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1月31日
●小口泰與
風花や群より遅る鳩一羽★★★
砂時計返す露天湯北颪★★★
手袋の中の拳や星の朝★★★★
星の出ている朝は寒く冷たい。手袋をはめていても、手袋の中のがちがちの冷たい拳を意識するのだ。(高橋正子)
●多田有花
寒茜一番星の光りだす★★★
生けられて壷の蝋梅香を開く★★★
頂に春の近さを語りあう★★★★
●桑本栄太郎
ゆらり揺れ梢の影の寒ゆるむ★★★
寒禽の翔べばぱらぱら種の音★★★
学び舎のチャイム鳴りおり寒ゆるむ★★★★
学校のチャイムは、ゆっくりした時代のなごりなのか、いつでもゆっくり鳴る。学校という場を思い出すせいもあるが、のどかな気持ちになり、寒もゆるむ。(高橋正子)
●小西 宏
北風の空を斜めに鳥流る★★★
空晴れて辛夷冬芽の枝の揺れ★★★★
釣り人の石に古亀日向ぼこ★★★
1月29日-30日
1月30日
●小口泰與
山茶花のむらがりこぼる風の街★★★
盆栽の松に鋏や息白し★★★
菓子を売り有為転変の四音かな★★★
●多田有花
寒晴れに甍の波の光りおり★★★
雨降って寒の終わりの近づきぬ★★★★
このごろの天気を見ていると、たしかに一雨ごとに寒の寒さが緩んでいるようだ。その事を技巧を使わず句にした良さがある。(高橋正子)
寒の雨音楽を聴き絵を描く★★★
●桑本栄太郎
<故郷の冬の追憶>
寒凪のはるか遠きや隠岐の島★★★
海苔掻きや潮のうねりをかわしつつ★★★★
天然の海苔は岩についている。潮はときどき、大きなうねりを作って寄せてくるときがあるが、そのときは待ち、うねりが逃げてまた海苔を掻くことを繰り返す。「うねりをかわしつつ」がリアルで、潮の様子が見え、磯の香りがしてくるようだ。(高橋正子)
氷柱融け楽となりたる軒端かな★★★
●河野啓一
ひさかたの光かそけく寒の雨★★★
夜通しの雨や草木も雨待つ心★★★
友の顔みざるデイの日氷雨かな★★★
1月29日
●小口泰與
山風にさらさる梢(うれ)の木の葉かな★★★
利根川の威の白波や虎落笛★★★
白波の広ごる湖やおでん鍋★★★
●多田有花
晩冬や土鍋で昼の飯を炊く★★★★
「昼の飯を炊く」生活もあるのだ。日が高く昇り、朝の寒さがとれたころ、ゆっくりと土鍋で飯を炊く。土と火の生活に古代に帰ったような気持ちになるのだろうか。(高橋正子)
快晴の空を仰げば春近し★★★
春隣る空気を胸に吸い込みぬ★★★
●桑本栄太郎
炊きたての白飯にかけ寒卵★★★
探梅の空の青さよヘリコプター★★★★
探梅の青空にリコプターが一機飛んでいる。何かの目的で飛んでいるヘリコプターだが、見る側からすれば、このきれいな青空に、なぜ居るんだ、と思う。(高橋正子)
青空へつぼみふふむや春隣り★★★
●河野啓一
冬麗の空の広さよ明るさよ★★★★
冬とは言え、麗らかな日和。空の広々と、明るいのが嬉しくなる。日脚が伸びたこの頃は、春を待つ気持ちも加わって、特に嬉しくなる。(高橋正子)
青空に飛行機雲や春近し★★★
ポリポリと沢庵噛んで春隣★★★
●古田敬二
陽光の春の気配に包まれて★★★
眩しき陽高きにありて春隣★★★
森に座す落葉の下に日の温み★★★★
1月28日
●小口泰與
探梅や風を生みたる山の嶺★★★
湖までの道真っ直ぐの落葉かな★★★★
