3月22日

3月22日

●小西 宏
春分の雲やわらかに富士の上★★★★
春分を迎え、寒さもやわらいぎ、富士山の上にもやわらかい雲が寄せている。この句のやわらかさは、普段の生活に富士山が見える人の句と言えよう。(高橋正子)

開花待つ心静かに春の雨★★★
池の面に流る彼岸の花芽風★★★

●小口泰與
夕さりを土咥えくる燕かな★★★
噴煙のすくっと伸びてつくつくし★★★★
春の宵水琴窟の音色かな★★★

●古田敬二
確かなる枝先芽ぐむもの丸し★★★★
枝先に芽ぐむものが、冬芽としてとがっていたものが、丸くなって、いよいよ芽をひらく季節がきた。「確かなる枝先」には、枝の強さが読み取れる。(高橋正子)

冴え返る森落日にシルエット★★★
春蘭を見て夕影長き踏む★★★

●多田有花
自転車の少女が増えて春休み★★★★
「少女が増えて」が、にぎやかで楽しそうだ。街のあちこちに、少女たちが思い思いの服装で、自転車を光らせて走っている。また、停めておしゃべりをしている。闊達な少女たちがいい。(高橋正子)

春分の大阪湾を一望す★★★
春分の六甲山頂樹氷かな★★★

●小川和子
枝ごとに雨滴連ねて芽木しずか★★★
夕日斜めに青々とほうれん草★★★
子ら駆ける公園遅日の明るさに★★★★

●桑本栄太郎
稜線の嶺くっきりと余寒風★★★
公園のゲートボールや春日さす★★★
菜園の支柱に低き豆の花★★★★

3月20日-21日

3月21日

●桑本栄太郎
西空の豊かに蒼し春の宵★★★★
春の宵空は暮れ色に蒼い色がたゆたい、「ゆたかに蒼し」となって、たとえようもなく、柔らかく美しい。(高橋正子)

稜線の嶺くつきりと余寒風★★★
桜桃の蘂のかそけく青空に★★★

●小口泰與
あけぼのや日ののびていてつくつくし★★★★
「日ののびていて」が野原の草の萌え出た緑のやわらかさを想像させる。その中に土筆がのびて、あけぼのの冷たさのなかにすっくと立ちみずみずしい。(高橋正子)

上州の風の国原揚ひばり★★★
ばらの芽や赤子の指のやわらかし★★★

●河野啓一
相模より孫来阪す春彼岸★★★★
春分の朝日に躍る狭庭かな★★★
球児らの入場行彼岸かな★★★

●迫田和代
目の前で春駒踊り牧広く★★★★
「春駒踊り」は、白川郷や郡上などで踊られる伝統芸能のようであるが、詳しくは知らない。牧場を背景に、目の前で踊られると、迫力も違うことだろう。(高橋正子)

あと少し桜並木の桜かな★★★
紅梅や青空に向け高く咲く★★★

●高橋秀之
合唱の声高らかに卒業式★★★★
今は、卒業式に「蛍の光」や「仰げば尊し」は歌われなくなったと聞く。胸を張って声高らかに卒業歌を歌う。未来へと夢が膨らんで、あかるい卒業式風景だ。(高橋正子)

卒業式終えて笑顔の人だかり★★★
卒業式夢を語って胸を張り★★★

3月20日

●小口泰與
七十年浅間の雪解仰ぎおり★★★★
雪解の季節が巡って来、また暖かい春を迎えた。思えば幾年この雪解けの時を迎えたことだろう。生まれて七十年ずっと浅間を仰いできた生活。七十年の感懐である。(高橋正子)

つばくらの川くつがえる風の中★★★
かしましき声を降ろせり花見舟★★★

●祝恵子
子ら去りてふらここ軽くなりゆるる★★★★
子らが乗っていた間は、ぶらんこに子らの重さがある。子らが下りるとその重さがなくなり、ぶらんこは軽くゆれる。軽さがうららかで快い。(高橋正子)

