自由な投句箱/3月21日~31日


生き生きと、みずみずしい俳句を期待しています。

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今日の秀句/3月21日~31日


3月31日(2句)
木陰はや快きかな白椿/多田有花
白椿が咲いている頃なのに、はや木陰が快い。白椿がぼってりと色あせて思える。気温が目まぐるしく変わるときの気持ちのありどころを正直に詠んだ。(高橋正子)

何処見ても芽吹きのみどり通院路/川名ますみ
久しぶりの通院という外出ながら、弾むこころ。目にする何処も木木が芽吹き。芽吹きのみどりに心が弾んだのだ。(高橋正子)

3月30日(2句)

★水際へ光集まる蝶の昼/小口泰與
蝶が水際を飛んでいる。蝶がいることで水際に光が集まっていっそう明るくなっている。詩的な句。(高橋正子)

★筏とはならず流れる落花かな/廣田洋一
「花筏」とはよく言う。落花は繋がらないで、一枚一枚ひとつずつ流れていく。花びらの形がありありとして、それに心が働いている。これもいい風情だ。(高橋正子)

3月29日(句)

★咲き初めて良きは我が家の桜かな/多田有花
我が家に桜が咲く。どこにも行かずごく近く、親しく桜が楽しめる。句に詠まれ、風情ある我が家の良き桜となった。(高橋正子)

3月28日(2句)

★つばくらめ嘴より泥を落としけり/小口泰與
燕は泥が好き。巣作りに忙しい燕は泥を嘴より落とすこともある。そんな瞬間を見た。せっせと働く燕の姿だ。(高橋正子)

★若蓬の田舎みやげを天麩羅に/桑本栄太郎
田舎で摘んだまだ若い蓬の土産。まずは天麩羅に。懐かしい故郷の野を思い出されたことだろう。野や山のものが食べられる春の嬉しい時期だ。(高橋正子)

3月27日(3句)

★初燕フロントガラスを横切りぬ/多田有花
初燕とフロントガラスの取り合わせが新鮮だ。初燕が来る頃はまた、桜の咲く季節でもある。どこかに桜のイメージが湧く句だ。(高橋正子)

★平城京小川に沿いてつくし摘む/河野啓一
平城京と言われた奈良には、小川に沿えば土筆が摘めるのどかな野辺が残っている。土筆を摘むにも古都のゆかしさを思う。(高橋正子)

★十階の窓から夜桜姉は癌/古田敬二
癌の姉を見舞う病棟の十階からは、上から見る夜桜が哀しくも美しい。姉を思う心が繊細。(高橋正子)

3月26日(1句)

★春の野の香りかぎつつ寝転べり/廣田洋一
「寝転んで香りをかぐ」。青春が戻ったような気分だ。(高橋正子)

3月25日(2句)

★屋根替えやお茶の時間の長きこと/廣田洋一
「屋根替」は冬の間の積雪などで傷んだ萱や藁の屋根を春に葺き替えたので、春の季語となっている。暖かい春の日に屋根をはぎ取って葺き替える。作業の間のお茶の時間ものんびりと長い。春の日の悠長さ。(高橋正子)

★春夕焼出窓の写真にぎやかに/川名ますみ
春の夕焼けに照らされた出窓は、思い出の品などいろんなものが飾られてにぎやかになった。昼間はむしろしんとしている出窓なのだ。明日が楽しい日となる予感のする春夕焼けだ。(高橋正子)

3月24日(1句)

★初ざくら居間の花瓶に咲き白し/川名ますみ
居間の花瓶を満たす桜の白さが初初しい。「白し」がいい。(高橋正子)

3月23日(1句)

★辛夷咲く榛名の空は青充たす/小口泰與
空が「青充たす」と積極的に働いたのがいい。辛夷の咲く空が動いている。(高橋正子)

3月22日(2句)

★春雨や共に濡れ行く友の居て/廣田洋一
濡れるのをいとわない春雨であるが、「共に濡れゆく友」がいて、春雨の情感が深まった句。(高橋正子)

降りしきる雨に明るき花菜道/桑本栄太郎
菜の花は雨が降ると、黄色の花色がますますはっきりとしてくる。降りしきる雨のわずらわしさを明るく楽しませてくれる菜の花の色だ。雨脚の白さが目に見える。(高橋正子)

3月21日(1句)

★春分や朝刊の文字清々し/小口泰與
春分の朝の清々しに、朝刊の文字が鮮やかに眼に入る。清々しく思えた。今年の春分は昼頃から雪となったが、雪ながらも空が高く光は春分と思えた。(高橋正子)

3月21日~31日


3月31日(4名)

小口泰與
春の日や牛舎の木木へ鳥の数★★★
「木木へ鳥の数」は「木木の鳥の数」ではないでしょうか。

巻き初めるてんから毛鉤花辛夷★★★
フロントへ斜めの雨や白木蓮★★★★

多田有花
頂に三葉躑躅の咲き初めし★★★
木陰はや快きかな白椿★★★★
白椿が咲いている頃なのに、はや木陰が快い。白椿がぼってりと色あせて思える。気温が目まぐるしく変わるときの気持ちのありどころを正直に詠んだ。(高橋正子)
鶯の日ごと盛んに鳴く山路★★★

川名ますみ
何処見ても芽吹きのみどり通院路★★★★
久しぶりの通院という外出ながら、弾むこころ。目にする何処も木木が芽吹き。芽吹きのみどりに心が弾んだのだ。(高橋正子)

