今日の秀句/7月21日-31日

[7月31日]
★炎天や我が影のほか影は無し/古田敬二
炎天の高く立つものがない畑などでは、こうした場面に出会う。炎天の下に静まったところに立っているのは自分だけ。自分の影だけが黒く立つ。(高橋正子)

[7月30日/2句]
★まだ熱き陽のぬくもりの瓜もらう/多田有花
夕方もまだ早い時間だろう。畑の瓜をもらったが、手に受けてみるとまだ陽のぬくもりがある。日中の暑い太陽を受け、野菜も温もっているが、そのほの暖かさに驚く。(高橋正子)

★ふと見上ぐ窓の青さや晩夏光/桑本栄太郎
まだ暑い盛りであるが、草木の繁茂も終わり、烈日にも陰りが見え、夏が終わる感慨が湧くのが、晩夏。ふと見上げた窓の青さに秋めく気配を感じた。(高橋正子)

[7月29日]
★近づくと我へわれへと目高かな/小口泰與
目高などが、自分に近寄ってくるのは、遊びに寄ってくるようで、楽しいものだ。ひと時そんな楽しみを味わう。それも涼しいことだ。(高橋正子)

[7月28日/2句]
★樹にもたれ絵描く数人夏帽子/祝恵子
絵を描くのに、必ずしも座って描くとは限らない。木陰を作る木の幹に持たれ、夏帽子を冠り、スケッチをしているグループなのであろう。暑苦しくなく、軽やかな光景だ。(高橋正子)

★風吹けば光りて現る青胡桃/古田敬二
葉隠れに生っているまだ青い胡桃は、葉に隠れてめだたないが、風が葉を翻えすと、胡桃のありかがよくわかる。ましてや光っているのだから、存在は確かだ。(高橋正子)

[7月27日]
★一面の青田を真っ直ぐ行く列車/高橋秀之
下五を名詞で止めると句のイメージがはっきりする。一面の青田が広がる平野。その中を列車が、まっすぐ行く。青田の清々しい風景が、旅心を誘う句。(高橋正子)

[7月26日]
★鴨はもう植田の高さに隠れおり/祝恵子
植田に鴨を泳がせ、鴨に雑草を食べさせ、鴨の飼育を目的としているケースなのだろう。植田の苗は、みるみる生長し、鴨の姿を隠してしまうほどになった。苗も、鴨も生長盛ん。(高橋正子)

[7月25日/2句]
★白粉花暮れゆく空に咲き揃う/小川和子
白粉花は夕方から咲く花。暮れゆく空に咲く花は、かすかな良い香りがあり、抒情的。(高橋正子)

★嬬恋のきゃべつ山積み湖隠す/小口泰與
夏の冷涼な気候を生かして、嬬恋ではキャベツがたくさん生産される。湖を隠ししてしまうほどのキャベツの収穫量。壮観であろう。(高橋正子)

[7月24日]
★はちきれんばかりの紅トマトもぐ/古田敬二
木で熟れたトマトは真っ赤。それもはちきれんばかりの紅。強い夏の日差しを糧に赤々と熟れるトマトが見事だ。(高橋正子)

[7月23日]
★外つ人のあまた祇園や日盛りに/桑本栄太郎
京都を訪れる外国人は多いが、なかでも祇園の情緒に惹かれる外国人が多いだろう。京の日盛りをものともせず、祇園を楽しむ外国人たちの姿は、京の風景になっているようだ。(高橋正子)

[7月22日]
 六甲アイランド埠頭
★夏潮の海原蒼きカフェレストラン/桑本栄太郎
夏潮の海原の蒼さは、見るだけで爽快な、広々とした気分になる。カフェレストランでゆっくり喫茶しながら眺める時間は至福の時。(高橋正子)

[7月21日]
★黒光りして児の掌にかぶと虫/河野啓一
子ども、特に男の子は、虫の中ではかぶと虫がとりわけ好きだ。黒光りする胴体、たくましい角、決して敏速には動かない堂々とした様子。そのかぶと虫を掌に乗せて、王者の気分だ。(高橋正子)

7月21日-31日

7月31日

●古田敬二
炎天や我が影のほか影は無し★★★★
炎天の高く立つものがない畑などでは、こうした場面に出会う。炎天の下に静まったところに立っているのは自分だけ。自分の影だけが黒く立つ。(高橋正子)

忘れ鍬越えて南瓜の蔓伸びる★★★
地下鉄という涼しき箱に入り座す★★★

●小口泰與
ダリア咲く頭花かがやく雨しづく★★★
手に乗せし桃や小犬の駆け寄りて★★★
青芝を手ずから刈って大の字に★★★★

●桑本栄太郎
雲流れ青空蒼き晩夏かな★★★★
落ち蝉の白き腹見せあおのけに★★★
寝ていても部活の声と蝉しぐれ★★★

●小西 宏
ヒマワリに顔見つめらる知らぬ道★★★★
波音に耳を澄ませば夏の星★★★
窓開けて寝れば澄む夜の風涼し★★★

7月30日

●小口泰與
まんまるなしずくにうつるダリアかな★★★
緋のダリアほろと落ちたる雨雫★★★★
天牛や茎のしずくのほろと落つ★★★

●河野啓一
きゅうり漬カリリと噛んで朝の膳★★★★
異国より来れる芙蓉オクラ咲く★★★
 淡路島西海岸にて
夕凪や人麻呂の歌碑ひとり立ち★★★

●多田有花
まだ熱き陽のぬくもりの瓜もらう★★★★
夕方もまだ早い時間だろう。畑の瓜をもらったが、手に受けてみるとまだ陽のぬくもりがある。日中の暑い太陽を受け、野菜も温もっているが、そのほの暖かさに驚く。(高橋正子)

虫取り網手に少年の夏休み★★★
頂に揚羽蝶の翅残る★★★

●桑本栄太郎
ふと見上ぐ窓の青さや晩夏光★★★★
まだ暑い盛りであるが、草木の繁茂も終わり、烈日にも陰りが見え、夏が終わる感慨が湧くのが、晩夏。ふと見上げた窓の青さに秋めく気配を感じた。(高橋正子)

