垂れている。「晴れて確たり」は的確で見事な表現だ。(高橋正子)

白鷺の番と見ゆる田中かな★★★
名乗り出でしきりに惜しむ秋の蝉★★★

古田敬二
補聴器が少しざわつく秋の風★★★
角曲がる新涼届く伊吹より(原句)
角曲がり新涼届く伊吹より★★★★(正子添削)

亡き兄へ今年は一人で経を読む★★★

8月17日(5名)

小口泰與
秋海棠赤城九峰朱に染まり★★★★
「秋海棠」が初秋の空気を句全体に広げ、朝焼けの赤城の峰々を力強く浮かばせた。(高橋正子)

はみ跡や利根の落鮎いずかたへ★★★
背高泡立草田畑次つぎ治めけり★★★

多田有花
乗りあわせ驟雨の中を墓参り★★★★
西瓜囲み一年ぶりの話かな★★★
秋涼や朝の日差しの透明に★★★

桑本栄太郎
枝が鳴り窓が鳴り居り初嵐★★★★
ハイウェイの彼方に霧の峰の立つ★★★
プロペラの発電塔や秋の浜★★★

廣田洋一
門出でて清々しきゃ秋の風★★★
帰り道秋風連れてぶらぶらと★★★
シャッター街色なき風の吹き抜けし★★★

古田敬二
夕風に触れて離れて猫じゃらし★★★
かなかなの彼方にかすか夕暮れる★★★
新涼や飛騨の川面に風の道★★★

8月16日(4名)

小口泰與
おとぎり草濁りそめたる湯檜曽川★★★
きちこうや雨後の浅間の雲寄せぬ★★★
花葛や一直線の湖の径★★★★
湖への径が一直線で、花葛が咲き垂れている。「一直線」すっきりとして初秋の気配をよく感じさせている。(高橋正子)

廣田洋一
振り向かず手を上げて去る茄子の馬★★★
送り火消しテレビに写る五山の火★★★
送り火やしんがりを行く長男よ★★★★
送り火を焚き盆に返ってきた御霊を送る。御霊のしんがりがご長男であるのは、思いを深くさせられる。(高橋正子)

桑本栄太郎
おもい<鳥取へ盆帰省>
初秋の白兎海岸白き波★★★★
谷間に赤瓦屋根見ゆ盆帰省★★★
盆波や墓参の丘に入日見る★★★

川名ますみ
隣国の海苔の香散らす秋夕べ★★★
たのしさは秋の夕餉に載る土産★★★★
揚花火ビルの隙間の三角に★★★

8月15日(3名)

多田有花
夕映えが残暑の雲を照らしたり★★★
宵の風盆三日月に心地よく★★★
秋口の川に小舟が魚釣る★★★

小口泰與
爽やかな朝の厨の音聞こゆ★★★★
朝の厨の音と言えば、葱を刻む音、食器を並べる音などを思う。爽やかな朝は厨の小さな音が澄んで、快く聞こえる。朝食のいい匂いがして来るようだ。(高橋正子)

いずかたへ行くや落鮎定めなき★★★
今朝の利根いとど濁りて帰燕かな★★★

廣田洋一
亡き父のラーゲの記録終戦の日★★★
終戦日新聞閉じて黙祷す★★★★
見送りし兵士の笑顔終戦忌★★★

8月14日(3名)

小口泰與
瑕瑾無き葡萄や鴉声高き★★★
裂帛の空手の気合稲の殿★★★
巨大なる白雲立ちて野分晴★★★★

多田有花
新盆か路傍に白き百合供え★★★★
盆を迎える習わしは、地方で少しずつちがうようであるが、家の前の路傍に白い百合が供えてある。あまりに清らかな生き生きとした白百合なので、新盆の仏を迎えるためではなかろうかと思った。(高橋正子)

板金屋バーベキューする盆休み★★★
まだ雲の吹き上がりたる残暑かな★★★

廣田洋一
隣近所ワイン持ち寄り鰯焼く★★★
美しや鰯の群の流線形★★★
焼きたての鰯を配る夕餉かな★★★★

8月13日(3名)

小口泰與
湖へ差す朝日強きよ秋の風★★★★
秋の風が吹くとは言え、湖に射す朝日はまだまだ強い。朝日の勢いでもあるし、残暑の厳しさでもある。(高橋正子)