雲の影映し濠辺の春の芝★★★
花曇ブラウスの色ほめらるる★★★★

廣田洋一
癌検査念入りに終へ三月尽★★★
引越しのトラック去りて三月尽★★★★
庭中の日差し柔らか三月尽★★★

3月30日(3名)

小口泰與
水際へ光集めし蝶の昼(原句)
水際へ光集まる蝶の昼★★★★(正子添削)
蝶が水際を飛んでいる。蝶がいることで水際に光が集まっていっそう明るくなっている。詩的な句。(高橋正子)

雨後の朝水口にいる田螺かな★★★
烈風や丘の櫻と鳥の羽根★★★

多田有花
上り下りする人を見し山桜★★★
山桜傾き初めし陽のなかに★★★
花影の下をくぐりて外出す★★★★

廣田洋一
爺婆が乳母車押す花見かな★★★
通勤の橋の上から花見かな★★★
筏とはならず流れる落花かな★★★★
「花筏」とはよく言う。落花は繋がらないで、一枚一枚ひとつずつ流れていく。花びらの形がありありとして、それに心が働いている。これもいい風情だ。(高橋正子)

3月29日(3名)

多田有花
夕暮れて四方の山々春霞★★★
傾ける陽は遅々として梅林に★★★
咲き初めて良きは我が家の桜かな★★★★
我が家に桜が咲く。どこにも行かずごく近く、親しく桜が楽しめる。句に詠まれ、風情ある我が家の良き桜となった。(高橋正子)

小口泰與
強風の梢の床や花の冷★★★
さえずりや挿絵あせたる初版本★★★★
水漬きたる田の醜草や揚雲雀★★★

廣田洋一
桜咲き三日目にして桜色★★★
早乙女の手ずから田植え御神田★★★★
海の幸山の幸詰め花見かな★★★

3月28日(5名)

小口泰與
土を割るチューリップの芽のとびとびに★★★
雨上がり梅の下枝に朝日かな★★★
つばくらめ嘴より泥を落としけり★★★★
燕は泥が好き。巣作りに忙しい燕は泥を嘴より落とすこともある。そんな瞬間を見た。せっせと働く燕の姿だ。(高橋正子)

廣田洋一
重たげに赤く咲きけり木瓜の花★★★
日を浴びて木瓜の花の熱放つ★★★
城跡の戦の記憶木瓜の花★★★★

多田有花
髪切って暖かき光の中へ★★★★
庭先で少女縄跳び春休み★★★
河川敷キャッチボールの日永かな★★★

古田敬二
紅梅や弥勒菩薩の唇(口)の色★★★
春光を受けてまっ平ぶどう棚(原句)
葡萄棚春光を受けまっ平ら★★★★(正子添削)
枝広げ天抱く様に梅真白★★★

桑本栄太郎
青み来るバスの大路や木の芽吹く★★★
咲き分けの源平桃や春の昼★★★
若蓬の田舎みやげを天麩羅に★★★★
田舎で摘んだまだ若い蓬の土産。まずは天麩羅に。懐かしい故郷の野を思い出されたことだろう。野や山のものが食べられる春の嬉しい時期だ。(高橋正子)

3月27日(6名)

廣田洋一
土替えて四季なり苺を蒔きにけり★★★
水苔をたっぷり敷て鷺草植う★★★★
間を空けて百合の球根植えにけり★★★

多田有花
初燕フロントガラスを横切りぬ★★★★
初燕とフロントガラスの取り合わせが新鮮だ。初燕が来る頃はまた、桜の咲く季節でもある。どこかに桜のイメージが湧く句だ。(高橋正子)

頂に立ちて探しぬ初桜★★★
上弦の月紅梅の上に出て★★★

小口泰與
榛名山(はるな)より利根川(とね)へ流るる霞かな★★★
山分けし坂東太郎雪解かな★★★
畳替え済みたる居間や春の池★★★

河野啓一
平城京小川に沿いてつくし摘む★★★★
平城京と言われた奈良には、小川に沿えば土筆が摘めるのどかな野辺が残っている。土筆を摘むにも古都のゆかしさを思う。(高橋正子)

小鳥来る天平の野に青い空★★★
せせらぎを掻き分け探す土筆かな★★★

古田敬二
十階の窓から夜桜姉は癌★★★★
癌の姉を見舞う病棟の十階からは、上から見る夜桜が哀しくも美しい。姉を思う心が繊細。(高橋正子)

桜散る三百年の梢から★★★
散る桜分厚き杉板寺の縁★★★

桑本栄太郎
霾天の嶺の微かや天王山★★★★
咲き分けの源平桃や鴨川に★★★
春暑しトランクルームへ幾たびも★★★

3月26日2名)

廣田洋一
春の野の香りかぎつつ寝転べり★★★★
「寝転んで香りをかぐ」。青春が戻ったような気分だ。(高橋正子)

春の野のせせらぎの音和やかに★★★
春の野の棚引く先に富士浮かぶ★★★

小口泰與
春霖や裏山はやす草の丈★★★
走り根の窪みくぼみに落椿★★★★
あや取りの糸のようなるしだれ梅★★★

3月25日2名)

廣田洋一
屋根替や古き藁屋根裸にす★★★
屋根替えやお茶の時間の長きこと★★★★
「屋根替」は冬の間の積雪などで傷んだ萱や藁の屋根を春に葺き替えたので、春の季語となっている。暖かい春の日に屋根をはぎ取って葺き替える。作業の間のお茶の時間ものんびりと長い。春の日の悠長さ。(高橋正子)

