自由な投句箱/5月21日~28日


生き生きと、みずみずしい俳句を期待しています。

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今日の秀句/5月21日~31日


5月31日(1句)

★ぽつぽつと日ごとに増えし浮葉かな/多田有花
「浮葉」とは、蓮の根茎から出てしばらく浮いている新葉。「ぽつぽつ」と飛び石のように浮いている幼い浮葉だが、見ていると日ごとに増えている。浮葉と水の張りが見せる涼しい景色だ。(高橋正子)

5月30日(1句)

★多佳子忌のやはずゑんどう笛に吹く/桑本栄太郎
多佳子忌は、橋本多佳子の忌日で5月29日。多佳子忌は多くの俳人に詠まれているが、どのような情景を詠んでも不釣り合いな句はないほどだ。私見としては、5月29日という日の季節がそうさせるのではと思う。この句の「やはずゑんどう」は一般的には「からすのえんどう」と呼ばれ、若い莢の両端を切って草笛にしたり、実を採ったあとの空莢を笛にしたしする。「やはずゑんどう」は、強いて言えば、多佳子の生きていた時代を暗示していると思える。そういった取り合わせの、形の整った句だ。(高橋正子)

5月29日(1句)

★松葉菊石垣覆ひ乱れ咲き/廣田洋一
石垣を覆うように咲く松葉菊は、太陽の光をうけ、ぴかぴかと輝く。「乱れ咲く」旺盛な繁殖力がある。ありのままの写生句で、イメージが鮮明で句意が真直ぐ伝わる。(高橋正子)

5月28日(1句)

★甘酒や術後の痛み少し癒え/廣田洋一
甘酒のとろりとした甘さがじんわり体に伝わって暑気が払えるようだ。術後の痛みも少し癒してくれるようだ。(高橋正子)

5月27日(1句)

★薫風や歓声上がるラフティング/小口泰與★★★★
泰與さんは、利根川でのラフティングの写真を連日のようにフェイスブックに投稿している。それを見ると、ラフティングは躍動感あふれる水のスポーツだ。薫風を受けて歓声があがる。歓声は、水しぶきと風に紛れて岸辺まで飛んでくる。(高橋正子)

5月26日(1句)

★清流の渦より釣りし山女かな/廣田洋一
清流が渦巻きながら流れている。水の勢いが見える。その渦から釣り上げられた山女の淡い側線に沿う虹色が耀きが見えるようだ。「渦」でこの句が生きた。(高橋正子)

5月25日(1句)

★頂や若葉と我と風の中/多田有花
頂の見晴らしの良さ。辺りは若葉。それに快い風が吹く。すがすがしいさわやかな季節が素直に詠まれている。(高橋正子)

5月24日(1句)

★火の山は彼方に見えし花蜜柑/小口泰與
蜜柑と言えばあたたかい地方を思う。火の山のある暖かいところと言うと、熊本が思い浮かぶ。違ったとしても、火の山と花蜜柑の取り合わせがいい。(高橋正子)

5月23(1句)

★衣替新しき風通り抜け/廣田洋一
衣替えると体だけでなく、心も軽くなる。「新しき風」は、そんな心持を表している。さわやかで、平明な句だ。(高橋正子)

5月22日(2句)

★採石の島はつ夏の陽のなかに/多田有花
石切り場のある島は、石が切り取られていく一本の草木もない石の山肌が夏の陽に輝いている。特異な景色だ。瀬戸内海の大島なども御影石を切り出す島で、山が石で出来ていて、少し違う感覚になる。(高橋正子)

★軒高き祇園の路地や簾吊る/桑本栄太郎
簾が吊られる光景は様々。この句の簾は、軒高き祇園の路地。路地にそって高くより吊られた簾は、祇園の夏の風情を醸し出している。「軒高き」が効いている。(高橋正子)

5月21日(1句)

★新たしき靴のかろきや若葉風/小口泰與
新しいものを身に着けるときは、多少着心地や履き心地が悪かったりするときもあるが、この靴はすっと足に馴染んで、かろやかに歩ける。若葉風を受けて、足取りも軽く歩く楽しさが、いい。(高橋正子)

5月21日~31日


5月31日(4名)

小口泰與
鉄線の風にふくらむ蕾かな★★★
青蘆や渓流釣の宙の鉤★★★ 
夏燕利根急流のラフティング★★★★

多田有花
ナイターテニス雲間隠れの夏の月★★★
ぽつぽつと日ごとに増えし浮葉かな★★★★
「浮葉」とは、蓮の根茎から出てしばらく浮いている新葉。「ぽつぽつ」と飛び石のように浮いている幼い浮葉だが、見ていると日ごとに増えている。浮葉と水の張りが見せる涼しい景色だ。(高橋正子)

蛍光灯ともし真昼の驟雨かな★★★

廣田洋一
日日草花芯の赤く光りをり★★★
日日草昨日の花は消されけり★★★★
群れなせば華やかなりき日日草★★★

桑本栄太郎
妻出掛けひとり昼餉や五月尽★★★
梅雨の雷夢の途中に目覚めけり★★★
風立つや音の激しく雷雨来る★★★

5月30日(3名)

