●自由な投句箱/11月21日~30日●


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今週の秀句/11月21日~30日


[11月30日]

★鵯の広島城を縦横に/谷口博望 (満天星)
鵯は人家の庭にも飛んできて、花の蜜を吸ったり、木の実を食べたり、また、喧しく鳴きたる身近な鳥だ。句に詠まれた鵯は、広島城を縦横に飛び、遠慮もない。鵯の天下だ。鳥たちがいきいきとしているのは、人間にもいいことだ。(高橋正子)

[11月29日]

★大き種いくつも含む庭の柿/河野啓一
庭に柿の木があると、日本の昔からの家屋と庭と思う。庭の柿は、大きな実をつける年もあったり、小ぶりであったりするが、意外にも大きな種が埋もれている。私の実家は、瀬戸内海の沿岸の田舎にあるが、今では柿の名産地となっている。大きな甘い富有柿がたくさん生ったものだ。そして食べていると大きな種が出てくることがしばしばだった。そんなことを思い出させてくれる句だ。(高橋正子)

[11月28日]

★マフラーの結び目揃え下校の娘/上島祥子
下校してきた娘のマフラーの結び目がきちんと整っていた。それは、意外だったかもしれない。結び目を揃えたマフラーに、女子生徒らしい清潔感と少しお洒落な雰囲気があって、作者はそこにさりげない成長を見たのだろう。(高橋正子)

[11月27日]

★水鳥の群舞すれども池を出ず/廣田洋一
水鳥はこの池を餌場としているのであろう。何かに驚いて水面を飛び立ったり、群舞したりするが、あくまでもその池を離れない。池と水鳥が織りなす一つの世界がここにある。(高橋正子)

[11月26日]

★冬浅き瀬戸の檸檬は色づきぬ/多田有花
「冬浅き」が、瀬戸内の気候にはぴったりだ。青みがかった檸檬の黄色は、瀬戸の海とよく似合い、詩情があって、作者の思いが読み取れる。(高橋正子)

[11月25日]

★魁けて孤高をめざす朴冬芽/谷口博望(満天星)
高く聳える朴の木は葉を落とし、いちはやく冬芽を明らかにする。太くつやつやとした冬芽は「孤高をめざす」ようだ。(高橋正子)

[11月24日]

★霜柱添え木を深く挿しにけり/小口泰與
空っ風の上州。真冬に向かって添え木が必要となる。霜柱が一面を覆う朝、添え木をしっかりと挿し込む。
厳しい冬に向かう心構えが知れる。(高橋正子)

[11月23日]

★水色の空の鞍馬や北しぐれ/桑本栄太郎
「北しぐれ」は北から降って来るしぐれ。北にあたる鞍馬の方の空は明るい水色で日が差しているのだろう。ところがここは時雨。降ったと思うと日が差す時雨の降り様の淡い情緒がいい。(高橋正子)

[11月22日]

★人波に身を任せ行く酉の市/小口泰與
福を呼び、商売繁盛を願う酉の市の賑わい。賑わいの人波に身を任せるよりほかはない。任せることに幸運がありそうだ。(高橋正子)

[11月21日]

★スケートの絵毎日描きし日記帳/廣田洋一
スケートが大好きな子の日記帳だろう。子供は好きなことはどんどんするが、それにしても大変執心だ。(高橋正子)

11月21日~30日


11月30日(4名)

●谷口博望 (満天星)
鵯の広島城を縦横に★★★★
鵯は人家の庭にも飛んできて、花の蜜を吸ったり、木の実を食べたり、また、喧しく鳴きたる身近な鳥だ。句に詠まれた鵯は、広島城を縦横に飛び、遠慮もない。鵯の天下だ。鳥たちがいきいきとしているのは、人間にもいいことだ。(高橋正子)

黒々と薄暮の屋上寒鴉★★★
紅葉の南京櫨の実は弾け★★★

●小口泰與
すれ違う少女の息の白きかな★★★★
いつ見ても新たな赤城山(あかぎ)冬の川★★★
息白し初冠雪の赤城山★★★

●廣田洋一
塀越しに白菊光る冬の朝★★★
湯豆腐やポン酢垂らして良き香り★★★
湯豆腐や商いの話弾みたる★★★★

●桑本栄太郎
目覚めたる真夜の団地や虎落笛★★★
冬雲や海の涯なる青き空★★★
森々と十一月の果てにけり★★★★

11月29日(6名)

●谷口博望 (満天星)
アフリカの太鼓叩いて秋祭★★★★
小春日の浦々進む巨大船★★★
いつの間に宵の明星日短し★★★

●廣田洋一
枯れ初めし菊の色香を惜しみけり★★★
八重咲の山茶花白き壁のごと★★★
凛としてシングルマザーの七五三★★★★

●小口泰與
密やかに亀の首出す枯葉かな★★★★
黒雲に忽と風起ち冬さるる★★★
木枯しや熱き肉まんほっかほか★★★

●多田有花
初しぐれ空のどこかの明るくて★★★
しぐれ去る夕陽の中の山歩く★★★
冬紅葉見下ろして立つ頂に★★★★

●河野啓一
小鳥来去空に風音はや師走★★★
木枯らしや明日はショートへ初ステイ★★★

大き種いくつも含む庭の柿★★★★
庭に柿の木があると、日本の昔からの家屋と庭と思う。庭の柿は、大きな実をつける年もあったり、小ぶりであったりするが、意外にも大きな種が埋もれている。私の実家は、瀬戸内海の沿岸の田舎にあるが、今では柿の名産地となっている。大きな甘い富有柿がたくさん生ったものだ。そして食べていると大きな種が出てくることがしばしばだった。そんなことを思い出させてくれる句だ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
峰膚の赤く染まりて山眠る★★★★
落葉松の錆色とどむ落葉かな★★★
橙の白き土塀に垂れにけり★★★