部活子の校舎に音色や夏深し★★★
すさまじく蚊を打つ吾を恥にけり★★★

●小西 宏
群青の海遥かなる夏の雲★★★
日焼けして目玉ばかりや浮き輪の子★★★★
青草に大の字に寝て星いくた★★★

●高橋秀之
夏の空昇る朝日は眩しくて★★★
拍子打つ神田明神夏の朝★★★★
男坂の階段登り汗拭う★★★

7月29日

●古田敬二
梅を干す四日目塩の光り出ず★★★★
梅干しは土用干しをすると、ふっくらとして甘みがでると聞く。干して四日目にもなると塩の粒が光るようになる。土用の太陽のもとの塩の光がいかにも真夏らしい。(高橋正子)

赤き口見せて烏の暑に喘ぐ★★★
夕風にひそかな秋の気配せり★★★

●小口泰與
近づくと我へわれへと目高かな★★★★
目高などが、自分に近寄ってくるのは、遊びに寄ってくるようで、楽しいものだ。ひと時そんな楽しみを味わう。それも涼しいことだ。(高橋正子)

あけぼのや花粉にまみる黄亀虫★★★
独りなら朝は珈琲秋近し★★★

●桑本栄太郎
黒雲の驟雨来るらし風立ちぬ★★★
さるすべり揺れ特急電車の通過駅★★★★
真夜に起き窓を閉め居る涼夜かな★★★

●高橋正子
しもつけの花の紅色箱根の野★★★★
街とは違った、高原の風景に旅人の目を楽しませてくれる。箱根の野のしもつけは、淡い紅色だが鮮明だ。(高橋信之)

山嫁菜箱根の山の涼しかり★★★
夏雲の水に映りて姫河骨★★★

7月28日

●祝恵子
八百八橋の一つを渡り夏歩き★★★
空蝉の転がりおりぬビルの街★★★
樹にもたれ絵描く数人夏帽子★★★★
絵を描くのに、必ずしも座って描くとは限らない。木陰を作る木の幹に持たれ、夏帽子を冠り、スケッチをしているグループなのであろう。暑苦しくなく、軽やかな光景だ。(高橋正子)

●小口泰與
雲の峰水面に暮の色さだか★★★
あじさいや川に沿いたる吾妻線★★★★
山小屋や俄かに黒雲あらわれし★★★

●古田敬二
風吹けば光りて現る青胡桃★★★★
葉隠れに生っているまだ青い胡桃は、葉に隠れてめだたないが、風が葉を翻えすと、胡桃のありかがよくわかる。ましてや光っているのだから、存在は確かだ。(高橋正子)

チェロケース黒光りして行く炎天★★★
涼風の芦原まあるく撫でて来る★★★

●河野啓一
レース越し道行く人の見え隠れ★★★
ひとしきりうるさき蝉のしづまりて★★★
鱧つつき川を見下ろす天神祭★★★★

●桑本栄太郎
<高瀬川>
せせらぎの木陰に流れ白木槿★★★
<祇園界隈>
紅壁の花見小路や朝驟雨★★★
驟雨去り日差し明るき京町家★★★★

●高橋秀之
列車降り出歩く街に夏の雨★★★
町おこしラリーの店で梅酒飲む★★★

夏の虹海岸線に大きな弧★★★★
虹は雨上がりの水滴に日光が当たって生まれ、この現象は夏に多く見られる。そのため、虹は夏の季語となっているので、「夏の虹」には、問題がある。

7月27日

●河野啓一
蝉の声猛暑を短き一生に★★★★
蝉が羽化してから一生を終える期間は、ごく短い。猛暑を鳴き通して死ぬのは、力強いが気の毒と思える。そういう一生もある。(高橋正子)

人の世もかくて在りなむ蝉すだく★★★
野牡丹の紫の艶愛しかり★★★

●小口泰與
夏枯れやかりつと噛みし花林糖★★★
ゆうがおや畦に鍬おく老夫婦★★★
犬ずれの吾にからみし西日かな★★★★

●桑本栄太郎
さるすべり白という風誘いけり★★★★
炎暑来る音みな黙す午後の二時★★★
風通る一間に集う午睡かな★★★

●多田有花
雲生まれ初めにし盛夏の山の上★★★
暑き日の風よく通る部屋に座し★★★
アイスショー終わり熱帯夜の中へ★★★★

●高橋秀之
一面の青田を真っ直ぐ列車行く
【添削】一面の青田を真っ直ぐ行く列車★★★★
下五を名詞で止めると句のイメージがはっきりする。一面の青田が広がる平野。その中を列車が、まっすぐ行く。青田の清々しい風景が、旅心を誘う句。(高橋正子)

日の盛り旧型汽動車が唸る音★★★
百選の小さな駅舎に扇風機★★★

7月26日

●小口泰與
嬬恋のきゃべつ畑や風と雲★★★★
風死すや寝に着く前の般若湯★★★
雨後の朝日矢を受けたる茄子かな★★★

●迫田和代
空に香があると思える虹が咲く★★★★
虹を花と見たロマンティックな句だが、「空に香がある」には、感覚の鋭さがある。美しいものには、「香」がまとう。(高橋正子)

緑燃え木陰の多い夏館★★★
青田道山陰に向きまっすぐに★★★

●祝恵子
鴨はもう植田の高さに隠れおり★★★★
植田に鴨を泳がせ、鴨に雑草を食べさせ、鴨の飼育を目的としているケースなのだろう。植田の苗は、みるみる生長し、鴨の姿を隠してしまうほどになった。苗も、鴨も生長盛ん。(高橋正子)

墓地の草抜き散策の足のばす★★★
夏休み竹刀の音と掛け声と★★★

●桑本栄太郎
黒瓦屋根が好みよ百日紅★★★★
飛ぶものと鳴くもの黙し炎暑来る★★★
八方に討死したる昼寝かな★★★

7月25日

●河野啓一
早朝の木漏れ日蝉を連れてくる★★★★
「蝉を連れてくる」に、今日一日の生活の楽しさが想像できる。早朝の木漏れ日に蝉がなきはじめている。(高橋正子)

柿の葉のゆらりと揺れて青柿も★★★
白良浜白波寄せて浜木綿に★★★

●小口泰與
嬬恋のきゃべつ山積み湖隠す★★★★
夏の冷涼な気候を生かして、嬬恋ではキャベツがたくさん生産される。湖を隠ししてしまうほどのキャベツの収穫量。壮観であろう。(高橋正子)