小口泰與
若竹や客は一人の無人駅★★★★
筆をもて雨の中なる白菖蒲★★★
筆をもて描く雨の白菖蒲(正子添削)
遠山は靄に沈みし青葉光★★★

廣田洋一
磁器のごと透き通る色ダリアかな★★★
ポンポンダリア乳母車より手の伸びて★★★★
店先の一鉢残るダリアかな★★★

桑本栄太郎
同窓会の返信来たる五月尽★★★
多佳子忌のやはずゑんどう笛に吹く★★★★
多佳子忌は、橋本多佳子の忌日で5月29日。多佳子忌は多くの俳人に詠まれているが、どのような情景を詠んでも不釣り合いな句はないほどだ。私見としては、5月29日という日の季節がそうさせるのではと思う。この句の「やはずゑんどう」は一般的には「からすのえんどう」と呼ばれ、若い莢の両端を切って草笛にしたり、実を採ったあとの空莢を笛にしたしする。「やはずゑんどう」は強いて言えば、多佳子の生きていた時代を暗示していると思える。そういった取り合わせの、形の整った句だ。(高橋正子)

京なればその名忘れじみやこ草★★★

5月29日(3名)

小口泰與
えごの花山峡の子等黒黒と★★★
麦秋や上州人は気の荒き★★★
口ずさむ高野の唱歌くわ苺★★★★

廣田洋一
松葉菊石垣覆ひ乱れ咲き★★★★
石垣を覆うように咲く松葉菊は、太陽の光をうけ、ぴかぴかと輝く。「乱れ咲く」旺盛な繁殖力がある。ありのままの写生句で、イメージが鮮明で句意が真直ぐ伝わる。(高橋正子)

葉と花と太めの美女や松葉菊★★★
陽のかげり眠そうに見ゆ松葉菊★★★

桑本栄太郎
かぐわしき香りを風に花うばら★★★★
心地良き風の木蔭の散歩かな
※「木蔭」は、季語ではありませんのでご注意ください。(高橋正子)

まま事の貴方と呼ばう多佳子の忌★★★

5月28日(4名)

多田有花
羅の僧侶木陰でスマホ中★★★
とりどりの薔薇に囲まれ美容室★★★★
絹莢へ卵の黄色鮮やかに★★★

小口泰與
花桐や巨石横切る二羽の鳥★★★
枝先に脚を踏ん張る雨蛙★★★
ハンカチの花や赤城の星包み
「ハンカチ(の花)」だから「包み」が発想されたのでしょうが、無理があります。

廣田洋一
一夜酒一口啜る夕餉前★★★
甘酒や生姜加えてとろみ増す★★★
甘酒や術後の痛み少し癒え★★★★
甘酒のとろりとした甘さがじんわり体に伝わって暑気が払えるようだ。術後の痛みも少し癒してくれるようだ。(術後いかがですか。くれぐれもお大事にお過ごしください。)(高橋正子)

桑本栄太郎
頂きの風のうねりや山法師★★★
色褪せて来たる頃なり花卯木★★★
植田早や夕日を抱く山の影(原句)
植田の水に夕日を抱く山の影★★★★(正子添削)

5月27日(4名)

小口泰與
緑陰や御点前の茣蓙敷かれ居る★★★
薫風や歓声上がるラフティング★★★★
泰與さんは、利根川でのラフティングの写真を連日のようにフェイスブックに投稿している。それを見ると、ラフティングは躍動感あふれる水のスポーツだ。薫風を受けて歓声があがる。歓声は、水しぶきと風に紛れて岸辺まで飛んでくる。(高橋正子)

全身を櫂にゆだねし椎若葉
この句では、全身を櫂にゆだねたのは、「椎若葉」となっています。

多田有花
青年ら若葉の下をランニング★★★★
キャンピングカーを若葉の下に停め★★★
薔薇咲かせ炭火焙煎珈琲店★★★

廣田洋一
何気なく冷麦茹でるお昼時★★★
冷麦や彩り豊か紅生姜★★★★
冷麦や一口の山並びをり★★★

桑本栄太郎
来る来ない花びら毟るマーガレット★★★
足音を聞いて寄り来る緋鯉かな★★★
恋し初めあの娘ばかりに草矢打つ★★★★

5月26(4名)

小口泰與
今年ほど薔薇を撮りたる事はなき★★★
杣道の泉や背後笹の音★★★★
万緑や三国峠の二居川★★★

廣田洋一
清流の渦より釣りし山女かな★★★★
清流が渦巻きながら流れている。水の勢いが見える。その渦から釣り上げられた山女の淡い側線に沿う虹色が耀きが見えるようだ。「渦」がいい。(高橋正子)

また一人上り来れる山女釣り★★★
木漏れ日に背を光らせる山女かな★★★

桑本栄太郎
迫り出して瀬音聞きたり谷卯木★★★★
心地良き風の木蔭や紫蘭咲く★★★
平らかに風に乗り居り山法師★★★

5月25(4名)