落葉のことを言いながら、春の兆しが感じられる句だ。湖まで続く落葉の道は、木々がすっかり葉を落とし、空を透かせ、太陽の光を通している。木々の芽吹きももうすぐだ。(高橋正子)
冬すみれ我が影川を越えにけり★★★
●多田有花
朝霜に木を切る音の響きおり★★★★
朝の霜がまだあるうちから、木を切る仕事が始まっている。霜に響く木を切る音が力強い。(高橋正子)
鐘鳴らし自転車ゆくよ寒の森★★★
山茶花の散りこぼれつつ陽に咲けり★★★
●古田敬二
霜の土つかんで草の根の深し★★★★
ふきのとう庭に残して孤老逝く★★★
孤老逝く庭に芽生えし蕗の薹★★★
●桑本栄太郎
山茶花のこぼれ紅敷く坂の土堤★★★
水禽のつがいづつ浮く川面かな★★★
山肌の日射す明かりや春近し★★★★
●小西 宏
水鳥や連理の誓い四十年★★★
凛凛と空青みたり枯木立★★★★
枯が進めば進むほど、空は青を極めるようだ。「凛凛と」がそれを語っている。(高橋正子)
深酒の切符の薄し冬の星★★★
1月27日
●小口泰與
雨しずくふくむ冬菜を摘みにけり★★★★
雨しずくのついた冬菜は一段と緑も濃く、生き生きとふくよかに育っている。冬菜にも寒さや冷たさにもめげない力がある。(高橋正子)
寒暁のビルあかあかと朝日影★★★
荒星のこぼるる山や牡丹鍋★★★
●古田敬二
大股に春の気配の風を行く★★★★
角曲がる北風強く向かい来る★★★
玄関に活けし白梅開きけり★★★
●下地鉄
石蓴汁椀の香りの湯気やさし★★★★
石蓴(あおさ)の味噌汁などは、磯の香りがして、湯気もやさしく立ち上って春らしいものだ。。一椀の汁に春がある。(高橋正子)
唐獅子の眼もやわらかき春ちかし★★★
寒椿山深くして音も無く★★★
●桑本栄太郎
寒林といえど梢の空へ空へ★★★
遠山の眠りを揺する日射しかな★★★
蝋梅の道の明かりを教会へ★★★★
「教会へ」とあるので、ヨーロッパの小さな村の雰囲気を想像してしまう。それは、蝋梅の花の「香り」よりも「明るさ」を詠んでいるせいであるだろう。(高橋正子)
●小西 宏
霜柱つま先に触れ瑠璃の音★★★
満天星の冬芽差す日の柔らかし★★★
鳥の声澄む晴天の枯林★★★★
1月26日
●小口泰與
白鳥の己れ啄ばみ動かざる★★★
対岸の火事の煙りの垂直に★★★★
対岸の火事ならば冷静に見ておれる。煙も垂直で、いかにも事なげに燃えるばかりだ。(高橋正子)
白鳥の争そう波に入日かな★★★
●迫田和代
年ごとに春待つ心の老夫婦★★★
海風に揺れる水仙しんとして★★★★
「しんとして揺れる」に、水仙の清楚で凛とした姿が詠まれている。また、海風がよい詩情を醸している。(高橋正子)
冴え渡り痛い風吹く寒月や★★★
●河野啓一
房咲きの白水仙や庭に充ち★★★★
「房咲き水仙」という水仙があるが、日本水仙よりずっと純白である。この水仙が庭に咲き充ち、清楚で可憐な庭となっている。(高橋正子)
寒灯ににじむ髭なり齢百★★★
寒いねと顔見せにくる娘のありて★★★
●桑本栄太郎
地下鉄の地上へ出でて日脚伸ぶ★★★
春遠き河川畑のマルチかな★★★
下校子の黄色帽子や春隣る★★★★
学童は、目立つように年中黄色い帽子を冠っているが、日脚が伸びてくると、帽子の黄色が明るく光を返すようになる。それに「春隣る」を感じて詠んだ句。(高橋正子)
●佃 康水
祖父の声合図に児らは凧揚げる★★★
透きとおる空を連凧うねりゆく★★★★