爪立ってカメラ構える祭りかな★★★
夏蝶のつかず離れず高みへと★★★

●桑本栄太郎
 真夏の山陰街道
緑蔭の杜の大樹や朱の鳥居★★★★
街道の古び炎暑の犬矢来★★★
バス道の触れんばかりや百日紅★★★

●川名ますみ
茂りから透り来し陽の編み物に★★★
コットンのニットを抜けて風薫る★★★
レース着て母はわたしを抱きたり★★★★

●小川和子
白粉花暮れゆく空に咲き揃う★★★★
白粉花は夕方から咲く花。暮れゆく空に咲く花は、かすかな良い香りがあり、抒情的。(高橋正子)

暮れてゆく一日咲き継ぐ花白粉★★★
 庄内メロン
メロン食ぶ匙よく通る頃合いに★★★

7月24日

●小口泰與
卓袱台の塵の浮き立つ西日かな★★★
白昼に空酒飲みて暑気払い★★★
近づくや水面にぎわす目高どち★★★★

●多田有花
清流に足を浸して夏の午後★★★★
梅雨明けの部屋全開に風入れる★★★
熊蝉の声に囲まれ目を覚ます★★★

●河野啓一
窓越しに見る百日紅デイの朝★★★★
川沿いに酒酌み交わし天神祭★★★
コンチキチン音彩織れる交響詩★★★

●桑本栄太郎
高槻の青田につづく瓦屋根★★★★
青田に瓦屋根は、日本の原風景といってよい。夏の日に輝く青田を遠巻きにするように瓦屋根の民家ある。青田と瓦の色は、懐かしくここと安らぐ日本の風景だ。(高橋正子)

立つ風の淡き隣の扇子かな★★★
峰雲の嶺から谷へ送電線★★★

●小西 宏
マンションにひまわり育つ子らの水★★★★
赤土に木星のごとスイカ寝る★★★
水黽(あめんぼ)の脚止まりたるとき水輪★★★

●古田敬二
はちきれんばかりの紅トマトもぐ★★★★
木で熟れたトマトは真っ赤。それもはちきれんばかりの紅。強い夏の日差しを糧に赤々と熟れるトマトが見事だ。(高橋正子)

桜木の樹形丸ごと蝉しぐれ★★★
人は皆仲よくすべし椋の花★★★

7月23日

●小口泰與
百日紅雨をともない散りにけり★★★★
百日紅は、真夏の暑さにもめげず咲き続ける強靭な花だが、一つ一つのはなは、フリルのような花弁をもって繊細だ。雨が降りかかるとその小花が雨とともに散るが、真夏の暑のなかで儚さを思わせる。(高橋正子)

凌霄花や水に沈みし無人駅★★★
音のして青梅落ちし流れかな★★★

●桑本栄太郎
外つ人のあまた祇園や日盛りに★★★★
京都を訪れる外国人は多いが、なかでも祇園の情緒に惹かれる外国人が多いだろう。京の日盛りをものともせず、祇園を楽しむ外国人たちの姿は、京の風景になっているようだ。(高橋正子)

祇園花見小路界隈
さるすべり寺苑に多き建仁寺★★★
涼風の木陰となりぬ高瀬川★★★

●古田敬二
モロコシの固き実りをごきともぐ★★★★
ごきごきと太きモロコシもげば風★★★
モロコシをもげば畑に風来たる★★★

●高橋信之
夏休みの子ら球を蹴る公園広場★★★
炎天の白い空見上げては歩く★★★★
黄花揺れてそこに涼しい風が吹く★★★

●高橋正子
午後の日の色に染まりて黄花コスモス★★★★
炎天に咲く黄花が明るい。暑さを忘れさせるほどの明るさが嬉しい。(高橋信之)

真昼間の影をもちたる金糸梅★★★
六月に入りたる朝摘むブルーベリー★★★

7月22日

●小口泰與
百日紅そぼふる雨の牧場かな★★★
木道の一筋続くきすげかな★★★★
ありんこは二肢より歩みそめにけり★★★

●河野啓一
梅雨明けて列島覆う高気圧★★★
朝採りのトマト回転楕円体★★★
中玉の西瓜を一つ選びたり★★★★

●桑本栄太郎
<六甲アイランド埠頭海浜レストラン>
夏潮の海原蒼きカフェレストラン★★★★
夏潮の海原の蒼さは、見るだけで爽快な、広々とした気分になる。カフェレストランでゆっくり喫茶しながら眺める時間は至福の時。(高橋正子)

水脈ひろげ舟が船曳く夏の海★★★
岸壁に竿立ち並ぶ晩夏かな★★★

●小西 宏
雷神の水に遊べるガラス窓★★★
紫や白や槿の散歩道★★★
瀬に裸足入れて多摩川梅雨明ける★★★★

7月21日

●古田敬二
 相生山から市街地を望む
夏雲やわが青春の街の上★★★★
青春といえるのは、大学生ぐらいの年代であろうが、その時を過ごした街は、特になつかしいものである。その街の上に浮かぶ真っ白なはつらつとした雲に、わが青春を重ねて思う。(高橋正子)

ラグビー場夕陽に向かって照明塔★★★
明け易しガン病棟の友思う★★★

●小口泰與
百日紅沛雨に打たる野良犬よ★★★
つぶらなる茎立つ皿のさくらんぼ★★★★
喰われたるばらの蕾や鴉二羽★★★

●河野啓一
黒光りして児の掌にかぶと虫★★★★
子ども、特に男の子は、虫の中ではかぶと虫がとりわけ好きだ。黒光りする胴体、たくましい角、
決して敏速には動かない堂々とした様子。そのかぶと虫を掌に乗せて、王者の気分だ。(高橋正子)

浜木綿の咲いてま白の糸紡ぎ★★★
釣果提げ息の来たるや梅雨晴間★★★

●佃 康水
噴水に濡れて雀の小躍りす★★★
語り部と旅人仰ぐ夾竹桃★★★
緑濃き稲に白鷺見え隠れ★★★★

●多田有花
森歩く時おり涼風吹く中を★★★★
日に焼けた少年の肌夏休み★★★
滝行に向う白装束の群れ★★★

●桑本栄太郎
唐黍の採り頃つたえ赤き髪★★★
凌霄花(のうぜん)の夕日にこぼれ風にゆれ★★★★
推敲の窓の茜の西日かな★★★

今日の秀句/7月11日-20日

[7月20日/2句]
★一面の青田のなかをモノレール/河野啓一
真緑の青田を上をモノレールが走っている。田んぼの上を走るモノレールも今では、すっかり田園に調和しているようだ。(高橋正子)