屋根替えや瓦に変わり情緒なく★★★

小口泰與
何故に夜も黄砂来る水の星★★★
ローム層大地ゆがめし春疾風★★★
池の面へ口開けし鯉春時雨★★★

多田有花
頂より見下ろす春の川みどり★★★
梅が香に包まれて立つ朝かな★★★
本堂にアートを飾り彼岸寺★★★

桑本栄太郎
竜天に登る日矢さす雲間かな★★★★
さくら無き桜ケ丘や花の昼★★★
物集(もずめ)ちょうバス停ありぬ雪柳★★★

川名ますみ
ベランダのビオラを束ね墓参り★★★
花菫束ねんとして零したり★★★
春夕焼出窓の写真にぎやかに★★★★
春の夕焼けに照らされた出窓は、思い出の品などいろんなものが飾られてにぎやかになった。昼間はむしろしんとしている出窓なのだ。明日が楽しい日となる予感のする春夕焼けだ。(高橋正子)

3月24(5名)

小口泰與
遠山は大地の果てや揚雲雀★★★★
ほつほつと瑞枝出でけり春の沼★★★
洗顔の妻の叫びや春嵐★★★

廣田洋一
咲き急ぎ色の斑なチューリップ★★★
日を浴びて起き上がりたる犬ふぐり★★★★
前庭の零れんばかり八重椿★★★

多田有花
倒木や彼岸嵐の過ぎしあと★★★
落椿そこは踏まずに歩きけり★★★
一木の倒れ広がる春の空★★★★

桑本栄太郎
春雨のあがる地道やにはたづみ★★★
さみどりや雨に俯く土佐みづき★★★
春蘭や風のベランダさみどりに★★★★

川名ますみ
花の枝抱えて来たる母の友★★★★
初ざくら居間の花瓶に咲き白し★★★★
居間の花瓶を満たす桜の白さが初初しい。「白し」がいい。(高橋正子)

3月23(4名)

小口泰與
辛夷咲く榛名の空は青充たす★★★★
春疾風奈翁の帽子飛ばすかな★★★
春暁の畑に鍬打つ老婆かな★★★

廣田洋一
初桜川縁白く染まりたる★★★
桜咲くまづ街角の若木かな★★★★
行く人に声かけるごと桜咲く★★★

多田有花
住職に道をたずねし彼岸寺★★★★
連日の雨と風との彼岸かな★★★
春分の雨降るなかを図書館へ★★★

桑本栄太郎
坂道の風吹き上げる連翹黄★★★★
山よりの風にうなずく雪やなぎ★★★
植込みの沈丁の香や歯科医院★★★

3月22(4名)

小口泰與
大藁屋雪解雫の鎖樋★★★
淡雪を嘴で弾きし雀かな★★★★
石仏の微笑や磴の花ミモザ★★★

廣田洋一
いつの間に雨になりたる春の雪★★★
春雨や共に濡れ行く友の居て★★★★
濡れるのをいとわない春雨であるが、「共に濡れゆく友」がいて、春雨の情感が深まった句。(高橋正子)

春雨の雨に当たらぬ花時計★★★

多田有花
春の陽に船を散りばめ大阪湾★★★★
春陽背にずらりと役行者像★★★
春霞む浪花の街を遠望す★★★

桑本栄太郎
降りしきる雨に明るき花菜道★★★★
菜の花は雨が降ると、黄色の花色がますますはっきりとしてくる。降りしきる雨のわずらわしさを明るく楽しませてくれる菜の花の色だ。雨脚の白さが目に見える。(高橋正子)

乙訓の丘に雨降る花菜かな★★★
一村の屋号で呼ばふ春うらら★★★

3月21(3名)

廣田洋一
母の忌や共に読経の雨蛙(原句)
母の忌や読経の声に雨蛙★★★★(正子添削)
因みに、蛙は春の季語ですが、雨蛙は夏の季語です。

花の芽の紅く枝垂れる桜かな★★★
朝からの雨降り止まず彼岸寒★★★

小口泰與
春分や朝刊の文字清々し★★★★
春分の朝の清々しに、朝刊の文字が鮮やかに眼に入る。清々しく思えた。今年の春分は昼頃から雪となったが、雪ながらも空が高く光は春分と思えた。(高橋正子)

片栗や明るき風の峠道★★★
活きの良き商店街やお中日★★★

桑本栄太郎
咲き切らぬつぼみの侭に花の冷え★★★★
花冷えの雨の一日や暮れ来たる★★★
春分の雨をかこつや家居ひと日★★★

自由な投句箱/3月11日~20日


生き生きと、みずみずしい俳句を期待しています。

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※投句は、一日1回3句に限ります。
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。
※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。(例:唐辛子など)
主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
http://www.21style.jp/bbs/kakan02
◆俳句日記/高橋正子◆
http://blog.goo.ne.jp/kakan02

今日の秀句/3月11日~20日


3月20日(1句)

★打ち出しの空の明るき浪花場所/多田有花

3月19日(1句)

★轟轟と湖に飲まるる雪解水/小口泰與
平明な表現だが、平明なので、作者の実感が読み手に直に伝ってくる。(高橋信之)

3月18日(1句)

