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1月10日
●小口泰與
いろいろの石のあらわに冬の利根★★★★
大河、利根川と言っても冬は、やはり水量が減る。河原にあらわれた石を踏み歩くと、いろいろの石があるものだ。「あらわに」に冬河原らしさが出ている。(高橋正子)
いや白き浅間の肌や冬の梅★★★
いぶかしき造形美なす氷かな★★★
●多田有花
強霜のなか登校の児童たち★★★★
児童たちは、雨の日も、風の日も、寒さ極まる日も、登校するのだが、強霜の朝も例外ではない。霜で道路も厳しい硬さ。その上をなにか浮いたように体も硬くなって歩く。(高橋正子)
地は冷えて空は明るし日脚伸ぶ★★★
手を伸ばせば届きそうなる凍雲よ★★★
●桑本栄太郎
青空の十日戎の浪速かな★★★★
十日戎浪速の春の五十払い(ごとばらい)★★★
宝恵籠(ほいかご)や南地芸妓の笑みの紅★★★
●佃 康水
寒潮を噴きて渡船の向き変える★★★★
渡船が向きを変えるときは、操舵主は手慣れたもので、寒中とはいえ、潮を勢いよく波立たせる。小さい渡船ならその様子が直に見えて、「寒潮を噴きて」 の実感となる。(高橋正子)
寒潮を湛え鎮まる朱の鳥居★★★
軒に吊る歯朶や乾びて丸まれり★★★
●小西 宏
北風に笹鳴りやまず山の澄む★★★
水仙の人過ぐ道に向ける白★★★★
凍て雲の千切れ吹き上げ茜色★★★
●古田敬二
冬木立に優しく寄れば小鳥来る★★★
朝の陽に木立の影とわが影と★★★★
朝の陽に枯木の巣箱赤々と★★★
1月9日
●小口泰與
目薬をさす暇なきくしゃみかな★★★
夕づきていとど厳しき空っ風★★★
利根川に岩岩いわの寒さかな★★★
●祝恵子
この寒さ乗り切れ花苗カンパニュラ★★★
早梅のいま咲きそうな膨らみに★★★★
早梅が今にも咲きそうなふくらみ具合になった。寒中の寒さになかなか花は開かないものだが、それだけに期待が膨らむ。(高橋正子)
立つ者も座する者いて居間二日★★★
●桑本栄太郎
つがいづつ啄ばみ翔ちぬ寒雀★★★
干しものの影ひるがえる虎落笛★★★
立ち呑みの浪速の春や宵戎★★★★
大阪浪速区の今宮戎神社の十日戎祭りの前夜。福笹や熊手を手に手に雑踏を行き交う人たちの賑わい。屋台もいろいろ。一杯ひっかける立ち呑みもある。まさに浪速の春だ。(高橋正子)
●多田有花
頂へ北より時雨の雲迫る★★★★
頂にはどこからでも風や雨が降ってくるようだが、やはり時雨の雲は北風に押しやられて頂に迫ってきた。押し迫る雲の迫力は平地では感じ取れないものだろう。(高橋正子)
花の色おのおの透かし梅冬芽★★★
たっぷりとレモン果汁へ寒の水★★★
●小西 宏
冬梅の門にバス降り幼稚園★★★★
雨降れば狭庭に宿る枇杷の花★★★
葉を伸ばす大根細きプランター★★★
●古田敬二
枇杷の花雨滴こぼして引き寄せる★★★
枇杷の花卓に飾れば故郷遠し★★★
音たてて落葉の道を大股に★★★★
1月8日
●小口泰與
夕照のひろぐや里の虎落笛★★★
利根川の波のいつくし冬の月★★★
一天をおし広げたる空っ風★★★★
空っ風が何もかも一掃して天も押し広げられた。空っ風のすざましさ。(高橋正子)
●桑本栄太郎
玄関の軒端明かりや花八手★★★
剪定の瘤さめざめと冬木立★★★
ひつそりと裏の庭木や枇杷の花★★★
●多田有花
寒四郎静かな雨の続く午後★★★
赤色灯回る後ゆく寒の雨★★★
詰襟が傘さし帰る松の内★★★★
詰襟に傘と言えば、実直な学生。詰襟の学生服の黒い色が松の内の意義を正しているようだ。(高橋正子)
●佃 康水
蒼天へ躍り出でたる梯子乗り★★★★
高々と空に突き出した梯子。それに乗る梯子乗りは、蒼天の中に一人躍り出して鮮やかな芸を見せる。「躍り出でたる」が梯子乗りを活写している。(高橋正子)
餅花や饅頭高く積み売られ★★★
早や七日ほっぺを染めて登校児★★★
●小西 宏
枯芝の広場に朝日やわらかし★★★
広がって枝の欅の冬明るし★★★
白線を引いて駆けっこ北風に★★★★
白線が北風の中で潔く、印象に残る。駆けっこをするにもスタートラインが引かれ、本気さが見える。(高橋正子)
●古田敬二
冬耕の鍬先きらり光らせて★★★★
夕べ早し畑に独り抜く大根★★★