★帯姿涼しき人や能楽堂/黒谷光子
能楽鑑賞に集う人々には、和服姿の人も多い。夏帯をきりっと締めた姿は、目には涼しさを呼ぶ。
(高橋正子)

[7月19日/2句]
★青田中つらぬく道あり海近く/迫田和代
道が一本つらぬいている青田が心象風景のように 思える。海が近いことで青田の緑がさらに鮮やかに明るくなっている。(高橋正子)

 広島・平和公園
★緑陰の窪に砂浴ぶ雀どち/佃 康水
緑陰のちょっとした窪を見つけて砂浴びをする雀たちが、かわいらしく、涼しそうな風景だ。(高橋正子)

[7月18日]
★縁台に大の字に寝て二重虹/小口泰與
縁台に大の字に寝れば、空には二重虹がかかって、これほど心地爽快なことはない。(高橋正子)

[7月17日/2句]
★畑よりスイカ抱く人現れる/祝恵子
スイカを抱いて畑から出てきた人がいることへの驚き。懐かしい光景だったかもしれない。熟れ具合を確かめ、大事に抱いて出てきた。団欒に冷やして食べらるのだろう。(高橋正子)

★草取の朝の匂いに興じけり/小西 宏
日中の暑さを避けての朝の草取。どんどん捗り、青臭い草の匂いがそのたび立ち上る。その匂いに「興じけり」は、都会人。(高橋正子)

[7月16日]
★新生姜水洗いされ笊のなか/河野啓一
新生姜が出回る季節になった。笊には洗ったばかりの新生姜がいきいきとある。甘酢漬けにして保存しでき、さわやかな味が楽しめる。(高橋正子)

[7月15日]
★そびえ立つ青嶺青嶺の熱海かな/桑本栄太郎
熱海というと海に目が向くが、青嶺も続くのである。その新鮮さも旅の目を楽しませてくれる。(高橋正子)

[7月14日]
★梅雨明けの蜻蛉(とんぼう)高く翅の青/小西 宏
梅雨明けを喜ぶものは、人だけではないのだろう。蜻蛉が梅雨明けの空を高く、ゆうゆうと喜び飛んでいる。よく見れば、翅は空の青が透けて青いのだ。梅雨明けの嬉しさ読める句だ。(高橋正子)

[7月15日]
★そびえ立つ青嶺青嶺の熱海かな/桑本栄太郎
熱海というと海に目が向くが、青嶺も続くのである。その新鮮さも旅の目を楽しませてくれる。(高橋正子)

[7月14日]
★梅雨明けの蜻蛉(とんぼう)高く翅の青/小西 宏
梅雨明けを喜ぶものは、人だけではないのだろう。蜻蛉が梅雨明けの空を高く、ゆうゆうと喜び飛んでいる。よく見れば、翅は空の青が透けて青いのだ。梅雨明けの嬉しさ読める句だ。(高橋正子)

[7月13日]
★潮風の涼し花の丘通れば/祝恵子
花が咲き乱れる丘を通れば、涼しい潮風が吹いてくる。潮風の明るい健康的な涼しさがいい。(高橋正子)

[7月12日]
★早朝の池に蓮見の来訪者/高橋秀之
早朝、作者はジョギングか散歩で蓮池を訪ねたのだろう。そのとき、蓮見の来訪者が意外と大勢いるのに驚いた。蓮は早朝に開花するので、この開花の時間を狙っての蓮見客。(高橋正子)

[7月11日]
★風の来て南蛮黍の葉擦れ音/古田敬二
とうもろこしを南蛮黍とも言う。南蛮黍は実が熟れてくるに従って、乾いた葉音がする。風が吹くとざわざわと初秋の気配を感じさせる。(高橋正子)

7月11日-20日

7月20日

●河野啓一
一面の青田のなかをモノレール★★★★
真緑の青田を上をモノレールが走っている。田んぼの上を走るモノレールも今では、すっかり田園に調和しているようだ。(高橋正子)

庭隅に待ち望みたる浜木綿が★★★
朝顔の露に濡れたる一番花★★★

●小口泰與
凌霄花や山の国原もやの中★★★
青桐や浅間仰ぎて深呼吸★★★★
あけぼのや終の栖の薔薇の園★★★

●桑本栄太郎
 浅草・ジャズライブハウス
五十周年記念ジャズ聴く日の盛り★★★★
ジャズに酔いしれた青春の日が懐かしく蘇ってくる。「日の盛り」に哀愁さえ感じられる。(高橋正子)

手をたたき足ふみ鳴らすジャズの汗★★★
真夏日やラッパ吠えおりジャズの昼★★★

●黒谷光子
帯姿涼しき人や能楽堂★★★★
能楽鑑賞に集う人々には、和服姿の人も多い。夏帯をきりっと締めた姿は、目には涼しさを呼ぶ。
(高橋正子)

万緑の中登り来て庵二棟★★★
冷房車能の余韻に浸りつつ★★★

7月19日

●迫田和代
ホームにはホームの心虹の橋★★★
日の入りの空水美し花菖蒲★★★
青田中つらぬく道あり海近く★★★★
道が一本つらぬいている青田が心象風景のように 思える。海が近いことで青田の緑がさらに鮮やかに明るくなっている。(高橋正子)

●小口泰與
竹そよぎ角ぐむばらの朝かな★★★★
羅や常なき雲の浅間山★★★
蛇まれに蛙常なる草いきれ★★★

●桑本栄太郎
 浅草到着
浅草へ着くや溽暑の街中へ★★★
日盛りの鳶装束のいなせかな★★★
頂きの夏雲まとうスカイツリー★★★★

●小西 宏
我が胸も高まる孫の夏休み★★★
梅雨明けを待ち素潜りのフィン擦る★★★
雷去りし丘に花火の遠光り★★★★

●佃 康水  
 広島・平和公園
緑陰の窪に砂浴ぶ雀どち★★★★
緑陰のちょっとした窪を見つけて砂浴びをする雀たちが、かわいらしく、涼しそうな風景だ。(高橋正子)

噴水の飛沫に雀羽ばたけり★★★
よろけつつ大き荷を曳く蟻強し★★★

7月18日

●小口泰與
縁台に大の字に寝て二重虹★★★★
縁台に大の字に寝れば、空には二重虹がかかって、これほど心地爽快なことはない。(高橋正子)