11月28日(7名)

●谷口博望 (満天星)
木枯や梧桐の鞘(さや)は透かし彫★★★
杭に立つ鶚(みさご)の孤影遥かなり★★★
葦鴨の緑のハット夕映えり★★★★

●「小口泰與
行く水を押し行く水や年惜しむ★★★★
日を乗せて寝転ぶ犬や冬菫★★★
我が影の田居を越えけり冬旱★★★

●「廣田洋一
手袋の片方踏みし改札口★★★
生垣に吊られしままの手袋かな★★★
手袋の温もりこもる握手せり★★★★

●上島祥子
雨上がり雀の凍えけり★★★
木枯らしに向かう自転車膝赤し★★★

マフラーの結び目揃え下校の娘★★★★
下校してきた娘のマフラーの結び目がきちんと整っていた。それは、意外だったかもしれない。結び目を揃えたマフラーに、女子生徒らしい清潔感と少しお洒落な雰囲気があって、作者はそこにさりげない成長を見たのだろう。(高橋正子)

●多田有花
語らいて囲炉裏にひとつ炭を足す★★★
埋火としてのち全員床に就く(原句)
埋火を残して全員床に就く★★★★(正子添削)
布団一枚床暖房の上に寝て★★★

●河野啓一
阿波の柿剥いて干すとて娘と妻が★★★★
柿干して小雨気になる軒端かな★★★
落ち葉舞う姿正しく色綾に★★★

●桑本栄太郎
顔見世のまねき今年は歌舞練場★★★
茄子枯れて打ち捨てられし畦の上★★★
様々な香り立ち居り落葉踏む★★★★

11月27日(5名)

●谷口博望(満天星)
小春日の「禎子の鐘」が鳴りやまず★★★★
敗荷やサリーの二人鐘を撞く★★★
緋鳥鴨ピューイと鳴けば海白く★★★

●小口泰與
枯尾花風に押されし入日影★★★★
我が咳や扉破りし如くにて★★★
白波を操る湖や冬ざるる★★★

●多田有花
冬紅葉黄金に染めし入り日かな★★★
猪鍋を囲み小さな同窓会★★★★
古民家から山茶花に降る雨を見る★★★

●廣田洋一
参道の冬の芽揃ふ小枝かな★★★
挙式祝ひ鳶の二羽舞ふ冬の空★★★

水鳥の群舞すれども池を出ず★★★★
水鳥はこの池を餌場としているのであろう。何かに驚いて水面を飛び立ったり、群舞したりするが、あくまでもその池を離れない。池と水鳥が織りなす一つの世界がここにある。(高橋正子)

●桑本栄太郎
掃除機の唸り居りけり冬深む★★★
剪定の瘤にとどまる冬木かな★★★
枯蔓の高きフェンスやグランドに★★★★

11月26日(6名)

●谷口博望(満天星)
百合鴎見たくてそこは厳島★★★★
百合鴎赤鮮やかに頭上かな★★★
海遠く鶚(みさご)の頭杭に立つ★★★

●多田有花
冬菊や今治タオル美術館★★★
皇帝ダリアあちこちに咲く伊予路★★★
冬浅き瀬戸の檸檬は色づきぬ★★★★
「冬浅き」が、瀬戸内の気候にはぴったりだ。青みがかった檸檬の黄色は、瀬戸の海とよく似合い、詩情があって、作者の思いが読み取れる。(高橋正子)

●小口泰與
騒立ちて傘に付たる落葉かな★★★
石畳楓落葉の降りかくす★★★★
冬の蜂後部座席と格闘ぞ★★★

●廣田洋一
赤カンナ黒く萎みて冬ざるる★★★
冬ざれや空地の草木刈り取られ★★★★
冬ざれや倒れしままの名家の墓★★★

●桑本栄太郎
橙の土塀に垂るる明かりかな★★★
彩となる残る紅葉や桜の木★★★
敷き詰める銀杏落葉やバス通り★★★★

●佃 康水
未明より煮しめ炊きゆく報恩講★★★  
冬天へ皇帝ダリア聳え咲く★★★
赤屋根の友の家軒に掛け大根★★★★ 

11月25日(6名)

●谷口博望(満天星)
木枯に実だけとなりぬ唐楓★★★
魁けて孤高をめざす朴冬芽★★★★
高く聳える朴の木は葉を落とし、いちはやく冬芽を明らかにする。太くつやつやとした冬芽は「孤高をめざす」ようだ。(高橋正子)

枯芙蓉ラケットを手に老夫婦★★★

●古田敬二
固き蕾残して手入れ姫椿★★★
遠空に甲斐駒ケ岳(かいこま)尖り柿をもぐ★★★★
花枇杷に座りて老爺の農談義★★★

●小口泰與
上州の風や冬山凛とあり★★★
笹鳴や秩父連山鮮明に★★★★
たそがれの川瀬響むや雪冠★★★

●多田有花
東から戻れば西は冬の雨★★★
雨あがる来島海峡冬はじめ★★★
豚しゃぶの肉花びらのごと並ぶ★★★★

●桑本栄太郎
刀身のみねに打粉や憂国忌★★★
踏みしだき坂の襤褸や落葉道★★★
石垣を伝う緋色や冬紅葉★★★★

●廣田洋一
線路際枯菊すべて刈られけり★★★
枯菊や捨つるは惜しき色残す★★★★
枯菊や他の供花と捨てられし★★★

11月24日(5名)