★青空に白さも白き辛夷咲く/廣田洋一
中7の「白さも白き」は、青空の辛夷を詠んで、その核心を述べたもの。作者の思いが伝わってくる。(高橋信之)

3月17日(1句)

★藪椿飾られている手水口/多田有花
寺などの手水口に季節の花が飾られているのを見ることがある。藪椿は手水口を飾るのに相応しい花と思える。水が温み、陽の光も増して、花と水の出会いがいきいきとしている。(高橋正子)

3月16日(1句)

★釣糸のもつれの解けて春火桶/小口泰與
冬の間釣りは休んでいたのかもしれない。これから釣のシーズンが始まるとなって、もつれた釣り糸を丹念にほぐす仕事がある。脇に火桶を置いて、釣り糸をほぐす。こうした時間も釣の時間なのだ。「春火桶」がほの暖かくでよい。(高橋正子)

3月15日(1句)

★芦屋なるメゾン眩しき白木蓮/桑本栄太郎
芦屋のメゾン。高級住宅地を誇る芦屋の邸宅に白木蓮が耀く。「メゾン」の外来語が白木蓮と取り合わされて、瀟洒に響く。春の日の瀟洒な美。(高橋正子)

3月14日(2句)

★さえずりや堂の柱へしみ入りぬ/小口泰與
「堂の柱」と言うからには、寺などの堂々とした柱で、木目が見える。柱に罅あるのかもしれない。だから、盛んなさえずりが「柱へしみ入りぬ」となるのだろう。(高橋正子)

★暖かや園児らの空さんさんと/廣田洋一
「園児らの空」が「さんさんと」に繋がったところが素晴らしい。園児らの活発な動きが想像でき、園児への眼差しのやさしさが思われる。(高橋正子)

3月13日(1句)

★メロディーの報らす洗濯水温む/桑本栄太郎
洗濯機もコンピューターで動く。洗濯が終われば、メロディーで報せる。水が温み、洗濯機も軽く回る。メロディーが鼻歌に聞こえる。(高橋正子)

3月12日(1句)

★菜の花の黄色真すぐに線路際/廣田洋一
線路際に菜の花が咲き、線路際を黄色く染めている。線路が真直ぐ延びるので真直ぐなのだ。鉄道沿線の長閑な春の風景が旅にさそいそうだ。(高橋正子)

3月11日(3句)

★牛の子の鳴き声高き木の芽晴/小口泰與
「鳴き声高き」には子牛らしさが表現されている。いきいきと鳴く牛の子に良く晴れ渡った空が似合う。(高橋正子)

★苗札も土も新たな朝かな/廣田洋一
植えられた苗が生き生きとしているのを感じるのは、だれでも。「苗札も土も新たな朝」は感性がフレッシュなことの表れ。(高橋正子)

★せせらぎをたどりて登る春の山/多田有花
せせらぎをたどって登る山は、なだらかな山であろう。山の姿もたおやかに思える。春の山だ。(高橋正子)

3月11日~20日


3月20日(4名)

廣田洋一
弓なりに助け求める雪柳★★★
甘酒を垂らすが如し小米花★★★
金網を超えて光れる雪柳★★★★

小口泰與
蛙子をじっと見据うる園児達★★★
鮎の子のおのおの遡行身すぎかな★★★
みすずかる信濃の春やみすず飴★★★

多田有花
打ち出しの空の明るき浪花場所★★★★
吹き荒れし風雨おさまり冴返る★★★
振り仰ぐミモザの黄色空の青★★★

桑本栄太郎
同窓会の妻の帰郷や入日岸★★★★
満開となれど翳りや白木蓮★★★
すみれ咲く頃となりたり宝塚★★★

3月19日(3名)

小口泰與
永き日の馬棚を歩める子馬かな★★★
一瞬に初虹消ゆる山峡へ★★★
轟轟と湖に飲まるる雪解水★★★★
平明な表現だが、平明なので、作者の実感が読み手に直に伝ってくる。(高橋信之)

廣田洋一
パンジーの目鼻確かめ立ち止まる★★★
名を知らず会えば挨拶菫草★★★
パンジーの群れれば目立つ黄色かな★★★★「

桑本栄太郎
青白き翳を持ちたり白木蓮★★★
車窓より見下ろす土手に草青む★★★
せせらぎの桜芽ふふむ高瀬川★★★★

3月18日(3名)

小口泰與
森林の生き物の息花辛夷★★★
はくれんやいよよ厄無き老年期★★★
あけぼのの榛名十峰みな笑う★★★★

廣田洋一
青空に白さも白き辛夷咲く★★★★
中7の「白さも白き」は、青空の辛夷を詠んで、その核心を述べたもの。作者の思いが伝わってくる。(高橋信之)

花辛夷雲の流れに竿さして★★★
夜道にも白く浮かべる花辛夷★★★

桑本栄太郎
海岸の海づり公園春の潮★★★★
外つ人のカップル手繋ぎ春の旅★★★
草青む土手の鉄路や阪急線★★★

3月17日(4名)

多田有花
藪椿飾られている手水口★★★★
寺などの手水口に季節の花が飾られているのを見ることがある。藪椿は手水口を飾るのに相応しい花と思える。水が温み、陽の光も増して、花と水の出会いがいきいきとしている。(高橋正子)