三山の容讃えて秋うらら★★★
わらべ等の指差す彼方秋の虹★★★

多田有花
盆の沖御魂迎えしごと晴れる★★★★
沖の向こうはどんなであろう。晴れ渡った沖は、開かれている。盆の御魂を迎えるように。そのように感じた。(高橋正子)

虫の音の聞こえ初めにし夜となる★★★
校庭に人無く静か盆休み★★★

廣田洋一
足下に轟音届く秋の雷★★★
用水路水の溢れて秋の雷★★★★
秋の雷向こうのビルに落ちたるか★★★

8月12日(3名)

小口泰與
いまだなお湖の朝日や秋の風★★★
風に乗る霧の迅しや山下る★★★★
「風に乗る霧の迅しや」は大自然の景色。湧きたって山を押し下る霧の様子に圧倒される。(高橋正子)

三山の容それぞれ秋うらら★★★

多田有花
盆近し車溢るる高速路★★★
遠方のナンバー増えし盆の入★★★
盆花をカートにレジに並びおり★★★★

廣田洋一
故郷の日々甦る走馬灯★★★★
年月の一瞬にすぎ走馬灯★★★
灯を点し仏と話す走馬灯★★★

8月11日(4名)

小口泰與
秋めくや魚の斑ぐいと反転す★★★
初秋や旧家の庭の草の丈★★★
あけぼのの野川の流れ秋めけり★★★★

多田有花
赤とんぼ夕陽あたれば金色に★★★★
夕陽にあたった赤とんぼの翅が陽を反射して、金色になった。夕陽の色はまさに金。(高橋正子)

新涼や希少なチケット手に入れる★★★
秋口の部屋に野鳥が迷い込む★★★

廣田洋一
花カンナそれぞれ色を自己主張★★★
老ひてなほ高き目標花カンナ★★★★
しつこしと思ふこと有りカンナの緋★★★

桑本栄太郎
山すその音に目覚むや威し銃★★★★
故郷へ帰省の句であろう。山すそのドンという威し銃の音に目覚めた。故郷に目覚める懐かしい朝だ。(高橋正子)

滞在のくすり数えり盆用意★★★
京なれや竹林よしと法師蝉★★★

自由な投句箱/8月1日~10日


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今日の秀句/8月1日~10日


8月10日(2句)

★影連れて森に消えゆく秋の蝶/多田有花
蝶が森の中へと消える。日向の影をもったまま消える秋の蝶。何かの精のようだ。(高橋正子)

★畦道へ忽と涌き出づ蜻蛉かな/小口泰與
畦道を歩いていると、辺りに忽然と蜻蛉が湧いたように現れることがある。ほんとうに、「忽」となのである。蜻蛉の世界に入ったのだ。(高橋正子)

8月9日(2句)

★いち早く秋の来ている白樺湖/小口泰與
白樺湖にはいち早く秋が来た。白樺湖の名が生きた句だ。(高橋正子)

★新涼の風吹き来たり日もすがら/桑本栄太郎
新涼の風の爽やかさ。纏える風の涼しさが。日もすがらなので、この嬉しさはこの上ない。(高橋正子

8月8日(2句)

★おにやんま頂の空をつーいつい/多田有花
このおにやんまのように振る舞いたいものだ。広々とした頂を、素知らぬ顔で、つーいつい。(高橋正子)

★溝川の水の流れや葛の花/桑本栄太郎
葛の花は八月にははや咲いている。溝川の流れの音に葛の花が垂れる秋のはじめ。秋を印象付ける葛の花を見たうれしさ。(高橋正子)

8月7日(1句)

★新刊を積みし机や秋立てり/廣田洋一
新刊書というのは、印刷の匂いも新しく、読書の心を逸らせるものだ。涼しくなったら読もうと楽しみに机上に積んである。いよいよ今日は立秋だ。(高橋正子)

8月6日(2句)

★広島忌黙祷済ませ農に出る/古田敬二
忘れてはならない地球への広島への原爆投下の日。黙祷をささげ、畑仕事にでる。平和を強く願う作者だ。(高橋正子)

★香り立つうすき白さや稲の花/桑本栄太郎
稲の花の香りがいい。稲の花はちらちらと小さく「うすき白さ」の花なのだ。上手な句だ。(高橋正子)

8月5日(2句)

★ハモニカや月のベンチを一人占め/廣田洋一
月夜のベンチ。座ってハモニカを吹く人がいる。自分の吹くハモニカの音色に浸ってベンチを一人占めなのだ。ハモニカと月にきれいで静かな世界がある。(高橋正子)