上空に上がった連凧は、風の勢いを得て見事にうねりながら飛んでゆく。「透きとおる空」が上空の風の吹き様を想像させてくれる。(高橋正子)
凧揚げや爺さま弾む河川敷★★★
●多田有花
見上げれば山城跡に冬木立★★★
寒風や攻防激し城跡に★★★
日脚伸ぶ城跡にたつ追悼碑★★★
●高橋秀之
蝋梅の香りの先に城がある★★★★
蝋梅の香りも向こうに見える城によって、趣ある古風な香りとなっている。(高橋正子)
冬空に光っては消える航空灯★★★
またひとつ夢が生まれる受験生★★★
1月25日
●Unknown
海風に揺れる水仙しんとして★★★
年ごとに春待つ心の老夫婦★★★
冴えわたり痛い風吹く寒月や★★★
●小口泰與
冬ひばり声のこぼるる田道かな★★★
群れ起つや羽音厳しき寒雀★★★★
小さい雀だが、一斉に群れて飛び立つときは、体に似合わないほどの音を立てる。「羽音厳しき」は、厳しい寒さのときだけに、強い実感となって一句となった。(高橋正子)
朝火事や山の稜線定かなり★★★
●祝恵子
境内に人の溢れて初弘法★★★
雛さまも着物も置かる茣蓙の上★★★
賑わいの境内冬芽あちこちに★★★★
賑わいは、前掲句から初弘法と知れるが、そうした境内の賑わいの中に、冬芽もあちこちの木に育っている。冬芽も賑わいのひとつである。(高橋正子)
●桑本栄太郎
真直ぐなる枝の空へと寒晴るる★★★★
寒晴れの空に、まっすぐに枝が伸びているのも、気持ちがよいものだ。晴れた空には、寒中であるが、春の兆しが見えるようだ。(高橋正子)
映画果て新京極の日脚伸ぶ★★★
嶺の端のほのと暮れゆき春隣る★★★
●多田有花
寒の沖霞みて小豆島浮かぶ★★★
瀬戸内の浦それぞれの牡蠣祭り★★★★
牡蠣は寒さの募る今が一番おいしいとき。播磨の牡蠣、広島の牡蠣などは有名だが、瀬戸内海のそれぞれの浦には、牡蠣筏が浮かんで、牡蠣の水揚げに忙しい。牡蠣祭りと称して、殻つき牡蠣を焼いたものや、すぐさま生で食べさせるものなど、いろいろ用意して提供してくれる。素朴に、みんな楽しめる牡蠣祭りだ。(高橋正子)
冬の瀬戸望みつつ入る露天風呂★★★
●下地鉄
初午や卒寿の坂の前にあり★★★
寒晴れの朝空きよき今朝の旅★★★★
旅の朝の空が晴れていると、旅も無事に楽しめそうな予感がする。「きよき」なので、ことさら、よい旅となることだろう。(高橋正子)
寒灯の一つが遠き夜の帳★★★
●小西 宏
湯たんぽの朝の湯温し髭を剃る★★★
寒すずめ手水に遊ぶコマ送り★★★
大寒の雲ゆうらりと南より★★★★
この日は、南風が吹いたか。大寒ながら、雲がゆうらりと南から吹かれてきた。「ゆうらりと」に待春の気持ちが湧く。(高橋正子)
1月24日
●小口泰與
嫗(おうな)らの噂ばなしやちゃんちゃんこ★★★
手袋の中じんじんと痺れけり★★★
盛んなる利根の白波暖炉かな★★★
●下地鉄
星屑の離れて美しき寒の空★★★★
「星屑の離れて」は、星が次第に消えていく夜明けか。目裏にはまだ星屑が残り、張りつめた空気に寒の空が明けてくる。美しい夜明けである。(高橋正子)
点眼の日に5度となり日脚のぶ★★★
寒晴れや硬便やっと出でにけり★★★
●桑本栄太郎
剪定の瘤より枝の冬芽かな★★★
こんもりと桂離宮や寒の暮れ★★★
部活子の声駈けめぐり日脚伸ぶ★★★★
日脚が伸びると放課後の部活動も活発になる。サッカーなどする子どもらの声であろうか、ボールの動きを追いかけて声が駆けめぐる。それがまた逆に、日脚が伸たことを実感させてくれるのだ。(高橋正子)