春うらら壁リフォームの作業員★★★
春色のケーキが並ぶウインドウ★★★

小口泰與
谷川の大岩揺する燕かな★★★
我が庭は鮫の棲みかぞ朧月★★★
朝夕の赤城の裾野揚雲雀★★★★

桑本栄太郎
白れんや山の手六甲青き空★★★
春潮の海の神戸や朝日さす★★★
松籟の明石の浜や春の凪★★★★

廣田洋一
堀端の水の光りて青き踏む★★★★
皇居前風そよそよと青き踏む★★★
孫自慢途切れぬ人と青き踏む★★★

3月16日(3名)

小口泰與
はくれんや空にやすらう鳶の笛★★★
「鳶の笛」はじっさい輪を描いて動いている感じですので、「やすらう」は無理な感じです。

カールの髪肩になびかせ卒業す★★★
釣糸のもつれの解けて春火桶★★★★
冬の間釣りは休んでいたのかもしれない。これから釣のシーズンが始まるとなって、もつれた釣り糸を丹念にほぐす仕事がある。脇に火桶を置いて、釣り糸をほぐす。こうした時間も釣の時間なのだ。「春火桶」がほの暖かくでよい。(高橋正子)

廣田洋一
一斉に胸反り返す風信子(原句)
一斉に花反り返す風信子★★★(正子添削)
「胸」がしっくりこないです。「花」でよいと思います。

先ず咲きし濃紫色風信子★★★★
風信子風に打たれて横倒し★★★

桑本栄太郎
格子戸の街道筋や菜の花に★★★
もくれんの無垢に影さす日差しかな★★★★
入日落つ淀の河口や春の夕★★★

3月15日(3名)

廣田洋一
見て見てと八重に咲きたる黄水仙★★★
花の芯赤く染めたる黄水仙★★★
門前を華やかに見せ八重黄水仙★★★★

小口泰與
鐘の音のまろきや里は梅日和★★★
観梅や上野毛古墳たもとおり★★★
身じろがぬ赤城や郷は地虫出づ★★★★

桑本栄太郎
海づりの明石海峡春の凪★★★
芦屋なるメゾン眩しき白木蓮★★★★
入日落つ淀の河口や夕霞★★★

3月14日(5名)

川名ますみ
枯れし梅また一つより咲き初むる★★★
引鳥を載せてお濠の松大き★★★
濃き色は香りあまやかヒヤシンス★★★★

小口泰與
さえずりや堂の柱へしみ入りぬ★★★★
おちこちに生え出づままの名草の芽★★★
庭草の丈なすままの長閑さよ★★★

廣田洋一
暖かや園児らの空さんさんと★★★★
二駅を眠りて過ごす暖かし★★★
暖かくなるとの予報外出す★★★

桑本栄太郎
<明石の海>
如月の海の淡きや遥かまで★★★
対岸の島は淡路や春の凪★★★★
海岸の松の並木や春の海★★★

3月13日(3名)

廣田洋一
日を浴びて指先開く紫陽花の芽★★★
道端の赤く染まりぬ満天星の芽★★★
名草の芽一雨毎にたくましく★★★★

小口泰與
紅梅の香にまみいるや帰宅時★★★★
朝刊のインクの匂い風光る★★★
春塵や曲がり角なる道路鏡★★★

桑本栄太郎
<友人の告別式より>
春星となりし友逝く天見上ぐ★★★
畦焼のけぶり立つ見ゆ野面かな★★★
メロディーの報らす洗濯水温む★★★★

3月12日(4名)

廣田洋一
菜の花の黄一直線線路際(原句)
菜の花の黄色真すぐに線路際★★★★(正子添削)
河津桜交々触る枝の先★★★
菜の花とコラボの映える河津桜★★★

小口泰與
凍返る赤城の風のひもすがら★★★
蜜蜂の免れかたき疾風かな★★★★
貝寄風や水をたまわる舫い舟★★★

多田有花
山の影映して碧し春の池★★★★
露天の湯春陽のなかへ流れ落つ★★★
雉鳩の並んで歩く春山路★★★

桑本栄太郎
雲流れ山笑い居り天王山★★★
送電線少し垂れ見ゆ春暑し★★★
かぎろひのつづく鉄路や電車来る★★★★

3月11日(3名)

小口泰與
牛の子の鳴き声定か木の芽晴★★★
 (※御礼 (小口泰與)2018-03-12 10:27:33高橋正子先生
  牛の子の句の「定か」のご指摘有難う御座います。「牛の子の高き鳴き声」に直しました。)

牛の子の鳴き声高き木の芽晴★★★★
こちらの句のほうが、牛の子が可愛らしくいきいきしています。的確な表現になりました。「定か」がしっくりこないです。

三山の郷や山川春日影★★★
目借り時催眠術にかかりけり★★★

廣田洋一
苗札も土も新たな朝かな★★★★
苗札に花の色まで記しけり★★★
苗札の雨にさらされ売れ残る★★★

多田有花
せせらぎをたどりて登る春の山★★★★
頂に談笑の人笑の山★★★
山行のラーメン春菜たっぷりと★★★

自由な投句箱/3月1日~10日


生き生きと、みずみずしい俳句を期待しています。

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今日の秀句/3月1日~10日


3月10日(1句)

★眦に川はありけり雪解風/小口泰與
泰與さんは利根川の流れるところに住んでいる。雪解風を頬に受けながらどこかを見ているのだろう。眦に川がある。利根川の流れることろに来れば、目のどこかに川が入るのだ。「眦に川はありけり」は上手い。(高橋正子)

3月9日(2句)