小口泰與
会議でも寡黙の人や柿の花★★★
広角のレンズに映す新樹かな★★★
若葉風裾野の長き赤城山★★★★

多田有花
快晴の若葉くぐれば頂に★★★
蜘蛛の糸光りて流る若葉より★★★
頂や若葉と我と風の中★★★★
頂の見晴らしの良さ。辺りは若葉。それに快い風が吹く。すがすがしいさわやかな季節が素直に詠まれている。(高橋正子)

桑本栄太郎
校門の木蔭となりぬ桜の実★★★
学び舎の昼のチャイムや夏日さす★★★★
風受けて風に乗りたり山法師(原句)
風受けて風に浮きたり山法師★★★(正子添削)
「風に乗る」は「風に乗って運ばれゆく」意味が強いです。山法師の花が飛んでいったのではないでしょうから、「浮く」が適切と思います。

廣田洋一
裸にて鬼を踏みつけ仁王様★★★
裸にて衆生済度のお釈迦さま★★★
裸子や四つん這いにて笑顔見せ★★★★

5月24(4名)

小口泰與
火の山は彼方に見えし花蜜柑★★★★
蜜柑と言えばあたたかい地方を思う。火の山のある暖かいところと言うと、熊本が思い浮かぶ。違ったとしても、火の山と花蜜柑の取り合わせがいい。(高橋正子)

花栗や土砂満杯のダンプカー★★★
花蜜柑昔偲ばんクラス会★★★

多田有花
亀出でて五月の光全身に★★★
夢うつつ夜も聞こえし時鳥★★★★
紅白の山法師咲く山の寺★★★

廣田洋一
紫陽花や色あでやかな雨上がり★★★★
紫陽花の色付きたりし一樹かな★★★
薔薇の木や香りほのかな街の角★★★

桑本栄太郎
若葉吹く甍きらめく在所かな★★★★
目覚めても未だ明るし夕薄暑★★★
祈ることの日々に多かり五月憂し★★★

5月23(4名)

小口泰與
葉桜や中仙道の蔵の街★★★★
雨後の薔薇お辞儀したまま崩れけり★★★
木造の校舎何処や七変化★★★

古田敬二
少子化はメダカにはなし抱卵す★★★
半寸の風格メダカ身ごもれり★★★
堂々と泳ぐメダカの抱卵す★★★★

廣田洋一
衣替一足先にクールビズ★★★
棄てられぬ思い出有りて衣替★★★
衣替新しき風通り抜け★★★★
衣替えると体だけでなく、心も軽くなる。「新しき風」は、そんな心持を表している。さわやかで、平明な句だ。(高橋正子)

桑本栄太郎
雨に濡れ色変え箱根卯木かな★★★
坊主等の急かすレースやかたつむり★★★
容なき水のかたちや滝落つる★★★★

5月22(4名)

小口泰與
萍や赤城の鳥の喧し★★★
藻の中を回遊せしや白目高★★★
斑猫や浅間は夕日近づけず★★★★

多田有花
採石の島はつ夏の陽のなかに★★★★
石切り場のある島は、石が切り取られていく一本の草木もない石の山肌が夏の陽に輝いている。特異な景色だ。瀬戸内海の大島なども御影石を切り出す島で、山が石で出来ていて、少し違う感覚になる。(高橋正子)

五月晴れ四国を望む山頂に★★★
夕焼にカーブを描く飛行機雲★★★

廣田洋一
苺二つ赤く光れるプランター★★★★
苺盛りミルクはつけぬ子の多し★★★
親をまね苺ジャム塗るトーストかな★★★

桑本栄太郎
軒高き祇園の路地や簾吊る★★★★
簾が吊られる光景は様々。この句の簾は、軒高き祇園の路地。路地にそって高くより吊られた簾は、祇園の夏の風情を醸し出している。「軒高き」が効いている。(高橋正子)

天王山に甍きらめき若葉吹く★★★
山すそに傾ぎ垂れり竹の秋★★★

5月21日(4名)

多田有花
はつなつの海の青さを見渡せる★★★★
六甲の稜線青き夏はじめ★★★
風薫る頂沖を船がゆく★★★

小口泰與
明時の置鉤あぐや梅雨鯰★★★
新品の靴のかろきや若葉風(原句)
「新品」が、この句を俗にしています。
新たしき靴のかろきや若葉風★★★★(正子添削)
新しいものを身に着けるときは、多少着心地や履き心地が悪かったりするときもあるが、この靴はすっと足に馴染んで、かろやかに歩ける。若葉風を受けて、足取りも軽く歩く楽しさが、いい。(高橋正子)
上野毛の風荒荒し夏木立★★★
 
廣田洋一
小さき毬白く咲きたる四葩かな★★★★
紫陽花や色無く咲きて雨を待つ★★★
紫陽花や流れる雲に雨ねだる★★★

桑本栄太郎
リタイアの老の集いや夏帽子★★★★
沙羅の花咲いて気高き建仁寺★★★
もろ手挙げ若竹天に至りけり★★★

自由な投句箱/5月11日~20日


生き生きと、みずみずしい俳句を期待しています。

※当季雑詠3句(夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/5月11日~20日


5月20日(1句)