●満天星
小春空「禎子の鶴」の鐘鳴らす★★★★
敗荷や世界平和の鐘が鳴る★★★
鐘の音や黄心樹(おがたま)の実の弾けをり★★★

●多田有花
ランドマークタワー影となりたり日短か★★★★
露天風呂に冬の汽笛をひとり聞く★★★
冬麗の浜離宮園を見下ろす★★★

●小口泰與
綿虫や川沿い走る足尾線★★★
霜柱添え木を深く挿しにけり★★★★
空っ風の上州。真冬に向かって添え木が必要となる。霜柱が一面を覆う朝、添え木をしっかりと挿し込む。
厳しい冬に向かう心構えが知れる。(高橋正子)

その事に触れず語らずおでん鍋★★★

●廣田洋一
初雪やぼたぼた降りてすぐ溶けぬ★★★
風花や生まれはどちら空青し★★★
風花や店先に積む牡蠣の殻★★★★

●桑本栄太郎
鮮やかな終いとなりぬ冬紅葉★★★
木枯や想い出つのる空の青★★★
風呂敷に書を入れ通う一葉忌★★★

11月23日(5名)

●谷口博望(満天星)
バスからのドリミネーション冬至の日★★★
銀杏散る平和の園に鐘の音★★★
碧空や銀杏の黄金翻る★★★★

●小口泰與
噴煙の西に流るる神の留守★★★
冬の滝しぶきて人を寄せつけず★★★★
巌を打つ波を眼下に懐手★★★

●多田有花
飛び立ちて眼下に冬の神戸港★★★★
小春日の横浜港をそぞろ歩く★★★
冬ぬくし大さん橋の汽笛かな★★★

●廣田洋一
ピンク色混じるつつじの返り花★★★★
紅葉せし枝の下には緑の葉★★★
緑の中一際赤き紅葉かな★★★

●桑本栄太郎
風呂敷に書を入れ通う一葉忌★★★
花八手門扉閉ざさる売物件★★★
水色の空の鞍馬や北しぐれ★★★★
「北しぐれ」は北から降って来るしぐれ。北にあたる鞍馬の方の空は明るい水色で日が差しているのだろう。ところがここは時雨。降ったと思うと日が差す時雨の降り様の淡い情緒がいい。(高橋正子)

11月22日(5名)

●廣田洋一
映画館ずらりと並ぶマスクの盾★★★
大きな目際立たせたるマスクかな★★★★
鍋焼きの匂いかぐわしマスク取る★★★

●多田有花
冬服を乗せて電車の走り去る★★★★
冬紅葉戴く山を見渡せる★★★
電車来て小春のホーム空っぽに★★★

●小口泰與
シャッターを押すたび増る陣の鴨★★★
人波に身を任せ行く酉の市★★★★
福を呼び、商売繁盛を願う酉の市の賑わい。賑わいの人波に身を任せるよりほかはない。任せることに幸運がありそうだ。(高橋正子)

赤城山(あかぎ)とは我の産土龍の玉★★★

●谷口博望 (満天星)
鳩の眼に冬至の赤い日が光る★★★
冬至の日被爆川行く遊覧船★★★★
破蓮サリーの人が鐘を撞く★★★

●桑本栄太郎
カサコソとカ行つづけり落葉道★★★
ひつそりと闇のとばりや日短★★★
波郷忌の灯火に映ゆるプラタナス★★★★

11月21日(4名)

●小口泰與
梵鐘を幼子打つや神の留守★★★
足元を雲駆け行けり冬紅葉★★★★
帰り花追伸に足す風のこと★★★

●廣田洋一
スケートの四回転は男のあかし★★★
手をつなぎそろそろ浮き浮きスケート場★★★
スケートの絵毎日描きし日記帳★★★★

●桑本栄太郎
芦屋なる坂に沿い居り冬紅葉★★★
冬凪のアベノハルカス靄に浮く★★★
金色の光る運河や冬夕焼★★★★

●谷口博望 (満天星)
みせばやの俯く葉うら紅に染む★★★
みせばややぺちゃくちゃ言つてランドセル★★★
みせばやの花を揺らして猫通る★★★★

●自由な投句箱/11月11日~20日●


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主宰:高橋正子・管理:高橋信之

◆俳句添削教室◆
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今週の秀句/11月11日~20日


[11月20日]

★恩師より筆のたよりや石蕗日和/谷口博望 (満天星)
恩師からの便りが筆であったことのあたたかさ。墨の香りまでしそうな石蕗の咲く日和。恩師とのあたたかな心の交流がうれしい。(高橋正子)

[11月19日]

★通院の迎え紅葉の光から/川名ますみ
今日の通院は、辺りの紅葉が耀くばかりの日となった。室内から見る紅葉とは違って、風や日の光を受けて、作者を歓喜して迎えてくれているようだ。(高橋正子)

[11月18日]

★紅葉の光集めて落ちる滝/廣田洋一
紅葉の真っただ中に落ちる滝が絵画のように印象的に力強く詠まれている。(高橋正子)

[11月17日]

★冬菊の門辺にありぬ日差しかな/桑本栄太郎
日差しを受けて冬菊が穏やかで、光をまとっている。見るものの心を穏やかにしてくれる光景だ。(高橋正子)

[11月16日]

★軒深き母屋に白し懸大根/桑本栄太郎
たくあん漬けにするために、大根を干す。雨が当たらないように深い軒下に吊るされることもある。真っ白く洗われた大根は陽があたり、さんさんと輝くばかりだ。初冬の風景として、故郷を思い出す。(高橋正子)

[11月15日]