★うぐいすのひとこえ静かな雨の朝/多田有花
静かに降る雨の朝、うぐいすのひとこえがうれしい。次の声を待つが、ひとこえに終わる。木の芽起こしの雨、うぐいすのひとこえに、春が一歩一歩進んでいる。(高橋正子)

★中州なる雑木林や木の芽張る/桑本栄太郎
川の中州の雑木林が芽吹く。川の光、雑木林の淡い芽吹きの色。絵になる景色だ。(高橋正子)

3月8日(2句)

★春の朝水槽の水真新し/小口泰與
「春の朝」と「真新しい水槽の水」の取り合わせが、生き生きとしている。ガラスを通して見る水の柔らかさに水の温みを感じる。(高橋正子)

★堰水の脇に菜の花明かりかな/桑本栄太郎
輝きながら落ちる堰の水。脇には菜の花が一面に咲いて、明かりが生まれている。春の明るく柔らかい景色だ。(高橋正

3月7日(1句)

★春空を飛行機雲の幾筋も/多田有花
春空に飛行機雲が「幾筋も」伸びている。軽やかで、自由な春の空だ。(高橋正子)

3月6日(3句)

★啓蟄や棚田の水のあふれ落つ/小口泰與
啓蟄。蟄は土の中にいる小さな虫。その虫たちが、春が来たぞと穴を啓いて出てくる。人間にとっても嬉しい日だ。棚田の水は雪解け水であろう、溢れ落ちるほどゆたかだ。(高橋正子)

★イヌフグリ咲けり昔の反戦歌/古田敬二
昔と言えばいつの時代だろうか。そう、遠くない昔であろう。ベトナム戦争のときは若者が反戦歌を歌った記憶がある。イヌフグリが小さい花ながら、ひとつ、ひとつが、平和の歌を歌っているようにも思える。(高橋正子)

★仰ぎ見る芽柳天を掃きにけり/桑本栄太郎
仰ぎ見る芽柳や天。さみどりの芽柳の糸が空を掃いている。軽やかで明るい句だ。(高橋正子)

3月5日(2句)

★囀りの絶ゆること無き一樹かな/廣田洋一
ある一本の樹から絶えることなく囀りが聞こえる。美しい囀りが絶えず漏れるこの一樹の大きな包容力を思う。(高橋正子)

★春耕の畝を天道虫登る/古田敬二
主テーマを春耕とし、そこにいろんなことが起こる。早くも天道虫が畝をヨイショ、ヨイショと登るようなことも。(高橋正子)

3月4日(2句)

★妻といて雛の間と言う静寂かな/小口泰與
雛を飾る部屋の、今の静けさ。妻と特に語り合うこともなく、さらりとした時間。雛の間なので、主役は妻に譲っているのであろうが。(高橋正子)

★頂に立てば初蝶飛び立ちぬ/多田有花
頂に初蝶を見つけた嬉しさと驚き。畑や田や住宅地でなく、頂に見つけたというのがいい。頂も確実に春なのだ。(高橋正子)

3月3日(3句)

★線香の煙を浴びぬ梅日和/廣田洋一
梅日和の良い天気。寺にお参りの人も大勢となる。香煙が身に染むほどである。線香の煙がありがたく思える。(高橋正子)

★緩やかに地球揺るるか春の潮/古田敬二
春の潮が寄せてくるのを静かに眺めていると、地球が揺れて春の潮をゆらしているような錯覚になる。それも作者の真実。(高橋正子)

★ちらし寿司母の叩きし木の芽載せ/川名ますみ
ちらし寿司は華やかに、彩りよく錦糸卵や椎茸、あるいは酢漬けの魚などが載せある。木の芽は手のひらで叩いて香りがよく出るようにする。木の芽を載せて、ちらし寿司はもっとも春らしい寿司となる。(高橋正子)

3月2日(2句)

★対岸は我生れし村春の雪/古田敬二
川沿いに車か列車で走っているのだろう。この川の対岸は敬二さんの生まれた村である。春の雪が生まれた村を消すかのように降ってくる。故郷を思う抒情的な句。(高橋正子)

★ゑんどうの高き支柱や春寒し/桑本栄太郎
春寒いころ、えんどうはまだ支柱の根元辺りに緑の葉をようやく育てている。えんどうが生長する高さを想定して立てられた高い支柱。まだまだ、先までは余りあるのだ。それが「春寒し」を強く感じさせている。(高橋正子)
3月1日(1句)

★道それて摘めば蓬香りけり/古田敬二
蓬を見つければ、つい摘みたくなる衝動。私もあって、春の蓬餅を作り、また食べる楽しみになる。(高橋正子)

3月1日~10日


3月10日(4名)

小口泰與
眦に川はありけり雪解風★★★★
泰與さんは利根川の流れるところに住んでいる。雪解風を頬に受けながらどこかを見ているのだろう。眦に川がある。利根川の流れることろに来れば、目のどこかに川が入るのだ。「眦に川はありけり」は上手い。(高橋正子)

眼間をまばゆき鳥や真菰の芽★★★
骨酒を頂く宿や木の芽時★★★

廣田洋一
旅の本ひねもす眺めて春の暮★★★
注文の球根届く春の暮★★★★
人恋し返信の無き春の暮★★★

桑本栄太郎
春愁や奈良には古き陀羅尼助★★★
かぎろひの揺らぐ鉄路や電車来る★★★★
菜の花や河川畑の黄明かりに★★★

多田有花
炊きたての豆ご飯食ぶ春の昼★★★★
見上げおり空より梅の枝垂るるを★★★
紅梅と白梅と枝交わしおり★★★

3月9日(4名)