★友集い旅かばん解く夏座敷/古田敬二
友たちのとの旅は、特別に楽しいものであろう。広々とした夏座敷に、旅の鞄をほどく寛いだ気持ちがいいのだ。(高橋正子)

8月4日(1句)

★向日葵や茎伸び伸びと山隠す/小口泰與
向日葵がよく伸び育って、山を隠すほどになった。向日葵の種類はいろいろだが、ロシア向日葵などは、大きな花で存在感のある花だ。花ではなく、「茎伸び伸びと」と詠んで、茎に着目したのが面白い。読み手の体も伸び伸びするような気持ちになる。(高橋正子)

8月3日(1句)

★友よりの新豆腐まず供へけり/廣田洋一
新豆腐と聞くだけで、すずやかな気持ちになる。新豆腐の季節が巡って来て、友よりいただく。この清らかなものを供えて、感謝である。(高橋正子)

8月2日(1句)

★八月と思う朝や窓の風/桑本栄太郎
人の心理は不思議なもので、そう思うと、そのように感じられる。八月という月は、日本人にはいろいろと思い起こさせる月である。今は八月であると思うと、窓から入る風も幾分秋めいて感じられる。(高橋正子)

8月1日(句)

★朝の庭赤極まりしトマトもぐ/古田敬二
「赤極まりし」とまでに熟れたトマト。瑞々しくて、はち切れそうだ。自家菜園の楽しみを率直に無駄なく詠んだのがいい。(高橋正子)

★向日葵やちらちら見える白きシャツ/廣田洋一
向日葵が林のようにたっている向こうに白いシャツがちらちら見える。畑仕事をしている人か。単に通り過ぎる白シャツの人か。向日葵と白シャツは生き生きと健康的な取り合わせだ。(高橋正子)

8月1日~10日


8月10日(4名)

多田有花
大風の吹き渡る後空澄む日★★★
影連れて森に消えゆく秋の蝶★★★★
蝶が森の中へと消える。日向の影をもったまま消える秋の蝶。何かの精のようだ。(高橋正子)

秋の雲数多の影を落としたり★★★

小口泰與
畦道へ忽と涌き出づ蜻蛉かな★★★★
畦道を歩いていると、辺りに忽然と蜻蛉が湧いたように現れることがある。ほんとうに、「忽」となのである。蜻蛉の世界に入ったのだ。(高橋正子)

犬も老い家も古りたり庭の秋★★★
サヌカイトの余韻長きや涼新た★★★

桑本栄太郎
見つければ次々上に蝉の殻★★★★
息急くや初鳴きしたる法師蝉★★★
かなかなの空の暮れ行く挽歌かな★★★

廣田洋一
年を経し痔瘻の根治カンナ咲く★★★
甲子園女子もベンチに天高し★★★★
捜索にヘリ飛び立ちぬ空高し★★★

8月9日(4名)

古田敬二
突然に畑が喜ぶ大驟雨★★★★
秋立つや風呂の温度を二度上げる★★★
蟻地獄築後百年縁の下★★★

小口泰與
初秋や利根の岸辺の草の丈★★★
峠はやとっぷり暮れて蕎麦の花★★★
いち早く秋の来ている白樺湖★★★★
白樺湖にはいち早く秋が来た。白樺湖の名が生きた句だ。(高橋正子)

廣田洋一
店の隅売り出されをる秋簾★★★★
色くすみ巻きて捨てられ秋簾★★★
一枚は巻かれてをりぬ秋簾★★★

桑本栄太郎
新涼の風吹き来たり日もすがら★★★★
新涼の風の爽やかさ。纏える風の涼しさが。日もすがらなので、この嬉しさはこの上ない。(高橋正子)

鳩吹くやいつも鳴き居り腹の虫★★★
寂しさにラヂオ枕に夜半の秋★★★

8月8日(5名)

多田有花
秋立ちぬ木々を揺らして強き風★★★
手を合わすこと多かりし八月は★★★
おにやんま頂の空をつーいつい★★★★
このおにやんまのように振る舞いたいものだ。広々とした頂を、素知らぬ顔で、つーいつい。(高橋正子)

小口泰與
百日紅夕映えの紅奪いけり★★★
山風に一句浮かびて夏の果★★★★
初秋や庭の芝刈りあと幾度★★★

廣田洋一
縄張りを終えし更地に秋の風★★★
蔓草を大きく揺らす初嵐★★★
半袖に心地良きかな秋の風★★★★

桑本栄太郎
溝川の水の流れや葛の花★★★★
葛の花は八月にははや咲いている。溝川の流れの音に葛の花が垂れる秋のはじめ。秋を印象付ける葛の花を見たうれしさ。(高橋正子)