綿菅や浅間の雲の常なけれ★★★
眼間につと這い出づる蝮かな★★★

●桑本栄太郎
 東京駅着旧句友と再会
夏旅の友と待ち合う”銀の鈴”★★★
ジョッキ持てビールで乾杯夏の昼★★★★
相聞句お披露目したり夏の昼★★★

●多田有花
甘夏の果汁四方に飛ばし食ぶ★★★★
甘夏は、汗ばむ季節が美味しい。果汁がたっぷりあればなおのこと。四方に果汁が飛び散って、それが甘夏らしいところ。(高橋正子)

電柱の付け替え工事梅雨晴間★★★
短夜に動画次々再生す★★★

●小西 宏
涼風(すずかぜ)に小鳥の寝言朝まだき★★★
樹下の道蝉の音重くなりゆける★★★★
白黒の猫うつくしき端居かな★★★

7月17日

●祝恵子
畑よりスイカ抱く人現れる★★★★
スイカを抱いて畑から出てきた人がいることへの驚き。懐かしい光景だったかもしれない。熟れ具合を確かめ、大事に抱いて出てきた。団欒に冷やして食べらるのだろう。(高橋正子)

桔梗開く空気吐き出す広げだす★★★
湿り畑には長靴干されあり★★★

●古田敬二
籠に盛るトマトの紅茄子の紺★★★
鈴鹿から涼しき風の届きけり★★★
ここからはひんやり涼しい森に入る★★★★

●小口泰與
素麺の逃れし樽のひえびえと★★★
つつましく雨に打たれし茄子かな★★★
白めだか水面にすいと集い来し★★★★

●桑本栄太郎
 新幹線車窓より
万緑やトトロの出そうな森の闇★★★
白鷺の一群れ青き水田に★★★
稜線に鉄塔並び雲の峰★★★★

●小西 宏
草取の朝の匂いに興じけり★★★★
日中の暑さを避けての朝の草取。どんどん捗り、青臭い草の匂いがそのたび立ち上る。その匂いに「興じけり」は、都会人。(高橋正子)

風渉り蝉の静かに鳴く朝よ★★★
瀬戸内の寿司振る舞われ句を申す★★★

7月16日

●高橋秀之
夜明けから青き色する夏の空★★★★
夏の空は、夜明けからしっかりと青い色となっている。日中の強烈な青空へと準備万端整っているかのようだ。(高橋正子)

耳元へ目覚まし代わり蚊の羽音★★★
淡路から大空へ伸びる夏の虹★★★

●小口泰與
はたた神あらぬ隅へと犬の居し★★★
木道の続く限りの綿菅ぞ★★★★
竹筒を逃れし冷やし素麺よ★★★

●河野啓一
新生姜水洗いされ笊のなか★★★★
新生姜が出回る季節になった。笊には洗ったばかりの新生姜がいきいきとある。甘酢漬けにして保存しでき、さわやかな味が楽しめる。(高橋正子)

緑陰に朝餉や雀チュンチュンと★★★
星月夜木々はさらさら風にゆれ★★★

●多田有花
いま山を離れるところ梅雨の月★★★★
一夜にて梅雨の茸の育ちけり★★★
白蓮の開き初めにし今朝の池★★★

●桑本栄太郎
 近江平野野洲
乾上りて石の流れや夏の川★★★
 浜名湖
浮き舟の舫い繋がれ夏の湖★★★
 富士吉田市
夏空へ煙突あまたや富士吉田★★★★

●佃 康水
万灯を海に拡げて管弦祭★★★
太鼓打ち始まる茅の輪くぐりかな★★★
梧桐の大き葉の上花溢る★★★★

●小西 宏
一歩ずつ酷暑の坂に影を踏む★★★
カナブンの網戸に憩う甲の色★★★
己が顔叩いて暫し蚊の静寂★★★★

●古田敬二
涼風や白詰草のゆれるほど★★★
高台に来れば涼風音たてて★★★
見つめれば白詰草に紅仄か★★★★

7月15日

●小口泰與
座敷たちまち来たる休肝日★★★
近寄ると水面にすいと目高かな★★★★
夕闇や簾を伝う雨滂沱★★★

●桑本栄太郎
<上京の新幹線車窓より>
夏草の真中にありぬ岐阜羽島★★★
夏川の鉄橋つづけり大井川★★★

そびえ立つ青嶺青嶺の熱海かな★★★★
熱海というと海に目が向くが、青嶺も続くのである。その新鮮さも旅の目を楽しませてくれる。(高橋正子)

7月14日

●小口泰與
萱草の花や野川のごうごうと★★★★
静けさに梅の実落つる音したり★★★
はたた神雨脚太くなりにけり★★★

●桑本栄太郎
 車窓の近江平野
青田晴れはるか遠くに近江富士★★★★
空が晴れて、青田は緑が遠くまで輝き、その果てに近江富士が見える。こうした景色が楽しめるのも日本の旅のよさ。こういう景色を失いたくないものだ。(高橋正子)

無尽とも近江平野の青田波★★★
 新幹線・京都駅待合室
坊んさんのスマフォしている夏の駅★★★

●小西 宏
梅雨明けの蜻蛉(とんぼう)高く翅の青★★★★
梅雨明けを喜ぶものは、人だけではないのだろう。蜻蛉が梅雨明けの空を高く、ゆうゆうと喜び飛んでいる。よく見れば、翅は空の青が透けて青いのだ。梅雨明けの嬉しさ読める句だ。(高橋正子)

日の影の濃きバス停の立葵★★★
七月のカナカナひとつ空に透く★★★

●河野啓一
浜木綿のつぼみの白く顔を出し★★★
台風の去りてみどりの朝の風★★★★
草いきれ狭庭の隅はジャングルに★★★

●小川和子
芝掠め古墳の里の夏つばめ★★★
初蝉の途切れがちなる声流る★★★
蓮池に溢れて蓮の花優美★★★★

●古田敬二
元気かねと亡父来るごと咲く浜木綿★★★
茄子は紺トマトは紅に緑ピーマン★★★
カサブランカ花弁を夕日に透かせたつ★★★★

7月13日

●祝恵子
潮風の涼し花の丘通れば★★★★
花が咲き乱れる丘を通れば、涼しい潮風が吹いてくる。潮風の明るい健康的な涼しさがいい。(高橋正子)