小口泰與
隠り沼へ朝日差しけり波うらら★★★
永き日や子馬馬棚を行き帰り★★★★
愛犬の深き眼差し忘れ霜★★★

廣田洋一
場所前に一荒れしたり春疾風★★★
自転車を二台倒せり春嵐★★★
牛乳の受け箱飛ばす春疾風★★★

多田有花
うぐいすのひとこえ静かな雨の朝★★★★
静かに降る雨の朝、うぐいすのひとこえがうれしい。次の声を待つが、ひとこえに終わる。木の芽起こしの雨、うぐいすのひとこえに、春が一歩一歩進んでいる。(高橋正子)

そそくさと立ち去る山鳥の背中★★★
チョコレートぱきっと割って冴返る★★★

桑本栄太郎
中州なる雑木林や木の芽張る★★★★
川の中州の雑木林が芽吹く。川の光、雑木林の淡い芽吹きの色。絵になる景色だ。(高橋正子)

対応の丁寧なこと納税期★★★
春雷や二つ三つなる音ばかり★★★

3月8日(4名)

小口泰與
春の朝水槽の水真新し★★★★
「春の朝」と「真新しい水槽の水」の取り合わせが、生き生きとしている。ガラスを通して見る水の柔らかさに水の温みを感じる。(高橋正子)

パソコンの指の動きや暖かし★★★
鉄橋を渡る貨物や初燕★★★

廣田洋一
立てかけしシャベル濡らす春の雨(原句)
立てかけしシャベルを濡らす春の雨★★★★(正子添削)
春の雨音もなく窓濡らしけり★★★
降りそうで降らぬままなり春の雨★★★

桑本栄太郎
バスの行く並木大路や木の芽雨★★★
老木の苔青みおり春の雨★★★
堰水の脇に菜の花明かりかな★★★★
輝きながら落ちる堰の水。脇には菜の花が一面に咲いて、明かりが生まれている。春の明るく柔らかい景色だ。(高橋正子)

3月7日(4名)

小口泰與
目裏に五浦の海風光る★★★
鯵ケ沢甚句習うや夜半の春★★★
さえずりや上州菓子の選定会★★★★

廣田洋一
三段に重なり咲きし枝垂れ梅★★★
肺癌の疑いありと春寒し★★★
お大事に。
川縁を緋色に染める桃の花★★★★

多田有花
啓蟄や仕舞込みたるもの捨てる★★★
冴返る風吹く夜のテニスコート★★★
春空を飛行機雲の幾筋も★★★★
春空に飛行機雲が「幾筋も」伸びている。軽やかで、自由な春の空だ。(高橋正子)

桑本栄太郎
椿落つ高き土塀や建仁寺
椿落つ土塀の高き建仁寺(正子添削例①)
建仁寺の高き土塀や椿落つ(正子添削例②)
もとの句は、テーマが二つあります。「椿落つ」と「高き土塀」です。

幾たびも携帯に撮る薄紅梅★★★
西空の暮れて群青冴返る★★★

3月6日(4名)

小口泰與
啓蟄や棚田の水のあふれ落つ★★★★
啓蟄。蟄は土の中にいる小さな虫。その虫たちが、春が来たぞと穴を啓いて出てくる。人間にとっても嬉しい日だ。棚田の水は雪解け水であろう、溢れ落ちるほどゆたかだ。(高橋正子)

拍子木の音に始まる春祭★★★
大利根は円かに雪解治めけり★★★

古田敬二
イヌフグリ咲けり昔の反戦歌★★★★
昔と言えばいつの時代だろうか。そう、遠くない昔であろう。ベトナム戦争のときは若者が反戦歌を歌った記憶がある。イヌフグリが小さい花ながら、ひとつ、ひとつが、平和の歌を歌っているようにも思える。(高橋正子)

若き日の反戦のうたイヌフグリ★★★
クニさんが登った丘のイヌフグリ★★★

廣田洋一
足跡の剥がれしままの春の泥★★★
駆け比べ背にはねたる春の泥★★★
春泥の靴並びたるフェンスかな★★★★

桑本栄太郎
落椿落つや狭庭のやすらぎに★★★
黄沙降る吾にもありし蒙古斑★★★
仰ぎ見る芽柳天を掃きにけり★★★★
仰ぎ見る芽柳や天。さみどりの芽柳の糸が空を掃いている。軽やかで明るい句だ。(高橋正子)

3月5日(4名)

小口泰與
一輪の梅の咲きたる朝かな★★★★
春暁の菓子の車両の一斉に★★★
春昼や花街の辺の古本屋★★★

廣田洋一
囀りや大樹を出たり入ったり★★★
囀りの絶ゆること無き一樹かな★★★★
ある一本の樹から絶えることなく囀りが聞こえる。美しい囀りが絶えず漏れるこの一樹の大きな包容力を思う。(高橋正子)

囀りや青葉光れる雨上がり
「囀り」は春の季語。「青葉」は夏の季語。この句では、「青葉光れる」と「囀り」とテーマが二つあります。季も違っています。

桑本栄太郎
春嵐とは突然に吹ききたる★★★
父母のむかし懐かし土ひひな★★★
古草の土手に明るき雨一日★★★★

古田敬二
畝立てば春天道虫の登り初め(原句)
春耕の畝を天道虫登る★★★★(正子添削例)
主テーマを春耕とし、そこにいろんなことが起こる。早くも天道虫が畝をヨイショ、ヨイショと登るようなことも。(高橋正子)