路地路地に子の声遊ぶ春休み★★★
濃き色のヒカンサクラに目白鳴く★★★

●桑本栄太郎
地ひびきを立てて紅置く落椿★★★★
川べりを歩めば風の余寒かな★★★
日暮れれば淡き茜や春霞★★★

3月19日

3月19日

●小口泰與
毛鉤追う雪代山女斑のおどる★★★
芽柳の彼方の榛名雪解かな★★★
水温み山風さわに鳥を呼び★★★★

●黒谷光子
重文の堂や広間や馬酔木咲く★★★★
馬酔木の花は山地の乾いた土地に咲くが、小さな壺状の白い花房は、古いものに似合う花だ。重要文化財の堂や広間も古都奈良の雰囲気を思い起こさせて床しい。(高橋正子)

名園は伊吹を借景春霞む★★★
春日射す境内に鳩たむろする★★★

●桑本栄太郎
はじらいを見せて白れんついに咲く★★★
咲き初めのうすきみどりや白木蓮★★★★
夕暮れの淡き茜や春霞★★★

●多田有花
校舎からゆるゆる昇る朧月★★★
芽立ちの香たち初む山を歩きけり★★★★
芽立ちは、そのさまざまな色がよく詠まれるが、この句は匂いを詠ユニーク。今山を歩くと、落葉が腐葉土となってゆく匂いが立ち上っている。これを含めて「芽立ちの香」と言うのだろう。春の山を歩いて一番に感じることである。(高橋正子)

春の山歩く上着を脱ぎ捨てて★★★

●佃 康水
粒餡を炊く香の満ちて彼岸入り★★★★
彼岸にはおはぎ(ぼたもち)を作って仏前に供えるが、そのために粒餡を炊く。この餡を炊く匂いが台所に立ちこめると、「彼岸に入る」ことを体感することになる。

刺身盛る尖る細魚の口添えて★★★
初花や川青々と止めどなく★★★

●河野啓一
霞立つ朝の空ゆく鳥の群れ★★★★
主送る門辺に咲くや八重椿★★★
塩むすび提げて出掛ける春の野辺★★★

●小西 宏
春寒も股引おいて家を出る★★★
伐られたる枝に突き立つ梅の花★★★

陽に近き枝の黒きや花芽ぐむ★★★★
太陽に近い桜の枝は、逆光で黒さが強調されるのだろう。枝の黒さが花芽と対比されて、たのもしく咲く桜の花が想像される。(高橋正子)

●古田敬二
青空へ開花宣言桜花★★★
ざわめいて開花宣言青空へ★★★★
春光へ青鷺ゆっくり首伸ばす★★★

3月18日

3月18日

●小口泰與
夕づくと来鳴くうぐいす縁の先★★★
黄水仙風にならいて向きむきに★★★★
揺るる梢(うれ)捕まえがたき春の鳥★★★

●黒谷光子
外に出でば春満月の真正面★★★★
何かちょっとした用事で外に出られたのだろう。真正面に満月を見たときの嬉しさは、格別。満月と対面し、話し、話しかけれるような気持ちになる。やわらかな春の満月にうっとりとするとき。
(高橋正子)

春の月遮るものの何もなく★★★
お茶湯に茶柱の立つ春の朝★★★

●多田有花
春風にセーラー服の少女たち★★★
里芋をやわらかく煮て彼岸入り★★★★
鶯の囀り山路のあちこちに★★★

●桑本栄太郎
あおぞらの梢艶めき春日さす★★★

菜の花のひと畝残し耕さる★★★★
ひと畝の菜の花は種を取るために残されたか。それも含めてきれいな菜の花をまだ楽しもうとういうのか。ひと畝の菜の花にすすむ季節が惜しまれる。(高橋正子)

うす淡く容ゆるびて山笑う★★★

●小西 宏
陽の庭に白木蓮の花浮かぶ★★★★
さんさんと太陽が降り注ぐ庭に、白木蓮が鮮やかに咲いている。庭の陽のあまりの明るさに、花は「浮かぶ」感じだ。白木蓮の花の姿をよく表している。(高橋正子)