★ほととぎす葉擦れの音に鳴き続く/多田有花
山の中に入って聞くほととぎすは、また格別。その声に野性味が聞かれる。心地よい風が葉を揺らし、ほととぎすの一声ごとに、緑が深くなるように思える。(高橋正子)

5月19日(1句)

★貧しくも楽し夕餉麦の飯/廣田洋一
麦飯が普段の食事だったのは、戦後いつまでだったのだろうか。まだ大家族で、みんなが貧しく、戦争が終わったという明るさと希望があった。「貧しくも楽しき夕餉」に子供のころを思い出した。(高橋正子)

5月18日(1句)

★噴水にやわらかき水硬き水/小口泰與
噴水の水を眺めている。勢いあって噴きあがる水。砕けるように落ちる水。高く、あるいは低く、遠く、近く、という具合に様々な姿を見せる噴水の水だ。わやらかき水、硬い水とも言えよう。涼しそうな、生き生きとした噴水の水が詠まれた。(高橋正子)

5月17日(1句)

★せせらぎや森の中より夏灯/小口泰與
一句の末尾に置いた「夏灯(なつともし)」がいい。季題がまさに季題となって、佳句となった。俳句のおける「季」の重要性を確認する佳句となった。(高橋信之)

5月16日(1句)

★桜の実青赤黒と成りてをり/廣田洋一
中7の「青赤黒」は、日常語的な表現だが、そのことが却って「桜の実」を捉えるに成功した。日頃の精進が良いのだ。(高橋信之)

5月15日(1句)

★青き空華やぎ咲けるさつきかな/廣田洋一
日常的な言葉を使って、よく見かける風景をくっきり鮮やかに詠んだ。この当たり前の景色をにを切り込んで読むのは難しいが佳句となった。(高橋正子)

5月14日(1句)

★稜線を離れ田植の村に下り/多田有花
山の稜線を伝って来たが、稜線を離れて下ると、田植えをしている村に出た。田植えの最中に出会うのも
面白いことだ。田植えに出会うことは本当に少なくなった。昭和時代の田植えが懐かしい。(高橋正子)

5月13日(1句)

★青空に葉色透きたる若葉かな/桑本栄太郎
若葉が青空に広がり、日の光を透かして明るく見えるところがあって、その若葉の色が特に美しい。そういう若葉を愛でた句。(高橋正子)

5月12日(1句)

★山からの清水に洗う早苗籠/多田有花
山から清水が流れ入る田。早苗を植え終わり、苗籠を清水で洗う。心が静かに洗われる句だ。(高橋正子)

5月11日(2句)

★サッカーボール若葉の高さに蹴り上げる/多田有花
サッカーボールが蹴りあがって若葉の高さまであがった。思わぬ高さにわあーという喚声が聞こえそうだ。「若葉の高さ」は、季節の清々しさを思わせてくれる。(高橋正子)

★夏迎え空に小さき放れ雲/桑本栄太郎
夏が来て、空に小さい雲が大きい雲を離れてぽかっと浮かぶ。小さい雲はこれから遊びに行くのか。夏空の楽しさ、雲の軽さ、ひいては作者の心の軽さが窺える句。(高橋正子)

5月11日~20日


5月20日(4名)

多田有花
山路ゆく遠く近くにほととぎす★★★
薫風の河川敷にて草野球★★★
ほととぎす葉擦れの音に鳴き続く★★★★
山の中に入って聞くほととぎすは、また格別。その声に野性味が聞かれる。心地よい風が葉を揺らし、ほととぎすの一声ごとに、緑が深くなるように思える。(高橋正子)

廣田洋一
どくだみやイメージ合わぬ白十字★★★
どくだみや辺り清める白十字★★★★
庭の隅十薬の花際立てり★★★

小口泰與
瀬頭に白き波立ちほととぎす★★★★
生垣を突き抜き道へ今年竹★★★
大岩へ居座る河鵜夕日影★★★

桑本栄太郎
大橋のはるか比叡や若葉山★★★★
軒高き花見小路や五月晴★★★
隠しても色に出で居り花卯木★★★

5月19日(3名)

小口泰與
かの時の夢の切れ目や昼寝覚★★★
秋櫻子の名づけし渓の河鹿かな★★★
石楠花や赤城の空の青あおと★★★★

廣田洋一
貧しくも楽しき夕餉麦の飯★★★★
麦飯が普段の食事だったのは、戦後いつまでだったのだろうか。まだ大家族で、みんなが貧しく、戦争が終わったという明るさと希望があった。「貧しくも楽しき夕餉」に子供のころを思い出した。(高橋正子)

麦飯や五穀を混ぜて炊きにけり★★★
昔貧乏今は贅沢麦の飯★★★

桑本栄太郎
鳴り止めば忽ち雨に夜の雷★★★
金雀枝やこの頃とんと雨降らず★★★
<大山開山1300年祭>
奉納の太刀の社に山びらき★★★★

5月18日(5名)