水路の水深くなり植田潤う★★★
立葵井戸端会議の続きおり★★★

●小西 宏
森騒ぐ青葉嵐に魁けて★★★
梅雨の夜やトトロのそばに子の眠る★★★★
被災地画像
向日葵の出水の泥に残り咲く★★★

●小口泰與
わたすげや木道空へ続きおり★★★★
わたすげや木道空へ続きおり★★★★
今年は、わたすげが特に美しいとラジオで聞いたばかりなので、まさにこの句の景と思った。見渡す限りのわたすげに、木道は遥かは空へ続いている。 優しく、美しい。(高橋正子)

雪渓の一の倉沢禽一羽★★★
あぜ道に雨しずく満つ夏ひばり★★★

●多田有花
本を読むうちに昼寝に誘われる★★★
古民家の奥でいただく夏料理★★★★
山行の予定練りつつ葛饅頭★★★

●川名ますみ
葉生姜の淡き色より囓りけり★★★★
酢どりにした葉生姜は、一口噛めばすがすがしい香りと味わいが口に広がる。赤みの濃いところから次第に淡い色になっているが、淡い色のところからそっと囓ってみる。それがさわやかさを呼ぶ。(高橋正子)

硝子器にじゅんさいを掻く箸の先★★★
蓴菜を掻けばひかりぬ箸の先★★★

7月12日

●小口泰與
雨後の空紺を刷きたる夏の湖★★★
虎尾草や夕づく空へ牛の声★★★
次つぎに鮎のあがるや浅間晴★★★★

●高橋秀之
早朝の池に蓮見の来訪者★★★★
早朝、作者はジョギングか散歩で蓮池を訪ねたのだろう。そのとき、蓮見の来訪者が意外と大勢いるのに驚いた。蓮は早朝に開花するので、この開花の時間を狙っての蓮見客。(高橋正子)

正午には夜明けの曇りが夏空に★★★
梅雨晴れの満月ひときわ明るくて★★★

7月11日

●古田敬二
風の来て南蛮黍の葉擦れ音★★★★
とうもろこしを南蛮黍とも言う。南蛮黍は実が熟れてくるに従って、乾いた葉音がする。風が吹くとざわざわと初秋の気配を感じさせる。(高橋正子)

森行けば木漏れ日嬉し梅雨晴間★★★
新緑の木漏れ日道に○○と★★★

●小口泰與
夏山へ白雲湧くや雨後の朝★★★
夏ひばり三山もやに沈みける★★★
ねじ花の乱立せりや雀どち★★★★

●桑本栄太郎
ふるさとの海の香りや烏賊届く★★★★
潮の香に塩を振りつつ烏賊洗う★★★
歩こうかバスに乗ろうか梅雨晴間★★★

●多田有花
梅雨の嵐ほんの少しで過ぎにけり★★★
台風の去りて梅雨の夜の静か★★★
陽の香り残りしトマトを丸かぶり★★★★

今日の秀句/7月1日-10日

[7月10日]
★水の輪の真ん中にいるみずすまし/古田敬二
みずすましが泳ぐとその周りに水の輪ができるが、瞬間を止めれば、みずすましは、水の輪の真ん中にいる。(高橋正子)

[7月9日]
★雉の子の畦に跳び出づ草いきれ/小口泰與
畦に雉の子が迷い出てきて驚くが、夏草に埋没しそうな雉の子の懸命な様子かわいく愛おしい。(高橋正子)

[7月9日]
★雉の子の畦に跳び出づ草いきれ/小口泰與
畦に雉の子が迷い出てきて驚くが、夏草に埋没しそうな雉の子の懸命な様子かわいく愛おしい。(高橋正子)

[7月8日]
★初蝉の不揃いの声響く朝/高橋秀之
おぼつかなく、遠慮がちな鳴き方に、初蝉らしさがある。真夏には、蝉も一斉に鳴きそろって声をあげが、鳴きはじめは、あちこちから、試しに鳴いているようで不揃いなのだ。(高橋正子)

[7月7日]
★到来の菜を香らせ夏座敷/川名ますみ
この句の菜は、おかずや料理のことを指し、「一汁一菜」の「さい」と読みたい。到来物はそれだけでもうれしいが、それがよい香りがすれば、気持ちが清新になって、うれしさも増す。それをいただく夏座敷が涼しげだ。(高橋正子)

[7月6日]
★草刈り機木魂し合える谷間かな/佃 康水
夏草が生い茂り、草刈りに忙しいときだ。谷間のあちこちで使う草刈り機の音が木魂する。谷間の村も生き生きとし、活動的な暮らしがうかがえる。(高橋正子)

[7月5日]
★茄子苗の花の咲きつつ売られけり/桑本栄太郎
茄子の苗が売られているが、はや、紫の花がついて、みずみずしく勢いがある。植えればすぐに根付き、よく実を結ぶそうだ。(高橋正子)

[7月4日]
★赤味さす眉月七月の街に/川名ますみ
赤味を帯びた眉月はやはり夏の月である。街の灯の上に、広い夜空にはかなく、神秘的だ。(高橋正子)

[7月3日]
★さりげなく少しの風を白扇子/高橋秀之
扇ぐともなく扇ぐ扇子を使うしずかな振る舞い。さっぱりとした白扇子が起こすほんの少しの風がさわやかだ。(高橋正子)

[7月2日]
★推敲の窓に入り来る青葉風/桑本栄太郎
推敲に専心しているとき、青葉を吹く風が窓から入り、ふっと緊張が解けて、さらによい境地に達したことであろう。(高橋正子)

[7月1日]
★高原の静寂をやぶる青蛙/小口泰與
青蛙は雨蛙ともいわれ、草や木の葉の上に棲み、夕立の前などにキャクキャク鳴く。高原に夕立が来そうな気配。それを感じて青蛙が一斉に鳴きはじめた。静かな高原も突如静寂が破られ、大夕立に見舞われそうだ。(高橋正子)

7月1日-10日

7月10日

●小口泰與
凌霄花や朝の浅間山(あさま)の定かなる★★★
湖の上ちぢに渡りぬ時鳥★★★★
翠黛の裾野に沿うや夏の雲★★★

●古田敬二
水の輪の真ん中にいるみずすまし★★★★
みずすましが泳ぐとその周りに水の輪ができるが、瞬間を止めれば、みずすましは、水の輪の真ん中にいる。(高橋正子)