★南座にまねき上がりてしぐれ来る/桑本栄太郎
「まねき上げ」は、京都の南座で毎年年末に行なわれる歌舞伎の顔見世興行の際に、出演する役者の名を入れたまねき看板を劇場正面に掲げる行事。役者の看板が勢ぞろいして、いよいよ師走を迎える準備が整った。生憎の時雨模様の天気だが、にぎにぎしさにわくわくする気持ちが高まる。(高橋正子)

[11月14日]

★山茶花や花弁ごとに光りおり/廣田洋一
山茶花は椿と違ってにぎやかさのある花だ。たくさん咲いて、花弁ごとが光っている。花弁の一枚一枚が自由に光っている。そんなところに山茶花の花のにぎやかさがあるのだと、気づかされた。(高橋正子)

[11月13日]

★ずいと引き抜く大根の手ごたえ/多田有花
ただ一つのことを衒いなく言った。大根を土から引き抜くときは、地に根を張る大根相応の力をもって抜く。抜ける瞬間の腕に伝わるその手ごたえ。純粋実感とも言おうか。(高橋正子)

[11月12日]

★ランドセル赤城颪に抗しけり/小口泰與
吹き降ろす赤城颪に向い、抗って、体を斜めに、ランドセルを背負った児童が歩き進んで行く。赤城颪に鍛えられるたくましい子供たちへ、励ましの眼差しが読み取れる。(高橋正子)

[11月11日]

★冬の星歩むにつれてまた一つ/廣田洋一
冬は大気が澄み、星の輝きが鋭くなる。歩くにつれて星がまた一つ見つかる。私など視力の衰えや街の灯りで、夜空にきらめく星々をこの頃は見ることはないが、心に灯るように一つまた一つと星が見つかるとうれしい。(高橋正子)

11月11日~20日


11月20日(5名)

●谷口博望 (満天星)
恩師より筆のたよりや石蕗日和★★★★
恩師からの便りが筆であったことのあたたかさ。墨の香りまでしそうな石蕗の咲く日和。恩師とのあたたかな心の交流がうれしい。(高橋正子)

ヒドリガモ寄り添いながら被爆川★★★
スキップのトイプードルや落葉道★★★

●小口泰與
笹鳴やかくも白樺並びける★★★★
一羽翔ち一斉に去る寒雀★★★
露天湯に手足伸ばせし四温かな★★★

●廣田洋一
吐く息の靄に溶け入る冬の朝★★★
冬の靄遠き街灯朧なり★★★
隣近所箒てんでに落葉掻く★★★★

●河野啓一
とき知らず浜木綿の実を結びたる秋の暮
浜木綿の実を結びたる秋の暮★★★★(正子添削)

留守居の娘のやさしさよ冬の昼下がり★★★
門に立つ見渡す坂の真っ赤な紅葉★★★

●桑本栄太郎
冬暁のビルに朝日や大阪駅★★★★
冬天のアベノハルカス靄の中★★★
<神戸六甲アイランド埠頭>
海光の揺らぎ寄せ居り冬の凪★★★

11月19日(5名)

●廣田洋一
冬日和ひたすら青き空仰ぐ★★★
水鳥の親子連れ立つ冬日和★★★
「水鳥」は冬の季語です。季重なりです。

寒晴れや心浮きたつ散歩道★★★★

●小口泰與
落葉松の枯葉時雨や鳥の声★★★★
木枯しやかくも短き落暉なり★★★
「短き落暉」の「短き」に無理があります。

峠越ゆ忽と赤城山(アカギ)と空っ風★★★

●桑本栄太郎
暁闇に点す灯りやかにかく忌★★★
小雨降り更に色濃き落葉かな★★★★
敷き積める庭の明るき夕しぐれ★★★

●谷口博望 (満天星)
兄よりの柿の絵手紙土佐遠く★★★★
桐の木はオブジェとなりぬ小六月★★★
黒々と烏群れ飛ぶ冬夕焼け★★★

●川名ますみ
通院の迎え紅葉の光から★★★★
今日の通院は、辺りの紅葉が耀くばかりの日となった。室内から見る紅葉とは違って、風や日の光を受けて、作者を歓喜して迎えてくれているようだ。(高橋正子)

青天の桜紅葉を指し出発★★★
少しずつ桜紅葉の降る家路★★★

11月18日(4名)

●小口泰與
きらきらと落葉降りけり隠沼へ★★★
黒雲の下に忽然冬浅間★★★★
アイロンを掛けたる湖や冬紅葉★★★

●河野啓一
口惜しや立ち上がれずにに窓の柿★★★
大西日瀬戸内より淀の葦へ★★★★
車いす枯野を抜けて散歩道★★★

●廣田洋一
洞窟をくぐりて光る冬の滝★★★
紅葉の光集めて落ちる滝★★★★
紅葉の真っただ中に落ちる滝が絵画のように印象的に力強く詠まれている。(高橋正子)

冬の夜電飾囲む千枚田★★★

●桑本栄太郎
葉の残る桜冬芽の並木かな★★★★
一ト風に木の実しぐれとなりにけり★★★
かさこそと思索つづくや落葉道★★★

11月17日(3名)

●小口泰與
雨粒のはねし水面や冬紅葉★★★★
草むらをすっぽり包む落葉かな★★★
お絞りにほっこり顔やおでん鍋★★★

●廣田洋一
蜘蛛の巣に搦めとられし落葉かな★★★★
木道へ覆いかぶさる紅葉かな★★★
山々の頂少し紅葉せり★★★

●桑本栄太郎
白き実の南京櫨や冬紅葉★★★
冬蝶の日向ばかりを彷徨える★★★

冬菊の門辺にありぬ日差しかな★★★★
日差しを受けて冬菊が穏やかで、光をまとっている。見るものの心を穏やかにしてくれる光景だ。(高橋正子)