さざ波立て陽を輝かせ春の風★★★
ふと風の止み香の中に入る梅の園★★★

●古田敬二
藪椿森の夕べに高く咲く★★★★
木五倍子咲く藪へ夕べの偲び来る★★★
さ緑に垂れて木五倍子の夕べかな★★★

3月16日-17日

3月17日

●小口泰與
薄氷やごうごうと吹く木々の風★★★★
今生を浅間仰ぎて畑打★★★
赤城より雨雲出づる揚ひばり★★★

●祝恵子
池の面を見つめて抹茶椿寺★★★
交番の地図を広げて古都の春★★★

雪残る寺にご朱印頂きぬ★★★★
雪が残る寺の寒さ、雪の白さのなかにご朱印の色が鮮やかで、一層ありがたく思える。(高橋正子)

●桑本栄太郎
春泥を避けて川べり歩みけり★★★
ゆすら咲き花に取りつくカメラマン★★★

青空も入れて撮り居り花ゆすら★★★★
ゆすらは小さく、梅にも、桜にも似た花を開く。こまごまとしているので、一つの花の印象は薄いかもしれないが、空を入れて花を生かした写真は魅力があるだろう。(高橋正子)

●黒谷光子
青空の色を零して犬ふぐり★★★
指先に香りを残し蕗の薹★★★
香と苦み楽しむ夕餉の蕗の薹★★★★

●小西 宏
紅膨れる椿蕾のつぎつぎと
【添削】紅膨れる椿の蕾つぎつぎと★★★★
「椿蕾」は言葉として不自然な感じがしますので、添削しました。椿の蕾に赤い色が見え始め、それがつぎつぎ膨らんで、今にも咲くかというところまで来た。とてもうれしい気持ちだ。(高橋正子)

梅園に入れば風凪ぎ色朧★★★
飯に焚く小さな香り桜えび★★★

3月16日

●古田敬二
馬鈴薯の種植え畝を高くする★★★

昼の陽に種芋眠る畝高し★★★★
植えつけた種芋が、高々とした畝に眠っている。春の陽が温める畝である。(高橋正子)

新築の槌音高し春の風★★★

●小口泰與
たらの芽に浮子の絡まる夕まずめ★★★
嬬恋の色なき里にいぬふぐり★★★★
嬬恋村の春は遅い。枯れ色の里にまずいぬふぐりの青い花が目を覚ます。色なき里もこれからいろんな花がさきだすであろう。(高橋正子)

春の草芝に萌え出で耘れり★★★

●多田有花
低山の春の稜線を歩く★★★

目の覚めるような菜の花畑かな★★★★
菜の花畑に行きあうと、そのまっ黄色な菜の花の色に目が覚める。一面の強烈な菜の花の色である。花のいい匂いもしてきそうだ。(高橋正子)

窓を開け春の風入れ走りけり★★★

●桑本栄太郎
夕暮れの西空蒼く春の闇★★★
菜の花のお浸し添える夕餉かな★★★★
蛸足の白きも入りぬ若布和え★★★

●河野啓一
早春賦歌声流るデイの朝★★★

花杏淡く高くと咲き初める★★★★
杏は桃の花よりも淡い。桜よりも濃いかもしれない。その杏の花が淡く高く咲きはじめるといよいよ春も本格的になり始める。(高橋正子)

雪解かな箕面の谷に水の音★★★

●川名ますみ
あたたかやアイロン台に白きもの★★★★
あたたかい日差しのなかにアイロン台の白いものは、シャツだろうか、シーツだろうか。白い色がうれしい季節が来ている。(高橋正子)

アイロンとミシンを広げ春の居間★★★
三月の母がミシンを踏むリズム★★★

3月14日-15日

3月15日

●迫田和代
蓬摘み日除けの帽子籠になり★★★★
あたたかい日差しに誘われて野原や川土手にでかけたのだろう。萌え出た蓬を見つけて思わず積みたくなり、冠っていた帽子を籠代わりに使った。たのしいことだっただろう。(高橋正子)