庭師去り庭に広がる冬陽かな★★★★
庭師が来て剪定したあと、木の枝葉もすっきりと取り払われ、掃除もされて、冬陽が庭に燦燦と降り注ぐ。庭も広くなった感じだ。(高橋正子)
1月7日
●小口泰與
月面のような畑や霜柱★★★
枯蘆や利根の支流の細りたり★★★
山風の吹かぬ朝や冬木の芽★★★★
●迫田和代
陽を浴びて枯木に止まる初雀★★★
慌ただし年は変われど変わりなし★★★
何もかも新しくして新年に★★★
●河野啓一
隣家の屋根真っ白に寒の入り★★★
寒晴れて空一面の光かな★★★★
子に荷物送りて妻の小春かな★★★
●多田有花
初東風を沖は光りて迎えおり★★★★
早くも東風が吹くようになった。沖を眺めれば沖は光って、そこから東風が吹いてくるようである。(高橋正子)
ほがらかに鳥の声聞く寒ぬくし★★★
六甲を淡く隠して寒霞★★★
●桑本栄太郎
送電線少し垂れいて山眠る★★★★
送電線の弛みの曲線は微妙で、計算された弛みなのであろうが、眠る山と呼応して、眠りを深めているようだ。(高橋正子)
教会へ向かう角家の青木の実★★★
寒風のファイトファイトのランニング★★★
●小西 宏
七種の歌をうたえば野の光★★★★
寒水に烏艶打ち羽洗う★★★
出初式梯子に紺の木遣り歌★★★
●川名ますみ
雲厚し破魔矢を鳴らし甘味屋に★★★★
初詣の帰り、厚い雲に覆われて寒さも寒し、甘味屋をちょっとくぐりたい。破魔矢の鈴がちりちりと鳴らして入るのも正月らしい。(高橋正子)
初詣済ませて甘き香の列に★★★
鯛焼を家族そろって囓りおり★★★
●古田敬二
鳰潜る池面の光ちりばめて★★★
池面眩し水輪広げて鳰潜る★★★
鳥の声一つだけして冬木立★★★
1月6日
●小口泰與
山風や毛の三山の雪の文★★★
夕照や赤城鍋割深雪晴★★★
枯れかれて逆光とらう薄かな★★★
●桑本栄太郎
青空の稜線極め寒に入る★★★★
寒に入ると、空気が冷えるせいもあるだろうが、目に映るものに緊張感がある。引き締まって見える。青空との境の山の稜線が際立つのもそのひとつ。(高橋正子)
日脚伸ぶ仮眠のあとの窓明かり★★★
午年の馬日の空の青さかな★★★
●多田有花
小寒や攻防の城跡を巡る★★★
寒の入りはるかに望む雪の山★★★
月曜日新春の街動きだす★★★
●小西 宏
空き家の庭に柚子の実アロエの花★★★
青空に艶かがやける枯木立★★★
枯木立と青空との取り合わせに清潔感がある。青空の光をうけて枯木立が輝く。冬晴れの快い景色。(高橋正子)
★北風に細く揺らめく街明かり
●古田敬二
木蓮の冬芽の向こうの空蒼し★★★
ドウダンの尖る冬芽の赤きこと★★★
蝋梅を撮らんとすれば香の強し★★★★
1月5日
●古田敬二
ブルダバに冬の燈映り旅終わる★★★
冬の旅見知らぬ街の燈下に見て★★★
大陸の冬の眠りの燈の上を★★★
●小口泰與
夕照のひと筋道や小白鳥★★★
雨上がり枯草の彩さわにして★★★
上州のお国訛りや空っ風★★★
●佃 康水
満天の星の霜夜にジャム煮ゆる★★★
思い出を置いて子ら発つ四日かな★★★
児を交え遊び句会や初笑い★★★
●小川和子
焚木積まれ切り口白き淑気かな★★★
「道産子」を詠みし一句の賀状来る★★★
古里は雪に雪積む日々らしも★★★
和子さんの故郷は北国と聞いている。雪が積んだ上にさらに雪が降り積もる。そのことを知って、故郷で過ごした懐かしく思い起した。「らしも」にその気持ちがでている。(高橋正子)
●桑本栄太郎
参拝の杜の息吹や初松籟★★★
二日はや散歩がてらの買物へ★★★
夫婦ともテレビゲームの三日かな★★★
1月4日
●小口泰與
鎖場も顕なりけり冬妙義★★★
冬花火湖より生まれ湖へ散る★★★★
花火は夏に限らず、祝祭に打ち上げられる。寒気の中、湖から揚がった花火が、湖へ散る様子は澄み切った花火の色が特に美しいことであろう。(高橋正子)
空風や荒き口調の国訛★★★
●古田敬二
尖塔のライトアップに雪斜め★★★★
高く伸びた尖塔から投げかけれるライトに、降る雪が浮かび上がる。雪は斜めにしきりに降ってくる。斜めに降る雪に高揚した気持ちが伝わる。(高橋正子)
旅終わる夜のプラハは雪もよい★★★
旅終わる朝冷えプラハの石畳★★★
●多田有花