11月16日(6名)

●小口泰與
天明の浅間の巌や虎落笛★★★★
枯芒靄いちめんの佐久平★★★
佐久平靄より忽と冬田かな★★★

●廣田洋一
大根の青首だけを買いにけり★★★★
大根の葉雨に打たれて広がりぬ★★★
直売所葉付大根すぐに売れ★★★

●多田有花
初冬や今夜はほぼスーパームーン★★★
十一月暖かき夜のテニスコート★★★
冬紅葉の下を通勤の車★★★★

●古田敬二
全天晴れ信濃の立冬陽のさんさん★★★★
立冬の甲斐駒ケ岳の尖りかな★★★
立冬の矢作川源流水早し★★★

●桑本栄太郎
色づきて橙垂るる土塀かな★★★
軒深き母屋に白し懸大根★★★★
たくあん漬けにするために、大根を干す。雨が当たらないように深い軒下に吊るされることもある。真っ白く洗われた大根は陽があたり、さんさんと輝くばかりだ。初冬の風景として、故郷を思い出す。(高橋正子)

ダルマストーブ二年B組のあの日かな★★★

●河野啓一
冬紅葉はんなりとして暖かき★★★
冬将軍一つ残れる柿を愛で★★★
丹波より熊はもう見た二度三度★★★★

11月15日(4名)

●小口泰與
カトレアや日の温みある檜塀★★★★
風どっとビルの谷間へおでん鍋★★★
寒犬の歩みを止めぬ杣の道★★★

●河野啓一
冬帝や旬日は迅く来れるや★★★★
冬艇に子支払われて起きられず★★★
行楽の道行く二人翁とおうな★★★

●廣田洋一
冬昴星の間の闇深し★★★★
ファインダーに青く光れる冬昴★★★
目をこらしも一つ探す冬昴★★★

●桑本栄太郎
鴨川の岸にカップル冬紅葉★★★
南座にまねき上がりてしぐれ来る★★★★
「まねき上げ」は、京都の南座で毎年年末に行なわれる歌舞伎の顔見世興行の際に、出演する役者の名を入れたまねき看板を劇場正面に掲げる行事。役者の看板が勢ぞろいして、いよいよ師走を迎える準備が整った。生憎の時雨模様の天気だが、にぎにぎしさにわくわくする気持ちが高まる。(高橋正子)

鴨川の風に乗り居りゆりかもめ★★★

11月14日(3名)

●小口泰與
川沿いのランプの宿や冬の雨★★★
とたん屋根リズム奏づや夕霰★★★
朝日差す霜のあぜ道鳥の声★★★★

●廣田洋一
地下街に聖樹飾る十一月★★★
山茶花や花弁ごとに光りおり★★★★
山茶花は椿と違ってにぎやかさのある花だ。たくさん咲いて、花弁ごとが光っている。花弁の一枚一枚が自由に光っている。そんなところに山茶花の花のにぎやかさがあるのだと、気づかされた。(高橋正子)

山茶花の風雪に耐へ赤く咲く★★★

●桑本栄太郎
冬空にブルーシートの遺跡かな★★★★
サントリー山崎の峰しぐれ来る★★★
見晴るかす遥か生駒や冬の霧★★★

11月13日(5名)

●小口泰與
夕闇の赤城颪に家吼ゆる★★★
電柱の鳶の吹かるる北颪★★★
二重窓閉めたる後の虎落笛★★★★

●多田有花
仕事より戻る冬陽を正面に★★★
冬の柿採れば撓みの戻りけり★★★

ずいと引き抜く大根の手ごたえ★★★★
ただ一つのことを衒いなく言った。大根を土から引き抜くときは、地に根を張る大根相応の力をもって抜く。抜ける瞬間の腕に伝わるその手ごたえ。純粋実感とも言おうか。(高橋正子)

●廣田洋一
冬うらら義妹の供養なな七日★★★★
裾からげ走り回れる七五三★★★
千歳飴三つに折りし幼き日★★★

●桑本栄太郎
突風の木の葉しぐれとなりにけり★★★
もとの木の近くて遠き落葉かな★★★★
日照雨(そばえ)降る梢の綺羅や冬日燦★★★

●谷口博望(満天星)
公民館まつり
踊り子の笑顔に見とれ秋まつり★★★
踊り子の流るる肢体秋まつり★★★
染み入るる詩吟の声や秋まつり★★★

11月12日(5名)

●小口泰與
草原の光の川や冬の雲★★★
あけぼのの凍雲むくと受く光★★★

ランドセル赤城颪に抗しけり★★★★
吹き降ろす赤城颪に向い、抗って、体を斜めに、ランドセルを背負った児童が歩き進んで行く。赤城颪に鍛えられるたくましい子供たちへ、励ましの眼差しが読み取れる。(高橋正子)

●谷口博望 (満天星)
書斎の烏瓜
プツプツと書斎に吊るす烏瓜★★★
許せよと命奪いし烏瓜★★★★
十字架のキリストのごと烏瓜★★★

●桑本栄太郎
チャイム鳴り校門桜の落葉かな★★★★
時雨るるや更に色濃き庭の木々★★★
見上げれば緋色透きおり冬紅葉★★★

●廣田洋一
ゆりかもめ白き線引く青き空★★★
黄ばみたる蓮の向こうに桜紅葉★★★★
ヒマラヤ杉菰を巻き付け冬構★★★

河野啓一
晩秋のうす雲流れ行くデイの朝顔★★★
小春日の空にさざめく庭雀★★★
山路行く小春の空の鳥の影★★★★

11月11日(4名)