古田敬二
水草の陰からメダカみごもれり★★★
サヤエンドウ朝の陽に透く薄緑★★★★
エンドウ摘む遠くに雨の降る風に★★★

小口泰與
噴水にやわらかき水硬き水★★★★
噴水の水を眺めている。勢いあって噴きあがる水。砕けるように落ちる水。高く、あるいは低く、遠く、近く、という具合に様々な姿を見せる噴水の水だ。わやらかき水、硬い水とも言えよう。涼しそうな、生き生きとした噴水の水が詠まれた。(高橋正子)

会議室網戸の風の通りぬけ★★★
サヌカイトの風鈴の音に目覚めけり★★★

多田有花
稜線に紋黄揚羽の先立ちて★★★★
白きもの多し山野の夏の花★★★
金雀枝やここは急坂急カーブ★★★

桑本栄太郎
卯の花やとんとこの頃雨降らず★★★
あめんぼのそそと歩むや川上へ★★★★
足跡の光りきらめくなめくぢら★★★

廣田洋一
上半身裸で励む体操かな★★★
裸にて腕にタオルの残業かな★★★
六尺の白さまぶしき裸祭★★★★

5月17日(4名)

小口泰與
せせらぎや森の中より夏灯★★★★

一句の末尾に置いた「夏灯(なつともし)」がいい。季題がまさに季題となって、佳句となった。俳句のおける「季」の重要性を確認する佳句となった。(高橋信之)

山風の通りぬけたる夏座敷★★★
紅鱒の放流ありて竿の列★★★

多田有花
快晴の一日賜り芍薬に★★★
青羊歯やアンテナのごと直角に★★★
窓開ける日々の始まり不如帰★★★★

廣田洋一
長き草刈られし後に鳩の群★★★
出勤前ちょこちょこと草むしりけり★★★
朝早く庭の手入れや涼しけれ★★★★

桑本栄太郎
夏雨や回送電車の飛沫連れ★★★★
寝て醒めていまだ明るき新樹光★★★
木苺や想い出すのは秘密基地★★★

5月16日(4名)

小口泰與
釜ひとつ筍飯の空っぽに★★★
尾瀬の気を含む水なり冷奴★★★★
甘酒や雲の翳りの山を越ゆ★★★★

廣田洋一
桜の実青赤黒と成りてをり★★★★
中7の「青赤黒」は、日常語的な表現だが、そのことが却って「桜の実」を捉えるに成功した。日頃の精進が良いのだ。(高橋信之)

桜の実一足よける女子高生★★★
桜の実石段黒く染めにけり★★★

桑本栄太郎
あまき香の誘う散歩やすいかずら★★★
天辺の雨に鎮まり山法師★★★★
病葉やうつむき歩む散歩道★★★

古田敬二
ギョギョシギョギョシ葭切歳時記どこで見た★★★★
芍薬の優しく触れ合い咲き乱る★★★
芍薬や薄紅(くれない)に散りて尚★★★

5月15日(4名)

小口泰與
榛名湖へ道ひと筋や時鳥★★★★
夏帽子ルアーと共に湖へ飛ぶ★★★
アカシアや川面明るく風そよと★★★

廣田洋一
ゆっくりと蕾をほぐし皐月かな★★★
青き空華やぎ咲けるさつきかな★★★★
日常的な言葉を使って、よく見かける風景をくっきり鮮やかに詠んだ。この当たり前の景色をにを切り込んで読むのは難しいが佳句となった。(高橋正子)

紅白のさつきや庭を明かるうす★★★

古田敬二
伐ることをためらう芍薬満開に★★★
風光る母校の四角い時計塔★★★★
手水鉢の丸い学校メダカ群れ★★★

桑本栄太郎
淀川の水面ざわめきさみだるる★★★
柿咲いて地表に落つや本降りに★★★★
実桜の熟れず落ちたり雨のあと★★★

5月14日(4名)

小口泰與
蟻の列乱さず進む山雨かな★★★
夏霧にバスもろ共や九十九折★★★
明時の赤城は青嶺鳥の声★★★★

廣田洋一
後になり先になりして燕の子★★★
一羽だけ翻りたり燕の子★★★
古き家の庭を染めたるラベンダー★★★★

多田有花
稜線を離れ田植の村に下り★★★★
山の稜線を伝って来たが、稜線を離れて下ると、田植えをしている村に出た。田植えの最中に出会うのも
面白いことだ。田植えに出会うことは本当に少なくなった。昭和時代の田植えが懐かしい。(高橋正子)

子のころの呼び名で話す薄暑かな★★★
手土産はフルーツ入りのゼリーとす★★★

桑本栄太郎
特急のホームチェーンや若葉寒む★★★
夕日さすビルの西日や大阪駅★★★
赤き穂の土手に夕日や夏きざす(原句)
夏きざす夕日の土手の赤き穂に★★★★(正子添削)

5月13日(4名)