山歩き崖下に咲く菫かな★★★
何となく春色探して街歩く★★★

●小口泰與
紅梅の白梅よりも際やかに★★★
行くほどにきざはし急ぞ梅の宿★★★
流れ行く水を見つめし柳の芽★★★

●小川和子
中学校同期会(欠席に添えて)
友等みな大志抱きて卒業す★★★
東風光る紅顔の子等古稀となり★★★
春なかばあの頃のこと師よ友よ★★★

●桑本栄太郎
料峭の日差しの雲に傘備う★★★
春ざれやチケットショップの長き列★★★
春眠の想い出つづり夢に会う★★★

●黒谷光子
涅槃図の釈迦に一年ぶりの風★★★

涅槃会に供う霰の色いろいろ★★★★
涅槃会には霰が供えられる。子供のころ、この霰をお寺の奥さんから頂いたことを思い出した。ようやく寒さとも別れらる彼岸、五色の霰はうららかさを誘う。(高橋正子)

足もとに縋る老人涅槃絵図★★★

3月14日

●小口泰與
春霰や日の出の際の山の畑★★★★
春とはいえ、日の出間際の山の畑はさぞ寒いことだろう。霰も転がり降ってくる。春めいてはいるが、わびしい山の畑だ。(高橋正子)

山茱萸の黄や雨粒はじきおり★★★
風光るカメラ精密極まれり★★★

●桑本栄太郎
春雪の風の行方に迷いおり★★★
真青なる空よ甍の梅の花★★★

子供等の走り遊びし日永かな
【添削】子供等の走り遊べる日永かな★★★★
「遊びし」は口語訳すれば「遊んだ」となって過去形。今目の前の子どもたちが遊んでいるほうが、生き生きとして、「日永」の子どもの光景をよく表現できる。(高橋正子)

●河野啓一
いつの間に咲きしや庭の花あしび★★★

小松菜の青葉大きく店先に★★★★
葉物野菜も春になると急に葉っぱが育つようになる。店頭にもこうした青々と大きい葉の小松菜が並ぶ。これも暖かくなってきた証拠。(高橋正子)

春の雨雑木に光る水の珠★★★

3月12日-13日

3月13日

●小口泰與
芽柳や気散じの歩を湖辺まで★★★
雪解川毛の三山の機嫌かな★★★

声は皆利根に鍛えし新入生 ★★★★
新入生といっても、高校生か、大学生だろう。中学、高校の部活で利根川に向かって張り上げ鍛えた声だ。練習風景を見てきた作者には、新入生になってもその声が耳に残っている。(高橋正子)

●桑本栄太郎
音もなく柳青める今朝の雨★★★★
「音もなく」は、「柳青める」と「今朝の雨」の両方に係っているいると読んだ。「音もなく柳青める」は、しなやかで明るい小さな柳の芽をよく表現してる。それは今朝の雨の静けさともよく呼応している。(高橋正子)

ととととと風に樋落つ春の雨★★★
春雨にけぶる在所の山河かな★★★

●小西 宏
枝に沿い花立つ梅の匂やかさ★★★

葉も若き河津桜の土手を行く★★★★
河津桜の咲く期間は長くひと月ぐらいだそうだ。花が咲きながら、若い葉が出ている。桜と言えば、染井吉野をつい思い浮かべるが、河津桜の世界はまた別だ。(高橋正子)

湖に大き船来る霞かな★★★

●多田有花
ビル街の風やわらかく浪花場所★★★★
浪速場所を楽しみにしておられる関西の方は多い。浪速場所の始まりが浪速の春の始まりなのだ。
ビル街にある場所にも春風がやわらかく吹いている。(高橋正子)

桟敷には舞妓がふたり三月場所★★★
春場所を打ち出され寿司を食べにいく★★★

●河野啓一
春の香を載せて筍ご飯かな★★★
春雨の滴るごとき曇り空★★★
お水とりほぼ終わりなる月半ば★★★

●古田敬二
春の葱抜けば真白な根を持てり★★★
畑を掘る畝に舞い来る春の雪★★★

つかの間の地上の形春の雪★★★★
春の雪は地に触れ、すぐに溶けてしまう。土の上には、触れたつかの間、形としてある。それが「地上の形」。春の雪のはかなさ、やわらかさ。(高橋正子)