●小口泰與
鉄橋の汽笛いくたび日向ぼこ★★★★
小春日や十七文字と格闘す★★★
遠山の雲影さだか冬の朝★★★

●廣田洋一
冬の星歩むにつれてまた一つ★★★★
冬は大気が澄み、星の輝きが鋭くなる。歩くにつれて星がまた一つ見つかる。私など視力の衰えや街の灯りで、夜空にきらめく星々をこの頃は見ることはないが、心に灯るように一つまた一つと星が見つかるとうれしい。(高橋正子)

孫なくて晴れ着まぶしき七五三★★★
ご両家の三代揃ふ七五三★★★

●川名ますみ
月の道楽器学びしその先に★★★★
音楽を続ける人へ冬の月★★★
冬紅葉桜並木の色さまざま★★★

●桑本栄太郎
冬めいて舗道濡れおり雨の跡★★★
美味しそうな山茱萸の色となりにけり★★★★
小春日の木洩れ日うれし散歩かな★★★

今日の秀句/11月1日~10日


[11月10日]

★猪が二頭駆け去る森の道/多田有花
森の道で、二頭の猪が駆け去るのを目撃。私なら驚いて肝を冷やすだろうが、山の経験豊富な作者は猪に出会うこともあったのか、ニ頭の様子を面白がっている。森の道での出来事、森の生活者との遭遇に秋深さを感じる。(高橋正子)

[11月9日]

★銀杏落葉掬つては撒く子の笑顔/廣田洋一
散り重なった落葉を踏んだり、撒いたり。子供はこんな遊びをするのが好きだ。落葉を掬っては撒き散らす。ルールのある遊びではないが、「遊び」の心が可愛らしい。ふと思ったが、外国人の子どもはこんな遊びをするのだろうか。(高橋正子)

[11月8日]

★上州のだんべい言葉空っ風/小口泰與
上州の冬と言えば空っ風。空っ風の吹く中で、「だんべい」を語尾につけて白い息と共に話すのだろうが、上州言葉がほっこりとしている。上州人の冬の生活が偲ばれる。(高橋正子)

[11月7日]

★飛んだかも鬼の子姿消しにけり/谷口博望(満天星)
「鬼の子」は蓑虫のこと。枕草子の41段の『蓑虫いとあわれなり。鬼の生みたれば』に由来する。枝にぶら下がっていた蓑虫が秋風が吹くままに、いつの間にか消えている。あわれで、さびしい風情の蓑虫であるが、蓑虫を「鬼の子」と言い、鬼の子ならば、元気に「飛んだかも」と想像するのは作者の個性。蓑を着た者は、異界からの使者、つまり鬼とされていた。(高橋正子)

[11月6日]

★ひしひしと気の伝わりぬ返り花/佃 康水
小春日和によく咲いている返り花。躑躅なのだろうか。季節外れに凛と咲く花に「ひしひしとした気」を感じた。作者にひしひしとした「気」があればこそ。(高橋正子)

[11月5日]

★嘴の赤さいとおし百合鴎/谷口博望 (満天星)
冬鳥として渡って来た百合鴎は、枯れ進む景色のなかで、嘴の赤さ、脚の赤さが印象的。都鳥の名もあるように、華やかな赤さが目立つ。白い羽に赤い嘴が可愛らしい。(高橋正子)

[11月4日]

★秋天の水底と見ゆ深さかな/桑本栄太郎
秋の天を見あげ、目をとどめれば、あまりの青さに、そこに水底を見ているような錯覚になる。水底の青の恐ろしさも脳裏をよぎる。(高橋正子)

[11月3日]

★ジューサーからぱっと柚子の香りたつ/多田有花
ジューサーに柚子を入れ、ジューサーが動き出すとすぐさま柚子の香りが、ぱっと拡がる。驚くべき柚子の香りだ。(高橋正子)

[11月2日]

★鍬を振る頭上に広がる鰯雲/古田敬二
鍬を振り、畑を土をたがやす日は快く晴れた日が嬉しい。高い空に鰯雲が広がり、その下で鍬を振るう。力も自然に入ることだろう。働くことの爽快さ。(高橋正子)

[11月1日]

★発車待つバスの車窓や水木の実/桑本栄太郎
発車を待っているいる間、バスの窓から小さな景色が楽しめる。水木の実が熟れているのもありありと見える。水木の紫紺の実を、小鳥たちが好んで食べている様子が重ねて思い浮かぶ。(高橋正子)

11月1日~10日


11月10日(4名)

●小口泰與
動かざる湖畔の馬車の冴え冴えと★★★★
校庭の凍土となりて反り返る★★★
底冷えの仏間に独り居りにける★★★

●廣田 洋一
牡蠣剥きて思い出しけり女川よ★★★★
生牡蠣と共に啜れりレモンの香★★★
二人して焼牡蠣すする海の小屋★★★

●桑本栄太郎
隘路なる冬の紅葉や天王山★★★
時雨るるやはるか生駒嶺青空に★★★★
まだ青き色や門辺の青木の実★★★

●多田有花
夜の雨あがり風吹き冬来る★★★
猪が二頭駆け去る森の道★★★★
森の道で、二頭の猪が駆け去るのを目撃。私なら驚いて肝を冷やすだろうが、山の経験豊富な作者は猪に出会うこともあったのか、ニ頭の様子を面白がっている。森の道での出来事、森の生活者との遭遇に秋深さを感じる。(高橋正子)

ひとり来て頂に聞く冬の風★★★

11月9日(4名)