小口泰與
薫風や山より雨の上がりける★★★★
山古志の緋鯉あぎとう棚田かな★★★
時鳥雨後の湖水のあきらかに★★★

多田有花
日本海見える山へと谷空木★★★
見上げればいつも新緑山の道★★★
筍と背比べして山下りる★★★★

廣田洋一
跳ね過ぎて紐に絡まる鯉幟★★★
雨浴びて色鮮やかな鯉幟★★★
鯉幟緋鯉一匹加わりぬ★★★★

桑本栄太郎
坂道を下るブレーキ若葉寒む★★★
豌豆の蔓黄ばみ来る日差しかな★★★
青空に葉色透き居り若葉光(原句)
青空に葉色透きたる若葉かな★★★★(正子)
若葉が青空に広がり、日の光を透かして明るく見えるところがあって、その若葉の色が特に美しい。そういう若葉を愛でた句。(高橋正子)

5月12日(4名)

小口泰與
雲の峰水田駆け行く小犬かな★★★★
ほめられて新茶産地明かしける★★★
彫り深き赤城の朝や夏浅し★★★

廣田洋一
雛罌粟や二輪挿したる玻璃花瓶★★★★
こくこくと何に頷く虞美人草★★★
一本で人を惹きつけ虞美人草★★★

桑本栄太郎
竹皮を脱ぐや若気の過去を捨て★★★
緑陰に足を投げ出すベビーカー
「ベビーカーが足を投げ出す」の意味になっています。
緑陰に足を投げ出しベビーカーの子★★★★(正子添削例)

西日受くビルの茜や大阪駅★★★

多田有花
音高く豊かに水の田に入りぬ★★★★
山からの清水に洗う早苗籠★★★★
山から清水が流れ入る田。早苗を植え終わり、苗籠を清水で洗う。心が静かに洗われる句だ。(高橋正子)

植えられし田の水を打つ山の風★★★

5月11日(4名)

小口泰與
時鳥声をふるまい飛びにけり★★★
鳴き交す鳥の数多や夕立あと★★★
あえかなる虞美人草や雨ざんざ★★★★

多田有花
山寺を包みもくもく椎の花★★★
夏鶯鳴くほど静か山の寺★★★★
サッカーボール若葉の高さに蹴り上げる★★★★
サッカーボールが蹴りあがって若葉の高さまであがった。思わぬ高さにわあーという喚声が聞こえそうだ。「若葉の高さ」は、季節の清々しさを思わせてくれる。(高橋正子)

廣田洋一
軒下の甘き風揺れパイナップル(原句)
「甘き風」が曖昧です。
軒下に甘き香立たすパイナップル★★★★(正子添削)

缶の底一切れ残るパイナップル★★★
黄金の輪甘き汁出すパイナップル★★★

桑本栄太郎
友送り偲ぶ句会や花は葉に★★★
夏迎え空に小さき放れ雲★★★★
夏が来て、空に小さい雲が大きい雲を離れてぽかっと浮かぶ。小さい雲はこれから遊びに行くのか。夏空の楽しさ、雲の軽さ、ひいては作者の心の軽さが窺える句。(高橋正子)

小判草荒れ地の庭に溢れけり★★★

●5月月例ネット句会投句案内●


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②当季雑詠(春の句・夏の句)計5句
※5句投句といたしますのでお間違いのないようにお願いします。

③投句期間:2018年5月6日(日)午前0時~5月13日(日)午後5時
③投句は下記アドレスの月例ネット句会ブログの<コメント欄>にお書き込みください。
https://blog.goo.ne.jp/kakan02d

▼互選・入賞・伝言
①選句期間:5月13日(日)午後6時~5月13日(日)午後9時
②入賞発表:5月14日(月)正午
③伝言・お礼等の投稿は、5月14日(月)正午~5月16日(水)午後6時

自由な投句箱/5月1日~10日


生き生きと、みずみずしい俳句を期待しています。

※当季雑詠3句(春の句・夏の句)を<コメント欄>にお書き込みください。
※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

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今日の秀句/5月1日~10日


5月10日(句)
作業中

5月9日(1句)

★風薫る銀杏並木の長き道/小口泰與
銀杏並木が続く長い道。並木を通り抜ける薫る風に、蘇るような快さを覚えたことであろう。(高橋正子)

5月8日(1句)

★向日葵のつぼみ早くも空の丈/桑本栄太郎
少し前植えたと思った向日葵がどんどん生長して、つぼみが付き、はやも空の中にゆらぐような丈になった。初夏、植物が勢いをもって生長する若々しい季節だ。(高橋正子)

5月7日(2句)

★麦秋や次次産まる羊の子/小口泰與
麦秋という牧歌的な季節。愛くるしい羊の子がつぎつぎと生まれ、さらに楽しい季節となった。(高橋正子)

★夏料理竹のそよぐを眺めつつ/廣田洋一
目に涼しげな夏料理。そよぐ竹が目に映れば、なおさら涼しく、おいしくいただける。夏料理と竹の取り合わせが自然でいい。(高橋正子)

5月6日(2句)

★緑さす薄粥軽く頂きぬ/廣田洋一
「緑さす薄粥」はきよらかで美しい。「軽くいただきぬ」には、病気の快復期でおられるのか、そのようなほっとした明るさがある。もしそうなら、くれぐれもお大事に。(高橋正子)

★猪の去りゆく背あり若葉中/多田有花
猪が去りゆくところを見た。若葉の中にどっしりとしたこげ茶の猪の背が見える。若葉の色と好対照。野生の動物に出会ったときの、驚きながらも親しみが湧く瞬間。(高橋正子)