3月12日

桑本栄太郎
<春の郷愁>
春日さす西国街道野を山へ★★★
<東日本大震災の鎮魂>
みちのくを想い黙祷春の昼★★★
春なれば陸奥(みちのく)青き海と空★★★

小口泰與
春昼や海豚のショーの水飛沫★★★
水槽の水母ほしいと泣く子かな★★★★
中天を海豚飛びけり春の潮★★★ 

河野啓一
春光の中を笑顔のバス走る★★★
真似たきや芽吹く気配の並木道★★★

木の芽晴れ丘の辺行けば水の音★★★★
春になって芽吹く木々の芽の総称を季語では「木(こ)の芽」という。そのころ降る雨を「木の芽雨」、そのころ吹く風を「木の芽風」という。それと同じようにその頃の晴れを作者は「木の芽晴れ」と季感をもたせて詠んだ。早春の明るさに満ちた晴天である。そんな丘を行けば水の音がころころと聞こえ、春が来たことを耳からも実感する。(高橋正子)

3月10日-11日

3月11日

●小口泰與
初蝶のゆったり超ゆる大伽藍★★★★
大伽藍と小さな初蝶の対比、初蝶のういういしさ、可憐さ、うららかさをよく表すことになった。(高橋正子)

木々芽吹く今だ芽吹かぬ葡萄の木★★★
たらの芽や岸辺に数多稚魚のおり★★★★

●河野啓一
早春の晴れわたりたる朝の空★★★
枯枝の根元顔出す蕗のとう★★★

枯枝を揺らす鳥影大きくて★★★★
大きな鳥影からすれば、鳥は鵯だろうか。枝移りするたびに枝が揺れる。鳥の重さ、枯枝のしなやかさが感じ取れる句だ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
菜園の背高き菜花明かりかな★★★
もとの樹へ未練の紅の落椿★★★
芽吹く枝のつぼみ宿せりゆきやなぎ★★★

●多田有花
大いなる渓谷へダイブ春の夢★★★
小綬鶏に呼ばれて締める靴の紐★★★

梅が香の真ん中にいて風を聞く★★★★
梅の香の漂うところに立てば、風が吹いている。目に触れる梅の花、鼻に嗅ぐ梅の香り、耳に聞く風の音。それ頬には早春の風も触れてゆくことだろう。感覚の大いに働いた句である。(高橋正子)

●古田敬二
三月の散歩は距離を長くして★★★
いぬふぐり咲きそろいけり陽は十時★★★★
春の日の、午前十時の陽はうらうらと輝き、新鮮である。その陽に照らされて、いぬふぐりの青い小花が咲きそろう。なんとうららかな春の景色だろう。(高橋正子)

畝打てば斜め後ろから春の雪★★★

3月10日

●小口泰與
山風に逆らいつつも麦踏めり★★★
鯉こくや千曲の雪解響きあう★★★★
千曲川の流れる小諸で花冠フェスティバルを行ったとき、鯉こくをいただいた。そのときの千曲川の瀬音を思い出したが、雪解の音で響き合う千曲川、そしてあたたかい鯉こくもいいものだと思う。(高橋正子)

白梅や白鳥北へ帰りおり★★★

●祝恵子
春の池狙うは翡翠カメラマン★★★
少年の釣りし春鯉リリースす★★★★
少年の初々しさが「春鯉」とよくマッチしている。釣った鯉をリリースするのも少年らしいことと思った。(高橋正子)

紅白梅重なり見える丘に立つ★★★

●河野啓一
曇り空晴れて受験子笑顔かな★★★
春場所や力士の汗と雪の花★★★
震災忌春未だしの野山かな★★★

●多田有花
春の雪ちらちらと舞い沖は晴れ★★★★
梅林の上流れ行く雲速し★★★★
リュックより首出す犬や春の山★★★

●桑本栄太郎
春北風や忽ち山河の真っ白に★★★
池めぐる間にも日差しの春の雪★★★
古木とて背の伸びきれず丘の梅★★★