●小口泰與
冬晴や浅間噴きたる垂直に★★★★
冬ざれや二羽の鴉の鋭声起つ★★★
浴室のタイル踏みたる寒さかな★★★

●廣田洋一
銀杏落葉掬つては撒く子の笑顔★★★★
散り重なった落葉を踏んだり、撒いたり。子供はこんな遊びをするのが好きだ。落葉を掬っては撒き散らす。ルールのある遊びではないが、「遊び」の心が可愛らしい。ふと思ったが、外国人の子どもはこんな遊びをするのだろうか。(高橋正子)

銀杏落葉足裏浮きて頼りなし★★★
落葉して見晴らし良きや大銀杏★★★

●桑本栄太郎
屋上の赤き鳥居やしぐれ来る★★★★
刈田雨峡より風の摂津峡★★★
 <桂川・木津川・宇治川>
三川のつどう中州や枯尾花★★★

●河野啓一
 <デイより千里タウン内紅葉狩りに参加>_
青空を透かし紅葉は三色に★★★★
銀杏並木陽光透かしきらめくや★★★
観覧車大きくはなし紅葉林と比べても★★★

11月8日(6名)

●多田有花
返り花薄き日差しの中に咲く★★★★
少年の放送の声冬の朝★★★
冬浅き川原に残る花の色★★★

●小口泰與
上州のだんべい言葉空っ風★★★★
上州の冬と言えば空っ風。空っ風の吹く中で、「だんべい」を語尾につけて白い息と共に話すのだろうが、上州言葉がほっこりとしている。上州人の冬の生活が偲ばれる。(高橋正子)

山茶花や道を一列ランドセル★★★
若沖の仏は何と大根かな★★★

●廣田洋一
立冬やしゃんと立ちたる赤カンナ★★★
かそけくも白きつつじの帰り花★★★
たんぽぽの返り花地に張りつけり★★★★

●桑本栄太郎
剪定の切り口白く冬に入る★★★★
石垣と見ればいつもや石蕗の花★★★
藁にほのロール転がる小雨かな★★★

●河野啓一
外ツ国のプレジデントや秋の虫★★★★
散髪し風呂に入って秋の風★★★
色鳥の飛び立つ野背の里よりきたりしか★★★

●谷口博望(満天星)
遠くなる「ヤキイモー」の良き時代★★★
亜鈴持つ手に手袋の季節来る★★★★
蒸発す真つ赤に熟れし辛夷の実★★★

11月7日(4名)

●小口泰與
斬新な構図決まりし崩れ簗★★★★
風が押す霧の勢い山の襞★★★
暮の秋吾(あ)に幾ばくの齢あるや★★★

●廣田洋一
立冬や朝の身支度抜かりなし★★★★
草花の生きいきしたる今朝の冬★★★
白壁に電飾光り冬来たる★★★

●桑本栄太郎
乳母車幌の掛けらる今朝の冬★★★★
南天の実の緋色なる門辺かな★★★
京よりのともし灯遠く神の旅★★★

●谷口博望(満天星)
飛んだかも鬼の子姿消しにけり★★★★
「鬼の子」は蓑虫のこと。枕草子の41段の『蓑虫いとあわれなり。鬼の生みたれば』に由来する。枝にぶら下がっていた蓑虫が秋風が吹くままに、いつの間にか消えている。あわれで、さびしい風情の蓑虫であるが、蓑虫を「鬼の子」と言い、鬼の子ならば、元気に「飛んだかも」と想像するのは作者の個性。蓑を着た者は、異界からの使者、つまり鬼とされていた。(高橋正子)

弾けたる南京櫨に椋一羽★★★
尾を回し野ねずみ狙ふ鵙の顔★★★

11月6日(6名)

●谷口博望(満天星)
さまざまの水鳥来たる河口かな★★★★
潮干潟小さき集り百合鴎★★★
百合鴎いつの間にやら橋灯る★★★

●小口泰與
ひぐらしや我が生涯は在所にて★★★★
秋の夜や集いし友と寝(い)を惜しむ★★★
藤の実や山風あらぶ利根川原★★★

●廣田洋一
咲き残る花に遊べる秋の蝶★★★★
白蝶の休みもせずに暮の秋★★★
立冬とは何時のことかと秋桜★★★

●多田有花
川面きらきらと晩秋の日差し★★★★
青空から朱色が下がり烏瓜★★★
シリアルを温めて食ぶ冬隣★★★

●桑本栄太郎
木陰より日向歩むや冬隣★★★★
はらはらと紅葉散りけり園の門★★★
野菊咲く田道を歩む散歩かな★★★

●佃 康水
 カープ41年振りの優勝パレード
パレードや真っ赤に燃えて紅葉晴れ★★★
詩を詠むに弁慶必至菊人形★★★

ひしひしと気の伝わりぬ返り花★★★★
小春日和によく咲いている返り花。躑躅なのだろうか。季節外れに凛と咲く花に「ひしひしとした気」を感じた。作者にひしひしとした「気」があればこそ。(高橋正子)

11月5日(6名)

●小口泰與
花芒利根の川原のとびの声★★★★
燦爛と逆光の湖黄鶺鴒★★★
あるまじき犬の粗相や菊人形★★★

●谷口博望 (満天星)
都鳥昔男の恋の歌★★★

見つけたり赤き嘴百合鴎(原句)
嘴の赤さいとおし百合鴎★★★★(正子添削)
冬鳥として渡って来た百合鴎は、枯れ進む景色のなかで、嘴の赤さ、脚の赤さが印象的。都鳥の名もあるように、華やかな赤さが目立つ。白い羽に赤い嘴が可愛らしい。(高橋正子)