みずすましつかの間水輪重なれり★★★
みずすまし流されまいと四肢を掻く★★★

●佃 康水
長き貨車茂れる草を煽り過ぐ★★★★
線路わきには夏草が茂る。そこを延々と貨車を牽いて列車が過ぎる。その間草は緩急はあるけれども煽られ通す。昨日の投句の「延々と貨車のコンテナ梅雨の野に/桑本栄太郎」を重ねて思った。(高橋正子)

みずすましつかの間水輪重なれり★★★
みずすまし流されまいと四肢を掻く★★★

●桑本栄太郎
梅雨晴間遥か鞍馬の峰に雨★★★
特急の電車通過や葛茂る★★★★
ワイパーの激しく振りぬ白雨来る★★★

●小西 宏
七月の雨は緑に山濡らす★★★★
カンナ黄を広き緑に誇り立つ★★★
窓閉じて湿気に浸る夏嵐★★★

●佃 康水
保線区員待機をしては草を刈り★★★
長き貨車茂れる草を煽り過ぐ★★★★
夜の法座闇に鳴き立つ雨蛙★★★

7月9日

●祝恵子
夏露店牡蠣焼く匂い漂わせ★★★★
好きな路地ノウゼンカズラの枝垂れおり★★★
収穫にしぜんと笑みが夏野菜★★★

●小口泰與
雉の子の畦に跳び出づ草いきれ/小口泰與★★★★
畦に雉の子が迷い出てきて驚くが、夏草に埋没しそうな雉の子の懸命な様子かわいく愛おしい。(高橋正子)

山女釣浅間は夕日留めおり★★★
遠雷や太き雨脚忽然と★★★

●河野啓一
のうぜんの朱を敷き詰めて何語る★★★
烏賊釣りの船の支度や宵の内★★★
万緑の静けさ来る風を待つ★★★★

●桑本栄太郎
延々と貨車のコンテナ梅雨の野に★★★★
梅雨が延々と続くように、積み木のような四角なコンテナを貨車が延々と引っ張って行く。ここでは、何事もなくひたすら梅雨が続いている。(高橋正子)

初蝉の鳴き初めすぐに止みにけり★★★
雨脚の峰駆けのぼる白雨かな★★★

●多田有花
雲薄く初蝉の声ひそやかに★★★
梅雨台風近づく気配草を刈る★★★★
冷酒酌むほのかにフルーツの香り★★★

●小西 宏
息継ぎができてバタバタ水泳ぎ★★★★
鳥の声聞きに緑の森深く★★★
四十年(よそとせ)や妻の肩揉む黴の宿★★★

7月8日

●古田敬二
露草の朝の命を輝かせ★★★
半夏生薄暮の庭の白さかな★★★
半夏生薄暮の庭に浮かぶ色★★★★

●小口泰與
毛の国の山河あらぶるはたた神★★★
外に出づや月光さゆる影涼し★★★★
はたた神納戸の隅の小犬かな★★★

●桑本栄太郎
<鴨川、四条大橋界隈>
鴨川の流れ真中や鮎を釣る★★★★
京都の街を流れる鴨川に天然鮎が溯上するのも意外だが、川に魚道が作られて溯上を助けているようだ。街中の川で鮎釣りの風景が楽しむことができ、画中の出来事のようだ。(高橋正子)

鮎掛や銀鱗光り手網(たも)に入る★★★
葉柳や川端通りは風の中★★★

●小西 宏
梅雨晴に青水玉のレインブーツ★★★★
梅雨雲の切れ間に夕日手に眩し★★★
暗がりに零れるひかり岩清水★★★

●高橋秀之
初蝉の不揃いの声響く朝★★★★
おぼつかなく、遠慮がちな鳴き方に、初蝉らしさがある。真夏には、蝉も一斉に鳴きそろって声をあげが、鳴きはじめは、あちこちから、試しに鳴いているようで不揃いなのだ。(高橋正子)

梅雨晴間薄雲の間に差す日差し★★★
冷蔵庫の中に積み上げ水羊羹★★★

7月7日

●小口泰與
バンガロー魚三枚に下ろしたり★★★★
飛ぶ鮎の海無き川の苔を食む★★★
眼間の赤城山(あかぎ)まじかく真夏かな★★★

●桑本栄太郎
みどり濃き山河滴る在所かな★★★
との曇る天の灯りや黐の花★★★★
星合のせめて今夜は晴れ間欲し★★★

●小西 宏
アジサイの花の終わりも糸の雨★★★
雨止んで高き緑の洗われし★★★★
梅雨空に夕星一つ見えたかな★★★

●多田有花
梅雨雲が隠せる山を歩きおり★★★
にわか雨あがりて七夕の宵に★★★
塩糀入れて胡瓜を浅漬けに★★★★

●川名ますみ
到来の菜を香らせ夏座敷★★★★
この句の菜は、おかずや料理のことを指し、「一汁一菜」の「さい」と読みたい。到来物はそれだけでもうれしいが、それがよい香りがすれば、気持ちが清新になって、うれしさも増す。それをいただく夏座敷が涼しげだ。(高橋正子)

到来の野菜の響き夏厨★★★
玉葱のポタージュに匙ひからせて★★★

7月6日

●小口泰與
雪渓を渡るや滝のごうごうと★★★★
雪渓の壮麗な眺めは、夏山の魅力の一つ。その上、雪渓を渡るとき滝がごうごうと体を震わせるように鳴り響き、自然の雄大さを身をもって感じる。(高橋正子)

老鶯や大樹見上げる顔と顔★★★
夏の昼持薬飲むのを忘れたり★★★

●河野啓一
風鈴の響く窓辺に碁石(いし)のおと★★★★
子雀の軒端行き交い賑やかに★★★
雨空に黄色い百合がぽっかりと★★★

●多田有花
梅霖の降る音静か絵を描きぬ★★★★
にわか雨二度来る午後や梅雨曇★★★
貨物列車梅雨の鉄橋を渡る★★★

●桑本栄太郎
川風の微風に応え夏柳★★★
青柿の雨滴したたり太りけり★★★★
うす闇にかざす白さや曼陀羅華★★★

●佃 康水
草刈り機木魂し合える谷間かな★★★★
夏草が生い茂り、草刈りに忙しいときだ。谷間のあちこちで使う草刈り機の音が木魂する。谷間の村も生き生きとし、活動的な暮らしがうかがえる。(高橋正子)