春耕の畝を小さき虫登る★★★
春耕や草の根強く抵抗す★★★

3月4日(6名)

廣田洋一
杉山の息吹吹き付け空黄ばむ★★★
腹の虫抛りだしたり山笑う★★★
鉄道の拡幅終わり山笑う★★★★

古田敬二
下校の子すくなし豊かに黄水仙★★★★
海凪て入日の眩しき帯伸びる★★★
春入日落ち切る時の速さかな★★★

小口泰與
妻といて雛の間と言う静寂かな★★★★
雛を飾る部屋の、今の静けさ。妻と特に語り合うこともなく、さらりとした時間。雛の間なので、主役は妻に譲っているのであろうが。(高橋正子)

忽然と白鳥帰り広き沼★★★
日の差すや先ずは片栗そり返り★★★

多田有花
やや遅き朝食の窓に初音かな★★★
頂に立てば初蝶飛び立ちぬ★★★★
頂に初蝶を見つけた嬉しさと驚き。畑や田や住宅地でなく、頂に見つけたというのがいい。頂も確実に春なのだ。(高橋正子)

うすぐもる梅が香の中に降り立ちぬ★★★

桑本栄太郎
川べりに園児散らばり青き踏む(原句)
園児らの散らばる川辺青き踏む★★★★(正子添削)
元の句ですと、「青き踏む」の主語は園児となり、現実園児が「青き踏む」行動をするとは思えない。「青き踏む」の主語は作者とすれば、添削のようになります。

満天星の枝の色めき新芽立つ★★★
芽柳や見上げる空の雲走る★★★

3月3日(6名)

廣田洋一
春暁や月皓皓と西の空★★★
線香の煙を浴びて梅日和(原句)
線香の煙を浴びぬ梅日和★★★★(正子添削)
梅日和の良い天気。寺にお参りの人も大勢となる。香煙が身に染むほどである。線香の煙がありがたく思える。(高橋正子)

絵馬納む紅梅の香に包まれて★★★

小口泰與
微笑みて鼓は打たぬ雛かな★★★
萩焼のぐい飲みに桃の酒★★★
まずもって点す明りや雛祭★★★★

古田敬二
緩やかに地球揺るるか春の潮★★★★
春の潮が寄せてくるのを静かに眺めていると、地球が揺れて春の潮をゆらしているような錯覚になる。それも作者の真実。(高橋正子)

潮騒の静まり春のオリオン座★★★
春オリオンくっきり島の旅にいる★★★

多田有花
三月始まる明るき風荒れて★★★★
よき日和梅見の客のちらほらと★★★
窯焼のピッツアで会食春満月★★★

桑本栄太郎
用瀬(もちがせ)の川面きらめく流し雛★★★★
曲水の宴や琴の城南宮★★★
わらんべの引きずり走る凧の糸★★★

川名ますみ
ちらし寿司母の叩きし木の芽載せ★★★★
ちらし寿司は華やかに、彩りよく錦糸卵や椎茸、あるいは酢漬けの魚などが載せある。木の芽は手のひらで叩いて香りがよく出るようにする。木の芽を載せて、ちらし寿司はもっとも春らしい寿司となる。(高橋正子)

高階の雛の間めぐりお裾分け★★★
ご近所に鮨を配りぬ雛の日★★★

3月2日(4名)

小口泰與
恋猫の非常階段下りて来し★★★
有明の赤城の風や麦青む★★★★
子に伝う家紋の由来囀れる★★★

廣田洋一
黄水仙喇叭くわへて首を振り★★★
庭の隅香るが如き黄水仙★★★★
喪の明けし友を誘ふ黄水仙★★★

古田敬二
春の雪舞う故郷の無人駅★★★
分岐する此処から春の飛騨の川★★★
対岸は我生れし村春の雪★★★★
川沿いに車か列車で走っているのだろう。この川の対岸は敬二さんの生まれた村である。春の雪が生まれた村を消すかのように降ってくる。故郷を思う抒情的な句。(高橋正子)

桑本栄太郎
堰水のきらめき落つや風光る★★★
ゑんどうの高き支柱や春寒し★★★★
春寒いころ、えんどうはまだ支柱の根元辺りに緑の葉をようやく育てている。えんどうが生長する高さを想定して立てられた高い支柱。まだまだ、先までは余りあるのだ。それが「春寒し」を強く感じさせている。(高橋正子)

春暁のヒールひびかせ帰り来る★★★

3月1日(4名)

古田敬二
春潮の満ち来て砂を揺らしけり★★★
春潮の音の優しきリフレイン★★★
道それて摘めば蓬香りけり★★★★
蓬を見つければ、つい摘みたくなる衝動。私もあって、春の蓬餅を作り、また食べる楽しみになる。(高橋正子)

小口泰與
揚ひばり今朝の浅間のより白き★★★
残照の山は間近くミモザかな★★★★
きさらぎや富士も見えざる富士見村★★★

廣田洋一
雛菊の恙なき世を照らしけり★★★★
手術前長命菊を飾りけり★★★
雛菊や恋占いの小学生★★★

桑本栄太郎
山すその西国街道風光る★★★
由ありて長子家去る春一番★★★★
つぎつぎと嶺の三月雲生るる★★★