浜行かば木斛の実の弾けたり★★★

●廣田洋一
若き鷹小屋より眺む暮の秋★★★
万年青の実一粒赤くなりにけり★★★★
万年青の古株目立つ赤き実よ★★★

●多田有花
沈みゆく陽が照らしおる花すすき★★★★
昔からある家柿の実る家★★★
まだ朝日当たらず柚子のひっそりと★★★

●桑本栄太郎
穭穂の稔り垂れおり丘の田に★★★★
青桐の実の黒子なり青空に★★★
長き影さえも哀しき暮秋かな★★★

●古田敬二
旅を行くリュックに重し紀伊の柿★★★
秋の陽の五百羅漢の顔に揺れ★★★★
天高し金婚式へあと一年★★★

11月4日(5名)

●谷口博望(満天星)
水鳥の中のカンムリカイツブリ★★★★
野を行けば尾を回したる鵙日和★★★
埋立ての淡水池に小鴨かな★★★

●小口泰與
落鮎や岩も白波浴びにける★★★
竹の春赤城山(アカギ)を洗う通り雨★★★
まんまるの有明月や鴉鳴く★★★★

●多田有花
朝寒やまず一杯のブラックコーヒー★★★
温かき蕎麦をすすりし冬隣★★★
仰ぎ見る桜紅葉と青空と★★★★

●廣田洋一
今日から小春解禁と天気予報★★★
検査結果良好なりと小春の日★★★
大銀杏見上げる先に冬の空★★★★

●桑本栄太郎
秋天の水底と見ゆ深さかな★★★★
秋の天を見あげ、目をとどめれば、あまりの青さに、そこに水底を見ているような錯覚になる。水底の青の恐ろしさも脳裏をよぎる。(高橋正子)

秋蝶の黄なるばかりが徘徊す★★★
摂津峡秋の入日の茜かな★★★

11月3日(6名)

●谷口博望 (満天星)
爛々と野良猫出たり冬来る★★★★
冬の桐丸太ん棒に様変わり★★★
マッチョマンのポーズ冬の百日紅★★★

●多田有花
秋冷の大台ケ原に傾く陽★★★
ジューサーからぱっと柚子の香りたつ★★★★
ジューサーに柚子を入れ、ジューサーが動き出すとすぐさま柚子の香りが、ぱっと拡がる。驚くべき柚子の香りだ。(高橋正子)
、、
ポケットに手を入れ夜寒のテニスコート★★★

●廣田洋一
風呂吹や柚子を足したり母の味★★★★
鉢植えの花枯れ落ちて秋行きぬ★★★
冬近したわわな柚子の色づけり★★★

●小口泰與
爽籟や長き裾野の赤城山★★★
竹林の新たや今朝の雨の秋★★★
薄野やあらぬ所に小鳥の巣★★★★

●桑本栄太郎
括られて腰折る畑やすがれ菊★★★
風無くて悄然たりぬ尾花かな★★★
ごみ出しの夜のとばりや虫細る★★★★

●古田敬二
来年の花色秘めし種を採る★★★
口笛を吹く枳殻の実のまろし★★★★
青空に採り残されて木守柿★★★

11月2日(7名)

●谷口博望(満天星)
水を出て水に帰りぬ破蓮★★★★
川渡る番の鴨のシルエット★★★
夕干潟餌の滴る鴨の嘴★★★

●小口泰與
青空へ白雲伸ぶや草紅葉★★★★
打ち込みし長胴太鼓空澄めり★★★
影もまた風に預けて秋の湖★★★

●廣田洋一
新刊の句集拝受秋深し★★★★
秋惜しむ堰に佇む鷺一羽★★★
冬の空銀色冴えるスカイツリー★★★

●多田有花
<大台ケ原三句>
秋麗の立ち枯れの彼方熊野灘★★★
秋澄むや大峰連山を望む★★★★
天高く大蛇嵩の峡深し★★★

●河野啓一
桜紅葉車いすより滑り落ち★★★★
すべり落ち紅葉枯れれはも車いす★★★
真すぐに行けば人知る紅葉三食街道へ★★★

●桑本栄太郎
カレンダー十一月のうすきかな★★★★
青空のビルが切り取る秋日かな★★★
美しき誤解となりぬ芙蓉の実★★★

●古田敬二
鍬を振る頭上に広がる鰯雲★★★★
鍬を振り、畑を土をたがやす日は快く晴れた日が嬉しい。高い空に鰯雲が広がり、その下で鍬を振るう。力も自然に入ることだろう。働くことの爽快さ。(高橋正子)

鍬振れば小さき影来る秋の蝶★★★
枇杷の花くぐれば故郷香りけり★★★

11月1日(4名)

●廣田洋一
三笠宮逝きて昭和の秋尽きぬ★★★
鑁阿寺の伽藍めぐりて秋惜しむ★★★★
風呂吹や二人でつつく夕餉時★★★

●河野啓一
紅葉狩り何処へ行こうか地図広げ★★★
過ぎし日を偲ぶ寮歌や枯れ紅葉★★★
図らずも古き寮歌に胸熱き★★★★

●小口泰與
新蕎麦や信濃へ向かう高速路★★★
秋天へ雲垂直に起ちにけり★★★★
花芒覚満淵のささら波★★★

●桑本栄太郎
下校終え校門閉ざすピラカンサ★★★
校庭のフェンスに添うやななかまど★★★

発車待つバスの車窓や水木の実★★★★
発車を待っているいる間、バスの窓から小さな景色が楽しめる。水木の実が熟れているのもありありと見える。水木の紫紺の実を、小鳥たちが好んで食べている様子が重ねて思い浮かぶ。(高橋正子)