かなかなや故郷すでに遠くなり★★★
金色の雲の茜や秋立ちぬ★★★

古田敬二
立秋やインクの匂う俳誌買う★★★★
秋立つ日ピクルス美味くでき上がる★★★
秋立てば地下鉄階段歩いて登る★★★

8月7日(4名)

小口泰與
夏草のいたずらに生う旧家かな★★★
白鷺や棚田の水のいずかたへ★★★★
古里は何処や蝦蟇の出づる峠★★★

廣田洋一
秋立ちぬ頬なでる風ひんやりと★★★
新刊を積みし机や秋立てり★★★★
新刊書というのは、印刷の匂いも新しく、読書の心を逸らせるものだ。涼しくなったら読もうと楽しみに机上に積んである。いよいよ今日は立秋だ。(高橋正子)

立秋の風にゆらゆら猫じゃらし★★★

川名ますみ
うすうすと雲ほぐれたり秋近し★★★
秋隣小さき雲らに夕映す★★★★
どのビルも西日に白く照り映ゆる★★★

桑本栄太郎
秋立つと思えば風の哀しさよ★★★
鬱蒼と古墳の森や蝉しぐれ★★★★
爽籟やカーテン吹き上ぐ今朝の風★★★

8月6日(5名)

多田有花
重き髪切りて軽々秋隣★★★★
炎天も厭わず車整備中★★★
法螺貝が森に響きし夏の果★★★

小口泰與
晩夏なり馬車ひく馬の脚太し★★★
炎天や利根の支流の岩数多★★★★
はんざぎや見詰めあいたる杣の渓★★★

廣田洋一
じじじつと鳴きて終わりぬ蝉の声★★★
落蝉やゆっくり歩き去らんとす★★★
夢に見し母の生家や蝉時雨★★★★

古田敬二
広島忌黙祷済ませ農に出る★★★★
忘れてはならない地球への広島への原爆投下の日。黙祷をささげ、畑仕事にでる。平和を強く願う作者だ。(高橋正子)
日照りにも負けず根を張る草を抜く★★★
水遣れば飛ぶがごとくに白鷺草★★★★

桑本栄太郎
香り立つうすき白さや稲の花★★★★
稲の花の香りがいい。稲の花はちらちらと小さく「うすき白さ」の花なのだ。上手な句だ。(高橋正子)

十字架の塔の高さよ百日紅★★★★
水を乞い水に悩みぬ広島忌★★★

8月5日(5名)

多田有花
ほうじ茶の熱きを飲みぬ熱帯夜★★★
雑草すらも立枯れとなる酷暑★★★
炭酸水喉に弾けて飲み干しぬ★★★★

小口泰與
白雲を背負う青嶺や鳥の声★★★★
幾そたび芝を刈たる夏の果★★★
向日葵や鋼の車内熱百度★★★

廣田洋一
夏の月風に乗り来る太鼓の音★★★
笛の音の低く流れる月の街★★★

ハモニカや月のベンチを一人占め★★★★
月夜のベンチ。座ってハモニカを吹く人がいる。自分の吹くハモニカの音色に浸ってベンチを一人占めなのだ。ハモニカと月にきれいで静かな世界がある。(高橋正子)

桑本栄太郎
夏草の白き葉裏や午後の土手★★★
中州なる白き砂洲あり旱川★★★
玄関の扉を残し蔦茂る★★★★

古田敬二
歌い手も聴き手も汗のコンサート★★★
友集い旅かばん解く夏座敷★★★★
友たちのとの旅は、特別に楽しいものであろう。広々とした夏座敷に、旅の鞄をほどく寛いだ気持ちがいいのだ。(高橋正子)

今日もまた列島を焼く陽が登る★★★

8月4日(5名)

小口泰與
風鈴や奏づる音はサヌカイト★★★
向日葵や茎伸び伸びと山隠す★★★★
向日葵がよく伸び育って、山を隠すほどになった。向日葵の種類はいろいろだが、ロシア向日葵などは、大きな花で存在感のある花だ。花ではなく、「茎伸び伸びと」と詠んで、茎に着目したのが面白い。読み手の体も伸び伸びするような気持ちになる。(高橋正子)