5月5日(2句)

★夏来る楓の天蓋わが頭上/多田有花
楓の新緑が天蓋となって頭上を覆う。爽やかな楓の天蓋に「夏来る」を実感することだ。(高橋正子)

★工場に立てる大樹の花は葉に/川名ますみ
工場の敷地に大樹がある。殺風景な工場もその大樹は桜。満開となったときは、そこを通る人をどれだけ感嘆させたことか。今は葉桜となって、静かで大きな木陰を作っている。(高橋正子)

5月4日(1句)

★おさな等を蝶がつれ去る丘の上/小口泰與
丘の上で蝶を見つけた幼子たち。蝶を追いかけてどこかへいってしまった。「蝶がつれ去る」に面白さがある。蝶が「ハーメルンの笛吹き」でなくてよかった。(高橋正子)

5月3日(1句)

★憲法記念日の若き警官白シャツに/桑本栄太郎
憲法記念日と白シャツと二つ季語があるが、主となる季語は白シャツ。憲法は私が生まれた年の5月3日に施行され、大事なものと思ってきた。ここに来て、改憲論争で、賑やかではあるが、少し影が薄い感じを抱いている。憲法記念日の若い警官が、街頭で、デモか、交通整理かをしているのだろう。白シャツが眩しく、きびきびとして頼もしい。(高橋正子)

5月2日(2句)

★山藤や浅間の威容揺るがざる/小口泰與
山藤がやさしい紫色の花房を垂れているが、浅間山の威容は、まったく変わらない。いつも目にする浅間山の威容は、また、日々の安心感ともなっている。(高橋正子)

★竹林の天にきらめく夏日かな/桑本栄太郎
「天にきらめく」にはっとさせられた。竹林のそよぎには、その季節季節の趣がある。夏日には、「天にきらめく」のだ。(高橋正子)

5月1日(1句)

★せせらぎの水底光る五月かな/桑本栄太郎
五月のきよらかな明るさは、せせらぎの水を透明にして、水底まで光を届かせる。すがすがしい五月がせせらぎにもある。(高橋正子)

5月1日~10日


5月10日(4名)

小口泰與
上越を越ゆる杣道緑雨かな★★★★
夕暮の空かたむけて夏燕★★★
毛の国の馬も駆け出す白雨かな★★★

多田有花
棈の若葉広がる高さかな★★★
風ときに強く吹くなり桜の実★★★★
はつ夏の頂にいる頬白と★★★

廣田洋一
古き友交わる如し古茶新茶★★★★
古茶を汲む年寄りめきし所作なりき★★★
古茶の山さつと焙りて茶粥かな★★★

桑本栄太郎
葉桜やグランド一杯部活の子★★★★
坂道の木下闇とはなりにけり★★★
若楓かさね雨降るトンネルに★★★

5月9日(2名)

小口泰與
湯に浸かり嗚呼と言いけり柿若葉★★★
利根川の川面明るき青嵐★★★
風の香や銀杏並木の長き道(原句)
風薫る銀杏並木の長き道★★★★(正子添削)
銀杏並木が続く長い道。並木を通り抜ける薫る風に、蘇るような快さを覚えたことであろう。(高橋正子)

桑本栄太郎
医科大の病棟高く蔦茂る★★★
草茂る天井川の蛇行かな★★★★
枝の影揺れてざわめく若葉寒む★★★

5月8日(3名)

小口泰與
雲の峰二脚の画架のベランダに★★★
置鉤にかかる魚や夏の月★★★★
蟻の如モデルに集うカメラマン★★★

廣田洋一
噴水や地球儀廻す遊園地★★★
噴水やしずく光らせ図書館前★★★★
噴水や三つ動かすディレクター★★★

桑本栄太郎
夏めくや嶺の端確と何処までも★★★
向日葵のつぼみ早くも空の丈★★★★
少し前植えたと思った向日葵がどんどん生長して、つぼみが付き、はやも空の中にゆらぐような丈になった。初夏、植物が勢いをもって生長する若々しい季節だ。(高橋正子)

伝え継ぐアンネの薔薇を学校に★★★★

5月7日(3名)

小口泰與
雨後の庭木木清しきや今朝の夏★★★
大木へ魚眼レンズや夏きざす★★★
麦秋や次次産まる羊の子★★★★
麦秋という牧歌的な季節。愛くるしい羊の子がつぎつぎと生まれ、さらに楽しい季節となった。(高橋正子)

桑本栄太郎
草叢のかつて畑や著我の雨★★★
姫女苑の風の色香に迷いおり★★★
ベランダの茉莉花匂う雨ひと日★★★★

廣田洋一
氷に合わせ色付けしたるや夏料理★★★
夏料理竹のそよぐを眺めつつ★★★★
目に涼しげな夏料理。そよぐ竹が目に映れば、なおさら涼しく、おいしくいただける。夏料理と竹の取り合わせが自然でいい。(高橋正子)

夏料理イタリーワイン添えたりし★★★

5月6日(4名)