●多田有花
晩冬を思う日差しの明るさに★★★
城跡の古刹の庭の実南天★★★
夕空の底金色に日脚伸ぶ★★★★
●小西 宏
南より悠々と雲春を待つ★★★
ひとり座し釣り果なけれど冬日和★★★
枯枝の空透き青を耀かせ★★★★
●佃 康水
梅蕾ふふみ瑞枝は空を差し★★★★
梅の蕾のふくらむころの空は、日脚が伸びるころで、青な空のこともあれば、柔らかな空色のこともある。新しく出た瑞枝が空に突き出ている勢いもすっきりと潔い。(高橋正子)
鴨の群日差す中洲に丸まれり★★★
池深く色滲ませて寒の鯉★★★
1月23日
●小口泰與
蝋梅や灯し続けし和蝋燭★★★
着ぶくれてお国訛りの立ち話★★★
青空や羽音激しき寒烏★★★★
●下地鉄
残照に一声のこし寒鴉★★★
寒晴れや海の蒼さに空の青★★★★
山峡の小窓に覗く寒灯★★★
●小川和子
冬芽の枝生気充たしつ天を指す★★★
川魚馳走と囲む寒の内★★★
友の着るセーター編目美しき★★★★
友人とお茶を飲んだりしている場合など、顔よりも胸のあたりに目がよくいく。着ているセーターの編目なども一々目に入って、きれいな編目に感心した。女性ならではの観察眼であろう。(高橋正子)
●多田有花
待春の梅の蕾の膨らみぬ★★★
可愛らしきものを買うなり寒の内★★★
蝋梅の香の範疇にいま入る★★★★
蝋梅はある処から急に匂ってくるようだ。それを蝋梅の範疇と言っているのだが、その範疇はまったく蝋梅の香りの世界。透明な黄色の世界である。(高橋正子)
●河野啓一
沖白く流氷来るオホーツク★★★★
「沖白く」に感動がある。沖が白くなって、流氷が押し寄せるオホーツクの春を想像させてくれる。(高橋正子)
冬ざれの丘にも明るき色見えて★★★
鵯の思い思いに枯れ枝に★★★
●桑本栄太郎
凍窓のエンジン噴かす朝の音★★★
峰襞の白きまだらや寒の晴れ★★★★
山茶花の土堤に紅敷く坂をゆく★★★
●小西 宏
三浦路のバス大根の天日干し★★★★
三浦大根で有名な三浦半島であるが、三浦路を行くバスの窓からは、大根が天日干しにされているのが見かけられる。たくさんの大根が干される晴れやかな半島である。(高橋正子)
窓青し西高東低みかん剥く★★★
風凪いで冬日の温し砂遊び★★★
1月22日
●小口泰與
髭面の蝦夷(えみし)の裔や寒造★★★
ひれ酒や遠き日のかの港町★★★
痛さじんじん手袋の中の指★★★
●多田有花
山の木の枝先すべて春を待つ★★★
スマッシュに飛びつく少年白き息★★★★
白い息を弾ませ、スマッシュに飛びつく少年のしなやかさ、伸びやかが詠まれ快い。(高橋正子)
マフラーをしてプレーする夜のコート★★★
●祝恵子
寒晴れや古都の歩きを踏みしめて★★★
冬境内蹴鞠の場所を囲いあり★★★
苔に落つ山茶花白し銀閣寺★★★
●桑本栄太郎
寒林の凛と蒼天ささえけり★★★★
寒の蒼天の力強さは凛とした寒林が支えなければならない。蒼天と寒林が拮抗する力に寒中の厳しさが読める。(高橋正子)
白鷺の足せせり居り寒の川★★★
峰筋の白き明かりや寒の暮れ★★★
●小西 宏
池底に枯葉沈めて陽の波紋★★★
冬晴れに梢剪られしプラタナス★★★
放課後のゴールキーパー日脚伸ぶ★★★★
「日脚伸ぶ」は、球を防御するゴールキーパーの敏捷な動きや姿勢を映像的に浮かび上がらせている。つまり、季語が効いている。(高橋正子)