晴れやかな景色が揃う初暦★★★★
どの暦も、1月の暦の景色は晴れやかだ。晴れやかな暦の景色に取り囲まれ、新年は良い気分である。(高橋正子)
三が日過ぎ寒風の戻り来る★★★
本陣跡キツネに出会う四日かな★★★
●桑本栄太郎
<山口にて孫の初正月>
新しきうからと祝う今朝の春★★★
元朝の山口線の汽笛かな★★★★
山口線は、新山口駅から益田までの路線で一部の区間ではSLが走っている。山口から津和野までこのSLに乗ったことがあるが、蒸気機関車は汽笛さえも力強く旅情を書き立てられる。元朝の朝が力強く始まる。(高橋正子)
、
<山口大神宮へ>
並び待つ列も厳かや初詣★★★
●小西 宏
枯枝に凧垂れている日の温さ★★★
楠の枝ひろがる影や冬夕日★★★★
残り物膳にちりばめ四日かな★★★
●川名ますみ
正月の凧三つ四つ多摩川へ★★★
男子四人鯛焼買って立ちどまる★★★
凧揚の空に続く多摩川の空★★★★
多摩川の河原は、野球場やテニスコート、広場などがある。広場には風もあって、凧揚げには格好の場所。揚がる凧には、そこの空だけでなく、多摩川の空の続きがある。(高橋正子)
1月3日
●小口泰與
三日はや朝の散歩の一時間★★★
三日はや箸置きふたつ夕餉かな★★★
白昼や東にあらわ冬の月★★★
●黒谷光子
二日はや御下がりの餅切り分ける★★★
鏡餅切る包丁の大きかり★★★。
三日目の朝日射しこむ厨窓★★★★
厨に立つと、朝日が窓から差し込んで、気持ちのよい三日の朝となった。三日になると正月にも余裕が出てくる。(高橋正子)
●川名ますみ
病牀に掌ほどの松飾る★★★
あの頃と変わらぬ住所賀状書く★★★
お元日寝衣寝具をまっさらに★★★★
新年を迎えて、タオルひとつ新しくなるのも新鮮なことだが、ベッドで療養されている作者には、寝具や寝衣までもがすっかり新しくなることは、自分の世界が新しくなるような気分ではないかと察せられる。(高橋正子)
●多田有花
よく晴れし二日の山を歩き初め★★★★
二日はもう山を歩き初めに。正月の山は、晴れ晴れと健やかな気分になれて、いいものだろうと思う。特によく晴れた二日は。(高橋正子)
古戦場跡にたたずみ三日の陽★★★
暖かき晴れ賜りぬ三が日★★★
●高橋秀之
煌々と明るく三日の繁華街★★★
曾祖母が手渡す年玉両の手で★★★
初売りの服早速に着て出かけ★★★
1月1日-2日
1月2日
●小口泰與
二日はや雪の赤城の明け鴉★★★
大らかな雪の浅間の二日かな★★★★
よい天気続きの正月。二日も雪を冠った浅間山が大らかに坐っている。浅間山を「大らか」と捉えた度量がよい。(高橋正子)
寒鯉や道も途絶えし分教場★★★
●多田有花
海よりの長き石段初詣★★★★
海の近くの寺社。寺社への長い石段は海から続き、海はいかにも穏やかである。長い石段の上からの眺めも素晴らしいことだろう。よい初詣。(高橋正子)
初凪の海辺の道を歩きけり★★★
注連見上げ唐琴通りをそぞろゆく★★★
●高橋秀之
大空は曇れど今は二日の朝★★★
初売りの列まっすぐに朝日差す★★★★
お目当ての初売りの列に並ぶと、朝日がまっすぐに差してくる。朝日を眩しみながら待っているのだろう。「まっすぐに差す」で正月らしい光景となった。(高橋正子)
正月の食卓みかんは二つ盛り★★★
1月1日
●小口泰與
元旦や風なき里の明け鴉★★★
あけぼのの雲なき浅間御慶かな★★★
歯ブラシの癖も無かりし初明かり★★★
●古田敬二
霧氷林縫って列車の疾走す★★★
霜の坂ドボルザークに会いに行く★★★
たくましきドボルザーク像霜かぶる★★★
●小西 宏
新しき箸もて家族お元日★★★★
新年は、なにか一つ新しいもので迎えると、すがすがしい気持ちになる。新しい箸に家族揃ってのお元日が清々しく、和やかである。
∞プラス一なる去年今年★★★
陽の中に新芽小さき松飾★★★★
●高橋秀之
もっそりと寝ぼけ眼の初笑★★★
獅子舞に頭を向けて走り寄る★★★★
獅子舞の獅子に頭を噛んでもらうと元気な子になるとか。恐ろしい獅子に向かって走り寄るのは、果敢で愉快な男の子。(高橋正子)
無造作に積まれて籠の冬りんご★★★
※明けまして、おめでとうございます。今年もご投句をお待ちしています。よろしくお願いいたします。(高橋正子)