11月1日

●小口泰與
秋冷や目路の赤城の空ゆたか★★★
しなやかな秋の朝日や日のぬくみ★★★
山風のやわらぐ朝や吾亦紅★★★★
風の荒い上州の山風もやわらぐ朝があって、おだやかな日和に気持ちがなごむ。その気持ちに沿うように咲く吾亦紅に愛しさを感じる。(高橋正子)

●河野啓一
干し柿を作ると植えし柿の苗★★★★
柿の木を植え、それから実がなるまで育てて、実がなればそれを干し柿にする。長い月日がいるものの、それも楽しみ。我が家の干し柿は格別うれしいもの。わたしも、中高生のころ渋柿の皮を剥いて干し柿づくりを手伝ったことがある。(高橋正子)

銀杏の葉色付き初めて陽のひかり★★★
暮れの秋まばらになりし訪ね人

●古田敬二
香を嗅げば木犀は散る光りつつ★★★★
金木犀も散るときがきたのか、香りが嗅げば、はらはらと光がこぼれるように散った。思わぬ金木犀の散り方に、また美しさに驚く。(高橋正子)

秋の実の一粒ずつが光りあう★★★
秋の蝶静かに羽ばたく息遣い★★★

●多田有花
茶の花の金色の蕊よき日和★★★★
特によい日和に咲く茶の花は印象に残る。そんな日には、黄色い蕊も金色に輝いて見える。(高橋正子)

秋光や木々の間の蜘蛛の糸★★★
見ていても見えてないこと身に入みて★★★

●桑本栄太郎
白き実の爆ぜて照葉や南京櫨★★★
せり出して瀬音聞きおり石蕗の花★★★
つぼみ黄の咲けば白なる小菊かな★★★

●小西 宏
桐一葉風なき窓をそっと閉ず★★★
団栗の小屋に小犬と握り飯★★★★
黄落の峰やわらかき西明り★★★

●高橋秀之
夜が明けて小さな朝顔ひとつ咲く★★★
薄紅葉の作るトンネル並木道★★★★
並木道の両側が薄紅葉している。これから次第に紅葉が進んでくるが、うす紅葉もいい感じだ。薄紅葉のトンネルのほんのりした暗さも魅力。(高橋正子)

朝焼けの淡き色した空高し★★★