水音や沢紫陽花へ絶え間なく★★★
山陰の沢あじさいや瑞々し★★★

7月5日

●小口泰與
武蔵野を蘇らせし古代蓮★★★
逆光の葉裏を透かすはちすかな★★★★
現世(うつしよ)の喧騒さだか古代蓮★★★

●迫田和代
河沿いの木立ちの陰で草笛を★★★★
どこまでも続く青田に青い風★★★
よき人の願いを結ぶ天の川★★★

●黒谷光子
塩焼きの鮎の尾ぴんと昼の膳★★★
ひろびろと山の傾斜の紫陽花苑★★★★
紫陽花苑行きつ戻りつ時惜しむ★★★

●河野啓一
蜘蛛の糸螺旋階段捲きあげて★★★
せせらぎをついとかすめて糸蜻蛉★★★★
雨もよい花を巡りて揚羽蝶★★★

●桑本栄太郎
茄子苗の花の咲きつつ売られけり★★★★
茄子の苗が売られているが、はや、紫の花がついて、みずみずしく勢いがある。植えればすぐに根付き、よく実を結ぶそうだ。(高橋正子)

小賢しき朱き実となる花柘榴★★★
咲き終えしひとつは零れダチュラ咲く★★★

●小西 宏
雨に雑草(くさ)引く老農の保育園★★★
ジョギングに足蹴る道の緑風★★★
梅雨雲の去りたる西の大き空★★★★

●古田敬二
踏まれるなと草むらに置く蝸牛★★★
夏野菜鍋にあふれてラタトゥーイユ★★★
袋下げ完熟梅の香をこぼし★★★★

●高橋秀之
舞い降りてまた大空へ揚羽蝶★★★★
揚羽蝶は、「舞う」というのにふさわしい飛び方をする。舞い降りてきて、また空へ飛び立つ。その空が「大空」なのがいい。揚羽蝶が鮮明だ。(高橋正子)

朝顔の初めの一輪花開く★★★
食卓に大輪の百合ひとつ挿す★★★

7月4日

●小口泰與
薄もやの赤城や畦の雨蛙
老鶯のこだま定かや空青し★★★
武蔵野の空の明るき古代蓮★★★★

●黒谷光子
吊り橋を渡るその先夏木立★★★★
石垣に迷うことなき蟻の列★★★
渓流の音に応えて合歓の花★★★

●桑本栄太郎
夕涼やゴーヤの棚の整いぬ★★★★
「整いぬ」で涼しさが醸し出された。日除けにもなるゴーヤの棚に葉が茂り、実も育って、真夏へ向けて申し分ない状態。そこに夕風が吹き、涼しさもいっそうだ。(高橋正子)

日の角度見つつ棚組む夏日かな★★★
ふんぷんと蔓のみどりのゴーヤ剪る★★★

●川名ますみ
赤味さす眉月七月の街に★★★★
赤味を帯びた眉月はやはり夏の月である。街の灯の上に、広い夜空にはかなく、神秘的だ。(高橋正子)のうぜんの落ちし路面に雨細く★★★
夏服の少女両手であっかんべ★★★

7月3日

●小西 宏
梅雨の朝胎児のごとく犬眠る★★★
夏燕羽打ち振って雲の間へ★★★
荒れ梅雨の雲紅色に夕迎う★★★★

●小口泰與
夏の暁畦に羽根寄すつがい禽★★★
炎帝に仕う農婦や雲一朶★★★
あじさいや変化にとみし切通し★★★★

●桑本栄太郎
青梅雨の雨雲峰を奔りけり★★★
雨雲の白く覆うや梅雨の山★★★★
雨だれのほかに音なく梅雨寒し★★★

●高橋秀之
さりげなく少しの風を白扇子★★★★
扇ぐともなく扇ぐ扇子を使うしずかな振る舞い。さっぱりとした白扇子が起こすほんの少しの風がさわやかだ。(高橋正子)

冷房の風あたる場所じっと立つ★★★
街灯の照らす白薔薇雨しずく★★★

●高橋信之
梅雨晴の森の空見ゆ遥かな青★★★★
梅雨晴の森。森の上の空は意外に高く青々と力強く広がっている。「遥かな青」をもってそれを表現した。(高橋正子)

萱草の群れ咲くに陽が昇る★★★
紫陽花の花の終わりのすざましき★★★

7月2日

●多田有花
夏朝日苔むす岩に差しにけり★★★
一段落つき七月を迎えおり★★★
短夜やパソコンで聴く深夜放送★★★★

●桑本栄太郎
推敲の窓に入り来る青葉風★★★★
推敲に専心しているとき、青葉を吹く風が窓から入り、ふっと緊張が解けて、さらによい境地に達したことであろう。(高橋正子)

茄子の花支柱あまたの河川畑★★★
夢に見し吾は少年昼寝人★★★

●小口泰與
蟻の陣沛雨に忽と崩れけり★★★★
雷の言の葉わかる小犬かな★★★
夕顔や夕日浅間をつかさどる★★★

●河野啓一
伊吹山お花畑は山頂に★★★★
青葉して六甲山上雲白し★★★
花ぎぼし揺れてゆらゆら人の世も★★★

7月1日

●高橋秀之
梅雨晴間昇る朝日はまん丸く★★★★
朝の陽に照らされ青葉がより青く★★★
始発から見る夏の日眩しくて★★★

●小口泰與
高原の静寂をやぶる青蛙★★★★
青蛙は雨蛙ともいわれ、草や木の葉の上に棲み、夕立の前などにキャクキャク鳴く。高原に夕立が来そうな気配。それを感じて青蛙が一斉に鳴きはじめた。静かな高原も突如静寂が破られ、大夕立に見舞われそうだ。(高橋正子)

夏霧やとっきょとかきょくきりもなし★★★
居間の隅あえぐ小犬のはたた神★★★

●桑本栄太郎
七月の夕風青く暮れゆけり★★★★
湧水の小滝となりぬ池公園★★★
おぼれそうな深き青さや七変化★★★

●河野啓一
夾竹桃紅白ならび仲の良き★★★
花えんじゅ垣根の中場所の良さ★★★★
鵯の仔の巣立ちの速さ人は如何★★★

●高橋正子
箱根登山電車
登山電車きしめば紫陽花さわに揺れ★★★★
涼風大きく登山電車の窓を入り★★★
スウィッチバックの登山電車に山青葉★★★