冷酒や湖畔を揺らす竹あかり★★★

廣田洋一
背高きコスモス揺れて風を知る★★★
捨畑のコスモス風と遊びをり★★★★
秋桜遠くに見ゆる湖青し★★★

多田有花
糞一閃青鷺ついと飛び立ちぬ★★★
夏野菜たっぷり入れてラタトゥイユ★★★
揚羽蝶山ゆく道のまえうしろ★★★★

古田敬二
日記終え猛暑の明日へ備え寝る★★★
歯科医院へ炎帝に負けている歩幅★★★
信号を待つ間に行き交うオニヤンマ★★★★

桑本栄太郎
開け放つ窓より夜気や夜の秋★★★
かなかなの早やも鳴き初む朝まだき★★★
かなかなのかなに終わりぬ没日かな★★★★

8月3日(5名)

多田有花
段ボールに汗の滴る宅配夫★★★
夏深き風に吹かれて頂に★★★★
秋隣る梢となりて風を受く★★★

小口泰與
生まれ出づ雲慌し時鳥★★★
石橋の灯りて街の晩夏かな★★★★
ラベンダー茎くっきりと咲きにけり★★★

廣田洋一
友よりの新豆腐まず供へけり★★★★
新豆腐と聞くだけで、すずやかな気持ちになる。新豆腐の季節が巡って来て、友よりいただく。この清らかなものを供えて、感謝である。(高橋正子)

新豆腐新たな醤油香りけり★★★
隣町の古き豆腐屋新豆富★★★

桑本栄太郎
しみじみと木蔭を見上ぐ蝉の殻★★★
木より木へ伝つて直ぐに蝉しぐれ★★★★
落蝉の落ちて羽ばたく木陰かな★★★

古田敬二
百日紅揺れ初め風の夕となる★★★
夏草や三日来るまの忘れ鎌★★★
「三日来るま」は、「三日見ぬ間の桜」の言いぐさがありますが「三日来ぬま(間)の」ではないでしょうか。

バケットにトマトと胡瓜と茄子の色★★★★

8月2日(5名)

小口泰與
雨後の朝ひと塊のだりあかな★★★
石階を上り湯宿や不如帰★★★
汽罐車の蒸気いそがし夏燕★★★★

多田有花
珈琲入れるつくつくぼうし鳴き始む(原句)
珈琲淹れるつくつくぼうし鳴き始め★★★★(正子添削)

数学の本を机上に秋を待つ★★★
ベランダで火星を探す夜の秋★★★

廣田洋一
澄みし空富士の稜線秋めけり
「澄みし空」、「秋めけり」は、やはり、季語に矛盾を感じます。「澄みし空」のところを工夫したいです。(高橋正子)

目覚めたる部屋の明るさ秋めけり★★★★
お茶請けに漬物出して秋めけり★★★

桑本栄太郎
八月と思う朝や窓の風★★★★
人の心理は不思議なもので、そう思うと、そのように感じられる。八月という月は、日本人にはいろいろと思い起こさせる月である。今は八月であると思うと、窓から入る風も幾分秋めいて感じられる。(高橋正子)

古田敬二
仕切り戸は黒光りして夏座敷★★★★
夏座敷仕切り戸すべて黒光り★★★
夕風に花房重く百日紅★★★

8月1日(5名)

小口泰與
野良犬の炎暑を歩む長き舌★★★
利根川の岩の乾びて翡翠かな★★★★
雷鳴の空美しや夕支度★★★

多田有花
ひとりゆく森吹く風の秋近し★★★
白蓮の蕾に迫る午後の影★★★
空蝉の横たわる地を踏まずゆく★★★★

古田敬二
朝の庭赤極まりしトマトもぐ★★★★
「赤極まりし」とまでに熟れたトマト。瑞々しくて、はち切れそうだ。自家菜園の楽しみを率直に無駄なく詠んだのがいい。(高橋正子)

庭からのトマト朝餉の皿に盛る★★★
夕風の梢近きに蝉の啼く★★★

桑本栄太郎
想い出を数多連れ来る八月に★★★
また一つ木蔭にありぬ蝉の穴★★★★
仰のけに白き腹見せ蝉の落つ★★★

廣田洋一
鷺草や南に向かひて咲きにけり★★★
向日葵やちらちら見える白きシャツ★★★★
向日葵が林のようにたっている向こうに白いシャツがちらちら見える。畑仕事をしている人か。単に通り過ぎる白シャツの人か。向日葵と白シャツは生き生きと健康的な取り合わせだ。(高橋正子)

富士と言えど五合目からは只の山★★★