小口泰與
雨粒を抱き咲き初む牡丹かな★★★★
あけぼのに洗車終るや柿若葉★★★
初夏の赤城大沼雲浮かべ★★★

廣田洋一
新緑に命救わる日なりけり★★★
緑さす薄粥軽く頂きぬ★★★★
「緑さす薄粥」は、きよらかで美しい。「軽くいただきぬ」には、病気の快復期でおられるのか、そのようなほっとした明るさがある。もしそうなら、くれぐれもお大事に。(高橋正子)

新緑の柔らかき風そよぎけり★★★

多田有花
大輪のピンクの薔薇をきる男★★★
境内に夏鶯の絶え間なく★★★
猪の去りゆく背あり若葉中★★★★
猪が去りゆくところを見た。若葉の中にどっしりとしたこげ茶の猪の背が見える。若葉の色を好対照。野生の動物に出会った、驚きながらも親しみが湧く瞬間。(高橋正子)

桑本栄太郎
あめんぼの時折走る川面かな★★★
花槐房の高きが夕暮れに★★★★
青蔦の廃屋崩れ占めにけり★★★

5月5日(4名)

小口泰與
雨後の朝雄雄しき独活を丘に見し★★★★
一陣の風や折しも雉鋭声★★★
雨ほっと折りから蝶の飛び立ちぬ★★★

多田有花
春送る風は海より強く吹く★★★
夏来る楓の天蓋わが頭上★★★★
楓の新緑が天蓋となって頭上を覆う。爽やかな楓の天蓋に「夏来る」を実感することだ。(高橋正子

葉桜となりし大樹を見上げけり★★★

桑本栄太郎
薔薇園のまぬがれ難き色香かな★★★
草叢のかつて畑あり著我の花★★★
アカシヤの花房高きバス通り★★★★

川名ますみ
クローバー咲いて濠辺の高くなり★★★
風光るおりんの響き止まるとき★★★
工場に立てる大樹の花は葉に★★★★
工場の敷地に大樹がある。殺風景な工場もその大樹は桜。満開となったときは、そこを通る人をどれだけ感嘆させたことか。今は葉桜となって、静かで大きな木陰を作っている。(高橋正子)

5月4日(2名)

小口泰與
おさな等を蝶がつれ去る丘の上★★★★
丘の上で蝶を見つけた幼子たち。蝶を追いかけてどこかへいってしまった。「蝶がつれ去る」に面白さがある。蝶が「ハーメルンの笛吹き」でなくてよかった。(高橋正子)

うぐいすの声を収めし森の風★★★
病院のおちこち人や白躑躅★★★

桑本栄太郎
命名はプリンセスとや薔薇の花★★★
そら豆の莢の背伸びや青空に★★★★
花うばらするりと猫の垣根ゆく★★★

5月3日(3名)

小口泰與
誰となく笑まう雛菊おちこちに★★★
石仏の笑まいし空や蝶の春★★★
雨後の朝鳥語さかんや麦青む★★★★

多田有花
忙しく出入りつがいのつばくらめ★★★★
雨もまたよしゴールデンウィーク中日★★★
午後の風心地よく吹く夏隣★★★

桑本栄太郎
さらさらと枝の葉擦れや新樹冷ゆ★★★
憲法記念日の若き警官白シャツに★★★★
憲法記念日と白シャツと二つ季語があるが、主となる季語は白シャツ。憲法は私が生まれた年の5月3日に施行され、大事なものと思ってきた。ここに来て、改憲論争で、賑やかではあるが、少し影が薄い感じを抱いている。憲法記念日の若い警官が、街頭で、デモか、交通整理かをしているのだろう。白シャツが眩しく、きびきびとして頼もしい。(高橋正子)

みどり濃き窓の若葉となりにけり★★★

5月2日(2名)

小口泰與
山藤や浅間の威容揺るがざる★★★★
山藤がやさしい紫色の花房を垂れているが、浅間山の威容は、まったく変わらない。いつも目にする浅間山の威容は、また、日々の安心感ともなっている。(高橋正子)

居住まいを崩し吾子抱く春炬燵★★★
耕すや犬の足跡えくぼなす★★★

桑本栄太郎
からし菜の中州占めをり桂川★★★
麦秋のもんぺ姿や河川畑★★★

竹林の天にきらめく夏日かな★★★★
「天にきらめく」にはっとさせられた。竹林のそよぎには、その季節季節の趣がある。夏日には、「天にきらめく」のだ。(高橋正子)

5月1日(3名)

小口泰與
かげろうを手捕らんと追う園児かな★★★
木刀の気合一撃柳かな★★★
井の中の鯉や落花へ口を開ぐ★★★★

廣田洋一
五月来る旅行鞄を新たにす★★★
老いてなお心浮き立つ五月かな★★★★
小屋の中空を見上げるたか五月★★★

桑本栄太郎
せせらぎの水底光る五月かな★★★★
五月のきよらかな明るさは、せせらぎの水を透明にして、水底まで光を届かせる。すがすがしい五月がせせらぎにもある。(高橋正子)

吹き抜ける風のホームや聖五月★★★
こんもりと古墳の森の若葉光★★★